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時間に対する依存性

ドキュメント内 平成20年度卒業論文 (ページ 34-40)

4.3 増幅率の測定

4.3.4 時間に対する依存性

1.0mm ピッチのものでは時間依存性を確認した。VGEMを 1500V、Drift 領域の電場 EDritft

0.5kV/cm、Induction領域の電場を4.5kV/cmに設定し、電圧を印加した直後から300分後まで測

定を行った。結果は図 4.13のようになった。縦軸は最大値を1として規格化した量で、横軸は電圧

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図 4.13 増幅率の時間依存性の測定結果

電圧を印加してから 4~5 時間でほぼ一定の増幅率を示すようになった。電圧を印加してから 30 分以内では変化量は尐ない。

ただし、増幅率が一定になったのちにVGEM を変化させてもほぼ一定の値を示す。以下の図

4.14はVGEM= 1500Vで増幅率が一定になったのちに、VGEMを1550Vに変化させて測定した結

果である。縦軸は同様に最大の増幅率を 1 として規格化した量、横軸は電圧を変化させてからの 経過時間である。

変化させた直後からほぼ一定の値を示す。

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図 4.14 VGEM1550Vに変更したときの時間依存性

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ADC分布のヒストグラムは2つのピークが見えている。エスケープピークでは 2.7keV、光電吸収 ピークでは5.9keVのエネルギーに対応している。このエネルギーによって作られる1次電子の数は このエネルギーに比例する。ガイガーミュラー計数領域では 1 次電子数に関係なく一定の信号の み出力するので2つのピークが現れることはない。さらに電離領域では増幅率が1に近いため測定 できない。限定比例領域ではこのようにはっきりとしたピークは観測されない。よってTGEMは比例 計数領域で動作したと言える。

VGEMと増幅率の関係を考察する。1.0mmピッチのものと0.6mmピッチのものではシミュレーショ ンの結果も測定結果もVGEMに対する増幅率の依存性が異なった。これは 1.0mmのピッチのもの では TGEM 表面から出て孔の中を通る電気力線が多いと考えられるが、0.6mm ピッチのものはそ のような電気力線が尐ないためと考えられる。これにより、孔の中に強い電場ができにくくなり、

0.6mmピッチのものは 1.0mmピッチのものに比べて増幅率が小さくなったと考えられる。またシミュ

レーションとのずれは TGEM で使用した基板の厚さに問題があると考えられる。基板の厚さが、薄 いと実際に印加している電位差よりVGEMが大きくなったことに対応する。基板が 7.9%程度薄いと 差異を説明できる。また、シミュレーションモデルと現実の TGEM との相違も考えられる。具体的に は孔に影響する部分を円形の極板のみと近似したことが考えられる。

図 5.1 VGEMに対する増幅率

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図 5.2シミュレーションと測定値の比較

図 5.1 は測定値を指数関数でフィットしたもの、図 5.2はシミュレーションを指数関数でVGEM

1400Vから1700V の範囲でフィットしたものである。また図 5.2には測定結果もプロットしてある。そ

れぞれの傾きは 1.0mmピッチのものがシミュレーションでは 1.28±0.01×10-2、測定値では 1.37±

0.02×10-2、0.6mm ピッチのものがシミュレーションでは 1.28±0.05×10-2、測定値では 1.49±0.05

×10-2 となった。ここからも TGEM が比例計数領域で動作していることが言える。測定値とシミュレ ーションの傾きには極端な違いは見られない。シミュレーションではピッチを変化させても変化が見 られなかったが、測定では傾きが大きくなり、0.6mmピッチのものでは1.0mmに比べてさらに大きな 傾きになった。傾きの違いから動作できるVGEM の範囲が異なることがわかる。したがって、1.0mm ピッチのものは0.6mmピッチのものより動作できる範囲が広いと考えられる。

Drift領域を強くすると、増幅率が上昇しプラトーが現れた。これは、Drift領域で作られた1次電

子がTGEMの孔の中に入りやすくなったためと考えられる。1次電子が孔に入る効率が1に近づく とそれ以上増幅率は上昇せず、プラトーになる。しかし、さらに電場を強くすると、電極表面に入る 電気力線が増えそれに沿って電子が電極に移動し吸収され、増幅に使われなくなるため増幅率は 下がる。動作させる場合にはプラトー付近で動作させるのが良いと考えられる。Drift 領域の依存性

でも 1.0mm ピッチと 0.6mm ピッチの違いがみられた、1.0mm ピッチのものはプラトーの部分が

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Induction領域の依存については、電場を大きくすると孔でできた電子がパッドに到達できる数が

増えるため、増幅率は大きくなると考えられる。パッドに到達する効率がほぼ一定になると、傾きは 小さくなる。さらに大きい電場にすると、増幅する領域が Induction 領域に広がるため、増幅率は急 激に増加していくと考えられる。実際に動作させる場合はなるべく傾きが小さく、電場が高い領域で 動作させるとよいと考えられる。

時間の依存性については、孔の中の電場が均一になるのに時間がかかるため増幅率が時間変 動すると考えられる。電場が不均一になる原因としてはイオン溜まり、もしくは基板のチャージアップ が考えられる。高抵抗物質を基盤の代わりに用いることでこれらの影響を尐なくすることができると 考えられる。特にエッチングで孔の周りの銅を落としてあるのでその部分に露出している基板が電 場に影響しているのではないかと考えられる。銅のエッチングの範囲を変化させる、孔の周りをエッ チングせずに、孔の縁まで銅があるものと比較するとこの影響がわかると考えられる。

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6 まとめと課題

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