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インターネット関連ビジネスにおけるスタートアップ企業の成長要因

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インターネット関連ビジネスにおけるスタートアップ企業の成長要因

代表研究者 田 路 則 子 法政大学 経営学部 教授 研究分担者 新 谷 優 法政大学 グローバル教養学部 准教授 1 WEB ビジネスで沸くシリコンバレー 1.1 シリコンバレーとは シリコンバレー (以下 SV) とは、カリフォルニア州 (以下 CA) のサンフランシスコ湾の西側に位置し、 サンフランシスコ市とサンノゼ市の間に広がるハイテク・スタートアップが多く輩出される地域である (図 1 を参照)。1938 年、スタンフォード大学の卒業生が起業した Hewlett-Packard をはじめ、1950 年代から 60 年代に半導体産業が誕生し、1970 年代から 80 年代には Apple や Oracle 等をはじめとする IT 産業が興隆し、 さらに、1990 年以降 Netscape や Google というインターネット関連産業が成長した。そして、2005 年以降の 波として、モバイルやソーシャルメディアのビジネスが活況を呈するようになった。本稿は、2010 年から 2011 年にかけて筆者がこれらビジネスの担い手にインタビューしたデータを元に紹介している。 1.2 北上する IT ビジネス 図 2 は、Hewlett-Packard から始まったシリコンバレーの発展を牽引する企業の地理を示している。1960 年代に栄えた半導体産業は南に位置するサンノゼ周辺に集積していた。Fairchild や Intel がその代表だ。 日本の半導体企業である東芝、日立、富士通等も同じあたりに進出を果たしていた。その後はパーソナル コンピュータの登場によりコンピュータやソフトウェアを開発した企業が集積しはじめ、1970 年代後半に 設立された Apple も同じくシリコンバレー南方のクパチーノ市にある。 さらに 1990 年代に入ってインターネットが登場すると、サンノゼよりも北寄りのマウンテンビューやパロ アルトに多くの IT 企業が設立されるようになった。1996 年に設立されて 2004 年に公開を果たした Google はマウンテンビューに位置する。2005 年以降、WEB 2.0 時代とよばれる時代を迎え、モバイルやソーシャ ルメディアのビジネスが登場すると、ますます北寄りにオフィスを構えるスタートアップが多くなった。 Facebook は 2004 年からパロアルトに構えていたオフィスを 2011 年に北隣のメンローパークに移転した。 最近の傾向としては、最北となるサンフランシスコ市内に位置する企業が多くなっていることがある。ソ ーシャルメディアの Twitter、ソーシャルゲームの Zynga、ngmoco 等も市内に位置している。勤務者の年 齢層が 20 代から 30 代前半と若く、仕事が終わるとダウンタウンでプライベートな時間を楽しみたい層で あること、そもそもの製品サービスが外部とのネットワーキングを楽しむものであるので、提供者自身も 顧客と同様の生活をする必要があることが理由として挙げられている 1.3 移民が担う産業 シリコンバレーの産業の担い手が移民であることは、誰もが認識し、学術書でも指摘されてきた。この点 についてはデューク大学とUC バークレーが定期的に調査している報告書や Saxenian の三冊の書籍 (Saxenian, 1994, 1999, 2005) に詳細に述べられている。拙著(田路, 2008, 2009; 田路, 露木, 2010) にて取り 上げた半導体、IT、バイオテックのスタートアップの起業家のサンプルの多くも移民であった。 しかしながら、最近は中国やインドに帰郷する人材が増えており、こうした現象はBrain Drain (頭脳流 出) と呼ばれている。原因は様々なものがあるが、特にオバマ大統領はビザの問題から帰らざるをえなく なった外国人が増えていることを深刻に捉えて、「祖国で新たなインテルを設立してしまうかもしれな い。起業はこの国でしてほしい」と移民法の改定を検討するような発言をしている。1 デューク大学の調査2 においても、将来アジアからの移民が帰還していく可能性が増すことを予言してい 1 2011 年 5 月

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る。インドと中国からの留学生は、卒業後は米国で働くことを希望しつつも、永住を必ずしも望んでいな い。革新的製品を生む国はどこかと尋ねられると、10 年後は米国だが 25 年後は故国であると予想してい る。また、将来起業をするのならば、故国でと望む者が米国を望む者の3 倍存在するという結果が得られ ている。

しかしながら、卒業後にしばらく留まって働く層は未だに厚い。Silicon Valley Index 2011 年版にある 2010 年のデモグラフィック・データを示しておきたい。シリコンバレーの人口3 は 300 万人で、海外からの新 たな移民は13,129 人、国内の他地域への流出が 8,865 人である。人種構成は白人が 39%、アジア系 29%、 ヒスパニック系26%、黒人 2.5%となっており、白人が 40%を切っている。海外で生まれた者の比率は 35%だが、二世、三世は増えている。祖先で見ると、アジア系が 58%と最も高く、次いでアメリカの 32%、その次は欧州の 8%となる。 さらに、創業者に注目して、人種構成をみてみよう。技術系移民の創業者にインド出身者が占める割合は ずば抜けており、26.0%となっており、英国出身者が 7.1%、中国出身者が 6.9%、台湾が 5.8%、日本が 5.0%、ドイツが 4.8%と続く (Wadhwa, Saxenian, Rissing, & Gereffi, 2008)。

興味深いのは、移民の教育水準の高さである。海外で生まれた創業者と米国内で生まれた創業者を比べる と、海外で生まれた創業者のほうが修士号取得者が多いのだ。海外出身者は学士が22.5%、修士が 47.2% である。国内出身者は、学士が44.0%、修士が 31.0%である。専攻はさらに興味深い。海外出身者はエン ジニアリングまたはコンピュータサイエンスとIT の専攻が 52%、ビジネスや会計等経営学の専攻が 16.7%であるのに対して、国内出身者は、前者が 36.6%、後者が 33.4%である。留学生だけではなく、移 民の家庭の親も、子供にできるだけ技術教育をうけさせてエンジニアのキャリアを歩ませようという意図 があることが伺える。 2 投資環境 2.1 シリコンバレーの投資環境 世界および米国におけるシリコンバレーの位置づけを確認するために、ベンチャー・キャピタル (VC) の 活動を概観する。 まず、VC 投資を国際比較してみよう。データは、ベンチャー・キャピタルの所在地によって、米国、欧 州、日本で区分けしている。米国データは米国内への投資額、欧州は海外への投資額とバイアウトを目的に したプライベート・エクィティ投資も含んでいる。日本は海外への投資も含む。4 2009 年末までの投資残高は、5 米国では 1,794 億ドル、日本では 105 億ドルある。2010 年の単年の投資額 では、米国は 219 億ドル、欧州は 540 億ドル、日本は 10 億ドルであった。欧州から米国へどの程度投資され ているかは不明だが、相当な金額が米国に投入されていると想像できる。参考までに、リーマンショック以 前の 2007 年には、米国は 308 億ドル、欧州は 1,065 億ドル、日本は 31 億ドルであった。 次に、米国 VC の州別投資をみてみよう。2010 年単年度の投資額 219 億ドルの地域別のシェアは、CA が 49.9%、マサチューセッツ州が 10.8%、NY 州が 6.1%、テキサス州が 4.1%、ワシントン州が 2.7%であっ た。 投資先の業種をみると、2010 年の内訳は、ソフトウェア 18%、バイオ 17%、エネルギー関連 16%、医療 機器 10%、IT サービス 8%、メディア・エンターテーメント 6%、通信 4%、半導体 4%と続き、ほとんどが ハイテク企業への投資であることがわかる。 本稿が対象としている WEB ビジネスが産業に及ぼす影響を見るために参考になるのが、インターネット関 連投資額の推移である。これは、様々な業界のスタートアップに投資された VC 投資のうち、インターネッ トを使った業務取引や、WEB に関連する製品サービスの開発に投資された額の総計である。 IT バブルがはじまる直前の 2000 年に全米で 755 億ドルであったものが、2001 年に 238 億ドル、2003 年 85 & Salkever (2010) を参照。 3 シリコンバレーの対象地域として、サンフランシスコ湾の東側の一部であるアラメダ郡の Fremont、Newark、

Union City の 3 市と、サンタクルーズ郡の Scotts Valley も含まれている。

4 米国は 2009 NVCA Yearbook、欧州は 2010 EVCA Yearbook (1 ユーロ=1.31 ドル換算)、日本は 2010 年 VEC

報告書 (1 ドル=83 円) による。

5 米国と欧州は 2009 年 12 月末、日本は 2010 年 3 月末の数字である。欧州の投資額は 2010 年末でドル (1

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億ドルへと落ちこんだ。その後、回復して 2007 年に 133 億ドルまで持ち直したものの、リーマンショックが あった 2008 年に 114 億ドル、その翌年の 2009 年には 74 億ドルと底を打ち、2010 年は 89 億ドルであった。 ただし、89 億ドルという金額は、VC 投資の総額 219 億ドルの 4 割に相当する。そして、89 億ドルの 51.8% がカリフォルニアに投資され、中でもシリコンバレーに限ると 43.6%に達する。 2.2 WEB ビジネスに注力する VC とインキュベータ さて、WEB ビジネスの興隆を支える起業インフラについても紹介しておきたい。2008 年頃からモバイル やソーシャルメディアだけにターゲットを絞ったファンドやVC およびインキュベーションが登場してい る。特にシリコンバレーの老舗的存在であるVC は、モバイルやソーシャルメディア関連のスタートアップ への投資に熱心だ。著名なVC である Kleiner Perkins Caufield & Byers (KPCB) は、6 Apple のスマートフォン

iPhone などに搭載できる iOS 向けアプリを開発するスタートアップを対象として、1 億ドルの iFund を 2008 年3 月に設立した。7 これはその後の iPhone のヒットによって倍額に引き上げられて約 25 社に投資されるこ

とになるが、最初の14 社に投資された 1 億ドルは、設立から 3 年を待たずに回収できた。投資先であった ngmoco (www.ngmoco.com) が日本の大手企業 DeNA におよそ 4 億ドルで、Pelago (www.pelago.com) が米国 のGroupon に買収されたからだ。 ngmoco は 2008 年にサンフランシスコで設立されたソーシャルゲーム開発の大手企業である。ngmoco が調 達した総額4,500 万ドルのうち、1,000 万ドルが iFund からの投資であったとされる。8 DeNA はモバイルのソ ーシャルゲームのプラットフォームビジネスを日本国内で展開する大手企業であり、グローバル展開するた めに、サンフランシスコに現地法人を設立していたが、アジア展開を睨むngmoco と、ソーシャルメディア とゲームのメッカであるサンフランシスコに拠点を築きたいDeNA の思惑が一致した。なお、ngmoco の競 合企業であるZynga も、iFund から 2,900 万ドルの投資を受けており、2007 年にサンフランシスコで創業し た。サンフランシスコがソーシャルゲームのメッカとなっていることがうかがえる。 Pelago は 2006 年にシアトルで設立され、ユーザーの位置情報を得て、おすすめのスポットを紹介するモ バイル向けアプリケーションを提供していた。KPCB からは 2,200 万ドルを調達していた。Pelago を買収し たGroupon は、クーポン共同購入サイトを運営するビジネスを展開しており、2008 年にシカゴで創業した 後、2010 年に 7.6 億ドルの売上を上げるまで急成長、2013 年までに株式公開を予定している。Pelago のシス テムをビジネスモデルに取り組むために買収した。9 iFund の好成績に満足した KPCB は次のファンドを計画し、2010 年に 10 月に、ソーシャルメディアのスタ ートアップに投資するsFund を 2.5 億ドルで設立した。戦略的パートナーとして Facebook、Amazon、Zynga の名前があがっており、これら企業のビジネスモデルと連携するスタートアップのソーシャル・アプリへの 投資が加速している。 一方で、新しい形態のVC も登場している。通常の VC が組むファンドは数億ドル規模であるが、一桁小 さい数千万ドル規模のファンドを組むMicro VC と呼ばれるような VC である。一社あたりの投資額も、最高 で数百万ドル程度だ。具体例をあげると、SV Angel (www.crunchbase.com)、Felicis Ventures (felicisvc.com)、 Floodgate (floodgate.com) がある。SV Angel は、Google や Facebook に投資したエンジェルとして知られる Ron Conway や元 Google で働いていた David Lee がパートナーである。投資対象は、WEB やモバイル関連の アーリーステージにあるスタートアップである。Floodgate も同じ投資対象を設定している。Floodgate はス ーパーエンジェルと称しており、これは、エンジェルが投資するシード (立ち上げ資金) と、伝統的 VC が 投資する次のラウンドのギャップを埋める役割を果たすと説明している。パートナーのMike Maples は、ア ーリーステージのTwitter や Digg に投資した経験を持つ。10 このように小口の投資を行うVC が登場するようになった背景には、WEB 関連のビジネスに必要とされる 立ち上げ資金が低減したことにある。ハードウェアのコストが下がり、サーバーは格安でレンタルできるよ うになり、ソフトウェアはフリーのものが出回っている。残るは人件費のみということになるが、これも契 約社員や海外へのオフショアを利用すると数分の1 におさまる。 起業活動の敷居が低くなったことは、WEB ビジネスを育てるために、短期間で小口の投資をしながら育 6 http://www.kpcb.com/

7 Written on March 31, 2010 at TechCrunch, KPCB Homepage 8 Written on October 13, 2010 at TechCrunch

9 Written on February 26, 2011 at The Wall Street Journal, posted on April 18, 2011 at Tech Crunch 10 Crunch Base の登録情報および各社ホームページを参照した。

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成を行う新たなインキュベータを登場させることともなった。 代表格は2005 年にサンノゼ市に近いシリコンバレーの南端のサニーベール市に設立された Ycombinator (ycombinator.com) である。世界各地からビジネスプランを募り、その中から選りすぐったスタートアップ の卵に、生活費と住居費を3 ヵ月間支給し、ビジネスプランの完成と製品サービスの開発に専念させる。期 間中に、マネジメントや経営ノウハウの知識のセミナーを行い、ネットワーキングの場も提供する。それぞ れのチームは切磋琢磨しながら最終日を迎え、地元のVC の前でプレゼンテーションを行う。投資が決まっ たスタートアップは卒業企業として、成長に向かって走り出すことになる。あらかじめ、インキュベータは 株式を取得しているので、卒業企業が成長して出口を迎えた場合にはキャピタルゲインを手にすることにな る。 これまで300 社以上を世に送り出しており、製品サービスの競争的地位を確立させて成長中の卒業企業の 代表例に、オンラインストレージのDropbox (www.dropbox.com)、ホームページのレンタル・サイトの Weebly (www.weebly.com) 等がある。 隣街のマウンテンビューにも、小口の投資を行って育てるインキュベータ、500 startups (500.co)があり、 世界から起業家の卵を集めている。これらのインキュベータのターゲットは、大学を卒業したばかりの若い 起業家の卵、そして海外の優秀なエンジニア集団である。 一方、シリコンバレーの北に位置するサンフランシスコ市内には、シェアード・オフィスとよばれるイン キュベータが点在している。Ycombinator のような期間限定のプログラムは持たないが、ネットワーキング の場を提供し、起業経験豊富なメンターがアドバイスする。また、アライアンスを組んだVC を同じ建物に 配置して紹介を行っているインキュベータもある。支援メニューを豊富に持ち、大規模に運営している例と して、Kicklabs (www.kicklabs.com)、Angelpad (angelpad.org)を上げることができる。

San Francisco 市内のインキュベータまたはシェアード・オフィスの入居者の特徴を南に位置するサニーベ ールやマウンテンビューの入居者と比べると、20 代の若い世代が多いこと、欧州から進出してくるケース が多いことがある。訪問して入居者を眺めた感想として、サンフランシスコ市内の施設には白人が多く、南 の市の施設にはアジア、中でもインド人が多い。欧州からやってくる若い起業家は、職住接近で車を運転す る必要がないサンフランシスコ市内を好む傾向がある。それを反映して、欧州のインキュベータそのものが 進出している。フランスからはParisoma (www.parisoma.com) が、スペインからは Oppino

(www.opinno.com/) が運営している。 2.3 出口戦略 リーマンショック以後の株式公開は難しくなっている。2009 年から 2010 年にかけてあまりに公開市場が 厳しかったことから、出口は株式公開 (IPO) ではなく、売却 (Buyout) が主流になっていた。もちろん、 Facebook や Zynga のように、大型の株式公開を前提としてアクセル全開で走る企業もあるが、稀な例と考え てよいだろう。2011 年夏には Facebook の従業員数は 2,000 人、Zynga は 1,200 人まで成長したと伝えられて いる。スタートアップから見るとこの 2 社は未公開企業にもかかわらず、Google や Microsoft 同様自分たち を買収してくれるかもしれないジャイアント企業にすでになっているのである。スタートアップのビジネス モデルが IPO ではなく、売却を目標にしているケースは多い。その場合大型売却ではなく、数百万ドルの小 規模のディールでもかまわない。起業から 2、3 年で売却し、また、次の起業を繰り返すというシリアル・ アントレプレナーを目指す起業家が多い。 ところで、大企業が小さなスタートアップを買収するという業界の動きにも、グローバル化が見られる。 海外に同じような製品サービスを展開するスタートアップがあると、買収しようとするのは妥当な戦略だ。 日本企業もそうした対象に含まれている。 日本のゲーム会社のスタートアップであるウノウはサンフランシスコ市内に現地オフィスを構えて、2010 年 8 月に Zynga に数千万ドル (推定) で買収され、日本の本社は Zynga Japan 株式会社になった。Groupon は日本進出のために、日本の共同クーポン購入サイトを運営するクーポッドを 2010 年 8 月に買収し、グルー ポン・ジャパン株式会社へと名称を変更した。先述のように DeNA は、2010 年 10 月にサンフランシスコの ngmoco を 4 億ドルで買収して 100%子会社とした。DeNA 以外にもシリコンバレーに進出している日本の公開 企業にサイバーエージェント、グリー、デジタルガレージ等々がある。米国のスタートアップを買収する動 きは今後も増えるだろう。 参考までに IPO 市場が低調であったことを示す数字をあげておきたい。 2008 年 9 月に起きたリーマンショックが IPO 市場に与えたダメージの大きさは 2001 年の IT バブル崩壊よ りも大きい。2007 年に 160 社あった新規株式公開件数は 2008 年に 24 件になり、VC 投資を受けていた企業の

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公開件数は、2007 年の 86 件から 2008 年の 6 件に激減した。2009 年は全体の公開件数 38 件中、VC 投資を受 けていた企業の公開件数は 12 件と落ち込んだままであったが、2010 年には回復して全体の公開件数 104 件 中、VC 投資を受けていた企業の公開件数は 72 件であった。しかし、公開までにかかった年数には注意が必 要である。公開にいたる平均年数は 2005 年の 6 年、2006 年の 8 年、2007 年 9 年、2008 年 10 年、2009 年 10 年、2010 年 9 年と長くなっている。その理由として公開審査が厳しくなったことが指摘されている。公開が 厳しくなると、もうひとつの出口である売却という選択肢が浮上する可能性はますます高くなるであろう。 最後に、業種別で株式公開数を見てみよう。2010 年公開件数 72 件中最も多かった業種はバイオテクノロ ジーの 14 件で、次いでソフトウェア 8 件、消費材 8 件が並んで続く。WEB ビジネスと関連が深い業種を見る と、メディア・エンターテインメント 5 件、IT サービス 4 件であり、全体と比較するとこの業種の株式公開 数が低いということがよくわかる。 3 調査対象が入居するインキュベーション

本稿が調査対象としたスタートアップが入居している Plug and Play Tech Center について紹介しておこ う。シリコンバレーの最南端のサンノゼ市の北側に位置するサニーベール市に位置し、3 階建てフロアの総 面積は 150,000 sq (13,950 m2) である。 地下にはデータセンターがあり、1 階から 3 階までがオフィススペースとなっている。入居企業のほとん どが IT 産業に属しており、ソフトウェア開発、WEB やモバイル関連のビジネスを展開している。最も小さな オフィススペースは 2 名が座れる程度のものであり、大きくても 8 名程度までの規模で、それよりも大きく なると、卒業していくことが多い。3 階スペースの一部は、VC のサテライトオフィスが入居している。

入居企業にとっての魅力のひとつは、Plug and Play のスタッフに提出したビジネスプランが認められる と、3 階の VC にプレゼンテーションする機会が得られることだ。サテライトを持っていない VC も月に 1 度 訪問し、Plug and Play の紹介するスタートアップのプレゼンテーションを聞く機会を設けている。日本か らは、NTT グループやソニーのコーポレート・ベンチャー・キャピタル部門が 1 度訪問している。また、 Plug and Play 自身も投資機能を持っており、別法人格の Amidzad Ventures は、成長が期待できるスタート アップに投資している。実際、Google と Paypal のアーリーステージに投資をした実績がある。

サニーベール市の施設は 2006 年オープンであるが、2000 年以前から、パロアルト市内でインキュベーシ ョン事業を行っていた。そのころに入居していたのが Google と Paypal である。Google の創業者がスタンフ ォード大学のドミトリーから出て、最初に入居した民間オフィスが Plug and Play であったというエピソー ドはよく知られており、縁起担ぎで入居を決める創業者は少なくないという。実際、筆者は、Plug and Play の CEO がイベントで挨拶する際にこのエピソードを何度も聞いた。Google のように株式公開を果たすか、売 却されて卒業していった企業の名前は、パネルになって受付の壁にずらりと飾られており、写真にあるよう に、Successful Exit として紹介される。 大学と連携していることも特徴のひとつである。たとえば、国内や海外の大学と提携して、ビジネスプラ ンをプレゼンテーションするピッチコンテストが催され、審査員には、各大学を卒業したベンチャー・キャ ピタリストが並ぶ。 また、大学向け以外にも独自のピッチ・コンテストを主催しており、国内向けと国際向けに毎年 2 回ずつ 開催されている。参加者は、地元のスタートアップの他に、海外から進出を考えているスタートアップや国 内と海外の MBA を中心とした大学院生チームである。審査員には地元の VC をよび、聴衆には起業家の卵が多 い。参加費は数百ドルと安くはないが、毎回盛況である。優秀者には、入居 3 ヶ月の権利が渡される。 ピッチは 3 分しかないため、ビジネスモデルの要点しか話すことができない。だが、短くても、経営チー ムの学歴と経歴が強調されることが多い。というのも参加 40 社から上位 3 社の優秀者を決めるまでの集計時 間は、大ホールの外のオープンスペースにブースが設けられ、VC と発表企業の個別相談の場となる。その 時間こそが重要なのであって、ピッチそのものは単なる紹介にすぎないからだ。日本のコンテストとの大き な違いは、審査員向けに詳しい資料がなく、エグゼクティブサマリーと言われる 1 頁の概要しか渡されな い。ビジネスモデルはエレベーターピッチと言われる 30 秒で説明できるくらい明瞭でなければならないと いうシリコンバレー流儀がここにも反映されているのだろう。 ピッチコンテスト以外では、ネットワーキングイベントが開催されている。月に 1 度夕方 6 時から開催さ れるコミュニティ・ミーティングは、新しい入居企業が自己紹介を行い、会場ではピザ、コーラ、ビールが 振るまわれる。他にも、CEO Talk と題して、出口を迎えた起業家を招いた講演会を不定期に開催している。 施設内を歩くと、各国の旗がはためくパビリオンが目につく。カナダ、バルセロナ、チェコ、オーストリ

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ア、フィンランド等の政府系機関が自国からのスタートアップの進出を促進している。選抜されたスタート アップは 3 ヵ月ずつ滞在し、その後意を決すれば、自力での進出となる。

日本の政府系団体としては福岡県が入居しているのみだが、民間のインキュベーターであるサンブリッジ がジャパンパビリオンを運営している。サンブリッジの本社は恵比寿にあり、IT 系スタートアップを対象 にインキュベーション事業と投資事業を行ってきた。CEO の Allen Miner は、元オラクルジャパンの初代会 長を務めた人物である。日本人のシリコンバレー進出を支援するため、2009 年に Plug and Play の中にブー スを開設。2011 年 8 月現在 7 社ほどのスタートアップが入居している。広いスペースを Plug and Play から 借りて入居企業にサブリースしているので、利用料は割安になっているのが特徴である。完全に移住してき た起業家もいれば、出張ベースで利用している企業もある。 国単位での出展以外に、大企業が運営するパビリオンがある。オンライン決済サービスの PayPal と家電 量販店の BestBuy だ。自らのビジネスに関連するスタートアップを入居させており、おそらく、こちらも利 用料を補填する形でサブリースしていると思われる。 そして今回の調査対象企業の多くが、iPhone パビリオンに入居している。2006 年の iPhone 登場は、モバ イルアプリケーションの市場を生み、多くのスタートアップを輩出させた。これらビジネスを後押しするた め、Plug and Play の経営者の肝入りで、1 階部分の一等地に iPhone パビリオンが開設された。

4 スタートアップのビジネス iPhone パビリオンやその近くに、モバイル関連とソーシャルメディア系ビジネスのスタートアップが集 まっている。常時入れ替わりが激しいが、インタビューを申し込んだ 50 社ほどのうちから、取材協力が得 られた 18 社を紹介したい。データは 2010 年 8 月から 2011 年 8 月に収集した。設立は 2004 年が 2 社、2007 年が 3 社、2008 年以降が 13 社と若い企業が多い。規模はまだ小さく、経営チームは創業者の 2– 3 名程度で 構成され、11 国内の従業員数は契約社員やパートタイムを入れても 3– 5 人程度である。ただし、オフショア 開発を依頼している企業が少なくない。インド出身者が米国で創業した 5 社のうち 3 社はインドに開発部隊 を置いている。欧州で創業した後に米国に進出した企業の 5 社、オーストラリアとパキスタンで創業した後 に米国に進出した企業の各 1 社も、本国に開発部隊を置いたままだ。 ビジネスはモバイル向けが 6 社、PC の WEB 向けが 3 社、両用が 9 社である。顧客ターゲットは、一般消費 者を対象にしたサービスであるコンシューマー・ビジネス 9 社、デベロッパー等法人向けのサービスである エンタープライズ・ビジネス 7 社である。しかし、コンシューマー・ビジネスの中には、収益モデルが、個 人の利用料と法人からの広告収入のミックスになっている場合もある。 顧客の獲得方法は、エンタープライズ・ビジネスの場合は、創業者が過去の仕事経験で築いた顧客リスト を利用しており、コンシューマー・ビジネスの場合は、Facebook や Twitter といったソーシャルメディアを 活用して直接に一般消費者にアクセスしている。 従業員の獲得には、個人的ネットワークを活用しており、同窓会組織や前職の職場のネットワークを頼り にしている。海外から進出して米国内に現地法人を置くような場合には知己がないので、人材紹介業に頼っ たり、ローカルな情報サイトの Craigslist12 を利用することもある。Plug and Play の人材紹介を行う専門

スタッフに頼んでいたサンプルもあった。興味深かったのは、入居企業間で開発の仕事を外注し合うこと だ。新サービスの上市前は大変忙しくなる。その繁忙期に、隣のブースにいる技術者が開発を助けることは 珍しくなく、インキュベータに入居するメリットのひとつになっている。 資金獲得の状況は、WEB ビジネスの経営に必要な資金がきわめて少なくなっていることを反映している。 立ち上げ資金 (シード) をエンジェルから調達したが、追加の投資 (シリーズ A) を受けていない企業は 4 社であり、そのうち半数は追加の投資が必要ないという。エンジェルと自己資金を合わせて 200 万ドル程度 あれば、エンジニアを雇って製品サービスを完成させることができるという回答が多かった。レンタルサー バーの費用が安く、パートタイムやオフショア開発を活用できるという環境がもたらした結果だろう。シー ドやシリーズ A の投資を VC から受けた企業は 7 社あった。そのうち、3 社は、創業した国、スウェーデン、 スペイン、オーストラリアにある VC または投資銀行から調達し、2 社が Plug and Play の関連 VC から投資

11 2011 年に発表されたベイエリアの WEB ビジネス 650 社を対象にした Startup Genome Report によると、2–3

人の創業者による起業が最も成長スピードが速くなるという結果が得られている。

12 1995 年にサンフランシスコで開設されたローカル情報を交換するためのサイトで、求人、不動産他様々な

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を受けた。残りの 7 社は外部資金調達がまったく無い状態である。そこで、数百万ドルの投資を探している 企業が多い。

ところで、1 年間の調査期間中に、18 社中 8 社が施設を去って行った。明らかに成長して卒業した企業は 2 社あり、WEB やモバイルシステムのデバックをオンラインで請け負う uTest (www.utest.com) と施設内地 図を提供する Micello (micello.com) である。uTest はシリーズ C まで資金調達が進み、総額 2,000 万ドル に達している。Micello の調達金額は不明だが、Plug and Play の関連 VC から投資を受けた。

5 スタートアップの起業家像 次に起業家に焦点を当てよう。インタビューに応じてくれた 18 人中 4 人が複数の起業経験を持つシリア ル・アントレプレナーであった。また、米国生まれは 18 人中 3 人だけで、ほとんどが外国生まれであった。 アジア出身者が 8 人 (インド 5 人、スリランカ、イスラエル、パキスタン)、欧州出身者 6 人 (フランス、ド イツ、スウェーデン、スペイン、ルーマニア、ルクセンブルク) であった。アジア出身者は、米国、オース トラリア、英国等の英語圏の大学に留学経験を持つ者が多い。それに対し、欧州出身者は自国の大学を卒業 して起業した後に、米国にはグローバル展開のために進出した (一人を除く) というパターンが多い。 次に学歴に目を移そう。工学系かつ修士号取得者が多いことが目を引く。CTO の職位にある者はいわん や、CEO の職位にある 15 人中 11 人も工学系を専攻していた。また、18 人中 12 人が修士号を取得している。 工学と MBA の複数修士号が 3 人、工学のみが 6 人、MBA のみが 3 人である。 年齢の分布は 22 歳から 50 歳までで、平均年齢は 39 歳であった。平均年齢の高さから想像できるとおり、 大学を卒業してすぐに起業したアカデミックスピンオフ型ではなく、企業勤務を経て起業した大企業スピン オフ型の起業がほとんどである。したがって、勤務時代のスキルやネットワークを活かしたビジネスを展開 している。Shane (2000) が指摘する prior knowledge が起業に影響していることになる。勤務時代の仕事内 容が現在の起業に密接に関連している例を挙げておく。 □運輸安全協会勤務→エアライン、レンタカー、パーキングの予約をする携帯アプリの開発 □Vodafone 勤務→携帯決済システムの開発 □Apple にて高等教育機関向けビジネス→遠隔会議システムの開発 □Yahoo にて携帯上の広告プラットフォーム提供→中小出版企業のコンテンツを配信する携帯アプリの開 発 □Sun Micro にてクラウドコンピュ-ティング→施設内地図を提供する携帯アプリの開発 □大学にて情報システムのリサーチアシスタント→グラフ作成のオンラインソフトの開発 □IT 企業で QA のプロジェクト統括→ソフトウェアの QA テスト請負 □WEB アプリ開発会社勤務→モバイルアプリ開発 □モバイル関連ビジネスのマーケ担当→Facebook に連結したサービス業者紹介サイト運営 □UNICEF の広報で WEB 担当→ソーシャルメディア上のファンページ作成アプリ提供 □3D や WEB 受託開発会社プログラマー→ゲームや地図開発のプラットフォーム提供 □WEB ビジネスのプロダクトマネジャー→WEB サイト開発のプラットフォーム提供 □人工知能を使ったシステム開発→アプリのプロトタイプ作成ツール提供 これら企業が飛躍的に成長できる起業機会を認識して起業に踏み切ったかどうかについては疑問が多い。 先述したように、予定している資金調達は数百万ドル、日本円にして数億円であり、起業環境が整っている 米国では、日本におけるほど高い目標とは言えない。海外から進出したサンプルを除いて、米国で創業した サンプルに注目すると、30 代、40 代に大企業をスピンオフした創業者にとっては、業界再編の波や雇用関 係を考慮すると、起業はキャリアの中でも選択肢であったようだ。モバイルやソーシャルメディア興隆の中 で、自身のスキルや経験を活用して起業できるのなら、その選択肢は経済性計算に見合うものであったはず だ。 出口戦略についてたずねると、株式公開と明確に答えるサンプルは少なく、むしろ、Google、Facebook 等への売却を期待している。VC から投資を受けずに、エンジェルからのわずかな投資でサービスを立ち上 げた場合には、少なくとも数百万ドル程度の売却によってキャピタルゲインを得た後、再度起業するという シナリオが描ける。また、ソーシャルメディアを活用して顧客の獲得ができるコンシューマー・ビジネスが 軌道に乗れば、着実に現金を稼ぎだすことが可能となる。起業というよりは独立開業によって生計をたてる

(8)

イメージになるだろう。

気をつけなければいけないのは、Plug and Play への入居はそれほど審査は厳しくなく、短期養成プログ ラムによって運営されている 500 startups や Y Combinator の入居企業ほど成長志向が強くはないことだ。 そうした点では他のインキュベータを調査したほうが、若くて起業意欲の高い起業家や出口戦略を明確に持 った起業家に出会える確率は高いだろう。 6 グローバル化のための米国進出 米国に進出した企業 7 社のグローバル化のスピードについて確認しておこう。 創業から 3 年以内にグローバル化に挑んでいる。設立後 3 年以上経過してからシリコンバレーにオフィス を構えた 2 社には理由がある。ルーマニアのスタートアップのビジネスモデルは、米国進出の際には変更さ れた。Facebook のような SNS をルーマニアで立ち上げて成功をおさめた後、米国ではモバイル決済サービス を展開しようとしている。また、スウェーデンのスタートアップは、米国に現地法人をおく前から IPTV 向 けのアプリケーションを米国企業に提供しており、香港やオーストラリアには以前から現地法人があった。 ■2003 年 起業 ルーマニア 2009 年 米国進出 ■2004 年 起業 スウェーデン 2010 年 米国進出 ■2004 年 起業 パキスタン 2007 年 米国進出 ■2007 年 起業 オーストラリア 2011 年 米国進出 ■2008 年 起業 スペイン 2011 年 米国進出 ■2008 年 起業 ルクセンブルク 2010 年 米国進出 ■2009 年 起業 フランス 2010 年 米国進出 表1 米国進出企業のサンプル 会社名 面談創業者 ビ ジネス 収益源 創業 創業 者数国籍 年齢 教育 キャリア 回数 規模 資金調達 採用 顧客獲得 2011年 8月所 在

Avenue SocialCOO:Salman Ghaznavi ソーシャルメディア 上のファ ン ページ 作成システム提供 法人向け 2004 年パキ スタン 、2007 年米国 3人 パキスタ ン 32歳 オーストラ リア 留学(経済学 士) ユニセフの広報 でWEB担当 初回 本国150人+米国 8人 外部資金なし ロ ーカ ル 情報サイ ト 利用 個人ネット ワーク 入居中 Netopia System CEO:Antonio Eram モバイ ル決済サー ビ スのアプ リ 法人向け +個人利 用 2003年ルー マニア、2009 年米国 1人 ルーマ ニア 30代 ルーマニアの 大学 ボーダフォ ン 勤 務 初回 本国エン ジニア10 人+米国営業4人 本国のSNSビ ジネスで内部留 保 イ ン キュ ベータの紹 介 大手企業と の契約を 皮 切りに開拓 中 入居中

ZAP S.A. CEO:Patric de Waha 共通の興味を 持つ 人を 位置情報を 使って探すモバイ ルアプ リ 個人利用 +広告収 入 2008年ルクセ ン ブ ルク、 2010年米国 1人 ルクセン ブ ルク 30代 ドイ ツ の大学 (コン ピ ュータ サイ エン ス修 士) WEBビ ジネス企 業でアプ リの開 発 初回 本国2名+米国2 名 本国のエン ジェ ル 不明 Facebook活 用 退去 MagicSolver CEO: Emmanuel Carraud iPhone 向けゲーム のアプ リ 個人利用 +広告収 入 2009 年英国 2010年米国 2人 フラ ン ス 36歳 英国ケン ブ リッジ大(MBA) 食品業界のマー ケティン グ担当 初回 本国2名+英国8 名 外部資金なし 個人ネット ワーク 同業者との 連携、iTune ストア 退去 Accedo Broadband CEO:Michael Lantz IPTV用のオン デマ ン ドビ デオ、スト リーミン グ、3Dゲー ムのシステム 法人向け 2004年ス ウェ ーデン 、 2011年米国 2人 ス ウェ ー デン 38歳 スウェ ーデン のルン ド大 (工学修士) WEBビ ジネスの プ ロ ヘクトマネ ジャー 初回 80人(本国、ロ ン ドン 、オースラ リ ア、香港、米国) スウェ ーデン のVCから調達 TV生産メー カ ーや放送 局に直接営 業 入居中 Cinergix CEO:Chandik a Jayasundara オン ラ イ ン で描画 ソフト 法人+個 人 2007年オー ストラ リア、 2011年米国 3人 スリラ ン カ 29歳 豪州メルボル ン 大学(情報 学修士)およ びロ ン ドン 大 学(こうん ピ ュータサイ エン ス学士) 大学でアシスタ ン ト及びソフトウ エア会社でエン ジニアした後、ソ フトウエアの受託 ビ ジネスで起業 2回目 本国4人+スリラ ン カ 10人エン ジニ ア) 豪州のVCから 調達 個人ネット ワーク オン ラ イ ン で営業 退去 Justinmind CEO:Xavier Renom アプ リのプ ロ トタイ プ を 作成する ため のツ ール提供 法人向け 2008年スペ イ ン 、2011年 米国進出 2人 スペイ ン 38歳 スペイ ン の UPC( コン ピ ュータサイ エン スの学 士) 人工知能企業勤 務でプ ロ グラ ミ ン グ 初回 本国8人エン ジニ ア3人営業+米国 2人営業 スペイ ン の銀 行から投資 イ ン ターン シップ 利用 オン ラ イ ン や直接の営 業 入居中

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それでは、米国進出した 7 社について詳しく見ていきたい。

起業家は、自国で大学を卒業した後、企業勤務を経て起業しており、勤務時代の経験と知識が起業に直結 しているサンプルがほとんどである。また、開発部隊を本国に置きながら、米国ではマーケティングや事業 開発を行っているパターンもいくつか見られる。資金は本国のエンジェルや VC から集めた資本金を活用し ているが、今後、米国での展開を続けていくためには、売上拡大による内部留保か米国における資金調達が 必要になってくると予想できる。すでに 7 社中 3 社が Plug and Play を退去しているが、そのうちの 2 社、 Magic Solver と Cinergix は入居の経緯に特別な理由があった。前述したピッチコンテストに入賞し、その 賞品が短期の入居であったのである。共に半年ほど入居してマーケティング活動を行った後に、本国へ帰っ て行った。もちろん、その期間に米国におけるビジネスの大きな成長の機会を見出せば、残留した可能性は 高いが、結果的にはそうならなかったようだ。 7 移民の起業 移民による起業サンプルをまとめてみた。 8 人中 5 人がインド出身と、人口統計上インドからの移民が多いという実態を反映した結果が出ている。5 人は、インドまたは米国で工学を専攻し、半導体または IT 企業に勤務した経験を持つ。うち 2 人は米国で MBA も取得している。シリコンバレーにおけるハイテク産業を支えてきたエンジニアの多くは、彼らのよう なアジア出身の移民が多い。 インド出身者の起業の特徴は、インドに開発部隊を置いたり、外注することによって、人件費を削減でき ることにある。インドにはバンガロールやハイデラバードのような IT 産業の新興都市に人材が集まってお り、米国で企画したシステムを、数分の 1 の人件費で開発できる。インド出身の起業家に限らず、オフショ 表2 移民による企業のサンプル 会社名 面談創業者 ビジネス 収益源 創 業 創業 者数 国籍 年 齢 教育 キャリア 回数 規模 資金調達 採用 顧客獲得 2011年 8月所 在 uTest CEO:Doron Reuveni システムのQA テストをオンラ インで請け負う 法人 向け 200 7年 2人 イスラ エル 47 歳 イスラエルの Technion-Machon Technologi Le' Israe(工 学学士) IT企業でQAプロ ジェクトの統括 初回 53人 VCからシ リーズ C(総額 2000万ド ル) 米国、南ア フリカ、ア ジアにテス ターの人 材 オンライン を使った営 業 退去 (成長し た) C2Call CEO:Martin Feuerhahn ブラウザー上 の通話アプリ 個人 利用 200 8年 2 人 ドイツ 45 歳 ドイツの Paderborn大 学(ビジネス &工学修士) アジアで自動車 の購買担当から 起業して、香港 の市内案内サイ ト運営、ドイツの メディアビジネス 3回 6人エンジニ ア、4人マー ケ、パートタイ ム15人(ドイツ &台湾)、3人 米国 ドイツの VC 過去の仕 事のネット ワーク Facebook 活用 入居中 SachManya CEO:Chintu Parikh 中小出版企業 のコンテンツを 配信する携帯 アプリ 法人+ 個人 200 9年 2 人 インド 35 歳 Cleveland 大 学(工学修士) &Carnegie Mellon(MBA) YahooでWEBビ ジネスのマーケ &事業開発担 当、Wi-Fiビジネ スで起業 2回 米国3人エンジ ニア、1人マー ケティング PnP関連 VC 個人ネット ワーク 中小出版 企業へ直 接営業 入居中 Micello CTO:Prakas h Narayan インドアマップ 配信するモバ イルアプリ 個人 利用 (広告 収入) 200 9年 3人 インド 50 歳 インドのIIT Delhi(工学修 士) サンマイクロで Javaとクラウドコ ンピューティング のプログラマー 初回 米国5人エンジ ニア、2人マー ケ&営業、東 京、アムステル ダム、チェンマ イに現地オフィ ス エンジェ ル&PnP 関連VC Techcrunc h入賞歴を 利用して 採用 モバイル通 信会社と電 話メーカー への営業 退去 (成長し た) Envizio Labs CEO:Prasad K.R. 小売業向け決 済システムの モバイルアプリ 法人 201 0年 3人 インド 49 歳 Oklahoma大 学(工学修士) 半導体エンジニ アから転向し、 Mac OS 関連ビ ジネスを起業 2回 米国5人、英国 5人、インド30 人 外部資金 なし 個人ネット ワーク 過去のクラ イアント 入居中 TrustHop CEO:Viral Kadakia 個人向けサー ビス業者の推 奨をする Facebookと連 動したアプリ 法人+ 個人 201 0年 2人 インド 38 歳 U of Texas(コ ンピュータ修 士 ), Kellogg School(MBA) モバイルビジネ スのマーケ&製 品開発マネジメ ント 初回 米国1人エンジ ニア、販売1 人、契約エンジ ニア3人 エンジェ ル 個人ネット ワーク Facebook 利用 退去 PeerMeUp CEO:Hector Gonzalez Banos ゲームや地図 のプラット フォーム提供 法人 201 1年 2人 メキシ コ 46 歳 Stanford 大学 (電子工学博 士) ロボット、3D、 WEB サイトの受 託開発会社でプ ログラミング 初回 1名エンジニア 外部資金 なし 個人ネット ワーク& 前 職の関係 電子媒体 企業へ直 接営業 入居中

WEB MOBI CEO:Sachin Anand WEB&モバイル サイトの開発者 にプラット フォーム提供 法人 201 1年 2人 インド 34 歳 インドのIIT (電子修士)& Washington大 学(MBA) 半導体企業で製 品開発マネ ジャー、ソーシャ ルメディア企業で WEB ビジネス」 担当 初回 インドに5人エ ンジニア 外部資金 なし 個人ネット ワークと WEB利用 した採用 活動 Facebbok 等のSNS 利用 入居中

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ア開発を利用することは一般的な方法になっているが、インドと縁が深い経営者ほど、インドの地元企業と 強固な関係を構築できる。 移民による起業のサンプルのうち、2 社が成長して退去していった。2 社とも、VC からの資金調達を受け ている。uTest は従業員数が 50 人を超えている。他社の QA テストをオンラインで引き受けるビジネスを伸 ばしてきた。テスターを海外を含め遠隔地に置いており、クライアントから依頼があると、翌々日には仕事 を開始するという迅速な対応によって受注を伸ばしてきた。その背景には、モバイルやソーシャルメディア 関連のアプリが飛躍的に増えるに従い、テストの需要も増大したことがある。 もう 1 社の Micello は、ショッピングセンター、駅、大学等の施設内地図の提供を行っている。東京、ア ムステルダム、チェンマイにもオフィスをもっているが、これは、創業メンバーに各地の出身者がいたから である。人材獲得には、ピッチコンテスト入賞の名声が有効だったという。Micello が入賞したピッチコン テストの TechCrunch Disrupt は、2009 年から始まったカンファレンスであり、WEB 2.0 関連のビジネスの登 竜門として最も注目されている。このような場で認められると、業界で名声を得て、大企業に存在をアピー ルできる効果が期待できる。 8 まとめ M&A と起業活動によって加速するグローバル化の波と、それを支える移民による起業という特徴が今回の 調査で見えてきた。 株式公開を果たした大企業や、公開を近々予定している成長した企業が、将来性の高いスタートアップを 買収することに意欲的であり、スタートアップ側も売却を出口戦略として意識している傾向が強いことを確 認してきた。そして、買収劇は国境を越えて加熱しており、WEB ビジネスのグローバル化に拍車をかけてい る。 また、WEB ビジネスにおける起業も従来の産業と同じく、移民が支えている実態を確認できた。特にイン ドからの移民が多い。今回の Plug and Play のサンプルの人種構成を裏づける定量調査がある。デューク大 学による 2008 年の調査のデータ13 を見ると、インドからの留学生の専攻がエンジニアリングとコンピュー タサイエンスに偏っていることがわかる。コンピュータサイエンスを専攻するインド人留学生がインド人留 学生全体に占める割合は 16.2%、同じく欧州の場合は 4.3%、中国の場合は 4.8%であった。エンジニアリ ングの専攻は、インド 51.1%、欧州 17.1%、中国 25.8%であった。インドから留学して移民となる人材の 7 割近くが、IT 産業のエンジニアになる可能性が高いという結果が得られている。さらに、留学生ではな く、インドの大学を卒業して就業のために米国に入国してくるケースもありうる。今回のサンプルにも、イ ンドの工学系大学 IIT の卒業生が 2 名含まれている。 これらインドからの移民が永住しないでいずれ自国に帰ろうとする傾向が強くなっていることは 1.3 で述 べた。彼らは、シリコンバレーと自国を結ぶ架け橋となるであろう。現状、製品サービスは米国ブランド、 開発と製造はアジアという国際分業が見られるが、将来はどのような分業体制となるのだろうか。新興国も 巻き込みながらソーシャルメディアの興隆とモバイルビジネスの発展から目が離せない。

【参考文献】

Duke University & U. C. Berkeley (2007) America’s new immigrant entrepreneurs. Marmer, M., Lasse, B., & Berman, R. (2011). Startup Genome Report 01. blackbox.

Saxenian, A. (1994). Region advantage. Harvard University Press. 邦訳, A. サクセニアン (1995)『現代 の二都物語』大前研一訳. 講談社.

Saxenian, A. (1999). Silicon Valley’s new immigrant entrepreneurs. San Francisco: Public Policy Institute of California.

Saxenian, A. (2005). The new Argonauts. Cambridge, MA: Harvard University Press. 邦訳, A. サクセニ アン (2008)『最新・経済地理学 グローバル経済と地域の優位性』星野岳穂, 本山康之監訳. 日経 BP 社.

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Shane, S.(2000). Prior knowledge and the discovery of entrepreneurial opportunities. Organization Science, 11(4), 448–469.

Wadwa,V., Saxenian, A., Rissing, B., & Gereffi, G. (2008). Skilled immigration and economic growth. Applied Research in Economic Development, 5(1), 6–14.

Wadhwa,V., Saxenian, A., Freeman, R., & Salkever, A. (2010). Losing the world’s best and brightest: America’s new immigrant entrepreneurs (Part V).

田路則子 (2008)「シリコンバレーにおけるハイテク・スタートアップス成長のメカニズム」『研究技術計画』 23(2), 81– 90. 田路則子 (2009)「シリコンバレーのシリアル・アントレプレナー―半導体スタートアップのレポート」『赤 門マネジメントレビュー』8(8), 493– 508. http://www.gbrc.jp/journal/amr/AMR8-8.html 田路則子, 露木恵美子 (2010)『ハイテク・スタートアップの経営戦略―オープン・イノベーションの源泉』 東洋経済新報社.

〈発 表 資 料〉

題 名 掲載誌・学会名等 発表年月 「WEB ビジネスの起業家像ーシリコ ンバレーのモバイル&ソーシャルメデ ィア・ビジネス 赤門マネジメントレビュー 2011 年 10 月

参照

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