【解答】① 【解説】 音響インピーダンスとは超音波の通りにくさを示し、次の式で算出される。 Z(音響インピーダンス)= P(物質の密度)× C(物質固有の音速) プローブから生体内に送信された超音波は、組織間の音響インピーダンスの差が大きい ほど強く反射され、逆に小さいほどあまり反射されない。臓器と比べ、空気の音響インピ ーダンスは極めて低く、骨のそれは極めて高いため、肺や腸管などの空気を含む臓器や骨 では反射が強く音が透過しにくい。 このため、超音波検査では音を入射する窓(音響窓、acoustic window)に注意する必要 がある。例えば心臓超音波検査では肺と肋骨を避ける必要があり、acoustic window は非常 に限られたものとなる。 音速 (m/sec) 密度 (g/cm3) 音響インピーダンス (106kg/m2s) 空気 344 0.0012 0.0004 脂肪 1476 0.92 1.36 水 1500 0.997 1.495 血液 1560 1.06 1.65 肝臓 1660 1.06 1.65 筋肉 1568 1.07 1.68 骨 3300 1.6 5.28 ※US スクリーニング(医学書院 発行 2008 年 3 月 1 日)から引用 生体組織の音響インピーダンスは上記の通りである。よって①が正しい大小関係となる。
図2-1、図 2-3 より、非対称性中隔肥厚(asymmetric septal hypertrophy: ASH)が見ら れ、肥大が後壁を除く左室全体に及ぶことから、肥大型心筋症MaronⅢ型の症例である。 図2-5 では、大動脈弁は収縮早期に完全に開口しているが収縮中期以降に開きが半減して おり、大動脈弁の収縮中期半閉鎖(mid-systolic semiclosure)が認められる。また図 2-6 では収縮期に僧帽弁前尖が心室中隔に近づく様子が観察され、僧帽弁前尖の収縮期前方運 動(systolic anterior motion: SAM)が認められる。これらの所見から流出路狭窄が示唆さ れる。狭窄の程度評価は連続波ドプラ法にて行い、簡易Berunoulli の式から左室流出路の 圧較差を算出する。健常例の左室流出路血流速は2m/sec 以内であり、これを超える場合に は狭窄の可能性を考える。また、左室流出路圧較差で30mmHg 以上の場合は閉塞性と定義 される。左室流出路血流速波形を計測する際に僧帽弁逆流速波形が混入することがあり、 流出路圧較差を過大評価する原因になる。ドプラ波形で混入の有無を判断するには波形の ピークの位置に注意する。つまり、流出路狭窄時の左室流出路血流速波形は収縮中期~終 期にピークを有し、僧帽弁逆流速波形は収縮中期にピークを有することから鑑別が可能で ある。 肥大型心筋症は多様な臨床像を呈するが、経過中に拡張型心筋症様病態に移行する場合 がある。これを拡張相肥大型心筋症(dilated phase of hypertrophic cardiomyopathy: D-HCM)と呼び、左室径の拡大や左室壁運動の低下を認め、病態の進行とともに心室壁は 徐々に菲薄化していく。また、左室拡張能と収縮能が障害されてうっ血性心不全をきたし、 肥大型心筋症のなかでもとくに予後不良であると報告されている。
【解答】④ 【解説】 図3-1~3-4、動画 3-1~3-3 から、右室の拡大と左室の狭小化が観察される。図 3-3、動 画3-2 では心室中隔の拡張期扁平化が見られることから右室圧が高いことが示唆され、右室 -右房間圧較差は 44mmHg であり推定右房圧を足さずとも肺高血圧症の存在を推定でき る。動画3-3 からは右室心尖部の壁運動は保たれているが自由壁の壁運動は低下していると いうMcConnell 徴候が確認できる。さらに、図 3-5、動画 3-4 より肺動脈の左右分岐部に 血栓が検出されている。以上から急性肺血栓塞栓症の症例であると判断できる。以下に急 性肺血栓塞栓症について述べる。 急性肺血栓塞栓症は血栓が塞栓子となり、急激に肺動脈を閉塞することによって肺循環 障害を惹き起こす疾患である。塞栓子の約90%は下肢あるいは骨盤内静脈の血栓であり、 起立や歩行,排便などの筋肉ポンプ作用により静脈還流量が増加することで、血栓が遊離 して発症することが推測される。肺血管床の 30%以上が閉塞されると肺血管抵抗が有意に 上昇し肺高血圧を生じるといわれている。右室はこの急性の圧負荷に対して代償的な壁肥 大を呈する時間がないため壁運動が低下する。また、この収縮力の低下を代償するために 右室拡大が生じる。 右室流出路のパルスドプラ血流波形からは肺高血圧の存在を推測することができる。健 常心の場合は左右対称に近い波形となるが、急性肺血栓塞栓症では肺高血圧を反映して最 高血流速度までの加速時間(acceleration time: AcT)は短縮する。
肺高血圧症による右房圧上昇に伴う静脈系のうっ血所見として、下大静脈の拡張や呼吸 性変動の消失を認めることがある。 卵円孔開存を認める症例では、バルサルバ負荷(腹圧をかけてそれを解除する動作)や 急性肺血栓塞栓症により右‐左シャントが観察されることがある。このときに静脈の血栓 が同シャントを通って左心系に流入し、動脈系に流れ込むことで脳梗塞などの奇異性塞栓 を生じる。 なお、左心耳内血栓は心原性脳塞栓症の原因となり、肺動脈の塞栓源にはならない。 以上から④が正しい組み合わせである。
右腎上極に中心部エコー(central echo complex: CEC)を圧排する等~高エコー腫瘤を 認める。内部はやや不均一で嚢胞性変化があり血流シグナルもわずかに認める。以上のこ とより腎細胞癌が疑われる症例である。 腎細胞癌の症状は血尿、側腹部痛、腫瘍触知の 3 主徴であるが無症状のうちに健診など で発見されることが多くなっている。この症例ではいずれの症状も訴えておらず、腹部超 音波検査で偶然発見された。 腎細胞癌の超音波所見の特徴として、内部エコーは低エコーから高エコーまで様々であ ること、腎外への突出像、腎中心部エコーの圧排、分断、消失を認めることなどが挙げら れる。また多くの腎細胞癌で腫瘍内の血流が豊富である。さらに腎細胞癌は腎静脈内への 発育傾向があるため、腎静脈のほか下大静脈内の腫瘍塞栓の有無についても観察すること が重要である。 以上から⑤が正しい組み合わせである。 設問5 【解答】③ 【解説】 ボディマークの位置より、上行結腸の病変が考えられる。本来ならば腸管壁は5層構造 を認めるが、症例では層構造は不明瞭化している。また、病変部は低エコーで全周性に壁 が肥厚しており、内腔は狭小化し、消化管内容やガスが高輝度エコーとして描出され、い わゆる pseudokidney sign を呈している。以上のことより大腸癌(上行結腸)が考えられ る。 消化管エコーでは消化管全体の把握や強い圧迫を加えるのに適したコンベックスプロー ブと、病変部やその周囲、壁構造の詳細な観察が可能となる高周波プローブを使い分ける とよい。 以上から③が正しい組み合わせである。
【解答】④ 【解説】
鎖骨下動脈盗血現象(Subclavian Steal Phenomenon: SSP)に関する設問である。 SSP とは鎖骨下動脈起始部から椎骨動脈を分岐する間(または腕頭動脈)に狭窄または 閉塞があることにより、反対側の椎骨動脈から側副路血流が流入し、患側の椎骨動脈が逆 流している病態である。上肢血圧の左右差、めまい、上肢の痺れなどから発見される場合 もあるが、頸動脈超音波検査の際に偶然発見されることもある。上肢の運動によりめまい や 失 神な どの 症 状を 引き 起 こす 場合 は、 鎖 骨下 動脈 盗 血症 候群 (Subclavian Steal Symdrom: SSS)と名称が変わる。SSP の頻度としては左鎖骨下動脈が 6~7 割を占める。 超音波画像から左椎骨動脈が収縮期に逆流していることがわかる。狭窄の重症度により 血流パターンが異なり、軽度の狭窄では収縮期時相に notch が出現する程度であるが、重 症化するに伴い収縮期全体が逆流し、高度狭窄または閉塞の場合は全時相の逆流となる。 このようなSSP を疑う場合は、両側上腕動脈の血流波形を評価する。患側の上腕動脈血流 波形は健側と比較して、立ち上がり時間の延長、最高血流速度の低下、拡張期逆流相の消 失などの狭窄後波形を認める。次いでセクタプローブやコンベックスプローブを用いて鎖 骨下動脈起始部狭窄部位を検出する。カラードプラガイドで狭窄部位が検出された場合、 モザイク血流や折り返しを呈する高速血流が検出される。閉塞の場合には、カラーシグナ ルの途絶像が描出される。 以上から④が正しい組み合わせである。 設問7 【解答】② 【解説】 図 7 の腫瘤は楕円形の境界明瞭な嚢胞内に乳頭状で急峻に隆起した充実部を認める。嚢 胞内乳頭腫の症例である。以下に嚢胞内乳頭腫について述べる。 乳管内乳頭腫は、樹枝状の血管結合織を伴って乳管内に増殖する良性の乳頭状腫瘍で、 乳管が嚢胞状に拡張した場合は嚢胞内乳頭腫と呼ばれる。好発年齢は40~50 歳、好発部位 は乳頭近傍であり、症状は血性乳頭分泌が多い。嚢胞内乳癌との鑑別は画像上困難なこと があるが、嚢胞内の立ち上がりが明瞭で急峻なものは第一に嚢胞内乳頭腫を考え、立ち上 がりのなだらかなもの(充実性部分が壁を這うように存在するもの)は嚢胞内乳癌の可能 性を考える。ただし、嚢胞内乳頭腫を考える場合も、本症例のように5mm 以上の病変であ れば精査を考慮する。 以上から②が誤っている組み合わせである。