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短 報 Nurses recognition and practice about psychological preparation for children in child health nursing in the combined child and adult ward Ta

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Academic year: 2021

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■ 短   報

混合病棟で小児に関わる看護師のプレパレーションに

対する認識と実践の状況

Nurses recognition and practice about psychological preparation for children in

child health nursing in the combined child and adult ward

宮内 環

1

 寺井 孝弘

2

 本庄 美香

1

Tamaki MIYAUCHI Takahiro TERAI Mika HONJOU

キーワード :子ども、プレパレーション、看護師、混合病棟

Key words :child, psychological preparation, nurse, child and adult ward

本研究の目的は、混合病棟で小児に関わる看護師のプレパレーションの認識と実施状況を調査することである。小 児科を標榜し、500床以上の総合病院に勤務する看護師500名のうち混合病棟に勤務する69名を分析対象とした。質 問紙調査の内容は、看護師の属性、プレパレーションに対する認識(意味・効果・必要性)と実施状況である。分析は χ2検定、Fisherの直接法を行い、有意水準は5%とした。調査の結果、プレパレーションの認識が9割であるのに対し、 実施状況は6割弱に過ぎなかった。また、実施するためには時間の確保が必要であり、物品(ツール)の充実や、子ど もの成長発達と実施方法に関する知識の有無も影響していた。小児から高齢者までの入院患者を対象とする混合病棟 でプレパレーションを実践するためには、子どもの成長発達を配慮した病棟環境の工夫と同時に、子どもの認知発達 や実施方法に関する知識や技術を獲得することが必要である。

Ⅰ.はじめに

近年、わが国は少子化が進み、小児の入院数が減少 している1。また、成人患者と比べると、小児は診療 や看護に人手を要するが採算面で報われない現状があ るため2、小児科の縮小や閉鎖が相次ぎ、大人と子ど もが一緒に入院する混合病棟への移行が進んでいる3 入院児に付き添う家族を対象とした先行研究による と、小児だけが入院する病棟よりも、混合病棟に入院 する小児の家族の方が満足度は低く、その理由として 小児に合った病棟環境になっていないことが挙げられ ている4。しかし、入院する子どもにとって病棟環境 は、治療を受ける場としてだけではなく、短期間の療 養であっても成長に向かう生活の場として整えられな ければならない。このことは「病院のこども憲章」で 謳われており5、子どもの権利である。 わが国では、日本看護協会が「小児看護領域で特に 留意すべき子どもの権利と必要な看護行為」を1999 年に提唱した6。この中には、検査・治療・病状・処 置などに関する説明を子どもと養育者に対して適時に 行い、納得・了解・理解が得られるように努めること や、その際、発達に応じたわかりやすい言葉や絵を用 いて説明する必要性が述べられている。これを契機と して小児医療現場では、治療や検査を受ける子どもに 対し、認知発達に応じた方法で説明を行い、子どもや 親の対処能力を引き出すような環境および機会を保障 するプレパレーションを実施するようになった7。プ レパレーションには、“病院に来る前(第1段階)”、“発 達心理的身体的アセスメント(第2段階)”、“医療行為 などの説明(第3段階)”、“処置中のディストラクショ ン(第4段階)”、“検査や治療終了後のpost procedure play(第5段階)”の5段階があると言われ8、子どもの 痛みや心理的混乱を軽減し、治療へのコーピングが高 まると報告されている9‒11。つまりプレパレーション は、医療において子どもの権利を保障する倫理的な実 践と言うことができ、小児だけが入院する病棟だけで

1 関西国際大学保健医療学部 Faculty of Health Sciences, Kansai University of International Studies 2 金沢医科大学看護学部 Faculty of Nursing, Kanazawa Medical University

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なく、今後増えることが予想される混合病棟において も実施頻度を高める必要があると言えるだろう。 プレパレーションの実施者となることが多い小児に 関わる看護師を対象とした調査を概観すると、効果が あることや必要性への認識は高いが、プレパレーショ ン自体を難しく捉えてしまうことで実施に至らない実 態がわかっている12。一方、混合病棟に勤務する看護 師だけを対象としたプレパレーションの実態報告は皆 無であった。 そこで今回、小児だけが入院する病棟に比べ、様々 な制約がある混合病棟に勤務する看護師のプレパレー ションの認識と実施状況を検討することにした。

Ⅱ.研究目的

混合病棟に勤務する看護師の小児に対するプレパ レーションの認識と実施状況を調査することである。

Ⅲ.用語の定義

プレパレーション:治療や検査を受ける子どもに対 し、認知発達に応じた方法で病気、手術、検査、その 他の処置について説明を行い、子どもや親の対処能力 を引き出すような環境および機会を与えることであ る。本研究ではプレパレーションのプロセスを、先行 研究8を参考に、“第1段階:受診前あるいは入院前の 情報収集・アセスメント”、“第2段階:医療行為など の説明”、“第3段階:処置中のディストラクション”、 “第4段階:検査や治療終了後のpost procedure play”

の4つとした。 子ども:3歳から11歳までの子どもとし、ピアジェ の認知発達理論で述べると前操作期から具体的操作期 とした13

Ⅳ.研究方法

1.調査対象 小児科を標榜し、500床以上の総合病院で、人口約 100∼250万人の県内19施設と約500∼800万人の県 内11施設に勤務する病棟・外来看護師500名のうち 混合病棟に勤務する看護師69名である。 2.調査方法 各施設の看護部長に依頼文にて研究を依頼し、対象 となる看護師へ依頼文、自記式質問紙、返信用封筒を 配布してもらい、記入後、看護師個人で研究者へ返送 してもらった。調査期間は平成25年1月から3月であ る。 3.調査内容 質問紙の構成は先行研究14, 15を参考として以下とし た。 1) 対象者の属性 (1)看護師の外的要因:所属病院の設置主体、所属病 院の種類。 (2)看護師の内的要因:年齢、小児看護経験年数、最 終学歴、プレパレーションに関する勉強会参加の有 無、参加した勉強会の情報入手方法、勉強会に参加し なかった理由。 2) 看護師のプレパレーションに対する認識 プレパレーションの意味・効果・必要性について4 件法で回答を求め、「プレパレーションを行う上で必 要と思うもの」については2件法で回答を得た。 3) 看護師のプレパレーションの実践 プレパレーション実施状況は4件法で回答を求め た。プレパレーションのプロセスごと(“第1段階: 受診前あるいは入院前の情報収集とアセスメント”、 “第2段階:医療行為などの説明”、“第3段階:処置中 のディストラクション(気晴らし)”、“第4段階:検査 や治療終了後のpost procedure play”)の実施状況は、 研究者らが作成した各段階の具体的な内容を紙面上に 示し、2件法で回答を求めた。 なお、本研究の子どもの定義については文章で質問 紙に明示した。 4.分析方法 対象者の外的・内的要因と、プレパレーションの認 識・実施状況の基本統計量を算出した。4件法で回答 を得たプレパレーションの認識・実施状況は2群にグ ループ化した。プレパレーションの認識と実践状況と の関係は、χ2検定、Fisherの直接法を行って検討し、 有意水準は5%とした。また自由記載は質問の目的に 沿って内容分析を行った。 5.倫理的配慮 金沢医科大学の研究倫理審査委員会で承認を得た (平成24年12月17日:番号152)。研究参加の意志は 質問紙の返信によるとし、文書で「参加の任意性の強 調」「無記名個別回収」「データの匿名性の保証」「デー タ管理の安全性の保証」「データは研究目的以外では 使用しない」「公表予定」について説明した。また、 配布に際しては強制力がかからないように配慮をお願 いした。

Ⅴ.結果

1.対象者の属性(表1) 表1に 示 す。 小 児 看 護 経 験 年 数 は1.0∼26.0年 で あった。「プレパレーションに関する勉強会への参加 (n=69)」は「あり」が約2割、「なし」が約8割であり、 自由記載で回答を求めた「勉強会に参加しなかった理 由」を内容分析すると(n=23)、最も多かったのが 「勉強会があるのを知らなかった」で47.8%、「関心が

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無かった」が26%、「身近で勉強会が無かった」「時間 が無かった」がそれぞれ8.0%、「所属先で実施してい ない」「会費が高い」がそれぞれ5.1%であった。 2.プレパレーションの認識状況 プレパレーションの意味(n=69)は「知っている∼ 少し知っている」が94.2%、次に効果(n=68)は「あ 表1 対象者の属性 年齢(平均±SD(歳)) 小児看護経験年数(平均±SD(年)) 33.29±9.25 4.54±4.76   項目 n=回答者数 回答数(%) 所属病院設置主体 大学病院 18(26.1) 独立行政法人国立病院機構および公立病院 23(33.3) 医療法人 28(40.6) 最終学歴 看護師養成所 1(1.4) 看護専門学校 48(69.6) 短期大学 8(11.6) 看護系大学 11(15.9) 大学院 1(1.4) 基礎教育でプレパレーションを学んだ経験 あり 30(43.5) なし 28(40.6) 覚えていない 11(15.9) プレパレーションに関する勉強会への参加経験 あり 12(17.4) なし 57(82.6) 表2 プレパレーション4段階別実施状況(n=39) 回答数(%) している していない 第1段階 アセスメント 子どもの状況をアセスメントし、どのような言葉で説明するかを考える 32(84.2) 6(15.8) これから経験する処置・検査・手術に対する子どもの気持ちを聴いている 22(57.9) 16(42.1) 子どもの発達段階をもとにツールの選択をしている 26(68.4) 12(31.6) 子どもが今から処置・検査・手術を受ける気持ちになっているかを確認している 12(31.6) 26(68.4) 保護者が同席するか否かについて、子どもに希望を確認している 11(28.9) 27(71.1) 第2段階 説明 具体的にわかりやすい言葉で説明している 32(82.1) 7(17.9) 子どもと目の高さを合わせて説明している 33(84.6) 6(15.4) 対処法(例:痛みを感じた時に手を上げるなどサインを決める)について説明し ている 10(25.6) 29(74.4) 子どもが質問した場合には具体的にわかりやすく答えている 22(56.4) 17(43.6) 処置・検査・手術の直前に説明をしている 11(28.2) 28(71.8) 処置・検査と同時に説明をしている 4(10.3) 35(89.7) 子どもに進行状況を説明している 11(28.2) 28(71.8) 第3段階 ディストラクション (処置中の気晴らし) 常に声をかけ、励ますようにしている 27(69.2) 12(30.8) 愛着のあるおもちゃやタオルを持ってもらう 16(41.0) 23(59.0) 好きな音楽を聴いてもらう 8(20.5) 31(79.5) 処置室をキャラクターで飾り付けるなど工夫している 28(71.8) 11(28.2) 医療器具や椅子をキャラクターで飾り付けるなど工夫している 4(10.3) 35(89.7) 看護師自身の持ち物や衣服をキャラクターで飾り付けるなど工夫している 14(35.9) 25(64.1) 第4段階 『検査・処置・手術 後のケア』の実践 子どもの頑張りを褒めるようにしている 39(100.0) 0(0.0) 終わったことを言葉で子どもに伝えるようにしている 32(82.1) 7(17.9) 気持ちの表出を促すような声かけをしている 22(56.4) 17(43.6) 一緒に遊ぶことで気持ちの表出を促すようにしている 7(17.9) 32(82.1)

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る∼どちらかといえばある」が98.5%、そして必要性 (n=68)は「とても必要∼ある程度必要」が97.1%で あった。また、“プレパレーションを行う上で必要と 思うこと”(n=69複数回答)は、「子どもとのコミュ ニケーション技術」と「子どもの認知発達の知識の習 得」がそれぞれ78.3%、「時間の確保」が75.4%、「適 切な方法の習得」が72.5%、「人員の確保」が52.2%、 「物品(ツール)の充実」が47.8%、「場所・スペース の 確 保」が34.8%、「診 療 報 酬 へ の 位 置 づ け」が 17.4%、「その他」2.9%の自由記載の中には「医師の 協力」があった。 3.プレパレーションの実施状況(表2) 実施状況(n=69)は、「実施している∼ときどきし ている」が56.5%、「あまりしていない∼していない」 が43.5%であった。実施していない理由(n=30複数 回答)は、「時間が足りない」が56.7%で最も多く、 「人員が足りない」が33.3%、「方法がわからない」が 20%、「子どもの反応に対応できるかわからない」が 13.3%、「実施することで子どもに恐怖を与える」が 10%であった。また「その他」13%の自由記載の内容 分析では(n=9)、「病棟で実施する機会・習慣が無い (55.6%)」が半数を占めていた。 次に、実施状況を段階別にみると表2の通りである (n=39)。8割以上が実施していると回答した項目は、 第1段階の『子どもの状況をアセスメントし、どのよ うな言葉で説明するかを考える』、第2段階の『具体 的にわかりやすい言葉で説明している』『子どもと目 表3 段階別実施状況と「プレパレーションを行う上で必要と思うこと」との関連(n=39) プレパレーションを行う上で 必要と思うこと カテゴリー 第2段階: 具体的にわかりやすい言葉で 説明している p している(人数(%)) していない(人数(%)) 適切な方法の習得 必要 25(78.1) 2(28.6) 27 0.02 必要と思わない 7(21.9) 5(71.4) 12 計 32(100.0) 7(100.0) 39   プレパレーションを行う上で 必要と思うこと カテゴリー 第2段階: 具体的にわかりやすい言葉で 説明している p している(人数(%)) していない(人数(%)) 物品(ツール)の充実 必要 19(59.4) 1(14.3) 20 0.04 必要と思わない 13(40.6) 6(85.7) 19 計 32(100.0) 7(100.0) 39   プレパレーションを行う上で 必要と思うこと カテゴリー 第2段階:子どもに進行状況を説明している 計 p値 している(人数(%)) していない(人数(%)) 認知発達の知識の習得 必要 11(100.0) 19(67.9) 30 0.03 必要と思わない 0(0.0) 9(32.1) 9 計 11(100.0) 28(100.0) 39   プレパレーションを行う上で 必要と思うこと カテゴリー 第4段階: 終わったことを言葉で子どもに 伝えるようにしている p している(人数(%)) していない(人数(%)) 認知発達の知識の習得 必要 27(84.3) 3(42.9) 30 0.04 必要と思わない 5(15.6) 4(57.1) 9 計 32(100.0) 7(100.0) 39   プレパレーションを行う上で 必要と思うこと カテゴリー 第4段階: 終わったことを言葉で子どもに 伝えるようにしている p している(人数(%)) していない(人数(%)) 物品(ツール)の充実 必要 19(59.4) 1(14.3) 20 0.04 必要と思わない 13(40.6) 6(85.7) 19 計 32(100.0) 7(100.0) 39  

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の高さを合わせて説明している』、第4段階の『子ど もの頑張りを褒めるようにしている』『終わったこと を言葉で子どもに伝えるようにしている』であり、第 3段階には8割以上実施している項目は無かった。 4. プレパレーションの段階別実施状況と “プレパ レーションを行う上で必要と思うこと” との関連 (表3) 第2段階の『具体的にわかりやすい言葉で説明して いる』の実施割合では、「適切な方法の習得」と「物品 (ツール)の充実」で有意差があり、いずれも必要と回 答した群の実施割合が高かった。また、第2段階の 『子どもに進行状況を説明している』の実施割合は「子 どもの認知発達の知識の習得」が必要と回答した群に おいて高かった。 第4段階の『終わったことを言葉で子どもに伝える ようにしている』の実施割合は「子どもの認知発達の 知識の習得」と「物品(ツール)の充実」で有意差があ り、いずれも必要と回答した群の実施割合が高かっ た。

Ⅵ.考察

1.看護師の認識・実施状況からみた混合病棟の環 境上の課題 プレパレーションの意味・効果・必要性に関する認 識がそれぞれ9割あるにも関わらず、実施状況は6割 弱に過ぎなかった。実施していない理由として時間や 人員不足が挙げられており、「実施する機会・習慣が 無い」という回答もあった。これは、成人患者よりも 採血やレントゲン・画像検査への対応、術前処置、清 潔ケアなど、あらゆる実践場面おいて小児患者には、 多くの時間や労力を必要とするが、混合病棟における 看護師の人員配置が成人患者と同じ単位で捉えられる ため16、小児病棟と比較して人員が少なく、看護師の マンパワー不足が生じやすいためではないかと考えら れる。 また、小児の特徴に応じた物理的環境要因を必要と するプレパレーション第3段階の“処置中のディスト ラクション(気晴らし)”が8割に満たない実施状況と なっていたことからも、混合病棟には子どもの成長発 達に配慮した物品や環境が十分には整えられていない ことが推察できる。 2.混合病棟に勤務する看護師へ向けたプレパレー ションの普及 “プレパレーションを行う上で必要と思うこと”と して、7割以上の回答があったのは「子どもとのコ ミュニケーション技術」「子どもの認知発達の知識の 習得」「適切な方法の習得」「時間の確保」であった。 このうち、「子どもの認知発達の知識の習得」「適切な 方法の習得」は、検査・処置・ケアを受ける子どもが 了承・納得できるように説明する、言葉で伝えるとい う内容を含んだ第2段階、第4段階の実施状況と関連 があった。この理由として、これらの段階には子ども の特徴や、成人とは異なったアプローチに関する知識 や技術が必要なことが挙げられる。つまり小児は、特 に痛みを伴わない処置であっても、見慣れない器具を 目にすると、何をされるかわからない恐怖から泣き出 し、抵抗することがあるため、認知発達の程度に応じ た説明を行い、了承を得る必要があるからである。そ こで小児に関わる看護師は、「子どもの認知発達の知 識の習得」「適切な方法の習得」に関する知識や技術 を身につける必要があり、それが子どもの権利を守る 実践につながると言える。 そして、このような実践を行うためには、学習の機 会が必要となるが、4割の看護師が基礎教育でプレパ レーションを学んでいないことに加え、勉強会には2 割に満たない看護師しか参加していないことや、勉強 会に関する情報も浸透していない実態が示された。こ れは、勉強会や講習会を主催する側の今後の課題が示 されたということができ、混合病棟で勤務する看護師 が小児の関連学会に所属していないことも想定して、 広報活動のあり方を検討することなどが必要である。 さらに今回の結果の中で、プレパレーションを実施 するために「時間の確保」が必要と回答した看護師が 7割以上、実施できない理由として挙げた看護師が5 割以上あった。そして、必要なこととして回答された 「物品(ツール)の充実」が、物品(ツール)や時間、 マンパワーが十分保障されなくても実施可能な第2、 4段階の実践と関連あることに注目したい。これは、 「玩具や絵本などを用いて検査・処置を説明すること」 をプレパレーションと捉える看護師が多いという先行 研究結果14を踏まえると、今回対象となった混合病棟 に勤務する看護師も同様の傾向ではないかと推察す る。つまり、“実施するためには時間をかけなければ ならない”、“物品(ツール)を使用しなければならな い”という狭義の方法論としてプレパレーションを捉 えているのではないかと危惧するのである。確かに、 第3段階のように、内容によっては物品(ツール)を 使用した方が効果的な実践もあるが、プレパレーショ ンの本来の意味は、子どもの権利を尊重するために関 わることであり、人形や紙芝居を使って処置や治療を 説明することだけを指すのではない。とりわけ、入院 患者が小児から高齢者までと幅広く、環境上にも課題 がある混合病棟に勤務する看護師にとって最も必要な ことは、物品(ツール)に依存し、時間やマンパワー が必要な方法だけではなく、プレパレーションの目的 を再認識するような機会ではないだろうか。

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Ⅶ.今後の課題

今後の課題として、対象数を増やして詳細に調査す ることや、今後増え続ける混合病棟でプレパレーショ ンが普及するよう努めていきたい。

Ⅷ.結論

1. プレパレーションの意味、効果、必要性に関する 認識が9割あるにも関わらず、実施状況は6割弱 に過ぎなかった。 2. プレパレーションを段階別にみると、“処置中の ディストラクション(気晴らし)”の実施状況が8 割を満たなかった。 3. プレパレーションを実施するために「時間の確保」 が必要と回答した看護師が7割以上、実施できな い理由として挙げた看護師が5割以上あった。 4. 必要なこととして回答された「物品(ツール)の充 実」が、物品(ツール)や時間、マンパワーが十分 保障されなくても実施可能な第2、4段階の実践と 関連があった。 5. 基礎教育でプレパレーションを学んでいない看護 師が4割あり、プレパレーションに関する勉強会 に2割未満の看護師しか参加していないことや、 勉強会に関する情報も浸透していない実態が示さ れた。 謝 辞 本研究にご協力くださいました対象者の皆様に深く 感謝いたします。 助 成 本研究はどの機関からも研究助成を受けていない。 利益相反 本研究における利益相反は存在しない。 文 献 1. 厚生労働省.平成23年度受療率(人口10万対) 入院‒外来・性・年齢別 第2-63表[インターネッ ト].2011.[検 索 日2014年8月1日 検 索]http:// www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyk_2_2. html  2. 松平隆光.小児医療の「採算性」.患者のための 医療.2002;1(3):516‒519. 3. 藤田優一,藤井真理子,石原あや.成人との混合 病棟における小児看護に関する国内文献の検討. 小児看護.2011;34(7):918‒924. 4. 伊藤良子.入院時に付き添う家族の入院環境に対 する満足度―質問紙による調査から―.日本小児 看護学会誌.2009;18(1):24‒30. 5. 野村みどり.「病院の子ども憲章」と子どもの病 院環境.日本小児血液学会雑誌.2003;17(3): 137‒141. 6. 日本看護協会出版会.日本看護協会看護業務基準 集2007年改訂版.東京:日本看護協会出版会; 2007. 7. 松森直美,蝦名美智子,今野美紀他.手術を受け た子どもへのプレパレーションに関する親の意 識.日本小児看護学会誌.2011;20(2):1‒9. 8. 田中恭子.プレパレーションの5段階について. 小児看護.2008;31(5):542‒547. 9. 佐藤志保,塩飽仁.外来で採血を受ける子どもに 行うプリパレーションの有効性の検証.北日本看 護学会誌.2007;10(1):1‒12. 10. 下山美樹,畔崎麻貴子,馬場絹美.幼児に対する プレパレーションを試みて―採血の説明に紙芝居 を 取 り 入 れ て の 効 果―. 長 崎 県 看 護 学 会 誌. 2010;6(1):19‒24. 11. 薦田彩会,松森直美.子どもに対する血圧測定の プレパレーションの効果に関する検討.日本小児 看護学会誌.2011;20(1):120‒126. 12. 宮内環,寺井孝弘,横田あゆみ.小児に関わる看 護師のプレパレーションに対する認識と実践の状 況.看護実践学会誌.2014;27(1):25‒34. 13. Butterworth G, Harris M. 1994/ 村井潤一訳, 1997.発達心理学の基本を学ぶ.東京:ミネル ヴァ書房. 14. 齋藤美紀子,高梨一彦,小倉能理子他.プレパ レーションに対する看護者の認識とその実施状 況.弘前学院大学看護紀要.2010;5:47‒56. 15. 北野景子,内海みよ子,和田聖子,宮井信行.プ レパレーションの5段階における看護師の認識と 実践の現状.日本小児看護学会誌.2012;21 (3):44‒51. 16. 石浦光世,町田和嘉子,坂本美和.混合病棟のな かでの看護倫理.小児看護.2012;35(8):986‒ 993.

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