上顎洞癌における診断機器と診断基準による画像上ルビエールリンパ(Rp)節転移頻度と照射方法によるRp領域線量の変化に関する検討
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(2) 48 頭頸部癌 47(1):47—52,2021. 小杉 康夫ほか:. 2015 年 7 月以降の 11 例には IMRT で行った。3DCRT は. はじめに. 汎用リニアック(Clinac 21EX または TrueBeam, Varian. 上顎洞癌は,その発生頻度が 10 万分の 1/ 人・年で全. Medical Systems, Palo Alto, CA)の 4 もしくは 10MV X. 頭頸部癌の約 3%とまれな疾患であり治療方法を決定す. 線を用い,IMRT は専用リニアック(TomoTherapy HD,. るためのエビデンスレベルの高い報告は少ない。このた. Accuray Inc., Sunnyvale, CA)による 6 MV X 線によっ. め,上顎洞癌の予防的リンパ節領域照射 elective nodal. て行った。なお,IMRT では画像誘導放射線治療を行っ. irradiation(ENI)およびその領域設定範囲に関しては議. た。放射線治療は 1 日 1 回 2 Gy 週 5 回,総線量の中央値. 論がある1)。治療前評価時の上顎洞癌の外側咽頭後リンパ. 60 Gy を原発巣および転移リンパ節に照射した。ENI は初. 節転移,いわゆるルビエールリンパ(Rp)節転移は 2000 年以前の報告は少なく,Abu-Ghanem らのメタアナリシ. 診時リンパ節転移陽性(cN+)症例にのみ行い,3DCRT. で は 46 Gy/23 回,IMRT で は 50 Gy/25 回 を 照 射 し た。. スの再検討では頻度は 1%以下であった 。しかし,近年. 初診時リンパ節転移陰性(cN0)症例には ENI は実施し. Rp 節転移の報告が散見されるようになり2,3),その原因と. なかった。ENI に含む標的設定範囲は,3DCRT では患側. 1). し て は MRI(magnetic resonance imaging) や PET-CT. (cN2c 症例では両側)のレベルⅠb,Ⅱ,Ⅲとし,IMRT 時. (positron emission tomography-computed tomography). には加えて Rp 領域も標的設定に含めた。治療期間中にシ. といった画像診断技術の進歩や Rp 節転移の画像診断基. スプラチン 150 mg/m2 を主に顎動脈,および外頸動脈の. 準の変化(長径 10 mm 以上から短径 5 mm 以上)が考え. 分枝から 4-5 回超選択的に投与した。. られる 。我々は 55 例の進行上顎洞癌の頸部リンパ節転. 解析方法. 移とその予後に関して報告したが 5),その際にも治療前画. 画像上 Rp 節転移の頻度を明らかにするため,全例で治. 像評価で 2 例に Rp 節転移を認めた。2 例とも近年 MRI,. 療開始前の CT・MRI・PET-CT 画像を再評価した。画像. PET-CT で診断され強度変調放射線治療[intensity modu-. 評価による Rp 節転移の基準は,先行研究をもとに ⅰ):. lated radiation therapy(IMRT)]で治療した症例であっ. 短径 5 mm 以上 ⅱ):長径 10 mm 以上 ⅲ):中心部壊死. た。ここで,2 つの臨床的疑問が生じた。. のいずれかの所見を認めた場合とした4)。本検討で画像上. ①我々の 55 例の上顎洞癌の検討において診断機器や診. Rp 節転移陽性と診断した Rp 節について,転移と関連が. 断基準の違いにより,より多くの治療前の画像上 Rp. 疑われる臨床的・解剖学的因子(図 1)について単変量解. 節転移が存在していた(見過ごされていた)のではな. 析を行った。解剖学的因子の解析は,上顎洞癌頸部リンパ. いか?. 節転移の検討を元に,腫瘍の進展範囲を 6 方向に分けて解. 4). ② Rp 節 転 移 や Rp 領 域 は 3 次 元 照 射[3 dimensional. 析を行った5)。さらに,画像上転移陽性と診断した Rp 節. radiation therapy(3DCRT)]時には標的体積設定を. に関して,放射線治療後の経過観察画像における治療反応. 行わなくともある程度予期せずに照射されていたが,. 性を確認し,治療反応性による転移陽性についても検討し. 近年有害事象低減目的に行う IMRT では線量集中性. た。経過観察画像における治療反応性は,RECISTver1.1. が高いために標的設定を行わない場合照射線量が下. を参考に病変の消失(Complete Response) ,長径 30%以. がるのではないか?. 上の縮小(Partial Response) ,長径 20%以上の増大(Pro-. この二つの疑問を解決するため,まず当院で動注化学放. gressive Disease),変化なし(Stable Disease)を決定し. 射線療法を行った進行上顎洞癌症例の画像再評価によって,. た7)。CR・PR・PD となったものを治療反応性による Rp. 画像上 Rp 節転移頻度とその治療反応性を明らかにした。. 節転移陽性,観察期間中継続して SD なものを Rp 節転移. 次に治療時の放射線治療計画から Rp 節転移や Rp 領域,咽. 陰性と判断した。. 頭収縮筋の平均照射線量を求め,腫瘍の解剖学的分布や照. 次に,画像上 Rp 節転移や Rp 領域,咽頭収縮筋の平均. 射方法,有害事象との関連について遡及的に検討した。. 照射線量を求め,腫瘍の解剖学的分布や照射方法,有害事 象との関連について検討した。各部位の照射線量は 3 次元. 対象と方法. 線量分布から線量体積ヒストグラム(dose-volume histo-. 研究デザインとデータ収集. gram)を用いて求めた。IMRT 時に切除不能症例では総線. 2009 年 4 月から 2017 年 8 月に順天堂医院にて動注化学. 量を 60 Gy から 70 Gy へ線量増加を行っていたため,Rp. 放射線療法を施行した 55 例の進行上顎洞扁平上皮癌患者. 領域線量の比較では総線量を 60 Gy 相当に統一して解析. を対象とした。全例,手術不能の cT4b 症例もしくは手術 を提示された上で動注化学放射線療法を希望した上顎洞扁 平上皮癌患者である。この研究は順天堂医院倫理員会の. を行った。我々の先行研究から ENI 群(N=17)では非. ENI 群(N=38)に比して,Grade 3 以上の晩期有害事象. である誤嚥性肺炎が多い傾向(0% 対 12%,p=0.09)に. 承認を受け(承認番号 19-173),ヘルシンキ宣言の原則に. あった5)。Rp 領域の標的体積設定は咽頭収縮筋,特に上. 従って行った。病期分類は UICC の第 7 版に準拠した 。. 咽頭収縮筋の照射線量に影響するため,本検討では ENI. 治療. 群と非 ENI 群の咽頭収縮筋及び上咽頭収縮筋の平均照射. 放射線外照射は 2015 年 6 月までの 44 例では 3DCRT で,. 線量と晩期有害事象である誤嚥性肺炎の関連について検. 6).
(3) 49. 上顎洞癌の画像上ルビエールリンパ節転移. 図 1 上顎洞癌の解剖学的因子の解析 腫瘍の進展方向を 6 方向に分けて解析した。 橙:前方(頬部),赤:後方(翼状突起),青:内側(鼻腔),緑:外側(咀嚼筋間隙), 紫:頭側(眼窩・頭蓋底),桃:尾側(口腔). 討した。咽頭収縮筋の定義は先行研究に準じて設定した8)。 有害事象は,CTCAE のバージョン 4.0 に従って評価およ び記録し,治療後 3 ヶ月以降に発生する毒性を晩期毒性と 定義した9)。 Rp 節転移と関連が疑われる臨床的・解剖学的因子との 相関はピアソンのカイ 2 乗検定,フィッシャーの正確確率 検定を使用して分析した。Rp 領域や咽頭収縮筋の照射線 量は Mann-Whitneyʼs U 検定を用いて有意差検定した。病. 表 1 対象患者の詳細 項目 総数 年齢. ての統計は,JMP 12(SAS Institute;Minato-ku, Tokyo,. 対象患者の詳細を,表 1 に記す。対象の大部分(50 例: 91%)は T4 症例で,cN+ 症例は 17 例(31%),cN0 は. 38 例(69%)であった。治療前に CT は全例で,MRI は. 中央値(幅) 70(38-90) 男性 女性. 46(82) 9(18). T 病期. T3 T4a T4b. 5( 9) 26(47) 24(44). N 病期. N0 N1 N2b N2c. 38(69) 5( 9) 11(20) 1( 2). 画像診断. MRI PET-CT. 27(49) 13(24). 照射方法. 3DCRT IMRT. 44(80) 11(20). Japan)を使用して 0.05 以下の有意水準で評価した。 結 果. 55. 性別. 勢の増悪による打ち切りは最終観察日を死亡と扱い,全 生存(OS)率は Kaplan‒Meier 法を用いて求めた。すべ. 患者数(%). 27 例(49%),PET-CT は 13 例(24%)で実施していた。 観察期間中央値 36 ヶ月で,24 例が死亡,21 例が生存,10 例が打ち切り症例であった。生存者と打ち切り症例の観察. ていた(表 2) 。診断基準別では,ⅰ):短径 5 mm 以上で. 期間の中央値は 63(範囲:5-113)ヶ月であった。全体の 1. Rp 節転移として診断された症例が 9 例,ⅱ) :長径 10 mm. 年,3 年,5 年全生存率はそれぞれ 78%,53%,50%であっ. 以上が 1 例,ⅲ) :中心部壊死が 1 例であった。診断機器. た。観察期間中 9 例で領域リンパ節再発を認めたが,Rp. 別では CT が 2 例,MRI が 7 例,PET-CT が 1 例であった。. 節再発は 1 例も認めなかった。放射線治療時の Rp 領域の. 経過観察画像における治療反応性. 標的設定は,IMRT 時に cN+で ENI を行った 5 例(うち. 画像再評価による画像上 Rp 節転移 10 例のうち画像経過. 2 例は治療前評価時 Rp 節転移陽性)で Rp 領域を標的設. 観察による治療反応性を確認できた 6 例の詳細を表 3 に示. 定した。. す。残りの 4 例は 3 例が局所再発により Rp 節の評価は不. 治療前の画像再評価によって,55 例中 10 例(18%)で. 可能であり,1 例は画像経過観察前に lost していた。評価. 画像上 Rp 節転移を認めた。6 例は 3DCRT 症例,4 例は. できた 6 例は全例,治療前後で造影 MRI により評価され,. IMRT 症例であった。. MRI の撮像 slice 厚の中央値は 0.9 mm であった。6 例の最. 本検討前,初回治療時に 2 例では Rp 節転移陽性として. 終経過観察時の治療効果判定はいずれも CR もしくは PR. 治療を行い,他の 8 例は Rp 節転移陰性症例として治療し. で,全例画像経過観察による Rp 節転移陽性であった。.
(4) 50 頭頸部癌 47(1):47—52,2021. 小杉 康夫ほか:. 表 2 照射法毎のリンパ節転移頻度と Rp 領域標的設定有無 照射方法. 症例数. cN+ (ENI 実施). 治療時 Rp 節転移陽性. 画像再評価後 Rp 節転移陽性. Rp 領域 標的設定あり. 3DCRT. 44. 12. 0. 6. 0. IMRT. 11. 5. 2. ※1 ※2. 4. ※1. 5. ※2. 2 例とも頸部リンパ節転移も陽性 画像再評価により画像上 Rp 節転移陽性の 2 例中 1 例は cN0 で Rp 領域標的設定 はなし. 表 3 Rp 節転移 6 例の画像経過観察による治療反応性 症例 No.. 撮像 slice 厚(mm). 治療前画像 Rp 節サイズ(短径×長径). 1 2 3 4 5 6. 1.0 1.0 0.7 0.7 0.9 5.0. 5.4×11.4 6.7×10.7 6.6×10.3 8.0×12.0 5.0× 5.9 5.4× 7.2. Rp 転移有(%) Rp 転移無. 治療 効果. ―. CR PR PR PR PR PR. 2.5×5.1 3.0×4.5 1.9×4.5 2.0×4.0 3.0×5.0. 表 5 Rp 領域を標的設定しなかった 50 例の Rp 領域線量. 表 4 Rp 節転移と関連する解剖学的・臨床的因子 因子. 治療後最終経過観察画像 Rp 節サイズ. P値. 因子. 後方浸潤. 有 無. 9/34(26) 1/21( 5). 25/34(74) 0.043 20/21(95). 後方浸潤. 頸部リンパ節転移. 有 無. 8/17(47) 2/38( 5). 9/17(53) 0.0005 36/38(95). 照射方法. MRI/PET 検査. 有 無. 8/31(26) 2/24( 8). 23/38(74) 0.090 22/24(92). 後方浸潤有. 患者数 有 無. Rp 領域線量(Gy) P値 ※ (95%信頼区間). 30 20. 50.3(46.0-54.6) 40.1(32.7-47.5). 0.015. 3DCRT IMRT. 44 6. 47.4(43.2-51.7) 36.0(23.5-48.5). 0.040. 3DCRT IMRT. 26 4. 52.6(48.7-56.4) 35.6(13.6-57.6). 0.020. 線量比較のため,総線量は全て 60 Gy として算出. ※. 画像上ルビエール節転移と関連する解剖学的・臨床的因子 表 4 に Rp 節転移と関連が疑われる解剖学的・臨床的因 子の単変量解析の結果を示す。Rp 節転移 10 例と相関の ある因子は,後方進展(翼状突起進展)あり(Rp 転移陽. 性率;26% 対 5%,P=0.043),初診時頸部リンパ節転移. 陽性(47% 対 5%,P < 0.001)が有意であった。また, MRI または PET-CT 実施症例は Rp 節転移の頻度が高い 傾向があった(26% 対 8%,P=0.090)。. (3DCRT 対 IMRT;47.4 Gy 対 36.0 Gy,p=0.040) で 照. 射線量に有意差を認めた。さらに後方進展ありの 30 症例 でのサブ解析では,照射法(3DCRT 対 IMRT;52.6 Gy 対 35.6 Gy,p=0.020)でより照射線量に顕著な差を認めた。. 咽頭収縮筋の線量と晩期有害事象. ENI 群と非 ENI 群で咽頭収縮筋の線量比較をすると,有. 画像上ルビエールリンパ節転移・ルビエールリンパ節領. 意に ENI 群で照射線量が高かった[照射線量(95%信頼区. 域の線量. 間) ;41.1(46.7-35.5)Gy 対 19.6(22.4-16.7)Gy, p < 0.001] 。. 10 例の画像上 Rp 節転移への照射線量は中央値 57.7 Gy. 上咽頭収縮筋に関しても ENI 群で有意に高かった[照射. (95%信頼区間:51.5-63.9)で Rp 節再発は認めなかった。. 線量(95%信頼区間) ;46(51.3-40.7)Gy 対 31.9(35.9-27.9). 画像上 Rp 節転移陽性かつ IMRT 施行した 4 例中 1 例は治. Gy,p < 0.001] 。ENI 群で Grade 3 誤嚥性肺炎を生じた. 療時 cN0 症例で,Rp 領域の標的設定を行わなかったが病. 2 例については,咽頭収縮筋 / 上咽頭収縮筋の照射線量は. 変が Rp 節転移に近接しており 39.4 Gy が照射され画像経. 46.3 Gy/49 Gy,52.5 Gy/56.8 Gy であった。. 過観察では制御されていた。 Rp 領域を標的設定しなかった 50 例の照射法及び病変の 解剖学的進展と Rp 領域の照射線量を検討した(表 5)。後. 方進展の有無(50.3 Gy 対 40.1 Gy,p=0.015)と照射法. 考 察 初診時 3-20%,再発時 3-33%とリンパ節転移頻度の報 告に一貫性がないため,cN0 上顎洞癌に対する ENI には.
(5) 51. 上顎洞癌の画像上ルビエールリンパ節転移. 議論がある。Abu-Ghanem によるメタアナリシスでは ENI. できた症例があり,症例によっては有用性があると考えら. は有意に領域再発を低下させると報告され1),また領域制. れた。本検討では診断機器別の診断能を比較した先行研究. 御が遠隔転移制御や OS に影響するという報告もある 。. と異なり MRI や PET-CT を全例では行っておらず,進行. 米国の NCCN ガイドラインや米国放射線学会(ACR). 症例で画像精査を追加したなどの選択のバイアスの可能性. 10). ,進行上顎洞癌(cT3,T4)cN0 症. がある。ただし,全例で MRI や PET-CT を行えなかった. 例に対する ENI を推奨している。この場合の照射範囲は. 最大の理由は施設の画像診断機器へのアクセスの問題であ. NCCN ガイドラインでは「再発高リスク領域」,ACR では. り,実際 2012 年 9 月までに治療を行った 28 例と 2012 年. 頸部照射特に「レベルⅠb,Ⅱ」と言及しているが,いずれ. 10 月以降に治療を行った 27 例では有意に後者で MRI も. のガイドラインでも Rp 領域に関する記載はない。2019 年. しくは PET-CT での画像精査の頻度が高かった(29% 対. の European Society for Radiotherapy & Oncology(ES-. 85%,P < 0.001)。本検討で画像上 Rp 節転移と診断され. TRO)の頭頸部癌予防領域ガイドラインでは上顎洞癌の予. た 10 例について,画像による経過観察が可能であった 6. 防領域として,リンパ節転移の頻度が高い部位としてⅠb,. 例の治療反応性は全例で CR もしくは PR であり,治療反. Ⅱに加え Rp 領域も推奨している 。. 応性による Rp 節転移陽性であった。この結果は,本検討. このように,上顎洞癌 ENI 時の Rp 領域の標的設定に. における画像上 Rp 節転移陽性の診断基準を裏付ける結果. は議論があり,その原因として報告される画像上の Rp 節. と考えられた。. 転移頻度に一貫性がないことが考えられる。近年 MRI を. 腫瘍の解剖学的進展は放射線治療における標的体積設. 主体とした画像診断技術の進歩により,上咽頭癌において. 定において極めて重要であり,Rp 領域線量との関連を求. CT と比べて高い頻度の画像上 Rp 節転移が報告されてい. めるため進展方向に関しても解析した。画像上 Rp 節転移. る 。上顎洞癌に関しても近年,MRI で高い頻度の画像. は 10 例中 8 例が標的体積として設定されていなかったが,. 上 Rp 節転移の報告を認める2,3)。また Rp 節転移の画像診. 中央値 57.7 Gy と高線量が照射されていたため 1 例も Rp. 断基準に関して,これまでは長径 10 mm 以上が用いられ. 節再発なく制御されたと考えられる。Rp 領域線量は,解. ることが多かった15)。しかし,健常人の Rp 節の MRI 検. 剖学的に腫瘍の後方進展ありの症例が有意に高線量照射さ. 討から ,近年では短径 5 mm 以上が多く用いられる 。. れていた。これは標的体積が近接している方が Rp 領域に. このことも Rp 節転移頻度に一貫性がない原因であると考. 高線量が照射されるという当然の結果であるが,本検討で. えられる。. は後方進展ありの症例は画像上 Rp 節転移陽性率が有意に. 今回,我々は上顎洞癌の画像上 Rp 節転移の頻度を明ら. 高かった。すなわち治療時に画像上 Rp 節転移を見逃して. かにするために,当院で動注化学放射線療法を行った 55. いても,画像上 Rp 節転移頻度の高い Rp 後方進展症例で. 例について画像再評価を行い,8 例で新たに Rp 節転移を. は予期せずして見逃した画像上 Rp 節転移にも高線量が照. 認めた。治療時に判明していた 2 例と合わせ 10 例(18%). 射されやすいという結果と考えられた。. という高い頻度の画像上 Rp 節転移を認めた。この結果は. ただし,照射法毎による照射線量では,IMRT は 3DCRT. MRI によって 19%と高頻度の Rp 節転移を認めた Guan. に比べて有意に Rp 線量は低くなっていた。IMRT では標. らの報告と同様の結果であった2)。Rp 節転移陽性の診断. 的体積外の線量勾配が急峻なため,標的体積に設定しない. 基準に関しては短径 5 mm 以上が 10 例中 9 例と最も多. 部分の線量が低くなるためと考えられる。さらに,後方. く,長径 10 mm 以上は 1 例のみであった。診断基準の変. 進展症例のみサブグループ解析を行うと,この線量差は. 化が Rp 節転移の報告の一貫性のなさに寄与している可能. さらに顕著になっていた。すなわち,Rp 領域を標的設定. 性を支持する結果であった。中心部壊死の所見はリンパ節. しない場合,IMRT では画像上 Rp 節転移の頻度の高い後. 転移の特異度の高い所見とされるが,Rp 節転移のような. 方進展症例ほど Rp 領域線量は従来の 3DCRT より低下す. 5 mm 程度大きさのリンパ節では感度は高くないと考えら. る。万が一画像上 Rp 節転移を見逃した際には,従来より. れた 。. も著しく照射線量が低下する事には注意が必要と考えられ. 本検討で画像上 Rp 節転移と診断された 10 例では後方. た。Guan らは 59 例の副鼻腔癌の報告で Rp 領域を標的設. 進展(翼状突起進展)や初診時頸部リンパ節転移陽性が有. 定しなくとも,43.3 Gy と高線量が照射され Rp 再発は 1 例. 意に Rp 節転移陽性率と相関を認めた。これは解剖学的な. のみであったと報告している2)。しかし,Guan らの報告も. Rp 節へのリンパ流と一致した結果と考えられた18)。また,. IMRT に限った報告ではないため,IMRT 時に Rp 領域を. MRI または PET-CT を施行した症例は画像上 Rp 節転移. 予防領域に設定しないことの安全性は未だ不明である。た. が高い傾向があった。これも,Rp 節転移の診断には CT. だし,ESTRO ガイドラインの推奨の様に全例で Rp 領域. に比べて MRI が有用であるという先行研究と一致する結. を標的体積に設定を行う場合,咽頭収縮筋に高線量が照射. ガイドラインでは. 11, 12). 13). 14). 16). 4). 17). 果であった 。PET-CT に関しては 5 mm 程度の小さなリ. され,晩期の嚥下障害等の有害事象を増加させる恐れもあ. ンパ節転移の検出に対する有用性に定まった報告はない。. る19)。本検討における ENI 施行群では非 ENI 群に比べ有意. しかし,本研究でも金属アーチファクトのため MRI では. に咽頭収縮筋や上咽頭収縮筋の照射線量が増加し,Grade 3. 描出が不良であったが PET-CT により Rp 節転移を診断. 以上の晩期有害事象である誤嚥性肺炎が多い傾向にあった。. 14).
(6) 52 頭頸部癌 47(1):47—52,2021. この研究は後方視的な研究であるため,その限界が何点 か挙げられる。まず画像検査の種類および撮像法が統一さ れていないことが挙げられる。次に本検討における Rp 節 転移陽性は実際に病理診断が得られておらず,あくまで画 像診断による Rp 節転移陽性である。ただし,Rp 領域の 郭清術は血管・神経損傷や術後の嚥下障害等の有害事象 の観点からも全例では推奨されないため20),治療前の画像 診断は重要であると考える。3 番目に,上顎洞癌の Rp 節 転移の画像診断基準は定まったものではなく,本研究では 主に上咽頭癌の Rp 節転移の画像診断基準をもとに検討し た。本検討でも用いた基準「短径 5 mm 以上」は健常者 の Rp 節の所見から推奨されることが多いが,担癌患者に 健常者のデータを外挿することには議論がある。また,本 検討以外にも上顎洞癌 Rp 節転移の診断基準として,長径 8 mm 以上を提唱している報告もある18)。より適切な画像 診断基準に関しては今後のさらなる研究が必要と考えら れる。最後に本検討では Rp 節転移・Rp 領域の線量およ び照射法による線量変化について検討したが,Rp 節再発 は 1 例も認めていないため Rp 節再発のリスクや ENI 時 の Rp 領域の標的設定の是非に関しては依然不明である。 本研究で Rp 領域線量が低下しやすい IMRT 症例の 11 症. 例中 5 例は cN+ 症例で Rp 領域を標的設定し,切除不能 症例では総線量を 70 Gy に増加していた。さらに主に頭. 蓋底浸潤を来している症例には Rp 領域にも動注による抗 癌剤投与がされていた21)。これらの要因が腫瘍制御に働き IMRT 症例でも Rp 節再発が生じなかった可能性がある。 本検討では Rp 節再発は認めなかったが,Rp 節再発に 関しても近年報告が散見されており2,3),今後も Rp 領域の 標的設定,再発形式,有害事象の結果より最適な Rp 領域 への治療戦略の検討が必要と考えられた。 結 論 画像再検討により進行上顎洞癌の画像上 Rp 節転移の頻 度は 18%であった。治療時の Rp 節転移がより高頻度と なった原因は画像診断機器の進歩と診断基準の変化による ものと考えられた。IMRT 時に Rp 領域を標的体積に設定 しない場合,3DCRT に比べ Rp 領域線量は有意に低下した。 本論文について著者らは申告すべき利益相反を有しない。 本論文の要旨は第 44 回日本頭頸部癌学会で報告した。 文 献 1) Abu-Ghanem S., Horowitz G., Abergel A., et al : Elective neck irradiation versus observation in squamous cell carcinoma of the maxillary sinus with N0 neck : A meta-analysis and review of the literature. 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