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(1)

諮問庁:国税庁長官 諮問日:平成2 1 年3 月2 4 日(平成2 1 年(行情)諮問第1 5 3 号) 答申日:平成2 2 年3 月1 日(平成2 1 年度(行情)答申第5 4 6 号) 事件名:特定団体の給与支払事務所等の開設届の不開示決定(存否応答拒否) に関する件

答 申 書

第1 審査会の結論 「特定政党岐阜県特定選挙区支部」,「特定議員後援会連合会」,「特定名 称の会」及び「特定政党岐阜県衆議院支部」の4 団体(以下「特定4 団体」 という。)の給与支払事務所等の開設届出書(以下「本件対象文書」という。) につき,その存否を明らかにしないで開示請求を拒否した決定は,取り消すべ きである。 第2 審査請求人の主張の要旨 1 審査請求の趣旨 本件審査請求の趣旨は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以 下「法」という。)3 条の規定に基づく本件対象文書の開示請求に対し,平成 2 0 年1 2 月1 9 日付け岐南総4 6 6 ないし4 6 9 により岐阜南税務署長 (以下「処分庁」という。)が行った不開示決定(以下「原処分」という。) を取り消し,本件対象文書の開示を求めるものである。 2 審査請求の理由の要旨 (1 )審査請求書 ア 特定4 団体は,国会議員又は公人を国政に送るために支援する者が代 表を務め,同一の場所に所在し,特定政党岐阜県特定選挙区支部は, 税でまかなわれる政党交付金が交付されている団体であることから,特 定4 団体は,政党交付金の恩恵を受けているので,適正に税務の届出を していることを示す本件対象文書を公開することは公の利益に資するもの である。 イ 特定4 団体は政治団体であって,政治資金規正法の規定に基づき政治 資金に係る収支を報告しているところ,この収支報告によれば,特定4 団 体はいずれも毎年人件費を計上している。そのため,給与支払事務が生 じているはずであるから,処分庁には本件対象文書が存在しているはず である。本件対象文書の開示によって,何らかの不正が明らかとなり,仮 に選挙で落選したとしても,それは有権者が判断した結果であって,本件 対象文書の開示に原因があることにはならず,法5 条2 号イに規定する

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当該団体の権利,競争上の地位その他正当な利益を害するおそれはない。 ウ 法5 条2 号ただし書は,人の生命,健康,生活又は財産の保護するた め,公にすることが必要であると認められる情報は除かれているところ, 国政を担う政治家が正しく税務処理をしているか否かの情報は,その人 物を国政にとどまらせるか否かの有権者の判断に直結する情報であって, 国民生活を左右するものであるから,同号イの適用はない。 エ 厚生労働省岐阜労働局は,特定4 団体の保険関係成立届及び労働保 険概算・確定保険料申告書を法5 条2 号イに該当しないとして,開示し ている。本件対象文書もこれと同様に開示すべきである。 (2 )意見書 特定4 団体は,国会議員関係団体であることから,単なる政治団体より も重要性が高く,公益性のために厳しい水準での情報の透明性が求められ ていることは,政党助成法,政治資金規正法及び法の制定過程並びに目的 をかんがみれば明らかである。よって,本件対象文書を開示すべきである。 第3 諮問庁の説明の要旨 1 本件対象文書の不開示情報該当性について 所得税法2 3 0 条では,国内において給与等の支払事務を取り扱う事務所, 事業所その他これらに準ずるものを設け,又はこれらを移転し若しくは廃止し た者は,その事実につき,財務省令で定めるところにより,その旨その他必要 な事項を記載した届出書を,その事実があった日から1 月以内に,税務署長 に提出しなければならないと規定しており,給与支払事務所等の開設届出書 (以下「本件届出書」という。)は当該規定に基づき提出されるものである。 そのため,本件対象文書の存否を答えた場合には,特定の政治団体に係る 給与等の支払事務を取り扱う事務所,事業所その他これらに準ずるもの(以 下「給与支払事務所」という。)の有無及び給与等の支払事実の有無(以 下「本件存否情報」という。)が明らかになる。 以下,本件存否情報の法5 条2 号イ該当性について検討する。 (1 )当該事実が公となっているか ア 給与支払事務所の有無について 政治資金規正法6 条及び7 条の2 において,政治団体は,その組織 時等に主たる事務所の所在地を都道府県の選挙管理委員会又は総務大 臣に届け出なければならないこととされ,届出事項は公表することが規定 されている。 一方で,所得税法上の給与支払事務所は,給与等の支払事務を取り 扱う事務所であることから,例えば,一つの政治団体が複数の事務所を 有しているような場合においては,必ずしも給与支払事務所と主たる事務 所が一致するとは限らない。

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したがって,政治団体の主たる事務所の所在地が公表されているから といって,その主たる事務所の所在地に給与支払事務所があるかないか という情報が公になっているとは言えない。 イ 給与等の支払事実の有無について 政治資金規正法1 2 条において,政治団体の会計責任者は,毎年1 2 月3 1 日現在で,当該政治団体に係るその年における収入,支出その 他の事項で一定のものを記載した報告書(以下「政治資金収支報告書」 という。)を都道府県の選挙管理委員会又は総務大臣に提出しなければ ならないこととされている。また,政治資金収支報告書については,要旨 の公表が規定されており,収入及び支出について総務省令に定める項目 別に金額が公表され,これにより人件費の支出の有無及びその金額は明 らかとなる。 しかしながら,同法に規定する人件費には,一般的には政治団体の職 員に支給する給料,報酬,各種手当,各種社会保険料等が該当すると思 料されるが,当該政治団体の経理事務等を他の政治団体の職員が行っ た場合に支払われる事務負担金について人件費として計上している場合 が考えられる。この場合,当該事務負担金は,源泉徴収義務が生ずる所 得税法上の給与等には該当しないことから,政治資金収支報告書に記載 されている人件費と所得税法上の給与等が一致するとは限らない。 したがって,政治資金収支報告書において人件費が公表されているか らといって,所得税法上の給与等の支払事実の有無が公になっていると は言えない。 (2 )正当な利益を害するおそれがあるか ア 給与支払事務所の有無について 所得税法上の給与支払事務所は,上記(1 )アのとおり,政治資金規 正法上の政治団体の主たる事務所の所在地とは必ずしも一致しない。し たがって,本件存否情報を明らかにした場合,政治資金規正法上公表が 予定されている範囲を超えて当該政治団体の活動状況を示すことになり, 主たる事務所とは別に給与支払事務所を設け,これをあえて公にしていな い政治団体においては,本件存否情報が公にされることにより当該政治団 体の活動に支障を生じさせる可能性を否定することはできないことから, 当該政治団体の正当な利益を害するおそれがあるものと考えられる。 イ 給与等の支払事実の有無について 政治資金規正法に規定する「人件費」は,上記(1 )イのとおり,所 得税法上の「給与等」とは必ずしも一致しない。したがって,本件存否 情報を明らかにした場合,政治資金規正法上公表が予定されている範囲 を超えて当該政治団体の活動状況を示すことになり,他の政治団体職員

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が事務を行ったことに対する負担金など所得税法上の給与等に該当しな い支出を政治資金収支報告書に人件費として記載している場合において は,本件存否情報が公にされることにより誤解を与え当該政治団体の活 動に支障を生じさせる可能性を否定することはできないことから,当該政 治団体の正当な利益を害するおそれがあるものと考えられる。 2 結論 以上のことから,本件開示請求については,本件対象文書の存否を答える だけで,「給与支払事務所の有無」及び「給与等の支払事実の有無」を明ら かにすることになり,法5 条2 号イの不開示情報を開示することになるため, 法8 条に基づき,本件対象文書の存否を明らかにせず,開示請求を拒否した 原処分は妥当であると判断する。 第4 調査審議の経過 当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。 ① 平成2 1 年3 月2 4 日 諮問の受理 ② 同日 諮問庁から理由説明書を収受 ③ 同年4 月2 1 日 審査請求人から意見書を収受 ④ 同年1 2 月1 0 日 審議 ⑤ 平成2 2 年2 月2 5 日 審議 第5 審査会の判断の理由 1 本件対象文書について 本件対象文書は,特定4 団体の給与支払事務所等の開設届出書である。 国内において給与支払事務所を設けた者は,所得税法2 3 0 条の規定によ り,所定の事項を記載した本件届出書を当該事務所の所在地の所轄税務署長 に提出する義務がある。特定4 団体においても,給与支払事務所を設置した 場合には,この規定に基づき,本件届出書を当該事務所の所在地の所轄税務 署長に提出すべき義務が生じることとなる。 処分庁は,特定4 団体の給与支払事務所の有無は,当該団体に関する情 報であって,公にすることにより,当該団体の権利,競争上の地位その他正当 な利益を害するおそれがあり,法5 条2 号イの不開示情報に該当するとして, 法8 条に基づきその存否を明らかにしないで開示請求を拒否しており,諮問庁 も原処分を相当であるとするので,検討する。 2 本件対象文書の存否を答えるだけで開示することとなる不開示情報につい て (1 )本件対象文書の存否自体について 処分庁における本件対象文書の有無については,特定4 団体の本件届出 書の提出との関係で,①給与支払事務所を設けて本件届出書の提出義務 が生じ,この義務を履行して提出されている場合,②給与支払事務所を設

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けて本件届出書の提出義務が生じているにもかかわらず,この義務を履行 しておらず提出されていない場合,③給与支払事務所を設けていない(給 与支払事務が生じていない)ため,本件届出書の提出義務が生じておらず, 提出されていない場合及び④給与支払事務所を設けていない(給与支払事 務が生じていない)にもかかわらず,何らかの理由で本件届出書が提出さ れている場合という4 通りの場合が考えられる。これらの場合について,そ れぞれ特定4 団体の正当な利益を害するおそれが生じるかについて検討 すると,次のとおりである。 ア 特定4 団体に本件届出書の提出義務が生じており,特定4 団体がこの 義務を履行している場合は,本件届出書が存在する事実が明らかになっ ても,特定4 団体が所得税法2 3 0 条等に基づく納税者としての義務を 履行したことが明らかになるまでであって,その事実が明らかになること により法5 条2 号イ所定の正当な利益が害されるということは考えられな い。 イ 特定4 団体に本件届出書の提出義務が生じているにもかかわらず,こ の義務を履行していない場合は,本件届出書が存在しない事実が明らか になることによって,上記義務を履行していないことが明らかになったとし ても,それは特定4 団体が所得税法2 3 0 条所定の義務に違反した結果 であって,そのことによる不利益は受忍すべきものであり,正当な利益を 害されたものとは言えない。 ウ 特定4 団体が給与支払事務所を設けていない(給与支払事務が生じて いない)ため,本件届出書を提出していない場合は,本件届出書が存在 しない事実が明らかになったとしても,法5 条2 号イ所定の正当な利益 が害されるということは考えられない。 エ 特定4 団体が給与支払事務所を設けていない(給与支払事務が生じ ていない)にもかかわらず,何らかの理由で本件届出書を提出している 場合は,本件届出書が存在する事実が明らかになることによって,本件 届出書を提出したことが明らかになっても,それは特定4 団体が提出義 務のない本件届出書を提出した結果であって,正当な利益を害されたも のとは言えない。 (2 )本件対象文書の存否が明らかになることによる本件存否情報について 諮問庁は,給与支払事務所が政治団体の主たる事務所の所在地とは必 ずしも一致しないこと及び政治資金規正法上の人件費が所得税法上の給 与等とは必ずしも一致しないことを理由に,本件対象文書の存否を明らかに することにより,本件存否情報が開示され公にされることになり,特定4 団 体の活動に支障を生じさせる可能性を否定することはできないとして,当該 政治団体の正当な利益を害するおそれがある旨説明する。

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しかしながら,法5 条2 号イ所定の「害するおそれ」は,単なる抽象的, 確率的な可能性ではなく,法的保護に値するがい然性を要するものである ところ,諮問庁の説明自体が特定4 団体の活動に支障を生じさせる可能性 を否定することはできないというもので,抽象的に低度の可能性を言うにす ぎない上,仮に本件対象文書の存否を明らかにすることにより,本件存否情 報が明らかとなった結果,特定4 団体について,給与支払事務所が政治団 体の主たる事務所の所在地と一致しないこと又は政治資金規正法上の人 件費が所得税法上の給与等と一致しないことが,明らかになったとしても, その一致しない理由については,特定4 団体が自ら容易に説明できることで あって,この一致しないということが明らかになることが,直ちに特定4 団体 の正当な利益を害するおそれがあることにはならない。 (3 )以上のことから,本件対象文書の存否を明らかにすることにより公となる, 特定4 団体が本件届出書を提出した事実の有無,給与支払事務所の存在 の有無及び給与等の支払事実の有無は,法5 条2 号イの不開示情報には 当たらない。 3 本件不開示決定の妥当性について 以上のことから,本件対象文書につき,その存否を答えるだけで開示するこ ととなる情報は法5 条2 号イに該当するとして,その存否を明らかにしないで 開示請求を拒否した決定については,当該情報は同号イに該当せず,本件対 象文書の存否を明らかにして改めて開示決定等をすべきであることから,取り 消すべきであると判断した。 (第4 部会) 委員 西田美昭,委員 園 マリ,委員 藤原静雄

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