第5章 あらたなリサイクル材料を活用した充てん材の適用性
5.1 リサイクル材料を活用することの意義
充てん工法は東海地方の亜炭採掘の廃坑の陥没や沈下などの鉱害対策として施工されて きた.そしてその材料には,母材として近隣の砕石工場で山砂利選別時に発生する副産物 の粘土キラと珪砂工場で発生する砂キラを用い,これにセメント系固化材および水を混練 りして製造される.このように,東海地方の亜炭廃坑を対象とする限りにおいては,当地 で入手できる粘土キラと砂キラを調達するのみで施工上の問題はなかった.しかしながら,
全国には亜炭廃坑以外にも,石炭・金属・非金属鉱山の廃坑,地下採石場跡,地下壕,廃 棄トンネルおよび廃棄埋設管などが放置され,同様な災害が各地で頻発している.充てん 工法はその材料的な特性や施工管理方法をもってこれらの空洞・空間に対する対策として 適用する場合にも非常に有効であると考えられる.そのためには,東海地方で産する粘土 キラや砂キラに代わるあらたな副産物を充てん材の材料として用いることが必要になる.
本章における研究の目的は,各種の副産物をリサイクル材料として用いた充てん材の主 に室内試験を通じて,その適用性を把握し,また,これによりこれらの副産物の新しい有 効利用分野を確立することである.ここに適用性の評価では,表-3.13または表-4.3に示 した充てん材の品質目標値を満足することとしたが,空洞を充てんする材料の特殊性から 特に流動性や分離抵抗性などの施工性に留意した検討を行った.検討の対象とした副産物 は一部で有効利用も行われているが,需要量の制約などから,一方で大量に廃棄物として 処分されている未利用の資源でもある.研究の結果,いくつかのリサイクル材料の良好な 適性を確認した.
一方,これまでの充てん材では,母材として粘土キラと砂キラの2種類の材料を同時に 混練りする配合を標準として用いられてきた(表-3.8,表-4.2 参照).そのため,材料の 調達と充てん材製造の品質管理や施工管理を複雑にしている側面もあった.ここでは高流 動性充てん材の標準配合および緩勾配タイプ限定充てん工法の充てん材を対象に,管理方 法の簡素化をねらいとした簡易な配合への見直しを行った.その結果,これらの配合の簡 易化が可能なことを確認した.
以上の研究成果を5.3以降に記述する.
5.2 副産物の発生と処理状況
2006年3月時の環境省1)の発表によれば,2003年度における全国の産業副産物の総排出
量は約4億 1,200万トンである.この数値はここ数年ほぼ横ばいに推移している.一方,
種類別でみれば,汚泥が46.3%,動物のふん尿が21.6%,がれき類が14.4%と割合が高い.
全体の処理状況をみれば,再生利用が49%,減量化が44%,最終処分が7%となっている.
また2004年4月現在で,最終処分場の残余年数は全国で6.1年分,首都圏では2.3年分と され,それぞれ前年度から増加しているものの,全国での新規許可施設数がここ数年20~
40件と伸び悩んでいることから,依然として厳しい状況にあり,さらなる再生利用の拡大 が緊急課題として挙げられている 1).このことからも,これらの副産物を充てん工事で活 用するなど新規利用分野の開拓が必要である.図-5.1~図-5.3にこれらの状況を示す.
充てん材に用いる材料としての条件は以下のようである.
1) 発生場所が近距離に位置し,必要量が入手可能で,運搬および材料コストが安価 であること
2) 有害物質の含有量が少なく,充てん材として用いたときに周辺環境に溶出しない こと
3) 取り扱いが容易であること
4) 性状が安定しており,充てん材としたときの品質目標値を満足すること
これらの条件を満たす粒状または粉体状の副産物として,東海地方以外の地区の砕石工 場等で発生する脱水ケーキ(東海地方の粘土キラに相当),石炭フライアッシュ(以下,石 炭灰),溶融スラグ,下水汚泥焼却灰(以下,下水灰),ペーパースラッジ焼却灰(以下,
製紙灰)および建設残土に着目した.表-5.1に示すように,これらの材料はすでに他分野 での有効利用も行われているものの,発生量が大量であるかまたは再生品の需要が十分で はないことなどにより,同時に廃棄処分も大量に行われている.
図-5.1 産業副産物の種類別排出量1)
図-5.2 産業副産物の種類別処理状況 1)
(a) 新規許可施設数
(b) 残余年数
図-5.3 最終処分場の新規許可数と残余年数1)
表-5.1 あらたなリサイクル材料として着目した主な副産物の処理状況
脱水ケーキ
砕石工場で山砂利を水洗いして選別した後,残った泥水をプレス脱水した粘土 で,地方によっては様々なよび名があるが,ここでは脱水ケーキとよぶ.東海 地方の粘土キラに相等する.東海地方では山砂利を採取した掘削跡に埋め戻さ れているが,瓦,レンガ,タイルなどに有効利用されることもある.
石炭フライアッシュ
(石炭灰)
石炭火力発電所などで石炭を燃焼させたときに発生する灰のうち,電気集じん 器で集めた微粉末の灰をいう.フライアッシュはシリカとアルミナを主成分と する.また,微少な球形粒子であることから,コンクリートに混ぜて使った場 合,コンクリートの流動性が向上する性質がある.その一部はセメント原料,
セメント混和剤,路盤材,建材などに利用されている.
溶融スラグ
一般廃棄物焼却灰や下水汚泥焼却灰などを1200℃以上の高熱で溶融した後に冷 却して生成した粒状のガラス質固化物をいう.廃棄物や汚泥には有害物質が含 まれることがあるが,溶融化によってダイオキシンのような化学物質は分解さ れ,また有害な重金属類はガラス質と一体化されて一般に外には出なくなる.
このため関係機関は廃棄物や汚泥の溶融化につとめている.その一部はコンク リート用骨材,路盤材などに利用されている.
下水汚泥焼却灰
(下水灰)
のは途中で流入した土砂などの無機分と脱水工程において添加された凝集 の無機分である.凝集剤は,高分子を用いる高分子系と消石灰・塩化第二 用いる石灰系(無機系)とに大別され,焼却灰の成分および性状に大きな を与える.灰の一部はインターロッキングブロック,レンガ,セメント どに利用されている.
ペーパースラッジ 焼却灰(製紙灰)
製紙工場の紙およびパルプ製造工程において,脱水時に一部流出した原料 ルプ繊維),古紙処理設備で除去されたインキ,填料および活性汚泥処理 の余剰汚泥を脱水したものをボイラーで燃焼した灰をいう.その一部は ル,土壌改良材,セメント原料などに利用されている.
建設残土
建設工事から発生する土砂のうち工事現場外に搬出されるもので,宅地 材や道路盛土材,河川築堤材などの材料としてそのままの状態で利用でき 砂のことをいう.
下水処理場の処理施設で下水から汚水および澄んだ水と分離された汚泥を減容 化と安定化を目的に焼却した灰をいう.汚泥の焼却によって固形の有機分や生 物処理によって過剰になった活性汚泥などは燃焼してしまうため,灰中に残る 剤中 鉄を 影響 原料な
(パ 設備 タイ 造成用
る土
(a) 外観 (b) 電子顕微鏡写真
写真-5.1 石炭灰
表-5.2 石炭灰の成分試験結果の例2)
A灰 B灰
強 熱 減 量
ig-loss
(%)3.53 5.15
二 酸 化 ケ イ 素
SiO
2 (%)56.6 53.6
酸化アルミニウムAl
2O
3 (%)25.8 31.0
酸 化 第 二 鉄Fe
2O
3 (%)9.0 6.5
酸 化 カ ル シ ウ ムCaO
(%)1.8 0.7
酸化マグネシウムMgO
(%)0.5 0.6
灰 種
成 分
通 過 質 量 百 分 率 (
% )
粒径(mm)
全国平均 国内炭 海外炭 最大値 最小値
図-5.4 石炭灰の粒度分布の例2)
写真-5.2 溶融スラグ(水砕)の概観
2.00以上 0.85-2.00 0.42-0.85
0.25-0.42 0.105-0.25 0.075-0.105
(注)数値は粒径(mm)
写真-5.3 溶融スラグ(水砕)の粒径別顕微鏡写真3)
0 50 100
0.001 0.01 0.1 1 10 100
粒径 D(mm)
通過質量百分率 P(%)
溶融スラグ プレスケーキ
粒径(mm)
通 過 質 量 百 分 率(
%)
溶融スラグ 脱水ケーキ
(注)近隣の砕石工場産の脱水ケーキの粒度分布も表示 図-5.5 溶融スラグ(水砕)の粒度分布の例3)
(b) 電子顕微鏡写真 (a) 外観
写真-5.4 下水灰
(%)
Ig.loss SiO2 Al2O3 Fe2O3 CaO MgO Na2O K2O P2O5石灰系焼却灰 5.19 16.12 6.03 10.8 43.74 1.93 0.39 0.38 7.29 高分子系焼却灰 2.9 32.29 19.88 7.88 8.4 2.46 1.06 1.83 19.3
表-5.3 下水灰の成分分析結果5),6),7)
5.3 物理特性に関する試験
5.3.1 簡易配合の検討
表-3.8(b)に示した高流動性充てん工法に用いる充てん材の標準配合では,粘土キラと砂 キラの単位量をそれぞれ,400kg,200kgとして,その配合比を2:1としている.また,表 -4.2に示す緩勾配タイプ限定充てん工法の充てん材の配合例においても,高流動性の充て ん材にならい,同様に2:1とした.ここでは,粘土キラと砂キラの配合比を,2:1,3:1,5:1,
1:0(粘土キラの単独使用)と,砂キラの単位量を減じる方向で配合試験を行い,結果とし て砂キラを使用しない粘土キラ単独使用の簡易な配合を確立することを検討した.充てん 材の品質および施工性に特に影響する特性は,強度と流動性である.そこで,高流動性充 てん材の配合試験では表-3.13の品質目標値のうちの一軸圧縮強度とP 漏斗流下時間につ いて,緩勾配タイプの限定充てん材では表-4.3のうちの一軸圧縮強度とフロー値(テーブ ルフロー)に関する試験を行った.
一軸圧縮強度については,同一配合におけるばらつきを考慮して配合強度を決定する必 要がある.ここでは,過去の充てん工事の際の充てん材製造プラントで練った充てん材を 室内で標準水中養生した供試体の一軸圧縮試験の結果から平均値,標準偏差および変動係 数を求め,基準強度を下まわる確率が 5%となる割り増し係数を,高流動性の充てん材で
1.82,緩勾配タイプの限定充てん材で1.75として配合強度を設定した.図-5.6は各配合に
よる一軸圧縮強度と流動特性に関する多数の試験結果を,横軸に示した各パラメータで整 理してプロットしたものである.これらのパラメータは,各特性値が比較的よい相関を示 すように,試行を重ねて求めたものである.なお,図中の相関式は配合比 1:0 の場合につ いて示している.
表-5.4は,高流動性の充てん材と緩勾配タイプの限定充てん材の粘土キラ単独使用の場
合について,上記相関式をもとに,強度および流動特性の目標値を満足する配合を,元の 配合と対比する形で示したものである.
このように,従来用いられてきた高流動性充てん材および緩勾配タイプ限定充てん工法 の充てん材では,砂キラを用いない粘土キラの単独使用が可能であることがわかった.こ のことは材料調達と管理方法の合理化につながる4).
表-5.4 粘土キラ・砂キラ混合配合と粘土キラ単独使用の配合4)
端部材 中詰材 端部材 中詰材 一軸圧縮強さ 50以上
粘土キラ KC (kg) 400 (400)
360 (540)
360 (510)
360
(570)
340 (510) 砂キラ KS (kg) 200
(0)
180 (0)
180 (0)
180
(0)
170 (0) 特殊固化材 C (kg) 50
(100)
120 (130)
150 (150)
90
(60)
100
(90)
特殊水ガラス WG (kg) 48.8 (20.0)
24.4 (10.0)
48.8
(20.0)
12.2 (10.0) 水 W (l) 759
(817)
715 (733)
725 (748)
724
(745)
763 (767) 高流動性
充てん材 高強度タイプ 低強度タイプ 緩勾配タイプの限定充てん材
100以上
(注)上段;標準配合,下段( )内;粘土キラ単独使用の配合 400以上
(kN/m2)
y = 3E+06e
-0.0197xR
2= 0.9592
( 1:0 の場合)
0 50 100 150 200 250 300 350
460 480 500 520 540 560 W/C
0.1一軸圧縮強さ (k N / m
2)
y = 0.0513e
11.078xR
2= 0.5668
(
1:0
の場合)0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0
0.40 0.45 0.50 0.55 0.60 0.65
(Kc+0.6Ks)/W
P
2:1 3:1 5:1
2:1 3:1sec )
5:1 1:0
( 時間 漏斗 流 下
1:0
(a) 圧縮強度(高流動性) (b) P 漏斗流下時間(高流動性)
図-5.6 各配合のパラメータと試験結果の相関4)
(d) フロー値(緩勾配限定)
(c) 圧縮強度(緩勾配限定)
y = 4E+09 e
-0.0340 xR
2= 0.9568
(1:0の場合)
0 200 400 600 800 00 00 00 1600 00 00
400 450 500 550
W/C0.1 一軸圧縮強度 (kN/m2 )
20
y = 0.8632x - 459.05 R
2= 0.8563
( 1:0の場合)
120 140 160 180 200 220 240
670 690 710 730 750 770
(W-0.4WG) (cm3/m3)
フロ-値 (mm)
2:1 3:1
18 2:1 3:1
5:1 1:0 5:1 1:0
14 12 10
5.3.2 各種材料を用いた充てん材の適用性
ここでは,各種リサイクル材料を用いた充てん材の室内配合試験を通じて品質特性に与 える要因と適性について検討した成果について述べる.最初に高流動性充てん材について,
表-3.13 の品質目標値を満足し,充てん材に適すると判断された代表的配合による試験結
果を選んで表-5.5に示す.このように,これらのリサイクル材料は適切な配合とすること で充てん材の材料として用いることが可能である.また表には,先に述べた砂キラを用い ない粘土キラさらに脱水ケーキの単独使用の配合についても示した.特に粘土キラに相当 する脱水ケーキは,これを産する砕石工場は全国に存在するが,砂キラを産するけい砂工 場はほとんどないため,この意義は大きいと考える.なお,調整材とは,リサイクル材料 のみを母材とした場合,材料分離が大きくなるものについて粒度調整のために添加した粘 土キラまたは脱水ケーキをいう.また,表中における母材とは,充てん材に用いる材料の うち,固化材,水およびその他の添加剤を除いたリサイクル材料と調整材を指す.このよ うに,石炭灰および下水灰のような単一粒径と考えられる焼却残さいや溶融スラグのよう な砂質土に類する粒度分布の溶融スラグでは調整材を添加する必要性があることが見出さ れた4),5).
表-5.5 代表的配合と品質試験結果(高流動性充てん材)4),5)
粘土キラ(1) 砂キラ 320 160 60 799 66.7 7.51 1331.7 11.5 0.7 61 ○ 粘土キラ(2) 420 0 60 822 100.0 7.30 1370.0 11.2 0.7 63 ○ 脱水ケーキ(1) 450 0 60 815 100.0 7.36 1358.3 10.9 0.0 84 ○ 脱水ケーキ(2) 600 0 90 749 100.0 12.02 832.2 10.2 0.3 75 ○ 脱水ケーキ(3)(石灰処理) 600 0 120 738 100.0 16.26 615.0 11.7 1.3 110 ○ 脱水ケーキ(4) 570 0 90 761 100.0 11.83 845.6 10.3 1.5 70 ○ 脱水ケーキ(5) 570 0 90 762 100.0 11.81 846.7 10.8 1.4 75 ○ 建設残土(1) 460 0 60 813 100.0 7.38 1355.0 9.3 0.4 258 ○ 建設残土(2) 480 0 60 793 100.0 7.57 1321.7 9.5 0.0 475 ○ 製紙灰(1) 570 0 60 753 100.0 7.97 1255.0 12.6 1.2 141 ○ 製紙灰(2) 570 0 60 753 100.0 7.97 1255.0 10.8 0.1 397 ○ 石炭灰(1) 粘土キラ 300 300 60 725 50.0 8.28 1208.3 10.6 2.0 143 ○ 石炭灰(2) 粘土キラ 650 150 60 629 81.3 9.54 1048.3 12.5 2.5 202 ○ 溶融スラグ 脱水ケーキ 400 400 60 690 50.0 8.70 1150.0 10.5 0.6 144 ○ 下水灰(1)(石灰系乾燥灰) 粘土キラ 175 325 80 779 35.0 10.27 973.8 9.7 0.0 79 ○ 下水灰(2)(石灰系20%加湿灰) 粘土キラ 175 325 80 779 35.0 10.27 973.8 10.2 0.0 373 ○ 下水灰(3)(高分子系乾燥灰) 粘土キラ 114 456 100 751 20.0 13.32 751.0 12.8 0.0 147 ○ 9~14 3以下 50以上 ― 評 価 C/W
リサイクル材料 調整材 調整材 (%) K
材料の種類 単位量(kg/m3)
R/(R+K) (%)
品質目標値 W/C (%)
試験結果 母 材 固化材
C 水 W
P漏斗流 下時間
(sec)
ブリーディング 率(%)
圧縮強度 (kN/m2) リサイクル
材料R
同様に,緩勾配タイプ限定充てん工法の端部材にリサイクル材を用いた場合の代表的配 合を表-5.6に示す.表より,リサイクル材料の種類によっては強度発現が低いものやゲル
化しないものがあった.これは水ガラスとの相性の問題と考えられるが,このように高流 動性充てん材の場合に比べて,配合の選定範囲が狭いかまたは選定不可能な場合があるた め,実際の工事に際しては,リサイクル材料の成分,凝集材などの混入物の調査および品 質の安定性を事前に確認する必要がある.
なお,限定充てん材の中詰材についてはここに示していないが,ほぼ高流動性充てん材 の場合と同様に,適切な配合を選定することで目標値を満足する傾向であった4).
表-5.6 充てん材の代表的配合と品質試験結果(緩勾配タイプ端部材)4)
ブリーディング ゲルタイム フロー値 圧縮強度 リサイクル材料 調整材 リサイクル材料 調整材 率(%) (sec) (mm) (kN/m2) 脱水ケーキ(a) 540 0 120 48.8 720 0 4.50 147 1515 △ 脱水ケーキ(b) 600 0 120 48.8 698 0 5.47 161 554 ○
脱水ケーキ(c)石灰処理 540 0 120 48.8 719 0 ∞ 229 217 × ゲル化せず強度低い 脱水ケーキ(d) 540 0 120 48.8 720 0 7.77 189 532 △ 流動性の調整要す 脱水ケーキ(e) 540 0 120 48.8 724 0.04 6.49 185 641 △ 流動性の調整要す パルプ焼却灰(a) 粘土キラ 225 225 120 48.8 745 0 7.75 225 535 △ 流動性の調整要す パルプ焼却灰(b) 粘土キラ 140 280 120 120.0 699 3.11 ∞ 181 482 × ゲル化せず
3以下 160~180 400以上
備 考
品質目標値
単位量(kg/m3) 試験結果 母材の種類
母 材 固化材 水ガラス 水 評価
5.3.3 フレッシュ性状に関する特性
以下,表-5.5にあげたリサイクル材料のうち,石炭灰,溶融スラグ,下水灰の3種類の 材料について,これらを用いた高流動性充てん材(ここではそれぞれ,石炭灰充てん材,
スラグ充てん材,下水灰充てん材とよぶ)に関する配合試験の分析結果について述べる.
ここに,石炭灰は石炭火力発電所で発生する原粉を用いた.溶融スラグは一般廃棄物の焼 却灰を溶融・水砕したものを用いた.下水灰は,表-5.1に示したように,添加する凝集材 によって区分される高分子系の下水灰と石灰系の下水灰を用いた.以上の3種類のリサイ クル材料は発生量も多いなどの理由で有効利用率の向上が望まれているものである.
石炭灰充てん材,スラグ充てん材および下水灰充てん材(高分子系)に関する母材の単 位量とP漏斗流下時間の相関を,それぞれ図-5.7(a),(b)および(c)に示す.ここに,P漏 斗流下時間の品質目標値は 9~14 秒である.なお,図-5.7(a)の凡例で,母材に対するリサ イクル材料の質量比をリサイクル材率として示した.
図-5.7 母材の単位量とP漏斗流下時間の相関5) (a) 石炭灰充てん材
7 8 9 10 11 12
500 600 700 800 900 1000 母材の単位量 (kg/m3)
P漏斗流下時間 (sec)
(b) スラグ充てん材
8 10 12 14 16 18 20
520 540 560 580 600 620 母材の単位量(kg/m3)
P漏斗流下時間(sec)
(c) 下水灰充てん材(高分子系)
8 9 10 11 12 13 14 15 16
400 600 800 1,000
母材の単位量(kg/m3)
P 漏斗流下 時間(s ec)
リサイクル材率50%
リサイクル材率75%
リサイクル材率100%
図-5.7より,すべて母材量の増加にともない,P漏斗流下時間が大きく,すなわち流動 性が低下する傾向が認められた.特に石炭灰充てん材とスラグ充てん材ではその影響が大 きく,母材量が900 kg/m3程度であってもP漏斗流下時間は目標値上限14秒程度以下の高 い流動性を示した.また石炭灰充てん材の場合,リサイクル材率が高いほど流動性が向上 する傾向であった.これは石炭灰の微細な球形粒子のボールベアリング効果により流動性 が向上したものと考えられる.一方,下水灰充てん材の場合,全体的に母材量の増加にと もないP漏斗流下時間が大きくなるが,ばらつきが大きく,灰混入量とリサイクル材率に 明確な相関はなかった.以上により,石炭灰充てん材とスラグ充てん材については調整材 との併用で良好な流動性を得やすいことがわかった.
次に,石炭灰充てん材,スラグ充てん材,下水灰充てん材(高分子系)に関する母材の 単位量とブリーディング率の相関を,それぞれ図-5.8(a),(b)および(c)に示す.ここに,
ブリーディング率の品質目標値は 3%以下である.いずれも母材量の増加にともないブリ ーディング率が小さくなる傾向を示したが,リサイクル材率の影響については三者とも傾 向を異にした.
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0
500 600 700 800 900 1000 母材の単位量 (kg/m3)
ブリーディング率(%)
0.30 0.40 0.47 0.50 0.53 0.56 リサイクル材率
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0
520 540 560 580 600 620 母材の単位量(kg/m3)
ブリーディング率(%)
(a) 石炭灰充てん材 (b) スラグ充てん材
(c) 下水灰充てん材(高分子系)
図-5.8 母材の単位量とブリーディング率の相関5)
0
5 10 15 20 25 30
400 600 800 1,000 母材の単位量(kg/m
3)
ブリーディング率(%)
リサイクル材率50%
リサイクル材率75%
リサイクル材率100%
石炭灰充てん材およびスラグ充てん材の場合,母材量の低領域でリサイクル材率が大き い配合ほどブリーディング率が大きくなる傾向であった.この影響が最も大きいのは石炭 灰充てん材で,リサイクル材率が50%,75%,100%の場合,母材量をそれぞれ600 kg/m3 以上,800 kg/m3以上,1,000kg/m3以上とする必要がある.スラグ充てん材の場合は,母材 量がおよそ 800 kg/m3以上とする必要がある.下水灰充てん材はばらつきが大きいものの 試験範囲内において全て目標値3%以下を満足し,良好なブリーディング率が得られた5).
5.3.4 硬化性状に関する特性
石炭灰充てん材,スラグ充てん材,下水灰充てん材(石灰系),下水灰充てん材(高分子 系)のセメント水比(以下,C/W)と一軸圧縮強度(以下,qu)の関係をそれぞれ図-5.9(a),
(b),(c)および(d)に示す.
0 200 400 600 800
0.06 0.08 0.10 0.12 C/W
一軸圧縮強度(kN/m2 ) 材齢3日
材齢7日 材齢28日
(a) 石炭灰充てん材
0 100 200 300 400 500
0.04 0.06 0.08 0.10 0.12 C/W
一軸圧縮強度 (kN/m2 ) 材齢3日
材齢7日 材齢28日
(b) スラグ充てん材
0 50 100 150 200 250 300 350 400
0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 C/W
一軸圧縮強度(kN/m2 ) 乾燥灰20%加湿灰
50%加湿灰 80%加湿灰
(c) 下水灰充てん材(石灰系)
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400
0.05 0.10 0.15 0.20 0.25 0.30 C/W
一軸圧縮強度(kN/m2 ) 材齢3日
材齢7日 材齢28日
(d) 下水灰充てん材(高分子系)
図-5.9 C/Wと強度の相関5)
図-5.9(a),(b),(d)からわかるように,C/Wとquは,石炭灰充てん材,スラグ充てん 材,下水灰充てん材(高分子系)において各材齢で高い相関関係を有することが確認でき た.また,図-5.9(c)に示すように,下水灰充てん材(石灰系)については,前処理として 乾燥灰に水を加えて含水させたものを用いた場合の影響も比較した.実際に焼却灰を用い た充てん工事を行う場合,運搬や仮置きなどの取扱いの関係で,乾燥状態の灰を適度な含 水状態(加湿灰)とする場合があるが,石灰系焼却灰の場合にはこの加水により含有する 酸化カルシウムなどが水和反応を起こして固化する傾向がある.固化の程度によっては充 てん材として混練りする前にほぐすことになるが,このような性状の変化が充てん材の品 質に与える影響も把握する必要がある.図-5.10 に加湿した石灰系焼却灰の強度増進の様 子を表す.ここに,図-5.9(c)および図-5.10における凡例の%表示は加水後の焼却灰の含 水比である.同図からわかるように,加湿灰は乾燥灰に比べて高い強度で推移した.また 加湿灰のなかでも含水比の増加による強度増加の影響は明確に認められず,むしろ含水比 20%の場合が最も強度が大きい傾向であった.これらの原因として,焼却灰に加水した際,
含水比が高いほど灰自身の水和による固化が著しい傾向であったため,混練り前のほぐし の程度が強度に影響したものと考えられる.図-5.9(c)より,目標値 qu≧50kN/m2 を満足 するC/W は,乾燥灰では9%程度以上,加湿灰では 6%程度以上となり,石灰系焼却灰で は少量の加水が有効といえる.
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450
0 7 14 21 28
材齢(日)
一軸圧縮強度(KN/㎡)
焼却灰(80%加湿)
図-5.10 焼却灰(石灰系)の加湿後の強度7)
次に,図-5.11に下水灰充てん材(高分子系)の材齢にともなう強度変化の関係を示す.
同図において,単位セメント量によっては強度発現の傾向に差異がみられた.すなわち,
固化材の単位量CがC=150 kg/m2および120 kg/m2と多い場合は材齢に応じた強度増加が みられるが,C=60 kg/m2と少ない場合は3日以降の強度が低下したままのものが多かった.
その中間のC=100 kg/m2では,順当に強度増加するものと3日以降に強度低下した後再び
増加に転じるものに分かれた.前者は焼却灰の単位量 R が R=114kg/m2,後者は R=
171kg/m2のものである.今回の配合試験に用いた焼却灰は表-5.3に成分試験結果として示
したものである.石灰系焼却灰は消石灰を大量に使用するため,酸化カルシウムの含有率 が非常に高い.高分子系焼却灰は有機系の高分子凝集剤を使用するため,もともと汚泥に 含まれていた無機分けい素,アルミニウム,リンの含有量が多い.一般にリン酸塩はセメ ントの凝結を遅延し,硬化を妨げる成分として知られている 8).ここでの強度発現阻害も リン含有量が多いことに原因があると考えられる.図-5.12に焼却灰単位量をR=114kg/m2 と比較的少なくした配合の長期の材齢強度を示すが,306日強度は28日強度に比べて約1.4 倍に増加しており,強度発現の問題はないといえる.以上により,リンによる強度発現の 問題に対しては,固化材単位量を多くするかまたは焼却灰単位量を低めに抑えることで回 避できると考えられる5),6),7).
0 100 200 300 400 500 600 700 800
0 7 14 21 28
材齢(日)
一軸圧縮強度(kN/m2 )
黒 色:C=150kg/m3,濃灰色:C=120kg/m3 薄灰色:C=100kg/m3,白 色:C= 60kg/m3
図-5.11 下水灰充てん材(高分子系)の材齢と強度5),6),7)
0 50 100 150 200 250 300 350 400
0 56 112 168 224 280 336 材齢(日)
一軸 圧縮 強度 (k N /m
2)
R=114kg/m3 K=456kg/m3 C=100kg/m3 W=751kg/m3
図-5.12 下水灰充てん材(高分子系)の長期材齢と強度5),6),7)
以上の石炭灰充てん材,スラグ充てん材および下水灰充てん材のフレッシュ性状および 硬化性状に関する試験結果から,品質目標値を満足する標準的な配合は表-5.7のようにま とめられる.ただし,リサイクル材料の原産地や製造工程が変わることでその性状も変化 するため,実工事への適用にあたっては事前に性状を確認する試験を行って,品質目標値 を満足する範囲のなかから適切な配合を設定する必要がある.
表-5.7 物理特性に関する試験結果により設定した配合
石炭灰 溶融スラグ 下水灰
(石灰系)
下水灰
(高分子系)
リサイクル材料 R(kg) 300 400 175 114 調 整 材 ※ K(kg) 300 400 325 456 固 化 材 C(kg) 60 60 80 100
水 W(kg) 725 690 779 751
※調整材;粘土キラまたは脱水ケーキ 単
位 量
リサイクル材料の種類
下水灰充てん材 石炭灰
充てん材
スラグ 充てん材
5.4 環境影響性に関する試験
副産物を充てん材に有効利用するにあたり,強度や流動性などの物理性状の適合性とと もに,環境への影響に関する特性ももうひとつの重要な適合性である.前記石炭フライア ッシュ,溶融スラグ,下水汚泥焼却灰も副産物であるがために,多かれ少なかれ有害物質 とよばれる成分を含有しており,その溶出による環境への影響を論じることなしにはすま されない.今回実験に供した石炭灰,溶融スラグおよび下水灰を対象に,適切な配合とし て作成した充てん材について,環境庁告示46号土壌環境基準に基づいて重金属等の有害物 質に関する溶出試験を行った結果,すべて基準値以下であることを確認した.表-5.8に溶 出試験結果を示す.
表-5.8 溶出試験結果5)
単位 基準値 ※ 石炭灰充てん材 スラグ充てん材 下水灰充てん材
(石灰系)
下水灰充てん材
(高分子系)
kg/m3 ― 300 400 200 114
kg/m3 ― 300 400 300 456
kg/m3 ― 60 60 60 100
カドミウム Cd mg/L 0.01以下 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001
全シアン CN mg/L 検出されないこと 不検出 不検出
鉛 Pb mg/L 0.01以下 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005
六価クロム CrⅥ mg/L 0.05以下 <0.04 <0.04 <0.04 <0.04
ヒ素 As mg/L 0.01以下 0.005 <0.005 <0.005 <0.005
総水銀 Hg mg/L 0.0005以下 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005
銅 Cu mg/kg 125 <0.5 <0.5
ホウ素 B mg/L 1 0.3 0.08
セレン Se mg/L 0.01以下 0.005 <0.002 <0.002 <0.002
フッ素 F mg/L 0.8 0.3 0.4
適合 適合 適合 適合
(試験機関:(株)ユニチカ環境技術センター中部事業所)
※基準値;「土壌の汚染に係る環境基準」(環境庁告示第46号)
配 合
試 験 結 果
合否判定 リサイクル材料
調整材 固化材
このなかで,石炭灰は一般に石炭鉱山に由来する重金属が含まれている.産炭地の地質 にもよるが,なかでもヒ素,ホウ素,セレン,フッ素などが無処理の石炭灰自体から溶出 することがある.表-5.8のうち石炭灰の例は,これらの重金属の含有量が比較的多くない とされる場合の試験結果である.
一般廃棄物溶融スラグは,溶融化によって廃棄物中に含まれる様々な有害物質を分解お よびガラス質で固化させていることから,それ自体の有害性は一般に低いといわれている が,元の廃棄物の性状や溶融炉の方式などにより,まれに有害物が溶出することもある.
大迫ら 9)は一般廃棄物溶融スラグを充てん材に用いる場合を想定して,溶融スラグおよび 溶融スラグを用いた充てん材の長期的な環境安全性について,重金属を対象とした長期溶
出特性を把握するシリアルバッチ試験を行い,土壌環境基準と比較した.溶融スラグの含 有量試験結果およびシリアルバッチ試験結果を表-5.9および表-5.10に,またスラグ充て ん材のシリアルバッチ試験を表-5.11 に示す.試験の結果,ともに物理的な劣化が溶出に より発生しないことを確認された.
Cd Pb CrⅥ As T-Hg Se F B Al Fe Cu Zn SiO2 Ca
試験結果 <1.0 27 <10 <10 <1.0 <1.0 <100 69 54,000 7,200 7 730 130,000 52,000
含有量基準値※ 150 150 250 150 15 150 4,000 4,000 ― ― ― ― ― ―
※含有量基準;「土壌汚染対策法施行規則」第18条第2項
(単位:mg/kg)
表-5.9 溶融スラグの含有量試験結果9)
表-5.10 溶融スラグのシリアルバッチ試験結果
溶出回数 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目 単位
溶出時間 6時間 12時間 24時間 48時間 96時間 6時間 12時間 24時間 48時間 96時間
Cd <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 0.01 Pb <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 0.01 Cr+6 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 0.05 As <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 0.001 0.001 0.001 0.001 <0.001 0.01 T-Hg <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 0.0005 Se <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 0.002 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 0.01 F <0.08 <0.08 <0.08 <0.08 <0.08 0.21 0.11 <0.08 <0.08 <0.08 0.8 B <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 1 電気伝導率 1.4 0.6 0.5 0.8 0.9 21.6 11.1 12.3 14.0 13.6 mS/m
酸化還元電位 +350 +370 +380 +390 +390 +310 +310 +320 +330 +360 mV
pH 7.1 6.8 6.8 6.8 6.8 7.8 8.1 8.1 8.1 8.0
溶融スラグ 脱水ケーキ
㎎/L 土壌環境
基準
表-5.11 溶融スラグを用いた充てん材のシリアルバッチ試験結果9)
溶出回数 1回目 2回目 3回目 4回目 5回目
溶出時間 6時間 12時間 24時間 48時間 96時間
Cd <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 0.01 Pb <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 0.01 Cr+6 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 <0.005 0.05 As <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 0.01 T-Hg <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 <0.0005 0.0005 Se <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 <0.001 0.01 F 0.10 <0.08 <0.08 <0.08 <0.08 0.8 B <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 <0.1 1
電気伝導率 7.6 7.0 7.5 6.3 7.7 mS/m
酸化還元電位 +380 +360 +350 +250 +350 mV
pH 9.7 9.9 10 9.5 8.9
㎎/L 土壌環 境基準
単位
下水灰は,流域にもよるが,たとえば名古屋市10)は,発生する下水汚泥の全量を焼却し て減量化しており,このうち約75%を土壌改良剤,セメント原料,陶管,タイル,透水性 ブロックなどに利用している.しかし,下水灰の安定した利用を進める上で,ヒ素とセレ
ンの溶出が特に問題であるとしている.ヒ素とセレンはいずれも生体必須微量元素であり,
ともに様々な鉱業および農業製品の原料として用いられている.流入下水へのこれらの成 分は,生活系,工場排水の他,ヒ素については温泉排水,地下水あるいは土壌からの由来 も考えられている.
これに対して,参考文献8)では,これらの有害物の溶出抑制には,焼却灰への消石灰や ポリ鉄(ポリ硫酸第二鉄)などの薬剤添加が有効であるとしているように,使用量を少な くして充てん材に用いるよりも,不溶効果のある薬剤などを添加することで積極的に大量 に使用する方が,効率がよいと考えられる.この他,不溶効果については,固化材を多く して固結強度を高めることも有効である.以上のことは,石炭灰についてもいえる.これ については,さらに配合試験を積み重ね,費用に対する効果を定量的に把握することが今 後の課題として考えられる.
なお,リサイクル材料の使用にあたっては,材料の原産地や製造工程が多種多様である ため,その都度溶出試験によって環境への影響を確認しなければならない.
5.5 まとめ
本章の配合試験結果によるあらたなリサイクル材料を活用した充てん材の適用性につい て,得られた知見と課題をまとめると次のようになる.
1) 多くのリサイクル材料は適切な配合とすることにより充てん材の品質目標値を満 足し,充てん材の構成材料になりうる.また粘土キラ,脱水ケーキは母材としての 単独使用が可能である.なお石炭灰,溶融スラグおよび下水灰については,調整材 として粘土キラまたは脱水ケーキを添加する必要性がある.
2) 石炭灰充てん材,スラグ充てん材,下水灰充てん材のP漏斗流下時間は,母材量の 増加にともない大きくなる(流動性が低くなる).特に石炭灰充てん材はリサイク ル材率が高いほど流下時間が小さい(流動性が低い).
3) 石炭灰充てん材,スラグ充てん材,下水灰充てん材のブリーディング率は,いずれ も母材量の増加にともない小さくなる.特に下水灰充てん材はブリーディング率が 小さい.また石炭灰充てん材およびスラグ充てん材はブリーディングを抑制するた めに低母材量域ではリサイクル材率を低めに設定する必要がある.
4) 石炭灰充てん材とスラグ充てん材の固化体強度については,材齢別に C/W との強 い相関がある.下水汚泥充てん材の場合は,他の要因にも大きな影響を受ける.す なわち,石灰系では含水比20%程度の加水で大きな強度促進を図ることができる.
また高分子系のようなリン含有量が多いものは,強度発現が阻害される可能性があ り注意が必要である.これには固化材単位量を多くするかまたは焼却灰単位量を低 めに抑える必要がある.
5) 副産物のなかには,石炭灰や下水灰のように,発生由来や処理過程によって有害物 質を大なり小なり含有しているものがある.これらを充てん材として用いる場合,
周辺環境に溶出することがないように土壌環境基準を満足するためには,単位量を 少なくする方法がある.しかし,この場合は1)~4)で述べた物理特性の適用性から 決まる配合の範囲を狭くすることになる.このような制約を設けない場合には,不 溶効果のある薬剤を添加するかまたは固化材単位量も多くすることで固結強度を 高めて,溶出させない方が効率がよいと考えられる.
以上,本章で述べた研究成果により,空洞充てん工事における材料選定の自由度が大き くなり,各地の空洞の防災事業に適用することが可能と考える.またこのことはこれらの リサイクル材料のいっそうの有効利用促進につながると考える.
参考文献
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5) 坂本昭夫,山田紀利,岩城圭介,川本朓万:リサイクル材料の空洞充填材への適用性,
材料,第54巻 第11号,pp.1123-1128,2005.
6) 坂本昭夫,橋本雅宏,金住健一,杉浦乾郎,石合伸幸,山田紀利,岩城圭介:下水汚泥 焼却灰を活用した空洞充填材の研究,第40回地盤工学研究発表会講演集,pp.597-598,
2005.7
7) 坂本昭夫,橋本雅宏,金住健一,杉浦乾郎,石合伸幸,山田紀利,岩城圭介:下水汚泥 焼却灰を用いた空洞充填材の強度特性,土木学会第60回年次学術講演会講演会概要集,
pp.135-136,2005.9
8) 松下博通,牧角龍憲,岸田政彦:下水汚泥焼却灰を混入したコンクリートの性質,セメ ント・コンクリート論文集,No.51,pp.436-441,1997年
9) 伊藤良治,大迫政浩:一般廃棄物溶融スラグを用いた地下空洞充填材の環境安全性,第 15回廃棄物学会研究発表会講演論文集,pp.778-780,2004年11月
10) 加藤博行,林幹雄:下水汚泥焼却灰からのひ素およびセレン溶出抑制対策について,再 生と利用,Vol.27 No.103,pp.93-97,2004年3月