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地方自治体における福祉政策形成の構造過程分析

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(1)

地方自治体における福祉政策形成の構造過程分析

日立市「生きがい事業団」を中心にして

松  村  直  道

      働行政サイドの巾高年層の雇用安定」対策を統合1 課題の設定      (注3)      する,「第三の道」といえるのか否か,大きな疑

本稿は,近年,高令者就労の領域において労働  問が残る。

政策および福祉政策の双方から注目の的になって   次に,福祉政策の形成過程に関する研究は,三 いる,雇用労働と生きがい就労の中間形態,ない  浦文夫らもいうように,従来,ほとんど取り組み

し「第三の就労形態」といわれる「生きがい事業  がみられていない。その背景には,第一に多くの      (注4)

団」に往鴇て,地方自治体における,その政策形  社会福祉研究者の関心が専ら,福祉サービスの提 成の過程を,諸組織の連関関係及びイッシューの  供内容や水準の低さと,施策の不安定性(換言す 変容過程嬢,う二つの視点を統合しながら考察す るなら潤民から見罐利性鰯弓さ)にあり,そ

るものである。その理由は以下のとおりである。  の水準向上と安定性の確保に向けて,ニーズの所 従来,高令者の生きがい問題は,老人福祉法に  有者の生活分析や福祉サービスの内容や提供方法 おける規定に典型視されるように,高令者の余暇  について,研究が進められたことにある。第二に,

利用という範囲内において,彼らが生きがいを見  自治体の福祉施策の多くは国の委任事務であり,

い出せるように,行政はどんな援助や福祉サービ  国県の補助のあり方によって,自治体の負担額 スを行うべきか,に焦点が設定されてきた。     (福祉予算)が決定され,厚生省の事業実施に関 他方,周知のように老人福祉法それ自体が,経  する「要綱」や「最低基準」によって,自治体の 済の高度成長に伴い必然的に派生する中高年問題  福祉施策水準が自動的に決定されるケースが多い に対する予防的対応策であったが,それにもかか  ために,研究者自身が「政策形成を論じることの わらず,中高年の失業問題は昭和40年以降,全く  有意味性」に価値を見出す事が少ないためである。

暖和されなかった。それどころか,第一次オイル   以上の理由に加えて,政治社会学的観点からみ シヨック以降,経済の低成長化と人員合理化の圧  ると,以下の二点も重要な意味をもっているよう 力は中高年層に集中され,企業や国家の無気力的  に思う。第一は,福祉政策の領域は,医療や交通,

対応の中で,次節にみるように幾つかの自治体に  産業,教育等の領域に比較すると,有力な圧力団 おいて「第二失業対策的事業」が生まれ,これら  体が政策形成に係わることが比較的少なく,政権 を止揚する形で,東京都は「民営の事業団方式」  党内部においても積極的な論議があるというより,

による「雇用関係を含まない就労事業」を開始し  厚生官僚による政策提案の段階で,すでにかなり た(いわゆる「高令者事業団」のこと)。     の合意形成がすんでいること。第二は,福祉の領 日立市の生きがい事業団も,東京都のそれに類  域では,他領域に比較して,政策目標についての 似した政策論議を展開しているが,果して,こう  価値論争があまりみられず,専ら革新政党側の提

した事業は,その一定程度の有効性は認めるもの  案する福祉施策の「量的拡大要求」を,どの程度 の,福祉行政サイドの「生きがい就労」政策と労  に実現するかをめぐって論争される場合が多かっ

(2)

た。したがって,福祉政策をめぐる多元的な価値   こうした問題に対する最終的な対応策としては,

関心への弱さや論争の不在が,政策形成過程それ  従来,労働政策の側からは失業対策,福祉政策の 自体への関心を低くさせてきたといえよう。    側からは授産所や無料職業紹介所等が存在し,高

(注5)

以上の諸理由により,福祉政策の形成過程,と  度経済成長期以降,主に労働政策の側の政策変容 りわけて,地方自治体のそれについてはほどんど  の中で,いわゆる「事業団問題」が派生し,シル 研究が行なわれていないといっても過言ではない。  バー人材センターの拡大発展と変容を経て,今日 しかし,高令者福祉の領域に典型視されるよう  に至っている。そこで,日立市の分析に入る前に,

に,高令者問題への対応方策が自治体の直轄事業  上記の経緯を労働政策の側から簡単に整理してお という形態をとらないで,「民間活動の良さをと  きたい。

り入れる」形で,多様な展開を見せている現在,   老人福祉法が成立した昭和38年に,労働省は緊 なぜそのような施策実施形態の変異が広く生じて  急失業対策法の改正を行ない,新たな事業として きたのかは大変に興味深い。こうした変異は,当  高令失業者等就労事業を提起したが,これはあま 然なことながら一方で,福祉部局を越えて自治体  り省みられることなく,昭和41年に一般の失業者 内の関連部局および首長らの政策形成への深い関  就労事業に統合されている。

与を導びくものであり,他方で,民間側の協力と   中高年層の失業問題が雇用の観点から抜本的な 理解を得るために,地元の諸関係団体がこれに係  転換をみたのは,昭和46年の「中高年令者等の雇 わってくるはずである。      用の促進に関する特別措置法」によってであり,

本稿では,自治体内部での動態と民間側の対応  ここにおいて,中高年者の失業対策事業への新規 の両側から考察するつもりであるが,ここには大  登録が停止され,代わって,職業訓練等による企 きな限界がある。それは,ほとんどの自治体にお  業内への吸収に重点がおかれることになった。

いて同様であるが,情報公開の原則が未確立のた   これに対して,全日自労や失業対策就労団体か めに政策立案過程の原資料が公開されず,聴取に  ら「失業対策事業の打ち切り反対」の運動が発生 よる「間接的な資料収集」に頼ることが多いこと  し,その「成果」として,自治体レベルにおいて,

である。      新らしい就労事業が始められている。当時の実情

したがって,本稿は,福祉政策形成の事実過程  について,小山昭作は次のように語っている。      (注6)

を整理する以上には,あまり発展していない。そ   「東京都労働局が,これら諸団体の要請への対 の意味で「緒論」の域を出るものではないが,以   応に苦慮していた時期に,既に都内を始め全国 下,構造過程分析の手順にしたがって考察を進め   約30数市において,高令者就労事業のニーズに たい。考察の手順は第一に高令者就労をめぐる政   応えるため,『生きがい事業』と称して公園清 策の動向,第二に「生きがい事業団」の生成と発   掃,花づくり等の軽作業による就労の場を設け 展・変容のプロセス,第三に,政策の評価,の順   る直営事業が小規模ながら始められていた。し で行ないたい。      かしながら,一定期間継続されるにつれて,第

      二の失業対策事業化の傾向が出はじあ,関係市2 高令者就労をめぐる労働政策      当局は困惑の色をかくせない状況がみられはじ

と福祉政策      めていた。

およそ現代日本において,高令者就労「問題」    一方,兵庫県西宮市をはじあ関西の一部の市 が成立する根拠は,第一・に所得保障の不完全性,   においては,失業対策事業就労者団体等のイニ 第二に労働における現在の定年制に象徴される年   シアチブにによる高令者団体が結成され,r高 令差別,および現代的な苦汗労働ともいえる不安   令者労働事業団』等と呼称され,自ら雇用主と 定就労の広範囲な存在にあるといえよう。      なり,高令者会員を就労させ,日雇失業保険,

(3)

松村:地方自治体における福祉政策形成の構造過程分析      19

日雇健康保険等の適用事業として推進されてい  近年,労働政策の側からの高令者就労に対する取 た。いわば,日雇労働者集団としての組織化で  り組みは意欲的である。しかし高令者の就労ニー

?驕E」         ズとの関係をみると稿者の落差1ま大きく激策

的対応の問題性を残している。この点は,後に,

昭和49年,東京都が高令者就労事業実施要綱を  日立市での事業団の施策評価において明らかにし 作成し,「雇用政策ないしは失業対策の立場に立  たい。

つものではなく,むしろ高令化社会の進展につれ

て,雇用になじまない高令者のための分野の施策   3 「生きがい事業団」構想の背景 として,r労働と福祉』にまたがる新たなニーズ   本節では,「生きがい事業団」という政策立案 に対応することをめざして」(小山昭作)財団方  の前提となる,中高年就労についての労動・福祉 式の高令者事業団を発足させて以来,他の自治体  ニーズがどのようなものであり,さらに既存の施 でも類似の組織作りへの取bくみがみられた。   策内において,どんな対応がなされていたのかに

他方,国家レベルにおいては,第一次オイルショ  ついて,当時の労働関係の資料を中心にして,考 ク以降の失業率の上昇,とりわけ中高年層へのし  察したい。

わよせと雇用不安を背景にして,専ら「雇用の安   最初に全国レベルの失業者の動態を各年の「労 定と能力開発を図るための施策の現実を図るべき  働力調査」からみると,完全失業者は,昭和48年 こ耀7声指摘されていた。       67万人,同51年には100万人を越え,同53年には しかし,同期における雇用政策調査会の諸報告  124万人に達している。その内,40才以上の失業 によれば,高令者問題の解決は「雇用対策のみで  者の割合は48年の343%から,53年の4U%へと は不可能」との考え方が強く出ている。(注、)    増大している。

昭和51年6月の第三次雇用対策基本計画では,   年令階層別の失業率の上昇は,第1図にみるよ 労働能力が低下した人々に対する年金等社会保障  うに,昭和48年から53年の間に,20才未満の若年 施策の充実を前提にして,60才までの定年延長,  層と55〜64才層で特に著しい。

64才までの再雇用ないし勤務延長,65才以上は   総理府の「労働力調査特別調査」 (昭和53年3

「社会参加の機会確保」という年令階層別の対応  月)によると,完全失業者の内61.7%は「離職者」

策を打ち出し,同54年の第四次基本計画では,61  であり,55才以上では727%の高水準を示してい 才以上層においても就業機会の確保のための対策  る。離職理由については,人員整理,事業不振,

を講ずるように答申して愉これは・従来とら 定年等の「会社都合」によるものが552%で湧れてきた労働政策と福祉政策との年令的分業関係  子の55才以上層では78.6%になっている(内,定

(65才がほぼ境界)を労働政策の側から打破する  年は50%)。

ものであり,それ自体は画期的なものであったと   昭和47年調査では,離職理由に占める「会社都 いえる、       合」(一非自発的な理由)の割合は46%である

昭和55年予算編成において,労働省から提案さ  から,オイルショク以降の不況の深刻化によって,

れた高年令者労働能力活用事業(いわゆる「シルバー  いかに企業の雇用調整が強力に展開されたかがわ 人材センター構想」)は,東京都内高令者事業団  かる。

の趣旨に沿って第四次基本計画を具体化したもの   以上の結果,有効求人倍率も昭和48年の226か といえる。      ら同50年はα65,同53年はα63へと低下し,55才

周知のように,シルバー人材センターはその後,  以下では,とりわけてその指数が低くなっている。

全国各地に設立され,昭和61年3月現在,260団 昭和48年と同53年とを比較すると,この間覇)

体,会員数12万人にまで拡大している。こうして,  間有効求人数は186万人から86万人へと半分以下

(4)

になっており,月間有効求職者は,遂に,82万人   再就職希望の理由は,「生活維持」68.4%,

から136万人へと60%以上の増大を示している。  「健康のため」16.4%, 「生きがい」1α1%,

特に45才以上の求職者は22万人から56万人へと  「その他」5.1%であり,男子の60才以上をとっ 160%余の増加を示している。         てみても「生活維持」は167人中の94人(556%)

r注12)

と高い。

(注13)

第1図 年齢階級別失業率

(%)       3

oO ocq

6

5一 o eq o ◎う eg

◎り

4一

◎り o ◎D o eq

oり oう

3 oり

2一       昭和53年      酬

@      e K

驕器1蝋

1一       昭和48年       醤

@      噌

引蚕誉

$一

藩軽和くP

O       l Φ

15 18 202530354045 50556065 70       榔

pぬ蜘晶轍董 醸

き?ゆ ◎○

iロ匠

ハ謡

資料 総理府統計局「労働力調査」

eq o Qq ◎○

騒幸巡

次に,不況による労働市場の急変動と,中高年 ?ゆ cq oり くロ

層へのしわ寄せを,茨城県内と日立職業安定所管

内についてみてみよう。

@全労働省労動組合茨城支部が昭和53年に実施し ス「中高年令求職者実態調査」 (これは同年9月

?ノ県内の職安窓口に来所した45才以上の求職者 T118名の内9.3%にあたる474名に,アンケー

塒製 』鍵謳罧旺1哩碑 くロ

シQ相罧柵

註駅避駅 早Q申

駅細翻独彙轡

ト調査したもの)によると以下のとうりである。

求職者の内,男子60才以上は35%と多い。退職

理由の内,会社都合によるものは,第1表にみる   再就職の希望条件は,中高年就労の厳しさを反 ごとく553%で,全国水準に等しい。手取賃金は  映して,賃金では「前の賃金くらい」53%,「前 第2表にみるように,5万円〜10万円未満が4a6  の賃金以下でもよい」28%,「前の賃金以上」15

%で最も多い。これは非常な低賃金といえる。   %,職種は「前と同じ」48%,「変わってもよい

(5)

松村:地方自治体における福祉政策形成の構造過程分析       21

第2表 最後の勤務先での手取賃金

(人)

項   目 割合 5万円未満 3 23 26 5%

10万円〃 114 93 207 43.6 15万円〃 136 20 156 33 20万円〃 50 3 53 11 25万円〃 21 2 23 5 25万円以上 6 1 7 2 不 明 2 0 2 0.4

332 142 474 100%

(資料)第1表に同じ 第3表 求人、求職状況

(人)

求 人 数 求 職 数 就 職 数 失業保険支給額i一般保険金) 日   雇

A労人員

52年度 7,591 5,788 2,299 685,286,593 743 51年度 9,680 5,583 2,658 661,273,245 11,773

50年度 7β66 5,637 2,347 577,923,290 14,567

49年度 11,130 4,648 2,290 140,251,054 17,332

48年度 19,444 4,687 2,735 147,614,109 13,806

47年度 14,597 4,791 2,474 147,737,591 6,973

(資料)日立商工会議所「日立市の経済動向」Nα1,Nα2より作成 第4表 中高年令者職業紹介業務取扱状況

(人)

月別 52        年        度 51年度

項目 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 1i月 12月 1月 2月 3月 合計

新規求職数 192 154 109 140 131 147 207 108 89 168 150 161 1,756 1,502

紹介件数 148 104 135 103 110 128 90 88 98 119 102 154 1,379 1,261 就職件数 32 24 31 31 29 28 50 36 38 29 26 41 395 452

資料 日立公共職業安定所「昭和52年度業務概要」

(6)

第5表 昭和51年度の日立市高令者無料職業紹介所の業務概況(O内が50年度実績)

求人 求人数(A} 求職数(B) 紹介数(C) 就職数の}

職種

軽作業・雑役 61 80 36 116 82 35 117 94 38 132 48 18 66 事    務 7 4 3 7 9 4 13 7 4 11 4 3 7 家事手伝留守番 10 10 10 1 11 12 1 11 12 9 9

店番・倉庫番 4 3 2 5 2 2 2 2 1 1

技  能  職 3 4 4 2 2 4 4 2 2

宿直・守衛 5 6 8 8 7 7 4 4

外    務 1 3 3 1 1

そ  の  他

合    計 ⑫91 ⑳100 ⑬51 ⑫151 ⑭104 ⑬50 ⑰154 ⑩116 ⑪53 ⑪169 ⑳59 ⑩30 ⑳89

48%, 「不明」2%,と,きわめて消極的である。  入,を背後に感じさせる。

次に,日立公共職業安定所管内の動態を第3表   しかし,社協の担当者の努力にもかかわらず,

からみると,昭和48年以降,4年の間に,求人数  両年間の求人倍率(A/B)は1.09倍からα98倍 は半分以下になり,逆に求職者は千人以上増加し  へ,就職率(D/A)は68.2%から578%へ,紹 ている。日雇就労も51年までは1万人以上の水準  介率(D/C)は7α5%から527%へと,共に低 を確保したものの,52年には急減している。    下しており,労働市場の動向と同様に,「福祉的

これらの内,中高年令者の動態を第4表からみ  就労」においても,きわめて就労環境が悪化して ると.昭和51年から52年にかけて,求職者は1502 いることに注目したい。しかし,ここで重要なご 人から1756人へと増加しており,紹介件数も1261  とは,就労環境の悪化以上に,「福祉的就労」市 件から1379件へと微増しているが,実際の就職件  場の拡大という事実である、筆者は,この「市場 数は452人から395人へと低下しており,紹介件  の拡大」と無料職業紹介所の機能拡大という事実

数に対する就職件数の比率もかなり低い。     が,「生きがい事業団」という政策立案の第一の       (注14)

最後に,福祉的就労の面から,日立市社会福祉  誘因になった,と推定している。

協議会内に設置されている,高令者無料職業紹介

所の「取扱実績」を,昭和50年と51年度にっし謄)  4 「生きがい事業団」の構想立案から みてみよう(第5表参照)。      基本計画策定へ

まず,職種は「軽作業・雑役」が約8割を占め   (1)住民要求と行政側の対応

       (注16)ていることに注意されたい。男女の「計」では・   新規の政策立案の前提として,通常,社会的な

両年間において・求ん求職・紹介・就職の各絶  ニーズの発生とその増大,第二に,二_ズを行政 対人数が25倍〜3倍に増大しており・社協によ 施策として採用するか否かの適合性の判断,第三 る適職の開発意欲・職安からの求職者の大きな流  に全体計画との関係での施策の実施形態,の三点

(7)

松村:地方自治体における福祉政策形成の構造過程分析       23

が検討課題として存在する。      農林漁業の振興,健全な青少年育成)が掲げられ,

ここでは第1,第2の二点について考察を加え  第三番目に福祉が入っている。51年度には三っの たい。       重点(ひとづくりの基本である教育,生活環境の

中高年層の雇用ニーズの増大,また労働市場か  整備,民生安定),52年度には,51年度に引き続 ら事実上排斥された雇用ニーズの流人による,福  いて三つの重点が掲げられているが,第一と第二 祉的就労ニーズの増大という事実については前節  の順位が入れ代わっている。

で考察したが,自治体行政側は,この事態にどう   いつれにしても昭和50〜52年における「福祉」

対応したのかをみてみよう。その際,「雇用」問  は,生活基盤整備,教育の充実,に次ぐ第三位の 題は専ら職安の管轄なので,自治体内での対応は,  位置にあり,内容的には障害者福祉に重点がおか 高令者「福祉」が焦点となる。      れている。しかし,昭和52年度には「市民福祉の 第6表 日立市の老人人口の推移 充実」の第一検討課題として「老人対策」が浮上

オており,施策方針における「順位」から判断す 昭和餉 人 口(A) 65才以上人口(B) 比率農) る限りでは,障害者福祉から老人福祉への重点の

44 190,571人 8,847 人 4.6% 移向がみられる。       (注18)

45 193,210 9,158 4.7 53年度は,ほぼ前年と同様な施政方針の下に,

ねたきり老人とひとり暮らし老人の在宅福祉サー 46 198,582 9,536 4.8 ビスの「整備」に重点がおかれ,54年度は,その 47 198,983 9,920 5.0 「充実」という方向がみられる。

48 201,955 10,536 5.2 同年の「施政方針」において「生きがい事業団」

の設立構想が表明されているが,その順位は,上 49 203,904 10,936 5.4

記の「充実」および市民ボランティアに次ぐもの 50 204,537 11,654 5.7 であり,政策の順位性から判断する限り,その画 51 203,646 12,263 6.0 期性にもかかわらず,さほど重要な新規政策とは,

52 204,059 13,017 6.4

考えられていなかったようである。      (注19)

以上,「施政方針」内容の年次的分析からは,

(注)各年の「住民登録」より作成

昭和52年頃から市民福祉の中でも老人福祉が最重 日立市の住民登録によれば,老人人口(65才以  点課題となり,在宅福祉の整備から充実という文 上)の動向は,第6表にみるように,年々増大し  脈を経る中で,「生がい事業団」が提起されてい ており,老人人口比率も,昭和44年の46%から  ることが判明する。しかし,ここでは「提起」に 同52年にはα4%へと上昇している。60才以上の  いたる諸契機は明らかではない。

高年令就業者も国勢調査によれば,昭和40年から   行政施策化に向けての最初の契機は,高令者就 45年の間に4276人から5558人へと増加し,就業者  労機会の確保についての,市民団体からの陳情で 全体に占める割合も50%からα0%へと上昇し  あったといわれる。しかし,当時の市議会や市長 ている。      への陳情書類をみても,どれが,主要な契機になっ

こうした人口の高令化と高年令就労者の増大に  たのかは明確でない。

対して,日立市当局は,どんな対応をしたのか,   市当局が,政策立案にむけて,必要性が高いと この点について,各年度の「施政方針並びに予算  判断せざるをえなかった要因は,以下の三つの環 案大綱」の内容から考察を始めたい。       境変化にあったようだ。

(注17)

昭和50年度には,「5つの公約」(住みよい生   第一は,前節でみたような「福祉的就労」への 活環境,民主教育の推進,社会福祉の向上,商工  期待増大とそこでの就職率の低下である。このこ

(8)

とから,抜本的な福祉的就労機会の再編成をせま  公園等の野外作業,がイメージされている。

られたこと。      同年11月には「老人。障害者福祉推進連絡会議 第二は,職業安定所が中高年令者の仕事紹介に  要綱」が作成され,正式な構想立案が始まってい ついて,新たなコーナーを設定したり,職業訓練  る。このプロジェクトチームのスタッフは関係11

に努力を傾注し始めたこと。日立製作所が定年年  課の課長と「市長が適当と認めた者」で,かなり令を6・才に引き上げ濯用確保の実質努力をした 総舗総角から事業団を検討しょうという,市

こと。先進都市で,「生きがい事業団」に類する  側の積極的な姿勢が伺がわれる。連絡会議への付 独自事業を開始する自治体が増大した等,外部諸  議事項は「地域福祉の推進」,「在宅授護の充実」,

機関における改善力の具体化. 「注2°/   「福祉施設の充実」,「生きがい文寸策の雛」,

第三は,「いきがい事業団」に類する事業を実   「保健医療の充実」,「その他の施策の充実」と 施する場合,それを直轄形態にするか,委託方式  なっており,要綱の名称が示すように,福祉施策 をとるのか,または新しい「公設民営」の方式を  の総合的な体系化と強化拡充を図る,という文脈 とるのか,が大きな論点になる。しかし,日立市  の中で,事業団の構想が検討されることになった。

では,それ以前に,「太陽の家」や社会福祉事業  こうした「総合的な体系化」の視点が,事業団に 団,等にみられるように,運営委員会方式,また  障害者を加えるのみでなく,後にみるような個性 は事業団方式の「公設民営」による福祉事業の拡  的な事業団構想を生み出す出発点になっているよ 大を,行政自身がすでに経験しているために,事  うだ。

業の実施形態や方式をめぐる法律議を最初か 講婆議では,昭和55年に事業団発足をめざし

ら始める必要がなかったことである。       て,当局の課題として,高令者等の仕事意向調査,

企業主に対する仕事依頼アンケートの実施,54年

 (2)行政内部におせる構想立案の過程      からの暫定的な事業発足,高令者無料職業紹介所構想立案の基礎作業の一つとして,高令者就労 との機能謹,等があ騰れている。事業の実施状欄査が,貼部老人福祉課を中心 最初の居銚して,昭和5算1月から2月にカ、

にして,昭和53年夏に実施されている。他市の実  けて,高令者と障害者を対象にした就労意向調査 情は(注20)に示した通りであるが,これらの就  が実施されている。

労事業の多くは,すでに考察したように,自治体 その鞭をみ製調査対象は高令者6585人,障 の直轄事業として,高令者向けの「第二の失業対  害者466人であり,郵送法によって実施され,回 策」としての性格が強い。つまり,これらの諸事  収率は6a1%,740%とかなり高い。生きがい事 業の多くは,昭和46年に国側が「特別措置法」の  業への「参加したい」は高令者31.2%,障害者 立法化によって,失対事業の新規登録を停止した  357%と,かなり高い。その希望理由を高令者の ことに対する,先進的自治体の「対抗的」ないし  男子についてみると,「健康のため」6a4%,

は代替的な対応策だったのである。したがって,  「社会に役立ちたい」349%,「能力を生かした

「社会参加と生きがい」を重視する市当局からす  い」192%,が上位三位を占め,「生きがい事業」

ると,主な検討対象は,金沢市や西宮市のような,  のニーズの高さを示している。反面,「家計補助」

事業委託方式または事業団方式であったようだ。  1&3%,「生活維持」17.0%の合計は35.3%であ 53年秋には,計画原局の内部において,構想の  り,経済的理由をあげる者も無視できない。障害 大枠が検討されている。それによると,事業の名  者の場合は「家計補助」と「生活維持」の合計が 称は「日立市生きがい福祉事業団」,対象は高令  5α4%と,実に過半数に及んでいる(以上,複数 者に加えて,障害者も入れる。目的は社会参加と  選択)。

生きがいにおかれ,就労内容は,企業への出向,   その調査の結果,プロジェクトチームが考える

(9)

の      

松村:地方自治体における福祉政策形成の構造過程分析      25

ような「生きがい就労」のニーズがかなり高い割  ている。労働能力と意思を有し働くことが生活の 合で存在することが確認されたが,他方,経済的  糧の獲得ではなく,生きがいの発見と増進にある 理由からの就労ニーズもいっそう高く存在するこ  者の集団(任意団体)に対する,仕事の開拓と情

とが判明している。さらに,高令者男子の「希望  報の「提供」啓蒙を目的とする。

する勤務形態」では,1週4〜5日,1日6〜7   つまり,事業団の会員である高令者に対する,

時間が過半数に達しており,就労目的では「生き  就労情報の「伝達」は任意団体が行うものとされ,

がい就労」と回答しながらも,就労内容では「福  競合関係は成立せずむしろ,三者が生きがい対策 祉的就労」というより,「一般雇用」に近いもの  の推進を補完する関係に立つ,と理解されている。

を望んでいる。       昭和54年5月には,全体的な討議をふまえてプ 調査実施と前後して,チーム内では,事業団設  ロジェクトチームは,「生きがい事業団」の設立 立に係わる制度的な問題点の整理と検討が行なわ  基本計画をとりまとめている。その要点は以下の れている。主な論点は,第一に財団法人形態の適  とうりである。

用の是非,第二に法人内組織,第三に基本財産,   (a) 社会の高令化との関係

第四に無料職業紹介所との関係である。       「日立市における60才以上の人口比率は,昭和 第一の論点について。チーム内での主流の意見  53年11月には1α3%になっており,近年,高令者 は,この事業は行政の直営でやるべきではなく  人口の増加率は著しい。高令者人口が増加すれば,

(第二失対化への懸念),民間人の力で,自ら作  当然に健康な老人の生きがい対策や要援護老人の り出していく福祉事業,にすべきという考え方で  福祉対策が行政の重点課題となり,長くなった老 あり・したがって法儲を与えられた財団騒IF 後をみんなで喜べるような施策の展開が期待され・

すべきだ,という。      かつ,注目される。」

第二の論点について。事業収入の伴なう事業を   (b) 障害者の社会参加の促進

財団法人が実施すること(具体的には,労働者の   「障害者の社会参加の促進のたあ,各種の立法 あっせん供給事業)は法令違反の疑いがでてくる  措置が講ぜられているが,現在の経済情勢・市場 ので,財団法人とは別に任意団体を作り,そこで  メカニズムなどから,その実効を挙げることは,

会員組織を作るという,二段がまえの組織案が結  なかなか困難である」。それにもかかわらず「社 論になってい魯ここには凍京都の高令者事業 会参加のニーズが急速に高まってきており・この 団における,都と区(または市)レベルの組織連  ための環境づくりと条件整備が当面する大きな課 関が,検討の素材になったようだ。       題である。」

第三の論点について。通常の財団法人は基本財    (c) 市民が創り出す福祉(一民間の主導性)

産の法定果実(利子)をもって,事業運営をして   「高令者及び障害者の生きがいを助長するため いるが,この事業にはそんなに大きな基本財産は  には」「社会的適応を容易にする手段を講じ」,

期待できない。結論としては,市が出資者として  彼らが「社会に貢献できることを」「地域社会全 1千万円の基本財産を作り,不足する必要経費は  体に認識してもらう必要がある。」

市が助成することになった。       それゆえ,「この事業は,行政から与えられる 第四の論点について。結論としては,職安が64 福祉でなく,市民自からが創り出してゆく福祉と 才までの職業紹介をするのに対して,高令者無料  いう認識に立って,いわゆる民間型の推進体制を 職業紹介所は,65才以上の高令者に対して,長期  とるべきであり,そのために,法人格を与えられ の雇用または一般の労働条件になじむ者の就労あっ  た公益法人である財団法人が,推進の中核となる せんを取扱う,という分業関係の認識を前提にし  ものである。」

て,事業団の業務の性格をほぼ次のように規定し

(10)

第2図 生きがい事業団をめぐる組識連関図 日  立  市 助成

■ 一 . o , o . 一 雫 一  …     , 噂 o ■ ■ 日立市社会福祉

協  議  会 i指導

日立市高齢者

無料職業紹介所 °脚 曹

立助成    鏡/指               ⑦/導  誰誇

;男i筆

奄穴盾苑I澹

i  ∀

i仕 普及啓蒙

L報活動 (仮 称) 仕事の情報繒W、開拓

官 公 庁   i

@      i事

市     民 事  業  所 iの

関 係 団 体

財団法人

坥ァ市生きがい事業団 個     人

…iあ

参加、協力       協 力       1つ

(仕事の情報提供) (仕事の提供側)    :

@       iせ       …

@     能力開発       4     iん

@     響及啓嚢 尊 脇灘供 鍵/   i噛     広報活動   競   奉仕活動のあっせん  の             i      奉仕活動   .      i

@     の指導理   絶ψ   …       助      i  箏       /の         i       /専      i

 意団体 i会員組識)

○盤団

  ノ      i

@!       i   !       i!      i!       …

例)福祉の店 (会員組識)

      :

D...一.........._...隔一。.._........−..,...........

も 者者 Ω

@ Oq)○○○○○

(11)

松村:地方自治体における福祉政策形成の構造過程分析      27

(d) 「生きがい」の考え方        許可申請書」が「日立市長,立花留治」名で,茨 生きがいは「十人十色であり,それぞれ個人ご  城県知事に提出されている。同時に提出された とに異なり」,「社会参加による地域社会との調   「設立趣意書」には,「公的対応領域」と「私的 和と連帯感」によって,「日常生活の充実感」も  対応領域」が「密接なる連携」の下で,「70才代 増し,「これが生きがいにつながるものと考えた  までの健康なヤングオールド」に対して,「可能 い。」ここで,「生きがい」の具体的な構成要件  な限り社会参加の機会を提供」すべきだ,と述べ として「働く」「奉仕する」「学ぶ」の三要件が  ている。

      (注28)起され,これらが,「生きがい事業団」の取扱   以上が,「生きがい事業団」の構想立案から,

業務として新たに設定されている。       設立許可に至るまでの,政策形成の動態的な過程

(e) 主な事業内容       であるが,この過程で,市当局が常に強調してい 能力開発訓練・研修・社会奉仕活動を推進する  る「市民参加」は,どのように機能しているのだ ための組織的活動・働く意欲のあるグループ作り  ろうか。次に,この点を考察してみたい。

の促進とグループ運営の援助・育成。仕事の開拓   昭和53年11月に,庁内にプロジェクトチームが と情報提供。この事業についての市民への普及活  編成され,公的な検討が開始されて以降の,最初 動。      の市民との関係は,翌54年2月に実施された,高

(f) 組織と市民参加       令者,障害者,企業主に対する「意向調査」であ

「市民各層の参加を求めながら,多様化した高  る。次に庁内での基本計画がほぼ固まった5月に,

令者・障害者のニーズに効果的な公益事業を展開  非公式ではあるが,民生委員や老人クラブ等の役 する」ために,理事は「商工団体,労働団体,社  員から意見聴取が実施されている。さらに,許可 会福祉団体,学識経験者,行政機関,その他」か  申請書の検討段階にあった,8月中に,任意団体

ら10名程度で構成する。      の会員として期待される階層の人々(老人クラブ,

以上,「生きがい事業団」の構想立案から基本

計画までの政策形成過程を考察してきたが,基本   第7表 設立準備委員会への市民参加区分 計画によって明確になった,「生きがい事業団に

関する全体的な組織連関図は,第二図のようにな 選出区分 役    職    名

る。 商工団体 日立商工会議所会頭

上記の「設立基本構想」は5月下旬の庁議決定 労働団体 県労連日立地区協議会議長 を経て,6月の市議会産業民生委員会に報告され

トいる。 社会福祉

c   体

日立市社会福祉協議会会長 坥ァ市連合民生委員協議会会長 坥ァ市老人クラブ連絡協議会会長 5 「生きがい事業団」の設立と市民参加 ボランティアグループ代表

日立市福祉団体連絡協議会代表 事業団設立基本構想のプロジェクトチームによ 日立市長

る原案は,庁議,および市議会関連委員会におい 日立市収入役 て,ほとんど修正はなかったようである。 行政機関 日立市民生部長

市レベルでの意思統一をふまえて,6月になる 日立市議会議長

坥ァ市議会産業民生委員会委員長 と,事業団設立の許可権者である茨城県知事の申

日立市青年会議所理事長

請窓口になっている老人援護課との事前協議が開 日立市民運動推進連絡協議会会長 始され,8月上旬までに,許可申請書の内部的検 学職経験者 株式会社日立製作所

討が行なわれ,事業団設立準備会と設立総会を経 日立工場総務部長 て,9月に,「財団法人日立生きがい事業団設立 日立市教育委員

(12)

第8表 日立働くしあわせの会の会員構成

  年齢

@  一分 ォ別

59歳

@以下 60歳 61歳 62歳 63歳 64歳 65歳

66〜

@69歳

70歳

@以上

7人  人29 31人 23人 32人 25人 28人 24人 11人 210人

9 7 8 21 11 13 11 9 4 93

16 36 39 44 43 38 39 33 15 303

(昭和55年4月30日現在)

第9表 生きがい事業団の政策形成過程

年  月 関  係  機  関 内      容 53.11.下 老人障害者福祉推進連絡会議設置 設立準備のための庁内プロジェクトチーム構成

12.上 連絡会議 設立趣旨の確認及び意向調査実施決定

54.1.中 連絡会議 意向調査原案検討

2.上 意向調査票発送

2.下 連絡会議 事業設立基本構想(案)検討

3,下 意向調査集計・連絡会議委員に報告

5.中 連絡会議 事業団設立基本構想(案)決定

5.下 民生委員・老人クラブ等の意見取聴

5.下 庁  議 事業団設立基本構想決定

6.中 市議会産業民生委員会に報告 事業団設立基本構想について報告 6.下 県老人援護課との協議 基本構想を提出

8.上 庁  議 事業団設立許可申請書検討

8.上 市議会産業民生委員会に報告

8.上 県老人援護課との協議 申請書(案)の提出 8.中 老人クラブ障害者団体代表者との話合 事業団設立について 8.下 事業団設立準備委員の委嘱 委員16人委嘱 8.下 事業団設立準備会

(注)上は上旬、中は中旬、下は下旬の略

障害者団体)の代表との話し合いがもたれている。  らいがある。「第三の就労」という生きがい事業 以上の経過からみると,市当局は,政策形成の  の性格からすれば,勤労団体の計画への参加も当 各区分ごとに,意見聴取という形態で,政策の直  然に必要であったといえる。

接的対象者と想定される人々に限定して,「市民   しかし,8月下旬に設立された,事業団設立準備委       篭 Q加」のシステムを採用してきたことが判明する。 員会(設立許可以降は理事会に改組)の委員構成と

ここには市当局のそれなりの努力が伺がえるが,  委員会での討議の様子からすると,かなり多様な市

「市民参加」の対象が,あまりにも福祉的な関係  民階層から委員が選出され,意欲的な討議が行なわ 団体に片寄りがちであり,行政からみて意思疎通  れたようであり,政策形成の後半期には,かなり改

が容易な団体内において意見聴取が行なわれたき  善された市民参加が確保されたように思われる。      (注29>

(13)

松村:地方自治体における福祉政策形成の構造過程分析      29

設立準備委員会の選出区分と役職名は,第7表の  転換は「補助金の論理」によってなされたといっ とうりである。      ても過言ではない。ここでの「論理」とは,国県,

設立準備委員会一理事会が,組織管理面からの  自治体,社団法人の三者間において自治体(日立 市民参加であったのに対して,主体的な市民参加  市)は補助金の受け入れによって,社団法人の補 としての「任意団体」は,「日立働くしあわせの  助額を大幅に節約できるという経済合理性を獲得 会」として昭和54年12月に結成された。会員構成  するが,民間組織の側からみると,社団法人とし は,第8表のとうりである。      ての資格条件および補助基準の達成という,二重

最後に,政策の立案から事業団の設立に至る経  のかなり厳しい条件を課せられることになり,市 過を,要約的にフォローすると,第9表のように  民団体としては組織的に疎外されかねない状況に なる。      おかれるに至っている。

(注30)       (注32)

      「日立働くしあわせの会」はシルバー人材セン6 組織構想の転換と補助金の論理       ターへの改組に伴ない,次のような運営および事

昭和54年12月に結成された「日立働くしあわせ  業実施上の要請を受けている。

の会」は,設立後3ケ月間に会員数は287人にふ   第一に,運営にあたっては,県,市,職安,無 え,受託の仕事件数も17件に達し,総代14人を中  料職業紹介所,生きがい事業団等との「相当に緊 心に,順調な市民中心の活動を展開し始めている。  密な連携」を図ること。

しかし,昭和54年3月末に,労働省の「シルバー   第二に,「日常生活に密着した補助的・短期的 人材センターの100ケ所設置構想」を背景にして,  な仕事」を請け負い,その際,「最低賃金を下回 県の職業安定課から,かなり強い設置要請を受け  らないよう配慮」する。

ている。       第三に,組織については,総代会を理事会に改

r注31)

要請下での市当局,生きがい事業団,日立働く  め,新たに,学識経験者20人以内で,評議員会を しあわせの会,の論議は,生きがい事業団の趣旨  設ける。

を変えないで,いかにしたら補助金を導入できる   第四に,「日立働くしあわせの会」は「愛称」

のかという経済合理性の最大限の追求,の下でな  として残す。

されている。この背景には,補助金は積極的に受   社団法人への改組は,六月市議会での予算措置 け入れたいという市側の強い意向があったことは  を得て,7月に行なわれている。

言うまでもない。       7 政策の実施効果の評価 論議の結論としては,第一に,生きがい事業団

と労働省のシルバー人材センター溝想は,基本目的が   前節までに「生きがい事業団」の生成過程につ 一致している。第二に,「日立働くしあわせの会」を,  いて,福祉政策の立案後の経過を中心にして考察 事業団の下部組織から切り放して公益法人として  してきた。本節では,この政策形成過程について,

の社団法人に改組すれば,国の補助基準に適合す  幾つかの観点から評価を試みることによって,結 る体制が整えられる,との判断から,補助金導入  論としたい。

及び生きがい事業団の組織構造の転換が「短期的   第1に,政策形成過程への市民参加について。

な議論で決定」されている。その結果,「日立働  この点については,村松岐夫が指摘したように,

くしあわせの会」は社団法人「シルバー人材セン  「生きがい事業団」それ自体としては,全く新し ター」として,「生きがい事業団」とは組織的に  い統合的な性格を有する福祉政策であったが,政 並列され,直接に補助金を受けることになった。  策対象がいわゆる「弱者」であったたあに,諸社 生きがい事業団の事業が正に本格的に開始され  会階層にわたる利害関係の対立,という側面がほ ようとする矢先における,こうした組織構造の大  とんどなく,したがって,住民側からの強い参加

(14)

第10表入会の動機と就労の条件希望

(%)

入A        昭和 55/2当時 56〜57 条 件 55/2当時 56〜57 健康のため 52.4 51.8 3時間以内 13.4 2.0

友達がほしい 6.4 6.6 一 日

磨@り 4〜6時間 63.6 71.0

自分の能力を発揮したい 3.2 4.9 7〜8時間 23.0 27.0

社会のため役立ちたい 13.9 12.1 3日以内 28.9 23.6

小遣いがほしい 12.8 12.8 一 週

磨@り 4〜6日 44.9 63.1

家計の補助又は生活の維持 11.2 11.8 毎   日 26.2 13.3

(注)生きがい事業団の業務報告資料より作成

第12表会員の希望職種と仕事の受注状況

第11表仕事の受注先の構成 (%)

(%) 希望職群 受注状況

昭和 55 年 57 年 1 専門技術群 2.9 0.3

分公 共 民 間 公 共 民 間 2 事務整理群 15.0 5.3

受託件数 16.6 88.4 15.9 84.1 3 施設管理群 6.4 5.1

契約金額 41.9 58.1 42.3 57.7 4 販売外交群 0.4 0.8

5 技 能群 17.5 48.1 延就労人数 52.1 47.9 53.3 46.7

6 軽作業群 52.2 35.7

(注)第10表に同じ

7 サービス群 5.4 4.6

i8その他

0.2 0

(注)第10に同じ

第13表紹介業務実績の推移       (人)

昭和 53 年 54年 55年 54年度に対する55年度の増減

求人件数 109 252 215 一37(−14.7%)

求 人 数 157 379 291 一88(−23.2%)

求 職 数 166 318 250 一63(−21.4%)

紹介 数 191 301 276 一25(− 8.3%)

就職 数 106 147 178 +31(+21.1%)

(注)第10表に同じ

要求もなく,市当局側の「市民参加重視」という  がある。したがって,本稿では,この手法の方法 姿勢に支えられて,市民参加の内実が専ら形成さ  的有効性はあまり成功していない。

れた,と結論することができる。政策形成過程へ   第2に,補助金の論理と官僚性について。この の「構造過程分析」の手法の適用は,政策利害の  点については,前節でみたように,専ら市当局側 対立を,地域内の諸社会層や官僚組織との関連で  の経済合理性的判断の下に,容易に結論が下され 理解することによって,地域社会内における階級  た。しかし,事はそれ程に単純ではない。当時 対立や官僚支配の実相を明らかにし,民主的な地   「福祉見直し」の風潮の中で,国側はほとんど新 域政策のあり方を提起できる所に,大きな有効性  しい政策を打出せず,専ら,先進的自治体で事業

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