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光拡散方程式の拡散係数および 適 用 条件 に関す る基礎的 研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 中 井 達 也

     学位論文題名

光拡散方程式の拡散係数および 適 用 条件 に関す る基礎的 研究

学位論文内容の要旨

  本研究 は、散乱 ・吸収媒 質中の 光の挙動 を光拡散方程式を用いて解析する際の拡散係数 の形式および適用範囲について、研究成果をまとめたものである。

近年、生 体色素 の可視か ら近赤 外光領域 での分 光学的性質を利用した光生体計測の研究が さかんで ある。 しかし生 体組織 はその領 域の光 に対する強散乱媒質であるため組織中の光 の伝搬経 路は非 常に複雑 なもの となり、 通常のBeer‑Lambert則をそのまま適用したのでは 正確な分 光学的 情報は得 られな い。この 問題を 解決するため、輸送方程式を利用した強散 乱媒質中 の光伝 搬の解析 が行わ れてきた 。しか し、一般に輸送方程式は解析的にも数値的 にも解く ことは 困難であ るため 、輸送方 程式か ら拡散近似を用いて導出した光拡散方程式 が多くの研究者によって使用されている。

  従来の 光拡散方 程式は吸 収係数 ぬが等価 散乱係数uS´より十分に小さいという前提のも とで導出されており、方程式中の拡散係数は{3(Pta十ルs′)}・1で与えられる。一方、Nomura、 Hasegawaらの研究グループから、ぬとtl,s′の大きさにかかわらず拡散係数が(3,US′)・1で表わ されると の実験 結果およ びシミ ュレーシ ョン結 果が発表されており、従来の光拡散方程式 との矛盾 点が議 論をよんでいた。ところが、最近Furutsuらにより輸送方程式から新たな考 えに基づいた光拡散方程式が導出され、その拡散係数は(3 y,s′)・1で表されている。これは上 記の研究 グルー プの主張 を理論 面から支 持する ものであるが、これまでに行われた実験お よびシミ ュレー ションは 吸収係 数が等価 散乱係 数に比べて十分小さい領域で行われたもの であるた め、い ずれの形 式の光 拡散方程 式が現 実をより正しく記述しているかを検証する ことはできない。

  本研究 では高感 度な測定 系を用 いて、吸 収係数が大きな条件下で実験を行うことで、拡 散係数を(3 y,s′)・1とする光拡散方程式の正当性を明らかにし、その適用範囲について考察を 行った。以下に本論文の要旨を示す。

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(2)

  第1章では、研究の背景と目的について述べた。

  第2章で は、媒 質の光学バラメータの測定法ならびに光伝搬のモデルについて議論し、輸 送 方程式か らの光 拡散方程 式の導出 法を示 した。散乱・吸収媒質の絶対的な分光学的情報 を 手に入れ るため には媒質 中の光の 伝搬に 関する知識が不可欠である。そこで、光の伝搬 を 解析する ための モデルと してモン テカル 口法、ランダムウォーク法、光拡散方程式を取 り上げ、それぞれの利点と問題点について議論を行った。

  第3章で は、光 源からの 距離につ いて、 光拡散方 程式の 導出に使 用した近似が成立する 範 囲を求め 、成立 しない場 合に測定 値が受 ける影響を定量的に議論した。その結果、光源 か らの距離 が輸送 平均自由 行程の10倍以内では,実測値は光拡散方程式とは一致しないこ とが示された。

  第4章では、吸収係数が散乱係数のl/3程度以下という条件下で従来の光拡散方程式、Fumtsu らにより導出された光拡散方程式、および実験結果の比較を行った。これによって、光拡散方 程式の拡散係数には吸収係数は含まれず、散乱・吸媒質中で微視的なBeer‑Lambert則が成り立 つことを検証した。

  第5章で は、媒 質の吸収 係数と光 を入射 してから の経過 時間につ いて、光拡散方程式の 導 出に使用 した近 似が成立 する範囲 を求め 、成立しない場合に測定値がどのような影響を 受 けるかを 定量的 に議論し た。その 結果、 媒質にパルスを入射してから数十psの問は光拡 散 方 程 式の正 しさは保 証され ず、その 影響は 吸収係数 が高い ほど大き いことを 示した 。

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授   山 教授   清 教授   栗 教授   田

本 克 之 水 孝 ― 城 眞 也

村  守 ( 理 学 研 究 科)

     学 位論文 題名

光拡散 方程式 の拡散係数および 適 用 条 件 に 関 す る 基 礎 的 研 究

  近 年 , ヘモ グ口ビン やチトク 口ーム 等の生体 色素の 分光学的 性質を 利用した 光生体計 測 の研 究 が盛 んであ る.生体 組織な どの散乱 吸収媒 質中の光 伝搬の解 析には 光拡散方 程 式が多 用され るが,最 近Furutsuらによっ て従来 とは異な る定義 の拡散係数が提案され,

その正当性,物理的意味等が議論されている.

  本 論 文 はこ の よ う な背 景 の もと に , 実験 お よ びモ ン テ カル 口 シミ ュレーシ ョンによ り ,従 来 の 光拡 散 方 程 式とFurutsuら によ る光拡 散方程式 のいずれ が実際 の光拡散 現象 を より 正 しく 表現し ているか を検討 したもの である .さらに ,光拡散 方程式 を導出す る 際 に用 い られ る各種 近似の適 用条件 について も検討 を行って いる.光 拡散方 程式の拡 散 係 数の 形 式 の違 い お よ び近 似 の 適用 範 囲 は, 拡 散 光を 用 い た各 種応 用計測 を考える と き ,そ の 精度 に大き く影響を 及ぼす ため,本 論文の 研究成果 は今後の 拡散光 計測分野 に 有 益 な 知 見 を 与 え る も の で あ る . 本 研 究 の 主 な 成 果 は 以 下 の 点 に 要 約 さ れ る . 1.  定 常光 を 用 い た高 感 度 な測 定 系 により, 従来困 難とされ た高吸 収媒質中 の拡散係     数 の実 測に 成功して いる. その結果 ,光拡散 方程式 における 拡散係 数の形式 は,吸     収係数をぬ,等価散乱係数を触′とし,従来から用いられてきた{3(lua+iUs′)}‑lではな     く ,Furutsuら が 提 案 す る(3rUS′)‑1で あ る こ と を , 初 め て 実 証 し て い る . 2.  光 拡 散 方程 式 で は, 光 源 を 等方 性 の 点光 源 と 近似 す る ため , 実 際の 光 源 に異 方     性 があ る 場 合 には , 光 源に 近 い 領域 で 光 拡散 方 程 式の 解 と 実際の 光拡散現 象は一     致 しな く な る .代 表 的 な散 乱 ・ 吸収 媒 質 であ る 生 体組 織 に 対して は,光フ んイバ     等 の異 方 性 の 強い 光 源 が用 い ら れる た め ,異 方 性 の影 響 が 及ばな い範囲で 測定を

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    行う必要がある.本論文では,光ファイバを光源とする散乱・吸収媒質に対して     実測及びモンテカルロシミュレーションによる解析を行い,等方光源の近似成立     条件として,低吸収媒質では光源からの距離が光子輸送平均自由行程の約10倍以     上でなければならないこと,高吸収媒質になるにしたがい光源に近い位置まで近     似が成立するという知見を得ている.

3.  光源が等方的であっても,光源からの距離が媒質の輸送平均自由行程程度か,そ     れより小さい場合には,散乱回数が少ないため拡散近似が成立せず,光拡散方程     式は実際の光拡散現象を正しく記述できないことをモンテカル口シミュレーショ     ンによって確認している.

4.  媒質の吸収係数が散乱係数の数分のーを超えると,Furutsuらによる光拡散方程     式によっても実際の定常光強度を記述できないことを実験的に見い出している.ま     た,その原因をインパルス光の光伝搬解析との比較より検討し,光拡散方程式導     出時の近似条件に由来することを示唆している.さらに,吸収係数が大きいほど     その影響は顕著になるとの結果を得ている.

  これを要するに,著者は,光吸収・散乱現象を記述する光拡散方程式の拡散係数の新 たな定義を実験的に初めて検証し,その近似の適用条件についても新知見を得たもので あり,生体光計測工学の分野に貢献するところ大である.

  よって著者は,北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認める.

参照

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