センター勉強会
会議室
平成22年1月12日(火)
山崎浩則
インクレチン関連薬は,
糖尿病治療に地震を起こすか
∼知って得するGLP-
1の魅力と謎∼
ブドウ糖が攻めてきた!
最初のインパクトある迎撃こそ
勝利への第一歩
ブドウ糖が攻めてきた!
最初のインパクトある迎撃こそ
勝利への第一歩
インスリン濃度がピークに達する時間が
どれほど重要かを証明した実験
膵全摘した犬
ブドウ糖負荷試験(門脈よりインスリンを投与して)
ブドウ糖投与と
同時にインスリンを投与
ブドウ糖投与
イ
ン
ス
リ
ン
曲
線
ブドウ糖投与に
30分遅れて
ブドウ糖投与と
60分遅れて
ブドウ糖投与
血
糖
曲
線
1.インスリン分泌のおさらい
2.GLP-
IとGIPの基本情報
(インクレチンのtwo top)
3.DPP-
4阻害薬の臨床データ
4.GLP-
1の耳寄りな話
今日のお話し
今日のお話し
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200
5
67
72
60
38
0 20 40 60 80 100 0 30 60 90 120 0 30 60 90 120糖尿病家族歴なし,6年生,BMI=21,
運動系部活に所属,よく働く
時間(分)
インスリン(uU/ml)
時間(分)
血糖(mg/dl)
77
92
70
53
60
110
糖尿病の遺伝的素因がない
すなわち
インスリン分泌障害がない
若い,肥満でない,活動
性が高い.すなわち
インスリン感受性が良い
ひとりの医学部医学科の女子学生
糖尿病
の発症
インスリン分泌
インスリン感受性低下と分泌障害
血糖が高いこと
自体が
よろしくない
インスリン感受性
遺伝因子
環境因子
イ
ン
ス
リ
ン
作
用
障
害
高
血
糖
糖毒性
糖毒性
β細胞
(インスリン)
α細胞
ブドウ糖
ミトコンドリア
ATP依存性
Kチャネル
電位依存性
Caチャネル
インスリン
開口放出
ATP/ADP
Ca
2+
Ca
2+
K
+
http://park12.wakwak.com/‾pharma1/textbook2/Diabetes/Diabetes.htmlの図を改変2型糖尿病患者と非2型糖尿病患者における
インクレチン効果
Nauck M et al. Diabetologia. 1986;29:46–52.
時間(分)
イ
ン
ス
リ
ン
(
m
U
/
L
)
n
m
o
l
/
L
0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 80 60 40 20 0 180 60 120 0非糖尿病
(n=8)
2型糖尿病
(n=14)
時間(分)
イ
ン
ス
リ
ン
(
m
U
/
L
)
n
m
o
l
/
L
0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 80 60 40 20 0 180 60 120 0 経口グルコース負荷 静脈内 (IV) グルコース持続注入インクレチン
効果
INCRETIN
INCRETIN
In
testine
Se
cret
ion
Insul
in
In
testine
Se
cret
ion
Insul
in
1932年に命名
1932年に命名
経口血糖降下薬の数
ラスチノン
(’57)
グルコバイ(’93)
オイグルコン
(’71)
グリミクロン
(’84)
ベイスン(’94)
メルビン(’61)
ノスカール(’97)
アクトス(’99)
ファスティック(’99)
アマリール(’00)
グルファスト
(’04)
セイブル(’06)
GLP-1
(glucagon-like peptide-
1)
GLP-1
(glucagon-like peptide-
1)
GIP
(gastric inhibitory polypeptide)
GIP
ブドウ糖
vs
インクレチン
GIP
vs
GLP-
1
GLP-
1
アナログ
Exenatide
Liragltide
GLP-
1*
分解酵素阻害薬
Sitagliptin
Vildagliptin
vs
GIPは上部小腸から
GLP-1は下部小腸から
豚とヒトの腸管を材料にして,
GLP-1,GIP,PYY産生細胞の
ブタ
ラッ
ト
ヒト
十
二
指
腸
近
位
中
部
遠
位
近
位
遠
位
空腸
回腸
GIP
GLP-1
GIP
GLP-1
栄
養
素
栄
養
素
小腸上部
K細胞
小腸下部
L細胞
GLP-
1受容体
2型糖尿病ではGLP-1の分泌が
低下している
健常者
2型糖尿病
2型糖尿病における
GIPとGLP-1の血中濃度
100 50 0 240 180 120 60 0GIP
(pmol/L) 時間 (分) 240 180 120 60 0GLP-1
(pmol/L) 時間 (分) * * * * 10 5 0 15 20 * * * * 非糖尿病 IGT 2型糖尿病 2型糖尿病患者 (n=54)、IGT (n=15)および非糖尿病 (n=33)を対象に、糖尿病患者については3日間、糖尿 病治療薬を休薬した上で、前夜より絶食した後に混合食を取り、食事開始時を0分とした。(食事は10∼15分間で 食べ終えた。) 混合食:脂肪、炭水化物、タンパク質などから成る 2,250 kJ 食。GLP-
1の持続静注
グ
ル
コ
ー
ス
(
m
g
/
d
l
)
* * * * * * * 250 200 150 100 50イ
ン
ス
リ
ン
(
U
/
m
l
)
40 30 20 10 0 * * * * * * * * 0 60 120 180 240 –30ATP依存性
Kチャネル
インスリン
開口放出
電位依存性
Caチャネル
GLP-1受容体
ATP
cAMP
GLP-
1の持続静注
グ
ル
コ
ー
ス
(
m
g
/
d
l
)
* * * * * * * 250 200 150 100 50 * * * * 20 15 10 5 0グ
ル
カ
ゴ
ン
(
p
M
)
イ
ン
ス
リ
ン
(
U
/
m
l
)
40 30 20 10 0 * * * * * * * * 0 60 120 180 240 –30空腹時血糖の調節
①グリコーゲンの分解,②
アラニン,グリセオール,
ピルビン酸を材料とした糖
新生によって,肝糖放出が
なされる.この放出を促進
しているホルモンは,
グル
カゴン,カテコールアミン,
コルチゾール,成長ホルモ
ン
.
GLP-1でグルカゴン分泌が
抑制されるため,空腹時血
糖降下作用が期待できる.
GLP-1の信号の作用点は,
主として,
インスリン開口放出である.
GLP-1の作用は,
ブドウ糖の信号あっての作用で
ある.
GLP-1の作用の特徴
(基礎)
GLP-
1の役割
膵β細胞は,ブドウ糖濃度を
感じているだけではない.濃度
上昇を予測している.
この予測を可能にしているの
が,インクレチン効果かもかも
しれない.
ブドウ糖
vs
インクレチン
GIP
vs
GLP-
1
GLP-
1
アナログ
Exenatide
Liragltide
GLP-
1*
分解酵素阻害薬
Sitagliptin
Vildagliptin
vs
GLP-
1の最大の弱点
食事
食事
GLP-1分泌
GLP-1分泌
活性型GLP-
1(7-
36)
活性型GLP-
1(7-
36)
NH
2
-aa-Ala
NH
2
-aa-Ala
不活性型GLP-
1
(9-36)
不活性型GLP-
1
(9-36)
DPP-4
DPP-4
DPP-4によるインクレチンの切断部位
GLP-1
(glucagon-like peptide-1)
His Ala Glu Gly Thr Ser Asp Val
Arg Tyr Phe Leu Thr Ser Ser Glu Glu Gly Gln Ala Ala Lys
Phe Ile Trp Ala Leu Val Lys Gly Gly
DPP-4
による 切断部位 -NH2 or 7 9 37 36 20Tyr Ala Glu Gly Thr Ser Asp Tyr
Thr Ala
Phe
Leu
Ile Ser Ile
Asp Asp Lys Ile His Gln Gln
Phe Val Trp Asn Met Leu Gly Ile Gln
DPP-4
による 切断部位 1 3 40 30 10GIP
(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)
20 Ala Gln Lys Lys Asp Lys
Asn Trp Lys His Asn
42
どちらもN末端から2番目のアミノ酸残基が、
アラニンである。
半減期 5∼7 min
半減期 ∼2 min
D P P
-4 (ジペプチジル・ペプチダーゼ4 )
Evans DM IDrugs 2002;5:577–585; Drucker DJ Expert Opin Investig Drugs 2003;12:87–100; Rasmussen HB et al Nat Struct Biol 2003;10:19–25.より改変
•
DPP-4はプロリルオリゴペプチダーゼファミリーのセリン・プロテアーゼであり2つの
状態で存在する
–
膜結合型 (幅広く発現している)
–
可溶型
細胞膜 Cytosol C食事
食事
GLP-1分泌
GLP-1分泌
活性型GLP-
1(7-
36)
活性型GLP-
1(7-
36)
NH
2
-aa-Ala
NH
2
-aa-Ala
不活性型GLP-
1
(9-36)
不活性型GLP-
1
(9-36)
DPP-4
DPP-4
DPP-4
阻害薬
DPP-4
阻害薬
食事負荷試験結果
プラセボ (n=31) 12週後 ベースライン シタグリプチン 100 mg (n=43) 時間 (hr) 血 糖 値 (m g /d L ) 120 160 200 240 280 320 0 0.5 1.0 2.0 0 0.5 1.0 2.0 プラセボ (n=31) シタグリプチン 100 mg (n=43) 時間 (hr) イ ン ス リ ン (µ IU /m L ) 0 10 20 30 40 50 60 70 0 0.5 1.0 2.0 0 0.5 1.0 2.0(12週後の食後2時間値)
グルコース
インスリン
最小二乗平均の差 = -81.3 mg/dL; p<0.001
最小二乗平均の差 = 13.5 µU-h/dL; p<0.05
Japanese 12 week
Japanese 12 week Monotherapy
Monotherapy Study
Study
Nonaka K et al.
Diabetes Res Clin Pract
. 2008;79:291-298.より作図
わが国で行われた臨床試験
(sitagliptin vs プラセボ)
HbA
1c
値変化量の推移
食事/運動療法にも関わらず十分な血糖コントロールが得られない 2型糖尿病患者 177例を対象として、
シタグリプチン 50mgまたは 100mg(増量時) 1日 1回を 52週間投与し安全性および忍容性を検討した。
治療期 (週)
-0.8
-0.6
-0.4
-0.2
0
0.2
0.4
0
4
8
12
16
20
24
28
32
36
40
44
48
52
*** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** : p < 0.001 (vs. 治療期 0週) paired t test(%)
変
化
量
平均±標準偏差 n=138∼175 増量基準:治療期 12週時以降の空腹時血糖値 140mg/dL以上、または治療期 12週時以降 HbA1c7.0% 以上の場合、 次回規定来院( 4週後)時より 100mgに増量する。(治療期 16週時以降、40週時まで)長期投与試験
長期投与試験
(非対照,非盲検試験)
(非対照,非盲検試験)
第Ⅲ相臨床試験
空腹時血糖の調節
①グリコーゲンの分解,②
アラニン,グリセオール,
ピルビン酸を材料とした糖
新生によって,肝糖放出が
なされる.この放出を促進
しているホルモンは,
グル
カゴン,カテコールアミン,
コルチゾール,成長ホルモ
ン
.
GLP-1でグルカゴン分泌が
抑制されるため,空腹時血
糖降下作用が期待できる.
空腹時血糖の推移(12週)
週
0
2
4
6
8
10
12
空
腹
時
血
糖
135
140
145
150
155
160
165
170
175
180
プラセボ
シタグリプチン100 mg
最小二乗平均の差 =
-31.9 mg/dL
Japanese 12 week Monotherapy Study
Japanese 12 week Monotherapy Study
(mg/dL)
Nonaka K et al.
Diabetes Res Clin Pract
. 2008;79:291-298.より作図
(12週後)
研究の数
(参加者の
数)
HbA1cの変化
(95%信頼区間)
有用
DPP-4阻害薬
vs
プラセボ
16
(4,190)
-0.74
(-0.85∼-
0.62)
DPP-4阻害薬が
Sitagliptin
vs
プラセボ
7
(2,404)
-0.74
(-0.84∼-
0.63)
DPP-4阻害薬が
Vildagliptin
vs
プラセボ
9
(1,786)
-0.73
(-0.94∼-
0.52)
DPP-4阻害薬が
DPP-4阻害薬
vs
その他のOHA
4
(2,899)
0.21
(0.02∼0.39)
対照が
DPP-4阻害薬の有用性
DPP-4阻害薬
(インクレチンenhancer)
① ヂペプチジルペプチターゼ-4(DPP-4)は,
殆どすべての臓器の細胞表面に存在する
110 kDaの糖蛋白.血漿中にも100 kDaの可
溶性循環体として存在する.
② N端末から2番目が,プロリンかアラニンで
あれば,そこまでを切断する.
③ 小腸の血管内皮には,DPP-4は特に多く存
在する.多くのGLP-1,GIPは循環血中に入
る前に分解不活化される.
④ GIPやGLP-1以外にも,ニューロペプチドY,
胃ポリププチド,サブスタンスP,IGF-I,
Rantesその他多数,も理論上,DPP-
4の基
質となり得る.→副作用に注意.
⑤ DPP-4阻害薬では,体重増加をきたさない
面白い理由→GIP単独投与では,体重増加
をきたし,GLP-
1単独投与では,体重減少
する.GLP-1とGIPの両方の濃度を上昇させ
る.よって「体重には変化なし」となった
と考えられている.
ブドウ糖
vs
インクレチン
GIP
vs
GLP-
1
GLP-
1
アナログ
Exenatide
Liragltide
GLP-
1*
分解酵素阻害薬
Sitagliptin
Vildagliptin
vs
GLP-
1
もともと体の中にあるペプチド
糖尿病では低濃度,しかも寿命が短い
寿命を延ばす薬
DPP-4阻害薬
(経口薬)
少し手を加えました
GLP-1誘導体
(注射剤)
GLP-1の話ではもれなく登場する
毒トカゲ
だ液の中に半減期の長いGLP-1がありました
だ液の中に半減期の長いGLP-1がありました
半減期の長い(12時間)
exendin-4の発見
Liraglutide
食後血糖制御に必要な,インス
リン初期分泌を促進する.
グルカゴン分泌抑制を通じて,
空腹時血糖の改善作用をもつ.
GLP-1の作用の特徴
(臨床)
GLP-
1
もともと体の中にあるペプチド
糖尿病では低濃度,しかも寿命が短い
寿命を延ばす薬
DPP-4阻害薬
(経口薬)
少し手を加えました
GLP-1誘導体
(注射剤)
Holst JJ et al. Trends Mol Med 2008; 14: 161-168.
DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬の違い
イ
ン
ク
レ
チ
ン
濃
度
の
増
加
嘔吐
下痢
悪心
腹痛
↓
食欲
↓
食物摂取量
= 体重減少
↓
胃排出
↑
インスリン分泌
↓
グルカゴン分泌
↓
血糖値
GLP-1受容体
作動薬
DPP-4
阻害薬
GLP-1の作用
10-10-OTH-09-J-M07-SSDPP-4阻害薬
GLP-1受容体作動薬
経口で投与
内因性の活性型
インクレチン濃度を増やす
血糖値を低下させるにも
かかわらず体重は増加しない
低血糖が起こる可能性は
低い
吐き気や嘔吐の副作用なし
注射で投与
外因性に血中GLP-1濃
度を高濃度にする
体重減少効果
特にSU薬との併用で
低血糖が起こる
可能性が高まる
用量依存的に吐き気の副
作用が増す
大杉満 他 糖尿病 2009;52(6):433-435.DPP-4阻害薬とGLP-1受容体作動薬の違い
10-10-OTH-09-J-M07-SSGLP-1の気になる
論文
C
GLP-
1(5nM)
1d
3d
5d
GLP-
1は,ヒトのラ氏島の
3次構造の崩壊を抑止した.
Loredana. Endocrinology, 2003Loredana. Endocrinology, 2003