特集
環境との調和を目指したカー工レクロトロニクス技術
スムーズな走行を指向する変速機制御
一駆動トルク推定法を用いた自動変速機制御技術-AutomaticTransmis$ionControISystem
Enhanced byTorqueEstimationTechno10gy射場本
正彦*
此方αゐZ々〝乃d∽0わ 佐 藤 一 彦** ムbz〟ゐ才力0滋J♂ 駆動トルク トルクコンバータ 遊星ギヤ 油圧回路 電磁弁 スロットル弁 エンジン エンジン・AT制御用 コントロールユニット 世監ミ+ヽ一正ぺ○
基本変速制御 ップ 変速線 速 4 ク レ ト 自動変速機 クラッチ⇒
車 速 ライン圧制御 黒岩
弘* 〟gr(ノざJ∼オ∬z′γ√フォ乙川 箕 輪 利 通*** ¶ノ∫カJル∼∠r如〟g仙∼U〟 ●運転感覚に合わせる変速制御 ●チュ ングエ数を低減する フィードバック方式フィ竺雫人1ご芸制御
御 道路こ \ ぅ配推定 駆動ト臣
ヒ
注:略語説明 AT(AutomaticTra[Smission) 駆動トルク推定法を用いた制御アルゴリズム 新たなセンサを付加せず,ソフトだけでトルクを推定して,走行条件の変化に対応できるフィードバック系を構成する。最近の乗用車は8割以上がATを搭載しており,
マイコン(マイクロコンピュータ)を用いた電子制御
ATも多くなってきている。しかし電子化されても
変速マップによるプログラム制御を行っており,メ
カニカルATの制御方法を継承している。変速マッ
プはギヤ比の使用領域を決めておくもので,その境
界を変速線と呼んでおり,車速とスロットル開度の
関数として設定される。したがって,上り坂でも下
り坂でも一律に制御するので,運転感覚に合わない
*11立製作所 自軌車載..ヒ
ギヤ比 トルクコンバータ特性 ことがある。そこで日立製作所は,エンジンの駆動力に応じて
変速するために,駆動トルクを推定する方法を開発
し,変速機制御に応用することとした。新しい方式
として駆動トルクに応じて変速線や油圧特性を変化
させる制御,チューニング工数を低減するフィード
バック制御,道路こう配を推定して変速線を変化さ
せる制御などの応用制御アルゴリズムを開発している。
**rl立オートモティブエンジニアリング株式会社 ***H立製作所 日立研究所山
はじめに 車両の駆動力制御は,速度および加速度をパラメータとして行うのが一般的である。例えば電車の場合,自動
運転するときは目標速度曲線に追従し,揺れないように
加速度を考慮しながら制御される。来り心地を最優先で
追求した乗り物であるエレベーターは,さらに加速度の 微分項まで考慮して制御される。これらは結局駆動トル クを制御しているわけであるが,電動機の場合は電流がトルクに比例しているので,電流フィードバック制御と
するだけでトルク制御ができる。自動車の駆動力制御は,乗り心地を追求するだけでは
ないところに特徴があり,アクセルやブレーキの操作に
機敏に反応して,運扱者の意志どおりに動作することも
要求される。したがって電車やエレベーター以上に積梅
的にトルクを制御すべきものであり,運転者の意図を認 識して目標トルクを設定し,それに基づいて駆動トルク を制御するのが理想的である。しかし自動車の場合は,エンジントルクが簡単に検出
できないこともあって,あらかじめ決められたとおりに動かすプログラム制御とするのが普通である。
(a)エンジントルク特性から求める方法 そこで,エンジンやトルクコンバータの特性をメモリ に記憶させておけばトルクを推定計算できることに前[-i し,トルクセンサを円いずに,フィードバック系を構成することを検討した。
ここでは,駆動トルク推定方法およびそれを応用した
変速機の制御アルゴリズムと評価結果について述べる。凶
トルク推定技術
駆動トルクの推定計算方法としては推定精度を高める ために二つのアルゴリズムを併用した。一つは図1(a)に 示すエンジントルク特性から求める方法で,計測したエ ンジン回転数肋とスロットル開度rlのを,同図(i)のエ ンジントルク王障性マップに人力してエンジントルク了セを検索する。
一方,エンジン回転数肋とタービン回転数+7W(トルク コンバータ出力側回転数)の比を求めて滑り率ピとし,こ れを図=ii)にホすトルクコンバータのトルク比特性マッ プに人力すると,トルク増幅率才が求まる。これを先に求 めたエンジントルク了セに掛けてタービントルク77を求め,さらにギヤ比を掛けて駆動トルク7七を算出するもの
である。 (b)トルクコンバータ特性から求める方法Ⅴ。(i)言ンジントルク特性
腎莞,…
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rO Cp Ⅳe e Cp 乃 e 〃舌 e (ji)トルク比特性 〃e (ii)トルク比特性 〃e.e 亡 よ ギヤ比 e 亡 e 〃f e ー___-______________-_____________一______________.J ■_ エンジン回転数几k ス タービン回転数〃亡 ロットル開度TVO・rvol l l ハ 〃e 八rg エンジン 了t (乃) ギヤ トレイン トルク コンバータ 7も ギヤ比 r亡注i黒雲翌トル,),帥レ,コンパ刊カトルク),仙レク増幅率,,e(トルクコンバータ滑。率=忍),。p(トルクコンバータ入力脚数,
図l駆動トルク推定アルゴリズム ニつのアルゴリズムがあり,トルクの大きさによって使い分ける。 駆動 トルク roスムーズな走行を指向する変速機制御 161 もう一つは,トルクコンバータ持株だけを使って求め る方法である〔匡==b)参照〕。ri訓叫(iiDの人力容量係数マッ
プに滑l)率どを与えて人力容量係数C少を検索し,これに
エンジン回転数の二乗を掛けることでトルクコンバータ 入力トルク7予を貸出する。以 ̄F同様に同国(ii)のマップか ら得られたトルク増幅率才を掛けてタービントルク77を 求め,さらにギヤ比を掛けて駆動トルク7もを算出する。 これらの方法はそれぞれ得意の領域があl),例えばト ルクの人きなところは,トルクコンバータ特性を仕った ほうが精度が良し、ので図=(b)の方法を採用し,エンジン ブレーキによる負のトルク領域や,トルクコンバータを 甘結(ロックアップ)したときには同図(a)の方式を採川す るなど,使い分けて全体の精度を高めることができた。定常走行時の駆動トルク推定精度を図2に示す。いず
れか適した方法が選択された結果,実測トルクと良く一 致しているのがわかる。田
自動変速機の新しい制御方式
もしトルクが検出できるならば,積載量の変化や通路
こう配などに細かく対応して運転しやすい変速制御がで きることになる。そこで推定したトルクを用し-た密通拙制御について検討した。
260 200 /昌 Z Q [・「 t\ __ゝ 一+100 ヤギ 斐 せ ▽ 100 -100 0 100 200 26 実測トルク(Nm) (a)エンジントルク特性による トルク推定 (b)トルクコンパmタ特性による トルク推定 ★(20km/h)◆(60km/h)■(1(氾km/h) ▼(40km/h)▲(80km/h)●(120km/h) -◇(60km/h)□(100km/h) ▽(40km/h)△(80km/h)○(120km州 図2 駆動トルクの推定精度 大トルク域はトルクコンバータ特性から,負のトルク域はエンジ ントルク特性から,中間は両者からそれぞれ推定する。 3.1変速点可変制御 変速マップは標準走行栄作で最適な変速繰を設定して いるので,逆転モードや走行条件によって変更する必要 があり,変速マップを切り替えるのが一般的である。今 実際に.11りJしている駆軌トルクと,もし変速したと仮左 した場合にトルクがいくらになるかを常時計算してお き,両者を比較判断して最適な変速比を選択すれば,状 況変化にさらに細かく対応できる。 3.2 変速ショック低減制御 変速過池畔のトルク変軌を抑えるためには,駆動トルクが検知されているほうが制御しやすい。駆重力トルクを
フィードバ、ソクして,必要なときに必要なだけⅠ二 ̄1軌的に エンジン川力やライン庄(油k)を変化させ,チューニン グの要らない変速ショック低減方式とすることで,開発 _】二数の削減が可能になる。 3.3 油圧制御 自動変速機は助力伝達経路を切り替えるために,締結 したいギヤのクラッチに油圧を加える。油帖が高ければ クラッチ滑l)は年三じないが,むだな庄力を掛けることに なる。トルクを推定す才tばそのクラッチの伝達トルクが計算できるので,滑らない範帥で必要最小限のライン圧
に抑え,油はポンプの損失を減らして燃質向上を図るこ とができる。 3.4 こう配対応制御遵車云状況に人きく影響する安岡の一つとして道路こう
配があり,これに合わせて変速繰を変える必要がある。 推定トルクから道路こう配を計算で求め,変速点制御に 連動させて坂道に適した変速比を選択する。これにより 長い上り坂でのギヤ比のハンチング現象を避けたり、下り坂で自動的にエンジンブレーキを掛ける制御などが英
二呪できる。以⊥二のようにトルクを検知できれば,運転者の意映=こ
こたえる駆動ノJ制御として,前述の3.1∼3.4のような応用制御ができる。これらのうち日立製作所が開発してい
る二つの事例について以下に述べる。田
変速ショック低減制御
例えば1速ギヤから2速ギヤにシフトアップする場 合,ギヤ比は小さくなるのに申達は変わらないので,エ ンジン凶車云が急激に低下する。このとき,エンジン部分 の慣性モーメントに蓄えられていたエネルギーが放パー1さ れ,一時日加こトルクが噌人して変速ショックとなる。そ の対策として,変速時のライン圧を【一時的に下げたり,目標パターン発生
呈亡妄言=二
+ 点火時期 制御 遅角度 エンジン 制御装置 スロットル開度 エンジン 初期値設定 Tbα トリガ信号 サンプル ホールド 変速開始点 検出 駆動トルク ライン圧制御 PJα タービン トルク トルク推定 エンジン回転数 車速 AT トルク増人に合わせてエンジン出力を低減させる方法が 一般に行われている。しかし,このときのライン庄の値 やエンジン出力低減の開始・終了タイミングは,チュー ニングによって設定しており,機種ごとに調整しなけれ ばならず多大のチューニング+二数を要している。そこでトルク変動を検「hしてフィードバックすること
により,チューニングの不要な方式を開発した。詣Ij御フ、 ロック図を図3に,変速時の波形を図4に示す。トルク 推定部は常時,駆動トルクおよびタービントルクを計算している。変速拍二前の駆動トルクをサンプルホールドし,
その値7七〟から必要なライン庄Pわを設定する。一方, サンプルホールドした駆動トルク了もαに基づく値を初期 値として目標トルクパターンを発生させる。その開始時期は,タービントルクの急変を検出することによって決
める。このトルクパターンと駆動トルクとの偏差が発生
すると,エンジンの点火時期が制御され,その結果自動 的に最適タイミングでエンジン出ノJ低減制御が行われ, チューニングが不要になる。 この新方式で変速させた結果を図5に示す。変速中の 変速信号 タービントルク rf 推定駆動トルク m 点火時期信号 ライン圧 サンプル ホールド値\
7もα PJα パターン 起点 偏差凸
ク ルン ト一 標タ [日パ 遅角度 図4 トルクフィードバック方式による変速中の波形 変速信号機発生後にトルクをサンプルホールドし,変速開始時 にこの値を起点に目標トルクパターンを発生させる。 0 0 0 0 3 2 1 (訂で)軸耳増 1,000 (∈Z) ヘミュ榊斐 1,000 (∈Z) ヘミ+コ無雑 0 0 (欝ヱ雌低地 1・0 (∈Z) ヘミ+蕪雑 0 0 0 0 3 2 1 度 角 進 火 占州 推定駆動トルク 実測駆動トルク 圧 ン イ 一フ 図3 トルク推定による 変速ショック低減方式 トルクを推定して目標トル クパターンを発生させるととも に,フィードバックして偏差 を求め,偏差に応じた点火時 期およびライン圧制御を行う。 遅角度 目標トルクパターン 変速時間 ト←-1 100ms (a)新方式の変速時トルク波形l遅角度
点火進角度 実測駆動トルク 変速時間 ライン庄 ト=+ 100ms∞(メ呈出ミ小0
β 50 0 0 0 500 (申聖)世人†小 (b)従来方式の変速時トルク波形 図5 駆動トルク推定法による変速ショック低減制御の評価 結果(3′000cc4速AT車で,スロットル全開時のl→2変速波形) トルクパターンと推定トルクの偏差が負になったとき,自動的 に最適なタイミングで点火時期制御が行われる。スムーズな走行を指向する変速機制御 163 ライン仔をトルクに応じて最適化することで,トルク変 動のピーク他を抑えながら,∴ミミ火時期制御によって変速 時間を従来方式より延ばさないように制御できた。
トルクを桧山するのではなくて推定するために,計算
誤差やエンジン特性などの経年変化による影響などが心
配される。しかしこの方式は,同じ推定低から作られた
臼標パターンとフィードバック信1j▲を相対比較している ので,誤差の影響はキャンセルされ,l‡f】踵とはならなし-。向
こう配対応制御
駆動トルクから走行抵抗分を除いたトルクが車体の加 速に使われる。走行抵抗は,図6に示すように-ド地走行 抵抗と,こう配抵抗に分けられる。したがって,推定さ れた駆動トルクから,平地走行抵抗分と加速成分を除け ばこう配抵抗分が得られる。こう配推左アルゴリズムを 図7に示す。 平地走行抵抗トルクは,中速の二乗で変化する空力抵 抗トルクと,ほぼ一定の転がり抵抗トルクに分けられる が,申穐によって決まるのでマップとして記憶しておき,中速を人力して検索する。一方,中速を微分して加速度
を求め,車両質量を掛けて加速トルクを計算し,これらを駆動トルク推定値から引いてこう配を算出する。実際
には加速度を計算するのは難しく,急加速峠,ブレーキ
を掛けたとき,およびでこぼこ道などで中速が変動する ときには,誤ったこう配計算をしないようにマスクする などのくふうが要る。 各こう配他に設定した試験装置の上を走行したときの 駆動トルク 加速トルク く\ _ゝ ..+ 空力抵抗 トルク 転がり抵抗 トルク 二う配抵抗 トルク 平地走行 抵抗 走行抵抗 車 速 図6 車速と走行抵抗トルクの関係 推定された駆動トルクから,加速トルク成分と平地走行抵抗分を 引いてこう配抵抗トルクを求める。 車速 駆動トルク推定 平地走行抵抗マッフ三』
微分 加速度 + 了、0 車両 質量 + 加速トルク ニう配トルク 図7 こう配推定アルゴリズム 平地走行抵抗は車種によってほぼ決まるので,マップとして与え ておく。 (㌔) 山胤小り澹哨 12 8 4 0 -8 -12 20 40 60 80 100 120 140 車 速(km/h) 注:●(エンジントルク特性から推定) 0(トルクコンバータ特性から推定) 図8 道路こう配の推定精度 各二う配条件(破線)に設定した試験装置のローラ上を走行させ たときの推定値を示す。 推定結米を図8に示す。同図からわかるように設立仙と の差は±1.5%こう配に収まっている。 このように木方式は傾斜センサなどを川いることな く,道路こう配を認識できるという特拉があり,A′1「制御 で望まれている違和感のない変速制御として,トリ収で のビジーシフトの防止や,下り坂でのエンジンブレーキ 制御などがリー能になる。 実際にl-11道を走行したときの波形を図9にホす。山∴( の峠を越えて下り板になると,BノたでF-t軌エンジンプレA う範 上n 道路形状 下り6%こ う配 下り4%ニう配 (%) 12 道路こう配推定値 8 4 >・、 \ 0 -4
(G)l-8
ヽ、、 、 車 速 車速の微分値 (km/h) 100 0.1 -0,1一二書巨
ギヤポジション シフトダウンしない場合 一一一-一一一一一一---■■■---スロットル開度 5s 一■---・-→-4速 2速 2速 図9 山道走行時のこう配推定値の波形 こう配推定値は全体的に傾斜に追従している。B点で自動のエンジンブレーキが掛かり,通常は破線のように上昇す る車速が抑制されている。ーキ制御が働いてシフトダウンしているのがわかる。通
常は車速が破線のように上昇するのに対し,自動エンジ
ンブレーキによってほぼ一定の速度で坂道を下ることが できる。田
おわりに
ここでは,自動車の駆動力制御の自由度を高めるトル
ク推定技術とその応用制御の一例について述べた。この技術を無段変速機に適用すると,変速比変化によ
ってトルクアクチュエータとしての機能を発揮できるの で,有段変速機以上に効果的な応用制御が可能になる。 さらに今後は,電子制御スロットルバルブをf ̄rいて積 極的にトルクを制御するパワートレイン総合制御システムへと発展させていく考えである。
参考文献 1) 2 3 射場本,外:トルクフィードバック方式による変速過渡 時制御,自動車技術会1994年秋季学術講演会前刷集 9436602 箕輪,外:簡易モデルを用いた駆動トルク制御による自 勅変速機搭載車の加速性能向上, No.9432255 1、 Minowa,etal 自動車技術会論文集, :"SmoothGearShiftControISystem 4 5 UsingEstimated Torque, No.941013(1994) SAE TechnicalPaper,M.Schwab:``Electronic Controlof a4-Speed
Auto- maticTransmissionwithLock-UpClutch''sAETech-nicalPaperNo.朗0448(1984)
佐藤,外:変速時におけるトルク変動抑制方式の検討,n 動卓抜術会1993年春季学術講演会前刷集9302772