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ぺた語義:SNSを利用した学習環境

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Academic year: 2021

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(1)ARTICLE. 基 応 専 般. SNS を利用した学習環境 井上 仁 . 保健医療経営大学 . かもしれないが,最近の傾向は,持ち込みは許可す. 朝の電車通勤の光景. るが校内では預かるあるいは校内での使用を禁止す. 筆者は電車通勤を始めて久しい.特にこの 2 年間. るところが多いと聞く.それでは早い時間帯に通学. は通勤距離が長くなったことに加え,定時に出勤す. する高校生はスマートフォンを所持していないのだ. るために自宅最寄り駅を朝 6 時頃に出る電車に乗る. ろうか.また所持していた場合,どうして通学中に. ようになった.. スマートフォンを使用しないのだろうか.. 驚いたことに,この時間帯は高校生の乗車が多い.. 内閣府が毎年実施している「青少年のインター. 通勤や通学にあまり時間がかからない福岡市近郊で. ネット利用環境実態調査」 によると青少年のイン. あるにもかかわらず高校生が多い理由は,恐らく福. ターネット接続機器としてのスマートフォンの利用. 岡県内のほとんどの県立高等学校で定着している朝. は年々増加しており,2017 年度の調査では高校生. 課外や朝補習と呼ばれる始業前の補習に出席するた. の利用は 95.9% にのぼっている.また,「高校生の. めだと思われる.実際,車内の高校生の多くが参考. スマートフォン利用実態調査」(インテルセキュリ. 書や問題集を片手に抱えていることから大学受験を. ティ× MDD 研究所共同調査) でも 93.0% とほぼ. 間近に控えているのだろう.参考書にかぶせた赤い. 近い結果となっている.. シートをずらす光景は,30 年以上も前の自分が高校. 高校生はスマートフォンで何をしているのだろう. 生のときと変わらない.違いは,当時は自身でマー. か.文献 1)の調査では,高校生のスマートフォン. キングしていたのが,今では重要事項があらかじめ. でのインターネットの利用内容の第 1 位はコミュ. 赤色で印刷されているくらいである.. ニケーション(メール,メッセンジャー,ソーシャ. 少し遅い時間帯の電車に乗ると様子が変わる.高. ルメディアなど)であり 91.1% となっている.特に,. 校生の多くは参考書の代わりにスマートフォンを手. LINE,Twitter,Instagram といった SNS(Social. にしている.凝視するわけにはいかないが,肩越し. Network Service)は,電子メールや Web のようなイ. に覗きこむと,LINE,Twitter,Instagram 等の見慣. ンターネット標準のプロトコルやサービスでなく特. れた画面が見える.ゲームに興じている者も多い.. 定の企業が提供しているサービスにもかかわらず,. 1). 2). コミュニケーション手段としての近年の利用が著し. 高校生のスマートフォンと SNS の利用状況. い.文献 2)の調査によると,高校生がふだんスマー トフォンですることは,LINE が 92.1%,Twitter が. 2 つの時間帯での電車内での高校生の行動の違い. 72.1%,Instagram が 33.6% という結果になっている.. はなんであろうか.高等学校によってはスマート. それに対して,勉強(勉強アプリの使用や辞書とし. フォンの持ち込み自体を禁止しているところもある. て) は 38.5% にすぎない (図 -1) .. -【解説】SNS を利用した学習環境 -. 432. 情報処理 Vol.60 No.5 May 2019.

(2) SNS の中で特に高校生の利用が多い LINE に関. SNS を利用した学習環境. しては,総務省情報通信技術研究所の「平成 29 年. ❏❏日常生活と学習との乖離. 度情報メディアの利用時間と情報行動に関する調査 3). 報告書」 によると,全年代(10 代から 60 代)での. LMS(Learning Management System,学習管理システ. LINE の利用率は 75.8% であり,年代別では 10 代. ム) には,教材の提示,課題の提示と提出等の管理,ク. が 86.3%,20 代が 95.8%,30 代が 92.4%,40 代が. イズ出題と自動採点,掲示板,メール,チャット等の. 85.4%,50 代が 67.1%,60 代が 39.8% となっている.. 多くの機能がある.掲示板,メール,チャットはコミュ. ほかの SNS に比べてどの年代でも利用率が高い傾. ニケーション機能ではあるが,日常的なコミュニケー. 向にあり,20 代を除くどの年代でも前年度よりも. ションツールとは利用形態が異なる.掲示板は授業で. 利用率が高くなっている.. の議論の継続や質疑応答,メールは教員からの授業や 課題に関する情報の通知に利用されることが多い.ス マートフォン専用のアプリを提供している LMS では,. 大学における SNS の利用状況. これらの情報がプッシュ通知されるものもある.LMS. このような SNS の普及の背景もあり,企業や地方. からの情報が日常生活のコミュニケーションツールに. 公共団体だけでなく大学の情報発信においても,従. 通知されたとしても,LMS を利用するためには,別の. 来の Web サイトだけでなく,Twitter,Facebook,. アプリに切り替えてログインするという操作が一般に. Instagram 等の SNS が利用されている.特にこの数. 伴う.いずれにせよ,日常生活におけるコミュニケー. 年間では,LINE のビジネス向けアカウントの 1 つで. ションと LMS による学習の関係は疎になっている.. ある LINE@ の導入が著しい. 筆者らの調査. 4). ❏❏構築したシステム. では,2017 年 9 月末の時点で大. 学と短期大学全体の約半数にあたる 578 校(52%)が. このような理由から,通学等の隙間時間を利用し. LINE@ を開設している.国立,公立,私立の区分で. た学習や能動的な学習を発生しやすくするめための 1. は私立大学の利用率が高く 69% であった.表 -1 は大. つの手段として,日常的なコミュニケーションシス. 学全体としての LINE@ の登録数を大学・短期大学別,. テム(SNS)上に学習システムを構築することにした.. 国立・公立・私立別にまとめたものである.. 図 -2 は本システムの概念図である. 92.1%. LINE. 88.8%. インターネット接続. 76.5%. メール. クイズ. 掲示板. メール チャット. 72.1%. Twitter. 64.4%. ゲーム. 日常生活. 62.2%. 電話. 57.2%. メール 動画を撮る. 44%. ニュースや記事, ブログを見る. 学習. 疎. 教員. 学習者. 54%. 日常生活. 38.9%. 勉強(勉強アプリの使用や辞書として). 学習. 38.5%. Instagram. 教育機関. 33.6%. 電子書籍・コミックを読む. 10%. 20%. 30%. 40%. 50%. 60%. 70%. 80%. 90%. 100%. 図 -1 高校生がふだんスマートフォンですること(文献 2)を元に作成). SNS (LINE@) 難易度の評価. 表 -1 大学における LINE@ の登録数. 個人適応型. 大学. . 国立. 公立. 私立. 公立. 私立. 合計. 大学数. 82. 90. 604. 17. 320. 1,113. 登録数. 19. 20. 414. 2. 123. 578. 23%. 22%. 69%. 12%. 38%. 52%. 割合. LMS 教材. 75.8%. 写真を撮る. 0%. SNS (LINE). 77.7%. 音楽を聴く 動画を見る. 短期大学. 個別介入. SNS (LINE@) 教材. クイズ. SNS (LINE@). 掲示板. メール チャット. 本システム 学習履歴情報. Caliper Analytics. 研究者. LMS 他システムとの連携 LTI, QTI. 教材提供者. 図 -2 SNS を利用した学習環境の概念図. 情報処理 Vol.60 No.5 May 2019. 433.

(3) コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン シ ス テ ム と し て, ス マ ー. 態に遷移していく.. トフォンでの利用が一番多い LINE を選択した.. 図 -4 は,学習システム内の状態遷移をミーリー型. LINE@ は,契約プランによっては API を利用でき. 順序機械で表現したものである.学習システムへの. る.この API の 1 つで,利用者と自動的にやりとり. 別の機能の追加は,待ち状態(図 -4 の「開始待ち」 )に. が可能な Messaging API(通称 LINE BOT API)を. モジュールを追加するだけで実現でき,ほかの機能. 利用して,簡単な演習問題を解くことのできる機能. への影響のない独立性が高いものとなっている.. を実現した.現在,医学英語と日常英語の学習シス テムを提供している (図 -3) .. 将来構想. ❏❏学習機能の追加. ❏❏学習環境そのもの. 本システムには他の学習機能を容易に追加できる.. 現在提供しているシステムでは,単純な選択式の. LINE BOT API を利用したシステムは,利用者から. 演習機能しか提供していないが,以下を構想している.. の入力に対して応答を返すが,この毎回のやりとり. ●●学習環境の強化. は独立したものになっている.そこでシステム内に. 学習環境には学習のための基本機能に加えて,学. は利用者 ID とその ID ごとの状態を保持することに. 習を促進させるためのコミュニケーション機能を付. より利用者の入力に応じた処理 (出力) を行い,次の状. 加する.具体的には,学習者間でプライバシを保護 しつつ安全な環境でのコミュニケーション,定期的 なメッセージの配信,学習者の状況に応じたメッセー ジによる介入の機能を付加する. また,外部システムと接続するために IMS Global Consortium が LMS などのシステム間の相互運用を 目的として制定した標準規格 LTI(Learning Tools ☆1. Interoperability) や演習問題の設問や評価に関する標 ☆2. 準規格 QTI(Question and Test Interoperability). ,学. 習履歴データの蓄積と収集のための標準規格 Caliper. 図 -3 LINE@ 上の学習システム. Analytics. 医学英語の状態遷移. ☆3. の機能を付加する.. ●●コンテンツの多様化 教材や演習問題は,多様性を持たせるために,教 室外でのノンフォーマル学習に広げる.また,学習. 他 /医学英語解答待ち. 開始待ち. “医学英語” /医学英語開始. 医学英語 解答待ち. 者を高校生や大学生だけでなく社会人まで広げる.具. “9” /医学英語終了. 体的には,情報教育,医師国家試験や診療情報管理. “1”, “2” /医学英語解答確認. 日常英語の状態遷移. “日常英語” /日常英語開始. 士や旅行業務取扱者の資格試験対策,IT スキル,社 会人基礎力,食生活等のコンテンツを開発し提供す. 他 /日常英語解答待ち 日常英語 解答待ち. ることを検討している.. “9” /日常英語終了. ●●学習履歴の解析とモデル化 システムに記録される学習履歴を解析し,学習者. “1”, “2”, “3”, “4” /日常英語解答確認. ☆1 状態1. 図 -4 学習システム内の状態遷移図. 入力 /処理. 状態2. ☆2 ☆3. https://www.imsglobal.org/activity/learning-tools-interoperability https://www.imsglobal.org/question/ https://www.imsglobal.org/activity/caliper. -【解説】SNS を利用した学習環境 -. 434. 情報処理 Vol.60 No.5 May 2019.

(4) の特性の分類と個々の学習者に適したコンテンツの. 学習状況をフィードバックすることにより,学習素. 提示や介入方法を検討する.解析の対象は,学習状. 材の改善につながる.. 況のみならず,教材の利用,コミュニケーション機能,. ⑤研究者. 学習環境そのものも含む.. 近年 LMS 等に蓄積される学習履歴を元に,学習環 境の改善,教育効果を向上するためのコンテンツの. ❏❏本学習環境をめぐる人たちとの連携. 改善等を目的とするラーニングアナリティクスの研. 学習者,教員,教育機関,教材提供者,研究者に対. 究が盛んである.しかしながら解析のためのデータ. して,さまざまな機能を提供することを構想している.. が不足しているといわれる.そこで,本学習環境に. ①学習者. 蓄積された学習履歴を LRS(Learning Record Store). 前述したように,高校生や大学生だけでなく一般. として提供する.これにより,ラーニングアナリティ. 向けの学習コンテンツを提供する.. クスの研究者は汎用的なツールを利用して本システ. ②教員. ムの学習履歴データを解析することができる.. 授業等で利用する場合には,その授業の受講者の. 図 -5 は,本学習環境をめぐる人たちとの連携の概. 同意を得た上で,担当教員が学習状況を把握できる. 念を表したものである.. ダッシュボード等の機能を提供する. ③教育機関 LTI や QTI の機能を利用して,教育機関がすでに. 今後の展望. 導入している LMS と連携する機能を提供する.また. 本稿では,生活に密着した SNS を利用した学習環. 教育機関が導入している LINE@ から本システムの機. 境について述べた.LMS 等の学習環境は今後大きく. 能を呼び出す機能を提供する.. 変わっていくだろう.本システムがこれまでの LMS. ④教材提供者. に置き換わることはないが,学習環境の 1 つになる. 本学習環境は,企業との共同研究により構築した.. 可能性はあると考えている.構想中のものがほとん. 英語学習のためのコンテンツは共同研究先の企業と. どであるが,今後多くの方に利用できる機能を提供. 関係のある企業からの提供を受けた.従来の紙媒体. していきたい.. で演習問題を提供していた企業では,問題の難易度. 参考文献 1) 平 成 29 年 度 青 少 年 の イ ン タ ー ネ ッ ト 利 用 環 境 実 態 調 査: https://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/net-jittai_ list.html,内閣府(2018). 2) 高 校 生 の ス マ ー ト フ ォ ン 利 用 実 態 調 査:https://mmdlabo. jp/investigation/detail_1605.html,インテルセキュリティ× MDD 研究所共同調査(2016). 3) 総務省情報通信技術研究所「平成 29 年度情報メディアの利 用時間と情報行動に関する調査報告書調査」の公表:http:// www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01iicp01_02000073.html, 総務省(2018). 4) 井上 仁,後藤浩士,永石尚也,望月秀樹,伊達卓二:大学 における LINE@ の利用状況と今後の可能性,大学 ICT 推進 協議会 2017 年度年次大会予稿集(2017). (2019 年 2 月 8 日受付). や選択問題での解答の選択肢がどのように選ばれた かを把握するのは困難である.本環境に蓄積される. 学習者. ① LINE@ を利用した自動応答システム による学習環境の提供. 学習者 学習者. 学習者 ① 学習システム 分析システム. 教育機関. ② 学習者の学習状況の提供. 教員. LRS. 教育機関. (Learning Record Store). ③. 研究者. 大学. ②. 教材提供者. 企業 ④. ⑤ 研究者. 教材提供者. 研究者. 教材提供者 研究者. 教材提供者. ③ LINE@ を利用した 自動応答システムによる 学習環境の提供. 教員. ④ 学習素材の提供と学習状況 によるフィードバック. ⑤ 学習分析研究用のデータの提供. 井上 仁(正会員) [email protected] 情報通信技術を利用した教育学習環境の運用と研究に従事.2019 年 4 月から群馬大学数理データ科学教育研究センター准教授.教育システ ム情報学会,日本教育工学会,人工知能学会,日本医療情報学会,日 本医学教育学会,学習分析学会,イグ研会員.. 図 -5 本学習環境をめぐる人たちとの連携. 情報処理 Vol.60 No.5 May 2019. 435.

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