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みる 感覚的に語られがちな格差の状況を詳しくみることで 2 年代以降の格差の拡大が単純な 二極化 ではなかったことを示し 今後の地価の動向を見通す上でのヒントを探る 2. 広がる地価格差 : 地価版格差指数 (1) 地方圏の地価はバブル崩壊以降下げ止まらずはじめに 地価 ( 公示地価ベース 以下同じ

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格差指数でみる地価の実態

○ 地価の先高観が強まっているが、不動産は地域等によって状況が異なるのが一般的だ。本稿では、 ジニ係数や平均対数偏差(MLD)といった格差を表す指数を用いて、地価格差の状況を分析した ○ バブル崩壊後に縮小した地価格差は、2000年代に入り再び拡大した。内訳をみると、東京とその他 地域間だけでなく、その他地域内、東京都内の格差も基調的に拡大している ○ 地価が今後上昇に転じた際には、格差は拡大していくことが見込まれる。逆に、格差の縮小を伴っ た地価の上昇はバブルを示唆している可能性が高い

1.強まる地価上昇期待

3月末に発表された2013年の地価公示(1月時点)では、平均地価の前年比下落幅は3年連続で縮小 した。また、5/29に発表された直近の「地価LOOKレポート」によると、高度利用地150地点のうち3カ 月前と比べて地価が上昇した地点は全体の5割強に達した(図表1)。「アベノミクス」の効果が期待 される中、家計の地価先高観も強まっている状況だ(図表2)。 もっとも、土地・不動産市場は個別性が強く、平均的な動きをみるだけでは市場の特徴を見誤る可 能性がある。特に近年は、都市部と地方、あるいは東京とその他地域という「二極化」が指摘される ことが多い。そこで本稿では、地価格差の実態をいくつかの指標を用いて定量的に把握することを試 図表1 高度利用地地価の変動率分布 図表2 家計の地価見通しDI 0% 20% 40% 60% 80% 100% 10年4月 10年7月 10年10月 11年1月 11年4月 11年7月 11年10月 12年1月 12年4月 12年7月 12年10月 13年1月 13年4月 3~6% 0~3% 0% ▲3~0% ▲6~▲3% ▲9~▲6% (注)3カ月前と比べた変動率の分布。 (資料) 国土交通省「地価LOOKレポート」 ▲ 50 ▲ 40 ▲ 30 ▲ 20 ▲ 10 0 10 20 30 40 07 08 09 10 11 12 13 (年) (%Pt) (注) 先行きの地価について、「上がる」の回答割合-   「下がる」の回答割合。 (資料) 日本銀行「生活意識に関するアンケート調査」 経済調査部エコノミスト 市川雄介 03-3591-1416 [email protected]

日本経済

2013 年 6 月 13 日

みずほインサイト

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2 みる。感覚的に語られがちな格差の状況を詳しくみることで、2000年代以降の格差の拡大が単純な「二 極化」ではなかったことを示し、今後の地価の動向を見通す上でのヒントを探る。

2.広がる地価格差:地価版格差指数

(1)地方圏の地価はバブル崩壊以降下げ止まらず はじめに、地価(公示地価ベース、以下同じ)の推移を簡単に振り返ろう。1980年代後半から90年代初 頭にかけて全国的に上昇した地価は、バブル崩壊後、90年代を通じて下落の一途を辿った(図表3)。2000 年代に入り息の長い景気回復が続く中、都市圏では商業地が2006年、住宅地が2007年にようやく上昇に転 じた。それを受け、全国平均の地価もようやく上昇した。一方、地方圏(三大都市圏を除く地域)の地価 は下落ペースこそ緩やかになったものの、戦後最長の景気回復期(2002年1月~2008年2月)に上昇に転じ ることはなかった。結果として、90年代に縮小した都市圏と地方圏の地価格差は、2000年代以降、商業地 を中心に再び拡大した。 (2)格差指数は 2000 年代に再び上昇 都市部と地方圏の地価を比較するだけでも格差の拡大はある程度見て取れるが、足元の格差の度合 いが歴史的にみて高いのか、あるいは都市部・地方圏以外のレベルでも格差が拡大しているのかとい った点などについては、より踏み込んだ分析が必要だ。以下では、所得格差を議論する際に用いられ るジニ係数や平均対数偏差(MLD)といった不平等の度合いを表す指数を地価分布に援用し、格差 の実態を詳しくみる。 a.地価版ジニ係数 ジニ係数、及びジニ係数を計算する上で用いられるローレンツ曲線は、格差を表す代表的な概念で ある。通常のローレンツ曲線は所得を小さい順に並べ、横軸に累積世帯分布、縦軸に累積所得分布を 図表3 公示地価の推移 0 50 100 150 200 250 300 350 400 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 商業地 (2000年=100) 三大都市圏 地方圏 0 50 100 150 200 250 80 82 84 86 88 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 住宅地 (2000年=100) (注) 公表伸び率を用いて水準を算出。 (資料) 国土交通省「地価公示」 (年) (年) 40 60 80 100 120 00 02 04 06 08 10 12 (2000年=100) 60 70 80 90 100 110 00 02 04 06 08 10 12 (2000年=100)

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3 とってグラフ化したものであり、45度線から離れるほど所得格差が大きいことを示す(図表4)。下半 分の三角形(図の①+②)に占める、ローレンツ曲線と45度線で囲まれた面積(図の①)の比率がジ ニ係数である。ジニ係数は0と1の間の値をとり、1に近いほど格差が大きいことを表す。 全国の公示地価(商業地)を用いてローレンツ曲線の変化をみると、過去15年程度、商業地のロー レンツ曲線は右下方向へシフトしており、地価格差が拡大している状況を読み取ることができる(図 表5)。 長期にわたる変化をみるため、80年代後半のバブル期まで遡って地価版ジニ係数の推移を描いたの が図表6(次ページ)である。バブル期はまず東京都心部から地価が上昇したため初期には格差が急 拡大したが、バブルが本格化し地価上昇が郊外や地方都市へと波及すると、ジニ係数はやや低下した。 さらにバブル崩壊後は、地価上昇が急激だった地点ほど下落幅が大きく、92年以降の格差はほぼ一貫 して縮小した。2000年代に入ると一部の地価は下げ止まり、格差は再び拡大に向かったが、特に東京 都心部を中心に不動産市場の先行きに対する期待が過度に強まった「ミニバブル期」(2003~08年頃) には、ジニ係数は80年代のバブル期並みの水準まで上昇した。2008年の金融危機後は頭打ちとなった が、バブル崩壊後のように格差が縮小していく様子はなく、足元では再び上向く兆しもみられる。 b.平均対数偏差(MLD)

ジニ係数と同様に不平等の程度を表す指数に平均対数偏差(MLD:Mean Log Deviation)がある。 MLDは、「平均の対数値」と「対数の平均値」の差を表し、値が大きいほど格差が大きいことを示 す(0以上の値をとる)。 ) ln( ) ln(y y MLD  (バーは平均を表す) MLDはジニ係数に比べ低層の分布の変化に敏感という違いはあるが、地価に当てはめるとジニ係 数とほぼ同じように推移している(次ページ図表7)。 図表4 ローレンツ曲線・ジニ係数の概念図 図表5 地価版ローレンツ曲線 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 ① ② (累積人口比) ( 所 得 の 累 積 比 ) 45度線(格差ゼロのローレンツ曲線) ローレンツ曲線 格差大 ジニ係数=①/(①+②) (資料) みずほ総合研究所 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1998年 2003年 2013年 (地点数の累積比) ( 地 価 の 累 積 比 ) (資料) 国土交通省「地価公示」より、みずほ総合研究所作成

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4 図表6 地価版ジニ係数の推移 図表7 地価版MLDの推移 0.50 0.55 0.60 0.65 0.70 0.75 0.80 85 88 91 94 97 00 03 06 09 12 ← 格 差 拡 大 ミニバブル期 (資料) 国土交通省「地価公示」より、みずほ総合研究所作成 (年) バブル期 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 85 88 91 94 97 00 03 06 09 12 ← 格 差 拡 大 ミニバブル期 (資料) 国土交通省「地価公示」より、みずほ総合研究所作成 (年) バブル期 図表8 地価版MLDの要因分解 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 ①都内の格差による寄与 ②46道府県内の格差による寄与 ③東京・46道府県間の格差による寄与 MLD (資料) 国土交通省「地価公示」より、みずほ総合研究所作成 (年) 図表9 東京都内の地価版MLDの推移 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 85 88 91 94 97 00 03 06 09 12 ← 格 差 拡 大 ミニバブル期 (資料) 国土交通省「地価公示」より、みずほ総合研究所作成 (年) バブル期

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5 (3)単純な二極化ではない地価格差 こうした格差の拡大はどのような要因によるのだろうか。所得格差の議論では、格差が都市内・農 村内のものか、あるいは都市・農村間の格差によるのかというふうに分けて分析されることが多い。 同様の考え方に基づき、MLDを①地価が相対的に高い東京都内の格差、②東京以外の46道府県内の 格差、そして③東京・46道府県間の格差に分解してみよう1 図表8(前ページ)によると、多様な地域を含む46道府県内の格差(②)による寄与が基本的には 大きいが、時期による違いもみられる。バブルの前半期(ここでは1985~87年頃)は東京の地価上昇 が突出したため③の寄与が拡大したが、その後バブルのピーク(1991年)にかけて縮小し、代わって ②による寄与が拡大した。都内に遅れて大都市圏の郊外や地方の中核都市の地価が大きく上昇したの に対し、その他の地域における上昇幅は限られた、ということが読み取れる。バブル崩壊後は地価の 下落が続く中で①~③のいずれも縮小した。2000年代に入ると格差は再び拡大したが、バブル期とは 異なり③が持続的に大きな影響を及ぼしており、東京都内の地価が傾向として相対的に上がりやすく (または下がりにくく)なっていることがうかがわれる。その意味では、地価は「東京」と「その他 地域」に「二極化」している。 しかし、①や②の要因が徐々に拡大していることも見逃せない。特に①は、寄与度は必ずしも大き くないものの、都内のMLDを水準でみると90年代後半から基調的に高まっている(前ページ図表9)。 80年代後半のバブル期にも都内の地価格差は拡大したが、当時は一時的な現象にとどまっていた。バ ブルが激化した時期には都内の地価が揃って上昇したのに対し、2000年代は都内であっても地価が上 がる地域、下がる(または上がらない)地域が分かれるようになったことがうかがわれる。 このようにみると、地価の格差は東京とその他地域という単純な「二極化」ではない。一方の極の 東京都内と、他方の極のその他地域のいずれにおいても、グループ内の格差が拡大しており、特に都 内の格差がトレンドとして拡大していることは2000年代の大きな特徴である。地価格差は「重層化」 が進んでいるといった方が正確だろう。

3.格差縮小を伴った地価上昇はバブルのサイン

不動産はそれが生み出すキャッシュの大きさによって価値が決まるのであれば、地価が物件ごとの 事情に応じて変動し、結果として格差が重層化するのは自然なことである。逆にいえば、そうした個々 の評価が軽視され、地価が一斉に上がってしまうような状況はバブルである可能性が高い。 都内のMLDを横軸に、地価水準2を縦軸にとって都内の地価をグラフ化し、この点を確認してみよ う(次ページ図表10)。80年代後半から90年代初頭のバブル期は、グラフが左上方向へシフトしてお り、地価上昇と格差の縮小が同時に起きていたことがわかる。「土地神話」に基づく上昇期待が、都 内のあらゆる地域に広がったことがうかがわれる。一方、都心部で「ミニバブル」と囃された2000年 代半ばの局面は、右上方向(地価上昇・格差拡大)へのシフトがみられ、バブル期とは根本的に異な っている。2000年代は、バブル期のように収益性の低い物件までもが過大な評価を受けたというより、

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6 相対的に優良な物件への期待が集中した時期であると言えよう3 金融危機後、都内オフィスにおける新規貸借希望エリアで都心3区(千代田区・中央区・港区)の 引き合いがその他20区より高まっていることからもわかるように(図表11)、不動産は今後も地区・ 物件レベルでの選別が進むだろう。当面の景気は緩やかな回復が続き、全体としてみれば地価は上昇 に転じることが予想されるが、それは80年代末のバブル期ではなく、2000年代半ばの時期のように地 価格差の拡大を伴った動きとなりそうだ。仮に、地価が上昇するにつれて格差の縮小がみられるよう になれば、それは相対的に収益性の低い物件が過大な評価を受けるなど、不動産市場に過熱感が生じ ているメルクマールになり得る4。その意味で、地価の全体的なトレンドだけでなく、格差の動向を分 析していくことも重要である。 (参考文献) 市川雄介(2013)「不動産市場は過熱に向かうのか」『みずほリサーチ』2013 年 6 月号 齊藤有希子・河野敏鑑(2010)「賃金所得の企業内格差と企業間格差 ―健康保険組合の月次報告データを用 いた実証分析―」富士通総研経済研究所 研究レポート No.362 中村康治・才田友美(2007)「地価とファンダメンタルズ―加重平均地価公示指標を用いた長期時系列分析―」 日本銀行ワーキングペーパーシリーズ No.07-J-6 みずほ総合研究所(2007)「最近の不動産市場の動向について~都心部の不動産市場は一部にバブル的な側面 も~」みずほリポート

本西泰三(2003)「タイの所得分配 1975-1998」財務総合政策研究所 PRI Discussion Paper Series No.03A-20 図表10 都内の地価水準と地価格差 図表11 オフィスビルの希望貸借 エリア(都内) (注) 加重平均地価は、地価水準ウェイトで変動率を加重平均した伸び率を用いて算出。 (資料) 国土交通省「地価公示」より、みずほ総合研究所作成 0 50 100 150 200 250 300 0.30 0.40 0.50 0.60 0.70 0.80 1985年 91年 95年 2001年 (加重平均地価、1985年=100) (MLD) 40 50 60 70 80 0.4 0.6 0.8 2002年 08年 13年 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 (%) 都心3区 他20区 (注) 複数回答。全回答企業が選択した場合を100とする。 (資料) 森ビル「東京23区オフィスニーズに関する調査」 (年)

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7 1 ジニ係数はその定義上、グループ内格差・グループ間格差に完全に要因分解することはできないが、MLDは分解が容易であ るという特徴をもつため、本稿ではMLDの要因分解を行った。要因分解は下記の式に基づく。 ) ln( ) ln( n i i i i n i iMLD y y MLD

 

グループ内格差 グループ間格差 i

はグループiのウェイト、nはグループ数、MLDiはグループiMLDyi はグループiの平均を表す。 グループ内格差による寄与はグループごとのMLDを各グループのウェイトで加重平均したもの、グループ間格差による寄与 は各グループ内の値を全てグループ平均で置き換えてMLDを計算したものと考えることができる。 2 1985 年の地価水準を 100 として毎年の変動率を乗じて地価水準を算出した。公示地価の公表伸び率が各地点の変動率の単純平 均であり、都市部などの地価が過小評価されているという批判(中村・才田(2007)など)を踏まえ、ここでは変動率を地価 水準で加重平均した伸び率を用いた。 3 みずほ総合研究所(2007)は、1991 年の地価と、91 年の経済環境に揃えて評価した 2007 年の修正地価を比較し、都内の地価 を全体の平均値でみれば 2007 年の地価は 91 年の 6 割程度の水準にとどまるものの、上位 5%の地点で比較すると 2007 年の平 均は 91 年時を上回る、という結果を得ている。 4 もっとも、当面は 80 年代末のような全面的なバブルの再来を見込むのは現実的でなく、一部の地区・物件への需要が過度に集 中する「ミニバブル」こそが警戒すべきバブルだという指摘もあろう。不動産市場がファンダメンタルズと乖離して過熱して いるかどうかを示す万能な指標はないが、市川(2013)ではオフィス賃料とオフィス生産性の動向を比較することが一つの目 安になることを図示している。 ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに 基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。

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