米国の企業統治
調査報告書
2003 年7月
日本貿易振興会
海外調査部
はじめに 2001 年 12 月のエンロン破綻以降、米国では、企業不祥事が次々に発覚した。その後、 2002 年 7 月にサーベンス・オクスレー法(企業会計改革法)が成立、これに前後して SEC や各証券取引所で規則の制定・改定が相次ぐなど具体的な取り組みもあるものの、一方で は会計不祥事が依然散発しており、不正防止に有効な企業統治のあり方をめぐって、模索 が続いている。 ジェトロでは、こうした状況を鑑み、平成14 年度に「米国の企業統治」調査を実施した。 企業統治に関し日本の現状をみれば、企業文化の違いを背景に米国型企業統治への懐疑的 な見方が根強いが、従来の企業統治が有効とは言いがたく、米国型企業統治の有効性と限 界、問題点などを調査することは、日本の企業統治改善にあたって参考になるものと思わ れる。また、米国における企業統治をめぐる動きは、米国で上場する日本企業のみならず、 米国系機関投資家などを通じて日本の多くの企業にも影響を与えると考えられる。 調査は、日本国内での研究会と、米国でのインタビュー調査からなる。調査報告書の構成 としては、これまでの米国における企業統治の変遷(第1章)や、背景となった資本市場 の動き(第2章)などを踏まえ、ニューヨーク・センターと共同で最近の米企業の不祥事 やその対応につき米国の関係者を対象に行った広範なインタビュー調査の結果をみる(第 3章)。そして、最後に、こうした米国の動きを参考とし、わが国の企業統治についての現 状と課題を検討する(第4章)。巻末には資料として、インタビューの一問一答形式での要 旨と、サーベンス・オクスレー法の仮訳を付した。第1章は研究会の牧野委員(東京富士 大学)、第2章は三和委員(明治大学)、第3章はジェトロ米州課、第4章は横尾主査(日 本経団連)が担当した。 本報告書が、何ら、業務上の参考となれば幸いである。 なお、インタビュー部分に関しては、別途、「米国の企業統治 インタビュー調査報告書」 としてまとめてあるので、ご参照願いたい。 2003 年 7 月 海外調査部 米州課
目 次
本報告書の要旨...1 第1 章 米国企業統治の変遷について...5 第1 節 企業統治概念の源流 ...5 第2 節 取締役会をめぐる問題...7 第3 節 監査委員会の改善をめぐる問題... 11 第4 節 経営者の報酬 ... 13 第5 節 アメリカ企業における所有構造... 14 第2 章 資本市場からみたコーポレート・ガバナンス... 15 第1節 機関投資家のコーポレート・ガバナンスにおける役割... 15 第2 節 アメリカにおける「機関化」の進展と年金基金の大規模化... 18 第3 節 年金基金の資産構成と 1990 年代の株高要因 ... 19 第4 節 1990 年代の資産運用の特徴 ... 19 第5 節 投資銀行の資産運用ビジネス ... 22 第3章 インタビューにみる米国企業統治... 25 第1 節 米国の企業統治の過去... 25 第2節 米国企業統治の現在(1) 不祥事... 27 第3節 米国の企業統治の現在(2) 法制度改革... 28 第4節 米国の企業統治の現在(3) 積み残された問題... 31 第5節 米国の企業統治の現在(4) 年金基金の今... 34 第6節 米国企業統治の未来... 34 第7節 日本の企業統治をどうみるか... 35 第8節 企業統治のコアとは... 36 第4 章 コーポレート・ガバナンス議論の展開と課題... 38 第1 節 企業の社会的責任論 ... 38 第2 節 商法改正と会社の機関のあり方... 39 第3 節 期待される内部統制の役割... 40 第4 節 投資家によるチェック体制と内部統制... 42 巻末資料1:インタビュー要旨... 45 米国総務部長協会(ASCS) ... 45 スタンフォード大学法学部教授 ロナルド・ギルソン氏... 49 ジョージタウン大学法学部教授 マーガレット・ブレア氏... 51 マイケル・オクスレー下院議員事務所... 53 スーパーバリュ社... 56チャールズ・シュワブ社... 59
スタンダード・アンド・プアーズ... 61
米国公認会計士協会(AICPA) ... 64
ナスダック... 66
ペンション・アンド・インベストメント紙 マイケル・クラウス編集長... 69
IRRC (Investor Responsibility Research Center)... 72
コンピュータ・アソシエイツ社... 76 デラウェア大学企業統治センター チャールズ・エルソン教授... 79 ブルッキングス研究所 副所長兼経済研究部長 ロバート・ライタン氏... 81 TIAA-CREF(全米教職員退職年金基金) ... 83 ガバナンス・メトリックス社... 85 コンファレンス・ボード... 87 ニューヨーク証券取引所(NYSE) ... 89 ジョージタウン大学教授 ドナルド・ランジブルト氏... 90 巻末資料2 サーベンス・オクスレー法仮訳... 92
本報告書の要旨
第1 章 米国企業統治の変遷について この章では、米国での、①企業統治の概念、②取締役会をめぐる問題、③監査委員会を めぐる問題、④経営者の報酬、の4 点について、その変遷を概観している。 まず第 1 節では、企業統治という概念の源流を辿った。統治という概念で企業を捉える との考えが最初に登場するのは1945 年のラムルの著書、「コーポレート・ガバナンス」と いう単語が最初に登場するのは1962 年のイールズの著書であるという。イールズは、企業 機関相互管理との概念の下、取締役会の経営者に対する管理の有効性に疑問を呈し、また、 株主の経営者や取締役会に対する管理についても大企業においてはひどく限定的である、 と指摘している。 次に第 2 節では、取締役会をめぐる 1960 年代からの論争と、現状を概観している。60 年代の取締役会にかかる議論としてクーンツの研究が取り上げられ、取締役会に望まれる 要件と機能についてのクーンツの分析が紹介されている。しかし、70 年代に入ってから、 メイスは、現実の取締役会がいかに機能していないかを述べており、80 年代でもローシュ が、CEOが取締役会を牛耳っているとしている。ただし、その後、90 年代に入ってから は、CEOが解任されるケースが出てきたことを紹介している。次に、取締役会の現状を、 Korn/Ferry International の調査を引用しながら、概観している。ここでは、取締役会のガ イドライン、人数、構成、委員会制度などについて取り上げている。 第3 節では、監査委員会をめぐる議論として、99 年のブルーリボン委員会報告と内部統 制について論じている。ブルーリボン委員会報告およびそれを受けてのSEC の 2000 年の 規則改定については、「監査委員会の機能を充実させ、ディスクロージャーを充実させるこ とで透明性を向上させ、アメリカの資本市場の強みを支えようとしていることが理解でき る」としている。 第 4 節では、経営者の報酬について簡潔に論点をまとめ、第 5 節では、米国企業の所有 構造の変化について、機関化の進展と従業員持株制度(ESOP)の発展について説明してい る。ESOP については、ストック・オプション、401(k)プランなども含めると、企業の 株式の約9%が従業員によって所有されている、との推計を紹介している。 第2 章 資本市場からみたコーポレート・ガバナンス この章では、米国企業統治システムに内在する構造的な問題について、資本市場、特に 機関投資家の資産運用の側面から検討している。 まず第 1 節では、機関投資家が巨大化し、企業統治に関与するようになることについて の当局の支援と懸念に関し、過去の経緯を概観したうえで、株価に経済主体の多くが依存 する米国型システムでの機関投資家に求められる調整機能について述べている。次に、機関投資家が国際分散投資をすすめる中で、OECD、世界銀行などとともに開発途上国など の企業統治改革を進めようとする状況を説明し、その背景には、米国で著しく進展する「機 関化現象」があるとする。 第 2 節では、米国金融・資本市場での銀行の仲介比率の低下と、機関投資家による金融 仲介の増加という機関化現象の進展を、機関投資家の資産額とGDP 比の国際比較、企業年 金、公務員年金の資産額などをみることで検証している。 第 3 節では、確定給付型、確定拠出型などタイプごとに、株式運用比率や、資産増加に しめる株高要因などについて、言及している。 第4 節では、1990 年代の機関投資家の資産運用の特徴として、インデックス運用、国際 株式およびオールタナティブ運用の増加を挙げている。特にオールタナティブ投資につい て、不動産投資、ベンチャー・キャピタル投資、プライベート・エクイティ投資などへと 投資対象が拡大し、併せてこうした投機的な投資に振り向けられる残高もまた増加してい く状況を概説している。 第 5 節では、投資銀行などが資産運用市場に参入したこともあり、資産運用業界の競争 が激化、そうした中でファンドマネージャーは投資先企業の短期の利益を重視するように なり、また、運用会社の合従連衡も進んでいった経緯を説明している。そして、投資銀行 は一旦押さえてしまえば長期間維持できる株式引受主幹事の座を押さえるため、アナリス ト部門と連携したことでアナリストの中立性の問題を生み、IT 関連企業の株式公開を積極 推進したことがIT 株ブームを煽り、投資銀行とインハウス運用でバッティングする機関投 資家はオールタナティブ運用でハイリスク商品に投資対象を拡大していく、といったよう に、エンロン事件のような不祥事が発生する環境が醸成されていったとしている。 最後に、わが国でも機関投資家の企業統治への関与について議論となっているが、今回 の米国での不祥事の教訓として、機関投資家の「リスクの調整」との役割が認識されるべ き、として結んでいる。 第3章 インタビューにみる米国企業統治 この章では、インタビューで得られた米国の企業統治に関するコメントを再構成してま とめ、1970∼90 年代という米国の企業統治の過去と、エンロン破綻に始まる一連の不祥事、 そして企業改革法による企業統治改善という現在、今後の見通しとしての未来を、繋ごう とするものである。 質問は多岐にわたりまた相互に関連しているが、ここでは便宜的に「過去」、「現在」、「未 来」、「日本の企業統治への見方」、そしてまとめを兼ねて「企業統治のコア」に分けた。 「過去」については、株価至上主義に至る経緯、取締役会の実効性への疑問と取り組み、 企業と従業員の信頼関係の喪失などについて、不祥事の源流を探るとの視点から、発言が あった。 「現在」については、まず不祥事との関連で、米国型企業統治モデルには問題はなく、
それを実施するシステムに穴があった、あるいは詐欺事件であったとする見方が多かった。 その結果、不祥事はごく例外的なケースとの認識が示された。サーベンス・オクスレー法 と関連諸規則については、従来からの自主的規制の流れを強制的規制に変える構造的変化 であったこと、取締役会や監査委員会の独立性強化が重視されたこと、取締役の独立の要 件や監査委員の定義などでボックスティッキング的な傾向がみられたこと、などの面で、 その功罪について言及された。企業側は、新たな法規則により負担増となるものの、前向 きな対応が目立った。次に、今回の改革で積み残された課題として、①ストックオプショ ンの取扱い、②監査委員の成り手不足への懸念、③CEO と取締役会議長との分離、が挙げ られた。また、米国の企業統治モデルを特徴付けるものとして、年金基金の影響力の実態 についてもインタビューしている。この件については、傾向としての増大を認めながらも、 イメージ先行で過大評価されている面があるとの指摘が目立った。 そして「未来」だが、新たな法規制に一定の抑止力は認めつつも、詐欺行為を完全に防 ぐことは不可能との意見が多かった。ただし今回の法規制の方向性は今後も強化され拡大 されていくとの見方が示され、それについて肯定的なコメントと否定的なコメントがあっ た。 「日本の企業統治への見方」については、米国型モデルを押しつけるようなことはない と全員が否定しながらも、日本の企業統治が憂慮すべき状態であり、米国型を取り入れる という好ましい動きを評価したい、とのトーンもまた、共通してみられた。 最後の「企業統治のコア」については、具体的な要件設定はボックスティッキングな規 則として批判的な見方もあり、結局、インタビューでのコンセンサス的なものとしては、 取締役の誠実さ、正直であること、など抽象的でかつ法規制ではいかんともしがたいもの がコアとして浮かび上がってきた。それだけに、批判的な声も多い今回の法規則改正を、 米国の当局および企業が協力しつつ持続的に改善していくことが必要であり、また、両者 でそうした認識を共有しているものとみられる。 第4 章 コーポレート・ガバナンス議論の展開と課題 この章では、いくつかのトピックにわたり、日米の企業統治を対照しながら論じている。 まず第 1 節で、企業の社会的責任論として、米国で慈善目的の寄付など企業の社会的責 任が法的に認知される過程を、ダッヂVS フォード、スミス VS バローの2つの裁判の判決 を用い解説、日本については八幡政治献金事件判決について触れ、社会貢献活動のありよ うについて必ずしも一致した国民的合意形成があるとは言えないとしつつも、昨今では企 業側の認識としてはこうした活動に積極的な考え方が主流になりつつある、としている。 第2 節では、コーポレート・ガバナンスの定義として、①商法上の会社機関のあり方、② 企業と企業の利害関係者の関係のあり方、の2つに分類し、さらに①について、企業経営 の効率化に関する問題と、企業経営のモニタリングに関する問題とに分けている。この分 類上、独立取締役は①、②双方において閉塞した経営状態を打開しうるとの意見により出
された考え方であるとし、2003 年の改正商法での委員会等設置会社の導入と、2002 年の監 査役制度強化について取り上げている。 第 3 節では、委員会等設置型と監査役型の優劣というよりは選択肢が出来たことが実務 上重要であるとし、わが国コーポレート・ガバナンスの広がりを論じている。また、米国の 一連の不祥事とサーベンス・オクスレー法についてその主旨と実効性について論じ、同法 の核心は結果責任を経営者に求める点であるとする。選択した会社機関の実効性確保でポ イントとなるのは、①経営トップの意識、②監査役会や監査委員会を支えるスタッフや効 果的な内部統制システムの構築、③資本市場での投資家との緊張関係の構築といった実質 的課題をあげる。②については、内部統制システムが整備され実効性が確保されるのであ れば、監査役会か監査委員会かとの議論も不要となるとし、内部統制システムの重要性を 指摘している。③については、日本の企業統治に2つ課題があるとする。1つめは、証券 市場監視体制であり、今回の米国の一連の不祥事への対応をみても、SEC が有効に機能し ているのに対し、日本では業者行政と市場行政が米国のように分化していないため、投資 家からの信頼を損なっているとみる。2つめは、持合解消が進む中での株主構成の変化へ の対応であり、投資信託や確定拠出型年金基金制度などが整備されるにつれ、長期安定経 営を意識した圧力がこうした株主から企業にかけられることも期待できる、としている。 と同時に、こうした機関投資家自身のコーポレート・ガバナンスのあり方についても言及し ている。 最後に結びとして、企業が目的とするのは雇用確保か株主利益か、との議論について、 前者を優先する動きにある米国商法や、経済政策の目標、現下のわが国の情勢などを鑑み、 雇用確保が国民の期待するところではないか、としている。 (ジェトロ米州課)
第 1 章 米国企業統治の変遷について
東京富士大学 経営学部 助教授
牧野 勝都
第 1 節 企業統治概念の源流 あえて「コーポレート・ガバナンス(Corporate Governance)」という語を用い,議論を 展開したという意味では,1962 年のイールズ(Richard Eells)による『企業の統治』(The Government of Corporations)を重要なコーポレート・ガバナンス論の端緒のひとつとして 位置づけることができる。 イールズは,1962 年当時,「コーポレート・ガバナンスの研究は,政治学の特殊な分野と し て , 新 し い 学 問 分 野 の 輪 郭 を 獲 得 し 始 め た ば か り で あ る 。 経 営 管 理(business administration)についての体系的な論文は存在するが,コーポレート・ガバナンスに関す る比較しうる文献はまだない。」と述べていた。そして,「(コーポレート・ガバナンスとい う)新しい言葉で,企業を理解するという努力は学会と企業の連携した努力を必要とする だろう」と述べ,「両者は現在進行中のコーポレート・ガバナンスの理論的分析と実践的観 察についての責任を共有しなければならない」と主張していた。 イールズによれば,統治という概念で企業をとらえていくという考えはすでにラムル (Beardsley Ruml)の『明日のビジネス』(Tomorrow’s Business,1945)にみることができ る。ラムルは「企業は統治体である,なぜならば法律の下で企業は企業の業務の運営のた めのルールをつくるために権限が与えられ,組織化されるからである。企業は私的統治体 である,なぜならば法律の下で企業がつくるルールは決定的であり,任意の公共体によっ て検討されるものではないからである。若干の人は企業が私的統治体である理由は企業が 私的諸個人によって所有されているためであると言うかもしれない,しかしながら,私に は私的権限(private authority)が所有の問題よりもより重大であると思われる。」と述べ ている。 ガバナンス(governance)とガバメント(government)は区別して使用されている。Eells and Walton(1974)では,「ガバナンスは監督する(direct)および先導する(lead)権利のみな らず支配する(control)権利を含む権限の行使である」とされている。「ガバメントは権力を 意味し,権力は人類の野望と恐怖を奮い立たせるものである」としている。 イールズは「コーポレート・ガバナンスという問題はビジネススクールのカリキュラム の一部分にならなければならないのは今や明らかである」と述べ,「マネジメントの科学お よびORの重要性を軽視することなく,企業のエグゼクティブの訓練に対する新しい次元, すなわちコーポレート・ガバナンスのアートと科学,を加えるための機は熟している。」と考えていた。 イールズは「企業統治体は法人形態をとって遂行される高度の専門化された企業活動を 管理するために作られる。」と位置づけるとともに,「個人所有から法人所有への移行に際 して,法人企業の内部統治の原理に十分注意が払われることはなかった。」と述べている。 そして,コーポレート・ガバナンスの本質については,「企業の現実の検討は企業統治の本 質を決定する上で役立つであろうが,この規範的な側面における中心的課題は,企業に関 する理想的目標を設定することである。それはだれの機関なのか? それとも社会の機関 なのか? それともその目的は,理想的には社会のごく限定された利益,すなわち,株主 の利益がその主要なものであるというような利益への奉仕なのか?」と問いかけている。 また,コーポレート・ガバナンスのあり方については,「企業という統治体をそれぞれの企 業の自発的にさまざまな仕方で純粋に内側から改革していくことによっても,それは達成 できるであろうし,むしろその方が望ましいであろう。」と考えていた。 イールズは『ビジネスの未来像』において,「会社の内外を問わず,産業企業という統治 体についての関心が高まりつつあることは予測できることである。しかし,このことの理由 は,企業経営者による権力の濫用という問題であるよりは,さまざまな個人および自由な結 社によって特徴づけられる社会全体における,人間の諸問題を管理する権限と責任との配 分というより大きな問題が出てきたためである。(下線は引用者)」と述べているが,この 視点は『企業の統治』にも引き継がれている。
イールズは取締役会に関連して,「企業機関相互管理」(corporate interorgan control)と いう概念の下,「コーポレート・ガバナンスにはこれらの点で欠陥があるのは明らかである」 と述べている。そして,次の 4 点を指摘している。①執行経営者に対する取締役会の管理 は多くの場合,その有効性は信用できない。②取締役会に対する執行経営者の管理は度を 越えているといわれている。③取締役会と執行経営者に対する企業裁判所による管理は存 在しない。④取締役会や経営者に対する企業有権者(株主)による管理は大企業において はひどく限定的である。 (取締役会と経営者との相互管理) イールズは取締役会と経営者の間の相互関係は企業ごとに異なるものであるとしている。 経営者の権限からの取締役会の独立性は社内取締役のみから構成されている場合には,原 則的に排除されていると主張している。取締役会における社内取締役と社外取締役の関係 については,取締役会の職能と経営者グループの職能との区分を明確にすることがまずな によりも重要であるとしている。 (取締役会・経営者と株主との相互管理) 取締役会および経営者に対する株主の管理が最も重要であり,実際に効力があるという 考えには意見の不一致が大きいとしている。むしろ企業有権者(株主)による経営者グル ープに対する直接管理の可能性はないとされている。
第 2 節 取締役会をめぐる問題 (1)取締役会をめぐる論争 取締役会の役割を考える際に,アメリカにおける取締役会をめぐる論争を概観しておく ことは有益である。アメリカにおける取締役会の古典的研究としては,1960 年代後半のク ーンツ(Koontz, H。)による研究がある。クーンツの取締役会の研究は,現在においても示 唆に富む重要な研究である。クーンツは取締役会が持っている存在意義を,実際に企業経 営を担当する執行役員等が地位を濫用して自己の利益を実現する危険性を抑制する効果な らびに企業の維持・発展を図るために重要な意思決定過程において広い視野から検討する ことによる有益性の二つに求めていた。クーンツは取締役会の基本的な機能として,次の7 項目をあげている。①受託者責任(クーンツは株主に対する責任のみならず,社会一般・ 従業員・顧客に対する責任までを含めて考えている)の遂行,②企業目的および目的達成 のための基本方針の決定,③(執行)役員の選任,④計画と実績の照合,⑤重要な業務執 行の意思決定,⑥利益および資産の処分,⑦合併と買収,である。とくに注目すべき点は クーンツは業務執行の監督機能のみならず,経営上の重要な意思決定機能を取締役会に求 めていた点である。クーンツは意思決定を所与の目標を最も有効かつ効率的に達成するた めの行動として定義し,取締役会が合理的な意思決定を行うためには,明確な企業目的を 定めることが絶対条件であり,その目的を達成するために(執行)役員に具体的な計画案 を求め,その計画案が適切な調査分析を通じて提案されているのかどうかを確認するため に,取締役会において適切な質疑が行われる必要があるとしている。そして,取締役会の 長所は,意思決定を集団で行うことによる権力集中の排除および複数の取締役が持ってい る専門知識・意見・経験の利用と徹底した議論による問題の本質の把握にあると主張した。 このような集団行動を効果的に行うために,意思決定の権限および責任の範囲の明確化が 強調され,取締役会が行うべき意思決定の分野が具体的に考察されていた。要約すれば, クーンツは取締役会が業務執行を行うか,あるいは取締役会の指揮の下で業務執行が行わ れるように規定され,取締役会の監督権が確保されるとともに,実際に業務執行を担当す る(執行)役員が存在することを前提として,取締役会が適切な目標を設定し,意思決定 を行い,(執行)役員をサポートすることに,取締役会の意義を求めていた。また,クーン ツは取締役会の機能が有効に発揮されるか否かは,取締役会の構成に問題があるとして, 社内取締役と社外取締役の割合を問題としていた。クーンツはすでに述べたように,取締 役会における意思決定においては広い視野の重要性を指摘しており,そのような認識のも と,取締役会に視野の広さを持ち込むことが社外取締役に期待される役割であるとしてい た。さらに,社外取締役に対して,取締役会への準備ができるように,事前に必要な書類 を送ることの必要性を説いていた。 こうしたクーンツの分析は,1970 年代に入って,それがいかに実態とかけ離れているか が指摘されるようになる。例えば,メイス(Mace, M。)は,取締役会は通常,CEOに対す る助言をする程度の機能しか持たず,積極的な監督機能を果たすのは例外的な場合である
ことを明らかにした。メイスは取締役会は結局のところ,意思決定機能も監督機能も持た ず,形骸化した存在にすぎないと結論した。メイスはまた社外取締役に実態について,他 の企業のトップが社外取締役となっており,社外取締役に就任する動機は異なる分野につ いて学ぶ機会を得ること,ならびに威信上の価値に過ぎず,取締役としての職務を遂行す ることに精力を傾けるインセンティブに欠けていると指摘した。1980 年代に入っても,ロ ーシュ(Lorsch, J。)がメイスと同様に,取締役会が想定されている機能を果たしていないと 主張し,CEOに牛耳られている状況を明らかにした。また,社外取締役についてもメイ スと同様に,情報の欠如,時間的制約ならびに取締役間の意志の疎通の困難を理由に,十 分に機能しえないとしている。ローシュがこのような議論とする背景には,コーポレート・ ガバナンスの失敗が世界的な競争にさらされているアメリカ企業の問題に結びついている という認識がある。 ローシュの分析が行われた後,このような認識を再検討する事件が起こっていった。1990 年代に,株価の上昇を期待されたCEOが,その期待に応えることができず,解任される ケースが頻発するようになった。とくに,GMでは,機関投資家がイニシアティブをとり, 取締役会へ働きかけて行われたケースとして有名である。メイスやローシュが分析したよ うな独裁的なCEO像は大きく変化していったのである。アメリカにおいて,資本市場が 経営者のリーダーシップ責任を強く求めるようになっており,業績をあげられないCEO は解任させる可能性が強くなってきている。資本のグローバリゼーションの進展とともに, 日本企業にとっても経営者のリーダーシップは重要な課題となってきている。 (2)取締役会の現状 Korn/Ferry International の調査(1995 年実施;879 社を対象)を中心として,アメリ カ企業における取締役会の現状をみていこう。 ① 取締役会に関するガイドライン
1994 年に General Motors が CEO,社外取締役などの役割を明確に規定した 28 ヶ条か ら な る ガ イ ド ラ イ ン(General Motors’ Board Guidelines on Significant Corporate Governance Issues)を発表している。このガイドラインは注目を集め,特に機関投資家か らは好意的に受け入れられた。このガイドラインに関連して,CalPERS がそのポートフォ リオの 300 社を対象として調査を行ない,回答状況に応じたランク付けを公表している。 なお,CalPERS は近年ヨーロッパにおいて活動を活発化させており,1997 年 3 月にはイ ギリスおよびフランスにおけるコーポレート・ガバナンスのガイドラインを作成しており, ドイツについても作成する予定になっている。また,TIAA-CREF(Teachers Insurance and Annuity Association-College Retirement Equity Fund)も 1993 年にガイドラインを発表し, 株主の長期的利益と取締役が社会的責任や地域社会への貢献を配慮することは両立できる との考えを明確に打ち出している。なお,すでに59%の企業がコーポレート・ガバナンス のガイドラインをもっており,とりわけ,50 億ドル以上の企業では 71%となっている。1997 年9 月に Business Roundtable は厳格なコーポレート・ガバナンスのルールに対して反対
の立場を表明した。 ② 取締役の人数 近年のアメリカ企業の取締役会において,顕著な傾向のひとつは取締役の人数の減少で ある。取締役の人数は,平均で11 名となっており,10 年前の 14 名と比較して大きく減少 しており,調査開始(1973 年)以来最低の数となっている。 ③ CEO と会長の兼任 一人の人物がCEO と会長を兼任することによって,権限が集中することによる弊害が指 摘されている。しかしながら,現状では CEO が会長を兼任している企業はなお多く, Conference Board の調査(1996 年)によれば,69%にものぼる。 ④ 社外取締役
アメリカ企業の取締役会では社外取締役(outside director)が社内取締役(inside director) よりも多いというのは周知の通りである。NYSE,NASDAQ 等では社外取締役が2名以上 いることを要求している。 典型的な取締役会の構成は,社外取締役 9 名に対して社内取締 役2 名である。近年では,むしろ独立取締役(independent director)の概念が重視されてい る。 ⑤ 取締役の多様化 取締役会を構成する取締役の多様化が進んでいる。女性が取締役になっている企業は 10 年前の45%から 69%へと増加している。少数民族が取締役となっている企業は 10 年前の 25.4%から 47%へと増加している。 ⑥ 委員会制度 取締役会の改革の試みとして,GE社が1970 年代の初頭から採用している委員会制度が, その後のアメリカ企業における取締役会の方向を示した。同社において,取締役会の内部 に公認会計士と直接的な関係をもつ監査・財務委員会(Audit and Finance Committee)の ほか,経営活動委員会(Operations Committee),技術・科学委員会(Technology and Science Committee)および公共問題委員会(Public Issues Committee)などを組織し,これらの委員 会のいずれもが社外取締役が議長となり,また,社外取締役は2つ以上の委員会に関係す ることになっている。 アメリカ企業の取締役会では,委員会が大きな役割を持っている。州会社法では委員会 について言及されていることは少ない。委員会制度を導入する傾向は,1970 年代からみら れたものであるが,次第に多くの委員会が編成されるとともに,各種委員会の目的が明確 になり,取締役会が委員会活動を通じて有効に機能させるようにとなってきている。その 中でも,監査委員会(Audit Committee),報酬委員会(Compensation Committee),指名委 員会(Nominating Committee)は設置率が高く,それぞれ 100%,99%,73%となっている。 そして,この3つの委員会の典型的な構成は全員が社外取締役であり,人数は4 名である。 開催回数は年に3 回∼5 回となっている。
相違点は,アメリカ企業には「監査役」という制度がないことである。監査委員会がその 機能を果たすことになる。監査委員会は,企業が財務資料を作成する過程や内部管理など を定期的にチェックすることである。NYSE,NASDAQ などでは監査委員会を設置するこ とを上場の要件としている。とりわけ,NYSE は社外取締役のみから構成されていること を要求している。アメリカ企業において,監査委員会が重要な役割を与えられるきっかけ となったのは,1970 年代にアメリカ企業の外国政府要人に対する贈賄行為が明らかになっ たことであり,その代表的例として,日本のロッキード事件をあげることができる。この ような支出が不正な経理のもとで行われているということが大きくクローズアップされ, 社内の監視体制として,監査委員会が設置されるようになっていった。また,アメリカ連 邦議会は,1977 年にはこのような不正支出の防止のために,海外不正支出防止法(Foreign Corrupt Practices Act)を成立させた(1990 年代に入って部分的な改正が行われている)。 (b)報酬委員会 報酬委員会は,経営者の報酬を取締役会に勧告するあるいはその決定 を行うものである。ストック・オプションの利用に関連して設置されることが多い。 (c)指名委員会 指名委員会は取締役および上級管理者の候補者を提案する。 (d)その他の委員会 すでにとりあげた 3 つの委員会以外でも,業務執行委員会 (Executive Committee)は設置率がこれらの委員会に次いで高く,65%となっている。しか しながら,業務執行委員会の位置づけは現在ではかなり低下していることが指摘されてい る。とくに,近年の注目すべき傾向として,コーポレート・ガバナンス委員会(Corporate Governance Committee)が設けられるようになってきていることである。 ⑦ ESOP との関連
ESOP(Employees’ Stock Ownership Plan:従業員持株制度)に結びつく形で取締役会 への従業員代表の参加がしばしば見られるようになってきている。現在では,まだ,輸送 業,航空会社などの限られた企業において行われているにすぎないが,注目される動きで ある。
⑧ リーダーシップの開発
GMの有名なコーポレート・ガバナンス・ガイドライン(Guidelines on Significant Corporate Governance Issues)は,28 項目から構成されているが,最後の 3 項目は「リー ダーシップの開発」というカテゴリーである。その3項目はそれぞれ「CEOの公式評価」, 「後継者の計画」,「経営者の開発(育成)」である。アメリカ企業における評価の実状をみ てみよう。1996 年の Fortune 1000 を対象としたコーン・フェリー・インターナショナル (Korn/Ferry International)の調査では,CEOの評価を行っている企業は 69%と高い ものの,取締役会全体については25%,個々の取締役については 16%となっている。さら に,CEOおよび取締役全体について評価している企業は23%,CEOおよび個々の取締 役については14%であり,CEO・取締役会全体ならびに個々の取締役について評価して いる企業はたったの10%に過ぎない。GMのガイドラインでは,CEOは後継者の計画を 年次報告書によって取締役会に提出すべきであり,不慮の事態に備えて,CEOによる後
継者の推薦が継続的に利用できるようになっているべきであるとしている。後継者の問題 はアメリカ企業における重要なコーポレート・ガバナンス上の問題となっているが,日本 における議論ではほとんど注意を向けられていないのが現状である。 ⑨ 取締役へのオリエンテーション・プログラム ハイドリック・パートナーズ(Heidrick Partners)のフォーチュン 1000 社に対する 1995 年の調査では,新しい取締役に対する構造化されたオリエンテーション・プログラムを持 つ企業は1989 年の 36%から半分へと増加している。ハイドリック(Heidrick, R。)によれ ば,このようなオリエンテーション・プログラムを持っている企業は圧倒的に,オリエン テーション・プログラムが取締役会をより見識の広い,聡明なものにするのに貢献してい ると報告している。 第 3 節 監査委員会の改善をめぐる問題 (1)ブルーリボン委員会 アメリカにおけるコーポレート・ガバナンスの要諦は取締役会にあるが,取締役会の改 善に関わる提言が行なわれている。取締役会の中に設置される委員会の中でも,とりわけ, 監査委員会は,経営者の業務執行状況を全体として監督するという重要な役割を担ってい る。したがって監査委員会が有効に機能するかどうかはコーポレート・ガバナンスそのも のの有効性を大きく左右する重要な問題であると考えられる。このような観点から,ニュ ーヨーク証券取引所とNASD(National Association of Securities Dealers)との共同プロジ ェクトとして,1998 年にブルーリボン委員会が組織され,1999 年に報告書を公表した。こ の報告書は,SEC,ニューヨーク証券取引所,NASD が現行規制を見直していくべきこと を提言した改善勧告の部分と監査委員会と経営者,内部監査人,外部監査人との役割分担 に関わる最善慣行に関する部分とから構成されている。この報告書は,影響力の強い団体 が主催したプロジェクトであることもあるが,コーポレート・ガバナンスを考える上で非 常に示唆に富む指摘が数多くなされており,日本企業のコーポレート・ガバナンスの今後 を考える上でも重要であると考えられる。ブルーリボン委員会の制度面に関する改善勧告 は,監査委員会の独立性,監査委員会の有効性の向上,監査委員会・外部監査人・経営者 間の報告責任のメカニズム,の3つのカテゴリーに分けられ,10 項目からなる(*のある項 目は市場価値が2 億ドル以上の企業にのみ適用が推奨されている)。 1) 監査委員会の独立性 ①監査委員会メンバーの経営者および当該企業からの独立性の要件* ②監査委員会は社外取締役のみによって構成されることを上場規則に規定すること* 2)監査委員会の有効性の向上 ③監査委員会は 3 人以上の取締役によって構成されることを上場規則に規定すること(全 員が財務リテラシーを持ち,少なくとも一人は経理あるいは財務の専門家であること)* ④上場規則に正式な成文化された監査委員会憲章を作成することを規定すること
⑤SEC は,正式な監査委員会憲章を採択しているか,また当該年度に憲章は遵守されたか について委任状説明書にて開示する,監査委員会憲章が少なくとも3 年に 1 回は,年次報 告書か委任状説明書において開示されている,ことを規則とする。 3)監査委員会・外部監査人・経営者の間の報告責任のメカニズム ⑥外部監査人は最終的には取締役会および監査委員会に対して報告責任を負うこと,およ び外部監査人の選任・解任・評価は監査委員会の専管事項であることを監査委員会憲章が 規定するように,上場規則を規定する
⑦毎年外部監査人からISBS(Independence Standards Board Standard)1 号により要求さ れる正式な独立性に関する文書を受け取る責任を負うこと,積極的な対話を通して外部監 査人の独立性を確認すること,を監査委員会憲章が規定するように,上場規則を規定する ⑧GAAS(Generally Accepted Auditing Standards) は,外部監査人が財務報告の品質につ いて監査委員会と討議することを要求しているが,これを実行すること
⑨SEC が年次報告書ならびに様式 10K に監査委員会から株主に宛てたレターを含めること を制度化すること
⑩SEC が 様 式 10Q を 提 出 す る 前 に 外 部 監 査 人 が SAS(Statement on Auditing Standards)71 号を完了することを制度化すること,そして SAS71 号も外部監査人が様式 10Q 提出前に監査委員会と討議するよう修正すること さらに,報告書は監査委員会の有効性を向上させるための5つの原則を提示している。 ①監査プロセスの他の構成部分の監視における監査委員会の主要な役割 ②監査委員会と内部監査人との独立したコミュニケーション・情報の流れ ③監査委員会と外部監査人との独立したコミュニケーション・情報の流れ ④判断に影響を与え,(財務報告の)品質に影響を及ぼす問題についての経営者,内部監査 人,外部監査人との遠慮のない討論 ⑤仕事熱心で見識のある監査委員会のメンバー このような提言を受けて,SEC は 2000 年に監査委員会ディスクロージャーのルールを 改訂した。その中で重要と思われるものは次のとおりである。①四半期の報告書について の外部(独立)監査人の検査が義務づけられた,②委任状説明書に監査委員会からの報告 を記載すること(監査の終了した財務諸表について経営者と議論したこと,SAS61 号に基 づいて独立監査人と議論すべきことで議論したこと,外部監査人の独立性について ISBS1 号により要求される開示資料を受け取りその独立性について議論したこと),③委任状説明 書に取締役会が成文化された監査委員会憲章の採択について記載し,もし採択されている のであればそのコピーを3 年毎に掲載すること,④小会社を含むすべての NASDAQ・アメ リカン証券取引所・ニューヨーク証券取引所の公開企業は,委任状説明書に,監査委員会 メンバーがそれぞれの取引所の基準にもとづいて「独立」であるかを記載し,「独立」でな いメンバーについては所定の情報を開示すること,である。 アメリカにおいても監査委員会の機能を充実させ,ディスクロージャーを充実させるこ
とで透明性を向上させ,アメリカの資本市場の強みを支えようとしていることが理解でき る。また,「独立性」が重要な要件となっていることがわかる。 (2)内部統制 COSO によるフレームワークによれば,内部統制の目的は①業務の有効性と効率性,② 財務報告の信頼性,③関連法規の遵守であり,内部統制とはこの三つの目的に関して合理 的な保証を提供することを意図した企業の取締役会,経営者及びその他の構成員によって 遂行される一つのプロセスと把握されている。 内部統制の構成要素として,①統制環境 ②リスク評価 ③統制活動 ④情報と伝達 ⑤監視活動,が考察されている。そして,内部統制とは経営者によって使用される手段で あり,取締役会を経営者に対する上部構造とCOSO ではとらえる。 COSO のフレームワークで認識されている内部統制の限界として,①内部統制の故障 (Breakdowns) ②共謀 ③費用と効果 ④経営者による内部統制の無視があげられており, 内部統制における監査委員会の役割は,内部統制システム,その手続きの妥当性の審査が 重要な職務,および監査機能が内部的・外部的に適切に遂行されていることを取締役会に 対して保障することにある。内部監査部門が重要であり,エクソン85 人,フォード・モー ター188 人となっている。 第 4 節 経営者の報酬 アメリカ企業における経営者の報酬も企業統治における重要な論点となっている。 (1)CEOの高額の報酬 アメリカにおいて,CEO の報酬は大きな論争の的となっている。クリスタル(Crystal) によれば,1970 年から 1990 までの間に CEO の報酬は 400%増加している。1990 年にお いて,労働者の平均の150 倍になっている。日本では 16 倍,ドイツでは 21 倍となってい るのと比較して,かなり高額であることがわかる。 (2)ストック・オプション 株主からの圧力が増大する中で,1990 年代では CEO の報酬を多くの部分をストック・ オプションで支払うパフォーマンスに応じた支払方法がとられるようになってきている。 (3)株式の保有義務 取締役に株式の取得を義務づけている企業もある。NACD(National Association of Corporate Directors)は基本給(retainer)の 10 倍の株式を保有することを推奨している。 (4)報酬のディスクロージャー SEC は経営者の報酬に関するディスクロージャー規則を定めている。 アメリカにおいては経営者にインセンティブを与えるための制度についての実証研究が 盛んに行なわれている。
第 5 節 アメリカ企業における所有構造
アメリカにおける所有構造の変化として,二つの点をとりあげたい。まず,第一は,機 関化の一層の進展である。とりわけ,かつて Drucker が指摘していた年金基金(Pension Fund)の台頭が著しい。第二は,従業員による所有参加形態である ESOP(Employee Stock Ownership Plan)の急速な発展である。
(1)機関化
1960 年代においては,個人投資家が機関投資家に対して圧倒的な持株比率を誇っていた が,30 年間の間に機関投資家の比率が大きく高まってきている。とりわけ,年金基金が台 頭して,年金基金はその持ち株があまりにも大規模になるために株式の売却による意思表 示(Wall Street Rule)が困難になった。そのために,一部の年金基金は,取締役の任免,経 営 者 の 報 酬 に つ い て 発 言 力 を 強 め る よ う に な っ て き て い る 。 こ の よ う な 動 き は , Shareholder Activism と呼ばれ,とりわけ,CalPERS(California Public Employees’ Retirement System)をはじめとする公的年金基金の活動が目をひく。
(2)ESOP
アメリカにおいて,1980 年代に入って従業員による所有参加形態である ESOP が急速に 発展している。ESOP が発展した契機となったのは,1974 年の ERISA 法(Employee Retirement and Income Security Act)である。Allen らによれば,1975 年から 1988 年の 間にESOP の数は,1,601 から 9,627 に増加している。最近の NCEO(National Center for Employee Ownership)の推計では,ESOP および類似のプランが 10,000 以上あり,1 千万 人の従業員が参加している。さらに,700 万人から 800 万人が別の種類のプランに参加し ていると推定されている(この数字には,500 万人が参加している従業員にストック・オプ ションを与えるプランや200 万人ないし 300 万人が参加している 401(k)プランが含まれて いる)。金額ベースでは,それぞれ,ESOP が 3,000 億ドル,ストック・オプション・プラ ンが2,000 億ドル,401(k)プランが 2,500 億ドルであると推定されている。そして,全体と して,企業の株式の約9%が従業員によって所有されていると推定されている。ESOP によ って従業員に所有されている企業は約 3,000 社にものぼる。従業員が所有している企業の 代表的な例としては,Publix Supermarkets,United Airlines,Science Applications, Amsted Industries,W。L。 Gore Associates,Quad/Graphics,Journal Communications, Hallmark Cards などをあげることができる。
第 2 章 資本市場からみたコーポレート・ガバナンス
明治大学 商学部 助教授
三和裕美子
はじめに 1990 年代のアメリカは、「Investor Capitalism1」の段階に進んだといわれた。すなわち、 機関投資家が「物を言う株主」として台頭し、アメリカ株式会社を支配する力をもつよう になったことを意味する。実際には一部の公務員年金を中心に株主アクティビスト運動が 拡大していったが、その運用資産規模は大きく影響力は無視できないものであった。アメ リカの企業統治においては、資本市場(株価と機関投資家)からのチェックが機能してい ると考えられてきた。しかし、2001 年のエンロン破綻に端を発した一連の企業不祥事は、 このようなアメリカの企業統治システムの脆弱性を露呈した。小稿ではアメリカ企業統治 システムに内在する構造的な問題について、機関投資家の資産運用の側面から検討する。 第1節 機関投資家のコーポレート・ガバナンスにおける役割 (1)機関投資家の国内的役割 1980 年代後半以降、アメリカの機関投資家は巨大公務員年金を中心として、企業統治に 積極的に関与してきた。株主提案権の行使や、委任状合戦、企業経営者との対話、議決権 行使ガイドラインに基づいた積極的な株主議決権行使など、さまざまな株主行動をとり、 企業に企業統治の改善を求めてきた。 アメリカでは、政府が機関投資家による株主行動主義を支援してきた(表1参照)。1988 年の労働省の解釈通達(エイボンレター)をはじめとして、労働省は一貫して機関投資家 の株主議決権は「資産」であり、これを行使することは受託者責任に合致するとの見解を 示している。また、SECによる株主提案の適切議題の再解釈や投資信託の株主議決権行 使状況の開示規制なども同様に株主からのチェック機能を重視するものである。 そもそもアメリカにおいては、企業ガバナンスは私企業の問題であり、政府が介入する ことは好ましくないと考えられてきた。しかし、ウォーターゲート事件をきっかけとして 企業の不正支出が社会的問題となった1970 年代に、企業経営者のアカウンタビリティが問 われ始め、今後このような事件が起きないように、社会全体の問題として「企業アカウン タビリティ・システム」を構築する必要性が議論され始めた。これらの調査・議論がまと められ、1980 年に「コーポレート・ガバナンス報告書」としてSECに提出されている。この報告書の中でも機関投資家によるチェック・システムの構築、例えば機関投資家の株 主議決権行使内容の開示が検討されていたが、金融機関の反対により実現しなかった。
表1 コーポレート・ガバナンスに対する規制当局の見解
1980 年:SEC「コーポレート・ガバナンス報告書」 1988 年:労働省「エイボンレター」(議決権は資産である)
1991 年:The Corporate Pay Responsibility Act(経営者報酬の開示規制) 1992 年:SEC、委任状規則改正(機関投資家に経営者をチェックさせる) 2003 年:SEC、投資会社の議決権行使状況の開示
Disclosure of Proxy Voting Policies and Proxy Voting Records by Registered Management Investment Companies, April 14,2003 <提案の背景> 2001 年 11 月現在で、ミューチュアル・ファンドは3.4兆ドルの株式を保有している。アメリカの発行済 株式総額の19%である。10年前は6.4%であったことと比較するとその伸び率は高い。何百万というア メリカの投資家がミューチュアル・ファンドの株式を保有し、ポートフォリオ中の株式会社の株式を信頼し、 年金や子供の教育費その他の金融的なニーズを満たすために保有している。資本市場におけるミューチュア ル・ファンドの多大なる影響とアメリカの投資家の金融資産に対する多大なる影響にもかかわらず、ファンド は保有証券の議決権行使状況を明らかにしてこなかった。今こそ、ミューチュアル・ファンドの議決権行使状 況の透明性を高めることを考える時期である。透明性の向上により、ファンドの株主は、ファンドが保有証券 のガバナンス活動にいかに参加しているかをチェックできるようになる。これは株主価値に劇的な影響を及ぼ すであろう。 しかし、1980 年代後半および 1990 年代においてアメリカ政府は、機関投資家の役割を 明確に示してきた。これは裏返せば、それだけ機関投資家の影響力を懸念したということ である。機関投資家は運用資産規模が巨大化し、さらに運用理論の進展(リスクの計量化) により、資本市場において巨大な資金提供者であるとともに積極的にリスクをとる主体で ある。巨大な運用資産のコア部分がインデックス運用されることにより、大量の年金資金 が株式市場に流入する。さらにインデックス運用の周辺部分においては、積極的に高リタ ーンを追求していくアクティブ運用がおこなわれ、その代表的なものが、LBO ファンドで あり、ヘッジ・ファンドであり、プライベート・エクイティ(主としてIT関連産業)へ の投資であった。 エンロンは、ヘッジ・ファンドの手法を用いて投機的な取引を繰り返していたが、この ような企業に共同パートナーシップの設立という形で出資していたのは、皮肉にも株主行 動主義者で知られるCalPERS であった。機関投資家はインデックス運用においてエンロン 株を保有する一方で、プライベート・エクイティ投資において共同パートナーシップへ投
資をおこなっていた。そして投機的な取引によって生じた損失が隠蔽されたまま株価が形 成されていった。このように形成されていった株価に、企業の資金調達や買収のための資 金調達、従業員の年金基金や、経営者報酬、個人の貯蓄などが依存するシステムになって いた。機関投資家のコーポレート・ガバナンス介入は、このようなシステムに内在するリ スクを「調整」する意味があった。 (2)機関投資家の対外的役割 1997 年のアジアの金融危機から、アメリカ機関投資家は企業ガバナンスがもはや一国だ けの問題ではなく、グローバルな問題であることを強く認識した。とくに開発途上国の企 業ガバナンスの不透明性は機関投資家の投資にとって最大の障害であった。 このような障害を克服するために、公的機関であるOECD と世界銀行が重要な役割を果 たしている。OECD と世界銀行は国際的なガバナンス改革を目的として、1999 年に Global Corporate Governance Forum(以下 GCGF)を共同で立ち上げた。GCGF は企業ガバナン スにおける公共部門の役割について次のように述べている。 「公共政策という観点の企業ガバナンスの目的は、企業の権限行使のアカウンタビリ ティを高め、企業精神を養成することである。すなわち公共部門の役割は、企業に対 して私的収益と社会的収益の差を最小化させる動機と規律を提供することであり、ま たステイク・ホルダーの利益を保護することである2」 上記のような理念を掲げ、GCGF は公共部門として開発途上国の企業ガバナンス改革を 支援している。このようにOECD と世界銀行は共同で公共部門として各国企業ガバナンス のインフラ作りを支援するという立場をとっているが、この主導権を握っているのはアメ リカの機関投資家である。機関投資家側の論理では、分散投資の促進のために今後さらに 国際的な株式投資は増やさざるを得ない。そのためには透明性の高い企業ガバナンス・シ ステムが確立されていることが、投資の安全性を高め、また取引に関わるコストの削減に もつながる。また受託者責任という観点からみても、企業内容の開示が不十分であったり、 企業ガバナンス・システムが整っていない国の企業への投資は、資産運用の委託者への説 明責任が果たせない。したがって機関投資家は、開発途上国の企業ガバナンスを向上させ るために規制当局や政府に働きかける、という手法をとった。アメリカ機関投資家はこの ような行動をとることによって、結果的に世界に「株主民主主義」を普及する役割を担っ てきた。 以上のように、機関投資家のコーポレート・ガバナンスにおける役割は国内外において 非常に重要になっている。こうした背景には、アメリカにおいては「機関化現象」が他国 と比較して進展しているという事情がある。
第 2 節 アメリカにおける「機関化」の進展と年金基金の大規模化 1970 年代以降、金融システムにおいて銀行の仲介比率が低下し、代わって機関投資家 の仲介比率が高まってきた。これは金融・資本市場における「機関化」現象が進んでい ることを意味するが、特にアメリカにおいては、銀行の仲介比率の低下が著しく、代わ って機関投資家が台頭してきている。アメリカの金融・資本市場は世界で最も「機関化」 現象が進んでいるといえる。現代の資本主義においては、機関投資家は主要な金融仲介 機関となり、さらには資本市場における投資主体として現れ、市場や発行体に影響を及 ぼしている。 表2は、主要各国の機関投資家の資産額と対GDP比率を示したものである。アメリ カの機関投資家の合計額は約15 兆ドル(対GDP比は 176%)と突出している。G−7 諸国の機関投資家の合計資産額の約63%を占めている。投資信託は約5兆ドルの資産残 高であり(対GDP 比 60%)、G−7諸国の約 70%を占めている。年金基金は約7兆ド ル(対GDP 比は 84%)で、G−7合計の約 75%を占めている。このようにアメリカの 機関投資家の資産額は圧倒的に多く、その影響力は国際的にも非常に大きい。 次にアメリカの年金基金、企業年金と公務員年金の資産額を確認しよう。表3は企業 年金と公務員年金の資産額を示したものである。2002 年現在の企業年金の状況は、確定 給付型年金が約1 兆 2 千億ドル、確定拠出型年金は9千億ドルである。確定給付型年金 については、50 億ドルを超える大型年金基金が資産総額の約 60%を占めており、大規模 年金基金に資産が比較的集中する傾向がみられる。公務員年金については、確定給付型 年金は約2兆ドル、確定拠出型年金が約4千億ドルであり、確定給付型年金は企業年金 の資産額を上回っている。また、50 億ドル以上の大規模な公務員年金の保有資産額は全 体の約90%を占めており、大規模な年金基金に資産が集中していることを示している。 表2 各国機関投資家の資産額(1998年、単位10億ドル) 生命保険 対GDP比率 年金基金 対GDP比率 投資信託 対GDP比率 合計 対GDP比率 イギリス 1,294 93 1,163 83 284 20 2,742 197 アメリカ 2,770 33 7,110 84 5,087 60 14,967 176 ドイツ 531 24 72 3 195 9 798 35 日本 1,666 39 688 16 372 9 2,727 63 G−7 7,212 - 9,479 - 7,195 - 23,886 -出所:Davis,E.Philips and Steil,Institutional Investor,2001MIT Press,p.10.
表3 企業年金と公務員年金の資産規模(2002年) 単位10億ドル 確定給付型 確定拠出型 確定給付型 確定拠出型 DC・DB別基金合計 1,240 900 2,074 418 50億ドル∼ 766 447 1,841 374 10億ドル∼50億ドル未満 342 306 164 32 5億ドル∼10億ドル未満 70 78 43 6 5億ドル以下 61 68 25 5 Greenwich Associate 社資料(2003年)により筆者作成。 企業年金 公務員年金
1990 年代において、アメリカの確定拠出型年金の資産残高は 401(k)プランの普及に伴 い着実に伸びてきた。さらに近年においては、公務員年金も403(b)プランなどの確定拠 出型を導入するようになっている。2002 年現在で資産規模 50 億ドル以上の公務員年金 の確定給付型と確定拠出型併用基金は約40%にのぼる。 第 3 節 年金基金の資産構成と 1990 年代の株高要因 アメリカの年金資産残高は1980 年代から急速に伸びており、1980 年から 1984 年で 8,010 億ドルから1兆7,000 億ドルと2倍に伸長した。このような変化は、企業や従業員の拠出 額の増加ではなく、年金資産運用の好結果がもたらしたものである。連邦準備銀行のエコ ノミストによると、過去5年間の年金資産残高の上昇要因の内74%は運用結果によるもの であり、1980 年のそれは 22%に過ぎなかったと報告されている3。 近年、確定給付型の年金基金数が減少し、401(k)プランなどの確定拠出型の年金基金数 が急増しているが、資産額では1999 年末において確定給付型年金資産残高は2兆5千億ド ル、前年同期比 19%増であった。一方確定拠出型年金基金資産残高も同じく2兆5千億ド ルであったが、前年同期比 13.6%であった。現在、確定給付型年金は拠出額よりも給付額 の方が多く、確定拠出型は給付額よりも拠出額の方が多いにも関わらず上記のような資産 残高の伸びを示しているのは、株価の上昇によるところが大きい。過去五年間の株価の上 昇局面において、確定給付型年金基金の資産運用パフォーマンスは確定拠出型年金基金よ りも良い結果がでている。また1980 年代半ば以降、確定給付型年金は一貫して株式の売り 主体となっているが、それでも尚株式資産残高は確定拠出型年金よりも多いことも要因で ある。1999 年に確定給付型年金は 821 億ドルの株式を売却しているが、全資産の 56%に 相当する1兆4千億ドルを株式に投資している。一方確定拠出型年金は1999 年度に 18 億 ドルの株式を購入しており、全資産の44%に相当する1兆1千億ドルが株式に投資されて いる。また、確定給付制度を採用している公務員年金は全資産の3分の2を株式で運用し、 1999 年に保有株式残高は前年度比 11.1%増の2兆ドルに達している4 このように公務員年金、確定拠出型の企業年金は株式運用に積極的であり、確定給付型 企業年金はオーバーファンドで、あらたな拠出金を必要としないいわゆるコントリビュー ション・ホリデイの状態の年金も多く、株式運用比率が低下している。 第 4 節 1990 年代の資産運用の特徴 1999 年において確定給付型年金は全資産の約 48%を国内株式に投資しているが、約 35% は普通株式アクティブ運用、約 12%が普通株式パッシブ運用、約 1.4%が自社株投資であ った。一方401(k)プランなどの確定拠出型年金は全資産の約 69%を国内株式に投資してい
3 Anand,Vineeta “U.S. pension assets cross $10 trillion, doubling in 5 years”, Pensions&
Investments,Mar.20,2000. 4 Ibid.
るが、自社株投資に約30%、普通株式アクティブ運用に約 27%、普通株式パッシブ運用に 12%と自社株投資比率が高い5。このようにアメリカの年金基金は株式運用を積極的に行っ ていたが6、1990 年代の運用の特徴はインデックス運用、国際的投資、オールタナティブ投 資の拡大である。 ①インデックス運用 図1が示すように年金資産のうち株式インデックス運用の資産残高は 1998 年において、 約1兆4千億ドルとなっている。これは運用総資産中約34%を占める。インデックス運用 はERISA法が制定された1974 年以降、徐々に利用されるようになったが、1980 年代 半ば以降に公務員年金の株式投資増大に伴い資産残高が拡大してきた。大規模な資産を保 有する公務員年金の多くがコアインデックス・アプローチを採用している。すなわち、コ アポートフォリオの大部分をインデックス運用する手法である。例えば、アメリカで最っ とも資産規模が大きい年金の一つである公務員年金のCalPERS などは運用資産の 80% をインデックス運用し、アクティブ型のファンド・マネージャーを周辺に置いている。資 産規模で上位200 の年金基金のうち 130 以上がこの方式を採用している。このような運用 手法の拡大により、インデックスの運用比率が伸びている7。 ②国際株式およびオールタナティブ運用8 オールタナティブ投資とは代替投資とも訳されるが、通常株式や債券のような伝統的 5 Greenwich Associate 社提供資料。 6 三和裕美子「金融制度改革と年金基金の資産運用」高木仁他編『金融市場の構造変化と金融機関行動』 所収、2001 年、p.151. 7 マイケル・J・クローズ「『伝統的運用手法変化(Ⅰ)』特集 特別来日公演−IPERI 年金セミナー2000 より」『IPERI』、国際年金経済研究所,Vol.24、pp.18,19.
8 Clows J.,Micael The Money Flood-How pension funds revolutionized investing-,2000、pp-7,8,201,203、 251. 図1 アメリカ年金資産における株式インデックス運用 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1975 1980 1985 1990 1995 1998 年 10億ドル 0 5 10 15 20 25 30 35 40 株式インデックス運用資 産残高 インデックス運用資産比 率 出所:Clowes[2000],p.278より作成。