今 は 昔、 竹 取 の 翁 おきな と い ふ 者 あ り ① け り。 野 山 に ま じ り て 竹 を 取 り つ つ、 ② よろづ のことに使ひけり。名をば、 さぬきのみやつこと ③ な む い ひ け る 。 そ の 竹 の 中 に、 も と 光 る 竹 ④ な む 一 筋 あ り け る。 あ や し が り て、 寄 り て 見 る に、 筒 の 中 光 り た り。 そ れ を 見 れ ば、 三 寸 ば か り な る 人、 い と ⑤ う つ く し う て ゐ た り。 翁 い ふ ⑥ や う、 「 我 朝 ご と 夕 ご と に 見 る 竹 の 中 に お は す る に て 知 り ⑦ ぬ。 子 に な り ⑧ た ま ふ べ き人 ⑨ な め り 」 と て 手 に う ち 入 れ て、 家 へ 持 ち て 来 ぬ。 妻 め の 嫗 おうな に あ づ け て 養 は ⑩ す。 う つ く し き こ と、 かぎりなし。いと幼ければ、籠 こ に入れて養ふ。 今となっては昔のことだが、竹取の翁という者がいた。野山に 分 け 入 っ て 竹 を 取 っ て は、 あ ら ゆ る こ と に 使 っ て い た。 名 を、 さぬきのみやつこといった。その竹の中に、根元が光る竹が一本あっ た。不思議に思って、近づいて見ると、筒の中が光っていた。それを 見ると、三寸ほどの(大きさの)人が、 とてもかわいらしい 様子で 座 っ て い た。 翁 が 言 う に は、 「 私 が 毎 朝 毎 晩 見 る 竹 の 中 に い ら っ し ゃ る こ と で わ か っ た。 ( あ な た は 私 の ) 子 に お な り に な る は ず の 人 で あ る ようだ」と言って、手の中に入れて、家に持って来た。妻の嫗に託し て 育 て さ せ る。 ( そ の 子 の ) か わ い ら し い こ と は、 こ の 上 な い。 と て も幼いので、籠 かご に入れて育てる。
全
訳
「竹取物語」
なよたけのかぐや姫
(かぐや姫のおひたち)
⑴
LS1071HR101BZ-01
意志 ・ 可能 ・ 当然 ・ 命令 ・ 適当の六つの意味がある。ここは当然の〈… するはずだ〉という意味にとり、 「(私の)子におなりになる はず の人」 と訳す。 ⑨ 人 なめり 「なめり」は、断定の助動詞「なり」の連体形「なる」と、 推量の助動詞「めり」の終止形が合わさった「 なる めり」が、 撥 はつ 音便 の形「 なん めり」となり、さらに「ん」が表記されず「なめり」とな ったものである。 ⑩ 養は す 「養は」はハ行四段活用動詞「養ふ」の未然形。 「す」は助動 詞 の 終 止 形 で、 使 役 と 尊 敬 の 意 味 が あ る。 こ の「 す 」 は、 「 給 ふ 」 な ど他の尊敬語を伴わず、単独で用いられているため使役の意味である。 ① あ り け り 過 去 の 助 動 詞「 け り 」 の 終 止 形。 「 け り 」 は、 間 接 的 に 伝 え聞いた過去の出来事を述べる場合に用いられる。同じく過去を表す 助動詞の「き」は、話し手の直接体験を述べる場合に用いられる。 ② よろづ 歴史的仮名遣いの 「づ」 は 「ず」 と読む。 そのため 「よろ ず 」 となる。同じく「妻の嫗にあづけて」も「妻の嫗にあ ず けて」となる。 ただし、助詞の「を」はそのままでよい。 ○ 「 ゐ・ゑ・を・ぢ・づ 」→「 イ・エ・オ・ジ・ズ 」 ③ なむ いひ ける ④ な む 一筋あり ける 係り結びの法則。 ○ 係助詞「なむ」の意味→ 強調 ○ 結びの語→③も④も過去の助動詞「けり」の 連体形 「ける」 。 ⑤ うつくしう シク活用形容詞「うつくし」の連用形「うつくしく」が、 ウ音便の形となったものである。 ⑥ 翁いふ やう 歴史的仮名遣いの「やう」は、 「よう」と読む。 ○ ア段の音に「う」 「ふ」 が続いた場合→「 オ段音+ー 」 (現代仮名遣いの表記は「□う」 ) ⑦ 知り ぬ 「知り」 は四段活用動詞 「知る」 の連用形に接続しているため、 「 ぬ 」 は 打 消 の 助 動 詞「 ず 」 の 連 体 形 で は な く、 完 了 の 助 動 詞「 ぬ 」 の終止形であることに注意。 ⑧ 子 に な り た ま ふ べ き 人 「 た ま ふ 」 は ハ 行 四 段 活 用 の 補 助 動 詞 の 終 止 形で、 尊敬の意を表す。 「べき」は助動詞「べし」の連体形で、 推量 ・ ▼重要単語チェック▲ □よろづ=①いろいろ ②すべてのこと □いと=①とても ②まったく ③(下に打消語を伴って)たいして □うつくし=①いとしい ②かわいらしい ③りっぱだ・みごとだ □ゐる(居る)=①座る ②ある ③地位につく ④(虫・鳥が) とまる □おはす=①いらっしゃる ②おありになる ③お出かけになる ④おいでになる
■文法チェック
LS1071HR101BZ-02竹取物語
竹 取 の 翁 おきな 、 竹 を 取 る に、 こ の 子 を ① 見 つ け て 後 に 竹 取 る に、 節 を へ だ て て、 よ ご と に、 黄 こ 金 がね あ る 竹 を 見 つ く る こ と 重 な り ぬ。 か く て 、 翁 ② や うやう ゆたかになりゆく。 こ の 児 ちご 、 養 ふ ③ ほ ど に、 す く す く と ④ 大 き に な り ま さ る。 三 み 月 つき ⑤ ば か り になるほどに、 よき ⑥ ほ ど な る 人 に な り ⑦ ぬれば 、 髪あげなどとかくして、 髪 ⑧ あ げ さ せ 、 裳 も 着 す。 帳 の 内 よ り も い だ さ ず、 い つ き 養 ふ。 こ の 児 の か た ち の き よ ら な る こ と 世 に な く、 屋 の 内 は 暗 き 所 な く 光 満 ち ⑨ た り 。 翁、 心 地 悪 し く 苦 し き 時 も、 こ の 子 を 見 れ ば 苦 し き こ と も や み ⑩ ぬ 。 腹 立たしきこともなぐさみけり。 竹 取 の 翁 が、 竹 を 取 る と、 こ の 子 を 見 つ け て 後 に 竹 を 取 る と、 節をへだてて、節と節の間ごとに、黄金の入った竹を見つける ことが重なった。 こうして 、翁は だんだん 豊かになっていく。 こ の 子 は、 育 て る う ち に、 す く す く と 大 き く な っ て い く。 ( 育 て 始 め て ) 三 カ 月 ほ ど た つ こ ろ、 ( 成 人 と し て ) ち ょ う ど よ い ほ ど の 大 き さの人になったので、髪あげの儀式などをあれこれして、髪をあげさ せ、裳を着せる。帳の内からも出さず、大切に育てる。この子の 顔だ ち の 上 品 で 美 し い こ と は 比 類 な く、 ( こ の 子 の 美 し さ の た め に ) 屋 敷 の中は暗い所もなく光が満ちていた。翁は、気分が 悪く て苦しいとき も、この子を見ると苦しい気分もおさまった。腹立たしい気持ちも落 ちついた。
全
訳
「竹取物語」
なよたけのかぐや姫
(かぐや姫のおひたち)
⑵
LS1071HR101BZ–03
⑨ 満 ち た り 「 た り 」 は 助 動 詞 で あ る が、 完 了 の も の と 断 定 の も の が 存 在する。完了の「たり」は連用形に、断定の「たり」は体言や活用語 の連体形に接続する。ここでは、四段活用動詞「満つ」の連用形「満 ち」に接続し、文末に置かれているので、完了の助動詞「たり」の終 止形だと判断できる。 ⑩ や み ぬ 「 ぬ 」 は 助 動 詞 で あ る が、 完 了 の 助 動 詞「 ぬ 」 の 終 止 形 の 場 合と、 打消の助動詞 「ず」 の連体形の場合がある。 「ぬ」 は連用形に、 「ず」 は未然形に接続するため、 四段活用動詞「やむ(止む) 」の連用形「や み 」 に 接 続 し、 係 り 結 び の な い 文 末 に 置 か れ て い る の で、 「 ぬ 」 の 終 止形だと判断できる。 ① 見つけ て 下二段活用動詞「見つく」の連用形。上一段活用動詞「見 る」と混同しないように注意すること。 ② や う や う 歴 史 的 仮 名 遣 い の「 や う 」 は、 「 よ う 」 と 読 む た め「 よ う よう」と読むこと。 ○ ア段の音に「う」 「ふ」 が続いた場合 → 「オ段音+ ー 」 (現代仮名遣いの表記は「□う」 ) ③ 養 ふ ほ ど ⑥ よ き ほ ど な る 人 「 ほ ど 」 は 複 数 の 意 味 を 持 つ 古 語 で あ る た め、 文 脈 に 注 意 し て 意 味 を 取 る こ と。 ③ は〈 頃・ 間・ 時 間 〉 で、 ⑥は〈様子・程度〉で解釈するとよい。 ④ 大きに ナリ活用形容動詞 「大きなり」 の連用形。現代語の形容詞 「大 きい」に引きずられて、形容詞とまちがえないこと。 ⑤ 三月 ばかり 副助詞「ばかり」には〈およそ…ほど〉という程度の意 味と、 〈…だけ〉という限定の意味がある。ここでは程度の意味で「三 カ月ほど」と訳す。 ⑦ なり ぬれば 「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形。 「ば」は接続助 詞。順接の確定条件のため、 「なったので」と訳す。 ○ 已然形+ば → 順接の確定条件 ⑧ あげさせ 「あげ」は下二段活用動詞「あぐ」の未然形。 「させ」は使 役の助動詞「さす」の連用形。 「髪をあげさせ」と訳す。 ▼重要単語チェック▲ □かくて=こうして □やうやう=①だんだんと ②かろうじて □かたち=①姿(形態) ②容貌 □きよらなり=上品で美しい □悪し=①悪い ②見苦しい ③卑しい ④不快だ ⑤下手である
■文法チェック
LS1071HR101BZ–04竹取物語
LS1071HR101BZ–05 翁、 竹 を 取 る こ と 久 し く な り ① ぬ 。 勢 ひ 猛 まう の 者 に な り ② に け り。 こ の 子いと大きになりぬれば、名を、 御 み 室 むろ 戸 ど 斎 いむ 部 べ の秋田をよびて、 ③ つけさす 。 秋田、なよ竹のかぐや姫とつけつ。このほど 三 み 日 か うちあげ 遊ぶ 。よろづ の 遊 び を ④ ぞ し け る 。 男 は う け き ら は ず 呼 び つ ど へ て、 い と か し こ く 遊 ぶ。 世 界 の を の こ、 貴 あて な る も い や し き も、 「 ⑤ い か で こ の か ぐ や 姫 を 得 て しかな 、見てしかな」と、 音 に聞き 愛で て惑ふ。 翁が、 (黄金の入った)竹を取ることが 何年にも なった。 (その ため)権勢のさかんな者となった。この子がとても大きくなっ たので、名を、御室戸斎部の秋田を呼んで、つけさせた。秋田は、な よ竹のかぐや姫と(名を)つけた。この(命名の)とき三日間宴会を 開いて 管弦 (音楽の演奏) を楽しむ 。色々な音楽を演奏した。男は (身 分 な ど で ) 分 け 隔 て せ ず 招 き 集 め て、 た い そ う 盛 大 に 管 弦 を 楽 し む。 世 の 中 の 男 は、 身 分 が 高 い 人 も 身 分 が 低 い 人 も、 「 何 と か し て こ の か ぐや姫を得たい(=妻にしたい)ものだ、見たい(=結婚したい)も のだ」と、 (かぐや姫の) うわさ を聞き、 愛しく思っ て心を乱す。
全
訳
「竹取物語」
なよたけのかぐや姫
(かぐや姫のおひたち)
⑶
かして……したい」の意を表す。なお、 「しかな」は濁った「しがな」 の形で用いるのが一般的。 ○ いかで+願望や意志を表す語 → 願望 〈なんとかして……したい〉 ① な り ぬ 「 な り 」 は 四 段 活 用 動 詞「 な る 」 の 連 用 形。 そ の た め「 ぬ 」 は連用形接続の完了の助動詞「ぬ」の終止形だと判断できる。未然形 接続の打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」ではないので注意すること。 ② な り に け り 「 に 」 は 識 別 に 注 意 が 必 要 な 語。 こ こ で は、 四 段 活 用 動 詞「なる」の連用形「なり」に接続しているので、 完了の助動詞「ぬ」 の連用形だと判断できる。 「にき ・ にけり ・ にたり」という形の場合は、 完了の助動詞であることが多い。識別のポイントを次に挙げておく。 ○ 格助詞 → 場所・時間・手段を表す語につく ○ 接続助詞 → 体言を補えない連体形接続 ○ 完了の助動詞「ぬ」の連用形 → 連用形接続 ○ 断定の助動詞「なり」の連用形 → 下に係助詞や「あり・侍り・おは す」などが続く ○ 形容動詞の連用形活用語尾 → 性質や状態を表す語につく ○ 副詞の一部 → 「すでに・さらに・つひに」など ③ つけさす 「つけ」は下二段活用動詞「つく」の未然形。 「さす」は助 動詞の終止形。 「さす」 には尊敬と使役の意味があるが、 ここは 「給ふ」 など他の尊敬語を伴わず単独で使われているので、使役の意味である。 ④ 遊びを ぞ し ける 係り結びの法則。 ○ 係助詞「ぞ」の意味 → 強調 ○ 結びの語 → 過去の助動詞「けり」の 連体形 「ける」 。 ⑤ い かで ……て しかな 「いかで」 は陳述 (呼応) の副詞。ここでは、 〈…… し た い 〉 と い う 自 己 の 願 望 を 表 す 終 助 詞「 し か な 」 と 呼 応 し、 「 何 と ▼重要単語チェック▲ □久し=①長い時間が経った様子 ②時が長くて待ち遠しい □遊ぶ=①楽しむ ②詩歌・管弦などをして楽しむ ③遊山する ④旅行をする ⑤動き回る □かしこし=①恐ろしい ②尊い ②ありがたい ③りこうである ④すぐれている ⑤うまい ⑥(程度が)はなはだしく □貴なり=①身分が高く、尊い ②上品だ □いやし=①身分が低い ②粗野である ③みっともない ④つまらない □音=①声 ②うわさ ③たより ④返事 □愛づ=①愛する ②賞美する ③珍重する ④心がひかれる
■文法チェック
LS1071HR101BZ–06竹取物語
LS1071HR102BZ–01 八 月 十 五 日 ば か り の 月 に 出 で ゐ て、 か ぐ や 姫 い と い た く 泣 き ① 給 ふ 。 人目も今はつつみ給はず泣き給ふ。これを見て、親どもも「何事ぞ」と 問ひさわぐ。 か ぐ や 姫 泣 く 泣 く 言 ふ、 「 先 々 も 申 さ む と ② 思 ひ し か ど も 、 必 ず 心 惑 はし給はむものぞと思ひて、今まで過ごし 侍 はべ りつるなり。 ③ さのみやは と て、 う ち 出 で 侍 り ぬ る ぞ。 お の が 身 は こ の 国 の 人 ④ に も あ ら ず。 月 の 都の人なり。それを、昔の 契 ちぎ りありけるによりなむ、この世界には まう で来 たりける。今は帰るべきになりにければ、この月の十五日に、かの も と の 国 よ り、 迎 へ に 人 々 ま う で 来 む ず。 さ ら ず ⑤ ま か り ぬ べ け れ ば、 おぼし嘆かむが悲しきことを、この春より思ひ嘆き侍るなり」と言ひて、 い み じ く 泣 く を、 翁 おきな 、「 こ は、 な で ふ こ と の た ま ふ ぞ。 竹 の 中 よ り 見 つ け ⑥ き こ え た り し か ど、 菜 種 の 大 き さ ⑦ お は せ し を、 わ が 丈 立 ち 並 ぶ ま で 養 ひ 奉 たてまつ り た る わ が 子 を、 何 人 ⑧ か 迎へきこえ む 。 ⑨ ま さ に 許 さ む や 」 と 言 ひ て、 「 我 こ そ 死 な め 」 と て、 泣 き の の し る こ と、 い と 堪 た へ が た げ なり。 八月十五日ごろの月(の夜)に(縁側に)出て 座っ て、かぐや 姫はたいそうひどくお泣きになる。人目も今でははばかりなさ らずにお泣きになる。これを見て、親たちも「どうしたことか」と尋 ねさわぐ。 かぐや姫が泣く泣く言う(ことには) 、「以前も申し上げようと思っ たけれども、きっと心をお乱しになるにちがいないと思って、今まで 過 ご し て き た の で ご ざ い ま す。 ( し か し ) そ の よ う に( 黙 っ て ) ば か りでいられようか、いやいられないと思って、言い出したのでござい ます。私の身はこの国(=地上界)の人ではありません。月の都の人 です。それを、前世(から)の宿命があったことによって、この世界 に 参っ たのです。今は帰らなければならないときになってしまったの で、 今 月 の 十 五 日 に、 あ の も と の 国( = 月 の 国 ) か ら、 ( 私 を ) 迎 え に人々が参るでしょう。やむを得ずおいとましなければなりませんの で、 (あなたがたご両親が)思い悲しまれるであろうことがつらい(の で、 そ の ) こ と を、 ( 私 は ) こ の 春 か ら 思 い 悲 し ん で い る の で ご ざ い ま す 」 と 言 っ て、 ひ ど く 泣 く の で、 翁 は、 「 こ れ は、 何 と い う こ と を おっしゃるのか。竹の中から見つけ申し上げたけれども、菜種の(よ うな)大きさでいらっしゃったのに、私の背丈と同じくらいに並ぶま で養い申し上げたわが子を、だれが迎え申し上げようか、いやだれも 迎え申し上げることはできない。どうして許そうか、いや許しはしな い 」 と 言 っ て、 「 私 の ほ う こ そ 死 ん で し ま い た い 」 と 言 っ て、 泣 き 騒 ぐ ことは、まったくこらえがたい様子である。
全
訳
「竹取物語」
かぐや姫の嘆き
⑴
LS1071HR102BZ–01
⑦ 大きさ おはせし を 「おはせ」 はサ行変格活用動詞 「おはす」 の未然形。 こ こ で は「 あ り 」 の 尊 敬 語 と し て 用 い ら れ、 〈 い ら っ し ゃ る 〉 の 意 で あ る。 「 し 」 は 過 去 の 助 動 詞「 き 」 の 連 体 形。 助 動 詞「 き 」 は 通 常 連 用 形 に 接 続 す る が、 連 体 形「 し 」、 已 然 形「 し か 」 の 場 合、 サ 変 動 詞 には未然形に接続するので覚えておくこと。 ⑧ 何人 か 迎へきこえ む 係り結びの法則。 ○ 係助詞「か」の意味→ 疑問・反語 ○ 結びの語→推量の助動詞「む」の 連体形 。 係助詞「か」は、ここでは反語の意。 ⑨ ま さ に 許 さ む や 「 ま さ に 」 は 陳 述( 呼 応 ) の 副 詞。 こ こ で は「 む 」 は意志の助動詞の終止形。 「や」は反語を表す助詞。 ○ まさに…反語を表す助詞 → 〈どうして…か。いや…ない〉 ① 泣き 給ふ 「給ふ」は尊敬を表す補助動詞。 「お泣きになる」と訳す。 ② 思ひしかども 「思ひ」は四段活用動詞「思ふ」の連用形。 「しか」は、 過去の助動詞「き」の已然形。 「ども」は接続助詞。 ○ 已然形+ど・ども → 逆接の確定条件〈…だが・…けれども〉 ③ さのみやは 「さ」は〈そのように〉の意の副詞。 「のみ」は限定〈… だけ・…ばかり〉の副助詞。 「や」 「は」はそれぞれ係助詞で、 「やは」 の 形 で 反 語 を 表 し て い る。 「 そ の よ う に( 黙 っ て ) ば か り で い ら れ よ うか、いやいられない」と訳す。 ④ こ の 国 の 人 に も あ ら ず 「 人 」 と い う 体 言 に 接 続 し て お り、 あ と に 係 助詞「も」や、ラ変動詞「あり」の未然形「あら」が続いていること から、 「に」は格助詞ではなく、断定の助動詞「なり」の連用形。 ⑤ まかりぬべけれ ば 「まかり」 は四段活用動詞 「まかる」 の連用形。 「出 づ ・ 行く ・ 来」 の謙譲語で、 〈退出する ・ おいとまする〉 の意である。 「ぬ」 は強意の助動詞の終止形。 「べけれ」 は当然の助動詞 「べし」 の已然形。 そ こ に 接 続 助 詞「 ば 」 が 下 接 し て い る の で、 「 お い と ま し な け れ ば な りませんので」と訳す。 ⑥ 見 つ け き こ え た り 「 き こ え 」 は 謙 譲 を 表 す 補 助 動 詞「 き こ ゆ 」 の 連 用形。 「たり」 は完了の助動詞 「たり」 の連用形。 「見つけ申し上げた」 と訳す。あとにある「養ひ 奉り 」の「奉る」も、同じく謙譲を表す補 助動詞である。両者とも、翁からかぐや姫へ対する敬意を表している。 ▼重要単語チェック▲ □ゐる(居る)=①座る ②存在する ③地位につく □まうでく=①参上する ②参ります □いみじ=①非常に ②すばらしい ③恐ろしい □ののしる=①大声で騒ぎ立てる ②有名である
■文法チェック
LS1071HR102BZ–02 LS1071HR102BZ–02竹取物語
LS1071HR102BZ–03 か ぐ や 姫 の い は く、 「 月 の 都 の 人 に て、 父 母 あ り。 片 時 の 間 と て、 か の 国 よ り ① ま う で 来 こ し か ど も 、 か く こ の 国 に は あ ま た の 年 を ② 経 へ ぬ る に ③ な む あ り け る 。 か の 国 の 父 母 の こ と も お ぼ え ず、 こ こ に は、 か く 久 し く 遊 び き こ え て、 な ら ひ ④ 奉 れ り 。 い み じ か ら む 心 地 も せ ず。 悲 し く の み あ る。 さ れ ど、 お の が 心 な ら ず、 ま か り ⑤ な む と す る 」 と 言 ひ て、 も ろともにいみじう泣く。 使 は ⑥ る る 人 々 も、 年 ご ろ な ら ひ て、 立 ち 別 れ な む こ と を、 心 ば へ な ど ⑦ あ て や か に ⑧ う つ く し か り つ る こ と を 見 な ら ひ て、 恋 し か ら む こ と の堪へ難く、湯水飲ま ⑨ れ ず、同じ心に嘆かしがりけり。 か ぐ や 姫 の 言 う こ と に は、 「( 私 は ) 月 の 都 の 人 で あ っ て、 ( そ こには)父母がいます。ほんのしばらくの間といって、あの国 から参りましたけれども、このようにこの国では たくさん の年月を経 てしまったのでありました。あの国の父母のことも 思い出され ず、こ こ(=地上界)では、このように長い間滞在申し上げて、慣れ親しみ 申 し 上 げ て し ま い ま し た。 ( 月 の 都 へ 帰 る の は ) う れ し い よ う な 気 持 ちもしません。悲しいだけです。けれども、自分の意志からではなく、 ( 月 の 都 へ ) お い と ま し て し ま お う と す る( の で す )」 と 言 っ て、 ( か ぐや姫と翁は)そろってひどく泣く。 使 わ れ て い る 人 々( = 使 用 人 た ち ) も、 ( か ぐ や 姫 と ) 長 年 慣 れ 親 しんで、別れてしまうだろうことを(こらえがたく思い) 、(姫の)気 だ て な ど が 上 品 で か わ い ら し か っ た こ と を 見 慣 れ て い て、 ( 姫 と 別 れ てしまったらどんなに)恋しかろうことがこらえがたく、湯水を飲む ことができず、 (翁たちと)同じ気持ちで嘆き悲しんだ。
全
訳
「竹取物語」
かぐや姫の嘆き
⑵
使用人)のことである。 ⑦ あ て や か に 「 あ て や か に 」 は、 ナ リ 活 用 形 容 動 詞「 あ て や か な り 」 の連用形。活用語尾の「に」を、助動詞や助詞と解釈しないこと。 ⑧ うつくしかりつる 「うつくしかり」は、シク活用形容詞「うつくし」 の補助活用(カリ活用)連用形。形容詞の補助活用は、助動詞を下に つける場合の形である。 「つる」は体言「こと」が下接しているので、 完了の助動詞「つ」の連体形。 ⑨ 飲ま れ ず 「飲ま」は四段活用動詞「飲む」の未然形。 「れ」は、未然 形に接続しているので、受身・自発・可能・尊敬の助動詞「る」の未 然形。ここは可能の意で、 「飲むことができず」と訳す。 ① ま う で 来 し か ど も 「 ま う で 来 こ 」 は、 カ 行 変 格 活 用 動 詞「 ま う で 来 く 」 の未然形。 「来」 の読み方に注意すること。 「しか」 は過去の助動詞 「き」 の已然形。この助動詞は通常連用形に接続するが、カ変動詞には未然 形にも接続する。 ② 経ぬるに 「 経 へ 」は下二段活用動詞「 経 ふ 」の連用形。 「ぬる」は完了の 助 動 詞「 ぬ 」 の 連 体 形 で、 こ こ で は〈 … て し ま っ た 〉 の 意。 「 に 」 は 連 体 形 に 接 続 し て お り、 下 に 係 助 詞「 な む 」 が 続 い て い る こ と か ら、 断定の助動詞「なり」の連用形。 ③ なむ あり ける 係り結びの法則。 ○ 係助詞「なむ」の意味→ 強意 ○ 結びの語→過去の助動詞「けり」の 連体形 「ける」 。 ④ な ら ひ 奉 れ り 「 奉 れ 」 は、 謙 譲 を 表 す 四 段 活 用 補 助 動 詞「 奉 る 」 の 命令(已然)形。 「り」は、完了の助動詞の終止形。 「慣れ親しみ申し 上げてしまった」と訳す。 ⑤ ま か り な む と す る 「 な 」 は、 四 段 活 用 動 詞「 ま か る 」 の 連 用 形「 ま かり」 に接続しているので、 完了 (強意) の助動詞 「ぬ」 の未然形。 「む」 は意志の助動詞の終止形。係助詞「なむ」や、終助詞「なむ」との識 別に注意すること。 ⑥ 使は るる 人々 「使は」は四段活用動詞「使ふ」の未然形。 「るる」は、 受身・自発・可能・尊敬の助動詞「る」の連体形。ここは受身の意で、 「 使 わ れ て い る 人 々」 と 訳 す。 か ぐ や 姫 に 召 し 使 わ れ て い る 人 々( = ▼重要単語チェック▲ □あまた=①たくさん ②非常に ③たいして □おぼゆ=①感じる ②思い出される ③似る □年ごろ=①長年の間 ②数年来・長年 □うつくし=①いとしい ②かわいらしい ③見事だ
■文法チェック
LS1071HR102BZ–04竹取物語
① 立てる 人どもは、 装 さう 束 ぞく の ② きよらなる ことものにも似ず、飛ぶ車一 つ具したり。 羅 ら 蓋 がい さしたり。その中に、王とおぼしき人、家に、 「 造 みやつこ 麿 まろ 、 ③ ま う で 来 こ 」 と 言 ふ に、 猛 たけ く 思 ひ つ る 造 麿 も、 も の に 酔 ゑ ひ た る 心 地 し て、 う つ ぶ し に 伏 せ り。 い は く、 「 汝 なんぢ 、 幼 き 人。 い さ さ か な る 功 く 徳 どく を、 翁 おきな 作 りけるによりて、汝が助けにとて、かた時のほどとて下ししを、 そこら の 年 ご ろ、 そ こ ら の 黄 こ 金 がね 賜 たま ひ て、 身 を 変 へ た る が ④ ご と ⑤ な り に た り 。 か ぐ や 姫 は 罪 を 作 り ⑥ 給 へ り け れ ば、 か く 賤 いや し き お の れ が も と に、 し ば し ⑦ お は し つ る な り。 罪 の 限 り 果 て ⑧ ぬ れ ば 、 か く 迎 ふ る を、 翁 は 泣 き 嘆く。あたはぬことなり。はや返し ⑨ 奉 たてまつ れ 」と言ふ。 立っている人たち(=かぐや姫を迎えに来た天人たち)は、衣 服 の 美 し い こ と は 他 に 比 べ る も の も な い、 ( 空 を ) 飛 ぶ 車 一 台 を持参している。羅蓋(=薄絹の布を張った長い 柄 え の傘)をさしてい る。その中に、 王と思われる人が (いて) 、(翁の) 家に (向かって) 、「造 麿(=翁の名前) 、出て参れ」と言うと、勇ましく思っていた造麿も、 も の に 酔 っ た( = 心 を 奪 わ れ て、 我 を 忘 れ た よ う な ) 気 持 ち が し て、 うつぶせに伏してしまった。 (王の)言うことには、 「おまえは、おろ かな者よ。 ほんのわずかな 功徳(=善い行い)を、翁が作ったことに よって、おまえの助けにと思って、ほんのしばらくの間と思って(か ぐや姫を地上界に)下したのだが、 たくさん の歳月、たくさんの黄金 を賜って、身を変えたようになってしまった。かぐや姫は罪をおつく りになったので、このように身分の低いおまえのもとに、しばらくい らっしゃったのだ。罪の( 償 つぐな いの)期限が終わったので、このように (かぐや姫を月の都に)迎えるのを、翁は泣き悲しむ。 (だが、どうに も)できないことである。早く返し申せ」と言う。
全
訳
「竹取物語」
かぐや姫の昇天
(天の羽衣)
⑴
LS1071HR103BZ–01
竹取物語
⑥作 り 給 へ り 「 給 へ 」 は、 尊 敬 を 表 す 四 段 活 用 補 助 動 詞「 給 ふ 」 の 命 令(已然)形。会話主である天人の王とおぼしき人から、かぐや姫へ の敬意を表している。 「り」は完了の助動詞「り」の連用形。 ⑦ おはし つる 「おはし」 は、 サ行変格活用動詞 「おはす」 の連用形。 「あ り・をり・行く・ 来 く 」の尊敬語である。ここでは「をり」の尊敬語と して用いられ、完了の助動詞「つ」の連体形「つる」が下接している ので、 「いらっしゃった」と訳す。 ⑧ 果て ぬれば 「ぬれ」は完了の助動詞「ぬ」の已然形。 「ば」は接続助 詞。順接の確定条件で「終わったので」と訳す。 ○ 已然形+ば → 順接の確定条件〈…なので・…すると〉 ⑨ 返し 奉れ 「奉れ」は、 謙譲を表す四段活用補助動詞「奉る」の命令形。 「返し申せ」と訳す。 ① 立てる 四段活用動詞「立つ」の命令(已然)形「立て」に接続して いるので、 「る」 は完了 ・ 存続の助動詞 「り」 の連体形。ここは存続 〈… ている〉の意で、 「立っている」と訳す。 ② きよらなる ナリ活用形容動詞 「きよらなり」 の連体形。 「なる (なら ・ な り・ な れ )」 は 識 別 に 注 意 が 必 要 で あ る。 こ こ で の「 な る 」 は、 形 容動詞の活用語尾。助動詞や動詞ではない。 ○ 物事の変化 を表している → 四段活用動詞「なる」 ○ 終止形接続 (ラ変型を除く)→ 伝聞・推定の助動詞「なり」 ○ 体言・連体形に接続 → 断定の助動詞「なり」 ○ 性質や状態を表す語 につく → 形容動詞の活用語尾 ③ まうで来 「まうで」は下二段活用動詞「まうづ」の連用形。 「 来 こ 」は カ 行 変 格 活 用 動 詞「 来 く 」 の 命 令 形。 ま た は、 「 ま う で 来 」 で 一 語 の カ 変動詞と解釈することもできる。ここでは「来」の謙譲語として用い られ、 「出て参れ」などと訳す。 ④ 身 を 変 へ た る が ご と 「 ご と 」 は、 比 況・ 例 示 の 助 動 詞「 ご と し 」 の 語幹で、連用形「ごとく」と同じく連用修飾語となり〈…ように〉の 意で用いられる。 「身を変えたように」と訳す。 ⑤ なりにたり この「なり」は、 ②の識別法から、 四段活用動詞「なる」 の 連 用 形。 助 動 詞 で は な い の で 注 意 す る。 「 に 」 も 識 別 に 注 意。 こ こ で は 連 用 形 に 接 続 し て い る の で、 完 了 の 助 動 詞「 ぬ 」 の 連 用 形「 に 」 で あ る。 完 了 の 助 動 詞「 に 」 は、 「 に き・ に け り・ に た り 」 の 形 を と ることが多いので覚えておくこと。 ▼重要単語チェック▲ □きよらなり=気品があり美しい様子 □いささかなり=ほんのわずか □そこら=①たくさん ②非常に■文法チェック
LS1071HR103BZ–02翁答へて申す、 「かぐや姫を養ひ奉ること二十余年になりぬ。 『かた時』 と ① のたまふ に、 ② あ や し く な り は べ り ぬ 。 ま た 異 こと 所 どころ に か ぐ や 姫 と 申 す 人 ③ ぞ お は し ま す ら む 」 と 言 ふ。 「 こ こ に お は す る か ぐ や 姫 は、 重 き 病 をし給へば、 ④ え 出 い でおはします まじ 」と申せば、その返りごとはなくて、 屋 の 上 に 飛 ぶ 車 を 寄 せ て、 「 ⑤ いざ 、かぐや姫、 きたな き所に、 ⑥ い か で か 久 し く お は せ む 」 と 言 ふ。 立 て 籠 こ め た る 所 の 戸、 す な は ち た だ ⑦ 開 あ き に開きぬ 。格子どもも、 人はなくして開きぬ。 嫗 おうな 抱 いだ きてゐたるかぐや姫、 外 と に ⑧ 出でぬ 。 ⑨ え とどむ まじけれ ば、たださし仰ぎて泣きをり。 翁が答えて申す(ことには) 、「かぐや姫を養い申し上げること 二十余年になった。 (しかし、あなたは今) 『ほんのしばらくの 間』とおっしゃるので、 疑わしく なりました。また別の場所にかぐや 姫 と 申 す 人 が い ら っ し ゃ る の だ ろ う 」 と 言 う。 「 こ こ に い ら っ し ゃ る かぐや姫は、重い病気をしていらっしゃるので、出ておいでになるこ とはできないだろう」と申し上げると、その返事はなくて、屋根の上 に飛ぶ車を寄せて、 「 さあ 、かぐや姫、 (このような地上界の)けがれ た所に、どうして長い間いらっしゃるだろうか、いや長くいることは な い 」 と 言 う。 ( す る と、 壁 で ) と り 囲 ん で い た 所( = か ぐ や 姫 を 嫗 が守っていた部屋)の戸が、 すぐに すっかり開いてしまった。格子な ども、 人はいないのに開いてしまった。 嫗が抱いていたかぐや姫は、 (家 の) 外に出てしまった。 (嫗は) 引き止めることができそうにないので、 ただ(かぐや姫を)仰ぎ見て泣いている。
全
訳
「竹取物語」
かぐや姫の昇天
(天の羽衣)
⑵
LS1071HR103BZ–03
竹取物語
し て い る。 「 ど う し て 長 い 間 い ら っ し ゃ る だ ろ う か、 い や 長 く い る こ とはない」と訳す。 ⑦ 開 き に 開 き ぬ 「 開 き 」 は 四 段 活 用 動 詞「 開 く 」 の 連 用 形。 同 じ 動 詞 を重ねることで、 意味を強調している。 「ぬ」は完了の助動詞の終止形。 ⑧ 出でぬ 「出づ」のような下二段活用動詞は、未然形と連用形が同形。 ここでは、 「出で」を連用形ととり、 「ぬ」を完了の助動詞の終止形と とる。 「出で」を未然形、 「ぬ」を打消の助動詞「ず」の連体形ととる と、 「出ない」という訳になり、文脈にそぐわない。 ⑨ え と ど む ま じ け れ ば ④ と 同 じ く、 呼 応( 陳 述 ) の 副 詞 で あ る「 え 」 に打消推量「まじ」の已然形「まじけれ」が呼応した形。また、 「ば」 は接続助詞であるため、順接の確定条件となり「引き止めることがで きそうにないので」と訳す。 ① のたまふ 「言ふ」の尊敬語で四段活用動詞「のたまふ」の連体形。 ② あ や し く な り は べ り ぬ 「 あ や し く 」 は ク 活 用 形 容 詞「 あ や し 」 の 連 用形。 「なり」は四段活用動詞「なる」の連用形。 「 はべ り」はラ行変 格 活 用 補 助 動 詞「 は べ り 」 の 連 用 形。 「 ぬ 」 は 完 了 の 助 動 詞「 ぬ 」 の 終止形。 「疑わしくなりました」と訳す。 ③ 申す人 ぞ おはします らむ 係り結びの法則。 ○ 係助詞「ぞ」の意味→ 強意 ○ 結びの語→文末の現在推量の助動詞「らむ」の 連体形 。 「おはします」は、 「おはす」と同様「あり・をり・行く・ 来 く 」の尊敬 語 で あ る が、 サ 変 動 詞 の「 お は す 」 と は 異 な り 四 段 活 用 動 詞 で あ る。 ここでは、 〈いらっしゃる〉の意。 ④ え 出 で お は し ま す ま じ 「 え 」 は 呼 応( 叙 述 ) の 副 詞。 こ こ で は、 打 消 推 量 の 助 動 詞「 ま じ 」 の 終 止 形 と 呼 応 し て お り、 「 出 て お い で に な ることはできないだろう」と訳す。 ○ え…打消語 →不可能〈…できない〉 ⑤ い ざ 、 か ぐ や 姫 「 い ざ 」 は、 人 に 行 動 を う な が す 場 合 な ど に 用 い ら れる感動詞。 「さあ、かぐや姫」などと訳す。 ⑥ いかでか 久しくおはせ む 係り結びの法則。 ○ 係助詞「か」の意味→ 疑問・反語 ○ 結びの語→文末の推量の助動詞「む」の 連体形 。 「いかで」は疑問の副詞。ここでは、 「いかでか」の形で 反語 の意を表 ▼重要単語チェック▲ □あやし=①神秘的だ ②不思議だ ③奇妙だ ④疑わしい ⑤見苦しい ⑥身分が低い □いざ=①さあ ②さて □すなはち=すぐに■文法チェック
LS1071HR103BZ–04天 人 の 中 に、 持 た ① せ た る 箱 あ り。 天 あま の 羽 衣 ② 入 れ り 。 ま た あ る は、 不 死 の 薬 入 れ り。 一 人 の 天 人 言 ふ、 「 壺 つぼ ③ な る 御 薬 ④ 奉 れ 。 き た な き 所 の 物 ⑤ きこしめしたれば 、 御心地 悪しから むものぞ」とて、 持て寄りたれば、 いささかなめ給ひて、すこし、形見とて、脱ぎ置く 衣 きぬ に包まむとすれば、 在 あ る 天 人 包 ま ⑥ せ ず。 御 おほ 衣 んぞ を と り 出 で て 着 せ ⑦ む と す 。 そ の 時 に、 か ぐ や姫、 「しばし待て」と言ふ。 「衣着せつる人は、 心 ⑧ 異 こと に な る な り と い ふ 。 物 一 ひと 言 こと 、言ひ置くべきことありけり」と言ひて、 文 ふみ 書く。天人、 「遅し」 と心もとながり給ふ。かぐや姫、 「物知らぬこと、 ⑨ な のたまひ そ 」とて、 いみじく 静かに、 朝 おほ 廷 やけ に御文奉り給ふ。 ⑩ あわてぬ さまなり。 天人の中(の一人)に、持たせてある箱がある。天の羽衣が入 っ て い る。 ま た あ る( 別 の ) 箱 に は、 不 死 の 薬 が 入 っ て い る。 一 人 の 天 人 が 言 う、 「 壺 に あ る 御 薬 を 召 し 上 が っ て く だ さ い。 け が れ ている地上の物を召し上がったので、ご気分が 悪い ことでしょう」と 言って、 (薬を)持って近寄ったので、 (姫は)いくらかおなめになっ て、少し(の薬を) 、形見として、脱いでおく着物に包もうとすると、 そこにいる天人が(これを)包ませない。天の羽衣をとり出して着せ ようとする。その時に、かぐや姫は、 「しばらく待て」と言う。 「天の 羽衣を着せられた人は、心が(常の人間と)異なるものになるのだと いう。ほんの一言、言っておかなければならぬことがあった」と言っ て、 手紙 を書く。天人は、 「遅い」とじれったがりなさる。かぐや姫は、 「 道 理 の わ か ら ぬ こ と を、 お っ し ゃ ら な い で く だ さ い 」 と 言 っ て、 と ても 静かに、 帝 にお手紙をさしあげなさる。あわてない様子である。
全
訳
「竹取物語」
かぐや姫の昇天
(天の羽衣)
⑶
LS1071HR103BZ–05
⑧ 異 に な る な り 「 異 に 」 は 形 容 動 詞「 異 な り 」 の 連 用 形。 物 事 の 変 化 を表している「なる」は四段活用動詞の終止形、それに接続している 「なり」は伝聞の助動詞の終止形。 「異なるものになるそうだ」と訳す。 ⑨ な のたまひ そ 「な」は呼応(叙述)の副詞。ここは、 「おっしゃるな」 「おっしゃらないでください」などと訳す。 ○ な…そ → 禁止 〈…してはならない・…してくれるな〉 ⑩ あわてぬ さま この「ぬ」は下に体言の「さま」が続いているので連 体形。よってここは、下二段活用動詞「あわつ」の未然形+打消の助 動 詞「 ず 」 の 連 体 形 で あ る。 「 ぬ 」 を 完 了 の 助 動 詞 の 終 止 形 と 解 釈 し ないこと。 ① 持た せ たる 「せ」は使役 ・ 尊敬の助動詞「す」の連用形。このように、 「給ふ」などの尊敬語を伴わず、単独で用いられている「す ・ さす」は、 使役の意味である。 ② 入れり 四段活用動詞「入る」の命令(已然)形+完了・存続の助動 詞「り」の終止形。ここでは存続の意で、 「入っている」と訳す。 ③ 壺 な る 「 な る 」 は 識 別 に 注 意 が 必 要。 こ の「 な る 」 は「 壺 」 と い う 体言に接続しているので、断定の助動詞「なり」の連体形。ここでは 存在〈…にある〉の意で、 「壺にある」と訳す。 ④ 御薬 奉れ 四段活用動詞 「奉る」 の命令形。 「奉る」 は 「着る ・ 食ふ (飲 む )・ 乗 る 」 の 尊 敬 語。 こ こ は「 御 薬 」 と あ る の で、 「 食 ふ( 飲 む )」 の尊敬語で「御薬を召し上がってください」と訳す。 ⑤ き こ し め し た れ ば 「 き こ し め し 」 は 四 段 活 用 動 詞「 き こ し め す 」 の 連用形。 「聞く・食ふ(飲む) 」の尊敬語である。ここは「食ふ」の尊 敬語で、 〈召し上がる〉の意。 「たれ」は完了の助動詞「たり」の已然 形。 「ば」は接続助詞。 「召し上がったので」と訳す。 ○ 已然形+ば → 順接の確定条件〈…なので・…すると〉 ⑥ 包ま せ ず 打消の助動詞「ず」が接続しているため「せ」は使役・尊 敬の助動詞「す」の未然形。①と同様に単独の使用のため使役の意味。 ⑦ 着せ むとす 「む」 は意志の助動詞 「む」 の終止形。 「と」 は格助詞。 「す」 はサ行変格活用動詞の終止形。 「着せようとする」と訳す。 ▼重要単語チェック▲ □悪し(あし)=①悪い ②見苦しい ③不快だ ④下手だ ⑤不都合だ □文=①書物 ②手紙 ③学問 ④漢詩 □いみじ=①非常に ②すばらしい ③恐ろしい □朝廷(おほやけ)=①政府 ②天皇(帝) ③国家
■文法チェック
LS1071HR103BZ–06竹取物語
「 か く あ ま た の 人 を 賜 たま ひ て と ど め ① さ せ 給 へ ど 、 許 さ ぬ 迎 へ ま う で 来 て、取り 率 ゐ てまかりぬれば、 口惜しく 悲しきこと。宮仕へ 仕 つか うまつらず な り ぬ る も、 か く わ づ ら は し き 身 に て は べ れ ば、 心 得 ず 思 おぼ し め さ ② れ つ ら め ど も 、 心 強 く う け た ま は ら ず な り ③ に しこと、 ④ な め げ な る も の に 思しとどめ ⑤ られぬる ⑥ なむ 、心にとまりはべり ぬる 」とて、 今はとて 天 あま の羽衣着るをり ⑦ ぞ 君を あはれ と思ひいで ける と て 壺 つぼ の 薬 そ へ て、 頭 とうの 中 ちゆう 将 じやう 呼 び 寄 せ て ⑧ 奉 たてまつ ら す 。 中 将 に、 天 人 と り て伝ふ。中将とりつれば、ふと天の羽衣うち着せ奉りつれば、 翁 おきな をいと ほ し、 か な し と 思 し つ る こ と も ⑨ 失 う せ ぬ 。 こ の 衣 きぬ 着 つ る 人 は、 物 思 ひ な くなりにければ、車に乗りて、百人ばかり天人具して、昇りぬ。 「このように (帝は) 多く の人をおつかわしになり (彼らに私を) とどめさせなさいますが、逃れられない迎えが参って、 (私を) とらえて 連れて行っ てしまいますので、 残念で 悲しいことです。宮仕 えをいたさなくなったのも、こういう(常人とは違い)面倒な身の上 でございますから、納得のいかないこととお思いになっていらっしゃ るでしょうけれど、強情にも(ご命令を)お受けしなくなってしまい ましたこと、無礼な奴と(帝が私のことを)お心にとどめなさってし まったことが、心残りになってしまいました」と言って、 今は(別れの時)と言って天の羽衣を着るとき、あなたを いとし く 思い出しております。 と言って、壺の薬をそえて、頭中将を呼び寄せて(帝に)さし上げさ せ る。 中 将 に、 天 人 が 取 っ て 手 渡 す。 中 将 が 取 っ た の で、 ( 天 人 が か ぐや姫に)さっと天の羽衣を着せてさし上げると、翁を気の毒だ、 ふ びんだ とお思いになったことも消えてしまった。この天の羽衣を着た 人(=かぐや姫)は、物思いがなくなってしまったので、車に乗って、 百人ほどの天人を連れて、 (月世界へ)昇ってしまった。
全
訳
「竹取物語」
かぐや姫の昇天(天の羽衣)⑷
LS1071HR103BZ–07
⑦ をり ぞ …思ひいで ける 係り結びの法則。 ○ 係助詞「ぞ」の意味→ 強意 ○ 結びの語→歌の最後にある詠嘆の助動詞「けり」の 連体形 「ける」 。 ⑧ 奉らす 「奉ら」 は四段活用動詞 「奉る」 の未然形。 「奉る」 は 「与ふ ・ 授く」の謙譲語で、 〈さし上げる〉の意。帝への敬意を表す。 「す」は 使役の助動詞の終止形で、 「さし上げさせる」と訳す。 ⑨ 失せぬ 「失せ」は下二段活用動詞「失す」の連用形。 「ぬ」は完了の 助 動 詞「 ぬ 」 の 終 止 形 で、 「 消 え て し ま っ た 」 と 訳 す。 未 然 形 に 接 続 していないので、 「ぬ」を打消の助動詞「ず」の連体形と間違え、 「消 えない」と訳さないように注意すること。 ① とどめ させ給へど 「させ」は、使役 ・ 尊敬の助動詞「さす」の連用形。 この助動詞は他に尊敬語を伴う場合、多くは尊敬の意となる。ここで も尊敬の補助動詞「給ふ」の已然形「給へ」を伴っているが、使役の 意 で あ る の で 注 意 す る こ と。 已 然 形 の「 給 へ 」 に 下 接 し て い る「 ど 」 は接続助詞なので、逆接の確定条件となり、 「(私を)とどめさせなさ いますが」と訳す。 ○ 已然形+ど・ども → 逆接の確定条件〈…だが・…けれども〉 ② 思しめさ れつらめども 尊敬の助動詞「る」の連用形「れ」+完了・ 存続の助動詞 「つ」 の終止形+現在推量の助動詞 「らむ」 の已然形 「ら め」+逆接の確定条件の接続助詞「ども」 。「お思いになっていらっし ゃるでしょうけれども」と訳す。 ③ なり に しこと この「に」は、 四段活用動詞「なる」の連用形「なり」 に 接 続 し て い る の で、 完 了 の 助 動 詞「 ぬ 」 の 連 用 形 で あ る。 「 し 」 は 過去の助動詞「き」の連体形。 「なってしまったこと」と訳す。 ④ な め げ な る 「 な め げ な る 」 は、 ナ リ 活 用 形 容 動 詞「 な め げ な り 」 の 連体形。活用語尾の「なる」を助動詞と解釈しないこと。 ⑤ 思しめしとどめ られぬる 主語が帝なので、この「られ」は尊敬の助 動詞「らる」の連用形。 「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形。 ⑥ なむ …はべり ぬる 係り結びの法則。 ○ 係助詞「なむ」の意味→ 強意 ○ 結びの語→文末の完了の助動詞「ぬ」の 連体形 「ぬる」 。 ▼重要単語チェック▲ □あまた=①数多く ②非常に ③たいして □率る=①引き連れる ②携える □口惜し=①残念だ ②物足りない ③情けない ④つまらない □あはれなり=①しみじみと感動する ②情趣が深い ③いとしい □かなし=①かわいい ②面白い ③みごとだ ④ふびんだ
■文法チェック
LS1071HR103BZ–08竹取物語
その後、翁、 嫗 おうな 、血の涙を流してまどへど、かひなし。あの書きおき ① し 文 を 読 み 聞 か せ け れ ど、 「 何 せ む に ② か 命 も 惜 し か ら む 。 た が た め に か。 何 事 も 用 も な し 」 と て、 薬 も 食 は ず、 や が て 起 き も あ が ら ③ で 病 み 伏せり。 中 将、 人 々 引 き 具 し て 帰 り 参 り て、 か ぐ や 姫 を ④ え 戦 ひ と め ず な り ぬ ること、こまごまと 奏す 。薬の壺に御文そへ、 参らす 。広げて御覧じて、 い と い た く あ は れ が ら ⑤ せ 給 ひ て、 物 も 聞 こ し 召 さ ず、 御 遊 び な ど も な か り け り。 大 臣、 上 かん 達 だち 部 め を 召 し て、 「 い づ れ の 山 ⑥ か 天 に 近 き 」 と 問 は せ 給 ふ に、 あ る 人 奏 す、 「 駿 する 河 がの 国 に ⑦ あ る な る 山 ⑧ な む 、 こ の 都 も 近 く、 天も近く はべる 」と奏す。これを聞かせ給ひて、 逢 あ ふことも ⑨ なみだ にうかぶ我が身には死なぬ薬も何に ⑩ かは せ む そ の 後、 翁、 嫗 は、 血 の 涙 を 流 し て 悲 嘆 に く れ た が、 ( 何 の ) かいもない。あの(かぐや姫が)書き残した手紙を(周囲の人 が ) 読 み 聞 か せ た け れ ど も、 「 ど う し て 命 が 惜 し か ろ う か、 い や 惜 し くない。だれのために(命を惜しむだろう)か。万事必要はない」と 言って、薬も飲まず、そのまま起き上がりもせずに病み伏してしまっ た。 中将は、人々を引き 従え て(宮中に)帰参して、かぐや姫を(天人 と) 戦って止めることができなくなってしまった事情を、 くわしく (帝 に) 申し上げる 。薬の壺に(かぐや姫から帝への)御手紙をそえ、 差 し 上 げ る 。( 帝 は 手 紙 を ) 広 げ て 御 覧 に な っ て、 た い そ う ひ ど く お 悲 しみなさって、物も召し上がらない、 管 かん 弦 げん の御遊びなどもなくなった。 (帝は)大臣、上達部を お呼びになっ て、 「どの山が天に(最も)近い か」とお尋ねなさると、ある人が(帝に)申し上げる(には) 、「駿河 の国(=静岡県)にあるといわれている山が、この都からも近く、天 にも近くございます」 と申し上げる。これをお聞きになられて (帝は) 、 ( か ぐ や 姫 に ) 逢 う こ と も 無 い の で( 悲 し み の ) 涙 に 浮 か ぶ( ほ ど 悲嘆にくれている)我が身には、死なない薬(=不死の薬)も何に なろうか、いや何にもならない。
全
訳
「竹取物語」
かぐや姫の昇天(天の羽衣)⑸
LS1071HR103BZ–09
⑦ 駿河国に あるなる 山 「ある」 はラ行変格活用動詞 「あり」 の連体形。 「な る」は、伝聞〈…といわれている〉の助動詞「なり」の連体形。 ⑧ なむ …近く はべる 係り結びの法則。 ○ 係助詞「なむ」の意味→ 強意 ○ 結びの語→ラ行変格活用動詞「はべり」の 連体形 「 はべる」 。 ⑨ 逢ふことも なみだ にうかぶ我が身 「なみだ」は、 「無み」と「涙」と の 掛 かけ 詞 ことば 。「 無 み 」 は 形 容 詞「 無 し 」 の 語 幹 +「 み 」 で〈 無 い か ら・ 無 いので〉 という意味。 「(かぐや姫に) 逢うことも無いので (悲しみの) 涙に浮かぶ我が身」と解釈する。 ⑩ 何に かは せ む 係り結びの法則。 ○ 係助詞「かは」→ 反語 (係助詞「か」に係助詞「は」が下接したも の) ○ 結 び の 語 → 意 志 の 助 動 詞「 む 」 の 連 体 形 。「 何 に か は せ む 」 で「 何 になろうか、いや何にもならない」と訳す慣用表現。 ① 書きおき し 文 四段活用動詞「書きおく」の連用形「書きおき」に接 続しているので、過去の助動詞「き」の連体形。 ② 何せむに か 命も惜しから む 係り結びの法則。 ○ 係助詞「か」の意味→ 疑問・反語 ○ 結びの語→推量の助動詞「む」の 連体形 。 「か」はここでは 反語 の意で、 「どうして命が惜しかろうか、いや惜し くない」と訳す。なお、 「何せむに」も〈どうして…か、いや…ない〉 という反語を表す。 ③ 起きもあがら で 「で」は〈…ずに〉という意の打消接続の接続助詞。 ④ え 戦 ひ と め ず な り ぬ る 「 え 」 は 呼 応( 叙 述 ) の 副 詞。 こ こ で は 打 消 の 助 動 詞「 ず 」 の 連 用 形 と 呼 応 し て お り、 「 戦 っ て 止 め る こ と が で き なくなってしまった」と訳す。 ○ え+打消語 → 不可能〈…できない〉 ⑤ あ は れ が ら せ 給 ひ て 「 せ 」 は 使 役・ 尊 敬 の 助 動 詞「 す 」 の 連 用 形。 助 動 詞「 す 」 は 他 の 尊 敬 語 を 伴 う 場 合、 尊 敬 の 意 で あ る こ と が 多 い。 ここでも尊敬の補助動詞「給ふ」の連用形「給ひ」を伴っているので、 尊敬の意。帝に対する敬意を表している。 ⑥ いづれの山 か 天に 近き 係り結びの法則。 ○ 係助詞「か」の意味→ 疑問 ○ 結びの語→形容詞「近し」の 連体形 「近き」 。 ▼重要単語チェック▲ □具す=①そなえる ②従える ③持参する □奏す=①天皇・院に申し上げる ②音楽をかなでる □参らす=差し上げる □召す=①お呼びになる ②任命なさる ③お召しになる
■文法チェック
LS1071HR103BZ–10竹取物語
か の ① 奉 る 不 死 の 薬 に、 ま た 壺 具 し て、 御 使 ひ に 賜 は す 。 勅 ちよく 使 し に は、 調 つき の 石 いは 笠 かさ と い ふ 人 を 召 し て、 駿 河 国 に ② あ な る 山 の 頂 に も て つ く ③ ベ き よし 仰せ給ふ。 嶺 みね にてすべきやう教へさせ給ふ。御文、不死の薬の壺な ら べ て、 火 を つ け て 燃 や す ④ べ き よ し 仰 せ 給 ふ。 そ の よ し 承 り て、 つ は も の ど も あ ま た 具 し て 山 へ 登 り ⑤ け る よ り ⑥ な む 、 そ の 山 を ふ じ の 山 と は名づけ ける 。その 煙 けぶり いまだ雲の中へ立ち 昇 のぼ る、と ⑦ ぞ 言ひ伝へ たる 。 ( 帝 は ) あ の( か ぐ や 姫 が ) 差 し 上 げ た 不 死 の 薬 に、 ま た 壺 を そえて、御使いに お与えになる 。勅使には、調の石笠という人 をお呼びになって、駿河の国にあるといわれている山の頂に運んでい く べ き 旨 を お っ し ゃ ら れ る。 山 の 頂 で な す べ き こ と を お 教 え な さ る。 御手紙、不死の薬の壺をならべて、火をつけて燃やすべきとの旨をお っ し ゃ ら れ る。 そ の 旨 を( 調 の 石 笠 と い う 人 が ) ご 承 諾 申 し 上 げ て、 兵士 たちを たくさん 連れて山に登ったことによって、その山をふじの 山(=富士(たくさんの兵士)の山・不死(不死の薬)の山)と名づ けたということだ。その煙は今なお雲の中に立ち昇る、と言い伝えて いる。
全
訳
「竹取物語」
かぐや姫の昇天(天の羽衣)⑹
LS1071HR103BZ–11
○ 未然形接続 →願望の終助詞 ○ 「なむ」を取り除いても意味が通る →係助詞 ⑦ と ぞ 言ひ伝へ たる 係り結びの法則。 ○ 係助詞「ぞ」の意味→ 強調 ○ 結びの語→完了・存続の助動詞「たり」の 連体形 「たる」 。 ① かの 奉る 不死の薬 四段活用動詞 「奉る」 の連体形。 「奉る」 には、 「着 る・食ふ」などの尊敬語〈お召しになる・召し上がる〉の意もあるが、 ここでは「与ふ・授く」の謙譲語〈差し上げる〉の意。帝への敬意を 表している。 「召し上がる不死の薬」と解釈しないこと。 ② 駿河国に あなる 山 「あ」は、 ラ行変格活用動詞「あり」の連体形「あ る」の 撥 はつ 音便「あん」の、 「ん」が表記されない形。 「なる」は伝聞の 助動詞 「なり」 の連体形。 「駿河の国にあるといわれている山」 と訳す。 ③ も て つ く べ き 「 べ き 」 は 助 動 詞「 べ し 」 の 連 体 形。 こ こ で は 当 然、 もしくは命令の意。なお、 「嶺にてす べき やう」も同じ意味の助動詞。 ④ 燃やす べき この「べき」も③と同様の意味。または、適当〈…する のがよい〉の意で「燃やすのがよい」と訳してもよい。 ⑤ 登り けるより 「ける」は過去の助動詞「けり」の連体形。 「より」は、 原 因・ 理 由〈 … の た め に・ … に よ っ て 〉 を 表 す 格 助 詞。 「 登 っ た こ と によって」と訳す。 ⑥ なむ …名づけ ける 係り結びの法則。 ○ 係助詞「なむ」の意味→ 強調 ○ 結びの語→過去の助動詞「けり」の 連体形 「ける」 。 「 な む 」 は 識 別 に 注 意 が 必 要。 こ の 「 な む 」 は、 取 り 除 い て「 登 り け る より、その山を…」としても意味が通るので、係助詞。 ○ 連用形接続 →完了(強意)の助動詞「ぬ」の未然形 +推量の助動詞「む」の終止形・連体形 ▼重要単語チェック▲ □賜はす=お与えになる □よし=①理由 ②事情 ③由緒 ④手段 ⑤旨 ⑥縁故 ⑦情趣 □つはもの=①武器 ②兵士 □あまた=①たくさん ②非常に ③たいして