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しておかなければなりません また 税率が 10% にアップした際の施行日前後の実務対応を再チェックする際の参考にもなると思います 第 Ⅲ 章は 今回の税率アップに伴い講じられた経過措置の内容と実務上の留意点を解説していますが これからしばらくの間はこの経過措置の適用取引が続きます 旧税率適用分の取引

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は じ め に

 消費税では、平成 26 年 4 月 1 日以後に行われる課税資産の譲渡等から、原則として新税 率 8% が適用されています。しかし、一方で税率アップに伴う様々な経過措置が講じられており、 平成 26 年 4 月 1 日以後に行われる取引でも、旧税率 5% が適用されるものが少なくありません。  その結果、これからしばらくの間は旧税率適用対象取引と新税率適用対象取引が混在するこ とになり、平成 26 年 4 月 1 日以後に行われる取引が旧税率適用なのか新税率適用なのかを正 しく把握し、明確に区分集計する必要が生じ、税率アップに伴う実務対応はかなり混乱すること が予想されます。  税率アップに伴い、消費税の申告書及び付表の様式も一新されています。従来の様式ですと、 地方消費税の額は、直接申告書の記入をして答が出ました。しかし、旧税率対象取引と新税率 対象取引が混在する場合は、申告書の記入欄では答がでません。新税率適用分は、地方消費 税の税率も 100 分の 25 から 67 分の 13 に改正されているので、新様式の付表で旧税率適用 分と新税率適用分に分けて計算し、それを合計した金額をその付表から申告書に転記すること になります。この点に限らず、旧税率適用分と新税率適用分が混在する場合の新様式の申告書 及び付表の記入はかなり複雑になります。  そこで、本書では、これから使用しなければならない新様式の申告書及び付表の作成方法を 中心に解説することにしました。  本書は、次の 5 つの章で構成されています。  第Ⅰ章 申告書作成のための基礎知識  第Ⅱ章 税率アップに伴う実務対応  第Ⅲ章 税率アップに伴う経過措置  第Ⅳ章 申告書及び付表の作成方法  第Ⅴ章 総合演習  これらのうち、まず第Ⅰ章は、課税標準額に対する消費税額の特例計算の説明など、申告書 及び付表を作成するために、知っておかなければならない基礎知識、再確認していただきたい 重要事項の解説をしています。第Ⅳ章を読む前に本章の内容を確認してください。  第Ⅱ章は、税率アップ前後の取引や短期前払費用の取扱いなど、今回の税率アップの施行 日(平成 26 年 4 月 1 日)を前提にした解説が中心となりますが、それが直ちに影響を受けた 3 月決算法人だけではなく、これから決算申告を迎える 6 月、9 月、12 月決算法人なども確認

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しておかなければなりません。また、税率が 10% にアップした際の施行日前後の実務対応を再 チェックする際の参考にもなると思います。  第Ⅲ章は、今回の税率アップに伴い講じられた経過措置の内容と実務上の留意点を解説して いますが、これからしばらくの間はこの経過措置の適用取引が続きます。旧税率適用分の取引 が様々な経過措置のどれに該当するのか確認してください。また、税率が 10% にアップする場 合を想定しその経過措置も講じられていますが、その際は、今回の税率アップに伴い定められた 指定日(平成 25 年 10 月 1 日)と施行日(平成 26 年 4 月 1 日)を新たに定められ指定日と 施行日の日(予定どおり平成 27 年 10 月 1 日以後の課税資産の譲渡等から 10% の税率適用 になった場合は指定日が平成 27 年 4 月 1 日、施行日が平成 27 年 10 月 1 日となります。)に 置き換えるだけで、経過措置の内容は今回のものと同じです。このことは、本章の終わりの部分 で解説していますので参考にしてください。  本書のメインは、第Ⅳ章と第Ⅴ章です。第Ⅳ章では、新様式の申告書及び付表の記載要領 を中心に、その作成方法を解説しています。本章で、それぞれの記入欄に何を(どのような金 額を)記入するのか、申告書と付表の関係などを確認した上で、第Ⅴ章の総合演習の事例に基 づいた記入例でその記入手順を習得してください。  申告書作成ソフトを使用している場合は、申告書作成のためのデータを正しく入力すれば、コ ンピュータが自動的に申告書及び付表を作成してくれるのでしょうが、複雑な新様式の申告書 及び付表を初めて作成する場合は、一度は、作成方法を習得なさった知識で申告書及び付表 を手書きで作成したものと突合するなどの対応をして、正しい消費税の申告に努めるべきだと思 います。そのためにも本書をご利用ください。  本書が、実務家である税理士、公認会計士の先生方及び消費税申告実務の現場を担当なさ る企業の経理担当者や会計事務所等の職員の方々のお役に少しでも立てれば、これに過ぎたる 喜びはありません。  最後になりましたが、本書上梓にあたってお世話になりました税務研究会出版局の堀直人氏 に厚くお礼を申し上げます。    平成 26 年 5 月          

小 池 敏 範

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目  次  

第Ⅰ章 申告書作成のための基礎知識

1 課税標準額に対する消費税額… ……… 2 (1) 課税標準(申告書の①欄)… ……… 2 ① 原 則……… 2 ② みなし譲渡等……… 2 ③ 対価の返還等(申告書の⑤欄)… ……… 2 (2) 課税標準額に対する消費税額(申告書の②欄)……… 3 ① 原 則……… 3 ② 特 例……… 3 2 控除過大調整税額(申告書③欄)… ……… 4 (1) 課税売上割合が著しく変動した場合の控除税額の調整……… 4 (2) 調整対象固定資産を転用した場合の控除税額の調整… ……… 5 (3) 控除過大調整税額が生じる場合… ……… 5 3 貸倒回収に係る消費税額(申告書の③欄)……… 6 (1) 貸倒れに係る税額控除後に貸倒回収があった場合… ……… 6 (2) 貸倒回収に係る消費税額の調整… ……… 6 4 控除対象仕入税額(申告書の④欄)… ……… 6 (1) 原則計算……… 6 ① 計算の概要……… 6 ② 課税売上割合が 95% 以上で課税売上高が 5 億円以下である場合… …… 7 ③ 課税売上割合……… 8 ④ 課税売上割合が 95% 未満又は課税売上高が 5 億円超の場合… ………… 8 (2) 簡易課税制度… ……… 9 ① 制度の概要……… 9 ② 事業区分とみなし仕入率……… 9 ③ 2 種類以上の事業を営む事業者の場合の計算… ……… 10 5 貸倒れに係る税額(申告書の⑥欄)… ……… 11 (1) 控除税額の概要… ……… 11 (2) 相手方の事実… ……… 11

第Ⅱ章 税率アップに伴う実務対応

1 施行日以後しばらくの間の取引の税率適用上の留意点… ……… 14 (1) 資産の譲渡等の時期の原則と特例… ……… 14

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① 資産の譲渡等の時期の原則……… 14 ② 資産の譲渡等の時期の特例……… 14 ③ 小規模事業者の資産譲渡等の時期等の特例……… 14 (2) 控除時期の原則と特例……… 15 ① 控除時期の原則……… 15 ② 未成工事支出金……… 15 ③ 建設仮勘定……… 16 (3) 請求書の締日が月の途中の場合… ……… 16 (4) 売上側と仕入側とで引渡日の認識が異なる場合… ……… 17 (5) 施行日をまたぐ期間の資産の賃貸借契約に基づく賃料の場合……… 19 (6) 対価の額が未確定の場合……… 20 (7) 経過措置の対象とならないメンテナンス等の役務提供……… 20 (8) 施行日後に税率アップの 3% 消費税分の追加請求した場合… ……… 22 (9) リース取引に係る税額控除… ……… 23 ① 所有権移転外ファイナンス・リース取引……… 23 ② オペレーティング・リース取引……… 24 ③ 賃借人と賃貸人とでリース取引の認識が異なる場合……… 24 (10)出来高検収書に基づき支払った工事代金の仕入税額控除… ……… 24 (11)経過措置の適用を受けない雑誌の年間購読料… ……… 25 (12)消費税を転嫁した 1 年分の税込賃貸料を収受する場合… ……… 26 (13)短期前払費用の取扱い……… 27 (14)平成 26 年 4 月 1 日以降の売上げに係る対価の返還等……… 31 (15)平成 26 年 4 月 1 日以降の仕入れに係る対価の返還等……… 32 2 旧税率適用分と新税率適用分の区分集計……… 33 (1) 5% 税率適用分と 8% 税率適用分の区分集計……… 33 ① 課税標準額に対する消費税額の計算に必要な区分集計……… 33 ② 控除対象仕入税額の計算に必要な区分集計……… 33 ③ その他の控除税額の計算に必要な区分集計……… 34  イ 簡易課税制度における控除対象仕入税額……… 34  ロ 返還等対価に係る税額……… 34  ハ 貸倒れに係る税額……… 34 (2) 区分集計した額の消費税申告書及び付表への記入… ……… 35

第Ⅲ章 税率アップに伴う経過措置

1 税率が8% にアップされたことに伴う経過措置……… 38

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(1) 旅客運賃等……… 38 (2) 公共料金等……… 39 (3) 工事等の請負… ……… 41 ① 経過措置の概要……… 41 ② 経過措置の対象となる「工事等の請負」の具体的範囲……… 42 ③ この経過措置の適用に当たっての留意点……… 45 (4) 資産の貸付け……… 47 ① 経過措置の概要……… 47 ② リース取引……… 48  イ ファイナンス・リースとオペレーティング・リース……… 48  ロ 所有権移転外ファイナンス・リースの税率適用……… 48  ハ オペレーティング・リースの税率適用……… 49 ③ 不動産の貸付け……… 49 (5) 前払式特定取引に該当する役務提供… ……… 52 (6) 長期割賦販売等……… 53 (7) 工事進行基準を適用する工事の請負… ……… 53 (8) 小規模事業者に対する経過措置… ……… 54 (9) その他政令に規定する経過措置… ……… 54 ① 予約販売に係る書籍等……… 54 ② 特定新聞……… 54 ③ 通信販売……… 55 ④ 有料老人ホームの入居一時金……… 56 2 税率10%に伴う経過措置… ……… 56 (1) 税率の再引上げ……… 56 (2) 8% から 10% にアップされる際の予定されている経過措置… ……… 56

第Ⅳ章 申告書及び付表の作成方法

1 税率アップ後の新様式の申告書・付表……… 60 (1) 消費税等の申告書……… 60 ① 地方消費税額の計算欄……… 60 ②「地方消費税の課税標準となる消費税額」欄の新設……… 60 (2) 各種付表……… 61 ① 付表 2「課税売上割合・控除対象仕入税額の計算表」… ……… 61 ② 付表 1… ……… 61 ③ 付表 2−(2)… ……… 61

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④ 付表 4……… 62 ⑤ 付表 5−(2)… ……… 62 2 税率アップ後の申告書と付表との関係… ……… 63 【一般用申告書と関係付表】……… 63 (1) 新税率適用取引のみの課税期間の場合… ……… 63 (2) 旧税率適用取引が含まれる課税期間の場合… ……… 63 ① 付表 1 と申告書……… 63 ② 付表 2−(2)と付表 1……… 64 ③ 付表 2−(2)と申告書……… 64 【簡易課税用申告書と関係付表】……… 64 (1) 新税率適用取引のみの課税期間の場合… ……… 64 ① 申告書から付表 5 への転記……… 64 ② 付表 5 から申告書への転記……… 64 (2) 旧税率適用取引が含まれる課税期間の場合… ……… 65 ① 付表 4 と申告書……… 65 ② 付表 4 と付表 5−(2)……… 65 3 申告書及び付表の作成要領… ……… 66 (1) 消費税申告書(一般用)… ……… 66 (2) 付表 1……… 73 (3) 付表 2−(2)……… 78 (4) 付表 2……… 84 (5) 消費税申告書(簡易課税用)……… 88 (6) 付表 4……… 94 (7) 付表 5−(2)……… 99 (8) 付表 5……… 105 (9) 消費税の還付申告に関する明細書(法人用)……… 108

第Ⅴ章 総合演習

演習1 基本的な事例に基づく記入演習(一般用)……… 114 演習2 複雑な事例に基づく記入演習(一般用)……… 126 演習3 基本的な事例に基づく記入演習(簡易課税用)……… 140 演習4 複雑な事例に基づく記入演習(簡易課税用)……… 154 演習5 還付申告事例の記入演習……… 168

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第Ⅰ章 申告書作成のための基礎知識

申告書作成のための

基礎知識

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1 課税標準額に対する消費税額

(1) 課税標準(申告書の①欄) ① 原 則  資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として 収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外のもの若しくは権利その他の経済的な利 益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額等を含まない、いわゆる税抜 きの額。)となる(消法 28 ①)。 ② みなし譲渡等  次に掲げる行為は、事業として対価を得て行われた資産の譲渡等とみなされるが、この 場合は、それぞれの資産の価額に相当する金額を対価の額とみなすことになっている(消 法 4 ④、28 ②)。 イ 個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事 のために消費し、又は使用した場合における当該消費又は使用 ロ 法人が資産をその役員(法人税法第 2 条第 15 号に規定する役員をいう。)に対して 贈与した場合における当該贈与  なお、法人が資産を役員に譲渡した場合において、その対価の額が当該譲渡の時におけ る当該資産の価額に比し著しく低いとき(通常他に販売する価額のおおむね 50% に相当す る額に満たない場合)は、その価額に相当する金額をその対価の額とみなすことになる(消 法 28 ①後段)。 ③ 対価の返還等(申告書の⑤欄)  売上について返品を受け、値引き、割戻し(売上げに係る対価の返還等という。)をした ときは、その税込対価の返還等の額に 108 分の 6.3(旧税率の場合は 105 分の 4)を乗 じた金額を売上げに係る消費税額から控除するのが原則である(消法 38 ①)。 (注) 事業者が販売促進の目的で販売奨励金等の対象とされる課税資産の販売数量、販 売高等に応じて取引先(課税資産の販売の直接の相手方としての卸売業者等のほか その販売先である小売業者等の取引関係者を含む。)に対して支払う販売奨励金等は、

申告書作成のための

基礎知識

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第Ⅰ章 申告書作成のための基礎知識

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売上げに係る対価の返還等に該当する(消基通 14−1−2)。協同組合等が組合員等 に支払う事業分量配当金も同様である(消基通 14−1−3)。また、課税資産の譲渡 等の対価をその支払期日よりも前に支払いを受けたこと等を基因として支払う売上割引 も、売上げに係る対価の返還等に該当する(消基通 14−1−4)。  ただし、事業者が課税資産の譲渡等につき返品を受け、又は値引き若しくは割戻しをし た場合に、当初の売上額から返品額又は値引額若しくは割戻額を控除し、その控除後の 金額をその課税資産の譲渡等に係る対価の額とする経理処理を継続して行っているときは、 この処理が認められる(消基通 10−1−15、14−1−8)。つまり、この場合は、当該売上 に係る対価の返還等の額控除後の税抜純売上額が課税標準額となり、消費税申告書の「返 還等対価に係る税額⑤」欄に記入すべき金額はなくなることになる。 (2) 課税標準額に対する消費税額(申告書の②欄) ① 原 則  課税標準額に対する消費税額は、原則として次のように計算する。 税込売上高の合計  ×100108 =  課税標準額 (1,000 円未満端数切捨て) 課税標準額 ×6.3% =  課税標準額に対する消費税額 (注) 平成 26 年 3 月 31 日までの課税資産の譲渡等については、上記の分数式の 108 が 105 に、税率の 6.3% が 4%となる。 ② 特 例  課税標準額に対する消費税額については、上記の原則計算に対して、次の特例計算も 認められている。  具体的には、事業者間取引にみられるような本体税抜価格と消費税額等を区分して領収 する場合、又は小売業者等にみられるような税込価格を基礎として計算した決算上受領す べき金額を領収する場合において、その消費税額等に相当する金額の 1 円未満の端数を 処理し、それを相手方に明示したときは、平成 15 年度の税制改正に伴う経過措置として、 次の算式に示すように計算することができることになっている(平 15.9.30 財務省令第 92 号附則第 2 条)。 領収するごとに本体税抜価格又 は税込価格と区分した 1 円未 満の端数を処理した後の消費税 額等の課税期間中の合計額 ×80% =  課税標準額に対する消費税額

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 なお、価格表示について総額表示義務の対象となっている事業者は、本来、税抜価格 の表示は認められていなかったので上記の特例計算の適用ができなかったが、平成 25 年 10 月 1 日から施行されている消費税転嫁対策特別措置法第 10 条第 1 項の規定により、 消費者等に対して税込価格であると誤認されないための措置(誤認防止措置)を講じてい るときに限り、この法律が失効する平成 29 年 3 月 31 日までは、税抜価格の表示が認め られることになった。これに伴って、新たに税抜価格の表示が認められることとなった事業 者が、税抜価格の表示をして請求又は領収段階で消費税等の額を上乗せしても、当分の間、 この特例計算が適用できることになった(平 25.5.31 財務省令第 37 号)。 (注) 平成 26 年 4 月 1 日以後の課税資産の譲渡等から、適用税率が 5%(うち地方消 費税の税率は 1% 相当)から 8%(うち国税の税率は 6.3%、地方消費税の税率は 1.7% 相当)に引上げられているので、平成 26 年 3 月 31 日までの課税資産の譲渡等は上 記の算式により計算し、平成 26 年 4 月 1 日以後の課税資産の譲渡等は、上記の特 例計算は次のようになる。 領収するごとに税抜本体価格又 は税込価格と区分した 1 円未 満の端数を処理した後の消費税 額等の課税期間中の合計額 × 6380 =  課税標準額に対する消費税額

2 控除過大調整税額(申告書③欄)

(1) 課税売上割合が著しく変動した場合の控除税額の調整  事業者(免税事業者を除く。)が、国内において調整対象固定資産の課税仕入れを行い、 又は調整対象資産に該当する課税貨物を保税地域から引き取り、かつ、課税売上割合が 95% 未満又は課税売上高が 5 億円超としてプロラタ(比例配分)により控除税額を計算し ている場合(課税売上割合が 95% 以上で課税売上高が 5 億円以下としてその調整対象 固定資産に係る課税仕入れ等の全額が控除された場合も含む。)に、その事業者が、仕入 れ等の課税期間の開始から 3 年を経過する日の属する課税期間(第 3 年度の課税期間) の末日において保有し、かつ、第 3 年度の課税期間における通算課税売上割合が仕入れ 等の課税期間の課税売上割合に対して著しく変動したときは、第 3 年度の課税期間におい て仕入れに係る消費税額を加減算する方法により調整することになっている(消法 33 ①)。 (注) この調整計算の対象となる固定資産を、減価償却資産を含めて「調整対象固定資 産」といい、その範囲は次の表のとおりで、一の取引単位で課税仕入れに係る支払対

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第Ⅰ章 申告書作成のための基礎知識

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価の額が 100 万円(税抜き)以上のものである(消法 2 ①十六、消令 5、消基通 12−2−1)。なお、本書の性格上、この制度の詳細な説明は割愛させていただく。 (2) 調整対象固定資産を転用した場合の控除税額の調整  事業者(免税事業者を除く。)が、国内において調整対象固定資産の課税仕入れを行い、 又は調整対象固定資産に該当する課税貨物の引取りを行い、かつ、その課税仕入れ又は その課税貨物に係る課税仕入れ等の税額につき課税資産の譲渡等にのみ要するものとして 個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算した場合において、その事業者が、その 調整対象固定資産を仕入れた日から 3 年以内に課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に 係る業務(いわゆる非課税業務)の用に転用したときは、また、逆に非課税業務用を課税 業務用に転用したときは、一定の消費税額は転用した日の属する課税期間の仕入れに係る 消費税額を加減する方法により調整することになっている(消法 34、35)。 (注) 本書の性格上、この制度の詳細な説明は割愛させていただく。 (3) 控除過大調整税額が生じる場合  通常の課税仕入れ等の税額に上記(1)の加減算する金額と(2)の加減算する金額 を調整した後の金額がマイナスとなった場合には、そのマイナスとなった金額が控除過大調 有形固定資産 建物及びその付属設備、構築物、機械及び装置、船舶、航空機、車両及び運搬具、工具、器具及び備品 無 形 固 定 資 産 物権的財産権 鉱業権、漁業権、ダム使用権、水利権 工業的所有権 特許権、実用新案権、意匠権、商標権 育成者権 育成者権 公共施設等運営権 公共施設等運営権 営業権 営業権 利用権 専用側線利用権、鉄道軌道連絡通行施設利用権、電気ガス供給施設利用権、熱供給施設利用権、水道施設利用権、工業用水道 施設利用権、電気通信施設利用権 生 物 動物 牛馬など 果樹 かんきつ樹など 果樹以外の植物  茶樹など その他 ゴルフ場利用株式等 これらに準ずるもの 例えば、著作権、回路配置利用権、ノーハウ、預託金方式 のゴルフ会員権、書画、骨董など

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整税額である。なお、この控除過大調整税額は、次の3の「貸倒回収に係る消費税額」 を含めて、課税標準額に対する消費税額と同様に消費税額の納付額が増える要素となる。

3 貸倒回収に係る消費税額(申告書の③欄)

(1) 貸倒れに係る税額控除後に貸倒回収があった場合  下記5の貸倒れに係る税額の適用を受けた課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一 部の領収をしたときは、その領収をした税込価額に係る消費税額を課税資産の譲渡等に係 る消費税額とみなしてその事業者のその領収をした日の属する課税期間の課税標準に対す る消費税額に加算することになる(消法 39 ③)。 (2) 貸倒回収に係る消費税額の調整  貸倒回収に係る消費税額は、一般用の消費税申告書を使用する場合は上記2の調整税 額との合計額を「控除過大調整税額③」に記入することになり、簡易課税用の消費税を使 用する場合は直接「貸倒回収に係る消費税額③」に記入することになる。いずれにしても、 課税標準額に対する消費税額に加算する性格のものであるから、消費税額の納付額が増え る要素となる。  なお、簡易課税用の申告書を使用する場合に、この貸倒回収に係る消費税額は、簡易 課税制度のみなし仕入率を乗じる対象となる「控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費 税額」の計算にプラスの計算要素として含めることになる。

4 控除対象仕入税額(申告書の④欄)

(1) 原則計算 ① 計算の概要  課税標準額に対する消費税額から控除すべき「控除対象仕入税額」は、原則として、 課税仕入れに係る税込支払対価の額の合計額に 108 分の 6.3(平成 26 年 3 月 31 日ま での課税仕入れについては 105 分の 4)を乗じて計算する(消法 30 ①、⑥)が、課税 標準額に対する消費税額の計算について特例計算を認めている関係から、特例として次の 図のように求めることも認められている(平 16.2.19 法令解釈通達・課消 1−8 の 14)。

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第Ⅰ章 申告書作成のための基礎知識

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 なお、平成 26 年 3 月 31 日までの課税仕入れについては、80 分の 63 相当額は 80% 相当額で計算する。 ② 課税売上割合が 95% 以上で課税売上高が 5 億円以下である場合  消費税のしくみを理論的に考えた場合に、非課税売上げに対応する課税仕入れに係る消 費税は仕入税額控除できないこととなる。例えば、大法人は多くの社員寮を所有し、それ を従業員に低い賃料で貸しているが、その受け取る賃料は住宅家賃なので消費税は非課 税である。社員寮の水道光熱費、清掃用具等には消費税がかかり課税仕入れとなる。社 員寮が老朽化したため大幅な修理をした場合に、その修繕費にも消費税がかかる。これら の社員寮に関係する支払消費税は、本来的には非課税売上げに直接対応する課税仕入れ なので税額控除はできない性格のものである。  もっとも、大法人でも、営業収入を含めた全体の収入に対する寮収入など非課税収入の 割合は 1% にも満たないことが少なくない。このような場合まで、全体の支払消費税のうち 非課税売上げに直接対応するものを抜き出して仕入税額控除の計算を求めると、事務処理 が煩雑になる。非課税売上げは中小事業者にもあるので、特に中小事業者は大変である。  そこで、平成 23 年度の税制改正前までは、課税売上割合が 95% 以上の場合は、たと え課税仕入れに係る消費税額に非課税売上げに対応するものがあったとしても、上記①で 説明した課税仕入れに係る消費税額の全額を控除できることになっていた(消法 30 ①)。  しかし、先に述べたように、本来的に控除できない非課税売上げに直接対応する課税仕 入れが、課税売上割合が 95% 以上である大法人などで控除できている金額が多額に及ん でいるとの批判があり、この問題に対処するため、平成 23 年度の税制改正で、平成 24 年 4 月 1 日以後に開始する課税期間から、新たに当該課税期間の課税売上高が 5 億円を その消費税額等を合計した金額の 80 分の 63 相当額とする 課税仕入れ等に係る帳簿等により本 体価額と 1 円未満の端数を切捨て又 は四捨五入の方法により処理をした消 費税額等を区分する方法を継続的に 行っている場合には、その端数処理 後の消費税額等に相当する額を合計 した金額の 80 分の 63 相当額とする その請求書等で本体価額 と 1 円未満の端数を処理 した後の消費税額等が区 分領収するものとして別記 されているか 相手 か ら交付 を 受 け た 請求書等 (注)切上げの端数処理は認められない YES NO

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超える事業者も④で説明している控除税額の按分(プロラタ)計算を行わなければならなく なった。  ③ 課税売上割合  95% 以上であるかどうかの判定基準である「課税売上割合」は、次の算式により計算 することになっている(消法 30 ⑥、消令 48)。  この課税売上割合は、次の④の原則的な按分基準となるものでもあるが、この計算は意 外に複雑で、特に有価証券や金銭債権の譲渡等については、分母の計算において非課税 の対価の額が全額含まれるものと一部しか含まれないもの、また、全く含まれないものがあ るので注意が必要である。 その課税期間中の 課税売上げの額 + その課税期間中の非課税売上げの額   その課税期間中の課税売上げの額   課税売上割合 = (注) 1 上記の計算要素の文言は、条文上の文言を平易なものに置き換えている。 2 分母、分子ともに対価の返還等(返品、値引き、割戻し)分は控除して計算する。貸倒れ分は控除しない。 3 課税分の中には輸出免税分を含む。 4 税抜きの金額である。 ④ 課税売上割合が 95% 未満又は課税売上高が 5 億円超の場合  当該課税期間の課税売上割合が 95% 未満である場合、又は当該課税期間の課税売上 高が 5 億円を超える場合には、課税売上げに対応する課税仕入れの税額を抽出する(プ ロラタ)計算を行うことになるが、この場合に認められている計算方式は、次の二つである(消 法 30 ②)。この両方式のどちらかを選択して計算することになるが、注意したいのは、一 括比例配分方式によった場合は、この方式を 2 年間継続した後でなければ、個別対応方 式を適用することはできないというルールがあることである(消法 30 ⑤)。 (注) 本書の性格上、個別対応方式と一括比例配分方式の詳細な説明は割愛させていた だく。 個別対応 方  式 一括比例 配分方式 課税売上げ に対応する 仕入れ等の 消費税額 課税・非課 税に共通す る仕入れ等 の消費税額 課税売 上割合 控除税額 仕入れ等に係 る消費税額 税額控除方式 + × 課税売上割合 = 控除税額 × =

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第Ⅰ章 申告書作成のための基礎知識

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(2) 簡易課税制度 ① 制度の概要  基準期間の課税売上高が 5,000 万円以下の事業者は、実際の課税仕入れに係る消費 税額を税額控除するのに代えて、その課税期間の売上げに係る消費税額(課税標準額に 対する消費税額をいい、貸倒回収額に対する消費税額がある場合はそれを含む。)から、 その課税期間の売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残 額に、事業者の営む事業の区分に応じ、それぞれ次の②の表に掲げる「みなし仕入率」 を乗じて計算した金額を控除対象仕入税額とみなして計算する制度である(消法 37)。    〈計算式〉 納付税額 (年税額) Ⓐ 売上げに係 る消費税額−売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額 −(控除対象仕入税額)Ⓐ × みなし仕入率 = ② 事業区分とみなし仕入率  事業区分と該当業種、その適用するみなし仕入率をまとめてみると、次の表のようになる (消法 37 ①、消令①、⑤、⑥)。 (注) 平成 26 年度の税制改正により、金融・保険業が第 4 種事業から第 5 種事業に 変更し、第 5 種事業である不動産業を新たに第 6 種事業とし、そのみなし仕入率を 40%とすることになった。なお、この改正は、平成 27 年 4 月 1 日以後に開始する課 事業区分 該当する具体的な業種 みなし仕入率 第 1 種事業 卸売業(他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業) 90% 第 2 種事業 小売業(他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業で第 1 種事業以外のもの) 80% 第 3 種事業 農業、林業、漁業、鉱業、建設業、製造業(販売小売業を 含む)、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業 (注)1 第 1 種事業、第 2 種事業又は第 5 種事業に該当 するもの及び加工賃その他これに類する料金を対 価とする役務の提供を除く。    2 第 3 種事業の判定はおおむね日本標準産業分類 により判定する。第 5 種事業も同じ。 70% 第 4 種事業 第 1 種から第 3 種事業及び第 5 種事業以外の事業(例えば、飲食店業、金融・保険業等が該当する) 60% 第 5 種事業 不動産業、運輸通信業、サービス業(飲食店業を除く) 50%

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税期間から適用される。 ③ 2 種類以上の事業を営む事業者の場合の計算  1 種類の事業のみ(専業者)の場合は、控除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税 額にその専業者の事業のみなし仕入率を乗ずれば、簡単に控除対象仕入税額を求めること ができる。  問題は、2 種類以上の事業を営む事業者の場合の控除対象仕入税額の計算である。こ の場合のみなし仕入率の適用関係をまとめてみると、次の図のようになる(消令 57 ②、③、④)。  この図の「令 57 ③の特例計算の A」は、例えば、課税売上げの構成割合が第 1 種が 85%、第 3 種が 15% の場合に、第 1 種の一業種だけで全体の 75% 以上となるから、控 除対象仕入税額の計算の基礎となる消費税額全体に対して 90% のみなし仕入率を適用で きるということである。  この図の「令 57 ③の特例計算の B」は、1 種類の事業だけでは全体の課税売上高の 75% 以上にはならないが、2 種類の事業を合計すれば全体の 75% 以上になる場合で、例 えば、課税売上げの構成割合が第 1 種が 55%、第 2 種が 35%、第 4 種が 10%とする 2種類以 上の事業 を兼業し ているか 業種ごとに 課税売上高 を区分して いるか 2種類以上の事業を営む者で1 業 種 の 課 税 売 上 高 が 全 体 の 75%以上か 令57③の 特例計算 によるか その事業のみなし仕 入率 その事業者が行って いる事業のうちみな し仕入率が最も低い 事業のみなし仕入率 それぞれの事業ごと のみなし仕入率 全体についてその事 業のみなし仕入率 2種類のうちみなし 仕入率の高い事業部 分はその事業のみな し仕入率 その他の事業につい ては一括してその2 種類のうちの低い方 のみなし仕入率 YES YES NO NO NO (令57③の特例計算の A) (令57③の特例計算の B) ① ② ③ ④ ⑤ YES YES YES YES NO 3種類以上の事業を営む者で2 業種の課税売上高の合計額が 全体の 75%以上

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第Ⅰ章 申告書作成のための基礎知識

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と、第 1 種と第 2 種を合計すれば全体の 75% 以上となるので、第 1 種の売上部分は単 独で 90% のみなし仕入率を適用、あとの第 2 種と第 4 種の売上高を合計したものについ ては 80% のみなし仕入率を適用できるというものである。  もっとも、これらの特例は、事業者にとって計算が有利な(控除対象仕入税額が多くな る)場合に適用するものであるから、課税売上げの構成割合から不利な場合は、原則どお り、前ページ図の③によってそれぞれの事業ごとのみなし仕入率をそれぞれの売上高に乗 じて控除税額を計算することになる。  なお、前ページ図の②であるが、2 種類以上の事業を営んでいる場合でも、業種ごとに 課税売上高を区分していないときは、その事業者が行っている事業のうちみなし仕入率が 最も低い事業のみなし仕入率を全ての事業について適用することになる(消令 57 ④)ので、 注意を要する。

5 貸倒れに係る税額(申告書の⑥欄)

(1) 控除税額の概要  事業者(免税事業者を除く。)が国内において課税資産の譲渡等を行った場合において、 その課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権につき、次の(2)に掲げ る事実が生じたため、その課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収をすること ができなくなったときは、その領収することができないこととなった日の属する課税期間の課 税標準額に対する消費税額から、その領収をすることができなくなった課税資産の譲渡等 の税込価額に 105 分の 4(平成 26 年 4 月 1 日以後に行った課税資産の譲渡等に係るも のは 108 分の 6.3)を乗じて算出した金額の合計額を控除することになる(消法 39 ①)。 (2) 相手方の事実  上記(1)の控除が認められる相手方の事実とは、次の場合をいう(消法 39 ①、消令 59、消規 18)。  ① 更生計画認可の決定により債権の切捨てがあったこと。  ② 再生計画認可の決定により債権の切捨てがあったこと。  ③ 特別清算に係る協定の認可の決定により債権の切捨てがあったこと。  ④ 債権に係る債務者の財産の状況、支払能力等からみてその債務者が債務の全額を 弁済できないことが明らかであること。

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   ⑤ 法令の規定による整理手続きによらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより 債権の切捨てがあったこと。   イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの   ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により 締結された契約でその内容がイに準ずるもの    ⑥ 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その債務を弁済できないと認められ る場合において、その債務者に対し書面により債務の免除を行ったこと。    ⑦ 債務者について次に掲げる事実が生じた場合において、その債務者に対して有する 債権につき、事業者がその債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして経理 したこと。   イ 継続的な取引を行っていた債務者につきその資産の状況、支払能力等が悪化し たことにより、その債務者との取引を停止した時(債務の弁済期又は最後の弁済の 時が当該取引を停止した時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後 1 年以上経過した場合(当該債権について担保物がある場合を除く。)   ロ 事業者が同一地域の債務者について有するその債権の総額がその取立てのため に要する旅費その他の費用に満たない場合において、その債務者に対し支払を督促 したにもかかわらず弁済がないとき

参照

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