Title
バーク堆肥の堆積日数とアンモニアを有機化する微生物活
性との関係( 本文(Fulltext) )
Author(s)
石黒, 泰; 熊谷, 淳逸; 福井, 博一
Citation
[廃棄物学会論文誌] vol.[20] no.[1] p.[61]-[67]
Issue Date
2009-01-29
Rights
Japan Society of Material Cycles and Waste Management
Research (廃棄物資源循環学会)
Version
出版社版 (publisher version) postprint
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/34772
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
【 論
文 】
バーク堆肥の堆積日数とアンモニアを有機化する
微生物活性との関係
石 黒
泰 * ・ 熊 谷 淳 逸 * * ・ 福 井 博 一 * *
【要 旨】 バーク堆肥の利用法としては,鉢物培土が有望であるが,発酵が不十分な堆肥ではアンモニ アの発生や窒素飢餓などの障害が発生するため,正確な腐熟度判定が不可欠となる。バーク堆肥の一次 発酵では,易分解性有機窒素化合物の微生物分解によって多くのアンモニアが発生すると同時に,その アンモニアは他の微生物により有機化される。堆肥中の易分解性有機窒素化合物が減少すると,これら の微生物活性も低下する。本研究では微生物活性の指標としてアンモニアの消長に着目し,アンモニア と堆積日数との関係を検討した。堆積日数の短い堆肥のアンモニア含量は高く,アンモニア含量により 一次発酵過程の判定が可能であった。一次発酵が終了したと推定された堆肥に硫酸アンモニウムを添加 し,72 時間後のアンモニアの消長を測定した。堆積日数が長い堆肥は短い堆肥に比べてアンモニアの 減少が小さく,アンモニアの減少量により二次発酵の堆肥の腐熟度判定が可能であった。 キーワード:バーク堆肥,腐熟度,アンモニア,二次発酵,微生物活性1.緒
言
バーク堆肥は森林資源の有効活用法の一つとして注目 されているが,道路整備などの公共事業の減少に伴って 法面吹きつけなどの需要が減少し,新たな需要の開拓が 望まれている。国内において花き鉢物は年間約 32 億 4 千万鉢が生産されており,現在はその培養土として輸入 ピートモスが多用されている。しかし,ピートモスはそ の採掘地における環境問題からヨーロッパを中心に鉢物 培養土としての利用が制限される状況にあり,その代替 培養土としてバーク堆肥に着目した。しかし鉢物培養土 としてバーク堆肥を用いた場合,堆肥の腐熟が不十分で あるとアンモニアの発生や窒素飢餓などの障害が発生す るため,正確な腐熟度判定が不可欠となる。堆肥の腐熟 度の判定には様々な方法が提案されており,物理化学的 指標や酵素活性などを用いる方法1),フェノール性成分 の還元力を測定する方法2),堆肥の酸素消費量を測定す る方法3)などが報告されている。 堆肥の発酵はバクテリアによる発酵が中心となる一次 発酵と糸状菌や担子菌が発酵の中心を担う二次発酵に大 別され,これらの腐熟度判定方法には,主に一次発酵に おける特性が用いられている。しかし,バークなどの木 質素材が多い堆肥では,バクテリアなどによる一次発酵 での発酵活性が低いため,一次発酵における特性を用い た腐熟度判定が難しいことが知られており4),藤原ら5) は一次発酵での腐熟度判定に加えて,その後の二次発酵 (後熟過程) での腐熟度判定が重要であると述べている。 しかし,二次発酵での腐熟度判定についてはこれまで充 分な検討がなされておらず,鉢物培養土としてのバーク 堆肥の活用が充分に進んでいないのが現状である。 一般にバーク堆肥の製造にあたっては,発酵を促進す るために易分解性有機窒素化合物を含む副資材が添加さ れる。一次発酵過程において,これらの易分解性有機窒 素化合物が微生物によって分解され,多量のアンモニア が発生する。このアンモニアは大気中に放出されるとと もに,堆肥中の微生物によって有機化されると考えられ る。そこで本研究では,一次発酵過程において,易分解 原稿受付 2007. 11. 1 原稿受理 2008. 10. 24 * 岐阜大学大学院連合農学研究科 ** 岐阜大学応用生物科学部 連絡先:〒 501-1193 岐阜市柳戸 1-1 岐阜大学応用生物科学部 福井 博一 E-mail : [email protected]性有機窒素化合物が分解されて発生するアンモニアの消 長が,腐熟度判定に利用できるのではないかと考え,ア ンモニアの消長の調査を行い,堆積日数との関係を検討 した。また,一次発酵が終期を迎え,アンモニアの生成 量が減少した堆肥においては,堆肥中の微生物の活性を 用いることで腐熟度の判定ができるのではないかと考え, 微生物活性の指標として,微生物のアンモニアの有機化 能力が腐熟度の判定に利用可能かどうかを検討するため に,堆肥に尿素あるいは硫酸アンモニウムを添加してア ンモニアの消長を調査し,堆積日数との関係を検討した。
2.材料および方法
供試材料には,伐採樹木:ふすまを 3 : 1(v/v) に混合 したものを原料として露天で堆積したバーク堆肥 (中日 本農産(株)) を用い,供試堆肥の堆積開始日,堆積日数, 試料採取日を表 1 に示した。各堆肥の初期堆積量は 50〜100 m3で,堆肥の切り返しは 1ヶ月毎に行った。採 取した堆肥を 105℃で 24 時間乾燥させて生重 100 g あ たりの乾重を求めた。堆肥 20 g (生重) を蒸留水 100 mL に加え,乾燥堆肥 1 g に対して窒素 1 mg となるよ うに尿素および硫酸アンモニウムを添加した。25℃,60 rpm の条件で 0, 24, 48, 72 時間振とうし,振とう終了 後に 4N 塩化カリウム溶液 100 mL を加えてさらに 1 時 間振とうした。堆肥懸濁液をポリエチレンテレフタレー ト (PET) 不織布で濾過し,濾液を静置した後に上清 50 mL を採取した。上清にイオン強度調整剤として 4% 水酸化ナトリウム溶液を 5 mL 加え,アンモニア複合電 極 (AE-2041,東亜ディーケーケー(株)) を付けたポータ ブルイオン・pH 計 (IM-22P,東亜ディーケーケー(株)) でアンモニウムイオン濃度を測定した。対照区として尿 素および硫酸アンモニウムを添加しない窒素無添加区を 設け,同様にアンモニウムイオン濃度を測定した。硝酸 イオン濃度の測定は,アンモニウムイオン濃度の測定の 際と同様の上清に蒸留水を 50 mL と,イオン強度調整 剤として 0.1% 酢酸リチウム溶液を 10 mL 加え,ポータ ブルイオン・pH 計の硝酸イオン電極 (N-2031,東亜 ディーケーケー(株)) を用いて硝酸イオン濃度を測定した。 アンモニウムイオン濃度および硝酸イオン濃度は下記 の式を用いて乾重 1g あたりのアンモニア態窒素含量お よび硝酸態窒素含量に換算した。 アンモニア態窒素含量 (mg g−1) =NH4(mg 11) D ×1418 D:生重 1 g あたりの乾重 (g) 硝酸態窒素含量 (mg g−1) =2NO3(mg 11) D ×1462 D: 生重 1 g あたりの乾重 (g)3.結果および考察
3. 1 堆積日数とアンモニア態窒素含量との関係 図 1 に窒素無添加区における振とう 0 時間後の各堆 肥のアンモニア態窒素含量を示した。堆積日数の短い A 堆肥のアンモニア態窒素含量は 1.97 mg g−1と著しく 高く,次いで C 堆肥および B 堆肥で 0.75 mg g−1,0.49 mg g−1となり,他の堆肥より有意に高いアンモニア態 窒素含量を示した。堆積日数の長い D〜I の堆肥はいず れも 0.10 mg g−1以下の低いアンモニア態窒素含量を示 した。 堆肥の一次発酵においては,堆肥の原料に含まれるタ 石 黒 泰 ・ 熊 谷 淳 逸 ・ 福 井 博 一 62 55.3 67.4 67.0 57.7 62.8 62.2 52.0 61.2 64.1 2002 年11月28日 2003 年 4 月16日 2003 年 8 月18日 2002 年11月28日 2003 年 8 月18日 2003 年 4 月16日 2002 年11月28日 2003 年 4 月16日 2003 年 8 月18日 2002 年11月16日 2003 年 4 月 1 日 2003 年 7 月 7 日 2002 年 9 月 9 日 2003 年 4 月14日 2002 年12月 2 日 2002 年 5 月30日 2002 年 9 月 9 日 2002 年12月27日 12 15 42 80 127 135 183 219 234 水分率 (%) 試料採取日 堆積開始日 堆積日数 (日) A B C D E F G H I 堆肥 番号 表 1 供試した堆肥の堆積開始日および試料採取日と堆 積日数 図中のアルファベットは 5 % の危険率で堆肥区間に有意な差が ないことを示す 図 1 堆積日数の異なる堆肥のアンモニア含量ンパク質やアミノ酸などの易分解性有機窒素化合物が微 生物によって分解され,多量のアンモニアが発生す る6-8)。高いアンモニア態窒素含量が認められた堆肥 A, B, C は,堆積日数がそれぞれ 12 日,15 日,42 日と短 く,これらの堆肥は,易分解性有機窒素化合物の分解に よって多くのアンモニアが生成されている一次発酵過程 の堆肥であると考えられた。これに対して,D〜I の堆 肥ではアンモニアがほとんど検出できず,既に堆肥中の 易分解性有機窒素化合物が微生物によって分解された一 次発酵が終了した堆肥であると考えられた。したがって, 採取した堆肥のアンモニア態窒素含量を測定することに よって一次発酵の状態を判断することができると考えら れ,本研究で用いたバーク堆肥の一次発酵は 3ヶ月程度 で終了するものと考えられた。 しかし,本試験では一次発酵が終了したと判断するた めのアンモニア態窒素含量の基準値を明確に示すには至 らなかった。今後,堆肥中の易分解性有機物含量とアン モニア態窒素含量との関係を検討し,一次発酵終了判定 基準を明らかにしたい。 3. 2 一次発酵が終了した堆肥に対する窒素添加後のア ンモニア態窒素含量の変化 3.2.1 尿素添加後のアンモニア態窒素含量の変化 窒素無添加区における振とう 0 時間後のアンモニア態 窒素含量が 0.10 mg g−1以下と低かった D〜I の堆肥に, 堆肥の乾重 1 g に対して窒素量 1 mg となるように尿素 を添加した場合のアンモニア態窒素含量の経時変化を図 2 に示した。すべての堆肥が尿素添加 24 時間後あるい は 48 時間後にアンモニア態窒素含量の最大値を示した。 本実験で用いた堆肥は一次発酵が終了し,そのアンモニ ア含量は 0.10 mg g−1以下と低かったことから,この尿 素添加 24〜48 時間後にみられたアンモニア態窒素含量 の急激な増加は,添加した尿素が微生物由来のウレアー ゼによって加水分解して生じたものと考えられる9)。 尿素添加 24 時間以降のアンモニア態窒素含量の推移 をみると (図 2),D 堆肥のように急激な減少がみられ るもの,F, H, I 堆肥のようにわずかに減少するもの, E, G 堆肥のようにほとんど変化が認められないものに 大別できた。D, F, H, I の堆肥でみられた,尿素添加 24 時間以降にアンモニア態窒素含量が減少した理由と して,微生物の増殖に伴ってアンモニアが菌体に取り込 まれる有機化と,アンモニアの硝酸化が考えられる7)。 そこで,各々の堆肥における 24 時間以降のアンモニア 態窒素含量の減少量と硝酸態窒素含量の増加量との関係 を検討した結果 (図 3),両者の間に有意な相関は認め られず,また同一堆肥内においても相関はみられなかっ たことから,アンモニア態窒素含量の減少がその硝酸化 によるものとは考えられず,微生物の増殖に伴ってアン モニアが菌体に取り込まれる有機化が堆肥中のアンモニ ア態窒素含量の減少の主要因であると推察した。 したがって,尿素添加 24 時間以降に急激にアンモニ ア態窒素含量が減少した D 堆肥では微生物の活性が高 く,堆肥に添加した尿素がウレアーゼによって加水分解 されて生じたアンモニア態窒素を微生物が活発に有機化 していたのに対して,E および G 堆肥では微生物の活 性が低く,アンモニア態窒素が有機化されなかったもの と推察した。 図 4 に,D〜I の堆肥に尿素 1 mg を添加した場合の 尿素添加 72 時間後までのアンモニア態窒素含量の最大 値と堆積日数との関係を示した。堆積日数が長くなるに 従って,アンモニア態窒素含量が大きくなる傾向が認め ◆ : D ■ : E ▲ : F × : G □ : H ● : I 図 2 尿素添加後のアンモニア態窒素含量の経時変化 ◆ : D ■ : E ▲ : F × : G □ : H ● : I 図 3 尿素添加区におけるアンモニア態窒素含量の減少 量と硝酸態窒素含量の増加量との関係
られた。本研究では乾燥堆肥 1 g あたり窒素 1 mg に相 当する尿素を添加したことから,これがウレアーゼに よって加水分解されると,1 mg g−1のアンモニア態窒 素が生成される。しかし,D 堆肥ではアンモニア態窒 素含量の最大値が 0.62 mg g−1と低かったことから,堆 肥中の微生物活性が高く,添加した尿素の加水分解によ るアンモニアの生成と,そのアンモニアが微生物の増殖 に伴って菌体に取り込まれる有機化が同時に行われてお り,添加した尿素に相当するアンモニア態窒素含量 1 mg g−1に達しなかったと考えた。これに対して堆積日 数の長い堆肥では微生物活性が低く,微生物によるアン モニアの有機化が進まなかったために,添加した尿素が 加水分解されて生成されたアンモニア態窒素含量 1 mg g−1に近づいたと考えられる。 3.2.2 硫酸アンモニウム添加後のアンモニア態窒素含 量の変化 図 5 に,D〜I の堆肥に堆肥の乾重 1 g あたり窒素量 1 mg となるように硫酸アンモニウムを添加した場合のア ンモニア態窒素含量の経時変化を示した。D 堆肥では, 硫酸アンモニウム添加 0 時間後では 1.17 mg g−1のアン モニア態窒素含量が検出できたが,その後の時間の経過 とともに減少し,72 時間後には 0.02 mg g−1と低い値を 示した。E, F, H, I の堆肥は硫酸アンモニウム添加 0 時 間後では 1 mg g−1前後のアンモニア態窒素含量が認め られ,24 時間後までほぼ一定で推移したが,その後 72 時間後にかけて時間の経過とともに低下した。72 時間 後のアンモニア態窒素含量は H, E, F, I の順に低くな り,I 堆肥では 0.42 mg g−1を示した。G 堆肥は硫酸ア ンモニウム添加 0 時間から 24 時間後まではほぼ一定の アンモニア態窒素含量を示し,その後もアンモニア態窒 素含量の低下は小さく,72 時間後でも 0.85 mg g−1の値 を示した。 硫酸アンモニウムとして堆肥に添加されたアンモニア 態窒素が減少した原因として,尿素の添加試験において も述べたように,微生物の増殖に伴ってアンモニアが菌 体に取り込まれる有機化とアンモニアの硝酸化が考えら れる7)。そこで,硫酸アンモニウム添加 0 時間後から 12, 24, 48, 72 時間後までのアンモニア態窒素含量の減 少量と硝酸態窒素含量の増加量との関係を検討した結果 (図 6),アンモニア態窒素含量の減少量と硝酸態窒素含 量の増加量との間には有意な相関は認められず,また同 一堆肥内においても両者の間に相関は認められないこと から,尿素添加試験と同様に,アンモニア態窒素含量の 減少は微生物の増殖に伴ってアンモニアが菌体に取り込 まれる有機化が主要因であると推察した。 石 黒 泰 ・ 熊 谷 淳 逸 ・ 福 井 博 一 64 図 4 尿素添加区におけるアンモニア態窒素含量最大値 と堆積日数との関係 ◆ : D ■ : E ▲: F × : G □ : H ● : I 図 5 硫酸アンモニウム添加後のアンモニア態窒素含量 の経時変化 ◆ : D ■ : E ▲ : F × : G □ : H ● : I 図 6 硫酸アンモニウム添加区におけるアンモニア態窒素 含量の減少量と硝酸態窒素含量の増加量との関係
図 7 に,D〜I の堆肥の堆積日数と硫酸アンモニウム 添加後 72 時間までのアンモニア態窒素含量の減少量と の関係を示した。堆積日数が短い D 堆肥では,硫酸ア ンモニウム添加後 72 時間までのアンモニア態窒素含量 の減少量が 1.16mg g−1と大きかったのに対して,堆積 日数が長くなるにつれてアンモニア態窒素含量の減少量 は小さくなる傾向がみられた。金子ら10)は堆肥化の進行 に伴って易分解性有機物量が低下し,微生物の増殖活性 が低下することを明らかにしており,この硫酸アンモニ ウム添加 72 時間後までのアンモニア態窒素含量減少量 の低下は,微生物によるアンモニアの有機化,すなわち 微生物の増殖活性の低下によるものと推察できた。 Bacills 属など一部の細菌は有機物が枯渇し始めると, 芽胞と呼ばれる特有の休眠細胞を形成する。芽胞は有機 物の供給を知らせる刺激を受けると発芽して栄養細胞に なる11)。堆積日数が 80 日の D 堆肥では一次発酵がほぼ 終了したものの,堆肥中には一部の有機物が残存してお り,微生物の増殖活性が低くなっておらず,休眠形態の 芽胞の形成にも至っていなかったために,添加された硫 酸アンモニウムのアンモニウムイオンを菌体に取り込ん で増殖する有機化が速やかに進んだと考えられる。これ に対して,堆積日数の長い堆肥では堆肥中の易分解性有 機物が減少し,微生物の増殖活性が低くなっていたと考 えられ,芽胞を形成することができる微生物は芽胞を形 成していたと考えられる。硫酸アンモニウムを添加する ことにより,微生物の増殖活性が徐々に高くなるととも に添加された硫酸アンモニウムが刺激となって芽胞の発 芽が開始されて栄養細胞となり,硫酸アンモニウム添加 24 時間以降に有機化が始まったと推察できた。した がって,硫酸アンモニウム添加後 72 時間までのアンモ ニア態窒素含量の減少量を用いることによって微生物の 増殖活性や芽胞の形成程度,すなわち二次発酵の進捗度 合いを段階的に腐熟度判定指標として用いることが可能 であると考えられた。 図 7 の結果を詳細に検討すると,堆積日数が 200 日以 上の H および I 堆肥に比べ,183 日の G 堆肥の硫酸ア ンモニウム添加 72 時間後までのアンモニア態窒素含量 の減少量が小さかった。これは G 堆肥の堆積期間が 5〜11 月と温暖な時期に行われたのに対して,H および I 堆肥は堆積期間中に低温に遭遇したことと関係してい る (表 1)。堆肥の発酵は外気温と密接に関係すること が知られており,本研究における堆積が露天で行われた ために堆積期間の季節の差異が大きく影響したものと考 えられる。したがって,堆積日数は堆肥の腐熟度判定基 準の一つとして広く用いられているが,本研究における アンモニア態窒素含量の変化をみることによって,より 正確なバーク堆肥の腐熟度を判別できる可能性が示唆さ れた。 本研究では,試験の設計上の問題から連続して堆積し た堆肥からの試料採取を行うことができなかったが,今 後,堆積開始から連続した試料の採取を行うことで本結 果を再現実証するとともに,詳細に堆肥の発酵過程を検 討する予定である。
4.ま と め
(1) バーク堆肥 20 g (生重) を蒸留水 100 mL に加え て懸濁した後,アンモニア複合電極を用いてア ンモニウムイオン濃度を測定した結果,堆積日 数が短い堆肥ではアンモニア態窒素含量が高く, アンモニア態窒素含量を測定することで一次発 酵の終了を判定することが可能であった。 (2) 一次発酵が終了したと推定されたバーク堆肥 20 g (生重) に蒸留水 100 mL と尿素 (窒素 1 mg/ 乾燥堆肥 1 g) を添加し,尿素添加 72 時間後ま でのアンモニア態窒素含量の最大値を求めた結 果,堆積日数が長くなるに従って大きくなる傾 向を示し,尿素添加 72 時間後までのアンモニア 態窒素含量の最大値を用いて一次発酵終了後の 熟度を判別することが可能であった。 (3) 一次発酵が終了したと推定されたバーク堆肥 20 g (生重) に蒸留水 100 mL と硫酸アンモニウム (窒素 1 mg/乾燥堆肥 1 g) を添加し,硫酸アン モニウム添加 72 時間後におけるアンモニア態窒 素含量を測定した。硫酸アンモニウム添加 0 時 間後に 1 mg 前後を示したアンモニア態窒素含量 は,堆積日数が短い堆肥では 72 時間後には 0 mg となり,堆積日数が長くなるに従ってアンモ 図 7 硫酸アンモニウム添加区におけるアンモニア態窒 素含量の減少量と堆積日数との関係ニア態窒素含量の減少量が小さくなった。この ことから,硫酸アンモニウムを添加 72 時間後の アンモニア態窒素含量の減少量を用いて一次発 酵終了後の腐熟度を判別することが可能であっ た。 (4) 一次発酵が終了したと推定されたバーク堆肥へ の尿素と硫酸アンモニウムの添加による腐熟度 判定結果を比較すると,尿素ではウレアーゼに よるアンモニアの発生と微生物によるアンモニ アの有機化が同時に行われるのに対して,硫酸 アンモニウムでは微生物によるアンモニアの有 機化のみが関係していることから,腐熟度判定 には硫酸アンモニウムの添加の方が適している と判断した。 (5) バーク堆肥に硫酸アンモニウムを添加した後の アンモニア態窒素含量の減少量を用いる腐熟度 判定では,従来の未熟,完熟の判定だけではな く,アンモニア態窒素含量の減少量の違いから さらに細かい段階的な腐熟度が判定可能となる ことが考えられた。 参 考 文 献 1 ) 北陸先端科学技術大学院大学:肥料品質評価方法,肥 料品質評価装置及び肥料品質評価プログラム,特許公 開 2006-242723 (2005) 2 ) 井上直人:堆肥腐熟度の光学的測定方法,特許公開 2004-226138 (2003) 3 ) 古谷 修,伊藤 稔,古川智子,柴山信幸,市村 保,中野 貞雄,後藤充弘:堆肥腐熟度判定装置及び堆肥腐熟度 判定方法,特許公開 2003-207502 (2002) 4 ) 河田 弘:バーク (樹皮) 堆肥 ―― 製造利用の理論と 実際 ――,博友社,pp. 108-123 (1981) 5 ) 藤原俊六郎,鎌田晴海:おが屑鶏糞堆肥の腐熟度が作 物生育に及ぼす影響,神奈川県農業研究所研究報告, 第 124 巻,pp. 73-90 (1983) 6 ) 藤原俊六郎:堆肥の作り方使い方,農村漁村文化協会, pp. 44-53 (2003) 7 ) 河田 弘:バークおよびバーク堆肥の化学的および有機 物組成とバーク堆肥の培養試験における添加アンモニ ア態チッソの消長 ―― 硝酸化成および有機化,新大演 報,第 21 巻,pp. 1-26 (1988) 8 ) 森 敏,木村郁彦:堆肥の熟度検定のためのガスセン サーの開発,日本土壌肥料学会誌,第 55 巻,pp. 23-28 (1988) 9 ) G. Gottschalk:細 菌 の 代 謝,近 代 出 版,pp. 135-168 (1980) 10) 金子栄廣,裵 英眞,藤田賢二:堆肥化過程における微 生物数と細菌の増殖活性,廃棄物学会論文誌,第 4 巻, 第 2 号,pp. 35-41 (1986) 11) 堀越孝雄,二井一禎:土壌微生物生態学,朝倉書店, pp. 166-179 (2003) 石 黒 泰 ・ 熊 谷 淳 逸 ・ 福 井 博 一 66
Relationship between the Composting Period of Bark Compost
and Microbial Activityon the Immobilization of Ammonia
Yasushi Ishiguro*, Jun-itsu Kumagai** and Hirokazu Fukui**
* The United Graduate School of Agricultural Science, Gifu University ** Faculty of Applied Biological Sciences, Gifu University
† Correspondence should be addressed to Hirokazu Fukui :
Faculty of Applied Biological Sciences, Gifu University (1-1 Yanagido, Gifu 501-1193 Japan)
Abstract
Bark compost is a useful medium for potted plants. As immature compost, however, it can damage plants by generating ammonia and causing nitrogen starvation, so evaluation of maturity is indispensable when using it as compost. In the primary process of compost fermentation, microorganisms generate ammonia by resolving easily biodegradable organic nitrogen compounds, and other microorganisms immobilize this ammonia. As the amount of easily biodegradable organic nitrogen compounds decreases, the activity of these microorganisms declines. We investigated the decrease in the ammonia content as an index of microorganism activity, and discussed the relationship between the ammonia content and the number of days of composting. As much ammonia was detected from the compost in the early days of fermentation, we decided that compost in the primary fermentation process could be evaluated by the detection of much ammonia. Ammonium sulfate was added to compost that was estimated to be in the process of secondary fermentation, and the ammonia content was measured during 72 hours. The compost fermented longer had less decrease than that composted for fewer days. We could, therefore, suggest that the compost in the secondary fermentation process could be subdivided according to an index of maturity by the ammonia decrease during the 72 hours after the addition of ammonium sulfate.