平 成
29 年 度
経 済 学 部 地 域 経 済 研 究 セ ン タ ー
学 生 チ ャ レ ン ジ 地 域 連 携
プ ロ ジ ェ ク ト 研 究 助 成
最 終 報 告 書
佐 賀 大 学 経 済 学 部
野 方 ゼ ミ ナ ー ル
2018 年 2 月 24 日
1 経 済 学 部 地 域 経 済 研 究 セ ン タ ー 学 生 チ ャ レ ン ジ 地 域 連 携 プ ロ ジ ェ ク ト 研 究 助 成 最 終 報 告 書 2018 年 2 月 24 日 佐 賀 大 学 経 済 学 部 経 営 学 科 研 究 代 表 者 氏 名 小 原 大 輝 Ⅰ 研 究 課 題 名 佐 賀 県 の 宿 泊 施 設 は 外 国 人 旅 行 者 を ど の よ う に 受 け 入 れ て い る の か ? - 嬉 野 市 と 唐 津 市 に お け る ホ テ ル ・ 旅 館 へ の ア ン ケ ー ト 調 査 に よ る 分 析 - Ⅱ 調 査 ・ 研 究 従 事 者 学 籍 番 号 氏 名 分 担 安 東 美 咲 連 絡 調 整 担 当 小 原 大 輝 総 括 桑 迫 舞 美 分 析 担 当 興 膳 司 分 析 担 当 澤 原 静 香 連 絡 調 整 担 当 関 尚 輝 連 絡 調 整 担 当 津 上 慎 太 郎 分 析 担 当 松 永 優 菜 報 告 書 執 筆 担 当 三 角 菜 々 報 告 書 執 筆 担 当 森 麻 央 報 告 書 執 筆 担 当 調 査 ・ 研 究 従 事 者 数 10 名
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Ⅲ. 研 究 報 告
1. はじめに
近 年 、 格 安 航 空 会 社(LCC:Low Cost Career)の 就 航 や 国 際 線 便 数 の 増 加 な ど 航 空 イ ン フ ラ 整 備 に よ り 、 訪 日 外 国 人 旅 行 者 が 増 加 し て い る 。 ま た 、2020 年 に 開 催 さ れ る 東 京 オ リ ン ピ ッ ク に 伴 い 訪 日 外 国 人 旅 行 者 の さ ら な る 増 加 が 予 測 さ れ る 。 こ の 増 加 傾 向 は 都 市 部 の み な ら ず 、地 方 に位 置 する佐 賀 県 に も 該 当 す る 。実 際 に 、佐 賀 県 が ヨ ッ ト の 世 界 大 会 や 熱 気 球 世 界 選 手 権 の 会 場 と な っ た 際 に は 、 外 国 人 旅 行 者 が 多 く 訪 れ た 。 さ ら に 、 佐 賀 空 港 に は 、 韓 国 の テ ィ ー ウ ェ イ 航 空 や 中 国 の 春 秋 航 空 な ど の 東 ア ジ ア 地 域 と 佐 賀 県 を 結 ぶ 国 際 線 LCC の 定 期 便 が 設 け ら れ て お り 、佐 賀 県 を 訪 れ る た め の イ ン フ ラ 整 備 が 進 ん で い る 。 こ れ に よ り 、 以 前 と 比 較 し て よ り 多 く の 外 国 人 旅 行 者 の 訪 日 が 可 能 と な る 。 訪 日 外 国 人 旅 行 者 の 多 く は 、 中 国 や 韓 国 を は じ め と し た 顕 著 な 経 済 成 長 が 見 ら れ る ア ジ ア 諸 国 の 人 々 で あ り 、 彼 ら の 所 得 水 準 の 向 上 は 、 今 後 の イ ン バ ウ ン ド 需 要 の さ ら な る 増 加 を も た ら す 一 因 と な り 得 る 。 こ の よ う な イ ン バ ウ ン ド 需 要 を 上 手 く 利 用 し 取 り 込 む こ と は 、 佐 賀 県 の 経 済 成 長 に 必 要 不 可 欠 で あ る 。 し か し 、 佐 賀 県 の 周 囲 に は 福 岡 県 や 長 崎 県 な ど の 観 光 資 源 が 豊 富 な 地 域 が 存 在 す る こ と や 、 日 本 と 韓 国 を 行 き 来 す る 際 、 福 岡 空 港‐韓 国 よ り も 佐 賀 空 港 ‐韓 国 の 方 が 安 い チ ケ ッ ト が 存 在 す る こ と か ら 、 佐 賀 県 が 周 辺 の 地 域 を 行 き 来 す る 際 の 単 な る 通 過 点 に な っ て い る と い う 課 題 が あ る 。 訪 日 外 国 人 旅 行 者 を 取 り 込 む た め に は 、 佐 賀 県 が 通 過 点 で あ る と い う 印 象 を 払 拭 し 、 佐 賀 地 域 で の 滞 在 を 促 す こ と が 重 要 で あ る 。 そ の た め に は 、 佐 賀 地 域 の 宿 泊 施 設 の 利 用 実 態 や 受 け 入 れ 態 勢 を 把 握 し な け れ ば な ら な い 。 このような問 題 意 識 の下 で、佐 賀 市 の宿 泊 施 設 に対 して外 国 人 旅 行 者 の受 け入 れ状 況 を調 査 した研 究 として野 方 ・武 富 (2017)が挙 げられる。ただし、佐 賀 県 の他 の自 治 体 にも宿 泊 施 設 の利 用 者 の多 い地 域 が存 在 する。佐 賀 県 観 光 客 動 態 調 査 の平 成 27 年 の 市 町 別 宿 泊 客 数 に よ る と 、 ラ ン キ ン グ 上 位 は 佐 賀 市 867.9、 唐 津 市 767.7、 嬉 野 市 594.4 (単 位 :千 人 )で あ る。 そこで、本 調 査 で は 、佐 賀 市 に次 いで宿 泊 施 設 の利 用 者 数 の多 い地 域 である嬉 野 市 および 唐 津 市 の 宿 泊 施 設 に注 目 し、当 該 地 域 の外 国 人 旅 行 者 に 対 す る 印 象 や 受 け 入 れ 方 を 把 握 す る た め の ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 う 。 2. 調 査 概 要 ・ 実 施 方 法 調 査 対 象 は 、 前 述 し た よ う に 嬉 野 市 お よ び 唐 津 市 内 に 存 在 す る 宿 泊 施 設 で 、 嬉 野 温 泉 観 光 協 会 と 唐 津 市 旅 館 共 同 組 合 の ホ ー ム ペ ー ジ に 掲 載 さ れ て い る 宿 泊 施 設 57 社 で あ る 。調 査 票 の 質 問 項 目 を 選 ぶ際 に、国 際 交 流 サ ー ビ ス 協 会(2010)「 外 国 人 旅 行 者 受 け 入 れ に つ い て の 調 査 」 を 参 考 と し た 。 本 調 査 で は 、 外 国 人 旅 行 者 の 動 向 や 受 け 入 れ 方 の 実 態 、 宿 泊 施 設 と 行 政 の 関 わ り 方 を 調 べ る 。 受 け 入 れ 側 の 宿 泊 施 設 か ら 可 能 な 限 り 多 く の デ ー タ を 得 る た め に 、 ア ン ケ ー ト の 形 式 は 郵 送 調 査 と 対 面 式 の 実 地 調 査 の 2 種 類 の 方 法 で 実 施 し た 。 な お 実 地 調 査 は 、 2017 年 10 月 16 日 (月 )に 嬉 野 市 、10 月 23 日 (月 )に 唐 津 市 の 宿 泊 施 設 に お い て 各 観 光 協 会 の 協 力 の も と 実 施 し た 。 2 地 域 で 実 地 調 査 を 実 施 し て い な い そ の 他 の 宿 泊 施 設 に は 、 後 日 ア ン ケ ー ト の 郵 送 調 査 を 実 施 し た 。郵 送 調 査 と 実 地 調 査 の 結 果 、嬉 野 市 エ リ ア で は 14 社 、唐 津 市 エ リ ア で は 9 社 の 宿 泊 施 設 か ら 回 答 を 得 る こ と が で き 、 合 計 23 社 か ら の 回 答 を 得 た (調 査 票 回 収 率 40%)。 以 下 、 こ れ ら の 調 査 を あ わ せ て 見 て い く 。
3 3. 外 国 人 旅 行 者 の 実 態 に つ い て の 調 査 結 果 嬉 野 市 、 唐 津 市 内 の 旅 行 者 の 実 態 につ いて 調 査 を 行 っ た。2016 年 度 に嬉 野 市 ・唐 津 市 内 に宿 泊 した外 国 人 旅 行 者 の実 態 についてのアンケート内 容 は以 下 の 4 項 目 である。 (1)日 本 人 と外 国 人 の平 均 宿 泊 人 数 (2)外 国 人 宿 泊 者 の居 住 国 ・地 域 (3)旅 行 者 の国 別 の平 均 宿 泊 日 数 (4)主 要 な宿 泊 予 約 方 法 (1)日 本 人 と外 国 人 の平 均 宿 泊 人 数 宿 泊 施 設 の規 模 ごとに比 較 するために、客 室 数 に応 じて 4 つに区 分 した。10 室 未 満 の施 設 と 10 室 以 上 50 室 未 満 の施 設 には旅 館 の形 をとるところが多 く、50 室 以 上 100 室 未 満 の 施 設 、100 室 以 上 の施 設 はホテルの形 をとる施 設 が多 い。 図 1. 2016 年 度 に宿 泊 した日 本 人 と外 国 人 の平 均 宿 泊 日 数 出 典 :アンケートデータより筆 者 作 成 上 のグラフから、50 室 以 上 100 室 未 満 の施 設 に宿 泊 する外 国 人 割 合 が他 に比 べ極 端 に 低 くなっていることが分 かる。また、実 地 調 査 では嬉 野 市 と唐 津 市 は日 本 の文 化 を体 験 したい 観 光 客 が多 いという傾 向 がみられた。これらをあわせて考 察 すると、外 国 人 旅 行 者 はホテルに 泊 まるよりも和 室 や畳 のある旅 館 の形 をとる施 設 に宿 泊 することが多 いのではないかと推 測 で きた。さらに、100 室 以 上 の施 設 の利 用 者 が多 い理 由 については、佐 賀 県 では熱 気 球 世 界 選 手 権 などが開 催 されるため団 体 の宿 泊 客 が多 く、ホテルなどの形 態 をとる大 規 模 施 設 の利 用 が増 加 したと考 えられる。 (2)外 国 人 宿 泊 者 の居 住 国 ・地 域 以 下 の表 は、外 国 人 宿 泊 者 の居 住 国 、地 域 を多 い順 に1~3 位 まで順 位 付 けしてもらい、回 答 数 を カ ウ ン ト し た も の で あ る 。 嬉 野 市 、 唐 津 市 と も に 韓 国 が 一 番 多 い 地 域 に な っ て い る 。 そ れに続 き他 のアジアの国 が並 んでいる。その他 にはアメリカ、フランスなどアジア圏 以 外 の地 域 も少 数 上 げ られたが、全 体 的 にみ ると嬉 野 市 、唐 津 市 と もにアジア圏 の国 から の旅 行 者 が 大 部 分 を占 めている。
4 表 1. 外 国 人 宿 泊 者 の居 住 国 ・地 域 全 体 嬉 野 市 唐 津 市 韓 国 19 12 7 中 国 15 11 4 台 湾 7 3 4 香 港 14 7 7 シンガポール 3 2 1 タイ 3 3 0 その他 3 0 3 出 典 :アンケートデータより筆 者 作 成 (3)旅 行 者 の国 別 の平 均 宿 泊 日 数 多 くの国 が約 1~2 日 程 度 の滞 在 で、日 本 人 、外 国 人 旅 行 者 ともに滞 在 期 間 が短 い傾 向 に ある。実 地 調 査 により、宿 泊 目 的 ではなく、食 事 の利 用 のみを目 的 とした滞 在 が多 いことも宿 泊 日 数 の短 さに影 響 を及 ぼしていることがわかった。 表 2. 旅 行 者 の国 別 の平 均 宿 泊 日 数 嬉 野 市 の平 均 宿 泊 日 数 唐 津 市 の平 均 宿 泊 日 数 日 本 1.3 3.1 韓 国 1.3 1.6 中 国 1.2 1.3 台 湾 0 1.0 香 港 1.1 1.1 シンガポール 1.5 0 タイ 1.0 0 その他 0 1.0 出 典 :アンケートデータより筆 者 作 成 (4)主 要 な宿 泊 予 約 方 法 外 国 人 旅 行 者 が利 用 する手 段 としては、電 話 では翻 訳 などの課 題 があるため、ネットを利 用 し て の 予 約 が 圧 倒 的 多 数 で あ っ た 。 表 中 の 他 社 の 予 約 サ イ ト と し て は 、 国 内 で も 有 名 で あ る 「 楽 天 ト ラ ベ ル 」 「 じ ゃ ら ん 」 や 、 海 外 で も 利 用 者 が 多 い 「AGODA」「 Booking.com」「Expedia」 などが挙 げられた。 表 3. 主 要 な宿 泊 予 約 方 法 回 答 数 ① 他 社 の予 約 サイト 16 ② 自 社 ホームページ 7 ③ 電 話 2 出 典 :アンケートデータより筆 者 作 成 4. 宿 泊 施 設 の イ ン バ ウ ン ド 対 策 に つ い て の 調 査 結 果 佐 賀 市 の 宿 泊 施 設 の インバウ ンド への取 り組 み状 況 を 調 査 した野 方 ・ 武 富 (2017)では、イ ンバウンド対 策 が十 分 にできていないと感 じている施 設 が多 く、それらは行 政 側 からのサポート を 必 要 と し て い る と い う 印 象 を 受 け た 。 そ こ で 、"宿 泊 施 設 のインバウンドに対 する取 り組 みは
5 行 政 との協 力 の下 で行 えているのか"という疑 問 が生 じた。この点 に着 目 し、宿 泊 施 設 の外 国 人 旅 行 者 受 け入 れに対 する認 識 や課 題 、行 政 からのサポートの実 態 に関 して、以 下 7 項 目 の質 問 を設 定 しアンケート調 査 を行 った。 (1)受 け入 れに当 たって感 じている課 題 (2)今 後 自 社 で強 化 したい部 分 (3)行 政 側 からのサポートの必 要 性 (4)佐 賀 県 のインバウンド施 策 に不 足 しているもの (5)定 期 的 に情 報 共 有 している団 体 (6)地 域 内 の情 報 網 とグループの情 報 網 どちらを重 視 するか(チェーン展 開 施 設 対 象 ) (7)地 域 特 性 を体 験 できるプランの有 無 (1)受 け入 れにあたって感 じている課 題 多 かった回 答 は、従 業 員 の外 国 語 対 応 の充 実 、自 社 の PR の充 実 、佐 賀 の観 光 資 源 PR の充 実 、周 辺 地 域 へのアクセス・交 通 案 内 である。従 業 員 の外 国 語 対 応 の充 実 が最 多 回 答 であったのに対 し、映 像 通 訳 サービスの充 実 の回 答 数 はゼロであったことから、自 動 翻 訳 機 な どの機 械 ではなく人 的 手 段 によるサービスの提 供 を重 視 していることがわかった。 表 4. 受 け入 れにあたって感 じている課 題 (複 数 回 答 可 3 つまで) 項 目 全 体 嬉 野 市 唐 津 市 ① 自 社 の PR の充 実 10 5 5 ② 佐 賀 の観 光 資 源 PR の充 実 10 3 7 ③ 周 辺 地 域 へのアクセス・交 通 案 内 10 5 5 ④ 宿 泊 施 設 内 の多 言 語 表 記 の充 実 5 2 3 ⑤ 映 像 通 訳 サービスの充 実 0 0 0 ⑥ 従 業 員 の外 国 語 対 応 の充 実 14 10 4 ⑦ 接 遇 マナーの向 上 2 2 0 ⑧ 課 題 はない 1 1 0 出 典 :アンケートデータより筆 者 作 成 (2)今 後 自 社 で強 化 したい部 分 全 体 で の 回 答 数 が 最 も 多 か っ た 項 目 は 、 従 業 員 の 語 学 教 育 で あ っ た 。 外 国 人 従 業 員 の 雇 用 、従 業 員 への接 遇 教 育 の 2 項 目 も付 随 して多 数 の回 答 を得 ていることから、多 くの宿 泊 施 設 が 従 業 員 に か かわ る課 題 を 優 先 的 に 解 決 しよ う と考 え ているこ と が 分 かる 。さ ら に、 以 下 の表 でも多 数 回 答 を得 ている SNS による情 報 発 信 の強 化 については、実 地 調 査 でも強 化 の 必 要 性 を重 視 する声 が多 数 見 受 けられた。
6 表 5. 今 後 自 社 で強 化 したい部 分 (複 数 回 答 可 3 つまで) 項 目 全 体 嬉 野 市 唐 津 市 ①SNS( Twitter,Facebook,ブ ロ グ 等 ) に よ る 情 報 発 信 9 3 6 ② 多 言 語 に よ る 自 社 PR パ ン フ レ ッ ト 作 成 2 1 1 ③ 多 言 語 に よ る 周 辺 地 域 の ガ イ ド マ ッ プ 作 成 2 1 1 ④ 多 言 語 ホ ー ム ペ ー ジ の 作 成 5 4 1 ⑤Wi-Fi 環 境 の 整 備 5 2 3 ⑥ 宿 泊 施 設 内 の 多 言 語 表 記 2 1 1 ⑦ 映 像 通 訳 サ ー ビ ス 等 の 利 用 0 0 0 ⑧ 外 国 人 従 業 員 の 雇 用 5 3 2 ⑨ 従 業 員 へ の 語 学 教 育 13 8 5 ⑩ 従 業 員 へ の 接 遇 教 育 5 2 3 ⑪ 強 化 し た い 項 目 1 1 0 出 典 :アンケートデータより筆 者 作 成 (3)行 政 側 からのサポートの必 要 性 次 のグラフから、嬉 野 市 、唐 津 市 ともに多 くの宿 泊 施 設 が行 政 のサポートを必 要 としている こ と が わ か っ た 。 具 体 的 な サ ポ ー ト 内 容 と し て は 、 特 に 、 補 助 金 な ど 金 銭 面 、 マ ッ プ の 多 言 語 化 など言 語 面 、空 港 や駅 、旅 館 、観 光 地 を結 ぶ交 通 の整 備 など公 共 交 通 面 でのサポートの 3 点 に関 するものが挙 げられていた。インバウンドの関 連 調 査 ・研 究 においても、行 政 と民 間 が 協 力 して外 国 人 旅 行 者 の受 け入 れ態 勢 を整 備 することの重 要 性 が指 摘 されている(たとえば、 国 土 交 通 省 観 光 庁, 2015)。 図 2. 行 政 側 からのサポートの必 要 性 出 典 :アンケートデータより筆 者 作 成 (4)佐 賀 県 のインバウンド施 策 に不 足 しているもの インバウンドに対 応 するにあたって、施 設 側 は佐 賀 県 の観 光 情 報 の発 信 力 が弱 いと感 じて いることがわかった。観 光 情 報 として、嬉 野 温 泉 や唐 津 くんちなど既 存 の観 光 資 源 はもちろん のこと、新 たに観 光 資 源 を開 拓 し PR することで、過 去 に訪 れたことのある外 国 人 旅 行 者 に対 しても再 び佐 賀 県 を訪 れるきっかけづくりが可 能 であると考 えられる。
7 表 6. 佐 賀 県 のインバウンド施 策 に不 足 しているもの(複 数 回 答 可 3 つまで) 項 目 全 体 嬉 野 市 唐 津 市 ① 佐 賀 の 観 光 情 報 発 信 の 充 実 14 6 8 ② 国 際 会 議 ・ イ ベ ン ト 等 の 充 実 7 3 4 ③ 観 光 案 内 所 ・ 公 共 交 通 に お け る 多 言 語 対 応 の 充 実 9 4 5 ④ 既 存 観 光 資 源 の 利 用 8 4 4 ⑤ 新 た な 観 光 資 源 の 開 拓 10 7 3 ⑥ 災 害 時 に お け る 外 国 人 旅 行 者 の セ ー フ テ ィ ネ ッ ト の 充 実 3 1 2 ⑦ 不 足 し て い る 点 は な い 2 2 0 出 典 :アンケートデータより筆 者 作 成 (5)定 期 的 に情 報 共 有 している団 体 宿 泊 施 設 が 定 期 的 に 有 益 な 情 報 共 有 が で き て い る と 思 う 団 体 は 、 観 光 協 会 で あ っ た 。 観 光 協 会 で は 定 期 的 に 集 会 が 開 か れ て お り 、 温 泉 の 入 り 方 な ど 宿 泊 に あ た っ て の 基 本 的 な ル ールの説 明 が多 言 語 で記 された資 料 の配 布 や、外 国 人 宿 泊 者 に対 する説 明 の仕 方 の指 導 などが行 われている。また、行 政 との情 報 共 有 も主 に嬉 野 市 で一 定 程 度 行 われているようであ る 。 先 行 研 究 に お い て も 、 外 国 人 旅 行 者 の 動 向 把 握 の 実 態 を 調 査 す る に あ た っ て 、 行 政 機 能 が活 用 されているというデータが示 されている(たとえば、経 済 産 業 省 中 小 企 業 庁, 2017)。 表 7. 定 期 的 に情 報 共 有 している団 体 (複 数 回 答 可 3 つまで) 項 目 全 体 嬉 野 市 唐 津 市 ① チェーン展 開 しているホテル 4 2 2 ② 県 内 のみで展 開 しているホテル・旅 館 2 1 1 ③ 観 光 協 会 15 7 8 ④ 行 政 8 6 2 ⑤ 運 輸 業 者 1 0 1 出 典 :アンケートデータより筆 者 作 成 (6)地 域 内 の情 報 網 とグループの情 報 網 どちらを重 視 するか(チェーン展 開 施 設 対 象 ) どちらも重 視 するという意 見 がほとんどであった。どちらか一 方 の情 報 でなく、両 方 の情 報 網 を利 用 してより確 かな 情 報 や必 要 な情 報 を手 に入 れるため、双 方 の 情 報 網 を重 視 していると いう声 が多 かった。 (7)地 域 特 性 を体 験 できるプランの有 無 あると回 答 したのは 3 社 のみであった。回 答 のあった具 体 的 なプランとしては着 物 の着 付 け やイカの活 造 りなどがあった。地 域 特 性 を生 かした外 国 人 旅 行 者 向 けのプランの考 案 が今 後 のインバウンド増 加 への課 題 の一 つであると考 えられる。
8 5.1. 考 察 本 調 査 に よ り 得 ら れ た 結 果 を以 下 で考 察 する。 (1)外 国 人 旅 行 者 の 実 態 外 国 人 旅 行 者 の 予 約 手 段 と し て 、 予 約 サ イ ト を 利 用 す る 人 が 全 体 の 92%と 圧 倒 的 に 多 く 、そ の う ち 約 70% が 楽 天 や じ ゃ ら ん な ど の 他 社 ホ ー ム ペ ー ジ を 利 用 し て い た 。 こ れ ら の ホ ー ム ペ ー ジ は 、 英 語 や 韓 国 語 、 中 国 語 に よ る 多 言 語 表 記 が な さ れ て い る ため、外 国 人 旅 行 者 にとって利 用 しやすい予 約 手 段 になっていると推 察 され る 。 ま た 、外 国 人 旅 行 者 の 居 住 地 域 は ア ジ ア 圏 が 非 常 に 多 か っ た 。中 で も 韓 国 や 中 国 、 香 港 な ど 日 本 近 辺 の 国 の 回 答 が 特 に 目 立 っ た 。 これは、LCC 航 空 の整 備 などにより佐 賀 県 の国 際 線 が増 加 したことによる影 響 を受 けている可 能 性 がある。交 通 インフラの整 備 はイン バウンド需 要 の創 造 につながるが、アメリカやヨーロッパなどアジア外 の地 域 からの取 り込 みが 未 だ積 極 的 になされていない現 状 が見 受 けられる。そのため今 後 、アジア圏 のインバウンド需 要 の増 加 に努 めつつ、その他 地 域 を取 り込 むための対 策 の考 案 が課 題 となる。 (2)施 設 側 が 感 じ る 課 題 最 も 大 き な 課 題 と し て 、 従 業 員 の 外 国 語 対 応 に つ い て 挙 げ ら れ て い た 。 こ れ は 、 外 国 語 が 使 用 可 能 な 従 業 員 の 人 数 と そ の レ ベ ル の 両 面 に お い て 不 十 分 で あ る こ と が 要 因 で あ る と 考 え ら れ る 。宿 泊 施 設 の 今 後 強 化 し た い 点 にも 、従 業 員 の 語 学 教 育 が 1 番 に 挙 げ ら れ て い た 。これらを 踏 ま え る と 、 外 国 人 旅 行 者 と の 言 語 の 壁 が サ ー ビ ス を 提 供 す る 上 で の 大 き な 障 害 と な っ て い る こ と が 窺 え る 。 そ の 他 に も 、自 社 や 佐 賀 の 観 光 資 源 の PR が 希 薄 で あ る こ と や 、周 辺 地 域 へ の ア ク セ ス が 不 便 で あ る こ と が 挙 げ ら れ て い た 。し か し 、大 規 模 な 観 光 資 源 の PR や 交 通 網 の 整 備 は 施 設 側 の 取 り 組 み だ け で は 対 応 し き れ な い 場 合 も 多 々 あ る 。 そ の た め 、 行 政 側 の サ ポ ー ト の 必 要 性 を 訴 え る 意 見 が 多 数 あ っ た。 また、外 国 人 旅 行 者 によっては時 間 にルーズであることや、マナーの問 題 など日 本 人 と外 国 人 の性 格 や認 識 の違 いなどから、サービスを提 供 しにくいといった意 見 も少 数 だが挙 げられた。 このような日 本 人 と外 国 人 の違 いを理 由 として、外 国 人 旅 行 者 の受 け入 れに積 極 的 ではない 施 設 も存 在 する。しかし、これからのインバウンド需 要 の増 加 に伴 い必 然 的 に増 える外 国 人 旅 行 者 との関 わり合 いの中 で、施 設 と外 国 人 旅 行 者 の双 方 が歩 み寄 り相 互 理 解 を深 めることや、 行 政 側 から 外 国 人 旅 行 者 に対 す るマナー改 善 の呼 びか けなどを行 うことでそのよ うな施 設 の 数 をゼロに近 づけることができるだろう。 さらに、主 要 な交 通 基 点 から観 光 地 への直 通 バスの整 備 や観 光 地 周 辺 のマップの多 言 語 対 応 など行 政 側 がサポートをすることで、外 国 人 に対 するサービス提 供 の難 しさを緩 和 できる とわれわれは考 える。このことが、受 け入 れに積 極 的 ではなかった施 設 の受 け入 れ態 勢 を整 え る一 助 となり、積 極 的 な姿 勢 であった施 設 にとってもさらなる受 け入 れ態 勢 強 化 につながるで あろう。 (3)施 設 側 が 今 後 の 強 化 を 望 む 取 り 組 み 従 業 員 に 関 す る こ と と SNS に よ る 情 報 発 信 に つ い て の 2 点 に 大 き く 分 類 で き る 。 ま ず 、 従 業 員 に 関 す る 意 見 で あ る 。 具 体 的 に は 、 語 学 教 育 や 接 遇 教 育 の 強 化 、 外 国 人 従 業 員 の 積 極 的 な 雇 用 な ど で あ る 。 こ の こ と か ら 、 外 国 人 旅 行 者 へ の 機 械 を 介 さ な い 人 に よ る お も て な し を 目 標 と す る 施 設 側 の 姿 勢 が 感 じ ら れ る 。し か し な が ら 、
9 語 学 が 堪 能 な 従 業 員 が 不 足 し て い る 現 状 で は 、 自 動 翻 訳 機 に 頼 る こ と が 多 く 、 細 か い こ と や 日 本 特 有 の 文 化 の 説 明 、 言 葉 の ニ ュ ア ン ス が 上 手 く 伝 わ ら な い と い っ た 問 題 点 が 生 じ て い る 。 こ の よ う な 問 題 に 対 処 す る に は 、 従 業 員 の 語 学 教 育 が 最 優 先 で あ る と 考 え る 。 言 語 と し て は 、 ど の 地 域 か ら の 宿 泊 者 に も 対 応 の 出 来 る 国 際 共 通 語 で あ る 英 語 を は じ め と し て 、 利 用 頻 度 の 高 い 韓 国 語 や 中 国 語 へ の 対 応 も 可 能 で あ る こ と が 望 ま し い 。 し か し 、 こ れ ら の 語 学 教 育 を 宿 泊 施 設 が 各 々 で 行 う に は 、 現 実 的 に は 負 担 が 大 き く 困 難 で あ る 。 ま た 、 既 存 の 従 業 員 へ の 語 学 教 育 で は な く 、 外 国 人 従 業 員 の 雇 用 に よ っ て も こ れ ら の 問 題 点 に は 対 処 可 能 で は あ る が 、 そ れ に は 不 安 や 躊 躇 い が 少 な か ら ず 生 じ る 。 そ の た め 、 行 政 か ら の サ ポ ー ト と し て 、 宿 泊 施 設 関 係 者 に 対 し て の 語 学 研 修 会 を 開 く こ と や 就 労 目 的 の 外 国 人 を 紹 介 す る こ と は 、 こ れ ら の 問 題 を 解 決 し 、 施 設 の 円 滑 な外 国 人 受 け入 れ体 制 を築 く有 効 な 手 段 と な る だ ろ う 。 次 に 、SNS に よ る 情 報 発 信 に つ い て で あ る 。 外 国 で も 多 く の 人 が 利 用 し て い る Twitter や Facebook、 Instagram な ど の SNS を 情 報 発 信 に 活 用 す る こ と で 、 施 設 の 情 報 を 不 特 定 多 数 の 人 に 認 識 し て も ら う こ と が 可 能 と な る 。 ま た 、SNS は 日 々 更 新 さ れ て い く も の で あ る た め 、 タ イ ム リ ー な 情 報 の 提 供 が 実 現 で き る 。 こ れ ら の こ と を 合 わ せ て 考 え る と 、SNS に よ る 情 報 発 信 は 、 発 信 さ れ た 情 報 を 知 っ た 外 国 人 が 興 味 を 持 ち 、 実 際 に 訪 れ る と い っ た 潜 在 的 な 外 国 人 宿 泊 者 の 獲 得 に つ な が る で あ ろ う 。 さ ら に 、 こ の 手 段 は 広 告 費 が か か ら な い た め 手 軽 に 行 う こ と が で き る 。 そ れ だ け で な く 、フ ォ ト ス ポ ッ ト を 設 け る な ど 、実 際 に 訪 れ た 外 国 人 宿 泊 者 が 旅 行 の 様 子 を SNS に 投 稿 し た く な る よ う な ひ と 工 夫 を 加 え る こ と に よ っ て 、 さ ら な る イ ン バ ウ ン ド 需 要 の 増 加 が 期 待 で き る と 考 え る 。 (4)行 政 側 に 求 め ら れ て い る 取 り 組 み 嬉 野 市 、唐 津 市 と も に 80% を 超 え る 宿 泊 施 設 が 行 政 の サ ポ ー ト を 必 要 と し て い た 。 特 に サ ポ ー ト が 必 要 な 部 分 と し て 、 金 銭 面 と 言 語 面 、 公 共 交 通 面 が 挙 げ ら れ た 。 金 銭 面 においては、嬉 野 市 、唐 津 市 ともに共 通 して、より多 くの助 成 金 があればインバウン ドに対 応 しやすいという主 張 が目 立 った。このことから、宿 泊 施 設 の多 くは助 成 金 の額 が必 要 額 に 足 りて いないこ と が 推 察 できる 。現 在 佐 賀 県 では 、外 国 人 受 け 入 れを 実 施 し ている 宿 泊 施 設 に対 して、多 言 語 化 や無 線 LAN、バリアフリー環 境 を整 えるなど、対 象 事 業 にかかる費 用 の 一 部 を 上 限 金 額 と して設 定 し 補 助 金 と し て交 付 して いる。こ の上 限 額 を 引 き 上 げ、 宿 泊 施 設 がインバウンドに対 応 するのに十 分 な態 勢 づくりを進 めることで、さらなるインバウンド需 要 の増 加 につながるであろう。 言 語 面 に つ い て は 、 実 地 調 査 の中 で、外 国 人 宿 泊 者 に対 し独 自 で作 成 した周 辺 地 域 の 多 言 語 ガイドマップを配 布 している宿 泊 施 設 が見 受 けられた。その施 設 からの要 望 として、独 自 で 作 成 し たガイ ドマッ プは 実 際 に 施 設 を訪 れ た外 国 人 宿 泊 者 に し か 渡 す こと が できないた め、多 言 語 ガイドマップを観 光 案 内 所 や駅 などで配 布 し、どの外 国 人 旅 行 者 でも利 用 可 能 な 環 境 づくりを行 ってほしいという意 見 があがった。多 言 語 コ ー ル セ ン タ ー に つ い て も 、 既 に サ ー ビ ス は 行 わ れ て は い る が 、 ま だ 普 及 が 十 分 で な い た め 、 積 極 的 な 整 備 拡 大 が 必 要 と な っ て い る 。 ま た 、 施 設 側 が 翻 訳 サ ー ビ ス の よ う な 機 械 に 頼 ら ず 、 人 的 手 段 に よ る サ ー ビ ス の 提 供 を 目 指 し て い る こ と か ら 、言 語 教 育 の 強 化 も 重 要 視 さ れ て い る 。 し か し 、 宿 泊 施 設 だ け で 従 業 員 の 語 学 教 育 を 行 う こ と は 金 銭 面 な ど に お い て 限 界 が あ る た め 、 行 政 が 宿 泊 施 設 の 従 業 員 に 対 す る 語 学 研 修 の 場 を 設 け る な ど の サ ポ ー ト
10 体 制 が 必 要 に な る で あ ろ う 。 公 共 交 通 面 に 関 し て は 、駅 から宿 泊 施 設 までの交 通 手 段 として基 本 的 に徒 歩 しかないと い う 現 状 を うけ て 、 旅 館 組 合 に 加 盟 し て いる 宿 泊 施 設 を 回 る バス を設 け る こと や 、大 き な 駅 だ けに限 らず小 さな駅 にもローマ字 表 記 を施 すなどといった、外 国 人 旅 行 者 へ配 慮 した対 策 の 要 望 が あ っ た 。 こ う し た 意 見 に 早 急 に 対 処 す る こ と で 、 外 国 人 旅 行 者 が 訪 れ た く な る 街 づ く り の実 現 が可 能 となると考 えられる。 (5)佐 賀 県 が イ ン バ ウ ン ド 施 策 と し て 行 う べ き 取 り 組 み 外 国 人 旅 行 者 に 対 し て 佐 賀 県 の 魅 力 を 伝 え 、 よ り 多 く の 人 に 訪 れ て も ら う た め に は 、 観 光 情 報 の 発 信 が カ ギ と な っ て い る 。 多 く の 宿 泊 施 設 が 、 嬉 野 温 泉 や 唐 津 く ん ち な ど 既 存 の 観 光 資 源 に 関 す る 情 報 の 多 言 語 化 を 充 実 さ せ る こ と を 重 要 視 し て い る 。 既 存 の 観 光 資 源 以 外 に も 、 海 外 ド ラ マ 誘 致 に よ り ロ ケ 地 の 一 つ と な っ た 神 社 や 、 テ レ ビ ア ニ メ の モ デ ル と な っ た 土 地 を ア ピ ー ル ポ イ ン ト と し て 掲 げ 観 光 資 源 と す る な ど 、 新 た な 観 光 資 源 の 開 拓 に 乗 り 出 し て い る 。 そ れ ら の 観 光 情 報 を 、 世 界 的 に も 利 用 人 口 が 多 く 拡 散 し や す い Twitter や Facebook な ど の SNS や 、 視 覚 的 に わ か り や す く 観 光 情 報 の 検 索 が し や す い も の へ の 改 善 を 施 し た 外 国 人 向 け ホ ー ム ペ ー ジ を 活 用 し 、 多 く の 外 国 人 に 向 け て 積 極 的 に 宣 伝 す る こ と で 、 イ ン バ ウ ン ド 需 要 の 増 加 を 図 る こ と が 可 能 と な る で あ ろ う 。 また、観 光 地 での駅 やバス停 をはじめとする公 共 の場 や、観 光 地 への行 先 案 内 においての 多 言 語 表 記 の 徹 底 、 多 言 語 ス キ ル 不 足 に よ る サ ー ビ ス の 滞 り 防 止 を 目 的 と し た 外 国 人 従 業 員 や多 言 語 案 内 人 の派 遣 など個 々 の宿 泊 施 設 だけでなく 、 県 全 体 で の 外 国 人 旅 行 者 を配 慮 した取 り組 みを行 う必 要 があると我 々は考 えた。 さ ら に 、 実 地 調 査 に お い て 、 外 国 人 旅 行 者 の リ ピ ー タ ー が 少 な い こ と が 課 題 と し て 挙 げ ら れ た 。 こ の 課 題 に 対 応 す る た め に 、 外 国 人 の 需 要 に 合 わ せ た 観 光 情 報 の 発 信 や 、 イ ベ ン ト 開 催 時 期 に 合 わ せ た 観 光 ツ ア ー の 定 期 的 な 開 催 に よ っ て 、 訪 れ た 外 国 人 旅 行 者 を 満 足 さ せ 、 佐 賀 県 を 再 び 訪 れ る 価 値 の あ る 場 所 と 認 識 して も ら う こ と で 、 こ の 課 題 に 対 す る 改 善 を 図 る こ と が で き る と 考 え ら れ る 。 そ れ に 加 え 、 佐 賀 県 を 訪 れ た 外 国 人 旅 行 者 が 旅 行 の 様 子 に つ い て SNS に 投 稿 す る こ と や 、帰 国 し た 際 に 周 囲 の 人 々 に 紹 介 す る こ と に よ っ て 、 よ り 多 く の 人 に 佐 賀 県 の 魅 力 を 伝 え る こ と が 可 能 と な る た め 、 新 た な 外 国 人 旅 行 者 の 獲 得 も 期 待 で き る 。 5.2. 改 善 策 本 調 査 で 生 じ た 、"宿 泊 施 設 の イ ン バ ウ ン ド に 対 す る 取 り 組 み は 行 政 と の 協 力 の 下 で 行 え て い る の か"と い う 疑 問 に 対 し て は 、 上 記 か ら も わ か る よ う に 、 "行 え て い る 点 も あ る が 、 そ れ 以 上 に 行 政 か ら の サ ポ ー ト を 必 要 と し て い る 施 設 が 多 く 、 未 だ 十 分 に 行 え て い る と は い え な い"と い う 結 論 に 至 っ た 。ま た 、行 政 の サ ポ ー ト の 仕 方 と 宿 泊 施 設 の 考 え 方 に は 違 い が あ り 、 こ の 相 違 を な く す こ と で 外 国 人 に も 寄 り 添 っ た サ ー ビ ス を 行 う こ と が で き 、 さらなる外 国 人 旅 行 者 の 増 加 に つ な が る で あ ろ う 。 行 政 が 行 う サ ポ ー ト と 宿 泊 施 設 が 求 め る サ ポ ー ト を 一 致 さ せ る た め 、 考 察 を 踏 ま え て 具 体 的 な 改 善 策 を 以 下 で提 示 する。 (1)行 政 側 か ら 就 労 支 援 の 形 で 外 国 人 従 業 員 を 宿 泊 施 設 な ど に 派 遣 す る 。
11 宿 泊 施 設 と し て は 、 既 存 の 従 業 員 に 一 か ら 語 学 教 育 を す る こ と は 負 担 が 大 き く 困 難 で あ る が 、 外 国 人 従 業 員 を 雇 う こ と で 、 自 動 翻 訳 機 な ど よ り も ス ム ー ズ に 丁 寧 な 対 応 を 行 う こ と が 可 能 と な る 。 ま た 、 外 国 人 従 業 員 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 通 し て 、 既 存 の 従 業 員 の 語 学 レ ベ ル が 上 が る こ と も 期 待 で き る 。 さ ら に 、 行 政 か ら の 紹 介 で あ れ ば 身 元 が 保 証 さ れ て い る た め 、 見 知 ら ぬ 外 国 人 を 雇 う こ と に 対 す る 不 安 や 躊 躇 い も な く な る で あ ろ う 。 (2)予 約 サ イ ト の 多 言 語 化 、 外 国 人 向 け プ ラ ン の 作 成 を す る 。 一 部 の 予 約 サ イ ト で は 、 既 に 英 語 や 韓 国 語 、 中 国 語 な ど 、 利 用 者 の 多 い 地 域 の 言 語 で の 表 記 は 実 現 さ れ て い る が 、 そ の 他 の ア ジ ア 圏 の 国 や ア メ リ カ 、 ヨ ー ロ ッ パ の よ う な 、 こ れ か ら イ ン バ ウ ン ド 需 要 の 高 ま る 見 込 み の あ る 地 域 の 言 語 表 記 は ま だ な さ れ て い な い 。 よ り 多 く の 外 国 人 を 呼 び 込 み 、 イ ン バ ウ ン ド 需 要 を さ ら に 増 加 さ せ る た め に は 、 こ の よ う な 地 域 の 言 語 で の 表 記 が 必 要 不 可 欠 と な っ て く る 。 そ れ と 合 わ せ て 、 予 約 サ イ ト の デ ザ イ ン を 分 か り や す く シ ン プ ル な も の に 変 更 す る こ と や 、 PC だ け で な く ス マ ー ト フ ォ ン や タ ブ レ ッ ト に も 対 応 さ せ る な ど と い っ た 工 夫 を 加 え る こ と に よ っ て 、 予 約 サ イ ト の 利 用 頻 度 を 増 加 さ せ る こ と が 出 来 る で あ ろ う 。 外 国 人 向 け の プ ラ ン と し て は 、 現 在 行 っ て い る 宿 泊 施 設 が ほ と ん ど な い た め 、 一 部 の 宿 泊 施 設 が 行 っ て い る イ カ の 活 造 り や 着 物 の 着 付 け 体 験 の よ う な 、 既 存 の プ ロ グ ラ ム を よ り 多 く の 施 設 に 取 り 入 れ る こ と が 必 要 で あ る 。 そ れ だ け に 限 ら ず 、 日 本 な ら で は の こ と を 体 験 で き る プ ロ グ ラ ム や 、 佐 賀 特 有 の も の を 生 か し た プ ラ ン の 作 成 が 必 要 で あ る だ ろ う 。 例 え ば 、 日 本 な ら で は の こ と で あ れ ば 、 折 り 紙 や 茶 道 な ど が 挙 げ ら れ る 。 佐 賀 特 有 の も の で あ れ ば 、 佐 賀 錦 の 手 織 り 体 験 や 工 房 と 連 携 し た 陶 磁 器 の 作 成 体 験 な ど が あ る 。 こ の よ う な プ ラ ン の 作 成 に よ り 、 外 国 人 旅 行 者 の 興 味 を 引 き 、 さ ら な る 需 要 増 加 が 期 待 で き る 。 さ ら に 、 実 地 調 査 で 実 際 に 地 域 特 性 を 体 験 で き る プ ラ ン を 実 施 し て い る と 回 答 し た 施 設 で は 、 プ ラ ン の 実 施 に お け る 課 題 に つ い て の 意 見 も 挙 げ ら れ た 。 こ の 施 設 で は 、外 国 人 旅 行 者 向 け に 佐 賀 特 産 の 地 酒 や イ カ を 用 い た 料 理 の 提 供 を 行 っ て い る が 、 そ う い っ た 取 り 組 み を 行 っ て い る こ と を PR し て い な い と の こ と だ っ た 。 こ の よ う に 、 外 国 人 向 け の プ ラ ン を 用 意 し て も 、 そ れ を 知 っ て も ら う 機 会 が な け れ ば 効 果 が な い 。 そ こ で 、 行 政 側 が 適 切 な フ ォ ロ ー を 行 う こ と で 、 こ の 状 況 を 改 善 し 、 宿 泊 施 設 側 の 取 り 組 み を 観 光 客 に 知 ら せ る こ と が で き る と 考 え る 。 今 後 、 プ ラ ン の 作 成 だ け で な く 、作 成 し た プ ラ ン を 観 光 客 に 広 告 す る 手 段 に つ い て も 課 題 と な る で あ ろ う 。 (3)公 共 交 通 機 関 と 宿 泊 施 設 、 観 光 地 と を 結 ぶ バ ス の 整 備 を 行 う 。 佐 賀 県 で は 、 都 心 部 の よ う に は 交 通 機 関 の 整 備 が 進 ん で お ら ず 、 駅 か ら 観 光 地 ま で の 交 通 手 段 が 限 ら れ て し ま う 。 そ こ で 、 空 港 や 駅 な ど の 主 要 な 交 通 機 関 の 基 点 と 宿 泊 施 設 、 観 光 地 間 の 交 通 網 を 整 備 し 、 か つ 、 直 通 バ ス の よ う な 乗 り 換 え 不 要 な ル ー ト を 設 け る な ど 観 光 客 が 足 を 運 び や す い 環 境 づ く り が 重 要 で あ る と 考 え る 。 そ れ に よ り 、 乗 り 間 違 い な ど の 観 光 客 の ス ト レ ス を 削 減 で き 、 施 設 側 も 観 光 客 に 対 し 、 観 光 地 の 案 内 を よ り ス ム ー ズ に 行 う こ と も 可 能 と な る 。 ま た 、 交 通 案 内 に 関 し て も 行 政 の サ ポ ー ト を 必 要 と す る 意 見 が 挙 げ ら れ た 。 行 政 の サ ポ ー ト に よ り 交 通 整 備 が 進 ん で い た と し て も 、 そ の 概 要 が 施 設 側 に 伝 わ っ て い
12 な け れ ば 観 光 客 に 的 確 な 情 報 を 伝 え る こ と が で き な い 。 実 際 に 、 施 設 を 訪 れ た 外 国 人 旅 行 者 か ら 空 港 や 駅 か ら 観 光 地 ま で の 交 通 手 段 を 尋 ね ら れ た 際 に 、 市 営 バ ス が ど の よ う な 運 行 サ ー ビ ス を 実 施 し て い る か 把 握 し て お ら ず 、 詳 細 な 情 報 を 伝 え る こ と が で き な か っ た と い う 事 例 が あ っ た 。行 政 側 が よ り 積 極 的 に 情 報 提 供 を 行 う こ と で 、 外 国 人 旅 行 者 を 観 光 地 な ど に 誘 致 し や す く な る の で は な い か と 考 え る 。 (4)観 光 協 会 と 行 政 の 報 告 会 を 定 期 的 に 行 う 。 ア ン ケ ー ト 調 査 に よ り 、 宿 泊 施 設 と 観 光 協 会 の 間 で は 情 報 共 有 が 出 来 て い る こ と が 分 か っ た 。 観 光 協 会 に 加 盟 し て い る 宿 泊 施 設 同 士 で 積 極 的 に 情 報 共 有 を 行 っ て い る と い う 意 見 も あ り 、 ト ラ ブ ル 時 の 対 処 法 や 今 後 の 施 設 運 営 の 方 針 な ど 、 類 似 す る 状 況 下 で 活 動 し て い る 者 同 士 で あ る か ら こ そ の 有 益 な 情 報 交 換 が で き る と の 考 え で あ っ た 。 一 方 で 、 行 政 の サ ポ ー ト を 必 要 と す る 回 答 が 多 数 見 受 け ら れ た 。 そ こ で 、 観 光 協 会 と 行 政 の 報 告 会 を 定 期 的 に 設 け る こ と に よ っ て 、 観 光 協 会 が 宿 泊 施 設 と 行 政 と の 橋 渡 し と な る こ と が 期 待 さ れ る 。 こ れ に よ り 、 宿 泊 施 設 と 観 光 協 会 、 行 政 間 で の 情 報 共 有 が 可 能 と な る 。こ の こ と は 、サ ポ ー ト を 必 要 と す る 個 々 の 宿 泊 施 設 の 要 望 や 、 宿 泊 施 設 だ け で は 対 処 し き れ な い 複 雑 な ト ラ ブ ル の 解 消 依 頼 を 行 政 側 に 伝 え や す く す る で あ ろ う 。 行 政 側 の メ リ ッ ト と し て も 、 観 光 地 が 抱 え て い る 問 題 な ど の 現 状 把 握 が 可 能 と な る こ と や 、 イ ン バ ウ ン ド 政 策 を 作 成 す る 際 の 参 考 と な る こ と な ど が 考 え ら れ る 。 定 期 的 な 報 告 会 を 通 し て 、 三 者 が イ ン バ ウ ン ド 政 策 に 関 し て 共 通 の 認 識 を 得 ら れ る こ と か ら 、 イ ン バ ウ ン ド 政 策 に 関 す る 課 題 の 早 期 解 消 や 改 善 を 図 る こ と が で き る 。 6. お わ り に 上 記 の 改 善 策 を 実 施 す る こ と で 、 外 国 人 旅 行 者 の 受 け 入 れ 態 勢 は さ ら に 強 化 さ れ て い く と 考 え ら れ る 。 今 後 、 海 外 と 日 本 を つ な ぐ 航 空 便 の 整 備 が 進 み 、2020 年 に 開 催 さ れ る 東 京 オ リ ン ピ ッ ク も 外 国 人 が 日 本 を 訪 れ る 大 き な 契 機 と な り う る こ と か ら 、 外 国 人 旅 行 者 数 は 増 加 し て い く で あ ろ う 。 そ の 中 で 、 受 け 入 れ 態 勢 を 強 化 し て い く こ と は 、 イ ン バ ウ ン ド 需 要 の 増 加 に 直 接 影 響 を 与 え 、 日 本 の 宿 泊 施 設 市 場 、 ま た 日 本 経 済 の さ ら な る 発 展 ・拡 大 に つ な が る と 考 え ら れ る 。 今 後 、旅 行 者 の受 け入 れ態 勢 を強 化 するた め に は 、宿 泊 施 設 、観 光 協 会 、行 政 の 三 者 による相 互 理 解 と 情 報 共 有 が 必 要 不 可 欠 と な る 。ア ン ケ ー ト の 結 果 、宿 泊 施 設 が 行 政 の サ ポ ー ト を 不 十 分 だ と 感 じ て お り 、 サ ポ ー ト の 必 要 性 と 今 後 の 改 善 を 求 め る 意 見 が 多 数 挙 げ ら れ た 。 し か し 、 行 政 側 も 全 く サ ポ ー ト を 行 っ て い な い わ け で は な い た め 、 施 設 側 と 行 政 の 情 報 共 有 不 足 や 連 携 不 足 で あ る の か 、 現 状 の サ ポ ー ト で は 不 十 分 で あ る の か に つ い て は 検 討 の 余 地 が あ る 。 本 調 査 で は 、 宿 泊 施 設 の イ ン バ ウ ン ド に 対 す る 印 象 調 査 を 目 的 と し て おり、 主 に施 設 側 の 視 点 か ら 考 察 し て い る ため、 宿 泊 施 設 と 行 政 の 相 互 理 解 と 情 報 共 有 の 必 要 性 の 観 点 か ら 考 え る と 、今 後 は行 政 の 視 点 か ら の さらなる考 察 が必 要 である。今 回 のアンケート調 査 で得 られた宿 泊 施 設 からの 情 報 と 照 ら し 合 わ せ な が ら 、 行 政 の 視 点 か ら 、 佐 賀 県 内 に 外 国 人 旅 行 者 を 誘 致 す る こ と の 印 象 や 、 イ ン バ ウ ン ド に 対 す る 取 り 組 み 姿 勢 な ど を 調 査 し 、 相 互 理 解 と 情 報 共 有 の 点 に お い て 佐 賀 県 の イ ン バ ウ ン ド 対 策 へ の 課 題 を 探 っ て い く こ と が 必 要 だ と 考 え る 。
13 参 考 文 献 経 済 産 業 省 中 小 企 業 庁 (2017)『商 店 街 インバウンド実 態 調 査 報 告 書 』 <http://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2017/170424houkokusyo.pdf> 国 際 交 流 サービス協 会 (2010)『外 国 人 旅 行 者 受 け入 れについての調 査 』 <http://inboundcafe.ihcsa.or.jp/bindata/upfile/00000016.pdf> 国 土 交 通 省 観 光 庁 (2015)『インバウンド着 地 型 観 光 の手 引 き』 <http://www.mlit.go.jp/common/001091713.pdf> 野 方 大 輔 ・ 武 富 良 太 (2017) 「 佐 賀 市 内 に お け る 外 国 人 旅 行 者 の 行 動 と 宿 泊 施 設 の 対 応 - 佐 賀 駅 周 辺 と 古 湯 温 泉 の 宿 泊 施 設 へ の 調 査 を 中 心 に - 」 『 九 州 佐 賀 総 合 政 策 研 究 』2017 年 第 1 号