• 検索結果がありません。

Sanremo Rehabilitation Hospital

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "Sanremo Rehabilitation Hospital"

Copied!
10
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

アルコール誘発喘息

サン・レモ リハビリ病院

浅井 貞宏

Key words: acetaldehyde ―― alcohol-induced asthma ―― aldehyde dehydrogenase

はじめに 日本人の喘息患者においては,飲酒後に喘息発 作が出現もしくは悪化するとの訴えが多い.喘息 患者に対するアンケート調査では,飲酒が喘息発 作を悪化させると答えたものは 67.7% と高率で あった.私たちはアルコール誘発喘息多数例につ いてその発作誘発機序を検討した1)―3).その結果, アルコールはアルコールデ ハ イ ド ロ ゲ ナ ー ゼ (ADH)により,アセトアルデヒドに代謝され,さ らにアセトアルデヒドデハイドロゲーゼ(ALDH) により酢酸に代謝される.日本人の約半数におい てはこの ALDH の活性が低い ALDH2*2 型の遺 伝子を持っている.この活性の低い遺伝子をもっ た喘息患者では,アセトアルデヒドの酢酸への代 謝が進みにくく,血中のアセトアルデヒド濃度が 上昇する.アセトアルデヒド濃度の上昇は,肥満 細胞などからのヒスタミン遊離を促進し,このヒ スタミンが気道収縮などを引き起こし喘息発作を 誘発する.この ALDH 遺伝子は第 12 染色体の exon12 に存在するが,この塩基 1 個の point mu-tation により ALDH2 酵素タンパクの第 487 番目 のアミノ酸がグルタミン酸からリジンに置換され ることにより立体構造が変化し活性が低下すると される.すなわちアルコール誘発喘息は ALDH 遺伝子の塩基 1 個の(グアニンからアデニンへの) point mutation によって起こる,アセトアルデヒ ドの代謝異常による喘息ということになる.この 遺伝子は北東アジアを中心に広く存在するが,白 人や黒人には認められない.通常は酒(アルコー ル)に強く ALDH 遺伝子も正常である喘息患者に おいてもアルコール誘発喘息が起こることがあ る.それは嫌酒薬の服用後やセフェム系抗生剤 (MTT 基が関係)注射後,抗真菌薬,抗トリコモ ナス薬,抗結核薬,スルホニル尿素薬,など使用 後,またホテイシメジやヒトヨタケなどのキノコ を食した後などに,アルコールを飲用した時であ る.この場合はこれらの薬剤やキノコの毒により ALDH の活性が低下しているため,血中のアセト アルデヒド濃度が上昇し喘息発作を起こす.この タイプのアルコール誘発喘息は白人や黒人にも起 こりえる.アルコール誘発喘息の治療は,抗ヒス タミン薬,DSCG が特に有効である以外は通常の 喘息治療を適切に行うことである.また上記のよ うな誘因やアルコール含有飲料を避けることが重 要である. 飲酒と喘息発作 日本人の喘息患者においては,飲酒後に喘息発 作が出現もしくは悪化するとの訴えが多い.喘息 利益相反(conflict of interest)に関する開示:著者は本論文の研究内容について他者との利害関係を有しません. ALCOHOL-INDUCED ASTHMA Sadahiro Asai

Sanremo Rehabilitation Hospital

Abbreviations: ALDH“aldehyde dehydrogenase”,ADH“alcohol dehydrogenase”,MTT“n-methyl thiotetrazol” 浅井貞宏:サン・レモ リハビリ病院〔〒859―3244 佐世保市江上町 4848―1〕

(2)

図 1. 喘息発作誘発因子. 風邪 飲酒 ほこり 大気汚染(排気ガス) 天候 雨の前 冷気 過労 運動 たばこの煙 掃除 火山(温泉地獄) 香水などのにおい 精神負担 飽食 入浴 大笑 月経 妊娠 0 20 40 60 80 100(%) (70.1%) (67.7%) (60.6%) (58.3%) (48.0%) (35.8%) (20.4%) (40.2%) (37.4%) (37.0%) (32.7%) (32.3%) (29.5%) (28.7%) (27.6%) (20.5%) (16.5%) (6.7%) (28.0%) (254例) 図 2. アルコール(飲酒)誘発喘息の機序. ALDHの活性が低い喘息患者では,アセトア ルデヒドの血中濃度が上昇し,そのため肥満細 胞からヒスタミンが遊離され喘息発作を誘発す る.文献 4)より引用 H C C OH H C  C H  H C C O H H H     H  O     H O H H     H        H (エタノール)  (アセトアルデヒド)  (酢 酸) ADH ALDH2*2(日本人) Histamine 他 mast cell Basophyll 末梢血管拡張 分泌亢進 気管支収縮 Asthma attack 喘息発作 顔面紅潮 気管支浮腫 図 3. ALDH2遺伝子多型. ALDH2酵素タンパクの第 487番目のアミノ酸 がグルタミン酸からリジンに置換されることに よ り 立 体 構 造 が 変 化 し 活 性 が 低 下 す る. (mutant) ALDH2 Glu N (normal) M (mutant) GAA Exon 12 Lys AAA Exon 12 患者に対するアンケート調査によると,飲酒が喘 息発作を悪化させると答えたものは 67.7% と高 率であった(図 1). このように,喘息の発作誘発因子として飲酒は 重要な位置を占めていると考えられる. アルコール誘発喘息の機序 私たちはアルコール誘発喘息多数例についてそ の発作誘発機序を検討した1)―4) .その結果を図 2 に示す.アルコールはアルコールデハイドロゲ ナーゼ(ADH)により,アセトアルデヒドに代謝 され,さらにアセトアルデヒドハイドロゲナーゼ (ALDH)により酢酸に代謝される.日本人の約半 数 に お い て は こ の ALDH の 活 性 が 低 い ALDH2*2 型の遺伝子をもっている.この活性の 低い遺伝子をもった喘息患者では,エタノールの 代謝物であるアセトアルデヒドの酢酸への分解が 進みにくく,血中のアセトアルデヒド濃度が上昇 する.アセトアルデヒド濃度の上昇は,肥満細胞 などからのヒスタミン遊離を促進し,このヒスタ ミンが気道収縮などを引き起こし喘息発作を誘発 する. この ALDH 遺伝子は第 12 染色体の exon 12 に 存在するが,この塩基 1 個の(グアニンからアデ ニンへの)point mutation により ALDH2 酵素タ

(3)

図 4. 10%エ タ ノ ー ル 300ml飲 用 後 の パ ラ メーターの経時的変化. 15~ 30分をピークとして喘鳴・顔面紅潮ととも に 1秒量の低下,エタノール,アセトアルデヒ ド,ヒスタミンの血中濃度の上昇が認められる . 文献 4)より引用 Histamine (ng/ml) Ethanol (mg/ml) FEV 1.0 ( l) Acetaldehyde ( μ M) 10 5 FEV1.0 Etha. Acet. His. Pre. 15 30 60 120(min) (−) (−) (−) (+) (±) (−) (+) (−) (+) (−) 顔面紅潮 喘鳴 30 20 10 3.0 2.0 1.0 20 0 ンパクの第 487 番目のアミノ酸がグルタミン酸か らリジンに置換されることにより立体構造が変化 し活性が低下するとされる5) (図 3). すなわちアルコール誘発喘息は ALDH 遺伝子 の塩基一個の point mutation によって起こる,ア セトアルデヒドの代謝異常による喘息ということ になる. アルコール誘発喘息の診断 アルコール誘発喘息の診断においてまず行うの は当然のことながら問診である.すなわちアル コール飲料の摂取で喘息発作が誘発されるかどう かである.問診の際は,顔面紅潮(flushing),動 悸・嘔気,寝むけなどの症状にも注意する.確定 診断はアルコール飲用負荷試験と ALDH2・2 の 遺伝子診断による.喘息患者における ALDH2・2 遺伝子のスクリーニングとして松瀬らはエタノー ルパッチテストが有用であ る こ と を 示 し て い る6) . アルコール誘発喘息の症例 参考のためにアルコール誘発喘息の典型例を示 す. 【症例】25 歳男性,会社員. 【現病歴】3 歳頃より気管支喘息発症,春秋を中 心に喘息発作を断続していた.RAST はデルマト フアゴイデス属のダニに陽性であった.1 年前よ り現在の会社に勤務するようになり,飲酒の機会 が増加した.飲酒(缶ビール 1 本程度)をすると 約 15 分後より顔面紅潮,動悸とともに喘息発作を 引き起こす.発作の誘因精査とその治療方針決定 のため本院を受診した. 本症例は病歴より判断して飲酒により喘息発作 が誘発されているため,アルコール誘発試験を 行った. 【アルコール誘発試験】抗原となる物質を含まな い 10% エタノール液をゆっくり 10 分かけて,臨 床症状に注意しながら 300ml 飲用し,図 4 のよう なパラメーターの経時的測定を行った.本例にお いては 15∼30 分をピークとして喘鳴,顔面紅潮と ともに 1 秒量の低下,エタノール,アセトアルデ ヒド,ヒスタミンの血中濃度の上昇が認められた. 本例の ALDH2 遺伝子は ALDH2NM,すなわちヘ テロミュータントであった.以上より本例はアル コール誘発喘息の典型例と診断した.なおエタ ノールパッチテストも陽性であった. アルコール誘発喘息に対する対応 アルコールで発作が誘発される患者においては アルコール飲用を避ければよいわけであるが,ア ルコールはみりんなどの調味料やドリンクその他 日常生活においてアルコール飲料とは認識されて いないものにも含まれている(表 1)ため,ALDH2 の ホ モ の 活 性 低 下 遺 伝 子 を も っ て い る (ALDH2MM=ALDH2 2-2)喘息患者においては, 特に注意深くアルコール含有物を避ける必要があ る. アルコール誘発喘息におけるメディエーターは 肥満細胞からのヒスタミンが主体であるので,抗 ヒスタミン薬7) や脱顆粒を防ぐ DSCG(インター ル® )などが有効である.もちろん吸入ステロイド を中心とした通常の喘息治療による喘息自体のコ ントロールも必要である.前述の症例においても, 吸入ステロイド薬,徐放性テオフィリン薬ととも

(4)

表 1 食品中のエチルアルコール含有量 1袋中のアル コール量(mg) アルコール 濃度(ppm) アルコー ル表示 包装形態 内容量(g) 製造者(販売者) 食品名(商品名) 1,355 27,100 ― ポリ袋 50 新宿区 二幸 チョコレートケーキ (洋菓子) ケ ー キ (230/ 個) 1,380 23,000 ○ 紙箱 アルミホイル 6個入  50 中央区 風月堂 ウィスキーボンボン (チョコレート) 3,156 16,100 ○ アルミホイル 196 足立区 モンテール モンテール ブランデーケーキ (308/ 個) 1,856 9,940 ○ 紙箱 アルミホイル 6個入 187 新宿区 ロッテ ロッテ カスタードケーキ (123/ 個) 982 5,990 ○ 脱酸素剤 紙箱 ポリ袋 8個入 164 新潟県柏崎市 北日本食品工業 ブルボン チーズケーキ 536 7,650 ― アルミカップ 70 神戸市 ゴンチャロフ製菓 クールメルル グレープフルーツ ゼ リ ー 1,060 9,680 ○ プラスチック 100ml105g 港区 森永乳業 ブランデーゼリー 410 4,100 ○ プラスチック 100ml108g 港区 森永乳業 ワインゼリー 265 2,410 ― プラスチック 110 港区 森永乳業 サ ン キ ス ト ピ ー チ ゼリー 20,400 20,400 ○ ポリびん 1l 野田市 キノエネ醤油 特選うす塩しょうゆ し ょ う ゆ 8,250 16,500 ○ ポリびん 500cc 兵庫県 ヒガシマル醤油 特 選 薄 口ヒガシマル しょうゆ 14,700 14,700 ○ ガラスびん 1l 野田市 キノエネ醤油 本仕込 しょうゆ 24,000 24,000 ○ ポリ袋 1,000 長野県 ひかり飯島醸造所 天地味噌(米みそ) み そ 大分特選 麦みそ 大分県フンドーキン醤油 1,000ポリ袋 ○ 20,30020,300 20,100 20,100 ○ ポリ袋 1,000 諏訪市 竹屋 信州タケヤみそ特醸 607 5,060 ― ガラスびん 120ml 千代田区 大塚製薬 オロナミンCドリンク 飲 料 521 4,740 ○ ガラスびん 110ml 港区 ヤクルト本社 ヤクルトタフマン 540 4,500 ― ガラスびん 120 名張市 オクダ化学工業 ビタレモンCドリンク 86 342 ― 缶 250 千代田区 大塚製薬 ポカリスエット ○:アルコール,酒精,洋酒,ラム酒,ブランデー,みりんなどの表示のあるもの. △:アルコール系鮮度保持剤(食品保存用アルコール吸着体・アンチモールド・オイテックス)が袋の中に は入っていたもの. ND:検出せず. *東京都消費者センター資料(1988年にテスト実施)(最近は表示がさらに詳細になっているので個々の製 品の表示を参考)

(5)

表 2 アルコール誘発喘息と関連する薬剤 A 代表的な薬剤 薬剤の種類 主な商品名 略名 一般名 1.嫌酒薬 ノックビン シアナマイド ジスルフィラム シアナミド (ジスルフィラム作用) 2.抗生物質 セフメタゾン CMZ セフメタゾールナトリウム (ジスルフィラム様作用) ヤマテタン CTT セフオテタンナトリウム (N-メチルチオテトラゾール基を 有するセフェム系薬剤) セフブペラゾンナトリウム CBPZ トミポラン メイセリン CMNX セフミノクスナトリウム セフォビット CPZ セフオペラゾンナトリウム ベストコール CMX 塩酸セフメノキシン セパトレン CPM セフピラミドナトリウム スルペラゾン SBP/CPZ スルバクタム / セフォペラゾン シオマリン LMOX ラタモキセフナトリウム B 代表的な薬剤 薬剤の種類 主な商品名 略名 一般名 3.化学療法剤 イスコチン INH イソニアジド (ジスルフィラム様作用) ツベルミン ETH エチオナミド 抗結核薬 ポンシル FP GRF グリセオフルビン 抗真菌薬 フラジール メトロニダゾール 抗トリコモナス薬 (薬剤に添加物としてアルコー ルを含むもの) ノービア・ソフトカプセル リトナビル 抗ウィルス薬 4.抗がん剤 ミフロール HCFU カルモフール (ジスルフィラム様作用) (塩酸プロカルジバン) ナツラン PCZ 塩酸プロカルジバン C 代表的な薬剤 薬剤の種類 主な商品名 略名 一般名 5.血管拡張薬 イミダリン 塩酸トラゾリン (ジスルフィラム様作用) パーロデル メシル酸プロモクリプチン 6.パーキンソン病治療薬 7.スルフォニルウレア系 (第一世代) アベマイド クロルプロパミド 血糖降下薬 ジメリン アセトヘキサミド (ジスルフィラム様作用) ヘキストラスチノン トルブタミド 8.H2受容体拮抗薬 タガメット シメチジン (血中アルコール濃度上昇) アシノン ニザチジン ザンタック ラニチジン

(6)

図 5. MTT基を持つセフォペラゾンナトリウムの化学構造. H3C H3C CO2Na HO HN H N H H H N N N N N N N O O O S S O O (MTT基) にアゼプチン 1mg を飲酒予定当日の朝食後と昼 食後に服用させ飲酒量を極力少なくすることを指 導することによりアルコール誘発を防止できた. ALDH 正常喘息患者におけるアルコール誘発 喘息 通常は酒(アルコール)に強く ALDH 遺伝子も 正常である喘息患者においてもアルコール誘発喘 息が起こることがある. それは嫌酒薬の服用時やセフェム系抗生剤使用 時,ホテイシメジやヒトヨタケなどのキノコを食 した後,アルコールを飲用した時である.この場 合はこれらの薬剤やキノコの毒により ALDH の 活性が低下しているため,血中のアセトアルデヒ ド濃度が上昇するためである.キノコを食べる時 も同定能力と知識が必要である. アルコール誘発喘息と関連する薬剤 ALDH 遺伝子が正常であってもアルコール誘 発喘息をおこす可能性がある主な薬剤を表 2A, B,C に示す. まず当然であるが ALDH 正常の喘息患者が嫌 酒薬を服用したあとアルコールを飲んだ場合であ る. 次に N-メチルテトラゾールチオール基(MTT 基)を有するセフェム系抗生物質である.この MTT 基を導入することによってグラム陰性桿菌 に対する抗菌スペクトラムの拡大や抗菌力の増大 がはかられたわけであるが,この MTT 基(図 5) を持つ抗生剤はジスルフィラム様作用をおこす. これらの抗生剤を点滴して 1 週間程度はアルコー ルを飲用することによってアセトアルデヒドが血 中に増加する. 退院直後に“祝い酒”をすると日頃酒に強い人 でも悪酔いすることがある.その人が喘息患者で あるとアルコール誘発喘息をおこすこととなる. その他の化学療法剤としては抗結核薬のイソニ アジドやエチオナミド,抗真菌薬のグリセオフル ビン,抗トリコモナス薬のメトロニダゾールなど がジスルフィラム様作用を持っている.抗ウイル ス薬のリトナビル(HIV 治療薬)はソフトカプセ ル中にアルコールを 12% 含んでおり 1 日 12 カプ セル服用すると 1.4ml のアルコールを飲むことと なり ALDH ホモの活性低下者は注意が必要であ る. 抗がん剤のカルモフール,塩酸プロカルジバン もジスルフィラム様作用をひきおこす. その他血管拡張薬の塩酸トラゾリン,パーキン ソン病治療薬のメシル酸プロモクリプチン,第一 世代のスルフォニルウレア系血糖降下薬などもジ スルフィラム様作用をおこすので注意が必要であ る. また H2受容体拮抗薬のシメチジン,ニザチジ ン,ラニチジンは血中アルコール濃度を上昇させ るので間接的に影響する. 以上アルコール誘発喘息と関係すると思われる 主な薬剤を記したが,これ以外にも関係がある薬 剤も考えられるので薬剤使用にあたってはアル コールとの相互作用についても添付文書で確認す る必要がある.

(7)

表 3 アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)正常活性(1― 1)および低活性型(2― 1,2― 2)の人種分布 遺伝子頻度 ALDH2型 民族(調査数) ALDH2*2 ALDH2*1 低活性型 正常活性 2― 2(%) 2― 1(%) 1― 1(%) I) モンゴロイド人種 0.239 0.761 (4.2) 4 (38.4) 37 (56.4) 53 日本人(94) 0.231 0.789 (5.3) 8 (35.8) 56 (58.9) 92 中国人(156) 0.151 0.849 (1.8) 4 (26.5) 58 (71.5) 156 朝鮮人(218) 0.050 0.950 (0) 0 (10) 11 (90) 100 タイ人(111) 0.006 0.994 (0) 0 (7) 14 (93) 96 フィリピン人(110) 0.034 0.966 (0) 0 (5.9) 5 (79.1) 68 マレーシア人(86) 〈少数民族〉 0.004 0.996 (0) 0 (0.8) 2 (99.0) 240 パプアニューギニア人(242) 0 1.000 (0) 0 (0) 0 (100) 37 オーストラリア原住民(37) 0.062 0.938 (0) 0 (12.5) 5 (87.5) 33 ネグリト族(フィリピン)(40) アメリカインディアン (南アメリカ) 0 1.000 (0) 0 (0) 0 (100) 28 マプッチェ(チリー)(28) (北アメリカ) 0.022 0.978 (0) 0 (4) 4 (96) 86 1)スー(北ダコタ)(90) 0.009 0.991 (0) 0 (1.8) 1 (98.2) 55 2)ナバホー(ニューメキシコ)(56) 0 1.000 (0) 0 (0) 0 (100) 61 3)メスデソス(メキシコ)(61) II) コーカソイド人種 0 1.000 (0) 0 (0) 0 (100) 98 ドイツ人(98) 0 1.000 (0) 0 (0) 0 (100) 90 スウェーデン人(90) 0 1.000 (0) 0 (0) 0 (100) 85 フィンランド人(85) 0 1.000 (0) 0 (0) 0 (100) 100 ラップ人(100) 0 1.000 (0) 0 (0) 0 (100) 44 トルコ人(44) 0 1.000 (0) 0 (0) 0 (100) 250 エジプト人(260) 0 1.000 (0) 0 (0) 0 (100) 77 イスラエル人(77) 0.013 0.987 (0) 0 (1.75) 2 (99.25) 114 ハンガリー人(116) 0.027 0.973 (0.7) 1 (3.8) 5 (96.1) 123 インド人(129) III) ネグロイド人種 0 1.000 (0) 0 (0) 0 (100) 40 スーダン人(40) 0 1.000 (0) 0 (0) 0 (100) 23 ケニア人(23) 0 1.000 (0) 0 (0) 0 (100) 184 リベリア人(184) 0 1.000 (0) 0 (0) 0 (100) 37 ファングース人(37) (文献 9)より引用) 図 6. コプリンとその生体内加水分解産物.

NHOC−CH2CH2CH−COOH→  NH2+HOOC−CH2CH2CH−COOH

OH NH2

コプリン OH1-アミノシクロプロパノールNH

2 コプリン群の毒を含むキノコ摂食と飲酒

前述したようにヒトヨタケ(Coprinus

atramenta-ris),やホテイシメジ(Clitocybe clavipes)を食べた 後 4∼5 日以内に飲酒すると,これらに含有される

(8)

図 7. わが国における ALDH2*1遺伝子頻度の 分布とそれに対応する飲酒量(純エタノールリッ トル/人/年).沖縄の飲酒量は不明. (文献10)より引用) 北海道 東北 関東 中部 北陸 近畿 中国 四国 北九州 南九州 沖縄 飲酒量 9.50 9.30 8.29 8.58 8.23 7.66 8.48 7.88 8.87 9.70 ― ALDH2*1遺伝子頻度 0.6 0.65 0.7 0.75 0.8 0.85 コプリンの生体内加水分解産物(図 6)1-アミノシ クロプロパノールの ALDH 阻害作用により顔面 紅潮,嘔吐,血圧低下などの嫌酒薬様の作用が出 ることが知られている8) . マウスにホテイシメジを投与すると,ALDH 活性値は有意な減少が認められ,アルデヒド貯留 の原因はホテイシメジ抽出物の ALDH 活性抑制 効果によるものと推察された.この ALDH 活性阻 害によるアルデヒド濃度の上昇は,抗酒剤 disulfi-ram(antabus)などの薬物による作用と同様であ り,その臨床症状もホテイシメジ中毒の場合と類 似している. ヒトヨタケには 160mg!kg のコプリンが含ま れているという.その他コプリン群の毒を含むと

思われるキノコにはササクレヒトヨタケ(Co-prinus comatus),スギタケ(Pholiota squarrosa),ウ

ラベニイロガワリ(Boletus luridus)などが知られ ている.喘息患者がこれらのキノコを食した後, 酒などアルコール飲料を摂取すると,ALDH の遺 伝子は正常活性型であってもアルコール誘発喘息 を起こすこととなる.ALDH 非活性型の人におい てはこれらのキノコの作用はさらに強くなる可能 性がある.これは昔からいわれている食べ合わせ が悪い食品ということになる. アルコール誘発喘息の人種特異性 ALDH の不活性型をもつ頻度は人種による差 が大きい.日本人 42.6%,中国人 41.1%,朝鮮人 28.4% と北東アジアに高く,タイ人 10%,フィリ ピン人 7% と南に下がると少なくなる.白人や黒 人では 0% である. すなわちシベリアで寒地適応したモンゴロイド に発生した遺伝子と考えられる.この ALDH 不活 性型をもつ人種の喘息患者においてはほぼ同じ頻 度でアルコール誘発喘息が存在するものと思われ る.表 3 に原田による ALDH2 正常活性型(1-1)お よび低活性型(2-1,2-2)の人種分布を示す.前に 述べたように日本人において,低活性型は 2-1 38.4%,2-2 4.2% で合計 42.6% となる.なお原田は 日本国内においても地域別に調査し,渡来系弥生 人の血が濃いとされる近畿,中部,北陸などで ALDH 活性型の頻 度 が よ り 低 い と 指 摘 し て い る10) (図 7).これらの地方においてはアルコール 誘発喘息の頻度がより高いこととなる.ところで, この ALDH2 低活性型はアルコール誘発喘息を引 き起こすという悪い作用のみを引き起こす遺伝子 ではなく,アルコールが多量に飲めないことによ り,アルコール性肝障害やアルコール性精神病を 予防するというよい遺伝子の側面をもっている. 上記以外の機序による飲酒と喘息との関係 日本人において飲酒によって喘息発作が誘発さ れる機序は前述のアルコール誘発喘息が最も多い わけであるが,表 4 のようにその他種々の機序に より飲酒は喘息に影響を及ぼす4) .①アルコール 飲料中の抗原(真菌・酵母・ホップなど)による アレルギー,②含有される防腐剤や色素などによ るアスピリン喘息類似の機序による発作誘発,③ 含有される高濃度アルコール(ウイスキーなど)や 赤ワイン中の亜硫酸ガス(SO2)などによる気道の 直接刺激,などがある.一方,稀ではあるが喘息 を改善する機序としては,アルコールによる気管 支平滑筋の弛緩や副交感神経の軽度麻痺さらに精 神的リラックスなどが知られている.

(9)

表 4 飲酒と喘息 喘息症状を改善する機序 喘息症状を悪化する機序 1.アルコールによる気管支平滑筋弛緩作用 1.アルコール(飲酒)誘発喘息(日本人では多発) 2.アルコールによる神経(副交感神経)麻痺 アセトアルデヒド代謝と関連 3.精神的リラックス 2.アレルギー アルコール飲料中の抗原による感作 (真菌,酵母,ホップなど) 3.アスピリン喘息類似 防腐剤,色素など 4.気道刺激による(cough receptor) 高濃度アルコールによる刺激 非特異的刺激(SO2など) 文献 4)より引用 これらに対する対応としては当該アルコール飲 料を避けるとともに,アレルギー性喘息,アスピ リン喘息に対すると同様の治療が必要である.高 濃度アルコールや SO2による気道刺激に対しては アトロピン系吸入薬が有効である. アルコール含有食品について 前述のように,気管支喘息においてアルコール は誘発因子となり得るわけで,その回避は疾患の コントロールにおいて重要である.しかしアル コールは酒類のみに含まれるではなく多くの食品 に含有されている.どのような食品にどれくらい の濃度でアルコールが含まれているのかを知って おくことは重要である.表 1 に東京都消費セン ター資料による食品中のエチルアルコール含有量 を示すので参考にして頂きたい.特に ALDH 不活 性遺伝子をホモでもっている気管支喘息患者では 注意深くアルコールを避けることが必要である. おわりに ALDH 活 性 の 低 い 喘 息 患 者(日 本 人 の 約 半 数)においては飲酒によって発作が誘発される. エタノールは酒類のみではなく,ケーキ,ゼリー, 調味料,健康飲料などに広く含まれるので注意が 必要である.この ALDH 活性の低い人は日本人, 中国人,朝鮮人などのアジア人に多く,白人,黒 人には認められない.日本国内においても中部地 方や近畿地方に多い.飲酒により喘息発作が誘発 されるその他の機序としては,含有物に対するア レルギー,防腐剤に対するアスピリン喘息様作用, 含有刺激物による気道刺激などがある.飲酒は上 記のように種々の機序によりアレルギー症状を増 強するので注意が必要である.ホテイシメジなど のキノコの摂取やセフェム系抗生剤の使用後の飲 酒は避けるべきことなどに言及した. この綜説の要旨は第 19 回日本アレルギー学会春季 臨床大会(2007.6.12 横浜)の教育講演において発表し た.また,これらの研究にあたり,長崎大学医学部第 2 内科,米国南フロリダ大学,佐世保市立総合病院にお いて共同研究をしていただいた諸先生に心より感謝 します. 文 献 1)浅井貞宏.アルコール(飲酒)誘発喘息(喘 息患者は飲酒ばかりでなくアルコール含有 調味料なども制限したほうがよい).医学の あゆみ 1987;143:201―2. 2)渡辺 尚.アルコール(飲酒)誘発喘息の発 症機序に関する研究;特にアセトアルデヒ ド と の 関 係 に つ い て.ア レ ル ギ ー 1990; 40:1210―7.

3)Shimoda T, Kohno S, Takao A, Fujisawa C, Matsuse H, Sakai H, et al. Investigation of the mechanism of alcohol-induced bronchial asthma. J Allergy Clin Immunol 1996; 97: 74― 84.

(10)

ルと喘息(飲酒と喘息).冨岡玖夫,足立 満, 福田 健,永倉俊和編.Medical Topics Series 喘 息’92.東 京:メ デ ィ カ ル レ ビ ュ ー 社; 1992.p. 128―35.

5)Harada S, Agarwal DP, Goedde HW. Alde-hyde dehydrogenase deficiency as a cause of facial flushing reaction to alcohol in Japa-nese. Lancet 1981; II: 982.

6)Matsuse H, Shimoda T, Fukushima C, Mit-suta K, Kawano T, Tomari S, et al. Screening for acetaldehyde dehydrogenase 2 genotype in alchol induced asthma by using the etha-nol patch test. J Allegy Clin Immuetha-nol 2001 ; 108: 715―9.

7)Takao A, Shimoda T, Matsuse H, Mitsuta K, Obase Y, Asai S, et al. Inhibitory effects of azelastine hydrochloride in alcohol induced asthma. Ann Allergy Asthma Immunol 1999 ; 82: 390―4. 8)山下 衛.コプリン群.きのこ中毒.山下 衛,古川久彦編.東京:共立出版;1993.p. 91―101. 9)原田勝二.エタノールおよびアルデヒド代謝 の人種的遺伝的要因.医学のあゆみ 1990; 154:817―22. 10)原田勝二.飲酒の遺伝生態学.遺伝 1999; 53:57―61.

図 1.  喘息発作誘発因子.風邪飲酒ほこり大気汚染(排気ガス)天候雨の前冷気過労運動たばこの煙掃除火山(温泉地獄)香水などのにおい精神負担飽食入浴大笑月経妊娠0 20 40 60  80  100(%)(70.1%)(67.7%) (60.6%)    (58.3%)                        (48.0%)             (35.8%)      (20.4%)               (40.2%)              (37.4%)              
図 4.  10%エ タ ノ ー ル 300ml飲 用 後 の パ ラ メーターの経時的変化. 15~ 30分をピークとして喘鳴・顔面紅潮ととも に 1秒量の低下,エタノール,アセトアルデヒ ド,ヒスタミンの血中濃度の上昇が認められる
表 1 食品中のエチルアルコール含有量 1袋中のアル コール量(mg)アルコール濃度(ppm)アルコー包装形態ル表示内容量(g)製造者(販売者)食品名(商品名) 1, 35527,100―ポリ袋50新宿区 二幸チョコレートケーキ (洋菓子) ケ ー キ (230/  個)1,38023,000紙箱○アルミホイル6個入  50中央区 風月堂ウィスキーボンボン(チョコレート)3,15616,100○アルミホイル足立区196モンテールモンテールブランデーケーキ (308/  個)1,8569,940紙箱○ アルミ
表 2 アルコール誘発喘息と関連する薬剤 A 代表的な薬剤 薬剤の種類 主な商品名略名一般名 1.嫌酒薬 ノックビン シアナマイドジスルフィラムシアナミド(ジスルフィラム作用) 2.抗生物質 セフメタゾンCMZセフメタゾールナトリウム(ジスルフィラム様作用) ヤマテタンCTTセフオテタンナトリウム(N-メチルチオテトラゾール基を 有するセフェム系薬剤) セフブペラゾンナトリウム CBPZ トミポラン メイセリンCMNXセフミノクスナトリウム セフォビットCPZセフオペラゾンナトリウム ベストコールCMX塩酸
+5

参照

関連したドキュメント

中比較的重きをなすものにはVerworn i)の窒息 読,H6ber&Lille・2)の提唱した透過性読があ

 海底に生息するナマコ(海鼠) (1) は、日本列島の

および皮膚性状の変化がみられる患者においては,コ.. 動性クリーゼ補助診断に利用できると述べている。本 症 例 に お け る ChE/Alb 比 は 入 院 時 に 2.4 と 低 値

 我が国における肝硬変の原因としては,C型 やB型といった肝炎ウイルスによるものが最も 多い(図

租税協定によって、配当金、利息、ロイヤリティと言った項目の税率の軽減、あるいは、恒久 的施設 (PE) が無い、もしくは

本人が作成してください。なお、記載内容は指定の枠内に必ず収めてください。ま

   がんを体験した人が、京都で共に息し、意 気を持ち、粋(庶民の生活から生まれた美

■はじめに