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平成 26 年度障害者健康増進事業調査結果報告 仙台市の身体障害者における健康診査結果の 年度推移 - 身体障害者健康診査結果と国民健康 栄養調査結果との比較 - 後藤貴浩 秋葉幸恵 小堺幸 金子光宏 ( 仙台市障害者総合支援センター )

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≪平成

26 年度障害者健康増進事業調査結果報告≫

仙台市の身体障害者における健康診査結果の

年度推移

-身体障害者健康診査結果と国民健康・栄養調査結果との比較-

後藤貴浩・秋葉幸恵・小堺 幸・金子光宏 (仙台市障害者総合支援センター)

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仙台市の身体障害者における健康診査結果の年度推移

-身体障害者健康診査結果と国民健康・栄養調査結果との比較- 後藤貴浩・秋葉幸恵・小堺 幸・金子光宏 (仙台市障害者総合支援センター) 【要旨】 仙台市の身体障害者の健康状況を把握するため,身体障害者健康診査の結果を集計し,その経年推移 の把握と国民健康・栄養調査の結果との比較を行った。健診結果から総合指導率および肥満率,平均収 縮期(最高)血圧,高血圧率,脂質異常率,糖尿病(疑)率等を算出し,国民健康・栄養調査の結果と の比較および年度ごと等で群分けし,比較を行った。結果,指導率の経年の上昇,肥満率の上昇,高血 圧率の上昇が認められ,要因として震災や高齢化などが示唆された。今後は運動機会の提供や栄養管理 等に着手していく必要があると考えられた。(249 文字) Key word:障害者健康増進,身体障害者健康診査,国民健康・栄養調査

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はじめに 仙台市(以下,本市)では,平成16 年度より障害者更生相談所(現・障害者総合支援センター,以下, 当センター)を中心に「障害者健康増進事業(以下,本事業)」に取り組んできた。平成25 年度までの 事業進捗の中で整理がなされ,現在当センターが担う役割は,「障害者の健康を維持・増進する環境づく りを推進するための探索的調査・研究」であるとした。そこで,当センター事業担当者は図 1 のように 障害者の健康維持・増進に係る諸要因を整理した。すなわち,健康とは主観的健康と客観的健康から構 成され,かつ「運動」,「休養」,「栄養」の3 要因から影響を受けて成立しており,それぞれの要因は個 人的因子,環境的因子から構成されるというものである。平成25 年度の本事業の整理を受け,平成 26 年度からはこの図1 に示される諸要因の各影響関係を調査し,健康に関与する各要因の関係図(障害者 健康増進モデル)を創設することを長期的目標とした。 図 1 障害者の健康概念図 そこで今回我々は,上記目標に則り,図 1 の特に「客観的健康」の側面に焦点化した検討を行った。 客観的健康とは,ここでは「理学,生化学的方法等によって客観的に観察可能で数値等で表現できる健 康指標」と定義し,具体的には一般的な健康診断等で実施される項目とした。障害者健康増進事業を推 進していく中で,主観的健康だけでなく,客観的健康も何らかの変化を示すと予測される。そのため客 観的健康の調査は事業進捗の評価指標と言う観点からも非常に意義深いと言える。本市では常時車いす を使用する身体障害のある方に対して,褥瘡,筋肉の硬直,排尿障害などの二次障害を予防するため「身 体障害者健康診査」を行っている。ここで得られた各種健康診査の結果をまとめ,年度推移を把握する ことで仙台市内の身体障害者の健康状態を把握するのみならず,今後の事業進捗の方針を検討する資料 として,非常に有意義なものとなり得る。過去の文献では田原ら(1992)は脳性麻痺等の重症心身障害 者の身体測定から健常者と比してBMI が低値である旨述べている。一方で伊藤(2014)による仙台市内 の障害福祉施設等を対象とした調査では,施設利用者が「太り過ぎ」であると認識している施設が80% 以上にのぼることを示している。後藤ら(2015)は障害種別ごとに健康課題が異なることを示した上で, 主に身体障害者が利用する施設の職員が最も多いと認識している利用者の健康課題は「間接の拘縮や痛 み」であり,主に知的や精神障害者が利用する施設の職員が最も多いと認識している利用者の健康課題 は「肥満」や「低体力」であると述べている。田原ら(1992)の論文は 20 年以上前の調査であり,かつ

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若年者(平均年齢が男性16.4 歳,女性 17.9 歳)を対象にした調査であり,やや偏りがある。一方,伊藤 (2014)および後藤ら(2015)の調査も施設職員による主観的報告が元となっており,厳密な意味での 客観的健康指標とは言い難い。但し,後藤ら(2015)による“健康課題が障害種別ごとに異なる”とい う示唆は重要であると思われる。つまり客観的健康の指標をまとめる上では,障害種別ごとに調査すべ きであるという示唆が得られる。この点から言えば,仙台市が行っている身体障害者健康診査の結果を まとめることは「障害種別ごと」という点で非常に理に適っていると言える。一方,まとめた上での「比 較対象群」としては,「他の障害(身体障害以外)」という観点も重要だが,「障害者の健康増進を図る上 でのバリアを明確化する」という観点から考えれば,「健常者との比較」が重要であると言える。厚生労 働省は健康増進法に基づき,毎年国民の身体状況,栄養素等摂取量及び生活習慣の状況を明らかにする ために「国民健康・栄養調査」を行っている。健常者との比較をする上で参考になる指標と言える。 以上の過去文献や資料から示唆を得た上で,本調査の目的は本市内の身体障害者の客観的健康指標を まとめ,現状把握と今後の事業方針の示唆を得るために,仙台市身体障害者健康診査の健診データを年 度ごとにまとめ,経年推移と年度ごとの変化をみること,更に厚生労働省が実施した国民健康・栄養調 査の結果と比較して考察することとした。 方法 平成20 年から平成 25 年までの間に仙台市の身体障害者健康診査を利用し,健診結果を記載する個票 データを主管課である障害者支援課に返送した者延べ159 名を対象とした。全てのデータは障害者支援 課担当者に依頼し,所定の手続きを踏んだ上で借り受け,個人情報保護の観点から障害者総合支援セン ター内の施錠可能な個室内にて保管し,データの集計が終了次第早急に返却した。本市で実施している 身体障害者健康診査事業の概要は,脊椎損傷,脳性麻痺,脳血管障害などに起因する身体上の障害のた め身体障害者手帳を所持している者を対象とし,諸条件として常時車いすを使用していること,18 歳以 上,在宅療養中,といったことが挙げられていた。また診査項目は問診,身体計測,理学的検査,血圧, 尿,心電図,脂質,貧血,肝機能,腎機能,血糖,胸部X線,眼底検査であった。 手続きとしては,まず159 名の個票データのうち,年齢,性別,手帳等級,疾患名といった基本情報 を記述した。次に治療中疾患についてダミー変数(あるを1,なしを 0)化して記述した。また健康診査 の指導区分(異常なし,要指導,要医療の3 件法),細目の指導区分(肥満症,高血圧等の細目の指導区 分,3 件法)についても記述し,要指導あるいは要医療と区分された者の数を全体の受診者で除した「指 導率」を年度ごとに算出した。最後に健康診査の理学的検査,生化学的検査の結果について,BMI,血 圧,LDL コレステロール値,HDL コレステロール値,グリコヘモグロビン(HbA1c)値を抽出し,厚 生労働省が発表している「平成25 年国民健康・栄養調査結果の概要」の内,「第 3 章 身体状況及び糖 尿病等に関する状況」の各種データを抜出し,上記健康診査の値と比較した。比較の際には,BMI につ いては,日本肥満学会肥満症診断基準検討委員会による「Body Mass Index(BMI)が 25kg/m2以上を

肥満という定義に従い(厚生労働省(2015)),身体障害者健康診査受診者のうち,肥満の定義を満たす 者の数を全体の受診者で除した「肥満率」を年度ごとに算出し,比較した。同様に血圧については,収 縮期(最高)血圧の平均値を年度ごとに算出し,更に厚生労働省(2015)の基準に従い,収縮期(最高) 血圧が140mmHg 以上を高血圧と定義し,身体障害者健康診査受診者のうち,高血圧の定義を満たす者

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の数を全体の受診者で除した「高血圧率」を年度ごとに算出し,比較した。また,LDL コレステロール 値,HDL コレステロール値については,合計し,総コレステロール値とした上で,平均値を年度ごとに 算出し,更に厚生労働省(2015)の基準に従い,総コレステロール値が 240mg/dl 以上を脂質異常と定 義し,身体障害者健康診査受診者のうち,脂質異常の定義を満たす者の数を全体の受診者で除した「脂 質異常率」を年度ごとに算出し,比較した。HbA1c 値については,厚生労働省(2015)の基準に従い, (1)治療中疾患の項目で糖尿病の治療中の者,あるいは(2)HbA1c 値が 6.5%以上の者を「糖尿病が 強く疑われる者(糖尿病(疑)者)」と定義し,身体障害者健康診査受診者のうち,糖尿病(疑)者の定 義を満たす者の数を全体の受診者で除した「糖尿病(疑)率」を年度ごとに算出し,比較した。また最 後に年度ごとの肥満,高血圧,脂質異常,糖尿病(疑)の定義を満たす人数について,各年度群間ある いは前半年度群(平成20 年度~平成 22 年度)-後半年度群(平成 23 年度~平成 25 年度)間に差がある かどうかχ2検定を用いて比較した。尚,統計解析にはSPSS11.0-J for Windows を用いた。 結果 身体障害者健康診査受診者の年度ごとの基本情報を表 1 に示す。受診者数は平成22 年度を境にやや減 少しており,平均年齢も平成22 年度を境としてやや高齢化している。全般に男性の受診者が多く,全体 でみても7 割が男性であった。また手帳の等級は 1 級の者が多く,全体の 73%以上が 1 級であった。原 因疾患は脳性麻痺および脊髄損傷が多かった。 表 1 身体障害者健康診査受診者の年度ごとの基本情報 身体障害者健康診査の「指導率」の年度推移について図 2 および図 3,図 4,図 5,図 6 に示す。図 2 でいう総合指導率とは,医師による健診結果の総合区分の指導率である。図 3,図 4,図 5,図 6 はそれ 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 総計 受診者数(人) 32 29 33 24 25 16 159 男性 26 22 25 18 12 9 112 女性 6 7 8 6 13 7 47 平均年齢(歳) 48.5 48.0 46.7 51.7 54.3 54.3 50.0 手帳等級 1級 24 21 23 18 19 12 117 2級 7 8 9 5 6 4 39 原因疾患(人) 脳性麻痺 9 7 10 6 8 6 46 脊髄損傷 14 9 11 7 8 5 54 脳血管障害 3 4 6 4 5 3 22 その他 5 8 6 7 4 2 37 治療中疾患(人) 高血圧 1 7 7 6 6 4 31 % 3.1% 24.1% 21.2% 25.0% 24.0% 25.0% 19.5% 糖尿病 1 2 2 2 4 1 12 % 3.1% 6.9% 6.1% 8.3% 16.0% 6.3% 7.6% 高脂血症 0 0 2 2 1 1 6 % 0.0% 0.0% 6.1% 8.3% 4.0% 6.3% 3.8%

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ぞれ細目の指導区分であり,肥満症,高血圧,高脂血症,糖尿病についての指導率である。また図内の 直線は線形近似直線である。 図 2 総合区分の指導率 図 3 肥満症の指導率 図 4 高血圧の指導率 図 5 高脂血症の指導率 図 6 糖尿病の指導率 身体障害者健康診査の「肥満率」の年度推移と国民健康・栄養調査結果との比較について,男性を図 7, 女性を図 8 に示す。男性については平成22 年度を境に上昇しているが,概ね国民健康・栄養調査の結果 並みであった。一方女性については極端な上昇曲線を示しており,平成25 年度に至っては約 60%が肥 満の定義を満たしていることが示された。

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図 7 肥満率の年度推移と比較(男性) 図 8 肥満率の年度推移と比較(女性) 身体障害者健康診査の収縮期(最高)血圧の年度推移と国民健康・栄養調査結果との比較について, 男性を図 9,女性を図 10 に示す。男性では常に国民健康・栄養調査の結果を下回っていたのに対し,女 性では平成23 年度を境に上回っていた。また収縮期(最高)血圧を元にした高血圧率の年度推移と国民 健康・栄養調査結果との比較について,男性を図 11,女性を図 12 に示す。平均収縮期(最高)血圧の推 移と同様に,男性では常に国民健康・栄養調査の結果を下回っていたのに対して,女性では平成23 年度 を境に上回っていた。 図 9 平均収縮期(最高)血圧の年度推移と比較(男性) 図 10 平均収縮期(最高)血圧の年度推移と比較(女性) 図 11 高血圧率の年度推移と比較(男性) 図 12 高血圧率の年度推移と比較(女性)

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身体障害者健康診査の平均総コレステロール値の年度推移と国民健康・栄養調査結果との比較につい て,男性を図 13,女性を図 14 に示す。男女ともに各年度において国民健康・栄養調査の結果を下回って いた。また総コレステロール値を元にした脂質異常率の年度推移と国民健康・栄養調査結果との比較に ついて,男性を図 15,女性を図 16 に示す。平均総コレステロール値と同様に男女ともに各年度において 国民健康・栄養調査の結果を下回っていた。 図 13 平均総コレステロール値の年度推移と比較(男性) 図 14 平均総コレステロール値の年度推移と比較(女性) 図 15 脂質異常率の年度推移と比較(男性) 図 16 脂質異常率の年度推移と比較(女性) 身体障害者健康診査の糖尿病(疑)率の年度推移と国民健康・栄養調査結果との比較について,男性 を図 17,女性を図 18 に示す。男女ともに概ね国民健康・栄養調査の結果を下回っていた。 図 17 糖尿病(疑)率の年度推移と比較(男性) 図 18 糖尿病(疑)率の年度推移と比較(女性)

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最後に肥満率,高血圧率,脂質異常率,糖尿病(疑)率について,各年度間および前半年度-後半年度 間の比較を行った結果,各年度間については,いずれの年度間にも有意な差はなかったものの,唯一肥 満率(男性)の前半年度-後半年度間に有意な差を認めた(χ2=4.56,p=0.03)(図 19)。調整済み残差よ り,後半年度に肥満者が有意に増加していることが示された。肥満率(女性)を含むその他の前半年度-後半年度間には有意な差は認められなかった。 図 19 肥満率(男性)の前半年度-後半年度間比較結果と調整済み残差値 考察 本調査の対象となった身体障害者健康診査の全受診者159 名は,仙台市全体の身体障害者 31,668 名の 0.50%であり,また肢体不自由者 16,877 名の場合も 0.94%に過ぎず,仙台市の身体障害者を正確に反映 する標本とは言い難いところもある(仙台市障害者総合支援センター,2014)。車いす使用者に限定して いる点から言っても,一般化においては配慮を要する。一方で,健診データの集計と分析は過去に例が なく,非常に意義があると思われる。 まず,健診全体の総合判定において,指導率が右肩上がりに上昇している点は,仙台市内の身体障害 者において,緩やかながらも健康度が悪化していると言える。個別の指導率をみても,高脂血症以外の 項目で全て上昇傾向を示している。より正確に言えば,「仙台市内の車いすを使用している身体障害者に おいて,肥満,高血圧,糖尿病の者が年々増加傾向にある」と言える。より詳細に男女別で厚生労働省 による国民健康・栄養調査と比較すると,肥満については特に女性において肥満率の急激な増加を示し ていた。国民健康・栄養調査と比しても明らかな肥満率の多さであり,平成25 年度には 60%に達して いる。平成24 年度を除き,女性受診者は一桁台であり,やや解釈に留意を要すものの,肥満率の上昇は 憂慮すべきものと言える。他方,男性については国民健康・栄養調査の下方かほぼ同率の肥満率であっ た。しかし前半年度から後半年度にかけて有意な肥満者(BMI が 25kg/m2以上の者)の増加がみられて おり,男性に関して言えば相対的には問題は少ないが,明らかな経年変化が認められる状況にあると言 える。つまり,肥満については,男女ともに肥満率が上昇しており,特に女性での問題点が大きいと言 える。高血圧についても同様に女性において特に平成24 年度以降,平均収縮期(最高)血圧,高血圧率 が国民健康・栄養調査を上回っていた。高血圧と肥満は極めて密接な関連性があることが示されており (名倉,2005),本調査においても特に女性において同様の結果を得た。つまり女性における収縮期(最 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 20 21 22 23 24 25 肥満率

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年度 項目 非肥満者 肥満者 度数計 度数 56 10 66 調整済み残差 2.1 -2.1 度数 24 12 36 調整済み残差 -2.1 2.1 80 22 102 前半 後半 度数計 *=p<0.05 Note.肥満者とは,定義を満たす者を指す。

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高)血圧の上昇と高血圧率の増加は肥満率の上昇に伴うものと推察される。他方,男性については,収 縮期(最高)血圧および高血圧率のいずれにおいても全ての年度で国民健康・栄養調査の結果を下回っ ていた。男性の場合,肥満率の上昇はあるものの,血圧については大きな問題はないものと考えられる。 一方で国民健康・栄養調査の結果をみても分かる通り,往々にして高血圧率は性差があり,女性に比し て男性が高いとされる。しかし女性の場合,閉経後に高血圧の出現頻度が高くなるという傾向があり(李 他,1997),本調査でもその影響があったとも考えられる。受診者の平均年齢をみると平成 22 年度を境 に40 歳代から 50 歳代に高齢化しており,閉経後の受診者が増加した結果,高血圧率の増加があったと も考えられる。つまり,女性の収縮期(最高)血圧および高血圧率の上昇は肥満率の上昇と高齢化(閉 経後受診者の増加)の影響があると考えられる。高脂血症については,男女ともに国民健康・栄養調査 の脂質異常率を下回っていた。糖尿病についても同様に国民健康・栄養調査の糖尿病(疑)率を下回っ ていた。肥満率は男女ともに増加傾向であったものの,脂質異常や糖尿病については,明らかな上昇を 認めなかった。 以上,まとめると本市に居住している車いす利用の身体障害者の客観的健康度としては,肥満率が男 女ともに増加傾向にあり,特に女性において,全国的な数値を上回る値になっていることが示された。 更に女性においては,肥満率の上昇に伴うと思われる収縮期(最高)血圧,高血圧率の上昇が認められ た。但し,高血圧率上昇については,肥満だけでなく,高齢化も影響していると推測される。一方で脂 質異常や糖尿病については現状大きな問題はないものの,今後とも肥満率が経年増加を続けるならば, 何らかの影響が出てくるものと予測され,早々の対策が必要とも考えられる。また男性における平成23 年度以降の肥満率の上昇や女性における平成24 年度以降の収縮期(最高)血圧および高血圧の上昇は, 時期的に見てもやはり東日本大震災の影響を考えざるを得ない。市内でも震災の影響により運動施設の 閉鎖や休館があり(運動場ならば仮設住宅の造設等),身体障害者の運動機会が減少している現状がある。 肥満の増加は「震災」,そして高血圧の増加は「肥満」,「高齢化(閉経人口増加)」,「震災」の影響があ るものと推察される。 これらの結果から考えられる今後の仙台市における障害者健康増進事業の方針としては,肥満対策, (女性の)高血圧対策が急務であり,具体的には運動機会の提供,栄養管理のアプローチ等が考えられ る。また事業の進捗確認,効果指標として,これら身体障害者健康診査の結果は有意義なものであると 考えられるため,事業の一環として健診結果の集計を継続して実施していくべきと思われる。効果指標 を確認し,事業へフィードバックすることで,より有効な事業展開が可能であると考えられる。 引用文献 伊藤麻子 2013 障害福祉施設等における利用者の健康づくりに関する意識,及び運動を伴う活動の状 況の調査 結果報告書. 後藤貴浩・伊藤麻子・秋葉幸恵・小堺 幸・金子光宏 2014 障害福祉施設等における利用者の健康づ くりに関する調査-健康増進支援方法検討のための障害別での分析と比較-. 田原靖昭・綱分憲明・馬場輝実子・本山和徳・島崎達也・田井村明博・湯川幸一 1992 身体活動レベ ルからみた重症心身障害者の体格,体内カリウム量(40K),身体組成及び皮下脂肪厚. 体力科学,41, 355-367.

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厚生労働省 2014 平成 25 年国民健康・栄養調査結果の概要 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html 仙台市障害者総合支援センター 2014 平成 25 年度末現在の手帳保持者数 事業概要平成 26 年度版 (平成25 年度実績),15-19. 名倉育子 2005 都市住民の BMI の変化と血圧の変化の関連 日本公衆衛生雑誌,52,607-617. 李 兵紅,井尻 裕,殷 東風,田草川正弘,望月泰朗,岩崎 宏,奥谷充章,河埜 功,望月 淳, 小森貞嘉,田村康二 1997 閉経前後の健康な女性における血圧および心拍数の概日変動について 日 本老年医学雑誌,34,793-797.

図 7  肥満率の年度推移と比較(男性)          図 8  肥満率の年度推移と比較(女性)    身体障害者健康診査の収縮期(最高)血圧の年度推移と国民健康・栄養調査結果との比較について, 男性を図 9,女性を図 10 に示す。男性では常に国民健康・栄養調査の結果を下回っていたのに対し,女 性では平成 23 年度を境に上回っていた。また収縮期(最高)血圧を元にした高血圧率の年度推移と国民 健康・栄養調査結果との比較について,男性を図 11,女性を図 12 に示す。平均収縮期(最高)血圧の推 移と同

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