主体的な学びと小学校英語
自己決定理論を用いた学習指導要領を具体化する試み
田 中 佑 美
*Active Learning in the Elementary School English
Curriculum
Implications of Self-Determination Theory
Yumi TANAKA
キーワード:主体的な学び、小学校英語、学習指導要領、自己決定理論 1.はじめに 新学習指導要領に伴い小学校英語が大きく 変わろうとしてる。とくに 2020 年から中学年(3 年生・4 年生)にて外国語活動が始まり、高学 年(5 年生・6 年生)にて教科型の外国語教育が 始まる。そのなかで主体的な学びに繋がる言語 活動の必要性が求められ、授業等において積極 的に外国語を使ってコミュニケーションを図ろ うとする態度のみならず、学校教育外において も、生涯にわたって継続して外国語習得に取り 組もうという態度の育成が求められている(文 部科学省,2018a)。一方で、主体的な学びや継 続して英語習得に取り組もうという態度は、知 識や技能と比較すると学習効果を可視化しにく い。ただし、知識や技能とともに今日の教育の 中核を占めており、小学校英語において大きな 意味を持つだろう。 本研究では、自己決定理論の観点から主体的 な学びを中心とした学習指導要領の具体化を試 みる。まず自律と他律を基盤とする自己決定理 論を概観し、次に学習指導要領における主体的 な学びを自己決定理論から分析する。最後に小 学校英語における主体的な学びを促す指導のあ * 滋賀大学 り方を、自己決定理論の内発的動機づけから検 討する。 2.自己決定理論―自律・他律・自己 Deci and Ryan (1985)の自己決定理論は、自 律的な行動である内発的動機づけと他律的な行 動である外発的動機づけについて理論的基盤を 提供している。内発的動機づけは、行動そのも のに満足感があり、行動そのものが喜びであ る最も自律的な動機づけを指す(Ryan & Deci, 2002)。例えば、小学 1 年生の 4 月を想像してみ て欲しい。教科書をもらい学ぶことが楽しく、 活動そのものが喜びである子どもらしい動機づ けが想像できないだろうか。自律的な動機づけ が内発的動機づけと呼ばれ、学業達成につなが ると指摘されている(櫻井・高野,1985; Taylor, et al., 2014)。 一方、外発的動機づけは、活動以外に目的があ る動機づけであり、自己決定と呼ばれる自律の 度合いによって同一視的調整、取入的調整、外的 調整に細分化される(Ryan & Connell, 1989)。1) 同一視的調整とは、最も自律的な外発的動機づ けであり、個人的に重要な行動を認知した外発 的動機づけを指す。例えば、自分の夢を叶える のに英語が必要なので英語を勉強する場合の動機づけを指す。パイロットになりたいから英語 を勉強したり、小学校の先生になりたいから英 語を勉強したりする場合などが挙げられる。同 一視的調整の次に自律的な外発的動機づけは、 取入的調整と呼ばれ、他律的な行動に分類され る。この調整は、他者と比較の上で行動に移す 場合の外発的動機づけを指す。例えば、クラス メートよりできないと恥ずかしいから英語を勉 強したり、できるとかっこいいから英語を勉強 したりする場合は、取入的調整に分類される。 最後に、最も他律的な外発的動機づけは、外的 調整と呼ばれる。この調整は、褒美を得るため や罰から逃れるために動機づけられることを指 す。例えば、親から怒られるのが嫌だから勉強 する場合は、外的調整に分類される。 これら一連の動機づけは連続体であり、また 必ずしも内発的動機づけが良く、外発的動機づ けが悪いというわけではない。しかし、学習行 動を自分で決定すると、自己のなかに行動の理 由が統合され、心が安定するため、深い学びに 繋げることができるという。つまり、自律的な 動機づけが主であり、他律的な動機づけが従で ある関係が望ましいと言える(櫻井,2017)。 3.学習指導要領における主体的な学び 今日、英語指導において、主体的な学びは授 業改善の中核を担う要素となっている。この学 習指導要領にある主体的な学びとは具体的には どのような学びであろうか。文部科学省(2016) によると、主体的な学びとは、「学ぶことに興 味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性 と関連づけながら、見通しを持って粘り強く取 組み、自らの学習活動を振り返って次につなげ る」学びと定義されている。そして、この主体 的な学びは、学習指導要領の三つの柱の一つで ある学びに向かう力・人間性において解説され ており、授業内だけではなく、授業外や生涯に 渡って英語を学習する態度の育成を目指してい る。 学びに向かう力・人間性を基礎に、学習指 導要領の知識・技能では気付きを重視した目標 を提示している。中学年では体験的に日本語と 英語の音声を比較することで両言語の違いに気 付いて外国語に慣れ親しむこと、高学年では音 声のみならず文字・語彙・表現・文構造・言語 の働きについても日本語と英語の比較から違い に気付き、実際のコミュニケーションにおいて 活用できる基礎的な技能の育成を目指している (表 1 参照)。さらに、思考力・判断力・表現力 等は、一貫して身近で簡単な事柄について自分 の考えや気持ちなどを伝え合うことを目標にし ている。一方で、中学年では自分を中心として 自己表現をする力の素地を養い、高学年では目 的・場面・状況に応じて自己表現をする基礎的 な力の養成が求められている。 この授業改善に資する主体的な学びを育成 する効果的な時期はあるのだろうか。自己決定 理論から考えると、学ぶことへの興味や関心は 中学年からの育成が効果的であり、キャリア形 成は高学年からの育成が効果的であろう。これ は乳児期や児童期のはじめに楽しみながら学ぶ 内発的動機をもって学ぶと、自分の好みが明ら かになる高学年頃から自己実現のための動機、 つまり、未来志向性も同時に持つようになると 指摘されていることによる(櫻井,2017)。言 い換えると、中学年において英語学習自体に興 味や関心を持つような指導をすることが、高学 年に同一視的調整を含む自己のキャリア形成、 つまり、人生の目標に繋がる動機づけの形成を 促すと考えられる。もちろん中学年からも将来 の夢について語ることはできるが、そのために 努力をしたり行動をしたりすることと関連づけ て学ぶことは高学年頃から具体化される。動機 づけのメタ分析からは、児童期の内発的動機づ けと同一視的調整との間に相関がみられる(岡 田,2010)。つまり、中学年で英語学習に楽し みをみつけて体験的に知識・技能を習得した児 童は、高学年になると学習内容の難易度が上が り、求められる知識・技能が複雑になっても、 内発的動機づけと同一視的調整の両方を有して 継続した英語学習を行う可能性がある。 ただし、外国語活動において、この内発的動 機づけは、学年が高くなるとともに減退すると いわれている(Carreira, 2011)。一方で、関東圏 にあるインターナショナルスクールに通う日本 語を母語とする児童の内発的動機づけは減退し ない(Tanaka & Kutsuki, 2018)。2)
般的に内発的動機づけは学年を経るごとに減退 するが、何らかの教育的介入により向上させる ことが可能であると考えられる。 4.主体的な学びを促す指導のあり方 主体的な学びを促すために内発的動機づけ を育成するには何が必要なのだろうか。一般的 な学習に対して櫻井(2017)は、児童期には、安 心して学べる教室環境、授業がわかる・おもし ろいという経験、有能感の形成、認知能力の活 用、学習習慣の形成が内発的動機づけを育成す ると指摘している。この視点を英語教育に応用 した場合、安心して学べる教室環境は、安心して 英語コミュニケーションが取れる雰囲気を指し ているだろう。外国語活動に参加する児童は不 安を感じているものの、同時に英語が上手にな りたいと考えている(松宮,2010)。また、中学 年では教員の励ましが児童の内発的動機づけを 高めるため(Carreira, Ozaki, & Maeda, 2013)、 教員はロールモデルとして見本を提示し、励ま しを行うことで児童が安心して発話できる教室 環境を作ることができるだろう。 授業がわかるという経験は、少し難解な授 業内容にすることで具体化される。例えば、知 的好奇心が内発的動機づけを高めると指摘され ており、このことは現在の能力より少しだけ難 易度が高いインプットが第二言語習得を促進す るという考えと一致する(Krashen, 1985)。今 の能力より少しだけ難しい授業内容にすること で、定着を目的とした言語習得と行動への従事 や継続を目的とした動機づけの両方に効果的で あろう。例えば、1 ∼ 10 の数字を学ぶ単元で は、「ALT の言った電話番号を聞き取ることが できる」という目標を設定して、数字を数えた 後、ALT の言う電話番号を書きとってみるこ 㻌 እእᅜㄒάື䠄୰Ꮫᖺ䠅㻌 እᅜㄒ⛉䠄㧗Ꮫᖺ䠅㻌 ▱㆑ཬ䜃ᢏ⬟㻌 እᅜㄒ䜢㏻䛧䛶䚸ゝㄒ䜔ᩥ䛻 䛴䛔䛶య㦂ⓗ䛻⌮ゎ䜢῝䜑䚸᪥ ᮏㄒ䛸እᅜㄒ䛸䛾㡢ኌ䛾㐪䛔➼ 䛻Ẽ䛟䛸䛸䜒䛻䚸እᅜㄒ䛾㡢ኌ 䜔ᇶᮏⓗ䛺⾲⌧䛻័䜜ぶ䛧䜐䜘 䛖䛻䛩䜛䚹㻌 እᅜㄒ䛾㡢ኌ䜔ᩥᏐ䚸ㄒᙡ䚸⾲⌧䚸 ᩥᵓ㐀䚸ゝㄒ䛾ാ䛝䛺䛹䛻䛴䛔䛶䚸 ᪥ᮏㄒ䛸እᅜㄒ䛸䛾㐪䛔䛻Ẽ䛝䚸䛣 䜜䜙䛾▱㆑䜢⌮ゎ䛩䜛䛸䛸䜒䛻䚸ㄞ䜐 䛣䛸䚸᭩䛟䛣䛸䛻័䜜ぶ䛧䜏䚸㻌 ⪺䛟䛣 䛸䚸ㄞ䜐䛣䛸䚸ヰ䛩䛣䛸䚸᭩䛟䛣䛸䛻䜘䜛 ᐇ㝿䛾䝁䝭䝳䝙䜿䞊䝅䝵䞁䛻䛚䛔䛶ά ⏝䛷䛝䜛ᇶ♏ⓗ䛺ᢏ⬟䜢㌟䛻䛡䜛 䜘䛖䛻䛩䜛䚹㻌 ᛮ⪃ຊ䞉ุ᩿ ຊ䞉⾲⌧ຊ➼㻌 ㌟㏆䛷⡆༢䛺䛻䛴䛔䛶䚸እ ᅜㄒ䛷⪺䛔䛯䜚ヰ䛧䛯䜚䛧䛶⮬ศ 䛾⪃䛘䜔Ẽᣢ䛱䛺䛹䜢ఏ䛘ྜ䛖 ຊ䛾⣲ᆅ䜢㣴䛖䚹㻌 䝁䝭䝳䝙䜿䞊䝅䝵䞁䜢⾜䛖┠ⓗ䜔ሙ㠃䚸 ≧ἣ䛺䛹䛻ᛂ䛨䛶䚸㌟㏆䛷⡆༢䛺 䛻䛴䛔䛶䚸⪺䛔䛯䜚ヰ䛧䛯䜚䛩䜛䛸䛸 䜒䛻䚸㡢ኌ䛷༑ศ䛻័䜜ぶ䛧䜣䛰እ ᅜㄒ䛾ㄒᙡ䜔ᇶᮏⓗ䛺⾲⌧䜢᥎ 䛧 䛺䛜䜙ㄞ䜣䛰䜚䚸ㄒ㡰䜢ព㆑䛧䛺䛜䜙 ᭩䛔䛯䜚䛧䛶䚸⮬ศ䛾⪃䛘䜔Ẽᣢ䛱䛺 䛹䜢ఏ䛘ྜ䛖䛣䛸䛜䛷䛝䜛ᇶ♏ⓗ䛺ຊ 䜢㣴䛖䚹㻌 Ꮫ䜃䛻ྥ䛛䛖 ຊ䞉㻌 ே㛫ᛶ㻌 እᅜㄒ䜢㏻䛧䛶䚸ゝㄒ䜔䛭䛾⫼ ᬒ䛻䛒䜛ᩥ䛻ᑐ䛩䜛⌮ゎ䜢῝ 䜑䚸┦ᡭ䛻㓄៖䛧䛺䛜䜙䚸య ⓗ䛻እᅜㄒ䜢⏝䛔䛶䝁䝭䝳䝙䜿 䞊䝅䝵䞁䜢ᅗ䜝䛖䛸䛩䜛ែᗘ䜢㣴 䛖䚹㻌 እᅜㄒ䛾⫼ᬒ䛻䛒䜛ᩥ䛻ᑐ䛩䜛⌮ ゎ䜢῝䜑䚸⪅䛻㓄៖䛧䛺䛜䜙䚸య ⓗ䛻እᅜㄒ䜢⏝䛔䛶䝁䝭䝳䝙䜿䞊䝅䝵 䞁䜢ᅗ䜝䛖䛸䛩䜛ែᗘ䜢㣴䛖䚹㻌 ᩥ㒊⛉Ꮫ┬䠄㻞㻜㻝㻤㼍䠅䜘䜚➹⪅సᡂ䚸୍㒊ᨵኚ䚹㻌 表 1 外国語活動と外国語科の目標−三つの柱
とも可能であろう。架空の電話番号でもかまわ ないが、小学校の電話番号を使うことで児童に とって親しみのある市外局番が入った電話番号 になるかもしれない。現在の能力より少し難し い英語形式(英語の数字と電話番号を聞き取る こと)と児童にとって具体的な言語活動が、わ かる授業経験に繋がる。 授業がおもしろいという経験には、身近で 簡単な事柄に異文化理解の視点を加えることが 考えられる。この視点は、学習指導要領に明記 されているとともに、小学生の内発的動機づけ が外国への関心と強い相関があることに基づく (Carreira, 2012)。例えば、小学校の英語教材 におけるカレーライスの英訳は Curry and rice であるが(文部科学省,2018b)、学習指導要領 の目標が相手や他者に配慮しながら主体的にコ ミュニケーションをとることであれば、コミュ ニケーションをとる相手に自分が言う Curry and rice のイメージを説明する必要性があると 気付かせることこそが主体的・対話的で深い学 びに繋がる。具体的には、カレーの地域別比較 からインドカレー(Indian curry)、 タイカレー (Thai curry)、和風カレー(Japanese curry)と いう呼び名で、写真をみながら音声を聞き、カ レーに使われる野菜などを指さしたり、声に出 したりする。インドカレーであれば複数のカ レーが一食で出されていたり、タイカレーであ れば茸や茄子が入った赤色・黄色・緑色のカレー であったり、和風カレーであれば、馬鈴 や人 参といった具材が入った茶色のカレーであった りと、言語活動のなかで異文化に対する発見が できるだろう。めあては、写真にある食べ物の 名前を聞くことができること・話すことができ ること、また英語を用いてコミュニケーション を行う際に、外国では相手がカレーに対して異 なるイメージを持つ可能性があることを知り、 自分が言うカレーの確実なイメージを伝える配 慮、例えば、具材や色、辛さを説明する配慮を 育成することにある。この経験により単語一つ でも相手が異なるイメージを持つ可能性がある ことを心に抱かせることができれば、実際のコ ミュニケーションにおいて、相手の反応に合わ せて説明を加えるといった、主体的・対話的で 深い学びに繋がると考えられる。 高学年において有能感が高いと英語学習に 対する内発的動機づけが高まると指摘されてい る(Carreira, Ozaki, & Maeda, 2013)。とくにこ の有能感の形成は、成長欲求、つまり過去の自 分と比較して、現在の自分の方が優れていると 感じることにより、さらに有効に働くため、中 学年で慣れ親しんだ表現を繰り返し異なる場面 で使用する高学年の指導において活かせるだろ う。具体的には、成績評価がある高学年におい て、Can-Do リストを使って教師間、教師と児童 間で共有できる「∼することができる」といった 目標を設定する。積み上げていく能力を明確に 提示することは内発的動機づけを向上させる。 高学年における有能感に関する注意点は、高学 年は他者と比較し、クラスメートより優れてい ることによって高まる取入的調整が芽生える時 期であることであろう。取入的調整は他者が存 在しなければ動機が高まらない他律的な動機づ けであるため、他者との比較に従事していると 最終的には伸び悩む可能性が生じる。ただし、 競争することは、必ずしも悪いことではなく、 異なる児童が一番になることができる活動を採 用すれば様々な気持ちを感じることができるた め、活動に工夫が求められる。例えば、多重知 能を使った活動が提案できる(Gardner, 1983)。 多重知能とは、人には八つの得意分野があり、異 なる多重知能を使った活動を取り入れることに より、すべての児童が得意分野を活かした学び の機会を得ることができると考えられている。 例えば、論理・数学的知能を活用して、算数の 計算を取り入れたゲーム形式の言語活動が考え られる(林,2010)。 認知能力の活用は、中学年後半から発達す る体制化を取り入れることが有効である。体制 化とは、関連ある情報をまとめて整理した形で 覚えるという方略のことで、バナナや苺などを 果物というカテゴリーにして覚える学習方法と して活用できる。とくに高学年では、このよう な単語をグループ化して学ぶ活動を取り入れた い。また、認知能力は、気付きを促すことも可 能にするため、背景知識を活用したい。小学校 英語は、英語と日本語の表現の違いに気付かせ ることが目的でもあるため、幼児期に読んだこ とがある絵本の英語版の活用が考えられる。例
えば、『The very hungry caterpillar』の日本語版 は年齢を問わず人気がある絵本であり(岡野・ 町田,2017)、幼児期に日本語で読み聞かせを受 けた可能性が高い。また小学校で学ぶ曜日・数 字・果物・お菓子などの表現が繰り返し出てく るため、日本語と英語の音声比較と表現の違い への気付きを促すことに貢献するだろう。例え ば、 On Monday などの表現が挙げられる。 最後に学習習慣の形成は、学習内容が易しい ときに形成されると継続が容易であるため、外 国語活動である中学年に育成すると高学年の学 習をスムーズにすることができる。近年家庭に おける英語教育に関心がある保護者が増えてい るため、中学年では保護者との英語学習や外国 文化学習など、子どもが好きな学習スタイルで の家庭学習が効果的であろう。とくに、海外旅 行という異文化経験の有無により内発的動機づ けを高める家庭学習は異なるため(田中,2019)、 保護者と連携することで児童に合わせた学習習 慣を身に付けさせることができる。加えて、高 学年では、目標を明示した Can-Do リストを教 室内だけではなく、保護者との連携にも活用す ることで、学習習慣から内発的動機づけを育成 できるだろう。 5.おわりに 本研究では、主体的な学びを軸に学習指導要 領を自己決定理論と発達の観点から検討した。 その結果、学ぶことへの興味・関心は中学年の 外国語活動にて内発的動機づけを高めることで 効果的に育成でき、将来のキャリア形成は高学 年の外国語科にて内発的動機づけと同一視的調 整を高めることで効果的に育成できる可能性が 示された。 主体的な学びを促す指導においては、児童が 安心して発話できる教員の支援と異文化理解の 視点の必要性が指摘された。また、成績評価が 行われる高学年では、現在の児童の能力より少 し難しめの目標を明確に設定するなど、成長欲 求に応じた指導が求められる。万一、他者との 比較という取入的調整を活用する場合は、多重 知能を援用することが提案された。 言語活動では、中学年は個別の語彙学習、高 学年は体制化を援用した語彙学習が求められ、 気付きを促す読み聞かせの活用方法が示され た。全体的には、学習習慣の形成のため、中学 年からの家庭学習と高学年からの Can-Do リス トによる保護者と連携が提案された。 小学校における英語教育実施により中学校 英語も大きく変化する。ただし、小学校英語で は文構造を学び、文法を学んでいないところに 中学校英語との大きな違いがある。今後、多く のインプットと高い内発的動機づけを有した小 学生が中学生になり、インプットを受けてきた 英語表現に文法的な気付きが起きれば小学校英 語の主体的な学びが中学校英語に連携され、対 話的になり、深い学びに繋がると考えられる。 注 1 ) 心理学では外発的動機づけは統合的調整を含む 四つの調整が使用されるが、教育学では統合的 調整を除いた三つが使用される。これは、教育と いう学校環境では経験と社会的価値の両方を学 ぶため、経験に基づく統合的調整と社会的価値 を含む同一視的調整を調査時に調査参加者(児 童・生徒・学生)が分けられないことに起因す る(Noels, Pelletier, Clément, & Vallerand,2000; Tanaka & Kutsuki, 2018)。
2 ) 日本のインターナショナルスクールにおいて英 語を母語とする児童の内発的動機づけは学年を 経ることで向上する(Tanaka & Kutsuki, 2018)。
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