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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2022

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氏 名 片山 鮎子 授 与 し た 学 位 博 士

専 攻 分 野 の 名 称 文 学

学 位 授 与 番 号 博甲第6672号 学 位 授 与 の 日 付 2022年3月25日

学 位 授 与 の 要 件 社会文化科学研究科 社会文化学専攻

(学位規則4条第1項該当)

学 位 論 文 題 目 中世論語抄物における原因理由表現の研究 学位論文審査委員 教授 江口 泰生 教授 田仲 洋己 准教授 京 健治 准教授 橘 英範

学位論文内容の要旨

学位申請者片山鮎子『中世論語抄物における原因理由表現の研究』は中世期に編纂された論語の 抄物(論語講義の手控え、講義筆録の類)を対象として、原因理由を表す形式を調査し、形式ごと の特徴、使い分けなどについて明らかにしたものである。

A4版で1行37字、30行、184ページ。章立ては序論、本論、結論の3部構成で、本論は 4章からなり、最後に参考文献を付す。論文の構成は以下のとおり。

序論 本論

第1章 中世末期における『論語』写本の一形態について 第2章 ユヱとユヱニの特徴と歴史的変化

第3章 清原宣賢撰『論語聴塵』における原因理由表現 第4章 笑雲清三編宮内庁書陵部蔵本における原因理由表現 結論

参考文献

まず序論で、『論語』の系統と受容に関する先行研究、特に『論語』諸本の歴史、注釈書の歴史に ついて概観した。次に調査対象として、博士家清原宣賢撰『論語聴塵』と五山僧の笑雲清三の講義 録である宮内庁書陵部蔵本に定め、その理由について述べる。1500年代前半に成立したものに 条件を揃え、そのうえで博士家と五山僧という異なる学派の資料を調査することで、現れる形式や 位相面を明らかにしようとする目的が述べられた。さらに日本語の原因理由を表す形式、已然形+

バ、ホドニ、ニヨッテ、ユヱ・ユヱニ、ヲモッテという諸形式についての先行研究を概観した。こ

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れらの形式に前接する前件と文末、後接する後件と文末に現れる表現を調査・分類することによっ て、形式間の相違を明らかにするという目的が明確にされた。原因理由表現に着目する理由は先行 研究の蓄積があり、比較対照しやすいという点である。

第1章は片山2014「中世末期における『論語』写本の一形態 ―阪本龍門文庫蔵『魯論抜書』―」

(『岡大国文論稿』42号)に基づいて構成されている。『論語』が日本の知識層の中でどれほど広く 受容されていたか、また、どのような系統のテキストや訓読文で読まれていたか、この資料の言葉 の特徴を論じた。当該資料は『論語義疏』に基づいていること、訓点から読みは博士家をベースと しつつも他系統の訓点も混じること、音便はカ行がイ音便化しているのに対しサ行が原形を保って いること、マ行に促音便・撥音便の両方が現れていること、四つ仮名は著しく混同しているが開合 は全体としてよく守られていること、などを明らかにした。これらの点を総合すると、『魯論抜書』

は当時の新興階層である東国の地方武士により編纂された金言集ではないかと結論づけた。

第2章は片山 2015「ユヱとユヱニ」(『岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要』40)に基づい て構成されている。原因理由を表す形式のうち、ユヱとユヱニの用法の違いと歴史的変化について 論じた。ユヱとユヱニは先行研究において特に差異はないものとされてきたが、それに対して以下 のように論述する。ユヱは上代では「ただこの人のゆへにて」「そのゆへも~」の形で名詞的用法を 持つ。このユヱの名詞的用法は1600年代以降に消える。原因理由を表すユヱは上代と中古では 前件と後件で同一主語をとり、状態性の事態を繋ぐ。これに対してユヱニは同一主語をとるが、前 件が動作、後件が状態の事態を繋ぐ。ユヱが名詞的意味を残し、ユヱニが接続助詞としての用法を もつのである。中世になるとユヱに動作性の事態を繋ぐ例が現れる。用法が変化し、ユヱが接続助 詞としての用法を獲得する。ユヱが接続できる表現を拡大するのに対し、ユヱニは用例が減り、や がてユヱに吸収される形で使用されなくなっていくという史的過程を明らかにした。

第3章は2016年7月31日「清原宣賢『論語聴塵』における原因理由表現」(岡山大学言語国語 国文学会)の口頭発表に基づいて構成されている。清原宣賢撰『論語聴塵』に現れるユヱ・ヲモッ テ・ニヨリテ・ニヨリ・ニヨッテ・ユヱニ・已然形+バ・ホドニについて考察した。明経博士家の 清原宣賢によって作成された1500年代前半の成立と考えられるナリ体の資料である。前件文末 と後件文末に現れる表現を分類した結果、前件の階層からみると、『論語聴塵』に使用される形式は 大別して2種類に分かれる。「動作」「事態」を承けるユヱ・ヲモッテ・ニヨリ・ニヨリテと、話者 の「判断」まで承けるニヨッテ・ユヱニ・已然形+バ・ホドニである。後件の事態を階層の観点か らみると、「動作」「事態」まで現れるユヱ・ニヨリ・ニヨリテ・ニヨッテ・ユヱニと、聞き手へ働 きかける「伝達」まで現れるヲモッテ・已然形+バ・ホドニで分かれている。

第4章では片山2013修士論文「笑雲清三編『論語抄』における因由形式について」(修士論文)

と、それを大幅に改稿した片山2022「宮内庁書陵部蔵『論語抄』の原因理由を表す接続形式につい て―ヲモッテ・ニヨリ・ニヨッテ・已然形+バ・ホドニ―」(『岡大国文論稿』50号)に基づいて構 成されている。調査対象は笑雲清三編宮内庁書陵部蔵『論語抄』である。五山僧の笑雲清三によっ て作成された1514年の奥書があるゾ体の資料である。当該資料に現れるヲモッテ・ニヨリ・ニ ヨッテ・已然形+バ・ホドニについて考察した。前件文末に現れる表現を分類した結果、ヲモッテ・

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ニヨリ・ニヨッテは「動作」まで承けるが、已然形+バは「事態」まで、ホドニは「判断」まで承 ける。後件文末の表現を分類すると、ヲモッテは「動作」、ニヨリ・ニヨッテは「事態」、已然形+

バは「判断」、ホドニは「伝達」が現れていることを明らかにした。

結論では全体を纏め、今後の展望を述べ、末尾に「参考文献」を付している。

学位論文審査結果の要旨

学位論文の審査会は2月4日(金曜)6時よりオンラインにて開催された。オンライン開催となっ たのは次の事情による。沖縄県にまん延防止重点措置が適用されたため、申請者の勤務校(沖縄高 専)より学位審査会のリモートでの実施の検討依頼書が提出された。研究科長名で条件を満たせば オンラインによる論文審査会の設置が申請できることが認められ、申請書によって条件をクリアし ているためオンラインによる審査会が許可されたためである。

審査会では最初に履歴、業績の確認を行った。履歴において在籍年数が規定内であることが確認 された。業績については、論文4本(うち査読3本)、学会発表6本(うち全国学会2本、海外での 研究会1本)を元に論文が構成されていることを確認し、博士論文の規定を十分に満たしているこ とを確認した。

オンラインの利点を生かして、論文の概要について画面共有を利用してプレゼンテーションして もらった。本論文の目的と考察、導き出された結論が明確に示された。

次に各委員から質疑応答を行った。この論文の優れた点は次のとおりである。申請者は『論語』

などの漢籍を読むことに長じており、抄物によって非常に理解しやすくなると言う。これは抄物研 究にとって非常に有利な点である。また大学時代に抄物研究の権威柳田征司氏に指導を受けている。

これも研究力の養成においては恵まれた環境であったと言える。

論語の抄物は坂詰力治1987『論語抄の国語学的研究』などの先行研究はあるが、研究されていな い写本が大量に存在する。申請者は『魯論抜書』『論語聴塵』など、従来、未調査の写本を対象とし ており、これはこの論文の長所でもある。

また写本から目視によって用例を一つ一つ採取し、それを分類整理し、一定の結論を導き出して いる。非常に忍耐強く、丁寧な作業を行っていることは一目瞭然で、その労力は高く評価できる。

博士家と五山僧の訓法の相違を指摘している点、ユエとユエニで意味・用法に違いがあるらしい こと、已然形+バ、ホドニ、ニヨリテ、ユエ(ニ)などについて、出現条件の相違を明確に指摘し ている点など、その主張はおおむね首肯できる。

一方、問題点も指摘された。誤字・脱字が散見される。また先行研究を広く見渡して調査してい るが、必ずしも要点を押さえていないところがある。たとえば竹内義雄1939『論語の研究』(岩波 書店)を参照するのは良いが、その後の研究の進展を押さえておく必要があった。条件表現につい ても多くの論文を引用・参照するが、最新の知見が生かされていないところがある。参照すればむ しろ自説の補強になったと思われ、惜しまれる。また本論第1章が資料論となっていて、論文全体 からすると論点がずれているようにみえる。

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丁寧な調査によって、已然形+バ、ホドニ、ニヨッテなどが、どのように出現するかという分布 の相違が示されており、そのこと自体は説得的であるが、それらの相違が出現する背景・理由につ いてもっと深い掘り下げが必要であったと思われる。それらの分布の違いがただ単に語彙的な意味 の違いによってもたらされるものなのか、それとも古代語の助動詞体系から近代語の助動詞体系へ と変化したために生ずる現象なのかなど、問題を掘り下げて申請者なりの考察を進めてほしかった。

海外での勤務や沖縄高専の業務との兼ね合いもあるだろうが、全体的に最新の研究動向に力が及ば なかった点があり、これは惜しまれる。

このような問題点もあるが、未調査の資料に挑み、忍耐づよく、丁寧な調査を積み重ね、原因・

理由表現の語形について各々の相違を導き出している点、多大な労力が払われている。内容に関し ても一定の首肯できる結論に到達しており、高く評価することができる。

以上の点より本論文は博士(文学)の学位に値すると全員一致で認めた。

参照

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