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捕殺個体を利用した ニホンツキノワグマ(

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博 士 ( 獣 医 学 ) 山 中 淳 史

学 位 論 文 題 名

捕殺個体を利用した

ニホンツキノワグマ(  Ursus  thibeta7zus  japonicus) の

栄養状態および繁殖評価方法に関する研究 学位論文内容の要旨

  ニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus;以下ツキノワグマ)は、IUCN分類でVulnerable(絶 減危惧n類)に分類されるアジアクロクマ(Ursus thibetanus)の一亜種である。日本版レッドリストでは 種と しては登録されていないが 、6つの個体群が絶減のおそれのある地域個体群に指定されている。

ツキ ノワグマは日本の森林生態 系を代表する大型哺乳動物で あり、その保全は森林生態系全体の保 全にも寄与すると考えられている。一方で、全国的にはツキノワグマの分布が拡大しており、それに伴 いツキノワグマの人里ーの出没が社会的な問題となっている。ツキノワグマとヒトの双方にとって望まし い解 決方法が模索されているも のの、現状では有害鳥獣捕獲 制度による捕殺処分が主な対応策とを っている。

  ツ キノワグマの適正な保護管 理の基礎となるのは生物学的情報である。必要とされる情報は目的に より 様々であるが、栄養状態と 繁殖に関する情報は最も基本的をもののーっである。その研究方法に は、 野生個体を直接研究するア プローチ、飼育個体を利用す るアプローチ、あるいは捕殺個体を利 用す るアプローチがあり、各ア プローチは相互に補完する。 捕殺された個体は生物学的情報の有カ な源 であり、その有効利用はツ キノワグマ研究に欠いてはならない一分野である。本研究では、捕殺 個体 を利用した栄養状態および 繁殖評価方法を確立することを目的とした。評価手法としては、有害 鳥獣捕獲制度を利用した採材を前提とし、保護管理におけるモニタリングに資すること、ならびに出没 メカニズムの解明に資することを念頭に置いた。

  栄 養状 態の 評価 では 、2006年に 岐阜 県で 捕 殺さ れた 個体を用い、3つの 体脂肪指標、大腿骨骨 髄 内 脂 肪 含 有 率(FMF)、 修 正 腎 周 囲 脂 肪 係 数 (mKFI)お よ び 腹 壁 の皮 下脂 肪厚(ASF)の 年齢 依 存性 、性別依存性および捕獲期 依存性を調べた。その結果、 全ての体脂肪指標において当歳(cub) クラ スの値は他の年齢クラスより低いこと、晩秋期(11月.12月)のmKFIおよびASFは夏期(7〜9月)

に比べて高いこと、雌のASFは雄よりも低いことがわかった。また、3指標間の相対関係を調べた結果、

FMFの低下は著しい栄養状態の低 下を示すものであることが示唆された。また、以上の結果に基づい て 、2005 ‑2007年 の夏 期 に岐 阜県 およ び福 島 県で 捕獲 され た 個体 の栄 養状 態の 年次変動を評価 し、 出没(有害捕獲数)との関 連を考察した。これまでの研究で食物量と有害捕獲数の相関が確認さ れて いることから、有害捕獲数 の多い年には捕獲個体の栄養 状態が悪いという仮説を立てその検証 を行 ったが、捕獲個体の体脂肪 蓄積量が多い年でも有害捕獲数の多いことのあることがわかった。こ

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れ は 、 栄 養 状 態 の 低 下 が 出 没 の 発 生 す る 必 須 条 件で は な ぃ こと を 示 す もの と 考 え られ た 。   繁 殖評価 方法の 探索とそ の確立 は、2001〜2009年に 本州各 地で捕 殺され た雌の黄体、自体およ ぴ 胎盤痕を 観察し た結果 をもと に行った。まず、胎盤痕および白体の産後の遺残期間を調べ、胎盤 痕が少なくとも出産年の11月まで遺残すると考えられることを明らかにした。また自体は、本研究の観 察 方法によ れば、 出産年 の8月以 前にお いては ほぼ100% 検出さ れ、そ の後徐 々に検出確率が低下 し、翌年2月はじめごろには検出されなくなることがわかった。この結果を踏まえ、捕殺個体の捕獲年に お ける出産 歴推定 方法を 確立し 、捕殺個体を用いた新たな繁殖評価方法の基礎とした。また、捕殺 個 体 に おけ る 黄 体 保有 率 の 捕 獲時 期お よび年 齢依存 性から、 交尾期 および 排卵開 始年齢 を検討 し 、野生個 体では8月にはほぼすべての成熟雌が排卵を終えていること、ならびに一部の早熟な個体 は2〜3歳で 排卵を 開始する が、大 多数の 雌が排 卵を開 始する年齢(標準排卵開始年齢)は4歳であ ることを明らかにした。以上の結果をもとに、新たな繁殖評価指標として、排卵の成功確率(success rate of ovulation,SRO;標準排卵開始年齢に達している子違れでない(単独の)雌が排卵に成功す る確率)および当歳(0歳)子の早期死亡確率(early litter loss rate,ELLR;出産した雌がその年の交 尾 期までに 全ての 当歳子 を失う 確率)を定義し、その算出方法を確立した。本研究の観察結果に基 づ くこれら の指標 の試算 結果はSRO〓O.93丶ELLR=0.29であった。最後に、排卵過程の成功度(排 卵 可能な1頭の雌が 排卵す る.卵 子の数 の期待 値= SROx排 卵数)の年齢依存性を評価し、4歳以上 で は排卵過 程の成 功度に 年齢依 存性が ないこ と、お よび4歳 未満の 排卵過程 の成功度は4歳以上に 比 べて顕著 に低い が、4歳 未満で あっても排卵を開始した個体の排卵数は4歳以上の個体と変わらな いことを明らかにした。

  本 研究で は、捕 殺個体を 利用し た栄養状態評価に基礎的な指針を与えることができた。また、繁 殖 評価にお いては 、捕獲 年の出 産歴推 定方法 や新指 標(SRO、ELLR)の開発 といっ た、これまでに なかった方法を確立することができた。本研究の成果は、ツキノワグマの研究ならびに保護管理に新 たな展開をもたらすものと考える。

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学位論文審査の要旨 主査    教授    坪田敏男 副査    教授    高橋芳幸 副査    教授    木村和弘

副査    室長    大井    徹(独立行政法人      森林総合研究所)

学 位 論 文 題 名

捕殺個体を利用した

ニホンツキノワグマ(Urszts thibetanzts japon, あ銘s )の

栄養状態および繁殖評価方法に関する研究

  

ニ ホ ン ツ キ ノ ワ グ マ は 、

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っ の 個 体 群 が 絶減 のお それ のあ る地 域 個体 群に 指定 され て い る 。 一 方 で 、 全 国 的 に は そ の 分 布 が 拡 大 し て お り 、 人 里 へ の 出 没 が社 会問 題と な っ て い る 。 野 生 動 物 の 保 護 管 理 の 基 礎 は 生 物 学 的 情 報 で あ り , 栄 養 状態 と繁 殖は 最 も 基 本 的 な 情 報 の ー っ で あ る 。 研 究 方 法 に は 、 野 生 個 体 や 飼 育 個 体 を用 いる 方法 の 他 、 ツ キ ノ ワ グ マ に お い て は 年 間 千 頭 レ ベ ル で 発 生 す る 捕 殺 個 体 を 利用 する アプ ロ ー チ が あ る , 本 研 究 で は 、 捕 殺 個 体 を 利 用 し た 栄 養 状 態 お よ び 繁 殖 評価 方法 を確 立 す る こ と を 目 的 と し た 。 .

  

栄 養 状 態 評 価 で は 、

3

つ の 体 脂 肪 量 指 標 、 大 腿 骨 骨 髄 内 脂 肪 含 有 率 (

FMF)

、 修 正 腎 周 囲 脂 肪 係 数

(mKFI)

お よ び 腹 壁 の 皮 下 脂 肪 厚 (

ASF)

の 年 齢 ・ 性 別 ・ 捕 獲 期 依 存 性 を 調 べ た 。 そ の 結 果 、 全 て の 指 標 に お いて 当歳 (0歳) クラ ス の値 は他 の年 齢ク ラ ス よ り 低 い こ と 、 晩 秋 期 (

11

月 .

12

月 ) の

mKFI

お よ び

ASF

は 夏 期

(7

9h

) に 比 べ て 高 い こ と 、 雌 の

ASF

は 雄 よ り も 低 い こ と が わ か っ た 。 こ れ ら の 結 果 に 基 づ き 、

2005

2007

年 の 夏 期 に 岐 阜 県 お よ び 福 島 県 で 捕 獲 さ れ た 個 体 の 栄 養 状 態の 年次 変動 を 評 価 し 、 出 没 (有 害捕 獲数 ). との 関連 を考 察し た。 これ まで の 研究 で食 物量 と有 害 捕 獲 数 の 相 関 が 確 認 さ れ て い る こ と か ら 、 有 害 捕 獲 数 の 多 い 年 に は 捕獲 個体 の栄 養 状 態 が 悪 い と い う 仮 説 を 立 て そ の 検 証 を 行 っ た が 、 夏 期 の 栄 養 状 態 を見 る限 り、

捕 獲 個 体 の 体 脂 肪 蓄 積 量 が 多 い 年 で も 有 害 捕 獲 数 の 多 い こ と の あ る こ と が わ か っ た 。

  

繁 殖 評 価 方 法 の 確 立 は 、 黄 体 、 自 体 お よ ぴ 胎 盤 痕 の 観 察 を も と に 行 った 。ま ず、

胎 盤 痕 お よ び 白 体 の 産 後 遺 残 期 間 を 調 べ 、 捕 殺 個 体 の 捕 獲 年 出 産 歴 推 定方 法を 確立 し た 。 ま た 、 交 尾 期 お よ び 排 卵 開 始 年 齢 を 検討 し、

8

月 には ほば 全 ての 成熟 雌が 排卵 を 終 え て い る こ と 、 大 多 数 の 雌 が 排 卵 を 開 始す る年 齢( 標準 排卵 開始 年齢 )は

4

歳で あ る こ と を 明 ら か に し た 。 以 上 の 結 果 を も と に 、 新 た な 繁 殖 評 価 指 標 とし て、 排卵 の 成 功 確 率 (

SRO

; 標 準 排 卵 開 始 年 齢 に 達 して いる 単独 の雌 が排 卵 に成 功す る確 率)

お よ び 当 歳 (

0

歳 ) 子 の 早 期 死 亡 確 率 (

ELLR

; 出産 した 雌が その 年 の交 尾期 まで に全

845 ‑

(4)

ての当歳子を失う確率)を定義し、その算出方法を確立した。本研究における試算 結果はSRO〓0.93、ELLR〓0.29であった。

  

本研究では、捕殺されたツキノワグマからの栄養状態およぴ繁殖評価方法について、

年齢・性別・捕獲期・年次・地域(個体群)間での比較検討により確立することができ た。これらの知見は、ツキノワグマの人里への出没メカニズム解明に資するとともに、

保全および保護管理を進める上でその意義は大きい。よって審査員ー同は、上記博士 論 文提出者山中淳史氏の博士論文は、北海道大学大学院獣医学研究科規定第6条の 規 定 に よ る 本 研 究 科 の 行 う 博 士 論 文 の 審 査 等 に 合 格 と 認 め た 。

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参照

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