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<研究論文>消費者行動にたいする所得の影響 : 時間 利用統計を見る

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著者

小川 純生

著者別名

Ogawa Sumio

雑誌名

経営論集

33

ページ

17-33

発行年

1989-03-25

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00005733/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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消費 者 行動 に たい す る所 得 の影響

時 間

小 川 純 生 17 目 次 ぱじめに 時空間上に位置する消費者 現在 の所得の影響 過去の所得の影響 未来の所得の影響 消費者の意思決定と所得の概念 おわりに は じ め に 製品に対す る消費者の需要,あ るいは購買は,購買能力 と購買意欲の両方 に 依存してお り,両者 の関数である と言え る1)。購買=f(買 う能力,買お う とす る意思)。買お うとする意思だけ では, 製 品を 買 うことは で きない。 ま た買 う能力があって 乱 買お うとす る意思がなけ れば,製 品は 買われない。 買お うとする意思と同時に買 う能力が備わ って, はじめて現実 の購買に結び つ く。ここでい う買 う能力が, 消費者 の所 得であ る。経済学では,所 得は, 効用2)極大化におげる制約(条件) であるノ それは 言葉を 代えて言えば, 目 的 達成の為 の手段であ る≒ 当論文では, 目的達成 の手段であ るこの所 得 と消費者行動の関係を考察す る。 その場合に, 特徴的な方法 とし て, 当論文 では, 消費者行動にたいする 所 得の影響を,時間次元を 明示的 に導入して 考察 する。す なわち, 過去の所 得, 現在 の所得,未来 の所得が現在 の消費 者の行動 とどの ように関係して, ど のような影響を与えるのかとい う観点 から考察を 行 う。消費者行動に影響 を 及ぼす重要 な経済的 要因 とし て, 製品 の価格があ るが,今回 の研究におい ては取 り敢 えず考察の対象とはし ない。 論 述の展開としては,消費者行動に たい する所 得の影響の基 本を考えると い うことで, まず現在の所 得の影響を 記述し, 次に 過去の所得の影響,未来

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の所得の影響 と進 み,そ して最後に,消費者の意思決定に たいする所得の影 響方法と所 得概念の検討を 行 う。 1. 時 空間上に 位置する消費者 私たちの存在が,あ る時間軸上の1 地点と空間軸上 の1 地 点 の交差すると ころ, すなわち 時空間上 の1 地点にあることを認める ならば4) 私たちの行 動が, 時間的関 連と空間的 関連の両者に関係するこ とは, 明らかである。 図一1 時空間上に位置する消費者 空間(社会的関連) | 時間 過去( 歴史的関連)

竪--

未来1

時間的関連とは歴史的関連であ り, 個人 の経験と将 来にたいす る期待ある い は予測をあ らわす。空間的関連 とは 社会的関 連であ り, 個人 の 社会 との (人間)関係をあ らわす。あ る瞬間における私たちの行動 あるいは 意思決定 は,歴史的関連 と社会的関連の両者の影響を, 同時に受けてい ることになる。 このようなこ とを 前提 とするならば,経済的変数である所得 も個人にたい し て同様の仕方で, 影響を与えてい ると考えるこ とは自然であ る。そ こで時 間的関連とし て, 個人 の過去の所 得,現在の所 得, 将来 の期待所 得と個人の 意思決定の関係を考察す る必要があ る。これは, ある意味で個人 内における 時 間的 な所得 の変化 と個人 の行動の変化を 扱 うといえる。そし てさらに空間 的 関連として, あ る個人 の所 得と他の人だもの所 得との相対的 な関 係を考察 しなけ ればな らない。 こちらは, 個人間におけ る所 得の差 が,個人 の行動に どの ように影響を与 えるのかとい うことになる。 この2 つ の関 連において, 消費者の行動を分析 するべきであるが,今回は取 り敢えず時 間的関 連におけ る所 得と消費者 の行動 の考察に焦 点を絞 る。 2 . 現在の所 得の影響 消費者が財や サ ービスを 買 うのは, その財やサ ービスから得られる欲求の 充足を 得るた めであ る。し かし,財やサ ービスは有限であ り, それを 手に入 れるためには 費用がかか り,お 金が必要であ る。 無尽蔵 に欲し いだけ手に 入

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・ 消費者行動にたいする所得の影響一一時間一19 れる ことは で き ない 。 欲 求は 限 りない ほ どに膨 らむ が, お 金 は 限 られ てい る。 こ の よ うな 状 況 の も とに , 個 々 の 消費 者 は, 財 や サ ー ビス の中 か ら最大 の 満足 を もた らす よ うな 財 や サ ービ ス の組 み 合せを 見つ け だ し, そ の満 足 総量 を 極 大化し よ うと す る 。 も う少し 具 体的 に 言 うな らば , どの よ うな 種 類 の財 や サ ービ スを 購 入 す る の か, そ し て 購入 し よ うと決 め た 財 や サ ービ スを ど の く らい の数 量 で 購 入 す る と満 足 総量 を 極 大化 で きる の か , とい うこ とに なる。 (以 下, 財 や サ ービ ス と記 述 す る ことは 冗 漫 な ので , 財 と い う 単 語1 つ で 両 者 の意味を 含 む も の とす る。 また , 製 品 とい う単語 も同 義 の 意 味 に お い て 使 用 される。) 消 費 者 は そ の行 動 あ るい は 意 思 決定 にお い て, 有 限 の所 得 と 無 限 の欲求を 効 用 の極 大 化 の もとに 集 約し なけ れば な らな い 。 こ のよ うな 消 費 者 の行 動 を, 経 済学 の効用 理 論 (utilitytheory ) に 基づ い て整 理し て み る。 こ れ は , 合 理 性 の 公 準 (postulateofrationality ) に も と ず い た効用 極 大 化 の 原理 (utilitymaxmizationprinciple ) を 前 提 とし て 論 が 進 め られ る。 す な わ ち,「 消費 者 は一 定 の 与 え ら れた 選 択 範 囲 の な か か ら, さま ざまな 財 ( もっ と も広 い 意味に おけ る) の 消費 か ら得 ら れ る満 足 を 最 大 に する よ うに , 選 択 を 行 う」 と仮定 す る ことか ら出 発 す る5)。 こ のこ とは , 消 費 者は 自 分 に与 え られ た 選択 範 囲 を よ く知 っ てお り, そ れ ら を 十分に 評 価 で き る こ とを 意味 し てい る。 また, 消 費 者 が 各 種 の 財 のい ろ い ろ な消費 量 か ら 得 ら れ る満 足 に つい て のす べ て の情 報 は , こ の 消費 者 ○効 用 関数に 含 まれ る も の と され る≒ そ こに は 完 全 情報 の 仮 定 が な さ れ てい る。 ベ 定 を 置 く。 特 定 の財 の 消費 量 が増 大 し てい く と きに , そ こ に 新 た に 追 加 さ れ る同一 財 の1 単 位 か ら 得 ら れ る効 用 の増 分 は, 徐 々に 減 少し て い く。 犬 こ の2 つ の仮 定 か ら, 消 費 者 の財 の 消費を 考え る と, あ る一 定 以上 の所 得 を 前 提 とす る な らば, た だ1 つ の 財 の みが 消費 支 出 の対 象 に な る こ とは あ り 得 な い。 あ る一 定 の所 得 の もとで , あ る財 の消 費量 を 増 大 さ せて い く と, そ の財 の限 界効 用 は 徐 々 に 減 少し て い く, そし て 他 の財 の限 界効 用 の 方 が 高 く な る点に まで至 っ てし まう 。 そ の時点 に お い て, まだ 可 処 分 所 得が あ るな ら ば √ そ の限 界効 用 の 低 くな っ た財 を 消 費 し 続け る よ り 乱 今 度 は 限 界効 用 の 高 く なった 方 の財 を 消費 す る こ と の方 が, 個人 の一 定 の所 得枠 の も とで,▽全 体 の効用 水 準を 高 め る こ とに な る。 そし て, 最終 的 に は, あ る所 得 枠 のも七 で 消費 す る財 の 種 類 と量 は, お のお の の財 の限 界効用 均 等 の点 に 置 い て 決 ま

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る。 その点が消費者 の効用極大の消費支出配分になる。 し たがって,次 のことが論理的 に帰結で きる。所 得水準が高いほ ど, 消費 する 財の種類数が多い。 そし て, どの財を どの程 度消費するのかは, 財の限 界効用 水準と限界効用 曲線の傾 きの程 度に よって決 まってくる。限界効用 水 準 の高い財から, 順次限界効用水 準の低い 財へ,所 得の範囲に応じて消費が 拡大し ていく。限界効用 曲線 の傾 きが, 他の財と比較し て相対的に小であ る 財( 限界効用 の低減の程 度が小 さい財)程,所 得の枠が広が るにっ れ,そ れ が相対的に大である財 より 乱 相対的 な消費 水準が高くなる。 し かし,次 のようなことも気を 付けて置かなければならない。一 般的に, 所 得水準が高 くなるほど財の種類 と消費量ぱ増大するのであ るが,い ぐっ か の財に 関しては逆に消費量が減少する ことがある。い わゆる下級財(inferiorgoods ) と呼ばれるもので,所 得水準が上がる と, それに代 わり 同様の効用 を満 たす他の財に よって代用されてし ま う財である。所 得一 消費曲線は, 普 通 右上がりの曲線であ る低 所得 の増加 の過程において,それが右下が りの 部 分を 持つ場合であ る(無差別 曲線図式において, 縦軸に下級財, 横軸に そ れに 代わる財が置かれるとき)≒ たとえばA 財 とB 財があ り,A 財 とB 財が,同様の効用を満たすことがで きると仮定する。し たがって, 消費者は どちらを選択し ても構わない,問 題 は財 の価格と消費者の所 得水準であ る。所 得水準の低い段階においては,A 財を 消費してお り,あ る 所 得水準を越 える 段階 から,B 財 も 消費し 始め る (あ るいはB 財に乗 り代える)。 そして この場合, これら両財に支出する金額 は, 他 の効用を 得るために支出され る支出額 と比較すれば, この効用を満 た すために許されるあ る一定の枠 内で, 両財に分配されることになる。B 財 へ の支 出が増大するならば,A 財への支出は必然的に減少する ことに なる。 上 述 のことを まとめると,所 得水準が高いほど一 般には消費する財の種類 と量 は全体的には増えるが,下 級財 と呼ばれる ようない くっ かの財は,逆に 量を 減 らされた り,あるいぱ全く消費(購入)されなくなった りする可能性 もあ る。し たがって, 消費に たい する所得 の影響を 考慮する とき,所 得の増 大( 減少)の影 響は全て の財に たいして常にプ ラス( マイナス)に 働くと単 純に 考えてはならない。 所 得 の上昇と家 計費 目への支出 との関係 の研究で有名 なのが, エ ングルの 法則であ る。 この法則に 関連し て,所 得と家計支出の関係に関し て33 ヵ国に

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消費者行動にたいする所得の影響一時間−21 お け る大 が か りな調 査 研 究を 行 っ た の が,Houthakker で あ る8)。そ れに よる と, エ ン グ ル の 法則 √「 所 得 が上 昇 す る と, 食 費 比 率が 低 下 す る」 とい う関 係が 再 確認 さ れた (所 得弾 性 値0.6 )。 エ ン グル の法 則 の一 般 性 が 確認 さ れた 。 そ のほか に 乱 所 得が上 昇 す る と; 住 居 費 は 低 下 す る, 被 服費 は わず か上 昇 す る, そ の 他 消費 は急 速に 上 昇 す る, とい うよ うな こ と が 確 認 さ れてい る。 3. 過去 の所得の影響 ある所 与 の瞬間における生活空間(lifespace) は, 過去 の 経験, 現在の 知覚,そし て将来にたいする態 度に取 り囲 まれている‰ したがって, 現在 とられる消費者の行動は, 過去 と現在と未来の3 つに関 係する。 ここではそ の うちの過去 と現在 の消費者行動の関係を 考察する。 過去の経 験は,現在の行動に影響を与 えるが, 過去の経験全てが影響を与 えるわけで はない。過去の経験全てが, うまく符号化あ るいは構造化されれ ば,私た ちの記憶 とし て保 存され,そして 確実に再生 され うる1‰ しかし全 て の情報が, そのように処理されるわけでは ない。し たがって,過去のどの 経験昿 現在 の消費者め行動に影響を与え るのかとい うことが問題になる。 この問題 に 関して,最 も単純に考え るな らば,現在 の消費が,前期の所 得 に依存す る とい うものである。 それは次式に よって表 現できる。 Cr =ブ(YT-i) … … … ……(1 ) Ct :現時点(T )における消費水準Yt-1: 現時点(T ) の前期 の所 得 /: 関数記号 この式に は 次のことが意味として含まれてい る。 所得 とい う客観的 な情報 が,消費者 の心理的プロセス(あるいは 情報処理)を 経て, 内部化され主観 的 情報に変 換 される, そしてそれが消費 とい う顕在的 な行動 として発 現する のには遅れが生じる。 この考え方のもとに,多 くの実証 研究が行われてい る。 現在の所 得の みで消費者の消費水準を説 明し ようとする より 乱 所 得の変化 にたいする消費者 の反応 の遅れを 導入す ることに より, 説 明力が上がるとい う報告がい くつかなされているU)。 し かし この考え方には,1 つ の問題点が指 摘され得る。 すなわち, それ以 前の所得に関し て記 憶されてい た過去 の情報は,新し く入 ってきた所得 膚報 に よって, ほ とんど完全に置換されてし ま うことに なるので ある。

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次にDuesenberry の仮説「歯止め( ラチェット)効 果(ratcheteffct)/ ) を述 べてみる。 この仮説は, 現在の消費が過去 の最高所 得に 依存するとい う もので,次式に よって表 現で きる。Cr =/(Yhigh ●)……… …………(2 )G: 現時点(T ) における消費水準ihigli.: 過去から現時点 までにおけ る最高所 得y: 関数記 号 その意味する ところは,従来 の需要理論 の消費の可逆 性( 所 得下落 から生 じる支出の変化 は, 上昇か ら生じる変化 と絶対量が等し い)を否 定するもの である。 これは, 消費者とい うものは, 他人 と比較し て相対的 に より高い生 活水準 の達成を 目指し てお り,一 度達成し た生活水準は社会関係上,所得が 下 がったといってす ぐに下げ られない,そしてその中で も特に 過去に達っ七 だ最高所 得に見合った消費を続けることが, 社会的身分 の維 持に 必要であ る とい う理 由付けに もとづいている1≒ あるい は,高い生活水 準に 適応するこ とは楽しいし, たやすい, 逆に今ある生活水準よりも低い水準に 適応する こ とは, 楽し くないし, つらい とい うことも,そ の背景に 考え られている。 そして,Maslow の言 うように, いずれの欲求で もそれが満足 される と, 次に さらなる高次 の欲求 が生じ る14)ことを認めるならば,過 去の最高所得に より獲得された生活水準を土 台 とし て,その上 の段階 の欲求 が生 じることは あ りうる。し かし,Katona がLewin らの 要求水準の研究を まとめた中に, 「要 求は静的な ものでは なく, また一度で 確立 されるもので はない」 とい う こ とが述べられてい る ように15) 過去 の一度きりの最高所 得水準に より, 要 求水準が完全に固定 され る可 能性は大 きト とは言えない, また所 得が変化す るならば, それにつれて要求 も変化するのが 自然 と考え られる。 したがって, 次0 よう に柔軟に考えることが無難であ るかもし れない。所 得水準かおる高水準とい われる所に達し たとき,消費はそ れに従い高 度な消 費水準に至 る,し かし それが一度 なりの経験の場合には, 完全に消費者 の心 の中に 高度な消費 水準が固 定されない, 未だ柔軟性を 持った形で保持 される。 そし て次の時点で,所 得が 最高所 得に比較して大 きな幅で落 ちる, その時に 今度は消費水草 もそれにつ れて低下する,しかし その低下 幅は 過去 の高度の 消費水準 の経験に 引っ張 られ,所 得の低下 幅程には ならない,以 前の同 じ所 得の時 の消費 水準 よりも高い消費水準を示す。

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消費者行動にたいす る所得 の影 響一時間−23 消費水準の完全な 可逆性 も 認められないが, また 過去の最高所 得に消費 水準が囚定されるとい う 完全な 反可逆性 も 完全に 認 めることはで きない。Duesenberry の言 うような,過去の最高所 得に よる完全 な歯 止め効果とい う よりも, ある 幅を持った歯止め効果を考えることが無難 に思え る。 次に過去の所得の現在 の消費水準に及ぼす影響を 考える とき,過去 の所得 の恒常的 な部分 が大切 なのである, とい うFriedman の考 え方を 見てみる。 それを単純化し て表 現すると次式になる1≒ CT =y (Trenn. ) (3 ) G :現時点(T )における消費水準 馬・rm-・過去から現時点 までにおける恒常的所 得17) ア: 関数記号 上式 の意味するところは, 現時点におけ る消費は, 偶発的に時々変化する 実 際に入手する所 得に よるのではな く, 過去から現在まで のある安定した所 得に より決まるとい うものである。Friedman は所得を2 つ の 構成要素,す なわち恒常的 な要素と変 動的 な要素から成ると仮定し ている。恒常的 な部分 の所得は, 個人の属 性た とえば教育(training), 能力, パ ーソナリテ 柚 職 業等の貢 献に よって得られるとする。 一方変動的 な部分 の 所 得は,「他 の」 全ての要因に よるもの, すなわち不慮の出来事あるい は偶然 のチ ャンスに依 存するものであ る。し たがって,ある意味では身につい た所得に対応して消 費 がなされる, 偶発的 なプ ラスあるいはマイナスの所 得にたいし ては消費は 敏感に反応し ない, とい うことが主張されている。 これは, あ る1 地点 の特 定の所得( 例えば過去 の最高所得)に より,形成される消費慣 習とい うより も,ある時間的 幅を 持った所得変化にたいして少し ずつ培 われた 消費 既習の 形成を意味し ている。 さらに, 過去の所 得 の現在の消費 への影響を論理的 に考える と, 次の2 つ のタイプも考えられな くは ない。 Cr =f (Jl .we-) (4 ) G :現 時点(T )における消費水準r. 。−: 過去 から現時点 までにおけ る最低所得 ズ: 関数記号 この式は, 現在 の消費 水準が,過去のもっ とも低い所 得に縛 られるこ とを 意味する。これは, 先 ほどのDuesenberry の考え 方 「 高い 生活 水準に 適応

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す る ことは楽しいし, たやすい,逆に 今あ る生活水準よ りも低い水準に 適応 す る ことは,楽し くないし, つ らい」 とい う考え方に真 っ向から反するもの で ある。 もしかすると,悲観論者が先行 きの用心の為に生活レ ベルを上げ る こ とを 恐れているときに, あるいは禁欲主 義者が, 己の信念を 曲げ ない為 の 行動を取るときに,生じるかもし れ ない。 CT =f(YT (5 ) G :現時点(T )におけ る消費 水準 恰 一:現時点(T ) のぱ るか過去 の所 得y: 関数記号 この式は, 現在の消費水準が, はるかかなだ の過去の所 得に縛られるこ と を 意味する。 これは, 人間の記 憶の メカニズムにおけ る,記憶痕跡の消失あ るいは検索の困難さ18)を考えると, ほ とん ど無意味な仮定である。 ここ まで,5 つのタイプの過去 の所 得と現在の消費 の関係を 見て きた。 そ の中で最初の3 つのタイプ,す なわち前期 の所 得, 過去の最高所 得,そし て 恒常所 得に関してぱそれぞれ多 くの論者に より,実証されてお り認められて い る考え方である。しかし, ある状況においては, この3 つ のタイプの所得 は, 同じ ような測定値を示 す場合 かおる。 現在の日本のような経済的に安定 し ている所では,失業で もし ない 限 り所 得は一 定かあるいは徐々に上昇し て い くか のどちらかの可 能性が高い。上 下に激し く変動することはほとんどな い。 この ような状況においては,前期 の所 得と過去 の最高所得は同じ値に な る, また恒常所得もそ れらの値に非常に近い値を示すはずであ る。 したがっ て, どの所 得を取 り上げ て, 消費 の説 明変数 として も同じよ うに説 明力を示 す のは当然であると言えるのかもし れない。 他の2 つのタイプ の所 得はレ あ る特殊な状況においては, 何か意味を 持つ場合がない ともいえない。 4. 未来の所得の影響 ここで言 う未来の所得とは, 個人が予測す る個人 の将 来所 得を意味する。 言葉を代えて,期待所得とい っても よいか もしれない。 なぜ,現在 の消費水準を説 明す るために, 将来の所 得を考慮しなけ ればな らない のか。 経済学者0 一部 の人た ちはよ 将来の所 得を説 明変数として導入 す ることにたいし て,次 のような理 由を上げ, 異議を唱えている。将来の所 得にたいする個人 の予測は, 最近時におけ る所 得歴史を 表現し たものであ り,

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消費者行動にたいする所得の影響一時間−25 過 去 のト レ ント の延 長 で あ る。 し た が って, わ ざわ ざ 期 待所 得 とい う考え 方 を 導 入し な くて 乱 過去 の所 得 ト レ ント に よる 推 定 値 で 代置 で き る, とい う ので あ る。 し かし,Katona が 言 うよ うに, 個 人 の期 待 は 単 な る 過 去 の 延 長 で は な い1 ‰ 再 編成 さ れ た 状況, す な わ ち, 新 し い 事 象 あ る い は新 し い 考 え方 が , 個 人 内に 出現し た りまた は 世 の 中 に 普 及し た 時 に は, 個 人 の期 待 は, 過 去O トレ ント の延 長 線上 に は ない 。 期 待 は , 単 な る 過 去 の延 長 とは な らず, 過 去 の延 長 と反 対 方向 を 示 す こ とが あ り うる。 個 人 の所 得が , 過 去 ず っ と上 昇 傾 向 に あっ た とし て 乱 次 の時 点 で 状 況 が変 化 し た こ とに 気 づ 凱 所 得 の予 測 を 下 方に 修正 , あ るい は 逆 に 以 前 の所 得 よ り も低 い 水 準 に 見積 も る ことは あ り うる。 こ の よ うな こ とが 生 じ る こ とを 認 め る な らば, 期待 所 得 の考え 方 を 導 入 す る こ とは, 理 に か な っ て い る と考 え る こ とが で き る。 まずKatona の考 え方 を 見 て み る。 そ れ は, 次 式 に 示 さ れ る よ うに , 現 時 点 にお け る消 費 水 準は, 消 費 者 の現 時 点 に お け る次 期 の期待 所 得に 依 存 す る20) とい う もので あ る。 し かし , 現 時 点 に お け る 次期 の期 待 所 得 と言 って も,一 般的 な 消費 者 は 厳 密 な数 字で そ れを , 普 通 は予 測 で きな い。 し た が っ て, 次期 の消 費 者 の期待 所 得 を 測 定 す るに 際し て,Katona は, そ れを 大 体3 つ のレ ベル に 分け る こ とに よ って 行 って い る2≒ す な わち, 次期 に 期待 さ れ る所得 は, 現 在 よ り,「 よ り高し , 大 体 同 じ, よ り低い 」 の3 レ ベ ルで あ る。 CT =ア(Y 。xpe。) … ‥ (6 ) G :現時点(T )における 消費水準-iexpe 。:現時点(T )におけ る次期 の期待所 得y: 関数記号 この方法に よるKatona の 実 証分 析に よる と, 期待所 得の 概念は消費者 の消費行動を, ある程 度説 明で きる とい うことであ る。それは,過去の所 得 変化 と組 み合わせると, より説 明力 が上が るとい うこと も報告されてい る22)。 次にModigliani とBrumberg らに よ る ラ千フ・サイ クル 仮説を 見てみ る2‰ これは,以下 の考え方に 基づいている。 消費者は,予測 される生涯所 得に もとづ き,そ の所得制約の下 で生 涯の総効用を 最大 化す るように,各期 の消費支 出を決定する。 次式に よって表現される。 Ct

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現時点べT )における消費水準Ynte: 現時点(T )における,T 時以降 の予測 され る消費者の総生 涯所 得 /: 関数記 号 これは√個人の消費 パタ ーンが人生 の各段階において 異なっているとい う こ とに着目し,人生 のある段階においては,収入に比較し て,多 くの支出を しなけ ればならない 時,程々の支 出が必要なとき, ほ とんど支 出を する必要 がない とき, とい うことがあり,それに応じて生涯の総所 得を 配分し,消費 を 行 うとい う意味であ る。 しかし, 現実的に考えるならば,全て の消費行動に わたって, 消費者がこ のよ うな大 きなパ ースペ クティブを 持つ とい うことは, 若干疑問であ る。 将来 の所得に関し て, 過去の所得と㈲じ ように 他の影 響方式を論理的に 考 えてみると, 次の3 つ のタイプも考えられる。将来予測 で きる最高所得,将 来予測できる最低所 得, そして最も遠い将来の所 得のそ れぞれに影響を受け るとい うもので ある。し かし, これ らは消費者が現時点にお いて厳密に予測 できる変数であ るとは 考え られない とい う意味において , 考察 の対 象外にお くことが賢 明であ ると思 われる。 5. 消 費者の意思 決定と所得の概念 消費者 の意思決定( プ ロセス)と所 得の関係を 考察し て みる。 それを行 う前に,処 理し なければならない問題があ る。 すなわち, 所得概 念 の明確化で ある。 普通,所 得は「生産活動に何 らか の形で参加した生産要 素に対して支払 われる貨 幣的お よび実物的報酬」 とい われる24)。 さ らに それ は,あ る一定期間に対して定義されるフロ ー概念であ り,所 得が蓄 積された ストッ クの概 念が富 または資産である, とされる。 そ のフa ーである個人所得から,税, 社会保険料, 移転支 出を引い た残 り が個人可処 分所 得である。 そして, これが実際の消費と貯蓄に振 り分けられ る2‰ 一 般に は, この可処分所 得を「所 得」 と表現し てい る。 この所 得が, 経済学で普通言われる所 得概念である。 ところが, 消費行動を考 えるとき,所 得制約 として, この所 得フロ ーの概 念 のみで説 明する のでは なく, ストッ クの概念を導入し た方が より説明力が 上がる とい う仮説 がTobin により提出されている26)。 すなわち, 手持ち現

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十 消 費者 行 動 に た い す る 所 得 の 影 響一 時 間−27 金 を 含 め て , そ の 他 の 金 融 資 産 ( 銀 行 預 金 , 債 券 , 株 式 証 券 な ど ) の 放 出 に よ り , 消 費 支 出 が 行 わ れ る 可 能 性 を 指 摘 し た の で あ る27 )。 し た が っ て , 現 時 点 に お け る 所 得 制 約 を 考 え る と き , 純 粋 な フ ロ ー 概 念 に よ る 所 得 以 外 の , 現 時 点 で 所 得 に 変 換 可 能 な も の を も 考 慮 し な け れ ば な ち な い 。 さ ら に , 極 論 す る な ら ば , 実 物 資 産 で あ る 土 地 , 建 物 , あ る い は 自 動 車 の よ う な 耐 久 消 費 財 も , 換 金 の 速 度 は 遅 い が 換 金 可 能 で あ る 。 ど こ ま で を 所 得 制 約 の 所 得 と 考 え て 良 い の か 。 大 き な 買 物 , す な わ ち 土 地 , 建 物 , 自 動 車 の よ う な も の を 買 う と き , 個 人 は 手 元 に あ る 現 金 所 得 だ け を 考 え る の で は な く , そ れ ら の 実 物 資 産 を 換 金 し 資 金 を 作 る こ と を 普 通 行 う 。 こ の よ う な 場 合 , 所 得 制 約 は 所 得 フ ロ ー の 範 囲 に 限 ら ず , ス ト ッ タ の 部 分 ま で 含 め な け れ ば な ら な い 。 そ れ に た い し て , 個 人 の 所 得 フ コ ー の 範 囲 内 に 入 る よ う な 通 常 の 買 物 の 場 合 は , 当 然 可 処 分 所 得 と い わ れ る 所 得 が 制 約 と し て 考 え ら れ る 。 購 入 し よ う と す る 対 象 物 に 応 じ て , 個 人 の 所 得 制 約 の 内 容 も 変 化 対 応 す る と 考 え ら れ る 。 そ し て ま た , 最 終 的 に 購 入 す る か し な い か の 意 思 決 定 時 点 か ら の 時 間 的 間 隔 に 応 じ て 乱 消 費 者 の 所 得 制 約 の 内 容 が 違 っ て く る こ と が 予 想 さ れ る 。 す な わ ち , い ま だ 意 思 決 定 す る ま で に 時 間 的 余 裕 か お る 時 点 で は , ま だ 本 当 に 購 入 す る か ど う か も 定 ま っ て い な い し , た と え 購 入 す る 方 向 に あ っ た と し て 乱 自 身 の 身 に さ し 迫 っ て い な い こ と か ら , 自 身 の 状 況 を 遠 く か ら 客 観 的 に 見 て い る 。 そ の 状 態 に お い て は , 抽 象 的 に あ る 幅 を 持 っ て 所 得 制 約 を 考 え て い る 。「 年 間 所 得 が と の 位 だ か ら , 月 々 の 給 料 が こ れ 位 だ か ら 購 入 に 無 理 は な い だ ろ う 」 と い う ぐ ら い に 。 し か し , 意 思 決 定 が 行 わ れ る 時 点 が 近 づ く に つ れ て , 徐 々 に 緊 急 性 , 具 体 性 が 生 じ て く る 。 そ う す る と , 所 得 制 約 に 関 し て も 具 体 的 な 金 額 レ ベ ル で 考 慮 し な け れ ば な ら な く な る 。「 次 の 給 料 日 ま で , あ と い く ら 銀 行 に 預 金 残 高 が あ る か ら , 購 入 し て も 平 気 か な 」 と い う よ う に 考 え る か も し れ な い 。 そ し て , 最 終 的 に 購 入 す る か ど う か を 決 定 す る 瞬 間 に お い て は , 対 象 物 の 価 格 と 自 身 の 所 有 金 額 が 具 体 的 に 比 較 さ れ る 。 極 論 す る と , い ま ポ ケ ッ ト に い く ら 入 っ て い る か ら , 買 お う あ る い は 買 う の を 止 そ う と 決 定 す る こ と が 生 じ る か も し れ な い 。 以 上 の こ と が 類 推 で き る 。 次 に , 過 去 の 情 報 が ど の よ う な 形 で 現 在 の 消 費 者 行 動 に 影 響 を 与 え る の か , そ の 道 筋 を 追 っ て み る 。 そ れ は 過 去 の 所 得 の 数 字 て 金 額 ) そ の も の が , 現 在 の 消 費 者 に 影 響 を 与 え る と 考 え る の で は な く,1 つ の ス テ ッ プ を 経 過 し て 影

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響を 与えると考えられる。 すなわち, 過去 の所 得の数字が一旦個人 の中に蓄 え られる, 客観的 な外部情報の主 観的 な情報への変換が行われる。 そし て こ の主 観化された情報が,消 費者の消費あるいは製品にたい する欲求に影 響を 与え,後に態度や購買意図に も影響を与えることになる。 最初に述べた ように・, 購買=/( 買 う能力, 買お うとする意思) とい う関 数関 係が認められるな らば, 過去 の所得は,買 う能力として購買に影響を与 える のではなく, 買お うとする意思を通して購買に影響を与える と考え られ るのである。 さらに所 得制約に関して, 前述の流動資産は過去の蓄 えの現在化とい う意 味を 持つとするな らば, 今度は 未来の蓄えの現在化 とい う意味におい て, ク レ ジットの可能性 も 考慮し なげ ればならない。Katon が 言 うよ うに, 消 費 者は購買を早めた り遅 らせた りす る自由を 持つ と同時に,現 在の所 得以上に 支 出する自由を 持っている2‰ す なわち,個人 の未来にたいす る借 金の能力 が, 個人の現在の所 得制約を緩め ることがで きるからであ る。 もちろ ん, そ れは無限に借 りられるわげでぱ ない。 いくらぐらい の金額が借 りられるか, そ の場合 の利率は 何%か, そし て どのくらいずつ返済し,い つ完了するか, とい うことを考える。し たがって, 個人 の判断に より可能な範囲で所得制約 を 緩めるとい うことに なる。 これ まで のことを 全て まとめて 所 得概念を列挙する と, 表-]^ の ように ま とめ られる。最後に注意 として,表中におい ては, 当論 文で指 摘し た全て の タイプの所得が描かれているが, 論理的に考えると消去で きる ものもあるし, 実 際に測定できない もの もある, とい うことを指摘しておか なけ れば ならな し七 表_1 所得のタイプ 過 去 の 所 得 現 在 の 所 得 未 来 の 所 得 1. 前 期 の所 得2. 過 去 の 最 高 所 得3. 恒 常 所 得4. 過 去 の最 低 所 得5. は る か 過 去 の所 得 1. 実 物 資 産2. 金 融 資 産3. 可 処 分 所 得a. 年 間 所 得b. 月 々 の 給 料c. 給 料 日 ま で の預 金 残 高d. ポ ケ ット の 中 の お 金 L 次 期 の期 待 所 得2. 予 測 さ れ る 生 涯 所 得3. 予 測 で き る 最 高 所 得4. 予 測 で き る 最 低 所 得5. 遠 い 将 来 の 所 得6. クレ ジ ッ ト に よる 所 得

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消費者行動にたいする所得の影響一時間−29 こ こまで の節 を 結 ぶに 際 し て, 次 の ことを 述 べ てお か なけ れ ば な ら ない 。 す な わち, ど の所 得が 最 も説 明 力が 大 きい , あ るい は 小 さい か ら, 説 明変 数 に 採 用 するし な い と考 え る の では な く, む し ろ ど の よ う な状 況 の と きに , あ るい は どの様 な 研 究 対 象 の と きに , こ れ ら の所 得が ど の よ うに 関 係し て く る のか とい うこ とを 明 らか に す る こ とが大 切 で あ り, よ り生 産 的 と思 わ れる 。 変 数 の取 捨 選択 とい う よ い に , 状況 の特 定 化 と所 得概 念 の 組 み合 せを 考 え る こと, そ し て 消費 者 の 意思 決 定 モデル にお い て , 具 体 的 に 過去, 現 在, 未来 のど の所 得 が , ど の変 数 に 影 響 を与 え るの か を 緻 密 に 追求 する 必要 が あ る と考 え ら れ る。 お わ り に 当論文は, まず私たちの存在が,あ る時間軸上の1 地点 と空間軸上の1 地 点の交差するところ, すなわち時空同上 の1 地点にある こ とを 認めることか ら始めてい る。あ る瞬間におげる私た ちの行動あるいは 意思決定は, 歴史的 関連と社会的関 連の両者の影響を,同時に受けてい る。し たがって, 消費者 とい う個人を 考え たときに 仏 その所得が同 様の仕方で, 影 響を与 えてい る ことを考えた。空間的 な所 得の影響は割愛し,現在 の所得, 過去の所 得, 未 来 の所得の消費者行動に たい する影響を考察し た。 まず,所 得が高い ほど, 消費する財の種類数が多い とい うことが, 限界効 用低減の法則か ら導 かれた。一 方,消費水準にたいする所 得の影響を 考慮す る とき,所 得の増大 の影 響は全 ての財にたいし て常にプ ラスに 働くとは 限ら ないとい うこと も理論的に再 確認した。 次に,過去のど のよ うな所 得経験が, 現在の消費行動に影響を与え るのか とい うことを 考察し た。 前期 の所 得, 過去の 最高所 得( ラチェ ット効果), 恒常所得, 過去の最低所 得, は るか過去の所 得を取 り上げ た。後 の2 つ のタ イプの所得を 除い て, 前 の3 つ のタイプの所 得は, それぞれ多 くの論者に よ り実証されてお り, 認め られてい る考え方であった。 そして次に√未来 の所 得の現在の消費者行動への影響を 考察し た。次期 の 期待所得,予 測される生涯所 得,予測できる最高所得, 遠い将 来の所 得を と り上げた。 そして, 最後 の節では, 所 得の概念自体 と消費者の意思 決定 と所 得の関係 を考察し た。そ こでは, 普通所 得はフ= −の概念でとらえ られるが, 購入す

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る製品( 財) の価格に よってはスト ッ クめ概念 も含める必要がある,さ らに, 消費者の意思決定が瞬間的 な ものでな くプ=2 セスとし てとらえ られるとき, す なわち製品 の存在を知ったとき,あ るい は欲求が生 じてそ の製品を買お う か なと思 った ときから, まさに 購買・非 購買の決定を行 うときまで の時間的 間隔,緊迫感に 応じて考慮する所 得内容 が異なって くる ことを 指摘し た。 次 に 過去の所 得は,買 う能力 として購買に影響を与えるのではなく,態度や買 お うとする意思を通して購買に影響を与え ると論じた。 そし て,最後に未来 の所 得の現在化 とい う意味にお いて, クレ ジットの効果を 考察し,所 得制約 がそれに ょって 緩められる とい うこと も指摘した。 最 後に,説 明力からみた変 数の取捨選択 とい うより 乱 状況を特定化する ことに よる変数 の組み合ぜを 考える必要 がある とい うことを述べた。 今回,経済学分 野におけ る所 得と消費者行動 の関係におげる理論あるい は 実証研究を見てきた。これら経済学 の研究 は主 として, 消費者の消費行動 と 貯蓄 行動に関するものであヶだ, あ るいは消費者 の家計支出行動,すなわち 食 費, 被服費,住居費,雑費等にたいする支出振 り分け に関するものであ っ た。一 方, マ ーケティング分野における消費者行動の研究は,主 として消費 者 の製品選択あるいはブ ランド選択に 強く関係するものであ る。し たがって, 経済学 の分野における研究が直接 マ ーケティ ングにおけ る消費者行動 の解明 に役に立つ とは言えない。す なわち, この ような所 得変数 のみで消費者の行 動を 説 明し ようとする場合には, 消費 者の家 計支 出行動は説 明で きるかもし れないが, 消費者 の製品選択, プ ラン下 選択 の行動を十分に説明で きない こ とが予測される。し かし,これ ら経済学 の所 得変数に関する研究成果に, 他 の分野の研究成果に よる変数を 結び付ける ことに よって,説 明が うまくなさ れ る可 能性がある。 どのように経 済学 の成果 と他 の分野の成果を ミックスさ せる か, これが今後 の課題であ る。 注 1)GeorgeKatona,ThePowerfulConsummer-PsychologicalStudyoftheAm-ericanEconony ,McGraw-Hill,1960 (社会行動研究所訳,南博監修『 消費者行動− その経済心理学的研究− 』, ダイ ヤモソド社,昭和39年,P-4 )2 ) 経済学において, 効用とは, 消費者が財や サービス の消費から得られる満足 て 欲求や欲望の充足の程度卜 を言 う。金森久雄,荒憲次郎,森口親司編,『経済辞

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消費者 行動にたいす る所得 の影響一時間−31 典一 新 版 』,有 斐 閣,1986,p.219, ( ) 内 筆 者 挿 入ノ3 )GeorgeKatona 、PsychologicalAnalysisofEconomicBehaznor,McGraw-Hill,1951,p.864 ) 高 島 善 哉 ,『 社 会 科 学 の 再 建 一 人 間 と 社 会 を 見 直 す 目− 』, 新 評 論,1981 年 ,pp.76-775 )JamesIvi.HendersonandRichardE.Quandt,Microeconomic1heory:AMathematicalApproach-secondedition,McGraw-Hill,1971 ( 小 宮 隆 太 郎 , 兼 光 秀 郎 訳 「 現 代 経 済 学 一 価 格 分 析 の理 論 − 」 第 二 版 増 訂 版 , 創文 社 , 昭 和48 年 ,p.7 )6 ) 「 満 足 に つ い て の す べ て の 情 報 は , こ の 消 費 者 の 効 用 関 数 に 含 ま れ る 」 とい り こ の文 は , 消費 者 の 財 に つ い て の完 全 情 報 を 意 味 す る と同 時 に , 財 か ら 得 ら れ る 満 足 とい う語 の 中 に・, あ ら ゆ る 意 味 の 満 足 が 含 ま れ て い る と 考 え る こ と が で き る。 す な わ ち, 個 人 の 欲望 や 欲 求 が , 感 情 的 な も ので あ っ た り, 他 人 の 目を 意 識 し た も の で あ っ た り, 首 尾 一 貫 し て い な い も の で あ っ た り, とい う よ うな 他 人 か ら 見た ら い わ ゆ る 非 合 理 的 な も のに 見 え る 場 合 に も, 効 用 とい う語 の中 に は , モ の 個人 の中 で は , 合 理 的 な 効 用 極 大 化 が 行 わ れ て い る と, す な わ ち 個 人 的 に は 他 人 が ど う考 え よ う と充 分 な 満 足 を 得 て い る , と考 え ら れ る の で あ る 。 “ 効 用 は , 各 個 人 が 消 費 に よっ て 得 る 主 観 的 な 満 足 感 で あ る ” 今 井 賢 一 , 宇 沢 弘 文 , 小 宮 隆 太 郎 , 根 岸 隆 , 村 上 泰 亮 著 「 現 代 経 済 学1 価 格 理 論I 」,岩 波 書 店,1971 年 ,p.397 ) 同 上 書 ,pp.60-638 )HendricHouthakker,"AnInternationalComparisonofHouseholdExpend-iturePatterns,CommemoratingtheCentenaryofEngel'sLaw",Vol.20,No.4,pp.532-5519 )GeorgeKatona,op-cit 。1951,p.52 ,10 ) 久 保 良 敏 監 修 『 心 理 学 図 説 』, 北 大 路 書 房 , 昭 和57 年 ,p.88DavidE.Rumelhart,HumanInformationProcessing,JohnWiley&sons,1977 ( 御 領 謙 訳 『 人 間 の 情 報 処 理 一 新 し い 認 知 心 理 学 へ のい ざ な い ー 』, サ イェ ソ ス社 , 昭 和54 年 ,pp.241-282 )11 )T.M.Brown,"HabitPersistenceandLagsinConsumerBehavior"Econ-ometrica,Vol.20,Number3,July,1952,p.358 辻 村 江 太 郎 ,『 消費 構 造 と 物 価− 経 済 学 全 集 』, 勁 草 書 房,1968 年,p パ13012 )Jamess.Duesenberry,Income,Saving,andtheTheoryofConsumerBe-havior,HarvardUniversityPress,1949p.114 (J.S. デ ュ ー ゼ ソ ベV ー 著 , 大 熊 一 郎 訳 「 所 得 ・貯 蓄 ・ 消 費 者 行 為 の 理 論 」 〈 改訳 三 版 〉 厳 松 堂 出 版 , 昭 和50 年.p ,177 )

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13 )!4 )

ibid.,pp.28 ・32A.H.MaslowMotivationandPersonality,Harper&Low,1954( 小口忠彦監修『人間性の心理学』,産能短大,昭和46年,p.120)

15)GeorgeKatona, “RationalBehabiorandEconomicBehavior ≒Phychologi-calReview,Vol.60

(1953)inKassarjianandRobertsoned.Pers )ectivesinConsumerBehavior,Scott,ForemanandCompany,!968 ,p.!516 )Friedman の 元 の式 は ,Cp 。皿 。= 尺(I,W, び 恰 。− ,と な っ て い る 。 あ る時 点 に お け る 恒 常 的 な 消 費 は , 定 数K , 利 子 率I, 財 産 所 得 と非 財 産 所 得 の 相 対 的 重 要 性w , 消 費 と 貯 蓄 に た い す る 消費 者 の 選 好u , そ し て 恒 常 所 得J-perm. の関 数 であ る 。MiltonFriedman,ATheoryoftheConsumputionFunction,PrinstonUniversityPress,1957,p.2617 )Friedman の い う恒 常 所 得 は , 次 式 に よ っ て 表 現 さ れ る 。 で晦・皿,(-'')―ドzv(t −T)Y(t)dt 測定された所得Y (t) から,(現時点 の) 恒常所得 ■*perm(T )を得るには,。 過去から現時点(T )まで所得no にたいして ウェイトを つけ,そ れを積分す ることに よって求められる。 たとえば とし て,Friedman はそ のウェイトを 回 口−T )=βが]" ,(そこにおいてドw(t −T )心 =V) とい うように 過去に遡 ∞ るに従い, その所得の影響力が減少するとい うような指数を 例示している。しか し,こ の指数によるウェイトづけでは,所得が徐々に上昇する場合, どうしても 観測値 よりも推定値が低くなってし まうとい う理由により,最終的には次式によ り恒常所得を求めている。 J^perm. ―(-^) β ド し zve(β-・)ト フ)Y(T)d £ ibid.,pp.142-144 18)S.A.Mednic,J.HigginsandJ.Kirschenbaum,Psychology ;・Explorations,inBehavior&Experience,JohnWiley&Sons,1975 ( 外 林 大 作 , 島 津 一 夫 編 著 『 心 理 学 概 論 一 行 動 と 経 験 の 探 究 』, 誠 信 書 房 ,1979 年 ,pp.177-182 )19 )GeorgeKatona ,op.cit.,1951,p.14120 )Katona は , 現 実 の 分 析 に お い て は , 消 費 者 の 消 費 行 動 ( 貯 蓄 行 動 ) を 説 明 す る 為 に , 過 去 と 将 来 の2 つ の所 得 変 化 を 同 時 に 説 明 変 数 と し て 利 用 し て い る。21 )Katona,op.cit.,1951,pp.157-15822 )ibid ・,pp.15823 )A.AndoandF.Modigliani ,"The'LifeCycle'HypothesisofSaving:

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消費者行動にたいす る所得 の影 響一時間一33AggregateImplicationsandTest ’≒AmericanEeonomicResearch,March,1963,pp.55-8424

) 金 森 久 雄 , 荒 憲 治 郎 , 森 口 親 司 編, 前 掲 書 ,p-20925

) 小 泉 進 , 建 元 正 弘 著 「 現 代 経 済 学2 所 得 分 析」, 岩 波 書 店 ,1972,p.3026 ) 同 上 書.pp.141-142

(JamesTobin ,"RelativeImcome,Absoluteincome,andSaving ”inMoney,Trade,andEconomicGrowth,EssaysinHonorofJohnHenryWilliams,Macmillan

,1951)27

) 後 に,Klein に よ り, 流 動 資 産 の保 有 は 消 費 を 高 め, 逆 に 耐 久 的 な 実 物 資 産 の 保 有 は , 消 費 を 低 め る 効 果 を 持 つ こ と が 確 認 さ れ て い る と い う こ と で あ る。 大 阪 府 立 大 学 経 済研 究 所 編 「 経 済 学 辞 典 第2 版 」,p.68228

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