円柱背面における伝熱機構 : 背面伝熱特性の変化
とはく離せん断層の関係
著者
布施 肇, 小山 隆行, 河野 行雄, 加治屋 厚廣
雑誌名
鹿児島大学工学部研究報告
巻
28
ページ
1-12
別言語のタイトル
Heat transfer mechanism on the rear surface of
a cylinder : relations between a change in
heat transfer characteristics and a separated
shear layer
円柱背面における伝熱機構 : 背面伝熱特性の変化
とはく離せん断層の関係
著者
布施 肇, 小山 隆行, 河野 行雄, 加治屋 厚廣
雑誌名
鹿児島大学工学部研究報告
巻
28
ページ
1-12
別言語のタイトル
Heat transfer mechanism on the rear surface of
a cylinder : relations between a change in
heat transfer characteristics and a separated
shear layer
円柱背面における伝熱機構
一背面伝熱特性の変化とはく離せん断層の関係一
布 施 肇 ・ 小 山 隆 行 ・ 河 野 行 雄 *
加治屋厚麿
(受理昭和61年5月31日)HEATTRANSFERMECHANISMONTHEREARSURFACEOFACYLINDER
−RmATIONSBETWEENACHANGEINHEATTRANSFERCHARACTERISTICS
ANDASEPARATEDSHEARLAYER−HajimeFUSE,TakayukiOYAMA,YukioKAWANO*
andAtsuhiroKAJIYA Inordertomaketheheattransfermechanismclearinseparatedflows,thedeformationofthes
e
p
a
r
a
t
e
d
s
h
e
a
r
l
a
y
e
r
,
t
h
e
v
e
l
o
c
i
t
y
d
i
s
t
r
i
b
u
t
i
o
n
i
n
t
h
e
d
e
a
d
w
a
t
e
r
r
e
g
i
o
n
,
a
n
d
t
h
e
p
r
e
s
s
u
r
e
d
i
s
t
r
i
b
u
t
i
o
n
aroundacylinderweremeasured、Thiscylinderhasbeenusedasatypicalexampleofbluffbodies・
Usingthoseexperimentalresults,theindividualfactorsconcernedandtheirinfluenceswerein-vestigate。、 Theseresultswillbeusefultoclarifytheheattransfermechanism. 1 . 緒 目 比較的高レイノルズ数におけるはく離流れの熱伝達 は工学的に重要な問題であるが,その流体力学的複雑 さのために熱伝達機構の解明はきわめて困難である。 円柱の背面における熱伝達に関しても多くの研究が報 告されているが,それらの結果は必ずしも一致せず, その原因についても不明な点が多い。関係する個々の 要因とその影響を検討することによりはく離流れの熱 伝達機構の解明も可能と思われる。 本論文は円柱背面熱伝達の特性が変化する場合の 「はく離」せん断層の状態,死水域内の流速分布およ び圧力分布などの変化を測定することにより,背面熱 伝達に影響する種々な要因とその影響経路を見出し, さらにこれらより伝熱機構の解明を試みたものであ る。ここに報告された資料は比較的初期の頃より当研 究室で行なわれた実験結果を総括し,主として広い視 野から多角的にその要因を求めたもので,それらいく つかの問題点の中には,すでに解決され詳細には機械 学会論文集')'2)に報告されたものもあるが,今後さら *都城工業高等専門学校 に深い研究を必要とするものもある。何分,背面伝熱 機構は複雑で,広い影響領域をもつものであるから, このように種々の要因を包括し,系統的に追求して相 互の関連を見る立場とその個々の要因を深く詳細に求 める方法との両面からの追求が必要と考えられる。本 論文は前者の立場である。 2.実験装置および方法 実験の対象とした円柱径dは20mm(#20),lO mmMlO),7mm(#7)の3種類で,これらに対 し使用した風洞は吹出し型の二次元風洞で,それぞれ の円柱径に対するノズル出口の寸法やブロッケージ比 などは表1の通りである。今後,各実験は表lに示し た記号で表わすことにする。表に示された主流の乱れ 強 さ の 最 小 値 と 最 大 値 は そ れ ぞ れ 実 験 し た レ イ ノ ル ズ 表1 記号 A B C , E 円柱径(画) 20 10 10 7 7 ダクト寸法(庫) 400x80 230x70 Z30x40 230x70 l54x72 ブロッケージ比 0.05 0.043 0.043 0.030 0.045 乱れ強さ(x) 1.00-0.80 0.57-0.20 0.56−0.38 0.57-0.20 0.34−0.18 レイノルズ敬xlO寺0.71−2.95 0.67−2.91 0.65−2.68 0.50-2.17 0.77-2.80鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 2 8 号 ( 1 9 8 6 ) 2 ①テストセクション ②供試円柱③ノズル④整流胴⑤送風機 数の最大値と最小値に対応している。円柱軸と垂直方 向 の ダ ク ト の 高 さ を h と し た 場 合 , ブ ロ ッ ケ ー ジ 比 。/hはいずれの場合も0.05以下である。なお,円柱 軸 と 平 行 方 向 の ダ ク ト の 幅 l は A と C が 4 . で そ れ 以外は7.である。 図lは風洞の一例で,いずれの場合も整流され一様 流が得られている。この風洞測定部の流れに直交して 置かれた図2に示す加熱円柱によりその表面温度を測 定してそれより局所熱伝達率を求め,さらに定温度型 熱線流速計により,円柱背面の流れ,せん断層厚さ, 乱流への遷移の位置,渦形成領域(以後,形成領域と 略記)の大きさなどを求めた。 図 1 風 洞
f
:
戸
=
W
踊
l
壷
≦
①テフロンテープ②アラルダイト③クロメル線 ④第一熱電対⑤第二熱電対⑥電圧測定線⑦ベークライト棒 図 2 加 熱 円 柱 ① ② 3 0 0 . ③ ③ て熱流束qを求める。測定円柱を回転して,各角度 における円柱壁温と気流温度の差を測定して,所要レ イノルズ数に対する局所ヌセルト数Nu8が次式によ り求められる。 0.861VNuβ=入9(Tw8−Tg)汀L
こ こ で I = 供 給 電 流 T w 8 = 円 柱 壁 温 V = 供 給 電 圧 T g = 主 流 温 度 L=電圧測定長さ入g=主流の熱伝導率 β=前方淀み点よりの角度 である。 な お 図 3 は ク ロ メ ル 線 に よ る 加 熱 帯 を ク ロ メ ル 薄 板 と考え,テフロンの熱伝導率も考慮した場合の円柱軸 方向表面温度の分布を,もっとも条件の悪い場合につ いて示したものである。電圧測定線は線径0.03mm を使用し,円柱の等温線に沿っているため,この測定 線 に よ る 軸 方 向 熱 伝 導 の 影 響 は 無 視 で き る も の と 思 う。 図 3 円 柱 軸 方 向 壁 温 分 布 図2は実験に使用した加熱円柱で,所定の直径の ベークライト棒にピッチ0.3mm,深さ0.1mmの溝 を掘り,これに0.03mmのクロメル線を巻きつけて 加熱面を作る。この加熱面中央部の長さL=10mmの 部分を供試伝熱面として,その両端より電圧測定線を 図のように取り出す。加熱面はエポキシ樹脂であるア ラルダイトで固定して厚さ0.2mm程度になるまで真 円に旋削する。その表面に厚さ0.16mmの耐熱テフ ロンテープを巻いた後,0.03mmのアルメル・クロメ ル熱電対を第一熱電対として,円柱軸に平行におき, これを厚さ0.16mmのテフロンテープで巻くことに より固定する。さらに第二熱電対を,第一熱電対と半 径方向一直線上にその接点がくるように円柱軸と平行 において最後にこれを厚さ0.08mmのテフロンテー プで固定する。表面温度はこの2つの熱電対の温度よ り算出される。主流と直角におかれた円柱の加熱線に, 直流定電流電源より電流を流し,電流と電圧を測定し ひ=0戸0画O再OぺJ式JベJ画0画0画0−0国0国。や 8↑へ﹄I
1
3 b O 9 【 ]円周方向の熱伝導誤差を極力防止するため,加熱線
として線径0.03mmのクロメル細線を使用し,前方
淀み点での主流温度との差を5.C前後になるように
加熱電流を調節した。筒
90 1.0 O20 oRe■0.82x10b ●Re幸3.36xlOb 8 0.5 8 3 . 実 験 結 果 3 . 1 円 柱 表 面 圧 力 分 布図4はそれぞれ実験条件(A∼E)に対応する場合
の円柱まわりの圧力分布を示す。横軸のβは前方淀み
点からの角度,縦軸のCpは円柱表面と主流との静圧
の差を主流の動圧で除した圧力係数を示す。円柱背面
で#7の実験条件Dの場合がいくぶん高い圧力を示 している。これは後で述べるように形成領域の大きさ によるものと思われる。 a。 00 0 30 (D) 。 U g 【 ] 9 −0.5︾
J6− −1.0、
歩
−1.3 い) −1.0 −1.3 1.0 1.0¥恥 0 010(4.) ORe=0.80xlOb ●Re準2.80xlOb 0 0.5 0.508も
ユU ユ。 0 0 3 0 6 0 8 8 8 −0.5 150 8・lZO 布施・小山・河野・加治膳:円柱背面における伝熱機構 (E) 図 4 円 柱 表 面 圧 力 分 布 −0.5 0.5。
割
処
.
.
.
.
.
。
‘
.
、
'
9
.
1
詩
毎
F
8
鋤
8
8
8
8
8
蕊
-1.0 1.0 =1.3 1.3 (B) (C) 1.0 ユUn︾ 0.5 h 【 D q 【 I b O 9 【 ] 。﹄ Ⅵ抄「8
9
回
。
4 坐ヱユ凸 3.2円柱表面温度分布と局所熱伝達率 図5は実験条件(A∼E)に対する円柱表面温度分 布を示し,それぞれのレイノルズ数について,角度β に対する表面温度の変化が示されている。これらの図 において,縦軸は各角度における壁温と主流温との局所温度差(Two−Tg)と前方淀み点における壁温と
主流温との温度差(TWIツーTg)との比TRを示す。前方淀み点において,実験によるNuo/,/ 百百の値と理
論値Nuo/掘記=1.14Prq4との差は各実験とも約3
%以内である。ただしReはレイノルズ数,Nuoは前 方淀み点におけるヌセルト数,Prはプラントル数で ある。図において‘7の円柱に対する実験条件Dの場合,レイノルズ数Re=1.02×104以下の測定結果
においては,最高温度比が約2.3を示す。この値は‘ 2.4 O20 Re陶踊麺巡
2.0 1.0 0.8 Jpr ゾロ朗9[雷
磯
9
:
。
崖﹄認
1.5 1.0 0.8 0 3 0 6 0 9 0 e ・ 1 2 0 1 5 0 1 8 0 (A) 0 3 0 6 0 2.4 2.4 Z、4 010(7.) Re 0.78x10b O、98 1.31 1.83 2.77 3.03 010(4.) Re 0.8lx1 0.9フ 1.28 1.83 2.11 2.80 906.120150180 (D)熱
0.8織蕊蕊
2.0 9 0 e 、 1 2 0 1 5 0 1 8 0 (E) ロ▽O◇△▲ 2.0 □▽O◇●△潔
8瑳
。
鶏
至
△
&
O
o
o
O
A
塵﹄ 崖↑6
号
出▽p8O ▲△逗甥苓半︺ ]。 1.5 1.5 坂gboc6 F、 I 弓 1蛙
8
同
鯉
壷
鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 2 8 号 ( 1 9 8 6 ) 図 5 円 柱 表 面 温 分 布 の 変 化 3 0 6 0 0 3 0 6 0 UQ
Q
p
9
9
月
9
9
wlmd◇ oずゆ.、鉛
◇●
● ● 1.0 0.8 90e,120150180 (B) 908.120150180 (C) 0 3 0 6 0 1.0 2.4 エト 区↑ 0.86 1.0蝋要
J r O7 Re O、73xlOb 1.00 1.29 1.77 2.14 2.83聖
!
織毒
2.0 2.0 O◇△□▽● ▽ E ▽ 0泰
茎
■ ooooOQ △△| ロ △ △ △縦
&
i
i
i
l蛸瑞魂
ロロ▽▽●● 叱雨”●●’ ● | ● 8 1.5 1.55 る。一般に各円柱に対しては,レイノルズ数の増加と ともに,130.付近の温度比が低下する傾向にある。 しかし図6の例のように同じレイノルズ数に対して,
平田ら3)の直径41.6mmと著者らの10mm(実験B)
の温度分布を比較した場合,背面温度はかなり異なり, 本実験でははく離点から単調に温度が減少するけれど も,平田らのそれは90.<β<120°は一定でありβ> 120.で温度は減少している。これは主流速度の違い によりせん断層の形状が相違するためと思われるが, この問題についてはさらにせん断層などの特性を検討 する予定である。 図7は各円柱の360°にわたる温度分布の一例でほ ぼ良好な精度で円柱が作られていることを示す。 図8は局所ヌセルト数の変化の一例で‘10(7.) のBの場合である。 図9は各円柱前方淀み点におけるNu−Reの関係を示したものであり,理論値Nu/1/T記=1.l4Pro4とよ
く一致している。 図10は各角度におけるNu-Reの関係の一例とし 7のEおよび#10(7.)のBの場合が2.1である のに比べて高く,特に120。∼150。付近ではDの方が Bより著しく高い。これも後で述べるように,形成領 域が後方に伸びて熱伝達が悪くなったためと考えられ 1.0 0.9 2.2 2.0 EBDbp2gob。冊織;
塵↑ 1.5 鋲 0 o○Q8 1.0 0.8 0 3 0 6 0 9 0 1 2 0 1 5 0 1 8 0 8. 図 6 温 度 分 布 の 比 較 2.2 2.0J
;
V
i
2.2 2.01808.270360
(D)品0,。(7.)9
名…“x'0,go
:
菟
O O C算
:
手 詔。。 』 に:
、
γ
:
。 ○ ○ c 塵﹄ 塵﹄ 1.5 1.5聯
L jd
9
秀 麗
亀
亀
!
、
夕
布施・小山・河野・加治屋:円柱背面における伝熱機構 図 7 全 円 周 温 度 分 布 1.0 0.9 ○○ olO(4.) Re=0.81×1000 01808.270360
(B) 90 01808。270360
(A) 90 1. 90 1.5 ● ● ︵”“﹄︽ロ″﹄ 2.2 2.0;
三V=
、
V
室
0 崖﹄ 塵↑O○○
90 0 5卿
n 吋 C1808.270
360 (C)8
⑨ 、 “ 1.0 0.9呉慰
:
減
1.0 0.90 6 図8局所又セルト数分布 2 180 β=180。 図llNuとReの関係 2 a△△△八
○O△▽
コヱ & △ 150 a < > 0 − 9 8−癖l鋪l郷︲
。・・叙〆鰯
△△叔岬郷
137雌〆函詔
哩“”〆級沙郷
。▽。︲蝶淋燃
△糾仏函好1
.伽燃蛎蝿
桝桝蛎11
102 コヱ 100 6’
0
b
R
e
5 7 2 3 4 図9NuとReの関係(β=0。) 50 て#10(7.)のBの場合を示したもので,β=90° より180°にわたり順次勾配が変化している。 図11はβ=180.におけるヌセルト数とレイノルズ 数 と の 関 係 を 実 験 A よ り E ま で の 全 部 に 対 し 示 し た ものである。円柱径の小なものほどより低いレイノル ズ数のところで式(1)に平行な線からはずれ,式(2)が示 す勾配となる。 Nu=0.229Pro・4Reo・63 (1) Nu=CReⅢ(n=1.0∼1.15)(2) この変化の生じる点はレイノルズ数で表わすと,円 柱径により異なるが,流速では各円柱とも同一の流速 30m/s付近にあるが,このような現象に関しては今 後 さ ら に は く 離 せ ん 断 層 に つ い て の 微 視 的 検 討 を 要 す る。また,各実験結果ともある部分は式(1)の線に平行 であるが,同じレイノルズ数に対しては,円柱径によ り異なったヌセルト数の値を示している。そしてRe =2.8×104付近でほぼ同じヌセルト数の値に近づく 傾向にある。これらの原因については,後流のフロー パ タ ー ン の 測 定 結 果 も あ わ せ 考 察 の と こ ろ で 検 討 す る。 , 、 H 《 1 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 2 8 号 ( 1 9 8 6 ) 3 Re 2 olO(7.) 8 . 9 0 . △110C O130. ▽150. ◇180./
・
;
,
/
室
/
づ
馨
〆 。之 〆 5 102 7≦異乙ンる
54
lOb 4 図10NuとReの関係(β=90。∼180。) 2 7 4 Re 3 4 232コヱ、864
2 3 . 3 円 柱 後 方 の 流 れ 本実験では円柱背面の流れの特性を調べるため,図 12に示されるような方向に熱線プロープを移動させ た。 円 柱 中 心 よ り 流 れ 方 向 に X 軸 を と り , 円 柱 中 心 よ りの距離をX/dで表わし,これと垂直方向のX軸よ りの距離をY/dで示す。X軸上のX,∼X5の各位置で, Yの正方向にプローブを移動させた場合と,X軸上で Xの正の方向にプローブを移動させた場合,およびせ ん 断 層 の 中 心 付 近 を S 方 向 に 移 動 さ せ た 場 合 の 3 種 類の測定を行なった。X,∼X5の測定は,せん断層の 形状と後流内Y方向の速度分布を求めるためであり, 68l0b布施・小山・河野・加治屋:円柱背面における伝熱機構 7 図12熱線風速計による測定位置 X 軸 上 で の 測 定 は 中 心 線 上 X 方 向 速 度 分 布 , S 方 向 の測定は乱流への遷移位置を求めるために行なわれ た。いずれの場合も熱線は円柱軸と平行な位置に置か れている。 図13はレイノルズ数Re=0.73×104におけるX,∼ X5のY方向速度分布であり,速度は熱線風速計によ り求めた平均流速で,図ではこれをUで示し,主流 速度はUooで表わしている。 図14はこれらの図より求めた形成領域の形状であ り,図15はRe=0.73×104におけるX軸上でのX 方向速度分布を各実験条件に対して比較したものであ る。図13と図14より次のような傾向がみられる。す なわち円柱径が小さくなるほどせん断層の厚さは薄く なり,せん断層内の速度勾配は急となって,形成領域 の長さは長くなっている。なお,せん断層の形状の決 定にあたっては,その外側の境界は各速度分布で流速 最大の点より求め,内側の境界は速度分布でほぼ一様 な速度から急に増加し始める点より求めた。形成領域 の終りは両せん断層の交わる位置と考え,この終りの 位置は図15に示すようにX軸上のX方向速度分布が 一様になり始める点から決定した。図15でも同様に 速度分布が円柱径によって順次変化し,円柱径の小に なるほど速度分布の勾配がゆるやかとなり,円柱から 速度の増加し始める点までの距離が長くなっている。 そして円柱表面近傍の無次元速度は円柱径が小さい程 小 と な っ て い る 。 図16はRe=2.8×104におけるX2∼X5のY方向 速度分布を示し,図17は形成領域の形状を図示した ものである。図18はRe=2.8×104のレイノルズ数 に お け る X 軸 上 の X 方 向 速 度 分 布 の 各 実 験 条 件 に 対 する結果を比較したものである。このレイノルズ数で は速度分布と形成領域の形状における各実験間の差は あまり認められない。 以上の説明のようにRe=0.73×104では速度分布 および形成領域が円柱径により順次変化し,Re=2.8 ×lO4ではほぼ同一になる傾向は図11の熱伝達の傾 向と対応関係にある。なお図14の左上に示した印は 各実験においてせん断層内の流れが層流から乱流へ遷 移し始める位置を示し,これは図19の波形に示すよ うにせん断層内で熱線プローブを移動させた場合,速 度変動波形の中に遷移波の現われ始める位置(図19 (2))より求めたものである。 4 . 考 察 以上の実験結果は次のように考えられる。まず30 m/s以下の流速では後方淀み点におけるヌセルト数と レイノルズ数の関係は式(1)の示す勾配をとるが,それ 以上では式(2)が示す勾配になり熱伝達はよくなる。 この原因としては高速によるせん断層の特性変化と 考えられるが今後の研究を要する(機械学会論文集2) 参照)。 次に流速30m/s以下で式(1)に平行であるが,一致 しない線も得られているのは,円柱径と主流乱れの大 き さ と の 相 互 の 関 係 が 影 響 し た た め と 思 わ れ る 。 た と えばj20の円柱Aの場合は主流乱れ1%が影響して 遷移点の位置がはく離点に接近(x/d=0.2)し,低 レイノルズ数においても高レイノルズ数の場合と同じ 形成領域の形になっており,このため後方淀み点の熱 伝達はよくなったものと思われる。このj20につい ては,さらに乱れ強さ0.5%,ダクト寸法400×200 mmで実験を行ない,ヌセルト数がこれより約15%低 い結果(図11のF)を得ている。 このように円柱径の比較的大きい‘20の場合の主 流の乱れ強さ0.5%から1%への変化に対して,後方 淀み点の熱伝達が大きく変化した原因については機械 学会論文集')で報告したように,主流乱れの高周波成 分 に よ り は く 離 せ ん 断 層 が 乱 流 へ 早 く 遷 移 し た た め そ の 拡 散 効 果 が 大 き く な っ た た め の も の で あ る こ と が わ かった。 ‘10のB,Cの場合は,Re=1.5×104以下で式(1) に一致するが,同じ0.5%程度の乱れ強さであっても j7のDの場合は図1lのように式(1)の線より約20% 低い値を示す。そして乱れが0.3%に減少した‘7
第28号(1986 8 ひ-《Jー〔>一四 1.4 Y/d 白﹃〆 。 p︻]ワ 。〃14器凶I。 ロ﹃]ロ 020 ○コ。 Re=0.73xlO X/d ○ 0 . 7 6 8 ダ、 声 ヨ ロ 0 1.0 □ 1 . 0 △ 1 . 1 5
y4
335 ▽◇ 1.83 』 言 8コへ。P。 卜資トーIrl 0 0.5J6
= 1 3]へ
﹂八
E凸
鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 図13後流の速度分布 Y/d Re=0.73×lOb 少 一 〔 > 一 に 0 0.5 1.0 (A) 0.5 1.0 0 Y/。 Y/d B) 1.4 4 ▽I
静
010(4.) ゥ7廷
Re=0.73xlO匂直
二
二
M
I
X/d X/d 0 0 . 6 1.0 0 0 . 6 1.0 △ 0 . 8 □ 1 . 0 ▽ 1 . 3 △ 0 . 8 □ 1 . 0 ▽ 1 . 3 ▽ 8コへ。 8コへ.’1
0.5 0.5 1.0 0.5 【D) 8目8厘f戸 1.0 0.5 C) 0 09
#
布施・小山・河野・加治屋:円柱背面における伝熱機構 0. 図16(B) 1.0 ロヘン O、 0.5 8コヘコ ー 0 0 0 . 5 1 . 0 1 . 5 1 . 7 X/d 図l5X方向速度分布(Y=0) 0 図 1 4 形 成 領 域 の 形 状 較することにより検討した。この結果,図5のBと Cの温度分布においてβ=100。∼150。付近で違いが認 められるけれども,図11の後方淀み点の熱伝達には 差が認められない。 以上述べたように,また図11に示す通り,主流速 度を代表速度としたレイノルズ数に対しては後方淀み 点のヌセルト数の値が種々の条件によって変化するこ とがわかる。それで図13から図18に示した測定資料 より円柱後方淀み点近傍(約0.1.離れた位置)の流 速を求め,これを代表速度とした修正レイノルズ数を Reざとすると,図11のRe=0.73×lO4におけるA,B, のEの実験では,図20,図2lのようにフローパターンが変わり,ヌセルト数が高くなって式(1)の線に近づ
く。 このように乱れが増加したことにより背面熱伝達が 増加する場合と減少する場合の2通りあることが分った。この原因については論文')・2)である程度解決され
たが,なお未解決な問題(円柱径と主流乱れに関連し
て,形成領域の変化とせん断層の特′性の変化が関係す
る)があるので今後さらに深い研究を必要とする。
なお,ダクト幅の背両熱伝達に与える影響は,#10
のダクト幅7.の実験Bとダクト幅4.の実験Cを比 1.4 Y/。岸
二
:
二
寮
:
f
1.4綴毒
8コヘコ ー Q9 ▽ 0 0.5 1.0 1.0△
_
△
全
-
7
誉
よ
-
汀
廻
6門凸戸Z。 8コへ。 − 0.5 0 1.0 き=て芦』<’-0弓OQO。O. 0 0.5 図16(A)自司]
第28号(1986) 10 g o 4四句
図l8X方向速度分布(Y=0) 4 o7 Re=2.80xlO‘.藤
猿
三茸
9コ
、野
X/。 0 0 . 6 1.0 U八︼ヨ 0 △ 0 . 8 □ 1 . 0I
8コへ。 8コヘコ 9r諾
:
蹴
鞠
雲
り
0.5 0.5fJ
○句
。つ
邑団
m瞳う 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 。︻︼ 図17形成領域の形状 Re=2。⑥
Cl︲卜○ 1.0 0.5 0 0.5 図16(E) 0 0 Y/d Y/。 図16(c 図16後流の速度分布 X/d 0.9 0.8:
-
.
-
8
-
.
-
9
≦
f
窯
0 ◇ ◇ △ 1.5 7(4.) 0(4.) 0(7.) 0 Uへ]へ﹀。 5 .8コへ. 08
5つへ〆0
0 ◇□ 口銀 4.) 010(7.) 巾20 1.0 可<>△ 5 0.5X/d=0.573
(2)fs=3700HzY/d=0.608
*菰'ぷ罪A:ILi蓬、j審
綱ImXiW卿慌鰯L
VV蝋馳蝿獣戯溌睡
# W 恥 剖 脈 : 蒲 蕊
11 0.5 ︵叩︺︵叩﹀ O I猶画画雁猶幽
瀬11W耐眺胴用
熟幽削鵬訓卿
① 7 . ● ● ⑥
o
R
e
=
0
.
7
3
×
l
O
l
+
(
D
)
③
⑤
③
●
O
O
O
O
o
oRe=0.77xlO9(E)③③●○
○○ ③ o ④ ③ ● ○ ○③ ⑥ ⑥ ⑬ C
O。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
。
○
○
○
、③⑧、⑥ 、守 5砺叩
8コ、。 − I q00.5’‐0X/d1.51.7
図20,とEの速度分布の比較(1)f=400HzY/d=0.554
輪誠躍
0.9 申10(B〕 巾20(A〕 巾10(B) 巾7(D) ロヘェ 9.5、
﹃ 〆ルf神'瀞
〆 1−0 7 布施・小山・河野・加治屋:円柱背面における伝熱機構 10Z 7 5 一 X/d 図 2 1 , と E の 形 成 領 域 の 比 較 〆 3 Re 2.8xlOl¥ 0.73e□◇O●
違するが,Re=1.0×104ないし1.5×104の付近までNu=CReq63の形で変化し,それ以上では円柱径によ
りNu=CRen(、=1.0∼1.2)の形をとるものがある。 その限界値はレイノルズ数では円柱径により異なる が,主流速度では大体30m/s付近にある。 (2)本実験の範囲で,円柱背面の熱伝達を支配する ものはせん断層の形状などの特性であり,同じレイノ ルズ数であってもせん断層が薄く,形成領域の長いも のほど背面の熱伝達は悪い。そしてこのせん断層の形 状はせん断層の遷移の位置により変化する。多
a
乏 〆 3 S 7 1 0 3 3 5 7 1 0 肖 Res★ 図22ReKに対するNuの関係 一 5 . 結 論 レイノルズ数0.7×104<Re<3.0×104,流速10m/ s∼60m/sの範囲で,円柱径20mm,10mm,7mmの 3種類に対して,円柱背面の熱伝達と背面流れとの関 係を実験的に求めた結果,次の結論を得た。 (1)後方淀み点でのヌセルト数は,円柱径により相 C,DおよびEのヌセルト数の値およびRe=2.8× '04の高レイノルズ数におけるヌセルト数の値は図22 のようにNu=CRe誉0.5の式で整理される。07(7.)Re=7300
図19遷移点における波形 I1IlX/d=0.655
Y/d=0.622
(3) 1 112 鹿 児 島 大 学 工 学 部 研 究 報 告 第 2 8 号 ( 1 9 8 6 ) (3)本実験におけるNu=CReo・63の範囲,すなわ ち0.7×104<Re<1.5×104の範囲において同じレイ ノルズ数に対する後方岐点のヌセルト数は,円柱径と 主流速度によっても異なるが,0.3∼0.5%程度の主 流乱れの変化により15∼30%程度変化する場合があ る。 (4)主流速度を代表速度としたレイノルズ数の場合 後方淀み点におけるNu=CRenのCとnの値は速度 範囲とその他の主流条件により変化するが,後方淀み