Ⅳ
.末梢血・骨髄像の見方考え方
1)末梢血標本の着眼
a.顆粒球の量的所見
b.リンパ球の量的所見
c.単球の量的所見
d.白血球の補正
e.アーテイファクト
f.判定基準
2)骨髄穿刺標本の着眼
a.検査のすすめ方
b.正常の骨髄像
末梢血標本の観察ポイント
塗抹
末梢血液像 (抗凝固剤添加血)中倍率
(
×400)
⑥血液像の百分比 ⑦細胞異形成 ⑧異常細胞低倍率
(
×100,200)
①塗布の良否 ②染色の管理 ③血球数の増減 ④細胞異形成 ⑤アーテイファクト高倍率
(
×1000)
①詳細な観察 ②100~200個算定 目視法は、①採血、②塗抹、③染色、④観察 の一連の行程を手法で行うため、適切な手技 や技量が求められる。 これらの4項目は骨髄でも同様である。 末梢血では採血や塗抹による手技的なミス は避けられず、人工的産物(アーテイファクト) を常に考慮しておく必要がある。 目視法ではルーチン検査をこなす技量をもっ て望み、①∼③のミスを見抜くことである。 同時に、血球計数装置における異常所見の 情報を見落とさないようにして、目視法との コンビネーションを常に図ることである。 目視法では眼力を高めるために、観察に必 要な知識とひた向きな鏡検のもと己の感性を 磨きあげることである。 1)末梢血標本 の着眼A
B
C
D
塗抹染色標本からわかること
(ウェッジ法)
・正常の血球数における塗抹標本である. ・全体に赤みの染まりがみられる. ・血球数の減少における貧血症の塗抹標本である. ・全体に淡い染まりがみられる. ・高蛋白血症(骨髄腫など)の塗抹標本である. ・全体に青い染まりがみられる. ・貧血と白血球数増加の塗抹標本である. ・全体に淡い染まりで引き終わりが青くみられる.白血球分類の最適鏡検部位は、各赤血球が接して密で均一な部分(鏡検 開始点)から赤血球2個の重なりが50%以内の場所がよいとされる。 A:薄すぎる B:最適鏡検部位 C:厚すぎる
ウェッジ標本の観察部位
Me mo 巽典之・阿南建一ほか:血液細胞ノート.文光堂.2005白血球分類(分画)の報告書(例)
好 中 球 性 骨髄芽球 前骨髄球 骨髄球 後骨髄球 桿状核球 分葉核球 好酸球 好塩基球 単球 リンパ球 異型リンパ球 other 赤芽球 Mybl Promy My Met St Seg Eo Ba Mo Ly At-ly Ebl % % % % % % % % % % % /100w コメント Myeloblast Promyelocyte Myelocyte MetamyelocyteStabment, Band form Segment Eosinophil Basophil Monocyte Lymphocyte Atypical lymhocyte Erythroblast
血球の大きさの相互関係と特徴
5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90µm 5 10 15 20 µm 白 血 球 好中球 桿状∼分葉形 淡褐色 好中性 11.5‐14.0‐16.5 4,000 ( 55% ) 好酸球 桿状∼分葉形 淡褐色 好酸性 13.0‐15.0‐17.9 200 ( 3% ) 好塩基球 桿状∼分葉形 淡褐色 好塩基性 12.0‐13.6‐16.2 50 ( 0-1% ) 単球 腎臓、馬蹄形 淡青灰色 好アズール性 13.2‐16.7‐21.2 300 ( 4% ) リンパ球 円形、類円形 青 色 好アズール性 7.5‐11.7‐16.8 2,500 ( 35% ) 赤血球 (‐) 紅橙色 (‐) 6.0‐7.7‐9.0 500万 血小板 (‐) 好アズール性 淡青色 2.0‐3.0‐5.0 20万 核 細胞質 顆粒 大きさ(µm) 数量(平均/µl) 血球の種類 好酸球 eosinophil 単球 monocyte 好中球 neutrophil リンパ球 lymphocyte 好塩基球 basophil 赤血球 erythrocyte 血小板 thrombocyte白血球の形態は量的・質的異常そして機能異常を知る!
白血球の形態異常は
量的異常
を絶対数にて判定することから
始まり、次にその
質的(形態)異常
を詳細に観察する。
そして、それらの背景には常に
機能異常
を把握しておくことが形態
診断のスキルアップにつながる。
鑑別細胞についてはそのポイントをマニュアル化し目線の統一を
図り個々の再現性や相関性を高める必要がある。
健常成人の血球量的基準
桿状核球 分葉核球 単球 リンパ球 好塩基球 好酸球 正常白血球 4,000~8,500/µl4000/µl
(1,500∼7,500)
50/µl
(
0∼100)
200/µl
(
0∼500)
2,500/µl
(
1,000∼4,500)
3%
55%
0-1%
3%
4%
35%
赤血球300/µl
(
200∼800)
白血球分類の評価については、百分率の表現は相対的であるため、絶対数(白血球 に各百分率を乗じたもの)で表現し、絶対的減少・増加が診断に有効になる。 Me mo0 10 20 30 40 50 60 70 80 1∼3日 4∼14日 1∼12月 1∼3歳 4∼6歳 7∼10歳 11∼15歳 16∼60歳 61歳以上 好中球 好酸球 好塩基球 単球 リンパ球 奈良信雄ほか:臨床検査学講座.血液検査学.医歯薬出版.2006
本邦における年齢別白血球百分率の平均値
% 健常者の白血球百分率の年齢別および成人の平均値であるが、生後の好中球増加、 5歳位までのリンパ組織の発達によるリンパ球の増加が目につく。 但し、白血球の種類ごとに数的な異常があるかどうかは、白血球を分類して得られた 各白血球分画の出現率と総白血球数をもとに絶対数を算出し、年齢、性別、人種が 等しい健常者の基準範囲と比較して判断する。 Me mo症例 リンパ球(%) 白血球/µl リンパ球(/µl)
A 90 2,000 1,800
B 30 6,000 1,800
C 10 18,000 1,800
D 10 85,000 8,500
E 50 12,000 6,000
F 90 1,400 1,260
絶対的増加、絶対的減少は臨床に反映する所見になるので要注意である。 絶対的増加はDとEで、絶対的減少がFになる。 Aは相対的増加、Bは正常、Cは相対的減少として評価される。 白血球分類から得られる百分率は相対的なものであり、絶対数でないので 百分率のみによる診断は危険ある。(絶対数=白血球数x百分率)末梢血のリンパ球百分率と絶対数の関係
(成人例)3%
55%
4,000/µl (1,500~7,500) 重症感染症 類白血病反応 慢性骨髄性白血病 非定型慢性骨髄性白血病 好酸球>500/µl 好塩基球>100/µl 増加(/µl) 減少(/µl)1,000-1,500 10,000-20,000
20,000-50,000
500-1,000 50,000
<
500
軽 中 度 高 度 重 度顆粒球の量的評価
好中球の正常値 好中球増加症 neutrophilia 好中球減少症 neutropenia 増加症は5,000/µl以上、減少症は500/µl 以下に診断的意義がある。増加症では好 酸球や好塩基球の増加に注意を払う。 白血球の 量的異常35%
減少症(/µl) 増加症(/µl) 成 人 小 児<
1,000
>
4,000
<
3,000
>
8,000
成 人>
5,000
>
10,000
重 度2,500/µl
(
1,000∼4,500)
小児>10% 成人>1% 大きさ>16µm 伝染性単核球症 リンパ球 異型リンパ球 異常リンパ球 BM<20% BM>20% 慢性リンパ性白血病 百日咳菌 感染症 悪性リンパ腫 急性リンパ性白血病リンパ球の量的異常
リンパ球増加症 lymphocytosis リンパ球減少症 lymphocytopenia リンパ球の正常域は小児で成人の約2倍 の認識のもと、増加症(5,000/µl以上)は腫 瘍性が濃厚なので診断的意義がある。 小児の増加症には百日咳菌感染症に注意を払う。 異常リンパ球は骨髄で20%を超える場合は急性リンパ性白血病を疑う。 リンパ球の正常値 異常所見 異常所見4%
300/µl (200~800) 軽 中 度<
1,000
単球 感染症, 膠原病 etc 慢性骨髄単球性白血病 若年性骨髄単球性白血病 急性骨髄単球性白血病 BM-芽球>20% 単芽球>80% 単芽球<80%M5a
M5b
重 度 ? 単芽球* 前単球* 単球* (*腫瘍性の単球系;AML-M5a例) 急性単球性白血病 M5 BM-単球系>80% 重 度>
1,000
>
5,000
単球系の量的異常
単球増加症 monocytosis 単球の腫瘍性増加について、慢性では1,000/µl 以上が持続性であること、急性では5,000/µl以 上を示すことに診断的意義がある。 単球の正常値 (全単球に比して)赤芽球の出現に伴う白血球の補正
白血球の 補正 Me mo 末梢血に赤芽球が出現すると込まれる(見かけ上の増加が起こる)ため補正が必要となる、血球計数器で測定時には白血球として数え。塗抹染色標本で 赤芽球の出現を確認したら、その標本で白血球を100個分類する間に認めた 赤芽球を数え、白血球数を補正し、報告の際は補正したことを明記する。 【白血球の補正例】 Ques. 血球計数器で測定した白血球数が8,600/µlで、白血球100個分類する 間 に赤芽球21個を認めたとすれば‥8,600 ×
100
121*
(*100+21)= 7,107 =
7,100/µl
Ans. 真の白血球数は7,100/µlとなる。 あくまでも概数なので100位未満は四捨五入する。
見逃してはいけないアーテ
イファクト
血小板の項でも述べたが、アーテ
イファクト(人工産物)は血球数の
真のデータを妨害するものであり、臨床へ報告する前に処理しなければ
ならない。
これらは、まず自動計数器より算定される数値に影響を与えるため
血球の粒度分布や時系列のデータに注意を払い、異常を確認できた
ときは血液像にて速やかに対処することである。
従って、その対処法についても熟知しておくべきである。
アーテイファクトフィブリン糸が析出し、そこに血小板が 付着したもの、白血球数も不安定になる. 好中球の周囲に血小板が付着した血小板衛星現象. EDTA(抗凝固剤)による血小板凝集塊. 血管内皮細胞が剥がれて出現しそこに血小板が付着 したもの.内皮細胞は白血球にもカウントされる.
偽血小板減少症の例
採血行為や抗凝固剤(EDTA)によって血小板数は変化するので注意を払い、血球計 数器における血小板粒度分布異常を捉え、血液像で確認することが重要になる。 1 4 3 2 原因として①②は採血不良によるもので、③は患者自身によるもの、④は抗凝固剤による ものと思われる。対処法として、①②は再採血、④は抗凝固剤を変えるとことを試みる(次 頁に述べる)。1.過剰のEDTA(20∼30倍)を用いてpHを下げる事で有効となるようである。 2.ヘパリン、クエン酸、ACD液などを代用する。(これでも約20%で血小板凝集を 生じる。液状試薬の場合は必ず容量補正を行うこと、 白血球と同等大の凝集塊がある場合は白血球数も同時に補正すること) 3.硫酸マグネシウム飽和液を用いる(Fonio法の応用)。 4.抗生物質にて抗体を吸着する目的でカナマイシン,コリマイシンなどを添加する。 5.GPⅡb/ⅢaやGPⅠbに対するモノクローナル抗体を添加する。 6.前もって37℃に暖めたEDTA入り容器を用いて採血をし、37℃を維持したままで きるだけ早急に測定する。この方法で80%で正確に測定できる。 7.EDTAにNaFを加えたり、血糖測定用容器を用いる。ただし、NaFが白血球数や 分画百分率に影響を与える可能性がある。 8.邪道かも知れないが自動計数装置の前で患者さんより採血を行い、直接測定 する方法もある。
EDTA依存性血小板減少症の対処法
白血球同士のかたまりである.本例はMDSで偽ペ ルゲル核異常の好中球が集合したものである. 偽性白血球減少症を呈するが原因は不明である. 赤血球同士の凝集である. 寒冷凝集などが関与し ていると考えられ、MCV、MCHCの高値を伴う. 37℃で加温後再検する. 対処法として、⑤⑦は37℃にて加温後に測定し、⑧は輸液挿入部位と反対側にて採血する。 血小板類似物質(クリオグロブリン)の出現にて血 球計数装置では血小板や白血球として算定され 偽性の増加を呈する. 高蛋白血症(骨髄腫など) の検体を冷蔵庫に保存した場合に出現しやすい. 高カロリー輸液(IVH)部位からの採血でみられたもの で、輸液挿入部分に真菌の感染が発生したものと思 われる. 胞子状のものは血小板にカウントされやすい.