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政策決定過程における制度運用と中央地方関係の変化

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 法 学 ) 山 崎 幹 根

学 位 論 文 題 名

政策決定過程における制度運用と中央地方関係の変化

―戦後北海道開発政策を事例として一

学位論文内容の要旨

    (1) 本 稿 は 、 現 代 日 本 の 中 央 地 方 関 係 の 特 質 を 明ら かに する ため に、 中央 政府 の 行 政 組 織 と 地 方 自 冶 体 の 双 方 に よ る 制 度 運 用 を 考 察 す る と と も に 、 政 策 決 定 過 程に お い て 法 制 度 が ど の よ う に 機 能 し て い る の か を 分 析 す る こ と を 目 的 と し て い る 。 中央 地 方 関 係 論 に お け る 先 行 業 績 で は 、 中 央 省 庁 と 地 方 自 治 体 が 繰 り 広 げ る 動 態 的 な 活動 が 実 証 研 究 と し て 蓄 積 さ れ る と と も に 、 英 米 の 政 治 学 ・ 行 政 学 の 理 論 を 導 入 す る 形で 、 国 際 比 較 ・ 時 系 列 比 較 を 可 能 に す る よ う な 概 念 の 構 築 が 追 求 さ れ て い る 。 こ う した 成 果 を 踏 ま え 、 本 稿 は さ ら に 中 央 地 方 の 双 方 が 、 ど の よ う に 法 制 度 を 運 用 し な が ら政 策 決 定 を 行 っ て い る の か を 考 察 す る 必 要 性 を 指 摘 す る 。 す な わ ち 、 現 実 の 政 策 過 程に お い て は 、 法 制 度 の 規 定 と 実 際 の 運 用 と の 間 に 相 当 程 度 の 乖 離 が 生 じ て お り 、 こ のこ と が 日 本 の 中 央 地 方 関 係 を 理 解 す る こ と を 難 し く さ せ て い る 。 そ こ で 、 本 稿 は 、 中央 省 庁 と 自 治 体 の 双 方 に 焦 点 を 当 て つ つ 、 両 者 が ど の よ う に 法 制 度 を 規 定 ど お り 運 用す る 場 合 と 、 こ れ を 弾 力 的 に 運 用 す る 場 合 を 使 い 分 け て い る の か を 、 考 察 す る 。 そ して 、 中 央 省 庁 に よ る 自 治 体 へ の 協 調 と 統 制 、 ま た 、 自 治 体 に よ る 中 央 省 庁 へ の 自 律 と依 存 が 併 存 す る 形 態 を 解 明 す る 。

  (2) 上 記 の 課 題 を 検 討 す る た め に 、 本 稿 は70年 代 を 中 心 と し た 戦 後 北 海 道 開 発 政 策 を 検 討 事 例 と し て 選 択 し 、 中 央 政 府 の 行 政 組 織 で あ る 北 海 道 開 発 庁 と 地 方 自冶 体 で あ る 北 海 道 が ど の よ う に 、 外 部 環 境 の 変 動 に 対 応 し な が ら 、 両 者 の 関 係 を 規 定す る 北 海 道 開 発 法 を 運 用 し 、 開 発 計 画 を 作 成 し て い る の か を 明 ら か に す る 。 従 来 の 地域 開 発 政 策 研 究 で は 、 法 制 度 の 機 能 が 十 分 に 考 察 さ れ て い な か っ た 。 ま た 、1950年 に 制 定 さ れ た 北 海 道 開 発 法 は 、 中 央 地 方 関 係 の 規 定 を は じ め 、 他 地 域 の 開 発 諸 法 の範 形 と な っ て い る 。 そ れ ゆ え 、 本 稿 の 事 例 研 究 の 結 論 は 、 地 域 開 発 政 策 に お け る 中 央地 方 関 係 に 関 し て 、 多 く の 共 通 性 を 有 す る も の と 思 わ れ る 。

  そ し て 事 例 を 検 討 す る 際 、 北 海 道 開 発 庁 と 道 の 活 動 を 、 そ れ ぞ れ の @ 政 策 目 標の 設 定 ( 政 策 の 妥 当 性 や 開 発 庁の 存 在理 由を どの よう に明 示し てい るの か) 、◎ 法的 権限 ・ 財 ・ 情 報 ・ 組 織 ・ 政 冶 的 正統 性 など の政 策資 源の 調達 ・投 入( 現行 制度 での 政策 転換 ・ 政 策 刷 新 の し か た と そ の 限 界 ) 、 ◎ 政 策 決 定 手 続 き ( 政 策 が 合 意 を 形 成 す る 経 過) 、 の3点 に 分 析 視 角 を 設 定 し て 考 察 す る 。

  (3) 事 例 研 究 を 通 じ て 得 ら れ た 所 見 は 、 以 下 の よ うに 要約 でき る。 道と 開発 庁は 、

(2)

開発庁・開発局内部の統合および企画調整能カを高めるために、外部環境の変動に対 応するために、機会あるごとに北海道開発法の改正を試みてきた。ところが、道と開 発庁あるいは関係省庁闇との合意が形成されず、国策としての北海道開発という目標 お よび計 画作 成・ 決定 権限 を開 発庁 に与 えて いる50 年制定当初の開発体制が、ほぼ そのまま継続されている。さらに外部環境の変動への対応に加え、中央地方間におけ る十分な合意形成、双方が不足する政策資源の補完のために、両者は法制度上の規定 を柔軟に解釈し、現行の開発法上の規定から乖離した形で、可能な限り広範に運用し 開発計画を作成する。まず、道と開発庁は以下のような形で制度の「強化」を図る。

第一に、それぞれの計画作成時の日本経済社会の要請に適合させる形で国策としての 北海道開発を明示し、計画目標を「発展」させて設定する。すなわち、北海道開発法 の下で開発計画を作成する限り、両者は国策としての開発を追求しなければならない。

また、政策目標の一致は、道と開発庁との一体的な関係を維持するうえでも重要であ る 。両者 は、 ほぼ

10

年 に1 度行 われる 計画 作成 作業 を通 じて 、北 海道 が依 然として

「後進的な」社会経済構造を脱却していないことを再認識する。そして、経済的自立 を図るためには、さらなる基盤整備と工業化が必要であるという論理を共有し、現行 の開発体制が必要であるという結論を導き出す。第二に、両者は開発法改正による権 限拡大が困難な状況の中で、現行の体制の下で政策資源を調達する方法を制約されつ っも、予算や人員、権限などの政策資源を量的に「拡充」する。さらに、開発庁およ び開発局は官房部門の強化やプロパー職員の比率増大によって、組織の統合や企画調 整能カを高めるなど、政策資源の「質的変容」を図る。第三に、両者は政策および計 画の正当性を確保するため、決定手続きを「定式化」させる。開発法は開発計画の決 定手続きを明確に規定していない。ところが、計画の正当性を確保するために、道は 原案を知事の諮問機関である北海道総合開発委員会を通じて作成するとともに、原案 を道議会において審議・了承する手続きを経る。さらに中央政府段階では、資金計画 を挿入した計画案を閣議決定するように変化した。

  

同時に、両者は制度の「強化」と並行して、他方において現行の開発体制が想定し ていないような柔軟な解釈を通じて、制度規定を「弾力化」する形で運用を図る。社 会経済的環境との関係において妥当性を欠いたり、規定の中に問題点を抱える法制度 が改廃されることなく存続するという現象は、行政組織による抵抗や政策資源の維持・

増大といった対応によってのみ説明されるのではない。行政組織は可能な範囲の中で、

制度が予定しているものとは異なる要素を挿入したり、時には政策資源を減少させた りする選択を取ることによって、環境変動に対処するのである。そして、このような 制度の運用によって、行政組織は制度が有する制約要因を克服しようとする。第一に、

開 発法は 第2 条に おいて国策としての開発を目標に設定している。ところが、環境変 動への対応の必要から、あるいは道の要望を反映させるために、必ずしも日本経済社 会発展への貢献とは直接には結び付かない考え方をを取り入れ、政策目標を「多元化」

させた。第二に、道と開発庁は70 年代の環境変動に対して分野別構成比を変動させ、

開発予算という資源の「質的変容」によって適応している。それとともに、他省庁と の交渉過程において、政策資源を量的に削減する「縮減」を行う場合がある。第三に、

70

年代に おい て、 道は 政策 の正 当性 を調 達す るため、従来の決定手続きを「補完」

する方法を定めている。例えば、苫東開発の具体化に際して環境アセスメントを行う

(3)

と とも に、78 年にはこれを条例化した。また、発展計画の作成においても、様々な 形で道民の参加を組み込む方式が採用された。そして道は、開発法第3 条によって提 出 す る 計 画 原 案 を 、 自 治 体 計 画 と し て 活 用 す る よ う に 位 置 付 け 直 し た 。

  

以上のように、道と開発庁はそれぞれが北海道開発法を中心とした開発法制を、―

方における制度の保持・強化と、他方における制度規定の柔軟な解釈を、併存させる

形で運用して開発政策を進めている。そして、両者による制度運用を、時系列として

の 中央 地方 関係 の変 化と して 見た 場合、くD50 年代―両者問の意思疎通、政策内容

の 合意 形成 が不 足し てい た「 形成 途上 」段 階、◎

60

年 代前 半ー 両者間の緊密な調

整 活動 が繰り広げられ、政策内容に対する合意を形成していた「一体化」、◎70 年

代 後半 以後 ―政 策目 標の 多元 化、 政策決定手続きの相違が顕在化して2 っの計画が

併 存し 、双方が独自性を強めてゆく「並立」、へと変容したと見ることができる。

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

政策決定過程における制度運用と中央地方関係の変化

―戦後北海道開発政策を事例として一

  本論 文は 、中 央政 府の 行政 組織 と地 方自 治 体の 双方 によ る制 度運 用に おい て、 法制度カi ど の よ う に 機 能 し てい るの かを 分 析す るも ので ある 。現 実の 政策 過程 にお いて は、 法制 度 の 規 定 と 実 際 の 運 用と のあ いだ に 大き な乖 離が 存在 し、 法律 の明 文規 定だ けか らは 実際 の 行 政 過 程 は わ か ら ない 。特 に、 中 央政 府と 地方 自治 体と のあ いだ にお ける 政策 実施 にお い て その 傾向 は強 い。 本論 文は 、中 央政 府、 地 方自 治体 がそれぞれの利益を追求するなかで、

法 制 度 を 字 義 通 り 解釈 する 場合 と 、こ れを 弾力 的に 運用 する 場合 があ るこ とに 注目 し、 中 央 ・ 地 方 関 係 を 法 律の 解釈 ・運 用 を舞 台と する ゲー ムと して 捉え るこ とか ら出 発す る。 そ し て 、 法 律 の 解 釈 のな かで 、中 央 省庁 によ る自 治体 に対 する 協調 と統 制、 自治 体に よる 中 火 省庁 への 自律 と依 存が 併存 する 形態 を明 ら かに する 。

  本論 文は 、そ のた めの 素材 とし て、 北海 道 開発 庁と 北海道庁の関係を取り上げる。特に、

1970年 代 を 中 心 と す る 開 発 政 策 に お い て 、2つ の 組 織 が 北 海 道 開 発 法 を ど の よ う に 解 釈 、運 用し 、両 者の 関係 がど のよ うに 変化 し たか を追 跡す る。

  一方 で、 日本 の行 政に おい て法i;扛はきわめて 強い粘着カを持っており、外部環境の変化 に も か か わ ら ず 法 律の 改正 は通 常 大き な時 間、 労カ のコ スト をと もな う。 戦後 の国 策と し て の 北 海 道 開 発 政 策は 、高 度成 長 のな かで その 役割 を変 えな けれ ばな らな いが 、北 海道 開 発 法 の 改 正 は 困 難 であ った 。そ こ で、 開発 庁と 道は 、現 行の 開発 法か ら乖 離し た形 で、 開 発 行 政 の 制 度 強 化 を図 った 。余 剰 人口 の吸 収と 資源 供給 とい う戦 後初 期の 北海 道開 発か ら 実 質 的 な 政 策 目 標 は変 化し てい る にも かか わら ず、 日本 全体 の高 度成 長に 並行 して 、北 海 道 は 依 然 と し て 「 後進 的な 経済 構 造を 脱し てい ない 」と いう 認識 を両 者は 共有 しな がら 、 開 発 目 標 自 体 を 高 度 化 さ せ 、 累 次 の 開 発 計 画 の 量 的 拡 充 を 継 続 し て い っ た 。   ま た 、 計 画 の 正 統性 や実 効性 に つい ても 、国 では 資金 計画 をと もな った 北海 道開 発計 画 の |劉 臓決 定と いう 手統 きの 制定 、道 では 開 発計 画の 繊会による審議・承綛という民主的正 統 性の 調達 など の形 で、 制度 の強 化が 行わ れ た。

  同 時 に 、 両 者 は 開発 法体 制が 想 定し てい ない よう な弾 力的 解釈 を通 して 、新 しい 環境 へ のIjH発体 制の 適 応を 図る 。即 ち、 国策 とし ての 開発 の中 身を 徐々 に変 化 させ 、日本経済へ の 貢 献 か ら 道 民 福 祉の 向上 など 、 政策 目的 の多 元化 を進 めて いっ た。 また 、巨 大開 発事 業

127一

郎 勝

二  

  武

口 原

山 神

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

に対する榮亅竟アセスメント制度の条例化、開発計画の自治体計画としての活用など、国に 対する道の自律性を強める糸口がここに挿入されたのである。

  かくして、北海道開発法の運用を通して、北海道開発庁と北海道庁の関係は変化し始め、

自治体である道の們uが法律のt単力的な解釈を通して、独自のtli度設計、計画行政における 園からの棚対的自立化を獲得していったのである。

  本論文は、開発政策を素材としながら、中央省庁と地方自治体との問の統制、自立のダ イナ ミズム を実 証的 に描 いた 優れた作品ということができる。その視覚が1970年代ま でに 限定さ れて おり 、1980年 代から現在までの同時代的な分析が不十分という問題も あるが、日本の中央地方関係に関する研究に重要な知見を加えたと評価することが妥当で あ り、 審 査 委 員 の 全 員 一 致 を も っ て 、 博 士 の 学 位 に 相 当 す ると の 結諭 に達 した 。

128 ‑

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