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ミャンマーの少数民族における国民としての法的地位

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Academic year: 2021

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発表者

田中美咲 (中央大学法学部3年)

西村崇人

(一橋大学法科大学院2年)

布留谷望 (慶應義塾大学法学部4年)

ミャンマーの少数民族における

国民としての法的地位

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目次

Ⅰ. ミャンマー少数民族問題 Ⅱ. ロヒンギャ民族と差別 Ⅲ. 国籍法の本来的意義 Ⅳ. ミャンマーの国籍法 1. 1948年国籍法 2. 1982年国籍法 Ⅴ. ロヒンギャ民族問題の支援の現状 1. 隣国による支援 2. 国連機関による支援 3. 国際機関による支援 4. 日本のODAによる支援 Ⅵ. 国内法からの法整備 Ⅶ. 国際法からの法整備 Ⅷ. 日本が行う法整備支援として

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. ミャンマー少数民族問題

1.民族構成

135の民族が存在する 内訳:ビルマ族7割、少数民族3割

2.民族と宗教

ビルマ族の殆どは仏教徒であるのに対し、少数民族は、精霊崇拝、 キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教等を信仰している (右下表1参照) 【表1】 宗教 割合 仏教 89.4% キリスト教 4.9% イスラム教 3.9% ヒンドゥー教 0.5% JETRO BOPビジネス 潜在ニーズ調査報告書(2012)

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. ミャンマー少数民族問題

3. 宗教差別の背景と現状

≪背景≫

①国策としての仏教中心主義

②宗教省による政策

③国家的観点からのビルマ族への同化政策

4. 民族差別

宗教と共に、民族に対する差別的取扱い

4

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. ロヒンギャ民族と差別

1. 基礎情報

• 居住地: ビルマのアラカン州西部

,ヤンゴン

• 言語:

ロヒンギャ語

• 宗教:

イスラム教

• 総数:

約200万人

(6)

2. ロヒンギャ民族が国際的に注目された問題

 ボートピープル

09年に入り、漂着したロヒンギャ族をタイ軍が暴行のうえ海上に 放置したとして問題化。

. ロヒンギャ民族と差別

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3. 隣国へと漂流したロヒンギャ民族

. ロヒンギャ民族と差別

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4.

ロヒンギャ民族の難民化

ミャンマー国内での差別や迫害によって

海外に逃れるロヒンギャ民族

20万人がバングラデシュで生活

50万人が中東で生活

5万人がマレーシアで移住労働者として生活

3万人

が劣悪な環境の難民キャンプで生活

10数名が日本にも毎年難民申請に訪れる

. ロヒンギャ民族と差別

8

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5. ミャンマー政府による強制退去政策

1978 年 ナガミン(ドラゴン王)作戦 20万人がバングラデシュへ追放された 殺人的な民族浄化作戦であり、バングラデシュ当局の 食料支援停止による飢餓と質病によりうち1万人が死亡。 1991-92 年 政府によるロヒンギャの大規模な排斥 25万人以上がバングラデシュへと逃れた 国軍は数百人を殺害し、村落を破壊、焼き討ちした。

. ロヒンギャ民族と差別

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6. 現在の国内での差別の現状

 強制労働

 土地没収、強制移住、住居破壊

 強奪と恣意的な課税

 婚姻許可

 ふたりっ子政策

. ロヒンギャ民族と差別

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国民登録証の記載事項

7. 国民登録証の差別

様々な行政手続きにおいて差別される理由が国民登録証である。 ミャンマーにおいては就学や就労、居住移転など様々な手続きの 際に必要となる。

. ロヒンギャ民族と差別

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この登録証の取得や利用のプロセスにおいて

宗教・民族によって差別される現状がある。

大前提として

国民登録証

を得るためには

国籍

があることが必要である。

しかし

ロヒンギャの多くは国籍を認められていない。

. ロヒンギャ民族と差別

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. 国籍法の本来的意義

1. 国籍とは

2. 意義

「個人が特定の国家の構成員である資格」であり、また、「個人を特 定国家に所属 せしめる法的紐帯」である。 個人: 国家と結びつくことで様々な権利利益を保障される 国家: 自国の国籍を持つ人々を基本的な単位とすることにより、 自国の統治システムの安定を図る →現行の国際社会が、主権国家を基本的単位として 成り立っていることが前提 国家は、国籍を何らかの形で定めている ・・・それが国籍法である

13

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. 国籍法の本来的意義

3. 国籍法とは何か

その国の国籍および市民権に関して、その付与、取得、喪失 を定義している法 国家によっては、国籍法は、制定法だけでなく、慣 習法や判例によっても存在している ≪日本の場合≫ 憲法10条 「日本国民たる要件は、法律でこれを定める。」 国籍法1条 「日本国民たる要件は、この法律の定めるところによる。」 →憲法の委任を受ける形で国籍法が定められている

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(15)

. 国籍法の本来的意義

4. 無国籍とはなにか

無国籍とは、先に定義された国籍を有しないこと →国際法上は、 「その国の法律の適用によりいずれの国によっても国民と 認められないもの」といわれる

5. 無国籍となることの意味

→現行の社会から遮断されることを意味する 個人側:権利利益の保障を受けることができない 国家側:統治の安定を図る障害となる 社会にとって、無国籍者が存在することは好ましい 状態ではない →そこで、国際社会は無国籍者への対応を迫られてきた

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. 無国籍に対する国際的な取組

【原則 国籍の決定は、各国の国内管轄事項に属している ⇔しかし、国家の内部決定事項を適用できるかについては、他国の同様の行 動及び国際法による制約を受ける ① 国籍法抵触条約(1930年) ② 世界人権宣言(1948年) ③ 難民条約(1951年) ④ 無国籍者条約(1954年) ⑤ 無国籍削減条約(1961年) ※その他、無国籍への対応の趣旨が見られる国際法規として、「既婚女性の国籍に関する 条約」、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」、「市民的及び政治的権利に 関する国際規約」、「女子差別撤廃条約」、「児童の権利に関する条約」等が挙げられる

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Ⅳ.ミャンマーの国籍法

1. 1948年連邦国籍法

①両親のいずれもがビルマの先住民族に属していること ②過去2世代以上に渡って連邦領域内に家を建てて永 住した者の子孫であり、その者自身と両親とが連邦領 域内で出生した者 → これらの要件に基づき、国籍申請を行う

非国民

(国籍なし)

1947年憲法

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Ⅳ.ミャンマーの国籍法

※ロヒンギャの国籍は?

1947年憲法 「両親のいずれもが先住民に即

している者」

→ ロヒンギャにも国籍取得の余地

しかし

1948年連邦国籍法で「先住民」からロヒンギャを

明白に除外

→ 純粋な国民とはなれず、帰化による国籍取

得の途のみが残される

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Ⅳ.ミャンマーの国籍法

・官報、新聞へ

の記載

→ 一部の上流階級 のみがアクセス可 ・47年憲法以前は、 ロヒンギャは選挙に 参加し議員にも選 ばれていた

法の告知形態

選挙人名簿登録

ロヒンギャは、

48年連邦国籍法に基

づく申請をほとんど行っていなかった

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Ⅳ.ミャンマーの国籍法

2.

1982年ビルマ国籍法

①「・・諸民族及び1823年以前から 領土内に定住していた少数民族」 ②両親が国民若しくは国籍法発効 日時点ですでに国民であった者 ※いかなる少数民族が国民である かについては、国家評議会に実質 無制限の決定権 1948年連邦国籍 法の下で申請を 行い、その手続き が新法発布時に 進行中であった者 とその子供 ※国家評議会が、 国民としての権利 を奪う実質無権限 の裁量(帰化国民 も同様) 先住民族とは認め られない少数民族 の内、1948年1月4 日以前に領域内に 入り居住してきた 者と、領内で出生 したその子孫 上記の事実を証明 する確実な証拠を 用意の上、申請

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Ⅳ.ミャンマーの国籍法

【歴史的背景】

①ウー・ヌー政権

→ ネーウィン政権へ

ビルマ式社会主義

(ウルトラナショナリズム)の

時代に突入(

1960年代~)

②カチン民族など、土着の民族による戦闘行為の増加

→ 土着民族ですら裏切るのなら、土着でなく、申請に

より国籍を取得した民族はすべて疑うべき

48年連邦国籍法に基づく申請すらせずに暮らす者は

排除すべきであるという思想

Cf. 住居焼き討ち

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(22)

Ⅳ.ミャンマーの国籍法

①・・・ビルマ族を中心とする

土着民族には

ほぼ無条件

で国籍付与

②・・・

48年連邦国籍法に基づく

申請者も

国民とは区別

権利を制限

③・・・申請すらしなかった者たち

には、

厳しい要件

の下で

申請の余地(国際的圧力)

22

(23)

Ⅳ.ミャンマーの国籍法

※ロヒンギャの権利は?

国民

:「少数民族」の定義からは明確に除外

準国民

1948年国籍法での申請要件等を知ら

ず、申請していない者がほとんど

帰化国民

:居住を証明する確実な証拠がない

(歴史的に、不法移民であると認識)

→ どの枠組みにおいてもロヒンギャは国籍取得が

困難

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. ロヒンギャ民族問題の支援の現状

1. 隣国による支援

バングラデシュ政府による支援

(a)難民帰還支援

ミャンマー政府の受け入れ拒否

(b)難民キャンプによる保護

キャンプへの大量流入をおそれ、

運営委託拒否

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. ロヒンギャ民族問題の支援の現状

2. 国連機関による支援

UNHCRによる支援

(a)バングラデシュ側の難民帰還支援

ミャンマー政府の受け入れ拒否

(b)ホワイトカード(暫定在留許可証)の発行

国籍自体は認められない

(c)国際慣習に基づく無国籍削減の勧告

ミャンマー政府の対応不足

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. ロヒンギャ民族問題の支援の現状

3. 国際機関による支援の現状

その他

NGO等による支援

(a)ミャンマー政府への提言

拘束力がない

(b)非公式の難民キャンプの創設

非公式のために資金繰りなどが困難

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Ⅴ.ロヒンギャ民族問題の支援の現状

4. 日本のODAによる支援の現状

2012年2月 少数民族との交渉を担うアウン・ミン鉄道大臣より カレン州を初めとした少数民族居住地域への支援要請

農業分野

 シャン州北部 「麻薬大害作物の普及・流通等の支援 を通じた農村開発支援(技術支援)」 【2013.3〜2018.8】  シャン州南部 「循環型農業による生産・流通支援」 【2012.4〜2015.4】(NPO 地球市民の会との連携)

技術協力

 ラカイン州、カレン 「道路建設機材整備計画」 【開始へ向けて現在現地調査中】

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Ⅴ.ロヒンギャ民族問題の支援の現状

地域開発

 カレン州,モン州 「少数民族支援のための南部地域統合計画支援」 ・難民の帰還・再定住計画支援 ・先行プロジェクトの実施(コミュニティ、インフラ、生活向上支援) 【今後実施予定】

国連機関を通した支援金提供

 ラカイン、シャン州等6州 WEPとの連携による 無償資金協力 (8.14億円)  UNHCRを通じた国内避難民支援 (2億円)  タイ側難民キャンプ9か所の建設支援 (1,400万円) など

28

(29)

インフラ整備、農業支援などによって、少数民

族地域において難民が帰還しその後生活を継

続できる環境を作り、法整備を行う以前の段階

において最低限必要な基盤を整えている

Ⅴ.

ロヒンギャ民族問題の支援の現状

29

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. 国内法からの法整備支援

国籍を付与されるプロセスにおいて

実務レベルでの権利取得を目指す

国民登録証の実質的機能確保を目指す

窓口の対応のまばらさから「運」で国籍がもらえる状況

宗教・民族差別を解消する為の手段として

①国民登録証

②行政官への法教育

③メディアの実質的自由化を目指す

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(31)

. 国内法からの法整備支援

教育を受けさせる義務

教育格差や行政機関へのアクセス向上

ミャンマー国内法に影響されないグッドガバナ

ンスを行う企業に日本政府としてインセンティブ

を与える

④ 義務教育の徹底

⑤ インフラ整備

⑥ 日本企業によるグッドガバナンス

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. 国際法からの法整備支援

国籍法改正へ向けて

1.

国際条約加盟による国籍法改正の事例 ex) タイ 1985 年 女子差別撤廃条約の批准 以後国際人権諸条約の批准を進めるようになった。 これらの変化は国籍法の改正につながり、1965年国籍法が1992年 に改正され、その後2008年には革命団布告第337 号に基づき 国籍を剥奪された者、国籍を取得できなかった者、1992 年国籍法第 7 条の2 によって国籍を取得できなかった者に対し、国籍取得の道を 開くこと、また、国籍の付与・剥奪等に関する審査手続を明確にする ために、国籍審査のための委員会を設置することが定められた

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(33)

. 国際法からの法整備支援

2. 国際条約批准へ

日本が行う法整備支援

としての対等な関係

の中で、ミャンマーの国の発展と安定的な

国際社会の地位を確立するべく、最低限の

人権保護規範制定

を誘導し、補助する。

→これも法整備支援の一つの形として行って

いくべきである

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. 日本が行う法整備支援として

★ロヒンギャ民族問題の複合性

国際法の限界

・ 「人権保障」の逸脱してはいけない領域を作る

事はできても国内法には内部干渉できない

国内法の限界

・ 時の政権によって規定が左右されてしまう

・ 「内部事項」として国際基準に大きく反する

人権侵害も法を根拠に行われてしまう

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. 日本が行う法整備支援として

国際法から

・ 政権に左右されない確固たる国籍法制定の為に

条約批准を目指し、その履行をサポートする

国内法から

・ 実質的に国籍の権利を行使できるように

体制を整える

この

双方

の法整備が必要となる。

35

(36)

ご静聴ありがとうございました!

参照

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