下顎中間歯欠損にインプラント治療を用いて機能回復した症例……… 福田 真之……… (E11) 上顎右側第二小臼歯欠損に対してインプラント治療を行った 1 症例……… 林 泰生……… (E13) 上顎中間歯欠損に対しインプラント治療で機能回復した症例……… 山根 茂樹……… (E15) 下顎右側第一大臼歯欠損部にインプラント治療を行った 1 症例……… 垣内 優一……… (E17) 下顎大臼歯中間欠損にインプラント治療を行った 1 症例……… 野本 翔太……… (E19) 下顎片側遊離端欠損にインプラント治療を行った 1 症例……… 鍵山 富希……… (E21) 上顎前歯部 1…歯欠損に対してインプラント治療を行った 1 症例… ……… 佐々木圭太……… (E23) 上顎第一小臼歯部中間歯欠損に対してインプラントによる補綴治療を行った 1 症例…… 淺井 知宏……… (E25) 下顎大臼歯部に対してインプラントによる補綴治療を行った 1 症例……… 芝崎 龍典……… (E27) 下顎片側遊離端欠損に対してインプラント治療を行った 1 症例……… 楠 和也……… (E29) 下顎片側遊離端欠損に口腔インプラント治療を行った 1 症例……… 山本 清作……… (E31) 下顎臼歯部中間欠損に対してインプラントによる補綴治療を行った 1 症例……… 中川 瑠奈……… (E33) 下顎左側臼歯部単独欠損にインプラントを応用した 1 症例……… 守内 大剛……… (E35) 下顎右側遊離端欠損に対しインプラント治療を行った 1 症例……… 新海 正碁……… (E37) 下顎大臼歯部中間欠損に対してインプラント治療を行った 1 症例……… 手代木悠太……… (E39) 上顎中切歯単一歯欠損部にインプラント治療を行った 1 症例……… 勝山 裕子……… (E41) 下顎右側臼歯欠損に対してインプラント治療を行った 1 症例……… 劒持 正浩……… (E43) 下顎小臼歯先天性欠損部へインプラント治療を行った 1 症例……… 田中 博子……… (E45) 下顎片側遊離端欠損にインプラント治療を行った 1 症例……… 引間 新……… (E47) 下顎右側第一大臼歯部欠損に対しインプラント治療を行い咬合機能の回復を図った 1 症例… 松永 和幸……… (E49) 下顎左側第一大臼歯欠損に対してインプラント補綴治療を行った 1 症例……… 金 東淳……… (E51) 下顎片側遊離端欠損にインプラントを応用した 1 症例……… 大森 実……… (E53) 中間欠損にインプラント治療を行った症例……… 野本 冬歌……… (E55) 下顎第一大臼歯部中間欠損に対してインプラントによる補綴治療を行った 1 症例……… 平野 信実……… (E57) 下顎左側第一大臼歯の中間欠損に対しインプラント治療を行った 1 症例……… 片山 翔一……… (E59) 下顎臼歯部遊離端欠損にインプラント治療を行った 1 症例……… 小林 茉莉……… (E61) 下顎両側大臼歯部にインプラント治療を行った 1 症例……… 足立 真基……… (E63)
Ⅰ.緒 言
遊離端欠損の補綴方法として部分床義歯とインプラン ト治療が選択肢としてある.オッセオインテグレーショ ンが偶然スウェーデンにて PI Brånemark 先生によって 発見され,1965 年にインプラント治療に応用された. 近年,インプラント治療の予知性は高く,患者満足度の 高い治療法として確立されつつある.臼歯部における単 独植立インプラントの残存率を調査した文献では,埋入 後 5 年経過で上顎は 93.8%,下顎は 98.8%と報告され ている1).本症例で 46,47 にインプラント補綴治療を 行い,良好な結果が得られたので報告する.Ⅱ.症例の概要
患 者:51 歳,女性. 初 診:2012 年 8 月. 主 訴:右側で咬めない. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:近医にて 5 年程前 47 の根管治療および,補 綴処置を受けたが,2012 年 7 月に破折により近医にて 抜歯.2012 年 8 月に当院を受診した. 現 症: 全身所見;特記事項なし. 口腔内所見;口腔清掃状態は良好.咬合様式は犬歯誘 導.46 暫間被覆冠,47 欠損. 検査結果: パノラマエックス線所見;顎関節および顎骨内に特記 すべき異常所見は認めなかった. デンタルエックス線所見;46 垂直破折線確認. 診断名:46 垂直破折,47 欠損症.Ⅲ.治療内容
上記診断より,欠損部位の補綴治療方法(可撤性義歯 比較),インプラント治療の利点,欠点,治療期間,費用, リスク,メインテナンスの重要性について患者に対して 十分な説明を行った結果,インプラント治療を行うこと に同意を得た.口腔内診査,模型上でのワックスアッ プ,パノラマおよび CT 撮影によるエックス線検査を行 い,インプラントの埋入位置,深度,方向を検討した. さらに,血液検査を行い異常所見は見受けられなかった ため,インプラント治療の適応であると判断した. 2013 年 7 月, 局 所 麻 酔 下 に て 46,47 相 当 部 に 直 径 4.1 mm,長さ 8 mm のインプラント体(Standard Plus Implant SLA® RN,Straumann,Basel,Switzerland) を2 本,埋入した(一回法).骨質は Lekholm と Zarb の分 類 Type Ⅱ程度,インプラント埋入トルク値は 35 Ncm であった.インプラント体の粗面露出は認められなかっ た.3 カ月の免荷期間後,暫間補綴装置を装着した.咬 合や周囲組織の安定を確認した後,2013 年 12 月に最終 補綴装置として synOcta®アバットメントを 35 Ncm で 連結した後, オールセラミッククラウン(ジルコニアフ レーム)をスクリューリティンで装着した(15 Ncm). アクセスホールは光重合型コンポジットレジン系(tem-pofill® 2 DETAX,Ettlingen,Germany )で仮封した.
Ⅳ.経過と考察
メインテナンスは上部構造装着後から開始し,上部構 造装着後 3 年 3 カ月が経過した現在では半年ごとの定 期検診を行っている.口腔内診査およびエックス線像か下顎大臼歯部遊離端欠損にインプラント治療を行った 1 症例
宮原 宇将
A Case of Dental Implant Treatment for Missing of Posterior Mandibular Lesions
MIYAHARA Takayuki
東京医科歯科大学歯学部附属病院インプラント外来 Dental Implant Clinic, Dental Hospital, Tokyo Medical and Dental University
ら,上部構造,口腔内清掃状態およびインプラント周囲 組織は良好である.本症例ではインプラント補綴治療を 行うことによって咀嚼効率が改善され残存歯の荷重負担 の軽減が期待された.今後も定期検診を継続する必要が あると考えられる.
Ⅴ.結 論
インプラント義歯による補綴治療介入によって口腔機 能回復を行い,3 年 3 カ月間メインテナンスを行ってい るがインプラント周囲の骨レベルに変化はなく炎症所見 も認められていない.上記より下顎遊離端欠損症例にお いてインプラント治療は有効な治療法であることが示唆 された. Ⅵ.文 献1) Mangano FG, Shibli JA, Sammons RL, et al. Short (8-mm) locking-taper implants supporting single crowns in posterior region:a prospective clinical study with 1-to 10-years of fol-low-up. Clin Oral Implants Res 2014;25:933─940.
図 5 上部構造装着後 3 年 3 カ月経過時 のパノラマエックス線写真 (2017 年 4 月) 図 2 術前パノラマエックス線写真 (2012 年 11 月) 図 1 術前口腔内写真(2012 年 11 月) 図 3 上部構造装着後の口腔内写真(2013 年 12 月) 図 4 上部構造装着後 3 年 3 カ月経過時の口腔内写 真(2017 年 4 月)
Ⅰ.緒 言
大臼歯遊離端欠損に対する補綴処置として,部分床義 歯による治療が行われることが多い.しかし近年,義歯 の着脱の必要性や装着時の違和感などから,インプラン トによる補綴も選択肢とされてきた.今回,下顎左側遊 離端欠損部にインプラント治療を行い,良好な結果が得 られたので報告する.Ⅱ.症例の概要
患 者:46 歳,女性. 初 診:2013 年 4 月. 主 訴:左側に歯を入れてほしい. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:約 1 年前に前医にて 36,37 を抜歯,同院に て部分床義歯を作製するも着脱の手間と装着時の違和感 から使用していなかった.最近インプラント治療につい て知り,相談を希望して来院した. 現 症:特記事項なし. 全身所見;特記事項なし. 口腔内所見;残存歯の多くが補綴処置をされていた が,二次う蝕や明らかな不良補綴物はみられなかった. 抜歯窩は歯肉粘膜で覆われていた.清掃状態はやや不良 であった(図 1). 検査結果:エックス線検査で 36,37 欠損部には,抜 歯によると考えられる骨吸収像がみられた.歯周組織検 査では,4 mm 以上の歯周ポケットは認めなかった. 診断名:36,37 欠損症.Ⅲ.治療内容
欠損部の治療方法として,インプラント,義歯,36 のみへの延長ブリッジなどの治療法についてそれぞれの 利点と欠点を説明したところ,患者はインプラント治療 を希望した.インプラント治療には手術,費用,術後の メインテナンスなどが必要なこと,また 37 は,エック ス線診査,CT,模型診断,触診から,骨吸収のため臼 歯部領域へ必要な直径のインプラントを埋入できる十分 な骨量が確認できないことから,36 のみの一歯補綴と なることを説明し,治療方法に同意を得た.インプラン ト埋入予定は 36 のみの計画とし,エックス線検査(図 2),CT(図 3),模型診断,触診などから 36 には十分 な骨幅と骨量,対合歯とのクリアランスもあると判断し た.歯周初期治療の後,同年 6 月にインプラント(Tita-nium SLA® Bone Level Implant 4.1 mm RC 10mm,Strau-mann Villeret SA, Basel, Switzerland)の埋入一次手術 を施行した.埋入時には 35 Ncm の初期固定を確認し た.約 4 カ月の免荷期間の後1),同年 10 月に二次手術 を行い,プロビジョナルクラウンを装着した.咬合や清 掃状態に問題がないことを確認後,2014 年 1 月にジル コニアクラウンをスクリュー固定にて装着した(図 4).
Ⅳ.経過と考察
現在,上部構造装着後 3 年を経過しているが,約 3 カ月に一度の間隔でメインテナンスを行っている.イン プラント上部構造周囲にプラーク付着や炎症所見も認め ず(図 5),エックス線検査でもインプラント体周囲に 異常な骨吸収像もみられない(図 6).患者も義歯によ る違和感から解放され,よく噛めると満足している.下顎左側遊離端欠損部に対してインプラント治療を行った 1 症例
楠瀬 昌宏
A Case of Dental Implant Treatment for Mandibular Left Side Distal Extension
KUSUNOSE Masahiro
大阪口腔インプラント研究会
Osaka Academy of Oral Implantology 2018 年 2 月 27 日受付
Ⅴ.結 論
インプラント義歯による補綴治療介入によって口腔機 能回復を行い,3 年 2 カ月間メインテナンスを行ってい るが,インプラント周囲の骨レベルに変化はなく炎症所 見も認められていない.このことより,下顎臼歯部遊離 端欠損の症例においてインプラント治療は有効な治療法 であることが示唆された. Ⅵ.文 献1) Wismeijer D, Casentini P, Gallucci G, et al.:勝山英明,船越 栄次訳:ITI Treatment Guide Vol. 4 インプラント歯学にお ける荷重プロトコール,東京:クインテッセンス出版,22─ 24,2010. 図 1 術前口腔内写真 (2013年6月) 図 2 術前パノラマエックス線写真(2013 年 6 月) 図 3 術前 36 CT 写真(2013 年 6 月) 図 4 上部構造装着後の口腔 内写真 (2014 年 1 月) 図 5 上部構造装着後 3 年 2 カ月経過時の口腔内写 真(2017 年 3 月) 図 6 上部構造装着後 3 年 2 カ月経過 時のパノラマエックス線写真 (2017 年 3 月)
Ⅰ.緒 言
これまで臼歯部中間欠損に対しては,ブリッジや可撤 性義歯による補綴治療が用いられてきた.しかし,隣在 歯の切削や咬合負担,義歯の違和感などの問題がある. 健全歯を切削し荷重負担をかけることは長期的予後を診 た場合,支台歯の保存のリスクとなり再治療や抜歯と いった問題に発展することが考えられる.また,可撤性 部分床義歯では,十分な咀嚼機能の回復が得られない場 合や装着時の不快感,審美不良,長期的予後では鉤歯の 動揺や喪失を経験する場合がある.今回,下顎大臼歯中 間欠損部に対してインプラント治療を行い,良好な結果 を得たので報告する.Ⅱ.症例の概要
患 者:67 歳,男性. 初 診:2013 年 11 月. 主 訴:右側で硬いものが噛めない. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:1 週間前に 46 近心根ヘミセクション後の 46,46,45 ブリッジが脱離したことにより食事が摂り にくくなったため当院を受診となった. 現 症:46 遠心根周囲歯肉は発赤,腫脹しており 6 mm の歯周ポケットが存在し出血を認めた. 全身所見;特記事項なし. 口腔内所見;プラークコントロールは良好で歯周ポ ケットは全顎的に 3 mm 以下であったが,部分的に歯肉 からの出血を認めた.45 には冷水痛を認めた. 検査結果:エックス線検査にて 46 遠心根の近心に垂直 的骨吸収を認め,歯根周囲および根尖部に透過像を認めた (図 1).また,46 近心部に人工物様不透過像を認めた. 診断名:46 近心根欠損,46 遠心根根尖性歯周炎,45 歯髄炎,全顎的軽度歯周炎.Ⅲ.治療内容
46 遠心根は保存不可能と診断し,患者の同意を得て 2013 年 12 月に抜歯した.46 欠損に対して可撤性部分 床義歯, ブリッジおよびインプラント治療の利点, 欠点に ついて説明したところ, 患者はインプラント治療を選択し た.インプラント治療の方法, 治療期間, 合併症および費 用, メインテナンスの必要性について説明し同意を得た. 45 も患者の同意を得たうえで抜髄し根管充填, 暫間補綴 まで終了した (図 2).歯周炎に対しては全顎的スケーリ ングを行い, メインテナンスを行うこととした.抜歯 4 カ 月後の CT 画像において 46 部の頬舌的幅径は 8 mm,歯 槽骨頂から下顎管までの距離は 17 mm で, インプラント 体埋入に十分な骨量があることを確認した.2014 年 4 月, モニタリング下でインプラント体 (Tissue Level Implant, 直径 4.1 mm, 長径 12 mm, RN, Standard Plus, Straumann, Switzerland) を 1 本埋入し, 3 mm 高のヒーリングキャップ を装着後,5-0 ナイロン糸にて創縁が密着するように単 純縫合を行った.埋入トルク値は 35 Ncm で初期固定は 良好であった.このとき 46 近心部の歯肉を切除し人工 物 を 除 去 し た. 骨 質 は LEKHOLM & ZARB の 分 類 で Type Ⅱであった1).6 週間の治癒期間を待ちプロビジョ ナルクラウンをスクリュー固定した.基底面,咬合面, 頬舌側面の形態修正や清掃性の確認を行いつつ,咬合の 安定を確認後, 2014 年 9 月に精密印象を採得.Straumann 社製 synOcta アバットメントを装着し,レジン前装鋳造 冠をスクリュー固定し最終上部構造とした(図 3).45 については金属冠で修復した.Ⅳ.経過と考察
最終補綴装着後は 1 週間後と 1 カ月後の 2 回,咬合吉武 義泰
Dental Implant Treatment for Intermediate Mandibular Molar Missing:A Case Report
YOSHITAKE Yoshihiro
九州インプラント研究会 Kyushu Implant Research Group 2019 年 5 月 29 日受付
および粘膜面の状態を確認し,その後 1 年間は 6 カ月 ごとの定期的なメインテナンスを継続的に行い,2 年目 以降は 1 年ごとに行っているが,過度の摩耗やスク リューのゆるみなど認めず清掃状態も良好である(図 4).エックス線写真にてインプラント周囲骨の異常吸収 は生じていない(図 5).1 年ごとに上部構造を外して粘 膜を観察しているが,インプラント周囲粘膜炎も認めな い.46 にインプラント治療を施行後,対合歯や隣在歯 に異常骨吸収や歯根破折など生じておらず,顎関節部に おいても異常症状は生じておらず,安定した咬合状態が 維持されており患者は機能的に満足している.本症例の ように,両隣在歯が補綴修復予定となっている場合では ブリッジも有効な選択肢となるが,インプラント治療で 両隣在歯にかかる咬合負担を軽減できたことが両隣在歯 の保護につながったと考えられた.したがって,インプ ラントによる補綴は両隣在歯が補綴処置を行っている中間 欠損症例にも有効であると考えられた2).
Ⅴ.結 論
下顎大臼歯中間欠損症例に対しインプラント治療を行 うことによって,欠損部の両隣在歯への咬合負担を軽減 して咬合を確立することができた.可撤性部分床義歯や ブリッジによる補綴を望まない患者にとって,歯列の状 態を維持することができる有用な手段であると考えられ た. Ⅵ.文 献1) Lekholm U, Zarb GA. Patient selection andpreparation. Bråne-mark PI, Zarb GA, Albrektsson T, eds. Tissue-integrated prostheses:Osseointegration in clinical dentistry, Chicago: Quintessence, 199─209, 1985. 2) 青山貴則,相田 潤,竹原順次,ほか.臼歯部修復物の生存 期間に関連する要因.口腔衛会誌 2008;58:16─24. 図 1 初診時パノラマエックス線写真 (2013 年 11 月) 図 2 術前口腔内写真(2014 年 4 月) 図 3 上部構造装着後の口腔内写真(2014 年 9 月) 図 4 上部構造装着後 3 年 3 カ月経過時の口腔内写真 (2017 年 12 月) 図 5 上部構造装着後 3 年 3 カ月経過時のパノ ラマエックス線写真(2017 年 12 月)
Ⅰ.緒 言
中間歯欠損に対する補綴処置としてブリッジや義歯な どが考えられるが,補綴処置を行わずに放置している症 例は少なくない1).今回,上顎左側第一大臼歯部欠損を 放置している症例に対し,インプラント治療を行うこと により良好な経過が得られたので報告する.Ⅱ.症例の概要
患 者:43 歳,男性. 初 診:2012 年 4 月. 主 訴:下顎右側第一大臼歯の疼痛. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:5 年前にう蝕で上顎左側第一大臼歯を抜歯, 放置していた.下顎右側第一大臼歯に強い自発痛を生じ たことから来院となった. 現 症:全身所見は特記事項なし.口腔内所見におい ては,上顎左側第一大臼歯が放置のまま欠損状態になっ ていた.また,下顎右側第一大臼歯に二次う蝕が認めら れ,下顎右側第三大臼歯は残根状態であった.下顎前歯 部にはプラークおよび歯石が付着していた(図 1). 検査結果:上顎左側第一大臼歯欠損部において,口腔 内所見では頬舌的粘膜幅は約 12.4 mm,パノラマエック ス線所見では骨頂から上顎洞底までの距離は約 11.0 mm を示した.また,上顎洞内には特に問題は認められず, 骨内には上顎右側側切歯が埋伏していた(図 2). 診断名:上顎左側第一大臼歯欠損による咀嚼障害.Ⅲ.治療内容
本症例では,歯の欠損の放置が招く隣在歯の傾斜,咀 嚼能率の低下および咬合の崩壊といった危険性を説明し た.その治療方法として,ブリッジ,義歯,インプラン トおよび智歯の移植治療があることを説明した.各治療 法の利点・欠点やその特徴,治療期間や治療費を説明し た結果,患者はインプラント治療を希望した.そこで, 診断用模型からワックスアップ模型を製作し,その模型 をスキャニング後は CT データ上で画像診断を行い,イ ンプラント体の種類,直径,長さおよび埋入位置や方向 などを決定した.インプラント治療前処置として,下顎 右側第一大臼歯の根管治療,残根の抜歯および全顎にわ たる歯周基本治療を行った.2012 年 7 月,局所麻酔下 でサージカルステントを用いて直径 4.0 mm,長さ 9 mm のインプラント体(Bone Level, Astra 社製, Sweden) を 1 本埋入した.4 カ月の免荷期間の後,二次手術を 行った.プロビジョナルクラウンを製作して 4 週間は周 囲粘膜および咬合の安定を図った.2013 年 2 月,スク リュー固定形式の最終上部構造を装着した(図 3).Ⅳ.経過と考察
上部構造装着後は 3 カ月ごとに定期検診にてメインテ ナンスを行っている.上部構造装着 4 年 9 カ月を経過 するも,口腔内状態は良好で,エックス線検査でもイン プラント体周囲の異常な骨吸収などの炎症所見は認めら れていない(図 4).また,上部構造の破折やスクリュー の緩みもなく咬合状態も安定して,良好に機能している (図 5).患者満足度は高く,インプラント治療により隣 在歯の切削回避や支台歯の過重負担軽減を達成すること ができた.今後も定期的なメインテナンスを継続し,イ ンプラント周囲炎に注意して長期的経過観察を行ってい上顎第一大臼歯欠損に対してインプラント治療を行った 1 症例
栁沼 孝謙
Dental Implant Treatment for Maxillary First Molar Missing:A Case Report
YAGINUMA Takanori
中部インプラントアカデミー Chubu Implant Academy 2019 年 9 月 18 日受付
くことが必要と考える.
Ⅴ.結 論
インプラント補綴治療介入によって口腔機能回復を行 い,4 年 9 カ月間メインテナンスを行っているが,イン プラント周囲の骨レベルに変化はなく炎症所見も認めら れていない.このことより,上顎第一大臼歯部中間欠損 の症例において,インプラント治療は有効な治療法であ ることが示唆された. Ⅵ.文 献 1) 赤川安正,松浦正朗,矢谷博文,ほか.よくわかる口腔イン プラント学.東京:医歯薬出版,214─220,2005. 図 1 術前口腔内写真(2012 年 4 月) 図 2 術前パノラマエックス線写真 (2012 年 4 月) 図 3 上部構造装着時口腔内写真(2013 年 2 月) 図 4 上部構造装着 4 年 9 カ月経過後パノ ラマエックス線写真 (2017 年 11 月) 図 5 上部構造装着 4 年 9 カ月経過後口腔内写真 (2017 年 11 月)Ⅰ.緒 言
35 の先天性欠損部に,隣在歯保護の観点からインプ ラント治療を選択し,良好な結果が得られた症例を報告 する.Ⅱ.症例の概要
患 者:42 歳,女性. 初 診:2012 年 10 月. 主 訴:左下の歯の欠損. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:以前より 75,85 の晩期残存および 35,45 の先天性欠損を指摘されていた.約 1 年前に 75 が自然 脱落したが放置していた.今回,欠損部への治療相談を 希望し,当院を受診した. 現 症: 全身所見;特記事項なし. 口腔内所見;75 脱落部の歯肉は完全に治癒しており, 隣接歯の傾斜移動や対合歯の挺出もなく,1 歯分の空隙 が保たれていた.85 は晩期残存していた(図 1). 検査結果:エックス線検査において 75 脱落部に透過 像などの異常所見は認めなかった(図 2). 診断名:35,45 欠損症.Ⅲ.治療内容
欠損部の治療の選択肢として可撤性義歯,ブリッジ, インプラントの各利点と欠点について説明した結果,隣 在歯の切削を嫌い,患者はインプラント治療を希望し た.インプラント治療には手術,費用,術後管理などが 必要なことを説明し,患者の同意を得た.インプラント 埋入予定部位は,触診,エックス線検査,模型診査, CT などから十分な骨量と骨幅があること,また,対合 歯との間隙にも問題がないことを確認した.2013 年 4 月,二回法スクリュータイプインプラント(Xive S plus implant, Dentsply Implant Manufacturing GmbH, Hanau, Germany,骨内長 13 mm,径 3.8 mm)の埋入一次手術 を施行した.約 3 カ月の免荷期間後,二次手術を施行し た.暫間補綴装置にて咬合や清掃性に問題がないことを 確認後,9 月に最終補綴装置として陶材焼付鋳造冠を装 着した(図 3).Ⅳ.経過と考察
上部構造装着後,3 カ月ごとにメインテナンスを行っ ている.現在,4 年 8 カ月経過しているが,口腔衛生状 態は良好で,インプラント周囲組織の炎症所見は認めて いない(図 4).エックス線検査においてもインプラン ト周囲の骨吸収像などの異常所見は認めず,良好に経過 している(図 5). 今後も長期にわたり安定してインプラントが機能を維 持するには,清掃状態や咬合状態の診査およびエックス 線検査による周囲骨の評価など定期的な管理が重要と考 えている1).Ⅴ.結 論
下顎第二小臼歯一歯欠損部への治療としてブリッジに よる補綴では隣在歯の切削や荷重負担,可撤性床義歯で は装着時の違和感やクラスプによる審美性の問題があ下顎左側第二小臼歯先天性欠損に対しインプラントを用いて
治療を行った 1 症例
中谷 徹
A Case of Dental Implant Treatment for Congenital Missing of Lower Left Second Premolar
NAKATANI Toru
大阪口腔インプラント研究会
Osaka Academy of Oral Implantology 2019 年 9 月 25 日受付
る2).本症例では,インプラントを用いることによりこ れらの問題を回避し,機能的および審美的に患者の希望 する欠損回復が可能となった. 先天性欠損部にインプラント治療を行うことは,隣在 歯への負担軽減や審美性の保持から有効な補綴手段であ ることが再確認できた. Ⅵ.文 献 1) 日本口腔インプラント学会編.口腔インプラント治療指針. 東京:医歯薬出版,60─61,2016. 2) 赤川安正,松浦正朗,矢谷博文,ほか.よくわかる口腔イン プラント学.第 3 版,東京:医歯薬出版,10─11,2017. 図 1 術前口腔内写真(2012 年 10 月) 図 2 術前パノラマエックス線写真 (2012 年 10 月) 図 3 上部構造装着後の口腔内写真 (2013 年 9 月) 図 4 上部構造装着後 4 年 8 カ月経過時の口腔内写真(2018 年 5 月) 図 5 上部構造装着後 4 年 8 カ月経過時の パノラマエックス線写真 (2018 年 5 月)
Ⅰ.緒 言
下顎大臼歯中間欠損においては,ブリッジもしくは部 分床義歯による欠損補綴の方法がある.しかしながら, ブリッジ装着のための両隣在歯の削合や義歯装着による 異物感と着脱の頻雑性が原因で装着せず,咬合関係の予 後不良をきたしている症例を見受けることがある.今回 このような症例に対してインプラントを応用し,良好な 結果を得られたので報告する.Ⅱ.症例の概要
患 者:41 歳,女性. 初 診:2013 年 7 月. 主 訴:左側が噛みにくい. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:約 5 カ月前に前医にて歯根破折により抜歯を していた.36 の咀嚼障害を自覚したため,2013 年 7 月, 当院を受診した. 現 症: 全身所見;特記事項なし. 口腔内所見;口腔清掃状態や歯周組織に異常は認めら れない(図 1). 検査結果:血液検査において異常なし.パノラマエッ クス線所見では抜歯窩の治癒傾向を認めた(図 2). 診断名:36 欠損による咀嚼障害.Ⅲ.治療内容
インフォームドコンセントとして,36 に対する補綴 方法にはブリッジまたは義歯またはインプラントがある こと,それぞれの利点,欠点を説明した.その結果,患 者はインプラント治療を選択した.2013 年 8 月,浸潤 麻酔下にて,通法に従い,術中モニタリング下で 36 欠 損相当部にインプラント体(BrånemarkSystem® Mk Ⅲ, WP, 直径 5 mm, 長さ 13 mm, NobelBiocare, Göteborg, Sweden)の埋入手術を行った.術中における患者の容 態に変化はなかった.初期固定は良好であった.術後, 患者に異常を認めなかった.5 カ月の免荷期間後1~3)の 2014 年 2 月,二次手術を行った.周囲粘膜組織の形態 調整後4~6),同年 4 月にフルジルコニアクラウンを装着 した(図 3).Ⅳ.経過と考察
上部構造装着 1 カ月,3 カ月後にメインテナンスを行 い,その後は 6 カ月ごとにメインテナンスを行ってい る.現在,上部構造装着後 3 年経過しているが,インプ ラント周囲粘膜の炎症などの異常所見は認められず, エックス線所見でも問題はない7).機能性および審美性 にも患者の満足を得られている(図 4,5).Ⅴ.結 論
片側中間歯欠損症例において,長期的な放置による対 合歯の挺出や隣在歯の傾斜による清掃不良から,歯周病 のリスクが発現することがある.またブリッジの削合に よる不利益や部分床義歯の異物感や着脱時の頻雑性ゆ え,満足を得られにくいことがある.このような症例に下顎中間歯欠損にインプラント治療を用いて機能回復した症例
福田 真之
Functional Recovery with Dental Implant Treatment for Mandibular Intermediate Tooth
Missing :A Case Report
FUKUDA Masayuki
日本歯科先端技術研究所
Japan Institute for Advanced Dentistry 2019 年 11 月 12 日受付
対し,インプラント治療が有効な治療法であることが示 唆された.
Ⅵ.文 献
1) Wismeijer D, Casentini P, Gallucci G, et al. ITI Treatment Guide, Vol 4:Loading Protocols in Implant Dentistry:Eden-tulous Patients. Berlin:Quintessence, 6, 2010.
2) Gallucci GO, Hamilton A, Zhou W, et al. Implant placement
and loading protocols in partially edentulous patients:A sys-tematic review. Clin Oral Implants Res 2018;29 (Suppl 16): 106─134.
3) Wismeijer D, Casentini P, Gallucci G, et al. ITI Treatment Guide, Vol 4:Loading Protocols in Implant Dentistry:Eden-tulous Patients. Berlin:Quintessence, 7, 2010.
4) Gargiulo AW, Wentz FM, Orban B. Dimensions and relations of the dentogingival junction in humans. J Periodontol 1961; 32:261─267.
5) Cochran DL, Hermann JS, Schenk RK, et al. Biologic width around titanium implants. A histometric analysis of the im-planto-gingival junction around unloaded and loaded nonsub-merged implants in the canine mandible. J Periodontol 1997: 68:186─198.
6) Caton JG, Armitage G, Berglundh T, et al. A new classification scheme for periodontal and peri-implant diseases and condi-tions ─ Introduction and key changes from the 1999 classifi-cation. J Clin Periodontol 2018;45 (Suppl 20):S1─S8. 7) Berglundh T, Armitage G, Araujo MG, et al. Peri-implant
dis-eases and conditions:Consensus report of workgroup 4 of the 2017 World Workshop on the Classification of Periodontal and Peri-Implant Diseases and Conditions. J Clin Periodontol 2018;89:S313─S318. 図 1 術前口腔内写真(2013 年 7 月) 図 2 術前パノラマエックス線写真 (2013 年 7 月) 図 3 上部構造装着後の口腔内写真 (2014 年 4 月) 図 4 上部構造装着後 3 年 3 カ月経過時の口腔内写真(2017 年 7 月) 図 5 上部構造装着後 3 年 3 カ月経 過時のパノラマエックス線写 真(2017 年 7 月)
Ⅰ.緒 言
近年,歯の欠損に対する補綴治療としてインプラント 治療が選択されることが多くなっている.従来のブリッ ジや部分床義歯でも対応は可能であるが,長期予後を考 慮した場合,ブリッジでは隣在歯の切削や荷重負担によ り歯根破折や抜歯などを余儀なくされることも少なくな い.また部分床義歯では,鉤歯のう蝕や咬合力の低下, 装着時の違和感などが生じることも多い.本症例では, 上顎右側第二小臼歯欠損にインプラント治療を行い良好 な結果を得られた.Ⅱ.症例の概要
患 者:60 歳,女性. 初 診:2015 年 1 月. 主 訴:補綴装置脱離. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:数カ月前に食事中に被せ物が取れた.虫歯の 治療は 6 年ほど前に行ったが,取れるまで特に気になる ことはなく経過していた. 現 症:自発痛など自覚症状は認めない. 全身所見;特記事項なし. 口腔内所見;15 は歯頸部う蝕により残存歯質はほと んど存在しなかった.その近遠心幅径は 7 mm であった (図 1). 検査結果:15 根尖部にエックス線透過像を認める(図 2).根尖部圧痛(+),打診痛(±),自発痛(-).全 顎的に 2~3 mm の歯周ポケットであった. 診断名:15 慢性化膿性根尖性歯周炎.Ⅲ.治療内容
治療に先立ち,欠損部の補綴治療としてインプラン ト,ブリッジ,部分床義歯が選択できることとおのおの の利点欠点を説明した結果,患者はインプラント治療を 希望した. インプラント治療では経済的,身体的に負担がかかる こと,治療期間が長くなることを説明し同意を得た. 15 は 2015 年 1 月に抜歯を行い,インプラント埋入手術 は 2015 年 4 月に局所麻酔下にて,チタン製二回法スク リュータイプインプラント直径 4.1 mm,長さ 10 mm (Bone Level Implant®, Straumann, Basel, Switzerland)を 15 部に 1 本埋入した.埋入トルクは 35 Ncm で初期 固定は良好であったため,免荷期間を 2 カ月に設定し た.2015 年 6 月,二次手術を実施し暫間補綴装置を装 着し,咬合状態および清掃状態に問題がないことを確認 した.2015 年 6 月下旬に,スクリュー固定式の陶材焼 付金属冠を上部構造として装着した(図 3).
Ⅳ.経過と考察
上部構造装着後 1,3,6 カ月時のメインテナンスに て経過良好であったため,現在は 6 カ月ごとにメインテ ナンスを実施している.上部構造装着後 3 年経過時の口 腔内所見およびエックス線写真において異常所見は認め ない(図 4,5).今後も長期にわたり良好な口腔内状態 を維持するためにメインテナンスを実施し,口腔清掃状 態,咬合状態について経過観察を行うことが重要である と思われる. 1 歯欠損に対してインプラント治療を行ったが,両隣 在歯がすでに根管治療後である中間欠損部位に対しての上顎右側第二小臼歯欠損に対してインプラント治療を行った 1 症例
林 泰生
Dental Implant Treatment for Missing Maxillary Right Second Premolar:A Case Report
HAYASHI Taiki
昭和大学歯学部インプラント歯科学講座
Department of Implant Dentistry, Showa University School of Dentistry
ブリッジ治療は,支台歯への負担から動揺により抜歯と なるケースが臨床的に散見される.支台歯喪失のリスク ファクターに関するレビュー1)では,ブリッジにおいて は支台築造を行ったもの,失活歯,5 ユニット以上のブ リッジの場合に有意に残存率の低下を認めたとしてお り,部分床義歯においては鉤歯が 5 年で 77%,10 年で 56%の残存率であるとしている.このことより,隣在 歯の負担を軽減するうえでインプラント治療は有効であ ると考えられる. 本症例では隣在歯が歯根破折などを生じる可能性の高 い失活歯であるため,インプラント治療により喪失のリ スクファクターを可能なかぎり除外することで,十分な 咀嚼機能の回復が可能となり患者満足度の高い治療と なった.
Ⅴ.結 論
上顎歯欠損に対しインプラント治療を行うことで,咀 嚼機能を回復し両隣在歯に荷重負担をかけることなく良 好な結果を得ることができ,インプラント治療の有効性 が示唆された. Ⅵ.文 献 1) 矢谷博文.補綴装置失敗のリスクファクターに関する文献的 レビュー.日補綴歯会誌 2007;51:206─221. 図 1 術前口腔内写真(2015 年 4 月) 図 2 術前パノラマエックス線写真 (2015 年 1 月) 図 3 上部構造装着直後の口腔内写真 (2015 年 6 月) 図 4 上部構造装着後 3 年 2 カ月経過時の口腔内写真(2018 年 8 月) 図 5 上部構造装着後 3 年 1 カ月経 過時のパノラマエックス線写 真(2018 年 7 月)Ⅰ.緒 言
上顎大臼歯部中間歯欠損を放置すると,対合歯の挺出 や両隣在歯の傾斜などにより歯周病の悪化,咬合性外傷 や咬合崩壊をきたす可能性がある. 今回上顎大臼歯中間歯欠損において,隣在歯の荷重負 担や,健全隣在歯を切削するリスク,清掃性,咀嚼力の 回復,異物感などの問題に対し,インプラント治療を適 用し,良好な結果を得たので報告する.Ⅱ.症例の概要
患 者:45 歳,女性. 初 診:2014 年 3 月. 主 訴:左側が噛みにくい. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:他院にて,26 は歯根破折により抜歯,その 後 8 カ月放置していた. 現 症: 全身所見;特記事項なし. 口腔内所見;口腔清掃状態および歯周組織に異常は認 められず,26 の抜歯窩の軟組織は治癒しており,炎症 もみられない. 血液検査等結果:特記事項なし. 診断名:26 欠損による咀嚼障害.Ⅲ.治療内容
インフォームドコンセントを行い,上顎左側臼歯欠損 に対する補綴方法には義歯,ブリッジまたはインプラン トがあること,それぞれの利点,欠点を説明した.その 結果,患者はインプラント治療を選択した.抜歯窩の治 癒を確認し,診断用ワックスアップをし,診断用ステン トを用いて,CT 撮影を行った.診断用ステントにより, 補綴的に理想のポジションの骨の状態を確認すると,上 顎洞底までの距離が 14 mm,骨幅が 9 mm であった. 26 欠損部にノーベルバイオケア社のブローネマルクイ ンプラント(直径 5 mm,長さ 11.5 mm)を埋入する治 療計画を立案した1~3).図 1,図 2 に術前の口腔内写真 とパノラマエックス線写真を示す.2014 年 3 月に浸潤 麻酔下にて,通法に従い,術中モニタリング下で 26 部 にインプラント埋入手術を行った.術中,術後患者に異 常は認められなかった.3 カ月の免荷期間を置き,2014 年 7 月に二次手術を行った4~6).歯肉の治癒を待ち,フ ルジルコニアを上部一体型スクリューリテインで装着し た(図 3).Ⅳ.経過と考察
上部構造装着 1 カ月,3 カ月後にメインテナンスを し,その後は 6 カ月ごとにメインテナンスを行っている. 現在,上部構造装着後 3 年経過しているが,インプラ ント周囲組織の炎症などの異常所見は認められず,エッ クス線所見でも問題は認められない(図 4,5)7). 機能性および審美性にも患者の満足を得られている.Ⅴ.結 論
上顎第一大臼歯の単独中間歯欠損は両隣在歯に対する 荷重負担の軽減を図り,切削を回避し,機能性の回復を 考慮した場合,インプラント治療は非常に有用であるこ上顎中間歯欠損に対しインプラント治療で機能回復した症例
山根 茂樹
A Case of Functional Recovery with Dental Implant Treatment for Maxillary Intermediate
Tooth Missing
YAMANE Shigeki
日本歯科先端技術研究所
Japan Institute for Advanced Dentistry 2019 年 11 月 26 日受付
とが示唆された. Ⅵ.文 献 1) Wismeijer D, Casentini P, Gallucci G, et al. ITI Treatment Guide, Vol 4:Loading Protocols in Implant Dentistry:Eden-tulous Patients. Berlin:Quintessence, 6, 2010. 2) Gallucci GO, Hamilton A, Zhou W, et al. Implant placement and loading protocols in partially edentulous patients:A sys-tematic review. Clin Oral Implants Res 2018;29 (Suppl 16): 106─134. 3) Wismeijer D, Casentini P, Gallucci G, et al. ITI Treatment Guide, Vol 4:Loading Protocols in Implant Dentistry:Eden-tulous Patients. Berlin:Quintessence, 7, 2010. 4) Gargiulo AW, Wentz FM, Orban B. Dimensions and relations of the dentogingival junction in humans. J Periodontol 1961: 32:261─267. 5) Cochran DL, Hermann JS, Schenk RK, et al. Biologic width around titanium implants. A histometric analysis of the im- planto-gingival junction around unloaded and loaded nonsub-merged implants in the canine mandible. J Periodontol 1997: 68:186─198. 6) Caton JG, Armitage G, Berglundh T, et al. A new classification scheme for periodontal and peri-implant diseases and condi-tions ─ Introduction and key changes from the 1999 classifi-cation. J Clin Periodontol 2018;45 (Suppl 20):S1─S8. 7) Berglundh T, Armitage G, Araujo MG, et al. Peri-implant dis-eases and conditions:Consensus report of workgroup 4 of the 2017 World Workshop on the Classification of Periodontal and Peri-Implant Diseases and Conditions. J Clin Periodontol 2018;89:S313─S318. 図 1 術前口腔内写真 (2014年3月) 図 2 術前パノラマエックス線写真(2014 年 3 月) 図 3 上部構造装着後の口腔内写真 (2014 年 8 月) 図 4 上部構造装着後 3 年 3 カ月経過時の口腔内写真(2017 年 11 月) 図 5 上部構造装着後 3 年 3 カ月経過 時のパノラマエックス線写真 (2017 年 11 月)
Ⅰ.緒 言
臼歯一歯中間欠損症例に対しては,一般的にブリッジ で補綴されることが多い.しかし,ブリッジは隣在歯の 切削や荷重負担が懸念される.また,可撤性部分床義歯 による補綴は装着時の違和感,審美不良などの理由で患 者が装着を拒否する症例も少なくない. 今回,46 欠損部にインプラント治療を行い,3 年 4 カ月良好に経過している症例が得られたので報告する.Ⅱ.症例の概要
患 者:68 歳,男性. 初 診:2014 年 7 月. 主 訴:右下奥歯の咀嚼障害. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:2013 年 5 月に他院にて 46 を抜歯後,45, 47 を支台としたブリッジによる治療を勧められるも, 隣在歯への荷重負担を嫌い放置していた.最近インプラ ントによる治療について友人を介して知り,治療相談を 希望し,2014 年 7 月に当院に来院した. 現 症: 全身所見;特記事項なし. 口腔内所見;46 欠損部の抜歯窩は歯肉粘膜で覆われ 治癒していた.隣接歯の傾斜移動や対合歯の挺出なども みられなかった(図 1).エックス線検査でも透過像は 認めず骨梁も明瞭であった(図 2).45 は陶材焼付金属 冠,47 は全部金属冠による歯冠修復がされていたが, 二次う蝕や根尖病変は認めなかった.口腔衛生状態は良 好で,歯周ポケットは全顎的に 3 mm 以下であった. 検査結果:尿検査,血液検査の結果に問題はみられな かった1). 診断名:46 欠損症.Ⅲ.治療内容
欠損部の治療方法として,ブリッジ,義歯,インプラ ント治療について,それぞれの治療の利点と欠点を説明 したところ,患者は隣在歯の荷重負担を嫌いインプラン ト治療を希望した.インプラント治療には手術,費用, メインテナンスなどが必要なことを説明し,十分なイン フォームドコンセントを行い患者の同意を得た.インプ ラント埋入予定部位は,触診,模型診査,エックス線検 査,CT 検査などから十分な骨量と骨幅があること,ま た対合歯とのクリアランスにも問題がないこと1)を確認 した.2014 年 9 月,チタン二回法スクリュータイプイ ンプラント体(直径 5.0 mm, 長さ 10 mm, Nobel Replace Nobel Biocare, Göteborg, Sweden)の埋入一次手術を施 行した.初期固定のトルク値は 35 Ncm であった.約 3 カ月半の免荷期間後,2015 年 1 月に二次手術を行い, ヒーリングアバットメントを装着し,粘膜の治癒を待っ て印象採得を行った.暫間補綴物にて咬合および清掃性 などに問題がないことを確認後,2015 年 2 月に金属裏 装ハイブリッド冠をスクリューにて装着した(図 3).Ⅳ.経過と考察
上部構造装着後 3 カ月ごとにメインテナンス治療を行 い,現在,上部構造装着後 3 年 4 カ月経過しているが, インプラント周囲組織に炎症は認められず,エックス線 検査でもインプラント体周囲に骨の吸収像もみられず良下顎右側第一大臼歯欠損部にインプラント治療を行った 1 症例
垣内 優一
Dental Implant Treatment for Intermediate Missing of Light Mandibular First Molar:
A Case Report
KAKIUCHI Yuichi
大阪口腔インプラント研究会
Osaka Academy of Oral Implantology 2019 年 12 月 1 日受付
好に経過2)している.また,上部構造のチッピングなど も認められない(図 4,5). 本症例では,45 が失活歯であり固定性ブリッジの選 択肢も考えられたが,本人の希望と支台歯への荷重負 担,ポンティック部の清掃性を考慮したうえでのインプ ラント治療の選択となった. 結果として,隣在歯の咬合痛も認められず,患者は咀 嚼機能が改善され予後に十分満足している.今後もメイ ンテナンスを続け,経過を注視していく予定である.
Ⅴ.結 論
46 欠損部にインプラントによる補綴治療を行うこと で,患者の希望どおり両隣在歯の荷重負担を回避し,咀 嚼機能の回復を得ることができた.大臼歯中間欠損症例 にインプラント治療を行うことは,有効な治療法である ことが再確認できた. Ⅵ.文 献 1) 日本口腔インプラント学会編.口腔インプラント治療指針 2016.東京:医歯薬出版,26─31, 2016. 2) 赤川安正,松浦正朗,矢谷博文,ほか.よくわかる口腔イン プラント学.第 3 版,東京:医歯薬出版,211─212, 2017. 図 1 術前口腔内写真(2014 年 7 月) 図 2 術前パノラマエックス線写真 (2014 年 7 月) 図 3 上部構造装着後の口腔内写真 (2015 年 2 月) 図 4 上部構造装着後 3 年 4 カ月経過時の口腔内写真(2018 年 6 月) 図 5 上部構造装着後 3 年 4 カ月 経過時のパノラマエックス線 写真(2018 年 6 月)Ⅰ.緒 言
インプラント治療はブリッジや可撤性義歯による治療 と比較して,インプラント体に咬合圧の負担を求めるこ とにより,隣在歯に対する咬合圧の負担増加を回避する ことができる1).このたび,下顎大臼歯中間欠損に対し, インプラント治療を行い良好な結果を得たので報告す る.Ⅱ.症例の概要
患 者:51 歳,男性. 初 診:2014 年 12 月. 主 訴:右側が噛みにくいので治療したい. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:2014 年 7 月,他院にて下顎右側第一大臼歯 を抜歯,ブリッジを勧められたが,隣在歯に負担がかか ることに抵抗があり,放置していた. 現 症: 全身所見;特記事項なし. 口腔内所見;46 は欠損.36 相当部はインプラント治 療済み.口腔清掃状態は良好(図 1). 検査結果:パノラマエックス線写真にて,46 は欠損, 36 に他院で埋入されたとみられるインプラントを認め る.全顎的に軽度の歯槽骨の吸収を認める(図 2). 診断名:46 欠損症,広汎型軽度慢性歯周炎.Ⅲ.治療内容
医療面接にて,下顎右側欠損部に対する補綴方法に は,インプラント,ブリッジ,可撤性義歯があること, それぞれの利点,欠点を説明した.その結果,患者はイ ンプラント治療を選択した.CT を撮影し,下顎管上縁 までの距離,骨幅を確認し,インプラントを 1 本埋入す る治療計画を立案し,再度の医療面接にて,患者の同意 を得た.2015 年 1 月,術中モニタリング下にて 80,000 分の 1 エピネフリン含有 2%リドカインによる局所麻酔 を行い,46 部粘膜に歯槽頂切開を加え,粘膜骨膜弁を 剥離,翻転した. 十分な注水下でインプラント床を形成し,下顎右側第 一大臼歯欠損相当部へインプラント体(Tissue Level SP,Straumann 社製,直径 4.1 mm,長さ 10 mm)を 1 本,通法に従い埋入し,カバースクリューを装着した. 5-0 ナイロン糸にて単純縫合による完全閉鎖創とした. 術中における患者の容態は安定しており,35 Ncm にて 良好な初期固定を得られた.術後の感染予防のため抗菌 薬の経口投与を行った.創部は良好な治癒経過を示し, 1 週間後に抜糸を行った.3 カ月の免荷期間後,同年 4 月に二次手術を行い,5 月に印象採得した.同月,上部 構造(フルジルコニア冠)を 35 Ncm でスクリュー固定 にて装着した(図 3).Ⅳ.経過と考察
上部構造装着 1 カ月後,3 カ月後に口腔内全体のメイ ンテナンスを行い,その後は 4~6 カ月ごとに行ってい る.現在,上部構造装着後 3 年 1 カ月が経過している が,インプラント周囲組織の炎症などの異常所見は認め られず,エックス線所見でも問題はない(図 4,5).機 能的および審美的にも患者の満足を得られている. 大臼歯の中間欠損にインプラント治療を施行すること により,残存歯への咬合負担を軽減し,残存歯と歯周組 織を健全に保ち,長期にわたる咬合の安定に有効と考え下顎大臼歯中間欠損にインプラント治療を行った 1 症例
野本 翔太
Dental Implant Treatment for Intermediate Missing Molar:A Case Report
NOMOTO Shota
日本歯科先端技術研究所
Japan Institute for Advanced Dentistry 2019 年 12 月 13 日受付
られた.今後もメインテナンスを継続的に行い,長期に わたり口腔内清掃状態,咬合状態の管理を行っていくこ とが重要と思われた.
Ⅴ.結 論
本症例ではインプラント治療により,咀嚼機能の回復 を行うことができた.このことより,インプラント治療 は下顎大臼歯中間欠損に対する機能回復に有効な治療法 であることが示唆された. Ⅵ.文 献 1) 赤川安正,松浦正朗,矢谷博文,ほか.よくわかる口腔イン プラント学.第 3 版,東京:医歯薬出版,8─11,2017. 図 1 術前口腔内写真(2014 年 12 月) 図 2 術前パノラマエックス線写真 (2014 年 12 月) 図 3 上部構造(体)装 着後の口腔内写真 (2015 年 5 月) 図 4 上部構造(体)装着後 3 年 1 カ月経過時の 口腔内写真(2018 年 6 月) 図 5 上部構造(体)装着後 3 年 1 カ月 経過時のパノラマエックス線写真 (2018 年 6 月)Ⅰ.緒 言
下顎遊離端欠損に対する補綴処置として,従来可撤式 義歯による補綴処置が行われてきた.しかし装着後の不 快感,支台歯への過重負担,十分な咀嚼機能の回復が得 られない,またクラスプをかけるため審美不良になるな ど問題が多くみられる.今回,下顎片側遊離端欠損にイ ンプラント治療を行い,良好に経過している症例を報告 する.Ⅱ.症例の概要
患 者:67 歳,女性. 初 診:2012 年 11 月. 主 訴:下顎左側欠損による咀嚼障害. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:3 年ほど前他院にて 36,37 を抜歯,部分床 義歯を作製したが,義歯に抵抗があり義歯を使用せずそ のまま放置していた.2012 年 11 月,左側が咀嚼しにく いとのことで当院を受診した(図 1). 現 症: 全身所見;特記事項なし. 口腔内所見;口腔清掃状態はやや不良である.また補 綴物には適合状態,咬合状態および顎関節に異常所見は 認めなかった.36,37 部に欠損が認められた. 検査結果:パノラマエックス線写真では軽度の水平的 な歯槽骨吸収が認められた(図 2).歯周組織検査では 臼歯部に 4 mm の歯周ポケットと BOP が認められた. 診断名:36,37 部欠損症,軽度慢性歯周炎.Ⅲ.治療内容
欠損部補綴治療に先立ち,全顎的な歯周基本治療を 行った.欠損部位の補綴治療として,部分床義歯,イン プラントが考えられるが,各治療法に対する利点欠点に ついて十分説明し,患者同意の下,インプラントによる 補綴治療を選択した.術前にパノラマエックス線と CT 撮影を行い,埋入予定部位の骨幅,埋入深度を確認し た. 2012 年 11 月,浸潤麻酔下で粘膜を切開剥離し,埋入 予定部位を確認後,36 部に直径 3.7 mm,長さ 10 mm のインプラント体,37 部に直径 3.7 mm,長さ 8 mm の インプラント体(POIEX,京セラ,京都)を通法どおり 埋入し,良好な初期固定を得た.3 カ月の免荷期間の後, 二次手術を行い,カスタムアバットメントとプロビジョ ナルレストレーションを装着して咀嚼機能の回復および 口腔衛生指導を行った.2013 年 5 月,上部構造として 36 部にハイブリッドセラミック冠,37 部に全部鋳造 ゴールド冠を仮着セメントにて装着し,メインテナンス に移行した(図 3).Ⅳ.経過と考察
上部構造装着後約 6 カ月ごとにインプラント体の チェックおよびメインテナンスを行っている.今回,粘 膜貫通部にはチタン製のカスタムメイドアバットメント を使用した.上部構造については,36 部は患者の審美 的要求を満たし,かつ天然歯に近い耐摩耗性を有し,破 折およびチッピングなどが発生した場合において比較的 修理が容易であるハイブリッドセラミック冠を装着し た.また,37 部にはハイブリッドセラミックを用いた 場合,クリアランス不足のため破折のリスクがあること を患者に説明し,全部鋳造ゴールド冠を装着した.現在下顎片側遊離端欠損にインプラント治療を行った 1 症例
鍵山 富希
A Case of Implant Treatment in Mandibular Unilateral Free End Missing:A Case Report
KAGIYAMA Fuki
口腔インプラント生涯研修センター
The Lifelong Learning Center for Oral Implantology 2019 年 12 月 17 日受付
5 年が経過したが,口腔内所見においてインプラント体 周囲組織および上部構造に臨床的問題は認められず(図 4),パノラマエックス線画像においてもインプラント体 周囲に骨吸収などの異常は認められなかった(図 5). 患者も欠損部をそのままにしていた罪悪感から解放さ れ,違和感もなくなんでも食べられると満足している. また,37 部における審美性も問題ないとのことだっ た1).今後も良好な状態を維持するために定期的なメイ ンテナンスが必要と考えている.
Ⅴ.結 論
患者は,以前に遊離端欠損部に部分床義歯を作製し装 着するも,審美的不満と装着時の違和感が強く使用が困 難とのことであった.そこで本症例では,片側遊離端欠 損に対してインプラント治療を行い,審美性の回復と装 着時の違和感の解消,さらには鉤歯への荷重負担の軽 減,咀嚼機能の改善が認められたことにより,良好な結 果が得られた. 下顎片側遊離端欠損の症例において,インプラント治 療は有効な治療法であることが示唆された. Ⅵ.文 献 1) 赤川安正,松浦正朗,矢谷博文,ほか.よくわかるインプラ ント学.第 2 版,東京:医歯薬出版,7─10,2012. 図 1 術前口腔内写真(2012 年 11 月) 図 2 術前パノラマエックス線写真 (2012 年 11 月) 図 3 上部構造装着後の口腔内写真 (2013 年 5 月) 図 4 上部構造装着後 5 年経過時の口腔内写真(2018 年 5 月) 図 5 上部構造装着後 5 年経過時 のパノラマエックス線写真 (2018 年 5 月)Ⅰ.緒 言
インプラント治療は,従来の歯冠補綴および可撤性義 歯と比較して,隣在歯の健全歯質の保存ならびに荷重負 担を軽減できるために,臨床上有用な治療方法である. 今回,外傷に伴う上顎前歯部 1 歯欠損症例に対して,咀 嚼障害および審美障害を改善する目的でインプラント治 療を行い,良好な結果が得られたので報告する.Ⅱ.症例の概要
患 者:33 歳,男性. 初 診:2013 年 5 月. 主 訴:前歯が折れた. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:顔面強打により,上顎右側中切歯:歯根破 折.上顎左側中切歯:外傷性完全脱臼.上顎両側側切 歯:外傷性歯牙亜脱臼により本院口腔外科にて整復固定 後,経過観察.上顎右側中切歯抜歯後,人工歯を隣在歯 に接着. 現 症: 全身所見;特記事項なし. 口腔内所見;欠損部顎堤は 3 カ月前に抜歯されてお り,抜歯窩の軟組織は治癒していた.歯周組織に特記す べき問題はなく,口腔内の清掃状態は良好であった(図 1). 検査結果:エックス線検査では,上顎右側中切歯に横 破折が認められた(図 2). 診断名:上顎右側中切歯歯根破折による審美障害.Ⅲ.治療内容
初期治療および歯周基本治療終了後,欠損部に対する 補綴治療について,それぞれの利点,欠点の説明を行 い,患者はインプラントによる治療を希望した.また, インプラント治療におけるリスク,治療期間,治療費 用,治療の流れ,メインテナンスの重要性を十分に説明 し患者の同意を得た.抜歯 5 カ月後の CT 画像から,イ ンプラント埋入部位の頬舌的骨幅は約 6 mm,鼻腔底ま での距離は約 14 mm であった(図 3).直径 3.3 mm, 骨内長 12 mm のインプラント体(Bone Level Implant SLA, Straumann, Basel, Switzerland)の埋入手術を行 うこととした.2014 年 2 月,局所麻酔下にて通法に従 いインプラントの埋入を行い初期固定は良好であった. 4 カ月の免荷期間後プロビジョナルクラウンを装着し, 歯冠形態,咬合関係の調整および清掃性の確認後, 2014 年 12 月,陶材焼付金属冠を用いたスクリュー固定 式上部構造を装着した(図 4).Ⅳ.経過と考察
上部構造装着から 1 カ月後に咬合状態,周囲組織,清 掃状態の診査を行い,経過良好であったため,それ以降 は 6 カ月ごとのメインテナンスに移行した.3 年 7 カ月 経過時において,インプラント周囲組織および上部構造 の異常所見は認められない(図 5).エックス線所見に おいても歯槽骨吸収などの異常所見は認められず,良好 な結果を示している(図 6). 審美領域でのインプラント治療は,口腔機能回復とと もに審美性も要求される.BUSER ら1)は,審美領域の インプラント治療では,補綴を行ううえで理想的な位置 と三次元的なポジションを考慮した埋入が必要であると している.本症例では,診断用ワックスアップや術前上顎前歯部 1 歯欠損に対してインプラント治療を行った 1 症例
佐々木圭太
Replacement of Maxillary Anterior Tooth with Dental Implant:A Case Report
SASAKI Keita
鶴見大学歯学部附属病院インプラントセンター
Center of Oral and Maxillofacial Implantology, Tsurumi University Dental Hospital
CT エックス線検査を行うことで,埋入位置を十分に検 討し,良好な結果を得ることができた.また,隣在歯に 損傷を与えることなく固定性の補綴が可能である利点は 大きく,適切な治療方法であったと考える.
Ⅴ.結 論
上顎前歯部欠損症例に対しインプラントを用いた補綴 治療を行い,口腔機能および審美性の回復を行い,3 年 7 カ月間メインテナンスを行っているが,インプラント 周囲骨レベルに変化もなく炎症所見も認められない.こ のことにより,外傷に伴う上顎前歯部 1 歯欠損症例に対 してインプラント治療の有効性が示された. Ⅵ.文 献1) Buser D, Chappuis V, Belser UC, et al. Implant placement post extraction in esthetic single tooth sites:when immediate, when early, when late? Periodontol 2000 2017;73:84─102.
図 1 術前口腔内写真(2013 年 12 月) 図 2 術前パノラマエックス線写真 (2013 年 5 月) 図 3 術前 CT 画像 (2014 年 2 月) 図 4 上部構造装着後の口腔内写真(2014 年 12 月) 図 5 上部構造装着後 3 年 7 カ月経過時の口腔内写真 (2018 年 7 月) 図 6 上部構造装着後 3 年 7 カ月経過時のパノラマエックス線 写真(2018 年 7 月)
Ⅰ.緒 言
近年,インプラント治療は高い予知性を示し,欠損補 綴法として広く用いられている.中間欠損におけるイン プラント治療は,インプラント支持による補綴処置によ りブリッジ,可撤式義歯による補綴法と比較し,両隣在 歯を切削する必要がなく,咬合圧の負担軽減ができ る1).今回,上顎左側第一小臼歯欠損部に対しインプラ ント治療を行い良好な結果が得られたので報告する.Ⅱ.症例の概要
患 者:30 歳,男性. 初 診:2014 年 10 月. 主 訴:左側で食べにくい. 既往歴:特記事項なし. 現病歴:2014 年 2 月,他院で上顎左側第一小臼歯歯 根破折により保存不可と診断,抜歯. 現 症: 全身所見;特記事項なし. 口腔内所見;口腔内清掃状態は良好であり,歯周ポ ケットは 3 mm 以内であった.上顎左側第一小臼歯の抜 歯窩は完全に治癒していた(図 1). 検査結果:パノラマエックス線所見より抜歯後の骨の 治癒良好(図 2).CBCT 検査より十分な骨高と骨幅を 認めた(図 3). 診断名:上顎左側第一小臼歯部欠損症.Ⅲ.治療内容
欠損に対しての治療法を提示し,各治療法の利点・欠 点,術式,治療期間,費用,予後,メインテナンスの重 要性などについて説明し,インプラント治療の同意を得 た.術前診査としてパノラマエックス線写真および口腔 内写真撮影,CBCT 検査を行った.2014 年 11 月,イン プラント埋入手術(二回法)にて,直径 3.7 mm,長さ 10 mm の イ ン プ ラ ン ト 体(TSVB10, Tapered Screw-Vent®, ZIMMER BIOMET, Calsbad, USA)を初期固定30 Ncm にて埋入.2015 年 2 月,二次手術にてヒーリン グアバットメント装着.2015 年 3 月,暫間上部構造装 着.2015 年 5 月,インプラント最終上部構造装着(陶 材焼付鋳造冠(スクリュー固定))(図 4).
Ⅳ.経過と考察
上部構造装着後 3 年 1 カ月,患者は 4~6 カ月ごとの メインテナンスに応じ,現在までインプラント周囲粘膜 の発赤やスクリューの緩みなどの補綴的トラブルもな く,プラークコントロールも経過良好である.機能的・ 審美的にも良好な状態で,患者はこれらに非常に満足し ている(図 5~7). 今回のような上顎小臼歯中間部の 1 歯欠損に対して可 撤去式義歯やブリッジを装着した場合,審美性,違和感, 着脱の煩わしさなどの問題に加え,隣在歯を切削する必 要があり,隣在歯の荷重負担となる.今回,インプラン ト補綴を選択したことで,審美的回復,残存歯の切削を 行うことなく咬合負担を軽減することができ,残存歯の 保存が可能となった.上顎第一小臼歯部中間歯欠損に対してインプラントによる補綴治療を行った
1 症例
淺井 知宏
Dental Implant Treatment for Maxillary First Premolar Intermediate Missing:A Case Report
ASAI Tomohiro
東京歯科大学付属病院口腔インプラント科
Department of Implant Dentistry, Tokyo Dental College Hospital