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歴史学習における理解の変容の評価法 : 歴史理解の観点の分析を手がかりとして

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(1)

社会系教科教育学会

『社会系教科教

育学研究』第

8号 1996

(pp.

卜8)

史学習における理解の

史理

点の

を手が

変容の評価法

りと

して

A Study on the Evaluation of History Understanding in the Social Studies Lessons

―Analysis of Cognitive Frames for History Understanding

1。目 

歴史学習

では

,子どもの歴史理解

を深めることが中

心的

目標

となっている

。この

目標は

,具体的な歴史事

象の理解に支

えられ

て達成

され

ていく

。歴史理解は歴

史事象の理解の上位に

あって

,理解

(知識や

表象

)の

階層的構造

を形成

していく

。しか

し,

この形成は階層

毎に

下層か

ら順

を追ってな

され

るの

ではは

ない。一方

でこの

ような階層構造

を歴史理解の縦軸の尺度に

とれ

,他

方では横軸に内容,

すなわ

ち一定の概念を中核

とするテ

ーマや領域

を指標と

した理解の

尺度が想

定で

きる

。歴

史理解は

階層性と内容領域性

との

2つの性

を同時にもちながら

学習の

初発

段階か

ら上記の縦

軸と横

軸の要素とがいわば綾

をなすかたちで互いに有

機的関係

をも

つ組織的構造的なものへ

と形成され

るの

である

この

ような歴史理解の深

化を

,子どもに確

実に

達成

させていくためには

学習の途上あるいは終結段階で

の子どもの理解の様相や

変容

,教師が

的確

に把握

ていなければな

らない

。なぜな

ら,

子どもの理解の深

りが把握

できていなけれ

目標の

達成度の判定す

なわち評価ができないか

らである

。また

目標の着

実な

達成に向けて

,子どもの

理解の

態に合

った

指導

を行

ていくには

,教師が子どもの歴史理解の様相

を的確に

えてお

くことが

不可欠だか

らである。

以上の理

由か

歴史学習

では歴史理解の様相や変

容を捉

える方法

,すなわ

ち評価法

を確

してお

くこと

極めて重要と考

えられ

る。

これ

まで歴

史理解の

深ま

りは

知識の

量や質,推理

力や資料活用能

力などを指標に

して捉えられてきた

いずれ

も重要な指標であるが

これ

らの

指標だけでは

理解の的確

な把握はできない

。その他の

重要な指標

して

歴史理解の

「観点」

゛1

あげられ

Oとこ

ろが

後述す

るよ

うに

この

「観

点」は歴史理解に

おいて極

て重要なは働

きを

しているにもかかわ

らずその

意義

充分に認められ

そこで本稿では,

てこなかった

歴史理解の

「観

点」に焦点

を当て,

−1−

寺 

(福井大学)

尾 

健夫

この

に基

づい

ども

史理

を探

を試み

こで

は特

下の

2つの

に焦

点づ

て解

を試

①匚

」に

く歴

史事

解の

変容

分析

方法

この

方法

って

られ

る情

習指

方法

では

事例

して

中学校

科歴

史分

元匚

日清

・日露戦

と近

日本

」の

を取

り上

げた

。この

業の

詳細

と分

いて

別の

献で

して

る1

几本

稿

では

事例

業の

実践

結果

ては

この

文献

に依

して論

を展

開す

。対 

2.

1 

の観

解の

点は

もの

解の

を捉

える際

に鍵

とな

もの

稿の

中心

的な考察

対象で

ある。

でま

史理

点の

的性

を確

して

う。

れわ

史事

を理

解す

る際

歴史事

象の

や意

を行

。解

けで

,個

に既

の歴

史理

解の

点が

この

史理

点は

有の

って

され

いる

知識

を構

組織

して

束ね

る働

しなが

ら個

人に

され

いる

もの

ある

史理

解は

史事

象の

積み

重ね

を通

して深

られ

この

では

人は

有の

点に基

て新

情報

と既

有の

を照

これ

らを

相互

に関

なが

ら再構

深め

いる

思わ

しか

し,

解の

り本

深ま

りは,

有の

理解

点の

発展

よっ

もた

され

と考

られ

。つ

り,

象の

では

知識

や表象

を結

けた

り束

りす

る働

をす

る観

点そ

もの

り多様

質の

いもの

と発

とが

解の

化の

中核

なす

と考

られ

ある

史理

おけ

る観

点の

いて

分析

事例

り上

げた

業での

生徒

史理

変容

手が

(2)

に し て ,さ ら に説 明 し て い こ う。 2 .2  授業 事 例 事 例 授 業 「 日 清 ・ 日 露 戦 争 と 近 代 日 本 」 の概 要 は以 下 の よ うで あ る2)。 < 単 元 目 標> ① 日 清 ・ 日露 戦 争 は 日 本 の国 際 的 地 位 を 向 上 さ せ ,産業 革 命 に よ る 経 済 発 展 を も た ら し た が , 朝 鮮 ,中国 の 植 民 地 化 と 国 内 農 村 の 貧 困 化 や労 働 条 件 の劣 悪 化 ,公 害 の 発生 な ど の相 反 す る二 面 性 を も っ て い た こと に気 づ く 。 ( 理 解 ) ② 学 級 全 体 の学 習 問 題 や 自 分 の追 求 問 題 を 資 料 を 利 用 し て 解 決 す る 課 題 学 習 を 展 開 す る な か で ,調 査 力 ・ 討 論 力 を 伸 ば す 。 ( 方 法 的 能 力 ) < 単 元 の 中 心 発 問 > 厂日 清 ・ 日露 戦争 を ,当時 の人 々 は歓 迎 した だ ろ うか ?」 < 授 業 過 程> 授 業 は中 心 発 問 を 基 軸 に し て ,以 下 の 3 段 階 で 展 開 し て い る O歴 史 理 解 の変 容 分 析 の手 が か り と な る の は ,第 1 段 階 と第 3 段 階 の作 文 で あ る。 第 1段 階  研 究 問 題 の設 定 ( 2時 間 ) < 発問 を め ぐ る討 論 と初 発 段階 の 歴史評 価 の 作文 第 2 段 階  研 究 問 題 の探 求 ( 3 時 間 ) < 資 料 に 基 づ <調 査活 動> 第 3段 階  研 究 レ ポ ー ト の 作 成 ( 2時 間 ) < 終 末 段 階 の 歴 史 評 価 の作 文> 2 .3  観 点 を 基 に し た 歴 史 理 解 の モ デ ル 事 例 授業 で は ,中 心 発 問 匚日清 ・ 日 露 戦 争 を 当 時 の 人 々 は歓 迎 し た で あ ろ う か」 を もと に ,生 徒 が 日 清 ・ 日露 戦 争 の評 価 を 段 階 的 に 行 い な が ら, 近 代 日 本 の二 大 戦 争 の理 解 を 深 め て い く 構 成 に な っ て い る。 こ の 中 心 発 問 に答 え る に は, 日 清 ・ 日 露 戦 争 に つ い て の 理 解 ( 解 釈 や 評 価) が 不 可 欠 で あ る。 生 徒 の 作 文 の 分 析 か ら は ,理 解 の内 容 は生 徒 間 で 多 様 な こ と が わ か る3)。 筆 者 の考 え る 歴 史 理 解 の モ デ ル を 図 1 に 示 し た 。 こ の 図 のA の レ ベ ル に 示 す よ う に ,授 業 で は生 徒 か ら政 治 的 ,経 済 的 ,社 会 的 ,あ る い は階 級的 視点 など の様 々 な 観 点 が 提 出 さ れ ,生 徒 は 日 清 ・ 日露 戦 争 に つ い て こ れ ら の 観点 の も とで 理 解 を 深 め て い っ た と 思 わ れ る。 し か し こ の 授 業 の場 合 ,中 心 発 問 と し て 日 清 ・ 日 露 戦 争 の評 価 を 求 めて い る こ と か ら ,よ り 本 質 的 な理 解 は, よ り 基 底 的 な 観 点 で あ る 「 戦争 」 と い う 観点 の 発 展 を 通 し て 実 現 さ れ て い る と考 え ら れ る。 つ ま り ,日 清 ・ 日 露 戦 争 の学 習 を 通 し て , 丁戦 争 」 と い う 言 葉 で 表 さ れ る知 識 自 体 が , そ の 意 味 内 容 の拡 大 や 多 様 化 ,他 の 知 識 (概 念 ) と の関 係 の 緊 密 化 な ど に よ って 発 展 し て い る と 考 え ら れ る ので あ る112. そ し て ,学 習 の 終 末 段 階 で は,発 展 し た 「 戦 争 」 と い う 観 点 の も とで組 織化 構 造 化 さ れ た 歴 史 理 解 を 通 し て , 日 清 ・ 日 露 戦 争 の よ り 深 い理 解 が な さ れ る よ う に な っ て い る ので あ る。

よ り 汎用 的な歴 史理 解の 観 点 図 1  歴 史 理 解 の モ デ ル 観 点 「 戦 争 」 は 歴 史 事 象 の理 解 に 際 し て よ り汎 用 的 に利 用 で き る観 点 で あ り ,日 清・ 日 露 戦 争 の 理 解 の た め の 鍵 概 念 と し て ,生 徒 に授 業 の 初 発 段 階 か ら 利 用 さ れ て い る と考 え ら れ る 。 ま た ,生 徒 は小 学 校 や 中 学 校 の歴 史 学 習 で 既 に‘「 戦 争 」 の観 点 を 獲 得 し 発 展さ せ て き て い る。 例 え ば ,こ の 2 つ の戦 争 の 他 に, 源 平 の 戦 い ,応 仁 の 乱 ,関 ヶ原 の 戦 い ,太 平 洋 戦 争 等 の 戦 争 が あ げ ら れ る 。 こ れ ら の 学 習 過 程 で は ,戦 争 が も つ 機 能 や 意 味 を ,殺 し 合 い ,破 壊 ,侵 略 , 社 会 的 混 乱 ,支 配 者 に よ る 政 権 の争 奪 ・ 交 代 ,民 衆 や 国 民 生 活 の 窮 乏 , 外 交 的 断 絶 や 国 際 的 台 頭 へ の節 目 ,経 済 的 破 綻 と い っ た 様 々 の概 念 で 捉 え て い る 。 そ し て こ れ らを 下 位 の 観 点 と し て 匚戦 争 」 の 観 点 に 包 含 あ る い は結 合 さ せ て い る と 考 え ら れ る。 こ の 前 提 の上 に ,授 業 で は 図 1 の B の レ ゛ ル に 示 す よ う に ,歴 史 事 象 の 理 解 を 通 し て 戦 争 の もつ 機 能 の 把 握 や 意 味づ け を 精 緻 化 し な が ら ,「 戦 争 」 とい う観 点 を よ り 一 般 化 し ,発 展 さ せ て い る の で あ る ( 図 1 の C のレ ベ ル ) 。 も ち ろ ん, 日 清 ・ 日 露 戦 争 に固 有 な 歴 史 的 意 味 や 特 徴 の 理 解 も重 要 で あ る 。 こ の よ う な 理 解 は ,観 点 を 具 体 化 や多 様 化 の方 向 へ と 発 展 さ せ る 。 し か し よ り 深 い 理 解 は,既 有 の観 点 を 発 展 さ せ な が ら 歴史 事 象 を 理 解 す る こ とで 行 わ れ る 。 具 体 的 な 歴 史 事 象 の理 解 を 通 し て ,既 有 の 匚戦 争 」 の 概 念 の 中 に , よ り 具 体 的 個 別 的 機 能 の 部 分 を 設 定 し て 包 含 し ,新 た な 意 味 を 付 け 加 え る。 同 時 に ,歴 史 理 解 に 汎 用 的 に 利 用 可 能 な 基 底 的 観 点 が さ らに 発 展 し ,歴 史 理 解 自 体 を よ り 高 い レ ベ ル へ と 発 展 さ せ て い る ので あ る。 − 2 −

(3)

3。方 

3.

1 

歴史理解の分析方法

本稿の

目的は

,①

歴史理解の様相

を捉

える方法,②

この方法の適用によって明

らか

になった理解の様相の

評価

への

利用方法,

この

2つ

を解

明する

ことで

あった

解明の

手続きと

して

事例授

業の考

察をもとに①②の

方法を明らかに

この成果に基づいて

さらに①②の

方法が

満たすべき条件

を一般化する

。以下,

その方法

と手順

を説明する。

観点を指標と

した場合

歴史理解の深ま

りは

どの様

な方法

で捉

えられ

るだ

ろうか

。この場合,

歴史理解の

深ま

りを捉

えるには理解の

様相の

変容を捉える必要が

ある

。これには以下の

ような方法が考

えられる

一の方法と

して,

点の内容を分析者の側で定義

固定され

た定義内容

を指標

(外的基準)に

して子

どもの歴史理解の

変容

を判定

していく方法が考

えられ

。観

点の定義内容は,

事前と事後の子どもの記述や

発言の

内容

を総合的に分析

して抽出する場合

,専門

科学の体系化された知識に基づいて決定される場合

とが

ある

。どちらの場合も,予め定義づけられた観

を指標に

して歴史理解の変容を捉

える点で共通

してい

る。

二の方法は,

点を外的に定義せず,

事前と事後

子どもの記述や発言内容を別

々に分析

前後の特

を総合的に比較する方法

である

。これは記述的な分

方法であ

理解の典型的な特徴の説明には有効で

ある

しか

し,

理解の様相の

客観的判定方法

としては

さらに緻密な検

討が必要と思われ

るの

今回はこの

タイ

プの方法の存在

を指摘するにと

どめ

一の方法によれば,

歴史理解の変容を,さらに個

人の

レベルと学級

(学級集団)の

レベル

で捉

えられ

まず

個人の歴史理解の

変容を捉

える場合では,次

3つの指標

で理解の深ま

りが捉

えられる

。す

なわ

①観

点の保有数の

変化

,②観

点の種類の

変化,③観点

間の関係の変化,

ある。

学級の生徒

全体の観

点の

深ま

りについても

,これ

3つの指標

で同様に捉えられ

る。

①②の指標

による分析は

,記述統

計的な方法で可能

である

。しか

し,

③の指標

で,は複

数の観

点同士の関

づけが必要であり

分析が複雑で,

これまで客観的

な判定が困難であった

。そ

こで

,この問題

を解決す

方法

して

,個

人の観点の保有状況にもとづいて観点

間の関係

を分類

した

,個

人を特徴の

あるグルー

プに

分類する統計解析

手法である数量化Ⅲ類を利用

した

①②の基準に基

づく分析結果については

,既に別稿

で報告

した4

Oここでは③の

基準による方法の適用に

よって歴史理解の

深ま

りを分析

し,

本稿の

目的

える

3−

3.

2 

分析の手順

事例授業の分析では

歴史理解の

変容を歴史事象の

理解の

レベル

で捉

えることになる

。この場合,

日清

日露戦争が歴史事象に当た

生徒

による

日清

・日露

戦争の評価の観

点が歴

史事象の理解の観

点に当たる

数量化Ⅲ類は

,個体

と特性項

(ここでは前者が生

後者が観

点)

また

ときには特性項目と特性項目

が相互に該当

し合う関係

を行列表現

したデ

ータ

(該

する場合は

1,

うでない場合はO

した

2値の行列

タ)と

して得られた

とき,

そのデータ行列をもと

に行側

と列側の類似の

該当パ

ーン

を集め,

両者を同

時に分類する成分分析的な質的デ

ータの

解析

法で

ある

別名

,パター

ン分類法

とも呼ばれて

いる。また,この

解析法は

,データが織

りなす現象の縮図をその全貌が

理解

できる最小次

元の空間の

散布

図で表現

特性項

(観

点)

や個体

(生徒)

の関係の特徴

を視覚的に探索で

きる方法である5

。この手法では

,特徴の推定に,計

算で得られ

たカテ

ゴリ

・ス

コア

(観

点の数値)

とサ

プル

・ス

コア

(生徒の

数値

が直

接の手がか

りとなる。

この統計手法を利用

した歴史理解の

変容の分析手順

は,以下の通

りである

〈1〉子どもの研究計画書

(授

業の第

1段階)と研究

報告書

(第3段階

)の記述内容の分析

による観

の抽出

(外的基準の設定)

〈2〉数量化分析のためのデ

タ表の作成

〈3〉多変量解析

・数量化Ⅲ類によるデータ解析

〈4〉カテゴリ

・ス

コアに

よる成分

(軸

)の解釈

〈5〉カテゴリース

コア

とサン

プルス

・コアによる2

次元布置図

(散布図)の

作成

〈6〉布置

図に

よる観点と生徒のグル

プ化

・類型化

〈7

〉数量化Ⅲ類による分析結果の

評価への利用

(歴

史理解の様相の把握と指導の方向の解

明)

以下,

これ

らの

手順に沿って,分析結果の提

示とそ

の考

察を行う。

4。結

よび考

1 

に基

く生徒

理解

1)歴

を規

成分

まず

点に基

いて

(37

)の歴

史理

解の特

を探

ってみ

業の

1段階

おけ

論で

生徒

研究

書か

日清

・日露

対す

々の

生徒

評価

を分析

全体

点をま

とめ

1に

示す

うな

つの歴

史理

解の

点が抽

でき

こで

,その

名称

ら観

点の

内容

や含

まれ

る考

えが

うに

点に

を付

けた

(4)

表 1 歴 史 事 象 理解 の 観 点 の 日 賢 の 日 観 露 幃

1.国民 意識高揚論 2. 産業 経済成長論 3. 欧米対等 外交論

4. 重税負担 増大論 5. 国民生活 荒廃論 6. 大陸人民 犠牲論 1 ∼ 3 は戦 争 は歓 迎 さ れ た と す る立 場 に 中 心 的 な 観 点 , 4∼ 6 は 歓 迎 さ れ な か っ た と す る立 場 に 中 心 的 な 観 点 で あ る。 ま た ,1 ∼ 3 は 国 民 意 識 , 産 業 や 経 済 , 欧 米 と の外 交 の点 か ら み て当 時 の人 々 に 2 つ の戦 争 は 歓 迎 さ れ た と評 価 す る観 点 で , 4∼ 6 は ,税 負 担 の 増 加 ,国民 生 活 の窮 乏 ,大 陸 ( 朝 鮮 ・ 中 国 ) の 人 々 へ の 加 害 と い っ た点 か ら 2つ の戦 争 は歓 迎 さ れ な か っ た と す る 観点 で あ る。 次 に ,各 生 徒 の 観点 の 表 出 状 況 に 基 づ い て統 計 解 析 を 行 っ た6)。 数 量 化 Ⅲ 類 の計 算 か ら ,表 2 と 表 3 に 示 す よ う な 固 有 値 と カ テ ゴ リ ー・ スコ ア ,サ ンプ ル ・ ス コ ア が 得 ら れた 。 続 い て 次 元 数 の確 定 と 成 分 の推 定 を 行 っ たO 表 4− 2を み る と ,固 有 値 は 第 3 段 階 で は 3 次 元 で 急 に 値 が 下 が っ て い る こ とか ら ,2 次 元 の成 分 ま で の採 用 が 妥 当 と 考え ら れ る 。 ま た 今 回 の事 例 で は変 数 ( 観点 ) が 6個 と少 な い こ と か ら も こ の判 断 が 妥当 と 考え ら れる。 2 次元 の 成 分 によ る 分 析 で は ,カ テ ゴ リ ー・ ス コ ア とサ ンプ ル・ スコアを 2次元空 間に表 現 で き る。 こ れ は 布 置 図 と 呼 ば れ る図 ( 図3,4) で あ り ,こ の 図 か ら は, 歴 史 事象 の 理 解 を 規 定 し て い る成 分 に 基 づ い て, 観 点 間 や 生 徒 間 に 隠 さ れて い る 特 徴 的 関 係 が 読 み 取 れ る 。 ま ず ,カ テ ゴ リ ー・ ス コ ア に 基 づ い て ,次 元 を 規 定 し て い る成 分 を 個 別 に推 定 し た。 授 業 の 第 1段 階 の カ テ ゴ リ ー ・ ス コ アを 表 3 に示 し た 。 表 2 固 有 値

J

1次元 2次元 3次元 4次元 5次元 第1段階 0.9301 0.8298 0.5637 0.5431 0.2950 第3段階 0.6341 0.5814 0.3554 0.2099 0.1720 表 3  カ テ ゴ リ ー ・ スコ ア

二卜

芒 サ

1次 元 2次元 1. 国民意識 高揚論 2. 産業経 済成長論 3. 欧米対等 外交論 4. 重税負担 増大論 5. 国民生活 荒廃論 6. 大陸人民 犠牲論 1.89598 -0.47950 1.18873 -0.65200 -0.59490 -1.02550 0.25955 −O。63930 0.02403 -0.51330 −0.08440 3.99343 − 4 − は じ め に, 1 次 元 の 成 分 を 推 定 し た 。 表 で は , 授 業 の第 1段 階 の 1 次 元 の 数 値 は観 点 ( カ テ ゴ リ ー ) 1 , 3で 正 の 値 を と り ,観点2, 4, 5, 6 で負 の値 を と っ て い る 。 値 の 大 き さ を 見 る と ,正 の方 向 に 欧 米 対 等 外 交 論(1.0) → 国 民 意 識 高 揚 論(2.1) と 増 加 し て い る の が 特 徴 的 で あ る 。 ま た ,負 の 方 向 で は, 国 民 生 活 荒 廃 論 ( −0.5 ) → 重 税 負 担 増 大 論 ( −0.6) → 大 陸 人 民 犠 牲 論 ( −0.9 ) と 減 少 し て い る の が 特 徴 的 で あ,る 。 6 つ の 観 点 の こ の よ う な 順 位 や 数 値 の 特 徴 を も と に , 生 徒 の 歴 史 事象 理 解 ( 日 清 ・ 日 露 戦 争 の 評 価 ) を 規定 し て い る 1 次 元 の 成 分 を 推 定 す る と ,こ の成 分 は, 政 治 の主 体 や 享 受 者 を 誰 と み る か と い う, 国 家 や国 民 に 対 す る 政 治 意 識 に 関 す も の と推 測 で き る 。 こ の場 合 , 正 の方 向 の政 治 意 識 は , 国 家 を 優 先 ( 重 視) す る 考 え や 国 家 主 義 的 な ナ シ ョ ナ リ ズ ム の 政 治 意識 と思 われ る。 ま た負 の 方 向 の政 治 意 識 は ,国 民 や ア ジ ア大 陸 の 人 民 を 尊 重 す る 政 治 意 識 と 思 わ れ る。 続 い て, 2 次 元 の 成 分 を 推 定 し た。 2 次 元 の カ テ ゴ リ ー・ スコ ア は, 観 点 1 , 6で 正 の 値 を と り ,観点 2, 3, 4, 5 で 負 の値 を と っ て い る。 値 の 大 き さ を 見 る と , 正 の方 向 で ,国 民 意 識 高 揚 論 (0.31 ) → 大 陸 人 民 犠 牲 論(4.00) と 増 加 し て い る 。 ま た 負 の方 向 で , 欧 米 対 等 外 交 論 ( −0.06 ) → 国 民 生 活 荒 廃 論 ( −0.07 ) → 重 税 負 担 増 大 論(-0.49) → 産 業 経 済 成 長 論 ( −0. 62) と減 少 し て い る 。 6 つ の観 点 の こ の よ う な 順 位 や 数 値 の特 徴 か ら ,2 次 元 の 成 分 は認 識 方 法 の タ イ プ と 推 測 さ れ る。 こ の場 合 ,正 の 方 向 は, 心 情 や 意 識 を 基 準 と し た認 識 方 法 と推 測 さ れ る 。 こ れ は共 感 的 認 識 , 感 性 的 認 識 と い っ た 認 識 方 法 と もい え よ う 。 ま た 負 の 方 向 は, 社 会 ・ 経 済 的 な 観点 で の認 識方 法 の タ イ プ と 推 測 さ れ る。 こ れ は ,分 析 的 認 識 とで も 呼 べ よ う 。 推 測 さ れ た 2 つ の成 分 の 内 容 を 総 合 す る と ,図 2 の よ う な 2 次 元 の 図 に ま と め ら れ る。 こ の 図 で は ,生 徒 の 歴 史 理 解 の様 相 が ,以 下 の よ う な 特 徴 を もつ タ イ プ と し て ,4 つ の象 限 で 視 覚 的 に 表 さ れて い る 。 第 1象 限 : 国 家 を 重 視 す る政 治 意 識 の も と に民 衆 や国 民 の 心 情 や 意 識 を 基 準 と し て 歴 史 理 解 を す る タ イ プ 第 2象 限 : 国 民 を 重 視 す る政 治 意 識 の も と に民 衆 や国 民 の 心 情 や意 識を 基 準 と し て 歴 史 理 解 を す る タ イプ 第 3象 限 : 国 民 を 重 視 す る政 治 意 識 の も と に 社 会 ・ 経 済 的 観点 か ら 歴史 理 解 を す る 歹イ プ 第 4象 限 : 国 家 を 重 視 す る政 治 意 識 の も と に 社 会 ・ 経 済 的 観点 か ら 歴史 理 解 を す る タ イ プ ( 2) 歴 史 理 解 の タ イプ 図 2を 手 が か り に カ テ ゴ リ ー ・ スコ ア と サ ン プ ル・ ス コ ア の布 置 図 を 視 覚 的 に分 析 し ,観 点 や生 徒 を 分 類 し て ,授 業 に お け る 歴史 理 解 の変 容 の 特 徴 を推 測 し た。

(5)

先 に推 測 し た 2つ の 成 分 の 解 釈 に も とづいて, 2次 元 空 間 に 布 置 さ れ た 観 点 や生 徒を ,授 業 の 第 1 段 階 と 第 3 段 階 とで 別 々 に 分 類 し た ‰ そ の結 果 ,下 に 示 す 4 つ の 布 置 図 が 得 ら れ た。 カ テ ゴ リ ー ・ スコ アを も と に し た 図 3 と サ ンプ ル ・ スコ アを も と に し た 図 4 で あ る ( そ れ ぞ れ 第 1 段 階 と 第 2段 階 と の 2種 類 があ る )。 4つ の布 置 図 か ら は ,日 清 ・ 日 露 戦 争 に 対 す る 生 徒 の歴 史 理 解 の変 容 の 様 相 が 以 下 の 様 に 推 測 で き る 。 C,情 や 意 識 を _゛_と し た 理 _ ( 共 感 的 ・ 感 性 的 認 識) <2 次元 の軸 > 認臓方 法 のタ イプ 眼 莨亶 爾 <1 次元の軸 > 政 治意識 匹 蕈瑪 匹 豆 亙四 腰 7 雇泪 m 珥 ( 分析的認霾) 図 2  歴 史 理 解 を 特 徴 づ け る 成 分 5 4 3 2 1 0 1     ク ` 一     一 6.大陸人民犠牲踰 ① グループA s.国民生活荒7ji へ丶 1.国民意識高搗諭 -シ 一 一 采 ) l  l  即│ ぷ 謡。 匹 。 1 に ニ ニ ノ 3.欧米対等外交踰 食経済成長諭 -2 -1.5 -1 -0.50 0.5 1.5 2 2.5 図3-1  カテゴリ ー・ スコアの布 置(第1段階) 5 4 3 2 0 -1 グル ̄プ しし  。 八

/ てつ

こ匸

よ ㈹ (

/匹●1  1● 1  1 。 -2   -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 図 4 −1  サ ン プ ル ・ ス コ ア の 布 置 ( 第 1 段 階 ) まず , 図3-1 ( 授 業 の第 1 段 階 ) で の 観 点 の 布 置 の状 態 か ら ,図 に示 す よ う に, 6 つ の観 点 は 歴 史 理 解 の タ イ プ を 形 づ く るA, B, C の 3つ の グ ル ー プ に 分 類 で き る 。 各 グ ル ープ が 内 包 す る 観 点 お よ び グ ル ープ の 特 徴 を ま と め る と表 5 の よ う にな ろ う 。 表 4 で は, 3 つ の グ ル ー プ が , そ れ ぞ れ 第 1 成 分 ( 政 治 意 識 ) と 第 2 成 分 ( 認 識 方 法 ) と の 2 つ の 要 因 で 特 徴 づ け ら れて い るO み る と ,表 に 記 述 し た よ う な 特 徴 が 確認 で き る。 一 方 ,図3-2 (第 3段 階 ) で は, 6 つ の観 点 が 第 1 段 階 よ り も広 く分 散 し て い る こ と が わか る。 観 点 の こ の よ う な 布 置 状 態 か ら ,第 3段 階 で は, 歴 史 理 解 の 夕 イ プ は , 表 5 に示 す よ うな 3 つ の グ ル ー プ(A' ,B' , (ン )に 分類 で き る。 こ れ ら の 3 つ の グ ル ープ は ,第 1 段 階 で 分 類 さ れ た グ ル ープ に ほ ぼ対 応 し て い る と 考 え ら れ る 。 し か し , 各 グ ル ープ が 含 む 観 点 の 内 訳 と 分 布 状 況 と が 若 干 変 化 し て い る。 第 1 段 階 と 第 3 段 階 の布 置 図 の比 較 か ら は, 生 徒 の歴 史 理 解 の変 容 に つ い て 以 下 の こ と が わ か る 。 布 置 図 で の観 点 の 分 布 にお い て, 特 徴 的 な 移 動 を し た の は ,観 点2,3,4,5 で あ る 。 こ の 動 き は 2 つ の 5 4 3 2 1 0 1   ﹃ / ﹄ 一     ﹄ 6.大陸人民犠畦蟄 言 3.欧米対等外交謐 二

ニ プ

1  1  1  1民意瞰高橋陰 )ぶ 二 -2 図 3 −2 5 4 3 2 1 0 -1 -2 1。5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 カ テ ゴ リ ー ・ ス コ ア の 布 置 (第 3段 階 )

八掛

こ と

∠ 二

-2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 図 4-2  サ ンプ ル ・ スコ ア の 布 置(第 3段 階) 5−

(6)

成 分 を 基 に し て 特 徴づ け ら れ る。 布 置 図 に お い て は, 観 点 同 士 は あ く ま で 相 対 的 な 関 係 の も と に 分布 し て い る。 こ の点 に 注 意 し な が ら観 点 の 移 動 を 総 合 的 みる と, さ ら に以 下 のよ う な 特 徴 か 読 み取 れ る 。 ま ず 第 1 成 分 に 焦点 を 当 て て 見 る と ,特 徴 的 な 移 動 を し た 観 点 と して ,1. 国民 意 識 高 揚 論 ,2.産 業 経 済 成 長 論 ,4.重 税 負 担 増 大 論 が あ げ ら れ るO2 は 国 家 重 視 の方 向 へ ,1 と 4 は 国民 重 視 の方 向 へ と 移動 して い る。 中 で も観 点 4 の動 き は とり わ け 大 きい 。 次 に 第 2成 分 に 焦 点 を 当 て て 見 る と ,特 徴 的 な 移 動 を し た 観 点 と し て ,3.欧 米 対 等 外 交 論 ,4.重 税 負 担 増 大 論 ,5.国 民 生 活 荒 廃 論 が あ げ ら れ る。 こ の 中 で 心 情 や 意 識 を 基 に し た 理 解 の タイ プ へ と移 動 し た の は 観点 3 と 4で あ る。 ま た社 会 ・ 経 済 的 な 認 識 の タ イ プ へ と 移 動 し た の は 観 点 5 で あ る 。 各 グ ル ープ が 内 包 す る 観 点 の内 訳 に 焦 点 を 当 て て み る と ,2.産業 経 済 成 長 論 と4.重 税 負 担 増 大 論 が そ れ ぞ れA ’ B´ お よ びy (ン と ,2つ の グ ル ープ に 重 複 し て 含 ま れ て い る。 4.重 税 負 担 増大 論 は, 第 1 段 階 で は経 済 や 国 民 生 活 重 視 の グ ル ープ へ の所 属 で あ っ た の が ,第 3 段 階 で は人 民 史 観 的 な 観点 を と る グ ル ープ に も属 す る よ う に な っ て い る。 2 つ の 成 分 を 基 準 と し た 位 置 づ け と グ ル ープ が 内 包 す る 観点 の内 訳 と を 総 合 し て 考 え る と ,各 グ ル ー プ で の 歴 史 理 解 の タ イ プ の変 化 に は以 下 の よ う な 特 徴 が あ る と 推 察 さ れ る。 す な わ ち ,グ ル ープ A で は, 国 民 重 視 ,心 情 や 意 識 を 重 視 す る 傾 向 は変 わ ら な い が , 国 民 の 生 活 レ ベ ル に お け る経 済 的 困 窮 につ い て も考 慮 す る 観 点 を も っ て , 当 時 の人 々 に 共 感 的 な 理 解 を す る よ う に な った。一 方 , グ ル ープ B で は , 内 包 す る 観 点 の内 訳 に は変 化 が な い が ,既 存 の 3 つ の観 点 の多 様 化 や 質 の 向 上 が あ っ た と 考 え ら れ る 。 歴 史 理 解 の 様 相 で は ,社 会 ・ 経 済 的 認 識 が 強 ま り ,経 済 や国 民 生 活 重 視 の 傾 向 が 拡 大 し ,心 情 や意 識 の 要 素 も組 み 込 ま れて き た と 考 え ら れ る 。 さ ら に グ ル ー プ C で は ,国 家 を 重 視 す る 傾 向 は 変 わ ら な い が ,経 済 的 成 長 を 基 に 国 家 の 発 展 を 考 え た り , 欧米 と の外 交 関 係を 社 会 ・ 経 済 的 条 件 か ら も 考 え る歴 史 理 解 の傾 向 を 持 つ よ う に な っ た と考 え ら れ る 。 布 置 図 に お け る 観 点 の 分布 の変 化 は, 必 ず し も因 果 関 係 の 直 接 的 裏 付 け と は な ら な い 。 し か し ,第 1 段 階 と 第 3段 階 の 間 の歴 史 理 解 の 様 相 が変 化 し た 理 由 と し て は, 以 下 の よ う な 因 果 関 係 が 推 測 さ れ る 。 ま ず ,4.重 税 負 担 増 大 論 に 関 す る資 料 が 第 1 段 階 以 後 の学 習 過 程 で はあ ま り 増 え な か っ た こ とが あ げ られ る 。 た と え 検 討 さ れ て も ,評 価 を 明 確 に す る論 拠 へ と 発 展 さ せ る まで に は 至 らず ,こ の 観点 で の 理 解 は 深 ま 表4・  カテ ゴリ ー・ スコ アに基 づく グ ループ の特 徴( 第1 段階)

内包する観点 政治意識の特徴 ( 第1成分) 認識方法の特徴 (第2成分) A グループ 6.大陸人民犠牲論 人民史観的把握 の傾向 情緒的・ 価値的認識 B グループ 2.産業経済成長論 4.重税負担増大論 5.国民生活荒廃論 経済や国民生活重視の 傾向 社会・経済的認識の傾向 C グループ 1.国民意識高揚論 3.欧米対等外交 論 ナショナリズムや対外 的地位向上を重 視 共感的・ 勢力関係的認識 表5  カ テゴ リ ー・ スコ ア に基づ くグ ル ープ の 特徴( 第3 段 階)

内包する観曵 第1成分からの特徴 第2 成分からの特徴 ざ クリレープ 4.重税負担増大諭 6.大陸人民犠牲論 国民重視の傾向 生活の経済的困窮の観点 人民史観的把握の傾向 価値的・共感的認識 B’ グル ープ 2.産業経済成長論 4.重税負担増大論 5.国民生活荒廃論 経済や国民生活重視の傾 向を強める 社会・経済的認識の傾向 を強める C ’ クつレープ 1.国民意識高揚論 2.産業経済成長論 3.欧米対等外交論 ナショナリズムの高揚や 対外的地位向上, 経済的 国力の成長を重視 共感的・勢力関係的認識 経済的観点から の分析的 認誰がみられる 注 : 強 調 文 字 は 1段 階 に比 べ て 特 に変 化 し た部 分 ら な か っ た 。 こ れ と は対 照 的 に ,2.産業 経 済 成 長 論 や 5.国 民 生 活 荒 廃 論 に 関 し て は豊 富 な 統 計 資 料 や 文 献 資 料 等 に 支 え ら れ た 検 討 が 行 わ れ た 。 そ の結 果 ,こ れ ら の観 点 自 体 が よ り 明 確 に な る か た ち で 理 解 が 深 ま っ た の で あ る 。 一 方 で は,4.重 税 負 担 増 大 論 は 資 料 に よ る 十 分 な 社 会 ・ 経 済 的 な 分 析 が 行 わ れず ,他 方 で は 国 民 生 活 に もた ら す 重 税 の負 の イ メ ー ジ が国 民 重 視 の政 治 意 識 と 価 値 的 ・ 情 緒 的 認 識 の 傾 向 を 増 大 さ せ た。 こ う し て 結 果 的 に,4. 重 税 負 担 増 大 論 の観 点 が 図 の左 方 向 に 位 置 を 変 え な が ら6.大 陸人 民 犠 牲 論 の 観 点 に接 近 し た と 考 え ら れ る 。 こ の よ う な 推 測 は ,生 徒 の 調 査 報 告 書 に お け る 資 料 の利 用 状 況 の検 討 か ら も裏づ け られる。 一 方 ,資 料 の 検 討 が生 徒 の歴 史 理 解 の 変 容 に深 く 関 わ っ た こ と は,認 識 方 法 の 成 分 ( 図 2 の 2 次 元 の 軸 ) か ら も説 明 で き る。 第 3 段 階 に な っ て2.産 業 経 済 成 長 論 や4.国 民 生 活 荒 廃 論 の カ テ ゴ リ ー ・ ス コ ア が 減 少 し て い る こ と か ら ,社 会 ・ 経 済 的 観 点 に 基 づ く認 識 の 傾 向 が強 ま っ て い る と 考 え ら れ る。 こ の原 因 は ,豊 富 な 資 料 に もと づ く 日 清 ・ 日 露 戦 争 の 評 価 の 再 検 討 と こ の 作 業 で もた らさ れ た よ り 論 理 的 な 推 論 と に よ っ て , 日 清 ・ 日 露 戦 争 の も つ 経 済 的 な 側 面 が よ り 明 確 に理 解 で き た こ と に あ る と 考 え ら れ る。 こ の他 ,2.産 業 経 済 成 長 論 の 観 点 の変 化 の 様 相 から , 社 会 ・ 経 済 的認 識 の傾 向 の 拡 大 と国 家 重 視 の方 向 へ の 理 解 が 連 動 し て い る こ と も今 回 の授 業 に お け る生 徒 の 歴 史 理 解 の 変 容 の特 徴 と し て 注 目 さ れ る 。 ( 3) 生 徒 の 歴 史 理 解 − 6−

(7)

図4

1と図4

2は

サン

プル

・ス

コアによって布

された

生徒

2つの次元の解釈

(図

2)に基づい

て分類

したもの

である

。つま

り,

数量化Ⅲ類ではカテ

ゴリ

・ス

コアおよびサン

プル

・ス

コア

による空間へ

布置に

おいては

,カテゴリー

(観点)とサンプル

(生徒)とは基本的に対応

しているので

,図4にある

生徒のグル

プも図3のA,

B,

CやA’

B’,

(y

歴史理解の

タイ

プと同じ特徴

を持つとみなせる

。こ

のため

生徒がどの歴史理解のタイ

プのグルー

プに属

するか

をみれ

,当該の生徒の歴史理解の様相が明ら

かにな

。また,第

1段階と第

3段階の間の布置図上

での

生徒の位置の移動の様

子を追跡すれ

歴史理解

変容の特徴

を捉

えることもできる

1段階での

3つのグルー

プの所属人数を見ると,

グル

Bの

生徒の人数が最も

多く

(21

人)

,グルー

プC (13

人)

がこれ

に続き

,グルー

プAが最も少なく

なっている

(3人)

。第

1段階では

Bと

Cタイ

プの歴

理解が大勢である

。第

3段階では

Cタイ

プの

人数が最

多く

(18

人)

,続いてB (11

人)

Aタイプ

(4人)

の順になっている

。Aと

Bタイ

プの

人数が第

1段階よ

りも増加

し√

2次元空間での位置が分散

してきたこと

から,

生徒の歴史理解のタイ

プが

多様化

した

と考えら

る。

さらに第

3段階の布置図では

,第

1段階にはなかっ

たグル

(4人)が区分できている。これは第

象限と第

2象限の

境界領域にあるので

国民重視と国

家重視

との

中間の

政治意識で

心情や意識

を基準とし

た理解の傾

向をもつグル

プと推測

され

る。グルー

Dの

生徒の第

1段階での

所属は

すべ

てグル

Bであっ

。この

ことから生徒の歴史理解は,

業の第

2段階

での

資料の検討活動を通

して

国家重視と心情や意識

を基準に

して理解す

る方向へ

と変容

した

と推

測で

きる

この

変容の要因

を探

るには

歴史評価の検討に利用さ

た資料の内訳

をさらに分析す

る必要があろう

4.

2 

歴史理解の評価

と指導の方向

これ

までの分析

によって

,事例授

業における生徒の

歴史理解の様相や変容の特徴が明らかになってきた

られた情報は生徒の歴史理解の評価でもあるので

これ

を指導の方向づけに利用できる

。指導の

方向づけ

への利用には

2.

で示

したように,

以下の

ような方法が考

事例授業の目標は

えられ

日清

よう。

・日露

戦争がもつ相反する二面性に気づかせ

ことで

あった

この

目標の

達成状況

をみる

授業の第

1段階での

徒の歴史理解の様相では

上記の二面性への

認識は未

弱い

。国際的地位の

向上に対する理解は強いが,朝

中国の植

民地化や国内農村の貧困化や労働条件の

劣悪化についての理解が弱く,

経済発展の理解でさえ

−7−

も社

・経済的分析が弱い

といえる。した

がって,第

1段階に続

く授業では

この

ような初発段階の

生徒の

理解の特徴に配慮

して指導

を行う必要があろう

特に第

2成分の

認識方法に関

しては

,心情や意識に

基づ

く認識方法に偏る傾向の

生徒には

,社

・経済的

な認識方法

を経験

させ習得

させ

る必要がある

。反対に

社会

・経済的な認識方法に偏

る場合には

,対極にある

認識方法

を習得さ

せる必要があろう。

政治意識においても

国民重視

あるいは国家重視に

ったの傾

向を持

つ生徒には

,対極に

ある意識

を相

に検

討させる必要が

ある

。これ

を可能にす

るには,そ

ぞれの理解の傾

向に

対応

した

資料の

提供や

,調査

基づ

く資料の検

討活動が必要なの

である

1段階では生徒は

Bグルー

プに偏っていたので,

A, C,さらに

当初は

無か

った

Dグル

プの歴史理解

のタイ

プを検討させる必要がある

。事例授業の場合,

討論によって

日清

・日露戦争の歴

史的評価

を繰

り返

てい

く構成になっているので

A∼

Dの

4つのグルー

プの歴

史理解のタイ

プをもつ立場の間で討論を行い

各立場の論理と論拠

とする資料の批判的検

討を行

う場

を設定す

るな

どの

指導方法の

改善が提案され

よう

また

生徒への個別指導

として,

各生徒の布置図で

の位置

を確認

しなが

理解の様相

を把握

し,

上記の

ような方向での指導を個別に行っていくことが考

えら

Oこの

ような指導に

よって

一方で学級全体の中

での生徒の相

対評価

を行

いながら

,他方でこれ

と平行

して個

々の

生徒の

絶対評価

を行うことが可能となる

布置図の

利用によって

生徒の

特性に合

った指導の保

証が可能にな

ると考

られ

である

りわ

,布置

ら新

しく

Dグルー

プに特徴的な歴

史理解のタイ

プが

発見できた意義は大きい

。グルー

Dの生徒は

,資料

の検討を経

て国家重視

と心情や意識

を中心

とす

る認識

方法の狭間

で迷

っていると考えられ

Oこの

ような情

報に基づけば歴史理解のよ

り緻密な指

導が

可能

となる

事例授

業では

生徒

が歴史事象の

評価

を行

ていた

業では

各生徒が歴史の資料に基

づいて主体

的に

自己

の価値判断を行

っていく能

力の

育成がめ

ざされ

ている

ので

生徒が

資料

を検

討できる場を保証することが重

となる

O生徒は資料

を基に

して歴史事象の理解

を変

させてい

っているわ

けで

あるか

ら,指導では特に,

教師が判断や推理に充分な資料提供

資料に基づい

て生徒

自身が歴史評価が

できる思考の場

を保証

してや

ることが重要

であろう。

5。

とめ

と課

稿

目的は

ける

解の

評価

の解

った

。これ

に応

えるた

始め

前提

して歴

(8)

理解

を深め歴史事象の組織的構造

的な理解

を成立

させ

る中核

的要素

理解に

内在するF ̄

観点」と考えた。

して

点を基準に

して歴史理解の変容

を捉

える評

価法

を明らかに

しようとした

。中心的課題は,

2つの

方法

,す

なわ

ち①

「観

点」に基づく歴史事象理解の変

容の分析方法と②

この方法の適用によって得

らた情報

学習指導への

活用方法とを解明することであった

①の歴史理解の変容の分析

方法については

本稿の

で提

し,

さらに4.

では授

業事例

を基に

この方法

の有効性

を検

した

。その結果,提案

した評価法は,

観点

を基準に

生徒の歴

史理解

を規

している要因を推

定でき

推定

した要因に基

づいて学級の生徒の歴史理

解の

特徴

を類型化できることがわか

った

。また

この類

を基に

,各生徒

を学級集

団の

中で位置づけた

り,各

生徒の理解の変容を追跡できることも確

かめ

られ

さらに

この

評価法

では

,生徒の歴史理解の

変容を

2次

元空間で視

覚的に追跡できるので

,授

業目標の達

成に

向けて指導の

方向づけを決定するための基準にも

なることがわか

②の

課題にも応

えるこ

とが

きた

以上の

ことか

提案

した歴史理解の

変容の分析方

法は個

々の

生徒の歴史理解の様相の

評価に有効な方法

して利用

できるといえよう。

現在

,個性重視の

学習が強調

され

ている中で,絶対

評価の

活用が求め

られ

ている

しか

し信頼性や妥

当性

ある客観的評価

を実現するためには

相対評価と同

様に

絶対評価

においても一定の評価基準を必要とす

。本稿で解

した方法は

評価基準

を設けて生徒の

個性的な歴

史理解の様相

を明らかにできるので絶対評

価のための

一方,

提案

有効

した評価法

な方法と

して期待できる

には

以下の

ような課題

もあ

る。

今回の

評価法の

手続

きの

中核は

多変量解析

であ

った

ので

り多くの観点や

学習者

をもとに歴史理解の様

を推定す

る必要が考

えられ

。した

って本稿の

3.

で示

した第

二の分析

方法の適用による解

瘋まれ

また

,提

した評価法だ

けでは歴

史理解の様相や変

容の厳密な分析が

できないの

これ

までも重要と考

えられ

てきた方法

との併用が考

えられ

。特に

,推論

論理性や推論を支

える資料の

利用

レベル等

を基準に

して理解

を捉える方法

との

併用が不可

欠と考

られ

1 F

と似

「視

点」

両者

とも

一般に

常語

して

同様

られ

いるが

稿で

以下

「観

」の

に統

して

点に

以下の

文①

点が画像

認知

解の

重構

で歴

理解

える機

能が

ある

とが

との

され

関係

この

文の

合,

るためか

画資

料理解

点に

く歴史理解が画像

認知から意

味理解の

方向へ

と段階を踏

んでボ

トム

アッ

プ的に進ん

でいくものと解釈されている

しか

絵画資

料を利用する場合に限らず,歴史事象を認

知する際には,

認識

主体が既に獲得

している組織的構造的

な知識にもとづ

く情

報の

トップダウン

的処理

(概念駆動型

処理)が行われ

ていると考

えられ

。つまり,歴史理解の

過程

では,

意味理解が先行する情報の

トップダウン的処理

をとる場合が,

情報のボ

トム

アッ

プ処理

(デ

ータ駆動型処

理)と同程度

にあるか

しろ前者の場合の方が優位な位

を占め

るの

ではな

いか

と考

えるの

である

。本稿では歴史

学習の

場合はむ

しろ学習者が既に獲得

して

いる

知の

を活用

させる

トップダウン処理

を主

とした方がよ

り察せ

生か

された歴史理解

をもた

らし

追究的な学習を成立させ

る条件になる

という仮定に立っている

また

,論文①では

(ア)

画像

描写の

空間的視点を,

(イ)

挿絵に内在する視点

,挿絵

(絵画資料)の制作者の視点,

立場な

どの用語で視覚から内面的な認知へと拡張しなが

意味理解の

機能へと結びつけている

。この場合,

(イ)

の意

味での

視点は

認識主体が既に獲得

している認

知の

フレ

ーム

すなわ

ち組織

的構造的な知識に相

当す

るもの

である

。その

ため

ここでは

(イ

の認知の

フレーム

に関わるに近いもの

を区分

して匚

観点

」の用

語で表

した

学習の

初発段階

で絵画な

どの資料が提示された場合

有の匚

観点」を働かせ

る場

を設定すれば,

資料の

を巡

て意見

が分かれ,

異なる解釈の統一

,確定のために学習者

間で議論が

なされ,

主体的な認識が生まれ

るの

である

池野

範男

「歴

史理解に

おける視

点の機能

(1)

全国社

会科教

育学会

『社会科研究』

,第40

号,1992,pp.23-32.

2 

本稿

で扱

「観

」と

「概念」

とは同

じものといっても

よいが,

理解の仕組み

を詳

しく探る上では概念という言葉

では不

十分で

今後は概

念の様相

をさらに詳しく分析でき

る指標が必要

となる

。概

念は用語で表され

る場合もあれば

命題で表

され

る場合もある

「観点」は

,む

しろ用語での

し方に近い

。また,

認知において仮説的な分析枠として

自由に機能するものと考えられ

。本稿で提示

している

F ̄

観点」の

認知的機

能は,

認知科学者M.Minsky

が提案

した

「フ

レーム

」に最も近いと思われる

。M.Minsky

フレーム

理論についての

詳細は

以下の

文献を参照

①P.H.Winston,

長尾 

・白井良明訳

『人工知能』

培風館ユ980.

7章

:知識

を 

フレ

ーム

で表現す

ること

②M.Minsky,

安西祐一郎訳

『心の社会』産

業図書・

1990.

③M.De Mey,

村上陽一郎

・他訳

『認

知科学

とパラダイム

論』

,産

業図書,1990.

Ⅲ部

:認知構造

と科学のダイナ

ミックス

引用文献

1)中島文男

・寺尾健

「歴史像の科学的変容を目的とす

る中学校

社会科近代史授

業の

開発」

福井大学教育実践研

究,

第20

号,1995,pp.l07-126.

2) ,3)

,4)

同上

5)林 

知己夫

・駒

澤 

勉,

『数量イ

理論とデータ処理』

朝倉書店,1982.

6)統

計解析の

基に

なった観

点の表

出状

況についてのデータ

表は,

文献

2)に

して

いる

7)多変量解析に

よる事前

・事後デー

タの比較分析の妥当性

については

以下の文献での解釈

を参考に

した。

口裕

「縦断的デー

タに対す

る因子分析

,東京学芸

大学紀要

(第

1部

門),

1980.1,31,pp.43-54.

謝辞 

本研究

で分析事例

した授業に関

しては

,福井大学教

育学部附属

中学校中島文男教諭から授業記録および学習

資料の利用についてご理解

をいただきま

した

。記

してお礼

申し上

げます。

−8−

表 1 歴 史 事 象 理解 の 観 点 賢 の 日 の 日 観 露 幃 嘉的 1.国民 意識高揚論2. 産業 経済成長論3. 欧米対等 外交論寔 的 4. 重税負担 増大論5. 国民生活 荒廃論6. 大陸人民 犠牲論 1 〜 3 は戦 争 は歓 迎 さ れ た と す る立 場 に 中 心 的 な 観 点 , 4〜 6 は 歓 迎 さ れ な か っ た と す る立 場 に 中 心 的 な 観 点 で あ る。 ま た ,1 〜 3 は 国 民 意 識 , 産 業 や 経 済 , 欧 米 と の外 交

参照

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共通点が多い 2 。そのようなことを考えあわせ ると、リードの因果論は結局、・ヒュームの因果

このような情念の側面を取り扱わないことには それなりの理由がある。しかし、リードもまた

しかし私の理解と違うのは、寿岳章子が京都の「よろこび」を残さず読者に見せてくれる

とディグナーガが考えていると Pind は言うのである(このような見解はダルマキールティなら十分に 可能である). Pind [1999:327]: “The underlying argument seems to be

「欲求とはけっしてある特定のモノへの欲求で はなくて、差異への欲求(社会的な意味への 欲望)であることを認めるなら、完全な満足な どというものは存在しない

自分ではおかしいと思って も、「自分の体は汚れてい るのではないか」「ひどい ことを周りの人にしたので

た意味内容を与えられている概念」とし,また,「他の法分野では用いられ