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高齢者の在宅介護者における介護継続理 由と介護による学び

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岡山大学医学部保健学科紀要,14:141‑155,2004 BullFacHealthS°i,OkayamaUnivMedSch

(報 告)

高齢者の在宅介護者における介護継続理 由と介護による学び

高原万友美,兵藤好美1 )

要 約

高齢者の在宅介護者7名に対 して質問紙 を用いた面接 を行い,介護継続理 由 と介護 よ り 得た ものの二側面について尋ねた。その中で特 に,それ らが どの ように介護者 と高齢者の

QOLを向上 させ るか に注 目した。介護継続理 由については,愛情 と家族の杵が最 も重要 であ り,被介護者の健康 の悪化が, しば しば在宅介護 を中断 させていた。 また家父長制 に 基づ く性的役割が,介護者の義務感や伝統観 に強 く影響 していることも明 らかになった。

介護が始 まった時期における被介護者か らの希望や宗教的影響 は,継続理由 とはな らない ことが分かった。 また,介護か ら得 るものが多い と感 じていた2人の嫁 は,介護 に高い意 欲 を持 ってお り,介護が価値 ある体験であるとい う認識が,介護の動機付 けを行 っている 可能性が示唆 された。

キーワー ド :在宅介護者,高齢者,介護継続理由,介護か ら得 た もの

緒 言

平成12年4月 よ り施行 された介護保険は,介護 を 社会全体で支 える仕組み としてス ター トした。様 々 な問題が指摘 されているものの,サー ビス利用 に対 す る家族の満足度が介護保険施行後 にある程度上昇 してい る とい う報告 (野村 ら)1)もあ り,介護 を支 える制度 として期待がかかっている。

しか しなが ら,介護 のほ とん どが家族 によって行 われているのが実状である。現在,在宅介護 を行 う には介護者の存在 は不可欠であ り,介護者が介護そ の ものに否定的であった り負担 を強 く感 じるようで は,在宅ケアはうまく機能 しない と言われ る (山口 ら)2)。 これ を裏付 ける もの として,数 々の介護負 担 に関する研究や,高齢者の介護者 の うつ状態 に関 す る文献があ る (佐久 間)3)。 しか し一方 で,介護 者 は被介護者の最 も身近 に存在す る良 き治療者 とも な りうる可能性 を持つ ことを,徳地 ら4)が提言 して いる。 これは,介護者の身体的 ・精神的健康 を保つ ことが, ひいては, よ り良い介護 ・高齢者 のQOL

へ とつながることを示唆 しているとも考 え られる。

介護の否定的影響 についての研究 は様 々なテーマ で行われて きたが,介護経験が介護者 に与 える影響 は必ず しも否定的なものばか りではない。肯定的影 香川医科大学付属病院看護部

1)岡山大学医学部保健学科看護学専攻

響 についての研究 も,前者 に比べ る と僅かであるが 行 われ る ようになって きてい る。 中谷 ら5)と坂 田6)

の研究では,介護負担感の高低 と介護継続意志 には 関連がな く,それぞれ独立 した要因であることが示 された。 これ と同様 の結果が井上7)の研究で も報告 されてお り,高齢者介護 に対す る介護者 の肯定的反 応 としての報酬 の概念 は,否定的反応 としての介護 者役割過重 とは基本的 に独立 して存在す ると考察 さ れている。 また最近 では斉藤 ら8)の研 究で,介護継 続意向 と介護の肯定的側面 は関連があ り介護負担感 とは関連がない,介護 に対す る肯定的側面 と介護負 担感 とは関連がないな どの結果が出ている。 この他, 介護の肯定的影響 に関す る研究 としては,介護者の 主観的健康観 と生活満足度の変化 とその要 因を分析 した杉 揮 ら9)の研 究 や,介 護者 の主観 的幸福 感 を VASやPGCモ ラールスケールを用 いて調査 し,そ れ らに影響 を及ぼす因子 を検討 した ものが ある (川 本 ら10) ;安 田 ら11))0

上記 と異 なる質的な方法で行われた研究 もい くつ か あ る。 Guberman,Maheu&Maiue12)は, 虚弱 な高齢者や精神疾患 を持つ家族 を介護す る女性40名 (年齢 :30‑80歳) にイ ンタビューを行 った。そ し て介護す る関係性 に注 目し 「介護 を引 き受 けること

‑ 141‑

(2)

を決定 したプロセス」 を通 じて,決定の理由とそれ に関与 した14の要因を抽出 している (表2参照)。

この研究に対 して山本13)は,「介護経験が介護者 に 与える肯定的影響が,なぜ介護を続けるかという問 いによって解明される方向性 を示唆 している」 と述 べる一方,「日本の文化的特徴 を考えると, 日本で もカナダと類似の研究が必要 と思われる」 と述べて いる。また山本 自身も,痴呆老人を世話する娘及び 嫁介護者の経験 を理論的に説明するのを目的とした 質的研究を行ってお り,その際, 日本人は欧米人 と 異なる心理的特性 を持つ として 「生 きがい」の概念

を使用 した。井上7)が介護の肯定的反応 として用い た 「学びとしての報酬」に当たる概念を,面接調査 による内容の分析 によって研究 したのは伊原 ら14)で ある。彼女 らは,負担が大 きいにも関わらず在宅介 護が継続で きている介護者の学びの特徴 を

KJ

法で 分類 し,それぞれについての看護援助の方法を考察

した。

このように,介護による肯定的影響は徐々に注 目 されるようにな り,それが否定的影響 と独立 したも のであることが明らかになってきている。だが,哩 論的検討や概念化 ・尺度化の諸段階においての検討

は,否定的影響の検討に比べ始まったばか りであ り, 今後検討が必要であろうと思われる。

本研究では,在宅介護者の介護継続理由と介護に よって得たものについて,現在主に介護を担ってい るとされる妻 ・嫁 ・娘 といった続柄の人を対象に調 査を行 う。介護継続理由に着 目したのは,様々な困 難があるにもかかわらず介護 を続けられるのはなぜ かという問いの答えや今後の介護のあ り方を検討す るためである。

前述 のGubermanら12)の研究では,被介護者が 精神障害 も含むこと,介護者40名を調査対象 とした こと,また半数は家計収入が低い階層であること, 配偶者がいない等,本研究の対象者 と較べて大 きく 背景要因が異なっている。 また抽出された14の要因 は,「介護を引 き受けることを決定 したプロセス」

を通 じて決定の理由とそれに関与 した要因 として導 きだされたものである。 しか しなが ら本研究では, 介護状況や 「介護を継続 していけるのはなぜか」 と いう介護継続理 由を明 らかにすることを, 目的とす るものである。 さらに介護によって得たものは,介 護者 自身の成長 とも関連するものであ り,介護者に とって介護はどんな価値を持つか といったことを理 解するのに有用であると考え, とりあげた。また, 妻 ・嫁 ・娘 といった異なる続柄 を対象 としたのは,

被介護者 との関係が変わることで,介護の捉え方や 思いに差異が現れるのではないか と仮定 したためで ある。

方 法

1.対 象

A市にある訪問看護ステーションTを利用 してい る高齢者の主介護者に訪問看護ステーションを通 し て研究協力の依頼をし,同意が得 られた7名を対象 とした。そのうち1名は,質問紙のみの参加である。

対象の選定に当たっては施設側か らも研究協力が得 られ,かつ筆者が以前に面識をもち,介護に関 して 様々な角度か ら語って頂けることに重点をおいた。

そのため今回対象 となった7名は,筆者が在宅看 護実習の中で家庭に訪れたことがあ り,それぞれの 介護者 とはインタビュー以前に面識 を持って方 (質 問紙のみ参加の1名を除 く)ばか りである。

2.調査方法

調査期間は2002年10月12日から11月15日の約1ケ 月間であ り,同意が得 られた介護者 を対象に,質問 紙を用いた構造的面接 を実施 した。調査 は施設のス タッフと共に訪れ,訪問サービ大の時間を用いて被 介護者の居室 とは別室で行 った。面接時間は 1人約 1時間で,質問紙に記入 して もらいなが ら,当ては まるか どうかの回答を得た上で,その後それ らの内 容について詳細 を自由に語ってもらった。面接の内 容は許可を取って録音 し,質問紙 と共に記録 とした。

なお多忙のため面接 を行えなかった1名に関 しては, 質問紙への記載内容のみを記録 として用いた。

倫理面の配慮 について,介護者 らには研究主旨の 説明を行い,参加に同意 しなくても不利益が生 じる ことはないと説明 した。 また調査で得た情報は研究 にのみ用い,研究後 も厳格 に管理することを伝 えた。

3.調査項 目 1)属性 ・介護状況

被介護者 の年齢 ・性別 ・主症状 ・自立度 ・痴呆 度 ・要介護度は,施設の記録物 より情報収集を行っ た。 自立度には障害老人の 日常生活 自立度 (寝たき り度)判定基準 (ランクJ〜 C),痴呆度には痴呆 性老人の日常生活 自立度判定基準 (ランクⅠ〜M) を用いた。要介護度は,現在介護保険の要介護認定 に用い られている ものである。介護者の年齢 ・続 柄 .介護年数 ・職業 ・介護による退職 ・一 日の介護 時間 ・介護での睡眠中断 ・副介護者 ・公的サービス

‑ 142‑

(3)

介護継続理由 と介護 による学 び

の利用 ・自身の健康問題については,介護者本人に 質問紙の中で記入 して もらった。

2)介護者の介護継続理由

Gubermanら12)は 「介護 を引 き受けることを決定 したプロセス」 を通 じて決定の理由とそれに関与 し た14要因 (①愛情 ・家族のきずな,②義務感,③被 介護者か らの希望,④他に介護者がいない,⑤宗教 的理由,⑥個人的理由 (夫や子供がいない,仕事を 持っていない等),⑦被介護者が良 くなると信 じて いる,⑧被介護者の健康 (まだ施設へはいるほど悪 くない),⑨資源の不足 (施設で空 きがない),⑲家 族の伝統,⑪他者を助けたいという思い,⑫女性の 社会的 ・経済的な依存,⑬公的サービスへの不信感,

⑭他からの助けがあった)を導 きだ した。そ して,

③ ・(参は被介護者に関する要因,④ ・⑨ は家族の能 力 ・地域や制度上の資源など新 しい介護状況を提供 できる要因,その他の10項 目は介護者の物質的 ・社 会的 ・精神的状態に関する要因として分類 した。

そ こでGubermanら12)が抽 出 した 「介護 を引 き 受けることを決定 したプロセス」における決定の理 由とそれに関与 した14要因を筆者が訳 し,それを参 考にしなが ら,質問用紙において介護を継続 してい けるのはなぜかという 「介護継続理由」に関 し,該 当するものに○を付けてもらい,その項 目に関する 詳 しい内容 をインタビューで尋ねた (表2)。なお その中で,○が付けられたもののうちインタビュー の中で特に何度 も強調 されたものを◎,○は付けら れていなかったがインタビューの中で挙げられたも のを△,○も付けられてお らずインタビューの中で

も語 られなかった ものを‑, として表 した。

さらにその結果 を参考 にしなが ら,「介護継続理 由」の具体的内容を把握するために,KJ法 (図 1) を用いて独 自に分類 しなお した。なおその過程にお いて前述のインタビューで触れられなかったものに 関 しては削除 し (⑤宗教的理由,⑨資源の不足), Gubermanら12)の分類にあてはまらないもの (ソー シャル ・サポー ト 資源の充足)は新たに項 目を作 成 し,‑まとめにした方がよいと思われる項 目 (介 護者の精神的背景 :(参義務感,⑲家族の伝統,⑫女 性の社会的 ・経済的な依存,被介護者の状態 :⑦被 介護者が良 くなると信 じている,(釘被介護者の健康) については,分類 しなお した。

またGubermanら12)は抽 出 した14項 目を, 1) 介護者要因, 2)被介護者要因, 3)環境要因の3 つの領域に分類 している。筆者はこれ らの領域分類

を参考にし,新たに作成 した9つの項 目をさらに3 領域 に分類 した。

3)介護により得たもの

伊原 ら14)は6つの概念枠組みか らKJ法を用いて, 在宅介護を継続できている介護者の学びを5つ (今 後の生 き方について考えるようになった,介護の知 識や技術が身に付いた,家族の杵が深 まった,介護 の価値観が変化 した,周囲の人 との関わ りによる心 の成長)結果 として抽出 している。そこで筆者は伊 原14)の抽出された5つの学びに加 え,さらに介護に より得たもの として必要 と思われる2つの項 目 (自 己の理解が深 まった,人間理解が深 まった)を伊原 の概念枠組みか ら選び,計7項 目 (① 自己の理解が 深 まった (参今後の生 き方について考えるようにな った ③人間理解が深まった ④介護の知識や技術 が身に付いた (9家族の杵が深 まった (釘介護の価 値観が変化 した ⑦周囲の人 との関わ りによる心の 成長があった)を,介護により得た ものとして設定

した。

そ して継続理由同様,あてはまる項 目に○を付 け てもらい,その項 目についての詳 しい内容について 述べてもらった。そ して 「介護継続理由」 と同様,

○が付けられたもののうちインタビューの中で特に 何度 も強調 されたものを◎,○は付 けられていなか ったがインタビューの中で挙げ られたものを△,○

も付けられてお らずインタビューの中でも語 られな かったものを‑, として表 した。

当初 これ らの項 目は設定せずに自由に述べてもら う予定だったが,手掛か りとして記載 した方が より スムーズに介護者の意見を引 き出せ るという施設管 理者の助言 より,代表的なものとして挙げた。 よっ てこれ らの項 目に尺度的な意味合いはな く,介護者 の自由な表現 を引 き出すための手段 として用いた。

結 果

1.介護者の介護状況

各事例の介護状況を表1に示 した。

2.介護継続理由

Gubermanら12)が抽出 した 「介護 を引 き受けるこ とを決定 したプロセス」における決定の理由とそれ に関与 した14要因を参考に し,「介護継続理由」 を 尋ねた結果を表2に示 した。全員が挙げたものには (∋愛情 ・家族のきずながあ り,Gを除 く全員が挙げ たものには⑭他か らの助けがあった。 しか し⑤宗教

‑ 143‑

(4)

表1 介護状況

A B C D E F G

被介護者 81 78 74 91 66 92 94

ALS 脳梗塞 .麻痔 脳 出血 .麻痔 脳梗塞 .失語 脳梗塞 一麻痔 大腿骨骨折 慢性関節リウマチ

自 立 度 C2 C1 B2 A 2 C2 B C2

痴 呆 度 Ⅱb Ⅲb Ⅲb Ⅲb

要介護 度 5 5 4 3 5 3 5

介護者 47 78 70 68 62 73 52

被介護者 との続柄 長女 次女

介護年数 3 9 13 16ケ月 6 1 6

な し な し な し な し な し 教 師 会社員

介護 に よる退職 あ り(バイ ト) な し な し な し な し な し な し 介護時 間/日 23‑24H 24H 5H 21‑24H 24H 24H 24H

介護での睡眠中断 あ り(3回) 時 々 (ZHあ りオキ) (2‑ 3あ り回) (1‑2あ りオキ) 時 々 (2‑ 3あ り回)

介護を支えてくれる 3 0 1 3 0 0 2

人数 (続柄)

公的サービス利用:デイケア (義母 ,長男 ,次女) 2(息子)/W (息子 ,義弟 の嫁)義妹 , 3/W 2/W (兄 ,柿)

:ショー トステイ ‑‑ 5/M 1/M

:ヘ ルパー 5/W 4/W 2/W 5/W :訪 問看護 3/W 2/W 1/W 1/W 1回/W 2/W 6/W

表2 継続理由

A B C D E F G

愛情 .家族 の きず な ○ ◎

◎ ○ ○ ○

@ 義務感 △ ○

・ ■

‑・‑○ ・

㊨ 他 に介護者が いない ○ ○ ‑ ‑

‑ ◎ ‑

宗教 的理 由 個 人的理 由

△ ‑ △ ‑

被介護者が良 くなると信 じている ‑ ‑○ ○ ‑‑ ‑

被介護者 の健康

◎ ○ ‑‑ △

資源 の不足 ○ ○ ○

⑲ 家族 の伝統

他者 を助 けたい とい う思 い ○ ‑ ○ ‑‑ ‑

2 A

他 か らの助 けが あった公 的サ ー ビスへ の不信 感 .経 済的 よ依存

○が付 け られ た ものの うち, イ ンタビューの中で特 に 強調 された もの

○ は付 け られ てい なか ったが, イ ンタビューの中で挙 げ られた もの

‑‑○ も付 け られてお らず , イ ンタビューで も語 られ なか った もの

利用 な し ・該 当 な し ‑ , カ ッコ内数倍 は最小 〜最大値

現在 は改善 された

的理由と⑨資源の不足 は,誰 もその理由として挙 げ ていなかった。 これ らの結果 を参考 にしなが ら 「介 護継続理由」 を,独 自にKJ法 を用いて分類 しなお した結果 (図1),,(1)愛情 ・家族の きずな,(2)介護者 の精神的背景,(3)被介護者の状態,(4)ソーシャルサ ポー ト (私的 ・公的),(5)介護者の個人的理 由,(6) 被介護者の反応,(7)他 に介護者がいない,(8)資源の 充足,(9)公的サービスへの不信感の9つの項 目に分 かれた。

これ らの9項 目を, さらに3つの領域 :1)介護 者要囲 :(1)(2)(5)(9),2)被介護者要因 :(3)(6),3) 環境要 因 :(4)(7)(8)に分類 した。各要 因別 にそれぞ れの具体的分類内容 を,以下に示す。

1)介護者要因 (1)(2)(5)(9)

(1)愛情 ・家族の きず な (図 1)では,主介護者 一 被介護者の 「尊重」「親密性」と家族間の 「助け合い」

「一体感」が挙げ られた。Dは,すでに夫が亡 くな

‑ 144‑

(5)

介護継続理 由 と介護 による学 び

(1) 愛 情 ・家 族 の きず な

介 護 者 被 介 護 者 家 族

D .お 互い を 尊 重っ て楽 C.二 人 な ら出 来 な いことも、 孫 や 家 族 が

過 ごして き た い るか ら (出来 る)

尊 重 助 け合 い

D.1 9年 一 緒 で 、友 達 の う に

G

. 家 族 一 緒 に暮 ら さな い と落 ち着 か な い 娘 の よ うに して た親 密 性 一 体感

(2) 介 護 者 の 精 神 的 背 景

B.授 け られ た 仕 事 と思 う A.や は り長 男 の嫁 で す もの ねZ=

B.私 がせ ね ば い け ん とい う気 持 ち B.が (主 人 の ) 親 も看 て き と るか ら

看 る の が 当然 とい う?」 ‑ は い 、 昔 か らで す

同情 恩 義

D. 3ケ月 ご とに病 院 を変 わ る の は か わ い そ う

F .7

0年 間 、 母 が ものす ご く私 の 事 を E.か わ い そ うつ て い う気 持 ち 、 病 院 か ら病 院 して くれ た か ら (介 護 者 は実 娘 )

(3) 被 介 護 者 の 状 態

J

「訂 豪農 詣 管震 晶 を喜 び に感 じて f

(4) ソー シ ャル サ ポ ー ト (私 的 サ ポ ー ト)

A)情 緒 的 サ ポ ー ト

l

: 霊 を ㌫ 雷 撃 く身 内 (莞 誉 n(笠 警 L 息 子 ' F T S慧 雷 富 合 や か な 一 言 l

D.話 を 聞 い て くれ る(自分 の 姉 妹 や 介 護 を して き た 友 人 ) l

B. 介 護 の つ ら さや え ら さ は介 護 して い る人 に しか 分 か らな い と話 す

C.うち解 け て話 を 出 来 る ≡: 霊 誓 空 男 呈 妄 くれ る l

d)周 辺 的 道 具 サ ポ ー ト 寒 害 妄 言孟 紺 F 琶 苦 い こ とは教 え て l

rT 譲 書 誓 書 士 、 あ あす る うす る l

F T専 管 誓 言 重 要 孟 叫

身 内

lB.下 の 世 話 や 散 髪 を して くれ る (娘 ) l

‑ 145‑

(6)

(4)' ソー シ ャル サ ポ ー ト (公 的 サ ポー ト) 訪 問看 護 スT y ヨン

B.困るお風呂なんかを頼んでいる G.このお陰で家で過 ごせ る

′ヽ

郎 燕 詣 詳言£砦駆け‑けて.くれる l D.描 黙 蟻 か の

「 プ 協 二 品妄 言 「

需 10が一番辛いので (助かる) I (5) 介 護 者 の個 人 的 理 由

(6) 被介護者の反応 要 少 まV

A.以前はしょっちゅう呼ばれていたが、 ‑D.(被介護者に)笑顔が出たとき、(好 意 的 反応 疲れが) 今は (症状が進み)かえって楽に すーっと消える

(7) 他に介護者がいない B.私より他は勤めをしている

(8) 資源 の 充足

(9) 公 的 サ ー ビス‑ の不信 感

E.安心 して預けられる施設があれば、即お願いする 図1 介護の継続理由 ったので 自分 に看 る義務 はないのだが,19年間の義

母 との関係性 (尊重 し合い,友達や娘の ように して きた)が良かったので,病院に入れるとい う義弟 ・ 義妹 に任せず介護 を行 っているとい う。

(2)介護者の精神的背景は 「義務感」「同情」「恩義」

とい う3つに分類 した。義務感 には, 日本独特の嫁 が介護 をするとい う 「伝統」 も含 まれていた。 これ についてAは 「やは り長男の嫁です ものね」 と述べ ている。同情 は,D,E2人か ら 「かわいそ う」 と い う言葉で表 された。恩義 は,介護者が実娘であ り 被介護者 (母) に70年 間色 々 して もらった とい うF

の場合でのみ現れた。

(5)介護者の個人的理 由は,介護者 自身の特性 を「身 体」 と 「精神」 に分類 し,精神面 はさらに 「強 さ」

と 「柔軟 さ」 に分類 した。特 に記 していないが, こ れ らには介護が始 まる前か らの もの と,介護 を通 し て介護者が身につけた ものがある。強 さについて,

Bは 「自分で考 え何事 もす る」ようにな り,Cに 「何 とか切 り抜 けようとい う頑張 り」が出て きた と語 る。

また柔軟 さについて

,

Cは介護で くじけそ うになっ た時 「自分が くじけた らお父 さん (被介護者) も困 るんだか ら」 と思い直 した とい う。

‑ 146‑

(7)

介護継続理由 と介護 による学び

(9)公的サービスへの不信感はC,Eによって挙げ られた。Eは質問用紙の 「公的サービスへの不信感」

に○は付けなかったが,インタビューの中では,「病 院が悪いと言 うんじゃないですよ,看護婦 さんも手 が足 りないし」 と前置 きした上で,遠 まわ しに不信 感を表 した。Eの訴えは,以前,被介護者 (夫)が ショー トステイから帰ったときに,それまでなかっ た蒋剣が出来ていたという体験に基づ く。なおCに ついては,「公的サービスへの不信感」 に○が付 け られたが,Eのような具体的な言葉 としては語 られ なかった。

2)被介護者要因 (3)(6)

(3)被介護者の状態は,在宅で介護できる程度に良 好であるという 「現在の健康状態」 と,段々良 くな る様子に喜びに感 じているという 「今後への期待」

に分類 した。後者に関 しては

,D,E

を除いて否定 した介護者がほとん どであった。

(6)被介護者の反応には,「要求が少ない」事 と 「好 意的反応」がある事が挙げられた。前者を挙げたA は,症状が進んで被介護者か ら呼ばれることが少な くな り,自分のペースで介護が出来るため,かえっ て楽になったという。後者を挙げたDの場合は,被 介護者の痴呆が進んでいて余 り笑顔が見 られないの だが,その分笑顔が出た時は疲れが消えるほどだと いつ。

3)環境要因 (4)(7)(8)

(4)ソーシャルサポー トは,兵藤 ら15)がソーシャル サポー トネットワークの研究で用いた独 自の尺度を 使って分類 した。サポー トは私的と公的に分けられ, 私的サポー トはさらに5つ (1.情緒的,2.情報 的,3.直接的道具,4.間接的道具,5.交友的) のサポー トに分けられている。

a)情緒的サポー トは他のサポー トに比べ多様な 人々か ら提供されているが,サポー トの内容は相手 によって異なる。身内 (介護に直接関わ らない)・

近所の人 ・友人か らは,言葉による励 ましがあ り, このうち身内 ・友人か らは,話や愚痴 を聞 く等の援 助 もされている。これが介護をする友人であると, 話を聞 くだけでな く,互いの介護‑の思いを話 し合 った り,打ち解けて話 し合 うといったことが行われ ている。

a)b)情報的サポー トが重なる部分では,介 護をする友人や家族会のメンバーとの交流により, 介護の具体的な知識のや り取 りがされている。家族

会に参加するCは,「同 じように苦 しみを味わって きてるから,何で も打ち解けて心か ら話がで きるん です」 という。

息子が介護を学んでいるDの例では,これ らに加 えC)直接的道具サポー トもされていた。具体的に は,夜間の トイレまでの歩行介助などである。今回 C)は,いずれ も身内によって提供 されてお り,そ の他の人々は関わっていなかった。逆にd)間接的 道具サポー トは友人によってのみ提供 されてお り, 介護に使 う布 を切 った り,食材 を届けるといった援 助が されていた。

e)交友的サポー トは,上記4つのサt,ポー トとは 異な り,介護 とは離れたところで行われていた。(C

の家族会での旅行 を除 く。)内容 としては 「趣味」「里 帰 り」「外出」があ り,特 にDの場合 は 「歌がない

と介護が続けられない くらい」だと言 う。

公的サポー トでは,直接の援助 ・緊急時の対応に 加え,利用時間を介護者の休息や趣味等に当てると いうことが行われていた。上記のe)交友的サポー トで挙げられたAの ドライブでは,外出の間,病院 やヘルパー,ステーションによる援助が行われるこ とで安心 して出掛けられるのだと言 う。同様に

,D

の歌 もヘルパーの利用時間を用いることで可能 とな っている。 また,介護状況の調査でほとんどの介護 者に夜間の睡眠中断があったが,Cはショー トステ イを利用することで陸眠時間を確保で きているとい

う。

(7)他に介護者がいないB,Fは,それぞれ妻 と長 女である。両者 とも,自分 しか介護者がいないとい うことをあまり負担 とは捉えてお らず,当然のこと

表3 得たもの

A B C D E F G Lp が7,第 つた ○ ◎ ○ ○ ‑○

早 今後 の生 き方 につ いて考 える よ

‑○ ‑

@ うになった人間理解が深 まった ○ ○ ◎ ○

㊨ 介護の知識や技術が身に付いた

◎ ○

◎ ○

家族の秤が深 まった ◎ ◎

◎ ○ ‑

@ 介護の価値観が変化 した ○ ‑○ ○ ○ ・‑ ‑

㌢ 周 囲の人 との関わ りに よる ここ◎ ㊨ ◎ ◎ ○

○ を付 け られた ものの うち,イ ンタビューの中で特 に 強調 された もの

‑○

は付 け られたが,インタビューの中で特 に強調 され なかった もの

‑‑

○ も付 け られてお らず,インタビューで も語 られなか った もの

‑ 147‑

(8)

(1) 家 族 の粋 の深 ま り

主介護 者 F に粋 が 竺 まれ た家族 L

至轍 モ U P.要 言 髪と、るか ら

l

恕 呈 岩 ;、うと ころで は

L

r{ 読 判 的 だ った娘 が今 は味 可

誓ぞ 克 La,of,やん の所 に来 て

I

F TT*雲 書 琴 が い ざ とい うとき に は助 け て

E

P

二宮 照 苧 寛 讐 ㌣.:.T くれ る l F fT=6.被 介 護 者夫 婦 二 人 の 関 わ りが l

(2) 内省 ・認 識 の 変化

介護 態 度 ‑ の反 省

C.つ い カ ツ とな る こ ともあ る け ど、後で 自分 を 責 め た反 省す るo

E. (当 た る こ と もあ るo体調 が 悪 い と)平 常 心 で い られず

F

FT 曇 章票 叛価 値観 の変 化 意 ぞ 準 吾嘉 撃 苛 真 一を押す F (3) 介 護 技術 ・知 識 の会 得

等 に関 す る知 識

. いん な施 設 ・看婦 さん 患 者さん見 て 、 いい勉 強 にっ た

プ 護 I、 知 識

B.自分 で考 え てす る よ うに した ら次第 に F 丁 郵 =T可 慣 れ て き た

F.生 活 の知 恵 じゃ ない け ど、 こ うや つ た 方 が いい とい うの が わか っ て き た

(4) 周 囲 の人 との 関係 性 の深 ま り D.B.お 許 を聞 い た りこち らにい い事 は教 え て あ げ た り人 の 出 来 な い こ とを して 自分の勉 強 に な り、知 っ て い る事を話 す こ とで み ん な の勉 強 にもな る介 護 をす る友 人 と 介護 者 が癒 され る機 会

B.介護 した人 で ない と この え ら さは分 か らな い(近所 で介 護 をす る人 ) C.同 じよ うな立 場 だ と心 か ら話 が で き る(家 族 会 )

A .

ほ ん の さ さや か な‑ 言 が嬉 しい共感 (近 所 .身 内 の人 )

励 ま し

C.健 康 な とき に は分 か らなか っ た人様 の助 け .

温 か い志 に な って介 護 を 支 え る

C.ボ ラ ンテ ィア の方 の助 け もあ り、個 人 で は チー ム ワー クの形 成 〜......... 行 け ない ところ‑旅 行 で き る

援 助 援 助

図2 介護によって得 られたもの

‑ 148‑

(9)

介護継続理由 と介護 による学び

として受け止めている様子が見 られた。

(8)資源の充足では,「公的資源」として介護保険が,

「私的資源」 として家の改築が挙げられた。 Cは, 介護保険が出来て,特に費用の面で助かっていると いう。また,先々と家の改築をしているというDは, 手摺 りのお陰で夜寝 られるようになった し,義母の 為になることは,いずれは自分の為 にもなることだ か ら行っているという。

3.介護により得たもの

質問紙の結果を表3に示 した。全員が選んだもの として④介護の知識や技術が身に付いたがある。ま た,ほとんどの介護者が選んだものとして⑤家族の 杵が深 まったがある。 しか し,ここで最 も特徴的な のは,嫁介護者であるA,Dのみが全ての項 目○を 付けていることであ り,このようなことは妻や娘で ある介護者にはみ られない。

インタビューの結果 をKJ法 (図2)で分類 し, 下記の4つの項 目に分類 した。(1)家族の杵の深 まり, (2)内省 ・認識の変化,(3)介護技術 ・知識の会得,(4) 周囲の人 との関係性の深 まり

考 察

1.介護継続理由

質問紙 とイ ンタビュー よ り,Gubermanら12)

「介護を引 き受けることを決定 したプロセス」を通 じた決定の理由とそれに関与 した要因を参考にし, 本調査か ら介護に関する文化的背景を考察する。

(1)愛情 ・家族のきずな

表2において,①の愛情 と家族のきずなは全介護 者で挙げられた。家族の持つ機能について鈴木16)は,

「家族は本来,互いに助け合 うことによって家族 と しての安定を保 とうとする性質を持っているのであ る。 しか し,そのような家族の一体感は,普段 は余 り意識されていないことが多 く,いったん何か家族 の存続を脅かす ようなことが起こって初めて家族の 大切 さが意識 されることも多い ものである。」 と述 べている。在宅介護 という家族にとっての一大事が, 家族のきずなを再確認する機会 となったのではない だろうか。 また主介護者 一被介護者間のみに注 目す ると,そういった今 までの粋があるか らこそ,様々 な困難にも関わらず 「介護 しよう」 と思えるのでは ないか。

(2)介護者の精神的背景

家父長制度に基づ く性別役割規範が影響 を与えて いるもの として,②義務感,⑲家族の伝統,⑫女性 の社会的 ・経済的な依存 を,一つの項 目にまとめた。

つまり 「介護労働 は女性が行 うもの」 といった規範 である。今回のインタビューの中で,介護 を 「長男 の妻だか ら」「授 けられた仕事」 と言 っているA, Bには悲憤感は見 られず,む しろ淡々と自分の役割 を受け止めているように感 じた。熊沢17)によると, 息子の妻の立場で介護 を担っている人たちには 「何 の葛藤 もな く介護 を自己同一視 し,一体化 して受容 している人」「嫁 という役割を否定 し,或いは義理 ・ 義務 と考え,介護における困難や葛藤がある状態に ある人」の2通 りがあるという。前者は性別役割規 範を疑問な く受け入れている人々である。「嫁」を「女 性」に置 き換 えると,A,Bは, どちらか というと 前者寄 りであろう。 自己同一視 という部分が疑問で あるが,少な くとも介護者役割を否定 してはいない。

このことが介護を続けるのにプラスに働いているよ うである。

この項 目の中には,上記の他に 「同情」と 「恩義」

が挙げ られた。「同情」 は,(1)の愛情 によって生 ま れる感情 と考えられる。 また 「恩義」は,Fが実娘 であるため自然に挙げられたのだろう。恩義が愛情 と一緒になって介護 を決心 させるが,長期になると 愛情が絶望 とな り介護の終わ りを望むようになる12)

という報告 もあ り,そ ういった意味で,今回全員の 介護者が(1)愛情 ・家族のきずなを選択 したのは救い であるが,恩義か ら介護 を行 うというFの 「(母が) 私 しか見ないか ら窮屈なところもあ りました‑私に 頼 りす ぎて迷惑なことも」 と言 う言葉を聞 くと,こ れらの感情のネガティブな一面 を考えさせ られる。

(3)被介護者の状態

⑦被介護者が良 くなると信 じている,に関 してイ ンタビューでは,多 くの介護者か ら 「良 くなるとい うことはない と思います」 といった言葉が聞かれ,

⑧被介護者の健康に関 しては 「今の状態であれば家 で看 られる」 という介護者の思いが挙げられた。 こ の言葉の裏には 「これ以上悪化 した ら家では看 られ ない」という思い もあると考えられる。「(在宅 より) 施設を選ぶ決心は,主に被介護者の健康の悪化によ る」 とされ,在宅介護 をやめる理由として重要なも のとされる。現在在宅介護 を継続 している介護者の 中にも,「これ以上悪化 した ら・・・」 という不安 を抱 えなが ら行っている人は多いのではないか。これら

‑ 149‑

(10)

のことか ら,⑧被介護者の健康は,介護継続にネガ ティブな影響 を与 える要因 として も重要であるとい える。

(4) ソーシャルサポー ト (私的サポー ト)

この項 目は,兵藤 ら15)の分類でい うと直接的道具 サポー トになる。 また,介護の責任 を分散 している という点では,情緒的サポー トとも考えられる。後 者では,同居することは自分たちのライフスタイル や価値観 と相容れず,精神的に束縛 されるため,別 居 とい う形で介護 を続けるという例が挙げ られた。

欧米では高齢者が子供 と同居する割合が低 く,介護 を望む相手 としては 「配偶者」が一番に挙がる (春 日)18)。子供が同居せず に親の介護 をす ることはそ れほど特異ではな く,同居家族が中心 になって行 う もの とい うイメージが強い 日本の介護 とは異なる側 面を持つ。同居 しないこと自体が援助 とは考えに く いが,介護か ら離れて, 自分の時間を持 った り気分 転換で きるとい う点では,交友的サポー トに似た働

きを持つ。

今回の調査では私的サポー トについて,多様 な回 答が見 られた。 a)情緒的サポー トは同居家族 を除

く多様 な人々により提供 されているが,その内容は, 相手が介護 をしているか (したことがあるか) どう かで差異がみ られる。介護 をしていない人々か らは

「言葉かけ」や 「話 を聞 く」 といった援助 を受けて いるのに対 し,介護 をしている人 とは 「打 ち解けて」

話 をす るなど互いに援助 し合 っている様子が見 られ る。インタビューの中で 「介護 している人にしか分 か らない」 とい う言葉 を何度 も聞いたが,同 じよう な経験 をもつ相手だか らこそ安心 して話がで き,ま た共感 し合 えるのだろう。特 に患者会の場合は,同 じ病気の家族 を介護する人同士なので,分か り合 え る部分が多い と考えられる。

b)情報的サポー トでは,介護 をする上での工夫 や体験談,利用 した施設やサービスを教え合 うとい うことが されているようだ。心情的なことも含め, 体験 したか ら分かるという内容がや りとりされてい る。一方,専 門的な知識や介護全体 をみた捷案は公 的サポー トか ら提供 されるようである。 C)直接的 道具サポー トは,B,Dどち らの場合 も家族 (娘, 息子)か ら提供 されている。兵藤 らの研究で,直接 的道具サポー ト提供者の9割が家族であるとい う結 果が出てお り,それ と一致する。一方, d)周辺的 道具サポー トでは,子供や配偶者が介護 をしている 場合 に,サポー ト提供者 として友人がある程度挙げ

られた という。今回

,E

(秦)が友人か らの援助 を あげたのがこれに当たる。 C)直接的道具サポー ト が家族か ら提供 されることが多い点 に関 して,次の ような記述が見 られる。「介護労働 では,言語 によ るコミュニケーシ ョンより,ち ょっとした身体表情 で心 を汲み,要求を聞 き分ける練達が要求 される。

それは外か らぼっときた親戚 などが習熟で きるもの ではない」 (春 日)18)この ように介護がある種 の能 力 を必要 とするのに加 え,Aのように吸引などの医 療行為 を伴 う場合 は,法的にも家族 と専門家以外が 行 うことを禁止 されている。 また介護 を手伝 って も らうとなると必然的に家の中のことまで知 られるた め,家族以外 を受け入れることに抵抗感を感 じるの か もしれない。 これがd)周辺的道具サポー トであ ると,介護の内側 まで見せない分,友人などの家族 以外か らのサポー トを受け入れやすいのではないか

と考 えられる。

e)交友的サポー トは,誰かによって提供 される とい うより介護者 自らが進んで行 うものが多い。そ してそれ らはしば しば,デイサービスやシ ョー トス テイ,ヘルパーなどの利用時間を用いて行われてい る。土井 ・緒方19)の研究では,これ らレスピッ ト (小 休止)的種類の介護サービスが,在宅での 日常生活 介助支援 といった内容の介護サービス より比較的良 く利用 されていた とい う。一 日の介護時間が約24時 間であると答 えた介護者 らにとって, 自分の 日常が 介護 に占め られているとい う思いは強い と考えられ る。労働 と休息の区別が明確でない介護では,介護 か ら開放 された自分の時間を持つためには意識的に 時間を 「作 る」 しかない。医療 .福祉 を必要 とす る 療養者 にとっては もちろん,介護者 に休息時間を提 供で きるもの として,公的サポー トの働 きは大 きい。

(5)介護者の個人的理由

⑥個人的理由では,「仕事 を持 たない」等の介護 状況 よりも,身体の健康 ・精神面など個人的資質に ついて語 られた。緒方 ら20)は,「主介護者の介護環 境その ものではな く,介護環境か らの刺激に対する 介護者 の認識が介護負担感 の高低 に関連す る可能 性」 を述べているが, この 「認識」が,今回の研究 で現れた身体的健康や,精神的強 さ ・柔軟 さに当た るのではないだろうか。

(6)被介護者の反応

新 たに設けた項 目であ り,「要求が少 ない」 に関 してAは,被介護者の症状 (ALS)が進 んだに も

‑ 150‑

(11)

介護継続理由 と介護 による学び

拘わ らず介護はかえって楽になったと言 う。一般に, 被介護者のADLの低下は介護量 を増 し負担度 を高 めるとされる。 しか し,Aの場合は介護開始当初か ら常時介護を必要 としてお り,介護量が変わ らない まま被介護者の要求が減ったため 「楽になった」 と 感 じたのであろう。 日々の家事 を行いなが ら介護 を 行 う者にとって, 自分のペースで介護 を行えること は負担感 を軽減する と考 え られる。「好意的反応」

に関 しては,斎藤 ら8)に よる研究で,「介護継続意 向が高い群のほうが,介護に対する楽 しみや喜びを 感 じると回答 した対象やその程度が高 く,介護満足 感 も高い」 という結果が出ている。介護者本人に関 する喜びや楽 しみ とは 「要介護者が喜んでいるのを 見た とき」等であ り

,D

の体験 もこれに当てはまる。

また,Dの介護意欲 は7人中最 も高値であったが, 被介護者の 「好意的反応」がDの意欲 を高めている 可能性が考えられる。

(7)他に介護者がいない

④他に介護者がいないは,A,B,Fの3名が挙 げた項 目である。 しか しその内容 をみると,A,B とFとは少 し異なる。F (実母 を看 る)の場合は, 自分の父親や姉妹がお らず,実質的に他の介護者が いない状況である。対 してA (男)B (夫)の場合 は,他に介護で きる家族がいないことはないが,秦 族で最 も介護 をすべ きなのは自分であるとい う思い が 「他の介護者がいない」状況を作 り出 し,それを 感 じているのではないか と考えられる。A,Bはイ ンタビューの中で も義務感や伝統 について語ってお り,恩義 を語 るFとは異なる精神的背景 を持つ事が 分かる。

(8)資源の充足

この項 目も今回新たに設けた ものである。今回の 調査で資源の不足 を挙げた人がいないのは,全員が 訪問看護ステーシ ョンの利用者であ り,利用 したい 資源の情報 を手に入れやすい状況にあるため と考え

られる。

今回,資源 として挙げ られたのは

,

Cの 「介護保 険」 と,Dの 「家の改築」である。介護保険は,要 介護度によってはそれまで より自己負担金額が増え ることもあるが (野村 ら)1),要介護度4であるC の場合は経済的に助かっているとい う。Cは介護年 数が13年 と7人中最 も長 く,介護保険がない時期 を 長かったため,それ と比べ ると 「楽 になった」 と感

じているのではないだろうか。

(9)公的サービスへの不信感

⑬公的サービスへの不信感に関 しては,施設介護 が必要 とな りベ ッ ドに空 きがあって も

,E

のように 施設への不信感がある場合,す ぐに移 ることがで き ず,不本意なが ら在宅介護 を継続することになって いる。Eの負担感が高値であるのは,この施設への 不信感が大 きく関わっていると考え られる。

(10) その他

③被介護者か らの希望は,質問紙 には○が付 け ら れたが,インタビューでは特 に現れなかった項 目で ある。○を付けた3名に訊ねて も,詳 しい ことは覚 えていない様子であった。C,D,Eとも被介護者 の主症状は脳出血 ・脳梗塞であ り,急 な発症でゆっ

くりと希望を伝 える暇がなかったことが考 え られる。

日本には無言の うちに気持ちを汲み合 うとい う習 慣がある。「〜 してほ しい」 といった言葉 を介す る ことな く,一方の気持ちを他方が汲み取 って行動す る とい うことは, (特 に夫婦では) 日常的に行 われ ていることであろう。介護に際 して,介護者に希望 や願望 を述べ るのは,照れや見栄 もあ りされに くい と思われる。 また,介護者 よりも年代が上である被 介護者では,介護 を女性がするのは当然 という意識 が深 く浸透 していると考 えられ,はっきりと言葉に 表 されなかったのではないだろうか。

⑤宗教的理由は, どの介護者 も挙 げなかった項 目 の一つである。 これは日本の無宗教的な背景による もの と考えられる。何 らかの宗派に属 していても, その教 えにより行動変容 を促 されるほ どの影響 を受 けていない人が大部分であろう。そ う考えると,こ の回答は妥当 と考 えられる。

⑪他者 を助けたい という思いは,質問紙で○が付 け られたが,詳 しく語 られることはなかった。 日本 で生 きがい という概念 を用いて介護者の研究 を行っ た山本13)は, 日本の介護者が,介護 を行いなが ら生 きがいを保持する方法 を7種類 に分類 した。その中 で,介護その ものを生 きがい とす るのは 「介護が生 きがい」 と 「家族 (の調和 と健康の保持)が生 きが い」の2つである。今回のインタビューでは 「介護」

や 「家族」が生 きがいであると言 う介護者 はいなか った。 これについては質問で 「生 きがい」 という言 葉 を用いなかったことも影響すると考えられ,介護 者が介護に生 きがいを感 じているか どうかは今回の 調査か らは分か らない。 しか し,介護 と自分の した いことのバ ランスをとることによって,結果 として 介護が継続で きている 「生 きがい としてのバ ランス

‑ 151‑

(12)

維持」を行っていると考えられる例はい くつかある。

公的サービスを用いなが ら介護 と趣味などを両立さ せているA,C,Dなどがこれに当た り,他人のた めの生活 と自分のための生活の両方を大切なものと して,両者のバランスを取 りなが ら生 きがいを保持 している。

3.介護により得たもの

‑介護継続理由との関わ り一

全介護者が介護か ら何 らかの得たものがあると答 え,その内容には2.介護継続理由と重なる部分 も あった。

(1)家族の杵の深 まりは,全 く同じ要因として継続 理由にも挙げられた。「家族の存続 を脅かす ことが 起 こって初 めて家族 の大切 さが意識 される」 (鈴 木)16)と言われるように,介護が始 まってか ら家族 の杵が深 まった と意識 されるケースは多い。この際 家族が同居か別居で関わ り方が異なる点は,ソーシ

ャルサポー トの考察で述べた通 りである

家族の杵について,介護により最 も変化が現れた のはCであろう。それまでの仕事 を中心 とする生活 か ら夫婦 を中心にした生活に変わ り,今は二人で家 族会の旅行などにも参加 している。 Cは,(2)内省 ・ 認識の変化においても 「価値観の変化」 として,介 護を受容する自分 ・今 までのように人に頼 らない自 分を発見 している。また(4)周囲の人 との関係性の深

まりでは,家族会のメンバー ・ボランティアと 「共 感」「援助」 といった関わ りをもってお り,夫婦 を 中心にさまざまな人々と交流 している様子が うかが える。13年 という長い介護期間の中で,夫婦の杵や 価値観の変化 と共に,こういった関係性 を広げてい ったことが,自分な りの介護の確立や介護継続 を支 えたのではないだろうか。

(2)内省 ・認識の変化では,上記のほか,妻による

「介護態度への反省」が挙げられた。高齢の配偶者 が介護者 となっている場合,嫁や娘など下の世代の 場合 よりも,家族や親族内で交代 して くれる介護者 が得 られに くいという調査結果がある。今回の介護 者である

B,C,E

の場合 も

,C

は休 日のみ息子の 援助があるがほとんど一人介護 してお り,ほかの2 人は副介護者がいなかった。被介護者 との閉塞 され た介護環境の中で,「ついかっとなった り」,「当たる」

ということが,副介護者のいるほかの介護者 より起 きやすいのではないか。 しか しその後 「自分を責め た り反省」 し, 自分の行動,心情を見つめなおす と いう行為 (内省)がされたことが,介護者 らの 「自

分への理解が深 まった」 という評価 につながるのだ ろう。

また 「自分の将来像の模索」を行 うDは,家の改 築 も 「自分の為にもなるか ら」 と行ってお り,現在 の介護体験 を元に,自分が介護 される時のことも考 えているようである。介護場面で不快 に思ったこと, うれ しかったことを自分の老後の在 り方に生か した いという思いも表 され,介護をただの 「負担」では ない, 自分にとって価値ある経験 と位置づける態度 がみ られた。

(3)介護技術 ・知識の会得 と(4)周囲の人 との関係性 の深 まりには,前出のソーシャルネットワークと重 なる点が多い。「介護者が癒 される機会」は情緒的 サポー ト・交友的サポー トと,「相互成長」 は情報 的サポー トと,「チームワークの形成」は公的サポー トとそれぞれ似た内容 をもつ。各サポー トの詳細は ソーシャルサポー トの項 目で述べた。

このように, どの介護者 も介護か ら 「得たもの」

があると感 じていたが,質問紙の7項 目全てに○ を 付けたのは,嫁介護者であるA,Dのみであった。

A,Dは介護意欲の得点 も高めであ り,従来の研究 でいわれる嫁介護者像 とは異なる特徴 を持つ。 よっ てこの質問紙結果 も偶然 とは考え難い。A,Dが従 来 と異なる嫁介護者 とな り得た背景には,これまで の考察 より,被介護者 との関係性,被介護者の反応, 副介護者がいること,様々なサポー トを受けている

こと,介護 と自分の生活のバ ランス保持が出来てい る等が挙げられる。ここではそれ らの要因に加え, 介護が自分の人生にとって 「得るもの」の多い価値 ある経験 と位置づけられていることが考えられる。

介護場面では,介護者の 「なぜ私が介護をしなけ ればならないのか」 といった自問が されがちである。

自分が介護を行 うことの動機付けが出来ないとき, 介護者は介護を続けることに疑問を覚えるだろう。

被介護者 と血縁関係 を持たない嫁の場合 には,こう いった動機付けが他の続柄の介護者 よりもされに く いと思われる。 しか し,今回のA,Dのように,介 護 を価値ある経験であると認識出来た場合 には, 種々の困難を感 じてもそれ らを前向 きに捉 え,介護

を継続 していけるのではないだろうか。

今 後 の 課 題

在宅介護者の介護継続理由と介護 より得た ものか ら,介護者の特徴 と共 に,「介護継続理由」 と 「介 護 より得たもの」の関連性や介護者への影響 を知る ことができた。 しか し,この調査はある時点での介

‑ 152‑

参照

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