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平成20年度卒業論文

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Academic year: 2021

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平成 20 年度卒業論文

TGEM の作成と基本測定

信州大学 理学部物理科学科 高エネルギー物理学研究室 05S2040C 若林 潤 平成 21 年 3 月

(2)

概要

現在、高エネルギー実験で用いられているガス放射線測定器はワイヤーを用いたものが主であ る。しかし、近年ワイヤーを使わない MPGD (Micro Pattern Gas Detector) の研究が盛んにおこな われている。これは MPGD がワイヤーチェンバーに比べ、位置分解性能が優れていることや高頻 度な信号に耐えられるためである。そのため、ILC (International Linear Collider) の飛跡検出器で の利用、X 線や中性子の二次元読み出しに利用等が考えられている。

本研究は MPGD の一種である GEM (Gas Electron Multiplier) を扱う。GEM の中でも厚い GEM を作成し、増幅率の測定を通して、基本的な性能を探った。本研究では厚い GEM のことを TGEM (Thick-GEM)と呼ぶことにする。また、Maxwell® SV と Garfield でシミュレーションを行い、測定との 比較を行った。

(3)

1

1 はじめに ... 2

1.1 研究の目的 ... 2

1.2 各種 MPGD ... 2

1.3 MPGD の利用 ... 4

2 GEM (Gas Electron Multiplier) ... 6

2.1 構造と加工法 ... 6 2.2 検出原理... 9 2.2.1 光と物質の相互作用 ... 9 2.2.2 荷電粒子との相互作用 ... 13 2.2.3 電子増幅の原理 ... 14 3 シミュレーションと TGEM の作成 ... 16 3.1 電場計算... 16 3.2 電子の増幅 ... 21 3.3 TGEM のパターンの考案 ... 22 3.4 実際のパターン ... 23 4 TGEM の測定 ... 24 4.1 実験方法... 24 4.2 TGEM からの信号 ... 27 4.3 増幅率の測定 ... 27 4.3.1 VGEMに対する依存性 ... 29 4.3.2 Drift 領域に対する依存性 ... 30 4.3.3 Induction 領域に対する依存性 ... 31 4.3.4 時間に対する依存性 ... 32 5 考察 ... 35 6 まとめと課題 ... 38 6.1 まとめ ... 38 6.2 今後の課題 ... 38 付録 ... 39 A ADC キャリブレーション値の求め方 ... 39 B Garfield ... 41 謝辞 ... 45 参考文献 ... 46

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2

1 はじめに

従来ではガス検出器はワイヤーを用いることが多かったが、近年のエッチング技術の向上により、 エッチング技術を用いたマイクロパターン検出器(Micro Pattern Gas Detector : MPGD)が開発され 盛んに研究されている。これまでのガス検出器を使用していた分野はもちろん、その特性を生かし これまでには利用されてこなかった分野、例えば、医療分野まで MPGD は応用が可能だからであ る。ワイヤーチェンバーではワイヤーの断線の危険があったが、MPGD ではその心配は無く、イオ ンの移動距離もワイヤーチェンバーに比べて短い。そのため、高頻度の信号にも耐えられるという ことが言え、これは MPGD の大きな利点の一つである。MPGD にはいくつかの種類があるが、本研 究では GEM に絞ってその基本特性について調べた。

1.1 研究の目的

本研究では GEM(Gas Electron Multiplier)の中でも絶縁体の厚さが数百m の厚さがあるものを 作成し、動作確認と性能の評価を目的とする。この厚い GEM を以後 TGEM (Thick GEM)と呼称す ることにする。パターンを 2 種類作成し、後に比較、考察を行う。性能の評価では主に増幅率が各 パラメータにどのような依存関係があるか測定を行う。GEM にはパラメータとして GEM の両面にか ける電位差:VGEM、Drift 領域の電場の強さ:EDrift、Induction 領域の電場の強さ:EIndction、さらに時

間的に増幅率が変動することもありえるため、時間もパラメータのひとつとして考える。以上の 4 つ について考える。

1.2 各種 MPGD

本研究で扱う GEM 以外の MPGD には MSGC、-PIC、MicroMEGAS、などの種類がある。以下 にその概要を述べる。

 MSGC (Micro Strip Gas Chamber)

比例計数管の限界を越えるため 1988 年に Oed により提案された[1]。MSGC はワイヤーの代わり に幅 10m ほどの陽極 (Anode Strip)のストリップを基板上に配置し、その間に陰極 (Cathode Strip)のストリップを配置した構造の検出器である。電極間はおよそ 100m と狭いため、時間分解 能・位置分解能が優れている。さらに、1 枚の基板でできているので構造は非常に単純である。また、 陽極と陰極が近いので、増幅で生じた陽イオンが陰極に引き寄せられる時間が短い。しかし、放電 が起きやすいことや絶縁体の表面に電荷が蓄積し電圧が不安定になる、電場がゆがむなどの問題 があってほとんど開発されなくなってきている。MSGC の概略図を図 1.1(a)、(b)に示す。

(5)

3

図 1.1(a) MSGC の構造 図 1.1(b) 電場、電気力線の様子

カソードストリップの間に細いアノードストリップがある。アノードとバックス トリップから信号を読み出し、位置を特定する。電気力線はアノード周辺 で密集していて、電場が強くなっていることがわかる。

 -PIC (Micro Pixel Chamber)

-PIC は上で述べた MSGC に似た構造を持っているが、MSGC では線状に陽極、陰極が並ん でいるのに対して、-PIC は陽極が丸い点状になっておりその周りを陰極が囲む構造になっている [2]。図 1.2 に-PIC の概略図を示す。陽極付近の強い電場にドリフトしてきた電子が入ってくると増 幅を起こす。-PIC は MSGC よりも大きな増幅率を達成できている。-PIC 単体での最大増幅率は およそ 1.5×104倍ほどであるが、GEM と組み合わせて用いたり、陽極の上方に負電圧を印加した メッシュを配置したりすることで、さらに大きな増幅率が得られる。 図 1.2 -PIC の構造 アノード、カソードの両方から読み出しを行い位置が特定できる。アノー ドは周りをカソードに囲まれ高電場を作ることができる。

(6)

4

 MicroMEGAS (Micro MEsh GAseous Structure)

MicroMEGAS は 1996 年に Giomataris らが考案したものである[3]。図 1.3 に MicroMEGAS の 概略図と電気力線の様子を示す。読み出し基板の間に狭い空間を空けて目の細かい金属メッシュ (~50m ピッチ)が平行に張られた構造をしている。金属メッシュと読み出し基板の間に高電場を形 成し、そこで電子の増幅を行う。非常に高頻度な信号にも対応できる。メッシュに電圧をかけるほど 増幅率を稼げるが、放電が起こるとそれを抑えるメカニズムが乏しいため、大面積のものを安定して 動作させることは難しいといえる。 図 1.3(a) MiceoMEGAS の構造 図 1.4(b) 電気力線の様子 マイクロメッシュとアノードの間には絶縁体のスペーサーがあり狭い空間 を保っている。メッシュとアノードの間(Amplification Gap)では電場が一 様かつ高いことがわかる。

 GEM (Gas Electron Multiplier)

GEM は 1997 年に CERN の F.Sauli らによって発案されたガス増幅器である[4]。その特徴として、 従来のワイヤーを使った測定器に比べ、位置分解性能が優れている点や磁場による影響を受けに くいという点があげられる。また、ほかの MPGD にない特徴としては GEM が電子の増幅部のみを担 っていることである。そのため、信号検出部分は別に設計できるという利点がある。構造等は第 2 章 で詳しく述べる。

1.3 MPGD の利用

MPGD の利用の例として計画中の国際衝突型線形加速器 (ILC)での利用があげられる。ILC 計画[5]では TPC (Time Project Chamber)での利用が考えられている。

ILC とは電子、陽電子を高エネルギーで衝突させることで TeV のエネルギー領域の物理を高精 度、高分解能で研究するためのものである。従来の加速器とは異なり、全長約 40km の直線状の加

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5 子の飛跡を再構成する測定器である。この際に一定方向に磁場をかけると、その粒子の曲率半径 がわかり、そこから粒子の運動量がわかる。飛跡検出器には従来ではワイヤーチェンバーが用いら れてきたが MPGD に比べ位置分解能が务る。さらに、陽イオンのドリフトが遅いため高頻度な信号 に耐えられない。そこで、この MPGD の利用が考えられている。MPGD によって増幅された電子が 移動することで電極に信号を誘起するが、複数の電極からの信号により重心法を用いて 100m 以 下の位置分解能を得ることが可能である。 さらに、MPGD の利用は荷電粒子の測定にとどまらず、X 線や中性子のように電荷を持たない粒 子の測定にも用いられる。このような粒子の場合は測定器内の反応によってできた荷電粒子を種と して信号を読み出す。このような場合には荷電粒子のように 3 次元的に飛跡を再構成することはで きず、2 次元の位置情報が重要な意味を持つ。従来の X 線測定では X 線 1 つ 1 つを検出するの ではなく、比較的長い時間に入射した X 線の総量を読み出す。しかし、MPGD を用いた検出では X 線の個別の時間、エネルギー情報を持って計測することが可能になり、結果も瞬時に得られる。

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6

2 GEM (Gas Electron Multiplier)

この章では GEM の構造、加工方法を述べ、放射線とガスとの基本的な相互作用と GEM での電 子増幅の基本的な事柄について述べる。

2.1 構造と加工法

GEM は薄い絶縁体のフィルムの両面に銅箔を張り、そこに無数の孔を開けた構造をしている。 図 2.1 に CERN 製の GEM の全体と拡大図を示す。絶縁体のフィルムにはポリミイドなどの素材を 使用し、その厚さは 50m である。また典型的な GEM の孔の大きさは直径 70m で 140m おきに 規則的に並んでいる。両面を覆っている銅箔は 5m の厚さで、ここに 300~400V 程度の電位差を 与えることにより孔の内部に高電場を形成し、ここで電子を増幅させる。しかし、一枚の増幅率は小 さいので、何枚か組み合わせて使うことで大きな増幅率を得られる。

図 2.1(a) CERN 製 GEM の全体 図 2.1(b) CERN 製 GEM の拡大写真 CERN 製の GEM はパターン部の大きさが 10cm×10cm の大きさがある。 孔の配列は正三角形配列になっている。 GEM の加工方法もいくつかあり、精度、効率のよい加工方法が試されている。現在の GEM の加 工方法には主に以下の3つある。  ウェットエッチング  プラズマエッチング  レーザーエッチング いくつか方法があるのは如何に孔をきれいな円筒形にあけられるかということである。

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7 ウェットエッチングとは薬品(塩酸溶液)によって銅と絶縁体を溶かすことによって孔を作る方法で ある。図 2.2 にウェットエッチングで作成した GEM の断面図を示す。この方法では片面ずつ銅を溶 かし、その後絶縁体を溶かすので、孔の形状がつつみのような形状になる。これは絶縁体の内部 にまで薬品が浸透しないためである。この方法は CERN で用いられている方法である。 この方法では 50m~70m 程度の孔を 100m~150m のピッチで開けることができる。 図 2.2 ウェットエッチング GEM の断面 絶縁体の中央部分は 55m と孔の縁の部分よりも狭くなっている。  プラズマエッチング プラズマエッチングでは銅の部分はウェットエッチング同様薬品を使って溶かす。しかし絶縁体 の部分はアルゴンのプラズマを当てる事によって削る。図 2.3 にプラズマエッチングにより作成した GEM の断面図を示す。プラズマで絶縁体を削ることにより孔はほぼ円柱状に削ることができる。し かし、プラズマの拡散によって絶縁体の側面を削りすぎてしまうこともある。 孔の大きさはケミカルエッチング同様 50m~70m 程度の孔を 100m~150m のピッチで開け ることができる。

(10)

8 図 2.3 プラズマエッチング GEM の断面 ウェットエッチングのように孔の形状はつつみのような形状ではなく円筒 に近い。ただし、絶縁体を削りすぎている。削りすぎの場合は放電の危 険が高まる。  レーザーエッチング 図 2.4 にレーザーエッチングにより作成した GEM の断面図を示す。レーザーエッチングでは拡 散の小さいレーザーを使うことでプラズマエッチングの際に絶縁体を削りすぎる問題を解決してい る。非常に微細な加工が可能であり、30m の孔を 50m ピッチでエッチングすることも可能である。 しかし、レーザー光を絶縁体が吸収することにより、絶縁体の温度が上昇してしまう。そして、絶縁 体が変形し、表面が波打った状態になることもある。この方法では上の 2 つの方法に比べて精度が よいがその代わり値段が高くなってしまう。 図 2.4 レーザーエッチング GEM の断面 絶縁体の削りすぎも見られず、孔も円筒に近いが、上の 2 つの方法に比 べて高価になる。

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9 回作成した TGEM はドリルで絶縁体に孔を開けたのちに、銅の部分をエッチングで孔を開けた。

2.2 検出原理

放射線の検出では検出器を構成している物質との相互作用により落としたエネルギーを何らか の方法で取り出すことにより検出を行う。特にガスを用いた検出器では検出器内のガスと荷電粒子 や光が相互作用を起こし、それを電気信号として取り出している。本研究では線源により測定器の 増幅率を決定したため、ここでは主に光と物質の相互作用の原理と、相互作用から電気的な信号 として取り出すまでの主な原理につい述べる。

2.2.1 光と物質の相互作用

光(γ線、X 線)と物質との相互作用は主に光電効果、コンプトン散乱、電子対創生の 3 つである。 これらの過程は光子のエネルギーを一部またはすべて電子のエネルギーに変換するものである。 光子のエネルギーによりそれぞれの効果の寄与が異なる。また、線、X 線の透過量は指数関数的 に減尐し、厚さ

d

cm の吸収物質に

I

0個の線もしくは X 線が入射したとすると、透過した量は次式 であらわされる。 d e I I0  (2.1) ここでは線吸収係数と呼ばれ、光電効果、コンプトン散乱、電子対創生、それぞれの吸収係数 1  、2、3の和になっている。 3 2 1

(2.2) 線、X 線の吸収物質内での平均飛程はその透過量が 1/e に減尐する距離と定義できる。この距 離は(2.1)式から、1/となる。 図 2.5 は鉛の場合の線吸収係数を示したものである。

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10 図 2.5 鉛に対する線の線吸収係数 それぞれの効果が表れるエネルギー領域が限られてくる。  光電効果 図 2.6 に光電効果の模式図を示す。光電効果では原子内部に束縛されている電子と相互作 用を起こし、光子がエネルギーをすべて電子に与える現象である。原子から放出される光電子 はその束縛エネルギーと光子のエネルギーの差だけ運動エネルギーを得ることになる。光子は 原子の中でもっとも強く束縛されている電子すなわち K 殻電子を光電子として放出する可能性 が大きい。また、光電効果は光子のエネルギーが束縛エネルギーより尐し上でもっとも起こりや すく、光子のエネルギーが増すと急激に減尐する。電子の飛び出した原子は励起状態にあるの で、基底状態に戻る際に特性 X 線を放出する。この X 線は原子の外に飛び出すこともある。また、 特性 X 線の代わりにオージェ電子を放出して原子の励起エネルギーが失われることもある。 光電効果は比較的低エネルギー光子の相互作用の過程で重要なものである。鉛では 500keV 以下、アルミニウムでは 50keV 以下で大きい効果を示す。 この過程は原子番号 Z が大きな吸収物質で顕著になる。近似的な式として、ガンマ線のエネ ルギーh0を用いると(2.3)式のようにかける。

2 7 0 5 1 

NZ

h

(2.3) ここで N は単位体積当たりに含まれる原子の数である。

(13)

11 図 2.6 光電効果 光子が電子にエネルギーをすべて与え光電子として電子は原子外へ飛 び出す。  コンプトン散乱 図 2.7 にコンプトン散乱の模式図を示す。コンプトン散乱はひとつの入射光子と吸収物質中の 電子との間で起こる相互作用である。入射光子の一部のエネルギーを電子に与え、光子は入射 方向からで散乱される。エネルギー保存則と運動量保存則を適用すると入射した光子のエネ ルギーh0として、散乱された光子のエネルギーh

が求められる。 2 0 0

)

cos

1

(

1

mc

h

h

h

(2.4) ここで 2 mc は電子の静止質量(0.511MeV)である。また反跳電子のエネルギーE は以下のよう に表すことができる。

cos

1

1

0 2 0 0

h

mc

h

h

h

E

(2.5) コンプトン散乱が重要なエネルギー領域は鉛では 0.6~5MeV、アルミニウムでは 0.05~ 15MeV である。近似式としては原子番号 Z、単位体積当たりに含まれる原子の数 N を用いて、 (2.6)式のようにかける。 光子 電子 原子核

(14)

12





2

1

2

log

20 0 2

mc

h

h

NZ

(2.6) 図 2.7 コンプトン散乱 光子はエネルギーの一部を電子に与え、光電子とエネルギーの低い光 子が出ていく。  電子対創生 図 2.8 に電子対創生の模式図を示す。電子対創生は線が原子核近傍で消滅して、陽電子と、 電子の対が創生される過程である。この過程では線のエネルギーが電子対の静止質量よりも大 きくなければならない。つまりh0 2mc2 1.02MeVが必要条件である。そのため、高エネルギー の線に限られる。また、線のエネルギーが 1.02MeV より大きい場合には、1.02MeV を超えた分 のエネルギーが電子対の運動エネルギーとなる。 鉛では 5MeV 以上、アルミニウムでは 15MeV 以上の領域で重要な役割を演じている。この近 似式は(2.7)式のようにかける。





2 0 0 2 2 0 2 0 2 3

2

log

M eV

1

~

2

2

mc

h

h

NZ

mc

h

mc

h

NZ

(2.7) ここで原子番号を Z、単位体積あたりに含まれる原子の数を N とおいた。 光子 電子 光子 原子核

(15)

13 図 2.8 電子対創生 原子核の近傍で電子と陽電子が作られる。光子のエネルギーが電子、 陽電子の質量よりも大きなエネルギーを持っていないと許されない。

2.2.2 荷電粒子との相互作用

荷電粒子が物質に入射すると電離、制動輻射、チェレンコフ放射の要因によりそのエネルギー を失っていく。低エネルギーの荷電粒子の場合はおもに電離によりエネルギーを失っていく。吸収 物質中で荷電粒子が単位長さ当たりに失うエネルギーは(2.8)式で表せる。

2 2 2 2 4

1

2

log

4

I

mv

nZ

mv

z

e

dx

dE

(2.8) ここで E は荷電粒子のエネルギー、m は荷電粒子の質量、e は素電荷、z は入射粒子の電荷、v は 入射粒子の速さ、は光速を c として v/c、Z は原子番号、n は単位体積当たりの原子数、I は電離す るのに必要な平均エネルギーをそれぞれ表す。 また、本研究では先に述べた線の相互作用によりできた電子が中性ガス分子を電離する。電子 が物質中で電離によりそのエネルギーを失っていく過程は(2.9)式のように表すことができる。

2 2 2 2 2 2 2 4

1

2

log

1

1

2

1

2

log

2

I

E

mv

Z

mv

n

z

e

dx

dE

(2.9) 光子 電子 陽電子 原子核

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14

2.2.3 電子増幅の原理

ガスの中で電子は電場に引かれ加速される。そして、その電場が十分に大きいと、電子によって ガス原子が電離され、ガス増幅が起こる。電場が低いと入射粒子によって作られた電子とイオンは 単にそれぞれの電極へ移動するだけである。イオン、電子が電極に移動する際には中性ガス分子 と衝突を繰り返す。イオンはその移動度が小さいため、衝突してから次の衝突までにガス分子を電 離するエネルギーを得ることができない。そのため、イオンは増幅には寄与しない。一方、電子は 電場により容易に加速される。電場が十分に大きいときには電子は大きな運動エネルギーを有す る。このエネルギーがガス分子の電離エネルギーよりも大きいときにはガス分子が電離され、イオン、 電子対の電離が追加して起こる。衝突間の電子のエネルギーは電場が大きいほど増加し、増幅が 起こる電場の大きさには閾値がある。その大きさは 1 気圧の通常ガスの場合およそ 10kV/cm であ る。 この過程で作られた電子も電場で加速される。そしてガス分子に衝突しさらに電離をおこす。こ の過程は電子雪崩と呼ばれる。単位長さ当たりに電子の数が増加する割合は(2.10)式であらわさ れる。

dx

n

dn

(2.10) ここでは第 1 タウンセンド係数であり、電場の強度に依存する量である。この値は閾値以下の 電場に対してはゼロであり、電場を大きくするとともに増加していく。もし、電場が一定であれば第 1 タウンセンド係数は一定であり、(2.11)式から距離によって電子の密度が指数関数的に増加するこ とが分かる。

   

x

e

n

x

n

0

 (2.11) ここで n(0)は 1 次電子の数であり、n(x)は経路 x を通った後の電子の数である。 GEM の場合は上下の電極間に適切な電位差を与えることで GEM の孔の中に高電場を形成さ せて、ここに入ってきた電子を増幅する。この電位差を大きくすれば電場が大きくなるため、増幅が 起こりやすくなるが、増幅が止まらなくなり放電を起こしてしまう危険も高まる。

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15 図 2.9 印加電圧に対するイオン収集数の変化 下の曲線は線が入射した場合、上の曲線は線が入射した場合のイオ ン収集数を表す。 ガス検出器では一般的に図 2.9 のような電場の変化によるイオン収集数の関係がみられる。 電場が低い領域(イオン再結合領域:図 2.9Ⅰの領域)では荷電粒子によってできたイオンと電 子は電極方向に動き始めるが、電場が低すぎるため他ガス分子と衝突、再結合、拡散をするため ほとんど電極に集まることができない。 電離領域では電極に 1 次電離で生成した電子とイオンがほぼすべて集められている領域である。 しかし、増幅は起こっていない。図 2.9 のⅡの領域がこの領域に相当する。 図 2.9 中のⅢの領域は電場が小さい方が比例計数領域、大きい方が、限定比例領域と呼ばれ る。それぞれの領域では電離によって生じた電子が高電場領域で増幅を起こす。比例計数領域で は 1 次電離による電子イオン対の数と増幅後の電子イオン対の数が比例する。限定比例領域では 増幅率は大きくなるが、増幅過程で生じる紫外線による中性ガス分子の電離の効果が無視できな くなるため、比例関係は崩れてくる。 さらに電場が大きくなると、ガイガーミュラー動作領域になる。この領域では増幅過程で生じる紫 外線がチェンバー全体に広がり、1 次電子の数に関係なくほぼ一定の信号を出すようになる。ガイ ガーミュラー計数管はこの領域で動作させる。図 2.9 中ではⅣの範囲である。 ガイガーミュラー動作領域よりも電場を大きくすると、連続放電領域となり、放電が止まらなくなっ てしまう。

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16

3 シミュレーションと TGEM の作成

TGEM を作成する前にその電場の強さの分布、増幅シミュレーションを行いどの程度の増幅率 が得られるかを評価し、設計に生かした。また、設計したものをシミュレーションし実際の実験結果と 比較する。

3.1 電場計算

電場のシミュレーションでは Ansoft 社の Maxwell® SV を用いてシミュレーションを行った[6]。 Maxwell® 3D では 3 次元の電場シミュレーションができるのに対し、Maxwell® SV では 2 次元のシ ミュレーションのみしか行えない。しかし、円柱座標系でのシミュレーションが行えるので、対称性を 考えることによって 3 次元に近いシミュレーションを行うことができる。 シミュレーションを行う際のモデルとしてある半径の円筒の中に 1 つの孔があいているモデルを 考えた。このことにより孔の中に影響を及ぼす部分が孔の周りの電極のみとできる。実際の GEM で は無数に穴があいているため、周りの孔からの影響は打ち消しあい、孔の中に影響を及ぼす部分 は穴の周りの正六角形の部分であると考えられる。この正六角形の部分を今回のシミュレーション では円と近似した。このことによりほぼ周期的境界条件と同じことを考えることができる。 図 3.1 シミュレーションモデル まず、昨年度の卒業論文[7]で作成した 1.6mm 厚の GEM をモデルとして考えた。図 3.1 にシミ ュレーションモデルを示す。孔の直径は 1mm、絶縁体の厚さが 1.6mm、銅電極の厚さが 35m、 Drift 領域、Induction 領域を 1.0mm に設定した。また、GEM の表と裏の電極にかける電位差: VGEMは 2.0kV と 3.0kV をかけた。ピッチの変化は解析領域の円筒半径を変化させることで、変化 Drift 領域 1.0mm Induction 領域 1.0mm 1/2 ピッチ 直径 1.0mm 絶縁体(FR4) 1.6mm

(19)

17 極から 10m だけ離れた部分の電場を縁の電場としている。Maxwell SV のシミュレーションの様子 は図 3.2、結果は図 3.3 のようになった。 図 3.2 Maxwell SV でのシミュレーションの様子 1.6mm の厚さの GEM(孔の直径 1.0mm、ピッチ 1.5mm)にVGEM=2.0kV を掛けた場合の孔の中の電場の様子。左側が孔の中心、右側が円筒の 動径方向になっている。赤に近い色ほど電場が高い。増幅の閾値はお よそ 10kV/cm であるが、電子がガス分子に衝突して電離させることは稀 である。そこで、電場が 15kV/cm より大きい範囲を増幅が起こる範囲と考 えた。この場合では増幅が起こる範囲は縁のごく近傍のみしか見られな い。 図中の丸、三角形が調べた場所である。

(20)

18 図 3.3 孔中心と縁の電場のピッチ依存性 中心部分、縁のどちらも電場の変化は尐なくほぼ一定の値になっている。 このようにピッチを変化させても電場領域にはほとんど変化が見られない。 次に孔の直径による変化を調べた。ピッチは孔の 2 倍とした。そのほかの条件は上のときと同じ である。結果は図 3.4 のようになった。 ▲:縁 3.0kV ▲:縁 2.0kV ●:中心 3.0kV ●:中心 2.0kV

(21)

19 図 3.4 孔中心と縁の電場の直径依存 中心部分、縁の電場の両方共、孔の直径と相関関係がみられる。 孔の径が小さいほど縁の電場が低く、中心部の電場が強いことがわかった。このことから孔の大 きさはなるべく小さい方が良いと考えられる。 ただし、1.6mm の GEM の場合だと、中心部分の電場が十分大きいときには縁の電場が大きすぎ ると考えられるため、今回は 0.4mm の厚さの基板を用いて TGEM を作成することにした。 ここからは絶縁体の厚さが 0.4mm のものを考える。図 3.5 に TGEM のシミュレーションモデルを 示す。絶縁体にあける孔の直径を 0.3mm、電極にあける孔は 0.5mm として、孔の縁から 0.1mm だ け基板を露出させるようにした。Drift 領域、Induction 領域をそれぞれ 1.0mm に設定した。ピッチの 変化は解析領域の円筒の半径を変化させた。Drift 領域、Induction 領域の電場はそれぞれ、 0.5kV/cm、4.5kV/cm として、TGEM の電極間の電位差VGEMを変化させて電場のシミュレーション を行った。図 3.6 にVGEM=1600V での電場の様子を示す。増幅が起こると考えられる範囲が十分 広がっている。ここで計算した電場のデータは次に行う電子の増幅のシミュレーションの際に使用し た。 ▲:縁 3.0kV ▲:縁 2.0kV ●:中心 3.0kV ●:中心 2.0kV

(22)

20 図 3.5 TGEM のシミュレーションモデル 図 3.6 TGEM の電場シミュレーションの様子 VGEM=1600V のときの電場。赤に近い色ほど強い電場になっている。 1.6mm の GEM に比べて電場が高い領域が広い。 Drift 領域 1.0mm 0.5kV/cm Induction 領域 1.0mm 4.5kV/cm 絶縁体(FR4) 0.4mm 直径 0.3mm エッチング 0.1mm 1/2 ピッチ 0.5mm, 0.3mm

(23)

21 電子の増幅の様子をシミュレーションするために本件研究では Garfield を用いた[8]。電場シミュ レーションで用いた Maxwell® SV から電場データを Garfield で読み込み、どのくらい電子が増える か評価する。 電子を 1 個 TGEM の孔の近くにおき、増幅されて出てきた電子の数を記録する。Garfield での 増幅の様子を図 3.7 に挙げる。 図 3.7 Garfield での電子増幅のシミュレーションの様子 橙色であらわした線が電子の軌跡である。孔のごく近傍から電子をドリフ トさせる。孔の中に 1 つの電子が入ってくると増幅が起こり多くの電子が 読み出しパッドの方へ出ていくことが視覚的にわかる。この場合、増幅後 の電子の数はおよそ 3.2×103個である。 この試行を 1000 回行い、増幅後の電子数の平均値を増幅率としてプロットした。ただし、電子が ドリフトする際に電極に吸収されてしまう、解析領域外にドリフトしてしまう電子はこれに含めない。 VGEMを 800V から 1700V まで変化させたときの増幅率は図 3.8 のようになった。

(24)

22 図 3.8 増幅率のシミュレーション結果 増幅率が小さいときには指数関数的に増加していないが、増幅率が 100 倍以上になると指数関 数に近づく。1.0mm ピッチの場合では 0.6mm ピッチのものに比べて増幅率が大きくなっている。ま た、1.0mm ピッチはおよそVGEMが 1650V の場合に 104倍の増幅率が得られる。

3.3 TGEM のパターンの考案

電場のシミュレーションの結果 TGEM の厚さを 0.4mm に設定し、孔の大きさを 0.3mm にした。ま た、縁の電場が強すぎると放電の危険があるため、孔の周りを 0.1mm エッチングし、銅を落とした。 これは文献[9]を参考にした。ピッチは 0.6mm のピッチと、1.0mm のピッチの 2 種類にした。 基板の厚さは規格の基板のもので最も薄いものを使用した。孔の大きさや、孔の周りのエッチン グも同様に規格があり、それぞれで最も小さいものを選んでいる。銅の厚さも規格の厚さで 35m で ある。基板の素材は FR4 を使用した。 今回は 1 つの基板上に 2 種類のパターンを作成し、それぞれ電圧は独立に印加できるようにパ ターンを作った。孔の数はそれぞれ 34 個ずつ正三角形配列で正六角形になるように設計した。

(25)

23 図 3.9、図 3.10、図 3.11 に作成した TGEM を示す。拡大して見ると、孔の位置が一方によって いるものも見られる。工作精度はそれほど高くないと考えられる。 図 3.9 作成した TGEM の全体 中心部上側が 1.0mm ピッチ 下側が 0.6mm ピッチのパターンである。 図 3.10 1.0mm ピッチ TGEM の拡大図 図 3.11 0.6mm ピッチ TGEM の拡大図 1.0mm ピッチ 0.6mm ピッチの両方に孔の偏りが見られる。また、0.6mm ピッチではエッチングの偏りも見られる。 0.6mm 1.0mm 0.3mm 0.1mm

(26)

24

4 TGEM の測定

GEM を測定器として動作させるためには多くのパラメータを決定する必要がある。今回はその中 で代表的なパラメータを変化させ、その増幅率の大きさを見る。TGEM の両側の電位差である VGEM、カソードと TGEM 間である Drift 領域の電場強度、TGEM とアノード間である Induction 領

域の電場強度、さらに、時間による増幅率の変化の 4 つである。

4.1 実験方法

実験では図 4.1 のようにカソード、TGEM、読み出しパッドを配置する。高圧電源装置は負の電 圧がかけられるものを 3 系統使った。それぞれ、カソード、TGEM の表面、裏面に電圧を印加する。 測定中に放電が生じることも考えられるため、クエンチ抵抗を接続し、さらにノイズ低減のためにロ ーパスフィルタを構成している。Drift 領域の間隔を 5.0mm、Induction 領域の間隔を 1.0mm として、 ベークライトのスペーサーを挟み固定した。カソードには工業用メッシュを張ってあり、X 線が透過 できるようになっている。また、パッドは 5 本の読み出しストリップがあるが、パターンの直下の真ん 中のストリップのみから読み出しを行う。ストリップはコンデンサを通してアンプにつながっている。ま た、パッドは抵抗で接地されている。 図 4.1 チェンバー内の概略図 R1 R1 R1 R2 R2 R2 C1 C1 C1 C2 C2 R3 Drift 領域:5.0mm Induction 領域:1.0mm 55 Fe 線源 TGEM ASD R1:10M C1:2200pF R2:220k C2:470pF R3:100k Ar+CH4

(27)

25 ×19cm×4.0cm の大きさである。チェンバーの蓋には 10cm×10cm の入射窓が開いており、アルミ 蒸着シートを張ってある。また底が二重になっており、アンプを内蔵することでノイズの影響を最小 限に抑えることができる。 図 4.2 測定用チェンバー チェンバー内部に満たすガスは Ar 90%、CH4 10% (P10 ガス)の混合ガスである。流量を 25cc/min、温度は 20℃、圧力は 1atm+1mmAq に設定した。ガスは垂れ流しの状態にした。ガスの 出口からの空気の逆流を防ぐため、バブラーを設置してある。

アンプは図 4.3 の TGC 用 ASD を用いた[10]。ASD の増幅率は 0.8V/pC と表される。ASD では 信号の立ち上がりが 16nsec と一定であり、入った電荷量に比例する波高を出力する。そのため増 幅率の単位は出力波形の高さと入力電荷量であらわされる。

(28)

26 線源は 55 Fe をチェンバー内のカソード表面におき使用した。チェンバーの外から線源をあてよう とすると信号頻度が大変尐なくなるため、内蔵にした。55 Fe からは約 5.9keV の特性 X 線が出ている。 この特性 X 線がチェンバー内の Ar 原子と光電効果を起こし、X 線のエネルギー全てが電子の電 離に使われる場合と、一部のエネルギーが外に逃げてしまう場合がある。Ar の K 殻の束縛エネル ギーは約 3.2keV である。光電子は 2.7keV のエネルギーをもって飛び出し、この光電子がまわりの Ar を電離する。一方、光電効果により電子が飛び出した原子は、L 殻から電子が K 殻に励起され る。その際に、電子が持っていた余分なエネルギーを放出する。このエネルギーを M 殻の電子が 受け取ると、束縛エネルギーに打ち勝つことができるため、放出される。この効果のことをオージェ 効果という。この効果の起こることによって X 線のエネルギーがすべて Ar の電離に使われる。オー ジェ効果が起こらずに、励起によって放出した光が逃げていく場合とオージェ効果が起こる場合の 確率はそれぞれ 15%、 85%である。図 4.4 オージェ効果が起こる時と起こらない時の模式図を示 す。 図 4.4 外に光が逃げていく場合(a)とオージェ効果(b)

信号の大きさを調べるために ADC 分布を用いた。ADC を取る際に裏面から信号を Inverter で反 転させてトリガーとして使用した。ゲートの幅は 300nsec に設定した。測定のセットアップの概略図を 図 4.5 に示す。今回使用した ADC は 0.25pC/ch である。 図 4.5 測定のセットアップ Ar Ar 5.9keV 特性 X 線 5.9keV 特性 X 線 (a) (b)

(29)

27

Drift 領域、Induction 領域の電場をそれぞれ 0.5kV/cm、4.5kV/cm として TGEM の表と裏にかけ る電位差VGEMを変化させ、信号をオシロスコープで確認した。VGEM=1500V のときの信号は図

4.6 である。TGEM からの信号は TGEM の Induction 領域側の電極と読み出しパッドから得られる。 裏面からの信号は電子が遠ざかっていくため、プラス側に見える。一方、パッドからの信号は電子 が近づいてくるため、マイナスの信号が見える。 図 4.6 TGEM からの信号 VGEM=1500V のときの信号。プラス側の信号は裏面から、マイナス側の 信号はパッドからの信号である。1 目盛り縦軸 50mV、横軸 50nsec。

4.3 増幅率の測定

増幅率は ADC (Analog to Digital Converter)を用いて積分電荷量分布のヒストグラムから決定す る。ADC では Gate 信号と、パッドからの信号を入力し、Gate 信号と同時に入力されたときだけ積分 を行いう。図 4.7 の色のついた部分の電荷量が結果として出力される。 図 4.7 ADC の概略図 TGEM 裏面からの信号 読み出しパッドからの信号 約 130mV 約 120nsec Gate 信号 パ ッ ド か ら の信号 Pedestal

(30)

28 図 4.7 の桃色の部分は pedestal と呼ばれ、この分だけ分布は大きい値である。したがって、信号 の電荷量のみ知りたいときは pedestal の分だけ元の値から引いてやればよい。pedestal を知るため には Gate 信号をランダムに入力すればよい。 図 4.8 パッドからの信号と Gate 信号 測定での信号と Gate は図 4.8 のようになる。 ADC 分布をヒストグラムで表示すると図 4.9 のようになる。ここで横軸は積分電荷量に対応した 量であり、縦軸はカウント数である。2 つのピークがみえるが、左側のピークはエスケープピークと呼 ばれ、オージェ効果を起こさずに外に逃げた光がある場合である。右側のピークは特性 X 線のエ ネルギーがすべて電離に使われた場合である。それぞれの場合に応じ決まった数だけ電子ができ る。 今回の増幅率決定に使用するのは、右側のピークである光電吸収ピークである。このピークをガ ウス関数でフィッティングし、その平均値 (mean)を(4.1)式で計算し、増幅率 G を求めた。

n

ADC

G

キャリブレーション値

mean

-

pedestal

(4.1) ここで n は 1 次電子数であり、使用したガスの W 値と、X 線のエネルギーで計算できる。Ar と CH4 の W 値はそれぞれ 26eV、 28eV である。式で表すと(4.2)式のようになる。

W

n

3

10

9

.

5

(4.2) 300nsec 約 200mV

(31)

29

また今回使用した ADC の pedestal は 63.66 であった。ADC キャリブレーション値は 3906 /ch で ある。(ADC のキャリブレーションについては付録 A を参照) 図 4.9 ADC 分布と光電吸収ピークのフィッティング VGEM=1530V の場合の ADC 分布。右側のピークをガウス関数でフィッ ティングする。

4.3.1

V

GEM

に対する依存性

まず、Drift 領域と Induction 領域の電場強度をそれぞれ 0.5kV/cm, 4.5kV/cm に固定して、 VGEMのみ変化させ、増幅率のVGEMに対する依存性を調べた。測定開始する電圧より 10V 小さ い電圧に設定して、約 5 時間置いてから、測定を開始した。電圧を変化させた後に 10 分間、待ち 10000 イベントデータを取った。 1.0mm ピッチの TGEM では 1460V から 10V ずつ増加させながら、1590V まで測定を行った。 1600V では放電がおこってしまって、測定が正しく行えなかった。 一方 0.6mm ピッチの TGEM では 1600V から 1670V まで 10V 刻みで測定を行った。1680V で は 1.0mm の TGEM と同様に放電が起こってしまい、測定が正しく行えなかった。 横軸をVGEM、縦軸を増幅率(対数表示)としてプロットしたものが図 4.10 である。赤色の丸が

(32)

30 1.0mm ピッチの測定値で、青色の三角形が 0.6mm ピッチの測定値である。 図 4.10 VGEM依存性の測定結果 どちらのピッチの TGEM もVGEM を大きくすると、指数関数的に増幅率が増加している。また、 1.0mm ピッチではVGEM =1520V、0.6mm ピッチではVGEM =1660V で増幅率が 104倍になってい る。1.0mm ピッチのものの方が 0.6mm ピッチのものに比べて低い電位差で高い増幅率を達成でき ている。

4.3.2 Drift 領域に対する依存性

次にカソードと TGEM の間の空間、Drift 領域の依存性について調べた。

Induction 領域の電場強度はVGEM の依存性の時と同様に 4.5kV/cm に設定した。VGEM は

1.0mm ピッチのものが 1530V、0.6mm ピッチのものが 1620V に設定した。また、測定の際には電場 強度を変化させてから 10 分間、時間をおいてから測定を行った。測定はともに、0.1kV/cm から 1.0mm ピッチのものは 4.25kV/cm まで、0.6mm ピッチのものは 6.0kV/cm まで増加させながら行っ た。

(33)

31 色の三角形が 0.6mm ピッチの測定値である。 図 4.11 Drift 領域依存性の測定結果 1.0mm ピッチのものは電場が 2.0kV/cm より大きい部分ではほぼ一定の値を示している。しかし、 電場が 4.25kV/cm を越えると増幅率は下がってしまう。一方 0.6mm ピッチのものは 5.0kV/cm まで 増幅率は増加し続けている。また、プラトーの範囲は 1.0mm ピッチのものと比べて狭く、電場が 6.0kV/cm になると増幅率は下がっている。1.0mm ピッチのものは 4.25kV/cm を越えるとエスケープ ピークと光電吸収ピークの区別がつかず、正確にフィッティングができなかった。0.6mm ピッチのも のでは 6.0kV/cm よりも電場を強くすると、放電が起こってしまい、正しく測定できなかった。

4.3.3 Induction 領域に対する依存性

TGEM と読み出しパッドの間の空間、Induction 領域の電場 EInductionに対する依存性を調べる。

Drift 領域の電場強度 EDriftはVGEMの依存性と同じく、0.5kV/cm に設定し、VGEMは 1.0mm ピ

ッチのものは 1530V, 0.6mm ピッチのものは 1620V と Drift 領域に対する依存性のときと同じに設定 した。Induction 領域の電場 EInductionを 1.0mm ピッチのものは 0.5kV/cm から 5.5kV/cm まで、0.6mm

(34)

32 のピッチのものは 1.0kV/cm から 6.5kV/cm まで変化させ測定を行った。 結果は図 4.12 のようになった。横軸は Induction 領域の電場の強さ EInductionであり、縦軸は最大 の増幅率を 1 として規格化した値である。凡例は上の 2 つと同様である。 図 4.12 Induction 領域依存性の測定結果 Induction 領域の電場に対する依存性でははっきりとしたプラトーは見えないが、1.0mm ピッチの ものでは 1.0kV/cm から 4.0kV/cm の範囲とその範囲外では傾きが異なる。同様に 0.6mm ピッチの ものでも 4.5kV/cm 以下とそれ以上では傾きが異なる。 0.6mm ピッチのものでは 0.5kV/cm での測定では光電吸収ピークの mean が小さすぎてフィット できなかった。1.0mm ピッチのものは 5.5kV/cm、0.6mm ピッチのものは 6.5kV/cm より大きい電場で は放電がおこり、正しく測定できなかった。

4.3.4 時間に対する依存性

1.0mm ピッチのものでは時間依存性を確認した。VGEMを 1500V、Drift 領域の電場 EDritft を

0.5kV/cm、Induction 領域の電場を 4.5kV/cm に設定し、電圧を印加した直後から 300 分後まで測 定を行った。結果は図 4.13 のようになった。縦軸は最大値を 1 として規格化した量で、横軸は電圧

(35)

33 図 4.13 増幅率の時間依存性の測定結果 電圧を印加してから 4~5 時間でほぼ一定の増幅率を示すようになった。電圧を印加してから 30 分以内では変化量は尐ない。 ただし、増幅率が一定になったのちにVGEM を変化させてもほぼ一定の値を示す。以下の図 4.14 はVGEM= 1500V で増幅率が一定になったのちに、VGEMを 1550V に変化させて測定した結 果である。縦軸は同様に最大の増幅率を 1 として規格化した量、横軸は電圧を変化させてからの 経過時間である。 変化させた直後からほぼ一定の値を示す。

(36)

34

(37)

35 ADC 分布のヒストグラムは 2 つのピークが見えている。エスケープピークでは 2.7keV、光電吸収 ピークでは 5.9keV のエネルギーに対応している。このエネルギーによって作られる 1 次電子の数は このエネルギーに比例する。ガイガーミュラー計数領域では 1 次電子数に関係なく一定の信号の み出力するので 2 つのピークが現れることはない。さらに電離領域では増幅率が 1 に近いため測定 できない。限定比例領域ではこのようにはっきりとしたピークは観測されない。よって TGEM は比例 計数領域で動作したと言える。 VGEMと増幅率の関係を考察する。1.0mm ピッチのものと 0.6mm ピッチのものではシミュレーショ ンの結果も測定結果もVGEMに対する増幅率の依存性が異なった。これは 1.0mm のピッチのもの では TGEM 表面から出て孔の中を通る電気力線が多いと考えられるが、0.6mm ピッチのものはそ のような電気力線が尐ないためと考えられる。これにより、孔の中に強い電場ができにくくなり、 0.6mm ピッチのものは 1.0mm ピッチのものに比べて増幅率が小さくなったと考えられる。またシミュ レーションとのずれは TGEM で使用した基板の厚さに問題があると考えられる。基板の厚さが、薄 いと実際に印加している電位差よりVGEMが大きくなったことに対応する。基板が 7.9%程度薄いと 差異を説明できる。また、シミュレーションモデルと現実の TGEM との相違も考えられる。具体的に は孔に影響する部分を円形の極板のみと近似したことが考えられる。 図 5.1 VGEMに対する増幅率

(38)

36 図 5.2 シミュレーションと測定値の比較 図 5.1 は測定値を指数関数でフィットしたもの、図 5.2はシミュレーションを指数関数でVGEMが 1400V から 1700V の範囲でフィットしたものである。また図 5.2には測定結果もプロットしてある。そ れぞれの傾きは 1.0mm ピッチのものがシミュレーションでは 1.28±0.01×10-2、測定値では 1.37± 0.02×10-2、0.6mm ピッチのものがシミュレーションでは 1.28±0.05×10-2、測定値では 1.49±0.05 ×10-2 となった。ここからも TGEM が比例計数領域で動作していることが言える。測定値とシミュレ ーションの傾きには極端な違いは見られない。シミュレーションではピッチを変化させても変化が見 られなかったが、測定では傾きが大きくなり、0.6mm ピッチのものでは 1.0mm に比べてさらに大きな 傾きになった。傾きの違いから動作できるVGEM の範囲が異なることがわかる。したがって、1.0mm ピッチのものは 0.6mm ピッチのものより動作できる範囲が広いと考えられる。 Drift 領域を強くすると、増幅率が上昇しプラトーが現れた。これは、Drift 領域で作られた 1 次電 子が TGEM の孔の中に入りやすくなったためと考えられる。1 次電子が孔に入る効率が 1 に近づく とそれ以上増幅率は上昇せず、プラトーになる。しかし、さらに電場を強くすると、電極表面に入る 電気力線が増えそれに沿って電子が電極に移動し吸収され、増幅に使われなくなるため増幅率は 下がる。動作させる場合にはプラトー付近で動作させるのが良いと考えられる。Drift 領域の依存性 でも 1.0mm ピッチと 0.6mm ピッチの違いがみられた、1.0mm ピッチのものはプラトーの部分が

(39)

37 Induction 領域の依存については、電場を大きくすると孔でできた電子がパッドに到達できる数が 増えるため、増幅率は大きくなると考えられる。パッドに到達する効率がほぼ一定になると、傾きは 小さくなる。さらに大きい電場にすると、増幅する領域が Induction 領域に広がるため、増幅率は急 激に増加していくと考えられる。実際に動作させる場合はなるべく傾きが小さく、電場が高い領域で 動作させるとよいと考えられる。 時間の依存性については、孔の中の電場が均一になるのに時間がかかるため増幅率が時間変 動すると考えられる。電場が不均一になる原因としてはイオン溜まり、もしくは基板のチャージアップ が考えられる。高抵抗物質を基盤の代わりに用いることでこれらの影響を尐なくすることができると 考えられる。特にエッチングで孔の周りの銅を落としてあるのでその部分に露出している基板が電 場に影響しているのではないかと考えられる。銅のエッチングの範囲を変化させる、孔の周りをエッ チングせずに、孔の縁まで銅があるものと比較するとこの影響がわかると考えられる。

(40)

38

6 まとめと課題

6.1 まとめ

本研究では TGEM のシミュレーションと作成、増幅率を通して基本的な性能を探った。それぞれ の結果について以下にまとめる。  TGEM のシミュレーションについて

Maxwell® SV と Garfield を用いて 1.6mm 厚 GEM と、TGEM の電場シミュレーション、増 幅シミュレーションを行った。1.6mm 厚 GEM では孔の中の電場はピッチに依存せず、孔の 直径に依存する。0.4mm 厚の TGEM では電子の増幅シミュレーションを行い、1.0mm ピッ チ、0.6mm ピッチともに増幅率は指数関数的に増加することがわかった。また、0.6mm ピッ チのものでは 1.0mm ピッチのものに比べ増幅率が小さくなった。  増幅率の測定について TGEM 両面の電位差、VGEM 変化させて増幅率を求めた。シミュレーションと同様に増 幅率は指数関数的に増加した。また、Drift 領域の電場を変化させるとプラトーが観測でき た。実際に動作させる時にこのプラトー領域で動作させる。Induction 領域に対する依存性 では、はっきりしたプラトーはわからなかったが、傾きが緩やかになっている部分があった。 この部分が動作させる領域である。 以上のことより 1.0mm ピッチの TGEM、0.6mm ピッチの TGEM ともに測定器として動作していると 言える。また、1.0mm ピッチのものは 0.6mm ピッチよりも安定しており、測定器として扱いやすいと 言える。

6.2 今後の課題

本研究では増幅率の測定のみを行ったが、検出効率の測定が必要であると考えられる。また、 今回は小さいパターンを作り測定を行ったが、もっと大きいパターンを作って測定する必要があると 考えられる。特に基板の厚さの不均一性があると、エスケープピークと光電吸収ピークの区別がつ かないこともありうる。 シミュレーションと測定値のずれの原因の詳細な検討が必要であると考えられる。今回は TGEM の厚さの影響が最も大きいと考えられるが、シミュレーションにおいてその正確さを検討する必要が ある。 時間依存については、増幅率が変化する原因を特定する必要がある。

(41)

39

付録

A ADC キャリブレーション値の求め方

本研究で使用したアンプは TGC 用の ASD(Amplifier-Shaper-Discriminator)である。これは gain が 0.8V/pC と表され、電荷が ASD に入るとそれに比例する波高になって出力される。パルスの立ち 上がりは 16nsec と一定である。そのため、電荷が何倍に増幅されているのかは未知であった。その ため ASD に電荷量が既知のパルスを入力し、ADC 分布をとりアンプの gain を求めた。この値から ADC キャリブレーション値を求めた。 まず、ASD の gain の測定を行った。電荷量が既知のパルスを作るにはコンデンサに矩形波を入 力すればよい。今回は 5pC のコンデンサにパルスジェネレータから矩形波を入力した。電荷量は以 下の式のように表せる。

CV

Q

(A.1) セットアップは以下のようにして行った。51の抵抗は反射を防ぐためである。

図 A.1 ASD の gain 測定のセットアップ

結果は図 A.2 のようになった。今回使った ADC は 0.25pC/ch であるので使用した ASD の gain は 399.3±5.4 倍である。

(42)

40

図 A.2 入力電荷と ADC Channel の平均値

ここから、電子の素電荷 e、ASD の gain A、を用いて ADC キャリブレーション値は(A.2)式のよう に出せる。

A

e

0.25pC

ADC

キャリブレーション値

(A.2)

(43)

41 Garfield を使う際には文献[11]の付録が非常に参考になる。しかし、詳しいことは CERN のホーム ページ[8]を読む必要がある。本研究で使用した Garfield のマクロファイルを以下に記載する。 ******************************************************************************** *MAIN ******************************************************************************** &MAIN Global vgem=1600

Global datfname1 `~/garfield/output/2d06thgemfit_{vgem}` Global datfname2 `~/garfield/output/06avalanche_{vgem}.dat` Global hfile `~/garfield/output/06avalanche_{vgem}v.hist`

!rep labels text-font -2, text-precision stroke, text-colour blue, ... character-height 0.03

!rep title text-font -5, text-precision stroke, text-colour red, ... character-height 0.03

!rep number text-font -2, text-precision stroke, text-colour dark-green, ... character-height 0.015

!rep comment text-font -2, text-precision stroke, text-colour dark-green, ... character-height 0.015 ******************************************************************************** *CELL ******************************************************************************** &CELL cell-identifier "THGEM"

Global fmap `~ /garfield/fmap/2dthgem01_{vgem}v.fmap` Global mxdir `/data/wakajun/thgem`

Call inquire_file(fmap,exist) If exist then

Read-field-map {fmap} Else

field-map files potential "{mxdir}/phi{vgem}v.reg" ... model "{mxdir}/thgem.sm2" ...

(44)

42 MAXWELL-2D-SV ... x-mirror-periodic ... compute-electric-field Save-field-map {fmap} endif solids

For x From -0.15 step 0.1 to 0.15 Do box centre {x} 0.02175 0. ... half-lengths 0.025 0.00175 0.01 ... conductor box centre {x} 0. 0. ... half-lengths 0.035 0.02 0.01 ... dielectric box centre {x} -0.02175 0. ... half-lengths 0.025 0.00175 0.01 ... conductor Enddo ********************************************************************************* *GAS ********************************************************************************* &GAS

*Option gas-print gas-plot

Global gasfile `gasfile/Ar9Methane1.DAT`

temperature 300 K pressure 1 atm Call inquire_file(gasfile,exist) IF exist Then get {gasfile} ELSE

MAGBOLTZ ARGON 90. Methane 10. ... electric-field-range 0.0001 100000. N-E 100 ... mobility 1.87e-6

(45)

43

heed argon 90 methane 10

********************************************************************************* *DRIFT AVALANCHE

********************************************************************************* &Drift

area -0.035 -0.035 0.035 0.035 view z=0. rotate 0. Int-par max-step 0.0035 int-acc 1e-10 ...

reject-kink projected-path-integration m-c-dist-int 0.002

Call book_histogram(elec,500,1,10001) Call book_histogram(ion,500,0,10000) Call book_histogram(created,70,-0.035,+0.035) Call book_histogram(lost,70,-0.035,+0.035) Call book_histogram(end_e,70,-0.035,+0.035) Call book_histogram(end_ion,70,-0.034,+0.036) Call inquire_file(datfname2,exist) If exist Then

Say "Old {datfname1} is being removed." $ rm {datfname1} Endif > {datfname2} For i From 1 To 1000 Do Call avalanche(0,0.03,0, ... `plot-electron,noplot-ion`,ne,ni,... `y_created`,created, ... `y_lost`,lost, ... `y_e`,end_e, ... `y_ion`,end_ion) Say "{ne} {ni}"

Call fill_histogram(elec,ne) Call fill_histogram(ion,ni) Call plot_end

Enddo >

(46)

44

Call plot_histogram(elec,`Electrons`,`Number of electrons after avalanche`) Call plot_end

Call hplot(ion,`Ions`,`Number of ions produced in avalanche`) Call plot_end

Call hplot(created,`y [cm]`,`Production point of electrons`) Call plot_end

Call hplot(lost,`y [cm]`,`Absorption point of electrons`) Call plot_end

Call hplot(end_e,`y [cm]`,`End point of electrons`) Call plot_end

Call hplot(end_ion,`y [cm]`,`End point of ions`) Call plot_end

Call fit_exponential(elec,a0,a1,ea0,ea1,`print,plot`)

Call inquire_file(datfname1,exist) If exist Then

Say "Old {datfname1} is being removed." $ rm {datfname1}

Endif

> {datfname1}

Say "a0 = {a0}+/-{ea0}, a1 = {a1}+/-{ea1}." >

Call inquire_file(hfile,exist) If exist Then

Say "Old {hfile} is being removed." $ rm {hfile}

Endif

Call write_histogram(elec,hfile) &Stop

(47)

45

本研究を進めるにあたり、ご指導いただいた指導教員の竹下徹教授、長谷川庸司准教授に感 謝いたします。また、ゼミ等でお世話になった研究員の小寺克茂氏に感謝いたします。また、実験 装置の使い方から、アドバイスまで多くの知識をいただいた黒石将弘氏に感謝いたします。

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参考文献

[1] Glenn F.Knoll 「放射線計測ハンドブック」 日刊工業新聞社 2001

[2] A.Ochi et al. “A new design of the gaseous detector: Micro Pixel Chamber” Nucl. Instr. and Meth. A 471 (2001) 264-267

[3] 岡村淳一 「SLHC に向けた高頻度粒子線検出器 MicroMEGAS の試作」 神戸大学 2008

[4] F.Sauli “GEM: A new concept for electron amplification in gas detectors” Nucl. Instr. and Meth. A 386 (1997) 531-534

[5] ILC Project “http://www.linear-collider.org/” [6] Ansoft, LLC “http://www.ansoft.com/”

[7] 黒石将弘 「大孔 GEM の作成」 信州大学 2008

[8] Simulation of gaseous detectors “http://garfield.web.cern.ch/garfield/”

[9] R.Chechik et al. “Thick GEM-like multipliers-a simple solution for large area UV-RICH detectors” Nucl. Instr. and Meth. A 553 (2005) 35-40

[10] O.Sasaki “Amplifier-Shaper-Discriminator ICs and ASD Boards” 1999 [11] 山本たくや 「GEM を使った検出器」 佐賀大学 2006

[12] CERN gas detectors “http://gdd.web.cern.ch/GDD/”

[13] 三浦功、他 「放射線計測学」 裳華房 1960

[14] F.Sauli “PRINCEPLES OF OPERATION OF MULTIWIRE PRTIONAL AND DRIFT CHAMBER”

図  2.1(a)  CERN 製 GEM の全体        図  2.1(b)  CERN 製 GEM の拡大写真  CERN 製の GEM はパターン部の大きさが 10cm×10cm の大きさがある。 孔の配列は正三角形配列になっている。  GEM の加工方法もいくつかあり、精度、効率のよい加工方法が試されている。現在の GEM の加 工方法には主に以下の3つある。    ウェットエッチング    プラズマエッチング    レーザーエッチング  いくつか方法があるのは如何に孔をきれいな円筒形に
図  4.3  使用した ASD
図  4.14  V GEM を 1550V に変更したときの時間依存性
図  A.1    ASD の gain 測定のセットアップ
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参照

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