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骨粗鬆症リエゾンサービスとしての理学療法士の取り組み

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 683 ~ 684 骨粗鬆症リエゾンサービスとしての理学療法士の取り組み 頁(2015 年). 683. 合同シンポジウム 6(日本骨粗鬆症学会). 骨粗鬆症リエゾンサービスとしての理学療法士の取り組み* 藤 田 博 曉**. 平 成 26 年 の 高 齢 者 白 書 に よ る と, 我 が 国 の 高 齢 化 率 は 25.1%を超えており 1),すでに超高齢社会であることが明らか となっている。この結果は,長寿大国として社会が成熟してい る反面,抱える課題が大きいと考えることができる。つまり, 人生 50 年,60 年の時代から,人生 80 年や 90 年をどのように 生きるかについて,真剣に議論する必要があるといえる。一方 で介護が必要となった原因の割合構成をみると,第 1 位は脳血 管障害の 21.5%,第 2 位は認知症の 15.3%であり,第 4 位の骨 関節疾患の 10.9%と第 5 は骨折・転倒の 10.2%といわれている。 この骨関節疾患と骨折・転倒の両者を含めて「運動器障害」と して考えると 21.1%にも及ぶ. 2). 。このように高齢者の生活活動. 図 1 大腿骨近位部骨折発生患者数の推移(1987 年~ 2012 年)(文献 5 より引用). を妨げる原因として,運動器障害は大きな課題と考えることが できる。そのような背景から提唱されているのが,「健康寿命」 という概念である。「健康寿命」とは,日常生活において介護. は 175,700 人と報告されている(図 1) 。その間,高齢者対策や. を必要とせず自立した生活ができる期間のことで,厚生労働省. 転倒予防といった取り組みが行われているにもかかわらず,25. が推し進める健康づくり運動として「健康日本 21(第二次)」. 5) 年間では約 3.3 倍まで増加している 。この調査結果を見ても,. において健康寿命の延伸を大きな目標としている。超高齢社会. 骨折後の患者に対する治療だけでは不十分であること,そして. を迎えた我が国において,運動器を中心とした健康寿命を延伸. 一次骨折を予防する取り組みが重要であることは明白である。. することは喫緊の課題であり,理学療法士はその中心的な役割. このような背景から日本骨粗鬆症学会では骨粗鬆症治療に対. がもとめられている。高齢者に多く発生する四大骨折(大腿骨. する取り組みとして,二次骨折予防としての骨折後の対応や再. 近位部骨折・椎体骨折・撓骨遠位端骨折・上腕骨外科頸骨折). 骨折の防止に加えて,一次骨折予防としての脆弱性骨折の予防. や変形性関節症は,その背景に骨粗鬆症を基盤とする脆弱性骨. を含めた「骨折の連鎖」を防止することの重要性を掲げてい. 折が存在することは周知の事実である。骨折や変形性関節症に. る。その一環として 2012 年から「骨粗鬆症リエゾンサービス:. 対する理学療法は,骨折や障害が生じた後療法として行われて. OLS」としての取り組みを行い,「骨粗鬆症マネージャー」制. いたが,現在では骨粗鬆症そのものに対する取り組みが重要視. 度の育成を行っている。具体的には骨粗鬆症の診療支援サービ. 3). 4). されている。 「骨粗鬆症の予防と診療ガイドライン 2011 年版」. スに対して他職種連携による介入を行い,骨折抑制を推進する. では,骨粗鬆症に対する治療として,薬物療法に加えて,食事. 活動を行うことによって,骨折発生率の低下だけでなく医療費. 指導,運動指導,理学療法の重要性が明記されている。. の抑制をめざしている。. 理学療法士としての骨粗鬆症に対するかかわりは,四大骨折. 従来から理学療法士は医療機関を中心として,骨折や関節症. や変形性関節症などの運動器疾患に対する治療介入は従来から. に対する治療的介入を主体的に行っている。特に,骨折後の患. 行われており,高齢者に多く発生する大腿骨近位部骨折は代表. 者に対しては,転倒リスクの評価や退院後の機能の維持・向上. 的な対象疾患である。大腿骨近位部骨折の新規発生患者数につ. を行い,再転倒や再骨折の予防としての指導を行っている。こ. いては,折茂らによって継続的な調査結果が行われている。そ. のような二次骨折予防としての取り組みについては,多くの理. の結果,1987(昭和 62)年では年間 53,200 人であった患者数は. 学療法士がその必要性について考えていると感じている。しか. 年々増加の一途をたどり,最新の 2012(平成 24)年の報告で. し,骨折そのものを低減させることである一次骨折予防の重要. *. The Action of the Physical Therapist as the Osteoporosis Liaison Service ** 埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科 (〒 350–0496 埼玉県入間郡毛呂山町川角 981) Hiroaki Fujita, PT: Saitama Medical University キーワード:骨粗鬆症リエゾンサービス,一次骨折予防,身長低下. 性については,未だにコンセンサスが得られていないように考 えている。骨折の因子である転倒については,本人の身体機能 や認知機能を中心とした内部要因と,環境を中心とした外部要 因に分けられている。しかし,身体機能として筋力やバランス 機能については取り上げられているが,骨そのものの強度や骨.

(2) 684. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 折リスクについての視点をもっている理学療法士は未だに少な いと考える。 骨粗鬆症について「骨粗鬆症は,低骨量と骨組織の微細構造 の異常を特徴とし,骨の脆弱性が増大し,骨折の危険性が増大 する疾患である」と定義されている。つまり,疾患としての骨 粗鬆症とは骨折を生じるにいたる病的過程であり,骨折は骨粗 鬆症の結果として生じる合併症のひとつであると明記されてい る。つまり,骨折に対する術後の理学療法を担ってきている理 学療法士も,骨折の背景に存在する骨粗鬆症を考えることが 必要となる。骨粗鬆症の診断としては X 線による DXA(Dualenergy X-ray absorptiometry)を用いた診断が必要である。. 図 2 身 長低下を用いた啓蒙活動・生活指導(文献 6 より 引用). 骨密度については加齢によって低下することは周知の事実であ り,特に閉経後女性においてはその低下が著しい。一次骨折予. な介入方法を指導することが可能である 6)。. 防としては骨密度の測定である骨粗鬆症検診を促す必要がある. 骨折の大きな要因となる転倒について,地域在住の高齢者の. と考える。しかしながら,骨粗鬆症そのものが無症状で進行す. 転倒発生率は概ね 20 ~ 30%と報告されている。転倒リスクや. る「沈黙の疾患」という特徴から,その受診率は低いのが現状. 転倒恐怖感の低減については一定の効果はみられているが,転. である。近年,地域における介護予防や健康増進の分野におい. 倒そのものを「ゼロ」にすることは,2 足直立歩行を行うヒト. て,活動している理学療法士のニーズはますます増加してい. の特性として難しいと考えている。そのため「転倒しにくい身. る。その予防的な取り組みのキーワードとして「運動器」ある. 体づくり」や,「転倒しても骨折しにくい身体づくり」,あるい. いは「骨粗鬆症」を取り上げ,移動能力や活動性の向上を目的. は「(万が一)骨折しても元の活動に戻ることができる身体づ. とすると,その対策は具体的に見えてくる。しかし,運動器の. くり」が必要であると考える。そのためにも,骨粗鬆症につい. 低下や骨粗鬆症の進行については,本人が気づかないことが多. て正しく理解し,患者指導だけでなく広く地域住民へ健康づく. く,一般地域在住高齢者や予防事業において,気づきを促すた. りの活動として,骨粗鬆症リエゾンサービスにかかわることが. めの具体的な手段が必要であると考える。. 必要である。そして,多くの理学療法士が骨折後の治療や二次. 我々は地域在住の中高年者を対象として運動器検診を行って. 骨折予防だけでなく,一次骨折予防の重要性を認識し,運動器. おり,その中のアンケート項目として「身長低下」を取り上げ. の健康づくりとして骨粗鬆症に対して積極的に取り組むことを. ている。身長低下については「骨粗鬆症の予防と診療ガイドラ. 期待する。. イン 2011 年版」においても,身体診察や問診の項目として挙 げられており,椎体骨折リスクが増大することが述べられて いる。この項目を利用して「20 歳頃の身長」-「現在の身長」 をもとに,「0 ~ 2  cm 群」,「2 ~ 4  cm 群」,「4  cm 以上群」の 3 群に分け運動機能を比較した。その結果,「4  cm 以上群」で は「0 ~ 2  cm 群」に比べて握力,開眼片足立ち,最大歩行速 度が低下するだけでなく,膝伸展筋力においては「2 ~ 4 cm 群」 とも有意に低下を認める結果を得た。この結果をもとに図 2 の ような指導が可能となる。「0 ~ 2  cm 群」は加齢的変化として 捉え,現在の生活と活動の維持を勧め,「2 ~ 4  cm 群」につい ては身体機能の低下が生じていることから継続的な運動習慣の 改善を勧め,「4  cm 以上群」については身体機能低下に警戒が 必要と考え,医療機関への受診や積極的な運動介入が必要な群 と考えることができる。このように,身長低下という簡易的な ツールを用いることで,運動機能低下をおおまかに捉えるだけ でなく,骨粗鬆症検診や医療機関への受診を促すなど,具体的. 文 献 1) 内閣府:平成 26 年度版高齢者白書より.http://www8.cao.go.jp/ kourei/whitepaper/w-2014/zenbun/26pdf_index.html(2015 年 7 月 2 日引用) 2) 内閣府:平成 24 年度版高齢社会白書(全体版).http://www8.cao. go.jp/kourei/whitepaper/w-2012/zenbun/s1_2_3_02.html(2015 年 7 月 2 日引用) 3) 健 康 日 本 21( 第 二 次 ) の 推 進 に 関 す る 参 考 資 料.http://www. mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/ kenkounippon21.html(2012 年 7 月 10 日引用) 4) 骨 粗 鬆 症 の 予 防 と 診 療 の ガ イ ド ラ イ ン 作 成 委 員 会, 折 茂 肇 (編):骨粗鬆症の予防と診療のガイドライン 2011 年版.ライフサ イエンス出版.2011 5) 八重樫由美,坂田清美,他:日本の大腿骨近位部骨折発生率 2012 年における新発生患者数の推定と 25 年間の推移.Osteoporosis Japan.2014; 22(Suppl. 1): 262. 6) 荻原健一,藤田博暁,他:閉経後中高年者の骨粗鬆症リスクと し て の 身 長 低 下 と 運 動 機 能 の 関 連.Osteoporosis Japan.2014; 22(Suppl. 1): 247..

(3)

図 1  大腿骨近位部骨折発生患者数の推移(1987 年~ 2012 年)(文献 5 より引用)

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