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博士学位論文審査報告書

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Academic year: 2022

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2011年1月6日

博士学位論文審査報告書

大学名      早稲田大学

研究科名        スポーツ科学研究科 申請者氏名      須藤  英彦

学位の種類      博士(スポーツ科学)

論文題名        30―40歳代の日常生活場面におけるウォーキング行動の普及戦略 Promotion Strategy of Lifestyle Walking Behavior Among Japanese

Adults Aged 30―49

論文審査員  主査  早稲田大学教授    中村  好男  教育学博士(東京大学)       

        副査  早稲田大学教授    村岡    功  博士(医学)(東京医科大学)     

        副査  早稲田大学准教授  岡  浩一朗  博士(人間科学)(早稲田大学)   

本論文では、わが国の30―40歳代という最も運動習慣者の割合が低くなる年齢層に対 して、望ましい身体活動レベルを維持することが可能になるような生活場面でのウォー キングの普及戦略に関する提案を行うことを目的として、以下の 2 点の研究課題につい て検討している。1点目の課題は、日常の生活場面ごとにウォーキング行動の実施状況と 推奨身体活動を充たす者の特徴を明らかにすることであり、2点目の課題は、日常の生活 場面でのウォーキング行動のパターン化により、その下位集団の特徴を明らかにするこ とである。 

  本論文は、以下の4章から構成されている。第1章「緒言」では、本論文の背景として、

長期にわたって運動を継続させることはきわめて難しいが、運動継続には、既に運動を 習慣化している者の方が継続しやすいことが明らかになっており、運動習慣を持たない 者をより簡便に習慣化させるためには、運動開始・継続時のハードルをさげることが重 要であると言及している。 

また、わが国の運動習慣者の割合や日常生活の中で意識的に身体を動かすなどの運動を している者の割合は30―40歳代で最も低いことが明らかとなっており(厚生労働省、2008)、

30―40歳代は「仕事が忙しくて運動する時間がない」ことを運動の阻害要因の第1位とし

て挙げている(内閣府、2006)。こうしたことから、誰でも手軽に取り組めるウォーキング は、身体活動量を増加させるための手段の1つとして極めて有効であり、30―40歳代の運 動習慣を持たない者に、日常生活場面の中で歩くこと、すなわち運動のきっかけとしての ウォーキング行動を推奨することで、より効果性の高い介入方策につながると言及してい る。

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さらに、行動疫学の枠組みに従って国内外における先行研究を整理し、当該分野の行動 疫学的アプローチの必要性について言及している。具体的には、わが国におけるウォーキ ング行動の場面別実施状況がどの程度であるのか、またその実施率が低い集団の特徴は何 かについて、検討することの必要性について言及している。これらに基づいて、上記にあ げた2点の研究課題を設定している。

第 2 章では、本論文の「方法」についてそれぞれを詳細に記述している。以下にその概要 を記す。まず、社会調査会社のインターネット登録モニター5,009名を対象に、ウォーキン グ行動評価尺度(山脇ら、2006)による場面ごとのウォーキング実施時間と人口統計学的 変数との関連を検討している。また、U.S.DHHS(U.S. Department of Health and Human

Services)の推奨する週150分以上の身体活動をウォーキングで充たしている者の割合と週

150分以上のウォーキング実施の有無と人口統計学的変数との関連を検討し、さらに場面ご とのウォーキング時間の割合を性別、年齢別、推奨活動群(週 150 分以上のウォーキング 行動をする者)・非活動群(週150分未満の者)別に算出している。 

次に、クラスター分析を用いて、30―40歳代のウォーキング実施者をいくつかの下位集 団に分類して、ウォーキングパターンと人口統計学的変数との関連を検討している。また、

各クラスターにおいて、推奨活動群の割合を算出している。

第 3 章では、本論文の「結果」についてそれぞれを詳細に記述している。以下にその概要 を記す。解析の結果、5つの場面ごとのウォーキング時間の割合は、性別、年齢別に関わら ず、運動場面が全体の約2割を占め、残りの 8割は運動以外の日常の生活場面であり、非 活動群だけではなく、推奨活動群においても同様の傾向が認められることを明らかにして いる。

U.S.DHHSが推奨する週150分以上の身体活動基準をウォーキングで充たしている者の

割合は、男性で45.5%、女性で44.8%であるとともに、週150分以上のウォーキング実施 に関連する要因は、男性の場合は高学歴で、インターネット利用時間が1日当たり2―3時 間と適度な利用時間であること、子どもが少ないこと、女性の場合は高学歴・高収入で、

子どもが少ないことを確認している。

次に、ウォーキング実施者は、4つのパターンに分類され、生活場面ミックス型は、主に 通勤、仕事、買い物の場面で歩いている集団であり、運動型よりも推奨活動量を充たして いる者の割合が多く、通勤型、買い物型は、生活場面ミックス型や運動型と比較して、男 女共通して充たしている者の割合が顕著に少ないことを明らかにしている。さらに、ウォ ーキングパターンは、男女ともに婚姻状況、子どもの有無、学歴、世帯年収によって異な り、加えて女性においては職業の有無によってもそのパターンに顕著な差異が認められる ことを確認している。

第4章では、30―40歳代の生活場面でのウォーキングの普及戦略の提案を行うため、1)

ウォーキング時間の8割を占める日常の生活場面を対象とすること、2)通勤型と買い物型 のパターンをターゲットとして、介入支援を行うこと、3)プログラムの募集や提供に当っ

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て情報技術を活用すること、の有効性を述べ、総合的な「考察」を行っている。

本論文における主な知見は、30―40歳代の日常の生活場面におけるウォーキング行動に おける場面ごとのウォーキング時間の割合は、性別、年齢別に関わらず、運動場面が全体 の約2割を占め、残りの8割は運動以外の日常の生活場面であること、U.S.DHHSが推奨 する週150分以上の身体活動基準をウォーキングで充たしている者の割合は、男性で45.5%、

女性で44.8%であり、週150分以上のウォーキング実施に関連する要因は、男性の場合は

高学歴で、インターネット利用時間が1日当たり2―3時間と適度な利用時間であること、

子どもが少ないこと、女性の場合は高学歴・高収入で、子どもが少ないこと、ウォーキン グ実施者は、4 つのパターンに分類され、主に通勤、仕事、買い物の場面で歩いている集 団である生活場面ミックス型は、運動で歩いている運動型よりも推奨活動量を充たしてい る者の割合が多いこと、通勤型、買い物型は生活場面ミックス型や運動型と比較して、男 女共通して充たしている者の割合が顕著に少ないこと、さらに、男女ともに婚姻状況、子 どもの有無、学歴、世帯年収によってウォーキングパターンは異なり、加えて女性におい ては職業の有無によってもそのパターンに顕著な差異が認められることを明らかにしたこ とである。

一方で、本論文での知見は横断的調査によるものであることから、その因果関係につい ては言及が出来ないという点、ウォーキング評価尺度で推定したウォーキング時間は自記 式であるため、不正確な推定や思い出しのバイアスをある程度覚悟しなければならないと いう点、本研究で用いたインターネット調査では利用者の所得や学歴が偏っており、モニ ター登録という標本誤差が生じていた可能性もあるという点でやや不満が残る。

とは言え、本論文は大規模調査のデータに基づき、①ウォーキング行動の促進を進めて いく上で、ウォーキング行動の生活場面別の実施状況の観点から、わが国の30―40歳代の 日常生活場面への取り組みの必要性を裏付けたこと、②生活場面別に定量的検討を行うこ とで、それぞれの生活場面に対応したより効果性の高い介入方策の手がかりを示唆したこ と、③ウォーキング行動のパターンを把握することで、介入を必要とするターゲットとそ の特徴を明らかにし、「誰にとっては、どのような場面でのウォーキング行動の推奨が有効 であるのか」を明らかにしたことが特に評価すべき点であり意義深い。 

なお、これらの成果は既に「スポーツクラブにおける中高年女性の運動継続の規定要因 に関する研究」(スポーツ科学研究)、「30―40歳代の日常生活場面におけるウォーキング行 動の実施状況と推奨身体活動基準を充たす者の特徴」(スポーツ産業学研究)、「30―40歳代 の日常生活場面におけるウォーキング行動の類型化」(体力科学)として学術誌に掲載され ており、関連する分野の研究者から相応の評価を得ている。これらより、本論文はわが国 の健康づくり施策に関連するスポーツ科学分野の発展に寄与するものと判断できる。以上 のことから、本審査委員会は、本論文が博士(スポーツ科学)の学位を授与するに十分値 するものと認める。 

以上 

参照

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