臨 床 實 験
急性腸重積症の六例
27 東京女子警學專門學校外科教室︵主任三藤教授︶鬼 頭 阿 佐
夫
・急性腸重積症は逐年増加の徴を示し,其の大多智は乳、幼兇に來り,極めて重篤,急激な症状を呈しますが,早期に診断 し、適當に加療すれば、殆んどすべてを救ぴ得るので御ざいますから、小児科、外科、何れの方面から見ましても相當に興 味深いものであらうと思ぴます。僅か六例で御ざいますが、御報告する次第で御ざいます。 第 一 例 窪○藤○ ♀ 十年七ケ月 初診、昭和四年六月十二日 麻疹維過中に突然急激なる左下腹部痛を以て始まり、粘血便排泄、便通及放屍なし、 腹部膨満して腫瘍を隅れ歩。麻疹経過中なるも、重篤,印刻手勢を要するを以て、 喪病三十六時聞にて手術施行、﹁クロロフォルム、エーテル﹂麻手、下腹部正中線切開、 む む む 大腸重積症にて、下行結腸の申へ下行結腸が嵌入してみた。重積解離は可成り困難で一部に裂傷を生じたため縫合せり、 穿孔、壌死等なし。唯著明なりしは姻虫蝕が多数に寄生してみたことなり。 術後四時間にして血便を排出し、放業ありしも、夕刻より悪化、肺炎を併獲して術後四十八時間にして死の韓麟を取れり。 第 二 例 鬼頭匹急性腸重積症の六例 策五巻 一四三28 廓開頭口急性腸歯髄覆症の六例 第五巻 一四四 鈴○ひ0子 ♀ 三年四ケ月 初診、昭和五年十二月廿七日 突然なる腹痛磯作、顔面蒼白、脱力、放屍、排便の休止を以て始レ、蠕動不穏著明、且つ膀の右上方に梢弓歌をなせる腸 詰様の腫瘍を誰明し、急性腸重積症と診断す。 稜病後六時聞にて開腹、﹁クロ、フォルム、 エーテル﹂麻醇、直腹筋外切開、 む む む む 廻盲部重積症、愚盲部が先端となりて、約+五聖の廻腸が上行結腸内へ嵌入せ砂。重積解離は容易にして嵌入せる腸部に は限局せる浮腫が存したるのみ、何等の攣化なし。 術後こ週間にて全治退院、 第 三 例 千○久○ 盃 三年四ケ月 初診、昭和八年五月九日 腸加答児︵腹痛、粘液を混じたる便の排出等︶経過申、突然急激なる腹痛あり。 敬時間後溌腸によ砂粘血便排出。一般歌出悪化。腹部には蠕動不穏あり、.膀の右上方に二横指位の太さの軟い腸詰檬の腫 瘤を鰻る。 由披病後十六時間にて開腹、﹁クロ・フォルム、エーテル﹂丁年。右直腹筋外切開、 む む む む 廻盲部重積症にて、且ハの先端は盲腸増派様突起にて横行結腸の中央部邊り迄嵌入。 鞘には著攣なし。嵌入せる腸管導車様突起には浮腫が存したるのみ。重積解離は容易なりき。 術後十一日にて全治退院。 第 四 例 近○美○子 ♀ 九ケ月十四日
29 初診、 昭[和九年一回月十六日 急激なる嘔吐、不機嫌、嗜眠にて磯病、つ穿いて粘血便排泄、放厩屡絶、 腹部膨満、著明なる蠕動不濾、右下腹部の抵抗感にて廻盲部重積症と診断。 磯病後四十八時間にて開腹、﹁クロ・フォルム、 エーテル﹂麻冠馳正中線切開、 り む む り つ り 廻盲部重積症、話術部が先端となりて智慧糎嵌入、重積解離は容易にして、穿孔、出血等なし、浮腫を存したるのみ。 術後九日,小肉芽創を以て退院、間もなくこの創も治せり。 第 五 例 雫○和○ ♀ 四ヶ月 初診、昭和九年四月骨八日 眠りより醒めて突然顔面蒼白、苦悶の歌を呈し、時々焚作性に垂泣す、嘔吐、喜劇に由る粘血便排出、脆力、排便放屍の 魔絶。腹部膨満、蠕動不穏、右上腹部抵抗等より腸重積症と診断。 獲病後廿五時間にて開腹、﹁クロ・フォルム、 工著テル﹂手紬酔、右小腹心外切開、 む む む 廻盲部重積症、廻盲部及盲腸を先端として嵌入、横行結腸の中部邊りまで達ず。 嵌入せる廻腸は約十八糎,手械暗黒色乃至曙紫色に著忙し、高度に﹁コラビーレン﹂せり。此の曙黒色汚械の部は腸管壁 への出血か、壊死か,或は將に穿孔せんとするのか不明。最様突起も曙紫色浮腫欣に腫大、腸闇膜にも所々に出血竈及浮腫 あり。重積解離は困難なりしも成功。 鼻塞突起切除をしつ瓦血行恢復の歌を観察せしも,梢赤色が強くなったかと思はれる位、腸切除を試むれば理想的なる も、斯る幼児に於ては、切除帥死、叉放置せんか、 穿孔→穿孔性腹膜炎←死、 何れを選ぶ可きか。判断に苦しみしも,胃瞼的に重積解離の儘閉ぢたり。 由関頭11急性腸重積症の六例 第五巻 一四五
30
鬼頭11急性腸重積症の六例 第五巻 西六
幸蓮にも術後経過順調、二日にして危険期を脱し.+五日にて全治退院せり。 第 六 例 久0敏O ♀ 十ケ月牛 初診、昭和九年六月十五日 上氣道加答児経過中、突然頻算する嘔吐にて磯病、放屍、排便なし、溌腸による粘血便思出、腸管蠕動不穏、右上腹部に 於ける腫瘍、褒病後十四時聞にて開腹.﹁クロ、フォルム、 エーテル﹂麻醇,正申線切開、 卿洋細母樹艀、先端は廻盲部にて横行結腸の中部にまで達す。重積解離は梢々困難なりしも成功せり。穿孔、出血或は壊 死竃なし。特に興味深きは、壁の菲薄,旗越せる盲腸外壁の外側部を全く獲堕せしことなり。 手術後十二日にて全治退院せり。 さて急性腸重積症は、二年未満の乳、幼児に多く見られ、+年以上のものには甚だ稀なりと。殊に五ケ月1九ケ月の幼見 に多く來るといふ。從って乳、幼見期に起る腸閉塞は殆どすべて此の急性腸重積症なりといふも、敢て過言ならざるべし。 禦鼎、以上六例に就き見るも、四ケ月より十年七ケ月にして、一年夫満三例、四年未満二例、十年七ケ月一例なり。 鯉騨、領頚は男二に封し女一の割合なりといはる玉も、吾が症例に於ては、男一、女五にして逆なり。 之は症例少きためなるや、或は他に原因あるや不明なP。 膨疑、腸重積症は御承知の如く、其の部位により、小腸重積症、廻盲部重積症及結腸重積症の三となし、廻盲部重積症最 も屡々見られ、小腸重積症之に亜ぎ、結腸重積症最も少しと、 吾が維験せし六例に、一例の結腸重積症を除き何れも廻盲部重積症なりき。 肝邸、原因不明なるも、腸重積の素因として墨げらる玉は,異常に長く且つ脂肪に乏しき腸間腹、移動性盲腸、廻盲耕の 異常に廣い事、小見腸壁の韮薄なる事等なP。 叉其の誘因としては、腸壁に生じたる腫瘍,殊に腸管腔に垂れ下れる腫瘍31 例へば﹁ポリープ﹂、粘膜下脂肪腫、繊維腫等、 ﹁メツヶル﹂氏憩室︵時として腸内に嵌入せる事あり︶ 腸炎、大腸加答児、或は寄生轟に因る腸の刺戟歌態︵腸管牧縮或は高津︶重なるも、吾等の場.合には解剖的異常、腫瘍等 は見ざりしも、第一例麻疹維簾中のものに着ては多数の蜘轟を有したりき。從って穂懸及恐らく存したであらう﹁エナンテ ーム﹂が重積の成立に相當重要なる役割を演じたるものならん。叉第三例の先行せる腸加答見も何等かの意義を有するやも 知れす。 む む む 然らば爽生機蒋は如何、 勿論、上述の如き、腸壁腫瘍、﹁メツケル﹂氏憩室等の局所的攣化の存する場合は比較的容易に読明し得。印ち腸蠕動蓮動 或は漸次下方へ正野される糞便のため、其の腫瘍が下方に急迫される。すると其の腫瘍の存する部の膜壁は段々引張られ て、下位︵肛門位︶の腸管内へ嵌入する。從って此の局所的黒化の存する部が先端となりて更に重濡するものならん。然れど も是等の素因、誘因の見るべきものなき時は難壁困難なり。詳細は繁雑なるため省略するが、或は縦走筋哲理に因るとなし (「 mートナーゲル﹂氏L、﹁ウイルムス﹂氏及﹁トレーブス﹂氏︶或は輪状筋に因るとなし︵﹁プロツピング﹂氏︶未だ定論なし。向 後の研究に由りて解決さる可し。 む 診噺、本症の診噺は可成り特異なる徴候を有するため困難ならす。 突然急激なる磯病︵時には虚脱症歌を呈することあり︶ 腹痛,悪心、嘔吐,粘血便排出、瓦斯、排便の休止、重積腫瘍の急潮、等により殆ど之とあやまるものなし。 然れども、時として、是等諸症状の申或るものを映除することあり。殊に特異とされる重積腫瘍の如きも、殆ど讃明し得 るも、鼓腸強き時は往々にして,抵抗としてのみ掌れ腫瘍を誰明し得ざる事あり。 斯る際には、X線槍査︵軍純撮影︶を併用せぱ診噺を確定し得るならんと思ふ。 む む 治療法、は非観血的及観血的の二種あり。 鬼頭目急性腸重積症の六例 第五巻 一四七
32 鬼頭日急性腸重儒惧症の六例 第五巻 一四八 非観血的療法としては高位浅腸を試みるものあるも、穿孔の危瞼大なるため、余等は之に賛同せす、むしろ観血的療法を 推奨す。観血的療法術式としては 重積解離,腸吻合術、腸切除、三聖設置、つ逝いて二次的に腸切除をなす等あれども,重積解離が最良たるは論を待たす。 叉、切開方式も,正中線切開、右側直腸筋外切開等をなせども、謄躍の経験によれば、後者は腸の脱出︵從って術後の腸 管麻痺︶を防ぎ得るため、叉﹁ドンーン﹂挿入等,便利にして経過よろし。 む 豫後、は年齢,手術の時期、手術壁式後療法等に關すべきも、要は早期診断、早期手術なり。先輩諸氏の報告を見るに、 磯病後十二時間以内のものは殆ど全部救助し得るも、其の後は時間の経過と共に死亡率の急激なる増加を示し、四十八時 間以上を経過せるものは、殆ど救助し得すといふ。 然れども獲病より手術までの時間と病攣とは必ずしも一致せす、其の理由は病毒の進行緩慢なるものに於ては、長時間を 経過したるものと錐も、臨床的徴候三度なるが故なり。 手術後は屡々肛門排泄物の血液反慮を調査し、其の反鷹陰性となるに及んで通常榮養に復聾すべし。 む 再磯,に黙しては之を防ぐため盲腸壁の側腹壁への固定を試むる者あれども、余等は唯重積解離をなしたるのみにて未だ 再磯せるものを見す。 結 論 一、演者は六例の腸重積症を経験し、 一例は結腸重積症、五例は廻盲部重積症なりき。 一、胸部合併症を俘へる一例は不幸にして失びしも﹂他の五例は経過順調なりき。 一、其の成因に就きて考察するに、大三蓋に於てはbづ鮮ρ9︵プラウエル︶、 犀。糞婆σQ︵プロビング︶の読を肯定すべきも第 六例に見ては、壁の菲薄且っ梢田鶴張せる盲腸外壁の外側部を全く礎留せる廻盲部腸重積症なりしょり見て目。おξ ゆ冨ロ9の提唱により認められたる如き盲腸自身に始まるとの購読は俄に信じ難きものあり。
一、本症患者が主として乳、幼児に多き貼は蓋し主食物が急激に攣更せられたるために小腸、 攣を受け因って以て腸管壁緊張欣態に異常を生じたる結果に非すやと思惟す。 御懇篤なる御指導、御校閲を賜りし三藤教授に深謝す。 大腸の生理的歌態に著しき急 33 繭鬼頭封急性腸曲曲惧症の山ハ例 第五巷 一四九