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人工ニューラルネットワークによる回帰モデルを用いた地下水流れを伴う地中熱交換器周囲温度応答関数の計算手法

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(1)空気調和・衛生工学会論文集 No. 279 , 2020 年 6 月. 人工ニューラルネットワークによる回帰モデルを用いた 地下水流れを伴う地中熱交換器周囲温度応答関数の計算手法 小 司 優 陸*1 阪 田 義 隆*2. 葛 隆 生*2 長 野 克 則*3. 地中熱利用システムの設計段階において地下水流れによる熱輸送を考慮すること で、地下水流れが存在する場では導入地中熱交換器規模が削減可能である。本研究は、 地下水流れを伴う地中熱交換器周囲のこれまで理論解析解の得られていない温度応 答関数を対象とする。無限円柱周りのポテンシャル流れ場における移流拡散問題 -移 動無限円筒問題- について、有限体積法による数値解析を用いたパラメータスタディ を行う。この数値解析結果を人工ニューラルネットワークに学習させ、移動無限円筒 問題の温度応答関数を再現する回帰モデルを構築した。移動無限円筒問題の温度応答 関数を回帰した人工ニューラルネットワークは、無次元温度にして、数値解析値に対 する RMSE が9.67 × 10!" であり、最大絶対誤差では0.0212、最大相対誤差では 7.76% と、回帰モデルとして良好な性能を示した。この人工ニューラルネットワーク回帰モ デルによる 1 時間刻み 20 年間の移動無限円筒問題の温度応答関数の計算時間は 54.9 s であり、数値解析手法と比較して大幅な計算時間の削減がなされた。 キーワード:シミュレーション・地中熱交換器・人工ニューラルネットワーク・地下水流れ. は じ め に 2016 年に発効されたパリ協定によって、産業革命以降の. プ(Ground Source Heat Pump: GSHP)システムは、全世界. 世界平均気温上昇を 2 ℃未満に抑える長期目標が掲げら. で既に 50 GW 容量の設備導入がなされているが、その 7 割. れており、日本でも 2030 年度温室効果ガス排出量を 2013. がアメリカ・中国・スウェーデンに占められ日本での導入. 年度比で 26 %削減するとしている。また東日本大震災や北. 容量は 0.1 GW に留まっている 1)。その主な原因は日本の. 海道胆振東部地震から集中型エネルギーシステムの脆弱性. 複 雑 な 地 質 に 起 因 す る 地 中 熱 交 換 器 ( Ground Heat. が顕在化しており、分散型エネルギーシステムの構築が必. Exchanger: GHE)の高い導入コストであり、GSHP システ. 要とされている。これに対し、再生可能エネルギー熱であ. ムの普及にはライフサイクルコストを削減するシステム設. る地中熱が持続可能かつ地産地消のエネルギー源として開. 計が課題となっている。. 発の機運が高まっている。. この課題に対して、GSHP システムの設計段階で地下水 流れによる熱輸送を考慮することで導入 GHE 規模を削減. 地中熱の利用形態として最も知られる地中熱ヒートポン. できることが考えられる 2)3)4)5)。しかし現在設計段階で地中 *1 *2 *3. 北海道大学 学生会員 北海道大学 正会員 北海道大学 SHASE 技術フェロー. 温度計算手法として用いられている無限線源理論 6)、無限 円筒理論 6)、有限線源理論 7)8)などの GHE 周囲温度場のモ. 11.

(2) 小司・葛・阪田・長野:. デルは地中の熱伝導現象のみを扱い、地下水移流による熱. パラメータスタディを行う。次に得られた数値解析結果を. 輸送を考慮できていない。地下水流れを考慮した GHE 周. ANN に学習させ、移動無限円筒問題についての ANN 回帰. 囲温度場の非定常シミュレーション手法としては、これま. モデルを構築する。さらに、移動無限円筒問題の ANN 回. でに理論解析による手法と数値解析による手法が提案され. 帰モデル性能について結果及び考察を示し、最後に結論を. ている。理論解析では移流拡散方程式を解いた移動線源理. 述べる。. 論が導かれている. 9)10). 。しかし移動線源理論では、図-1 左. に示す様に、流れ場は空間で一様と仮定され、図-1 右に示. Line Source. Cylinder Source. す様な GHE による流れ干渉が考慮されていない。一方で 数値解析による手法では実際の GHE 周囲の流れを考慮し た計算が可能であるが、計算に要する時間が大きく長期の シミュレーションに対しては適用が困難である。また地下 水流れによる熱輸送の効果を見かけ上の有効熱伝導率とし て考慮することが考えられているが、地下水流れの存在す る地点では見かけ上の有効熱伝導率が時間と共に増加する. 図-1 移動線源と移動無限円筒における流れ場. ことが示されており、地中熱交換器の採放熱性能を過小に. 記. 推定する恐れがある 11)12)。Conti らは流れの干渉を考慮した. 号. 無限円柱周りのポテンシャル流れ場における移流拡散問題. 𝑐. 比熱. -移動無限円筒問題- について、数値解析による分析を行っ. 𝐹𝑜. フーリエ数. ているが、移動無限円筒問題の解析解については導かれて. ℎ. 水頭. 。一方で筆者らは、移動無限円筒問題について数. 𝐾. 透水係数. [m s-1]. 値計算によって計算した円筒周囲の温度応答を近似し、そ. 𝑘. 熱伝導率. [W m-1 K-1]. の応答を時間領域において重ね合わせる計算手法を示した. 𝑛#$%%&'. ANN 隠れ層数. 14). 𝑛('$). ANN 隠れ層ユニット数. いない. 13). 。しかしながら、温度応答の近似を多項式により行なっ. [J kg-1 K-1] [m]. 𝑃𝑒. ペクレ数. これに対して筆者らは、近年回帰・分類問題に対する応. 𝑞. 単位長さ辺り放熱量. 用が注目されている人工ニューラルネットワーク. 𝑟. 半径. [m]. (Artificial Neural Network: ANN)に着目した。ANN は有限. 𝑇. 温度. [K]. 個のユニットを持つただ一層の隠れ層によって構成される. 𝑡. 時間. [s]. feed forward network によって任意の連続関数を近似するこ. 𝑢. 流速. [m s-1]. とができることが普遍性定理として示されている 15)。空調. 𝛼. 温度伝導率. 分野における ANN の応用事例としては、安宅らが ANN を. 𝜆. L2 正則化係数. 用いた冷媒物性値近似高速計算手法を提案している 16)。ま. 𝜌. 密度. た地中温度計算においては、李らが GHE 周囲の熱伝導現. Θ. 無次元温度. 象についての有限要素法による数値解析結果を ANN に学. 𝜀. 間隙率. 習させた高速計算手法を示している 17)18)19)。また、GHE 周. 𝜑. 角度. たが、近似式が繁雑になる課題があった。. 添. 囲温度場の計算手法として熱回路網モデルにおいてもその. 0. 初期値. Pasquier らが、熱伝導モデルの解析解と熱回路網モデルの. b. ボアホール、地中熱交換器. 計算結果を ANN に学習させた回帰モデルを用いることに. m. 有効物性値. s. 土壌. w. 水、流体. よって高速・高精度に計算が可能である事を示している. 。. 以上のことから本研究では、ANN の高い関数表現能力と. [m2 s-1] [kg m-3]. [rad]. 字. 計算時間の大きさが課題となっており、これに対し. 20). [W m-1]. その計算の高速性から、移動無限円筒問題の数値解析結果. 1. 手法. を小さい計算時間によって再現する ANN 温度応答回帰モ デルを構築し、より高速・高精度な地下水流れ場における. 1.1 移動無限円筒問題. 地中熱交換器周囲温度計算の実現を目的とする。本論文で. 移動無限円筒問題の概念図を図-2 に示す。移動無限円筒. は、まず前述の移動無限円筒問題に対して数値解析による. 問題においては、地中及び地下水流れを飽和・均質・等方. 12.

(3) 人工ニューラルネットワークによる回帰モデルを用いた地下水流れを伴う地中熱交換器周囲温度応答関数の計算手法. (v1812)による数値解析を行った。. の多孔質媒体中の非圧縮性ダルシー流れとして扱う。円柱 から十分遠い地点での流入速度は以下の様である。. 数値解析の概念図を図-3 に示す。計算対象領域としては、 対称性を考え半径𝑟3 の半円周囲の空間を考える。また無限. 𝑢* = −𝐾∇ℎ. 媒体を再現するため、十分広い500𝑟3 × 1000𝑟3 の領域を扱. ……(1). う。境界条件は、対称面に対称境界条件、円筒表面ではノ さらに GHE を多孔質媒体中の中空円筒とみなすと、流. -.. り、その流れ速度場の解析解は以下の様である. :. イマン境界として-+ |+4+! = − 1;+ !5 = −1、他の境界では. れの記述は円柱周りの二次元非圧縮渦なし流れと同様とな. ! #. 21). 。. 同様にノイマン境界として断熱条件をそれぞれ与えた。離 散化スキームは、時間項についてはオイラー法、対流項に. 𝒖=E. +!" +". 𝑢+ = 𝑢* cos 𝜑 H1 − I +". 𝑢, = −𝑢* sin 𝜑 H1 + +!"I. ついては二次精度風上差分、拡散項については中心差分を ……(2). それぞれ用いた。 ここで移動無限線源理論と同様に、移動無限円筒問題に 対しても同様の無次元化ができると考え、無次元温度Θ =. を考える。この時、固相と液相が局所的に等温である局所. 2𝜋𝑘0 (𝑇 − 𝑇2 )/𝑞3 、フーリエ数 𝐹𝑜 = 𝛼0 𝑡/𝑟 1 、ペクレ数 𝑃𝑒 = 𝑢0、* 𝑟/𝛼0 及び角度𝜑によって、以下の様に表せると. 熱平衡の状態にあるとして、移動無限円筒問題. する。. 熱移動現象としては、円筒表面からの定常熱フラックス. の支配方程式は以下の様に表される。. Θ = 𝑓(𝐹𝑜, 𝑃𝑒, 𝜑) -.. ⎧ ⎪. -/. ……(4). + 𝒖0 ∇𝑇 = 𝛼0 ∇1 𝑇. 𝑇(𝑟, 𝜑, 𝑡 = 0) = 𝑇2 𝑇(𝑟 → ∞, 𝜑, 𝑡) = 𝑇2. ⎨ -. ⎪ ⎩𝑞(𝑟 = 𝑟3 , 𝜑, 𝑡) = −2𝜋𝑟3 𝑘0 -+ |+4+! = 𝑞3. OpenFOAM による非定常数値解析は上記の𝐹𝑜、𝑃𝑒、𝜑. ……(3). の 3 変数に対するパラメータスタディを目的とする。フー リエ数に関しては、𝐹𝑜 ≤ 10" の範囲で計算を行った。また、 ペクレ数に関しては、𝑃𝑒に対して対数的に温度場が変化す ることがわかっているため、𝑃𝑒 = (1.0 × 10!< ) × 1.1=!> と. ここで、. 𝛼0 = 6. 5#. # 7#. して、𝑛 = 1,2, ⋯ 99のケースで計算を行った。. ,. 6 7. 𝒖0 = 6$7$ 𝒖, # #. 𝑘0 = (1 − 𝜀 )𝑘8 + 𝜀𝑘9 , 𝑐0 𝜌0 = (1 − 𝜀 )𝑐8 𝜌8 + 𝜀𝑐9 𝜌9 , である。. 図-3 数値解析概念図 図-2 移動無限円筒問題概念図. 1.3 ニューラルネットワークモデル 1.2 数値解析によるパラメータスタディ. 上述の数値解析によるパラメータスタディの結果を. 上述の移動無限円筒問題について、有限体積法を用いた. ANN に学習させ回帰モデルを構築した。ANN 学習におい. オープンソース CFD ソフトウェアである OpenFOAM. ては、MATLAB 及びそのアドオンである Deep Learning. 13.

(4) 小司・葛・阪田・長野:. Toolbox、Machine Learning Toolbox を用いた。ANN の構成. よって与えられたパラメータ設定においてトレーニングデ. 図を図-4 に示す。モデルには入力層、隠れ層、出力層の各. ータセットによる学習が行われ、 その後学習された ANN の. 層が全結合し順伝播するフィードフォワードネットワーク. 検証が検証データセットによって行われる。これを最大評. を用い、各々の隠れ層に活性化関数として ReLU 関数を設. 価時間・回数の範囲内で反復し、 最終的に検証結果の RMSE. 定した。また入力パラメータは上述の様に無次元化を考え. が最小となったケースについてテストデータセットに対す. (𝐹𝑜, 𝑃𝑒, 𝜑)の 3 変数を与え、出力(教師データ)として無次. る RMSE を計算し、最終的な、移動無限円筒問題に対する. 元温度Θを与えた。尚、入力データの内𝐹𝑜、𝑃𝑒に関しては. ANN 回帰モデルの性能とする。. 正規化のため対数変換を行った。移動無限円筒問題は、円 筒表面から十分に遠い地点では移動無限線源理論の解と一 致する. 表-1 ベイズ最適化におけるパラメータ探索範囲. 13). 。従って、本研究で ANN による回帰の対象とす. Parameters. Range. るのは円筒表面𝑟 = 𝑟3 の地点のみとした。この時、数値解析. 𝑛#$%%&'. 1-5. によって得られたデータセットは、𝐹𝑜について 128、𝑃𝑒に. 𝑛('$). 100-2000. ついて 99、𝜑について 991 の、総データ長128 × 99 × 991 =. 𝜆. -18. (Integer) (Integer). -9. 10 -10. 12557952の(𝐹𝑜, 𝑃𝑒, 𝜑)及びΘの教師データである。このデ ータセットに対して ANN による回帰を行う。 機械学習においては、ANN におけるレイヤー数やユニッ ト数の様に、学習に際して事前に決定するハイパーパラメ ータが存在する。ハイパーパラメータはその値によってモ デルの精度が大きく変動するものの、用いるデータセット やモデルによって最適な値は異なり、理論的にこれらを設 計する手法は確立されていない。ハイパーパラメータを決 定する手法としてはグリッドサーチやランダムサーチなど があるが、近年では確率的なブラックボックス関数の最適 化手法であるベイズ最適化を用いたハイパーパラメータ決 定が効率的な手法として知られている 22)。本研究において. 図-4 ANN 構成図. も、ハイパーパラメータの決定手法としてベイズ最適化を 用いることとした。ベイズ最適化によって決定するハイパ Start Bayesian Optimization. ーパラメータとしては、 ANN における隠れ層の数 𝑛#$%%&' 、 各隠れ層におけるユニット数 𝑛('$) 、及び L2 正則化係数 𝜆 の 3 パラメータとした。隠れ層の数、隠れ層ユニット数は ANN における表現能力を決定し、これらが増加するほど教 師データへの適合性は向上するが、同時に与えたデータへ 過適合することが考えられる。L2 正則化係数は、この過適 合を抑制する L2 正則化に用いられるパラメータであり、 L2 正則化係数が大きいほど教師データへの過適合を抑制. Set Hyper Parameters Training ANN Validation Test. する。それぞれの探索範囲を表-1 に示す。また、ベイズ最 適化における最大評価時間は 72 時間、最大評価回数は 50. End. 回とした。移動無限円筒問題の数値解析結果を学習した ANN 回帰モデルの性能検証方法としては、総データ数が大. 図-5 ベイズ最適化及び ANN 学習と性能評価フローチャート. きいことからデータセットを一定の比率でランダムにトレ ーニングデータセットと検証データセット及びテストデー. 2. 結果及び考察. タセットに分割する、Hold-out 法による検証を行う。本研. 2.1 ベイズ最適化によるハイパーパラメータ決定. 究での各々の比率は、Training: Validation: Test = 8: 1: 1 と. 移動無限円筒問題の数値解析値を ANN によって回帰し. した。なお、ANN の学習過程における損失関数については. た。はじめにベイズ最適化によって決定された ANN ハイ. RMSE 値を用いた。ベイズ最適化及び ANN の学習と性能. パーパラメータについて示す。ベイズ最適化の結果、数値. 評価の流れを図-5 に示す。ベイズ最適化のアルゴリズムに. 14.

(5) 人工ニューラルネットワークによる回帰モデルを用いた地下水流れを伴う地中熱交換器周囲温度応答関数の計算手法. 解析値に対する ANN 回帰モデルの RMSE が最小となった. 表-3 ANN 性能 RMSE. ハイパーパラメータの値は表-2 の様であった。 また図-6 に、. RMSE. ベイズ最適化における試行それぞれにおける RMSE を示. Validation. 9.70 × 10!". す。なおデータラベルとしてそれぞれの試行での𝑛#$%%&' 、. Test. 9.67 × 10!". 𝑛('$) 、𝜆の値を図中に示している。上述の最大評価時間・回 数の範囲内での反復試行回数は 14 回であり、最小の RMSE. 2.2 移動無限円筒問題の ANN 回帰モデル性能. は 12 回目の試行で得られた。全体の傾向としては、𝑛#$%%&'. 図-7 に数値解析値と ANN 回帰モデルそれぞれの𝜑 =. 及び𝑛('$) が大きいほど、また𝜆が小さいほど RMSE が小さ. 0、 𝑃𝑒 = (1.0 × 10!< ) × 1.1=!> (上から𝑛 = 9,18, ⋯ 99)に. くなる結果となった。本研究における ANN のトレーニン. おける温度応答関数を示す。見かけ上にも数値解析値と. グデータセットは実験による実測値ではなく数値解析によ. ANN 回帰モデルによる計算結果はよく一致している。また. って得られた値であるため、測定誤差が介在せずそれぞれ. 検証データセットに対しての RMSE は9.70 × 10!" 、テスト. のデータ間における誤差が小さい。このため 𝑛#$%%&' 、. データセットに対しての RMSE は9.67 × 10!" と、その差は. 𝑛('$) を大きく、また𝜆を小さくし ANN の表現能力を増加. 0.03 × 10!" と十分に小さい値である。このことから、学習. しても過適合となり難く、これによって ANN 性能が向上. された ANN において教師データへの過適合は発生してお. したと考えられる。また𝑛#$%%&' 、 𝑛('$) に関しては、設定し. らず、汎化性能についても良好であると言える。. た探索範囲で最大の値を取る結果となっており、このこと. また、図-8、図-9、図-10 に𝐹𝑜、𝑃𝑒、𝜑それぞれに対する. から学習された ANN モデルはトレーニングデータセット. ANN 回帰モデルの残差を示す。図-8、図-9 から𝐹𝑜及び𝑃𝑒. に対してアンダーフィッティングの状態にあり、さらに隠. の増加に伴って ANN 回帰モデルの誤差が大きく現れてい. れ層数とユニット数を増加することで RMSE を ANN モデ. ることがわかる。またここで図-10 において、𝜑 = 0近傍に. ルの回帰誤差をより小さく出来ることが考えられる。しか. おいて多く負の残差が現れている。これは𝑃𝑒の増加によっ. しこのハイパーパラメータにおける ANN の性能としての. て移流による熱輸送の効果が顕著になり全体としては温度. RMSE は表-3 の様であり、テストデータセットに対する. 上昇が抑制されるが、𝜑 = 0近傍では円筒による流れ干渉. RMSE が9.67 × 10!" と回帰モデルとして十分に小さい値. により移流による熱輸送の効果が低減されるためであると. が得られている。隠れ層の数とユニット数を増加させるこ. 考えられる。しかし、図-11 に示す様に、ANN 回帰モデル. とで、ANN 回帰モデルによる計算時間が増大することも考. の数値解析値に対する最大絶対誤差は、数値解析での無次. えられるため、本研究における ANN ハイパーパラメータ. 元温度Θ = 1.576の点における0.0212と十分小さい値であ. はこの値を用いることとした。. る。また、図-12 に数値解析値に対する ANN 回帰モデルの 相対誤差を示す。数値解析値がごく小さい点において相対. 表-2 ベイズ最適化結果. Parameters. 誤差が大きくなっているが最大でも 7.76%であり、数値解. Value. 𝑛#$%%&'. 5. 𝑛('$). 2000. 𝜆. 4.95 × 10!>?. 析値が 0.1 以上では、相対誤差は最大で 2.78%であった。 学習された移動無限円筒問題の ANN モデルは十分な回帰 性能を示した。またこの図から、トレーニングデータセッ ト・検証データセット・テストデータセットそれぞれに対 する ANN 回帰モデルの残差の分布に著しい差がなく、こ れによっても ANN 回帰モデルの汎化性能が得られている ことが示されている。 さらに、 移動無限円筒問題の温度応答関数をこの ANN 回 帰モデルによって計算した時の計算時間を測定した。計算 条件としては一般的な地質・ボアホール地中熱交換器条件 と し て 、 𝛼 = 5.0 × 10!@ m1 s!> 、𝑟3 = 0.06 m、𝑃𝑒 =. 0.1、𝜑 = 𝜋/2を与え、この条件に対して 1 時間ごと 1・5・ 10・20 年間の計算期間での移動無限円筒問題の温度応答関 数をそれぞれ計算した。それぞれの計算期間における計算 時間は表-4 に示す様であり、1 時間ごと 20 年間の計算で あっても 1 分以下で計算が行われている。これに対し 1.2. 図-6 ベイズ最適化によるハイパーパラメータ決定過程. 15.

(6) 小司・葛・阪田・長野:. 数値解析によるパラメータスタディにおいて述べた数値解 析では、一つのペクレ数のケースにおける計算時間は 8 時 間程度要しており、移動無限円筒問題の ANN 回帰モデル による大幅な計算時間の削減効果が示される結果となった。. 図-9 𝑃𝑒に対する ANN モデルの残差. 図-7 数値解析値と ANN モデルの温度応答関数比較. 𝜑 = 0、 𝑃𝑒 = (1.0 × 10!" ) × 1.1#!$ (上から𝑛 = 9,18, ⋯ 99). 図-10 𝜑に対する ANN モデルの残差. 図-8 𝐹𝑜に対する ANN モデルの残差. 図-11 真値(数値解析値)に対する ANN モデルの残差. 16.

(7) 人工ニューラルネットワークによる回帰モデルを用いた地下水流れを伴う地中熱交換器周囲温度応答関数の計算手法. 2). A. Casasso and R. Sethi: Effeciency of closed loop geothermal heat pumps, Renewable Energy, 62 (2014), pp.737-746. 3). A. Garcia-Gil et al.: The thermal consequences of river-level variations in an urban groundwater body highly affected by groundwater heat pumps, Science of The Total Environment, 485486 (2014), pp.575-587. 4). J. Hecht-Mendez et al.: Optimization of energy extraction for vertical closed-loop geothermal systems considering groundwater flow, Energy Conversion and Management, 66 (2013), pp.1-10. 5). M. Beck et al.: Geometric arrangement and operation mode adjustment in low-enthalpy geothermal borehole fields for heating, Energy, 49 (2013), pp.434-443. 6) 図-12 真値(数値解析値)に対する ANN モデルの相対誤差. H. Carslaw and J. Jaeger: Conduction of heat in solids (1959), Oxford: Clarendon Press. 7). H. Zeng et al.: A finite line-source model for boreholes in geothermal heat exchangers, heat Transfer-Asian Research, 31. 表-4 計算期間ごと計算時間. (2002), pp.558-567. Calculation Period /[year]. 1. 5. 10. 20. Calculation Time /[s]. 2.4. 11.6. 33.5. 54.9. 8). L. Lamarche and B. Beauchamp: A new contribution to the finite line-source model for geothermal boreholes, Energy and Buildings, 39 (2007), pp.188-198. 結論. 9). 地下水流れによる影響を考慮した地中熱交換器周囲温度. N. Diao et al.: Heat transfer in ground heat exchangers with groundwater advection, International Journal of Thermal Sciences,. の高速計算を行うため、移動無限円筒問題の有限体積法に. 43 (2004), pp.1203-1211. よる数値解析を行い、この数値解析計算結果を人工ニュー. 10) N. Molina-Giraldo et al.: A moving finite line source model to. ラルネットワークによって回帰したモデルを構築した。. simulate borehole heat exchangers with groundwater advection,. 人工ニューラルネットワークによる移動無限円筒問題の. International Journal of Thermal Sciences, 50 (2011), pp.2506-. 回帰モデルは、数値解析結果に対する RMSE が無次元温度. 2513. にして9.67 × 10!" であり、また最大絶対誤差は0.0212、最. 11) 葛隆生, 長野克則, 武田清香, 中村靖, サーマルプローブ法に. 大相対誤差は7.76%であった。人工ニューラルネットワー. よる地下水流速と温度応答の関係に関する考察, 空気調和・. クによる移動無限円筒問題の回帰モデルは十分な回帰性能. 衛生工学会 論文集, 31 (2006), pp.51-59. を示した。本研究における人工ニューラルネットワークの. 12) S. Signorelli et al.: Numerical evaluation of thermal response tests,. 学習に用いたトレーニングデータセットは数値解析値であ. Geothermics, 36 (2007), pp.141-166. るため、測定誤差が含まれない。そのため人工ニューラル. 13) P. Conti et al.: Transient forced convection from an infinite. ネットワークの表現能力の向上に伴う過適合が起こり難く、. cylindrical heat source in a saturated Darcian porous medium,. 隠れ層数、ユニット数を大きく、L2 正則化係数を小さくす. International Journal of Heat and Mass Transfer, 117 (2018),. ることで人工ニューラルネットワークによる回帰性能を向. pp.154-166. 上することができた。. 14) 葛隆生, 長野克則, 武田清香, 中村靖, 地下水流れを有する地. また、本研究によって得られた人工ニューラルネットワ. 中温度の計算方法とその応用, 空気調和・衛生工学会 論文. ークによる移動無限円筒問題の回帰モデルは、1 時間刻み. 集, 31 (2006), pp.9-17. 20 年間の温度応答関数を 54.9 s で計算することができ、数. 15) G. Cybenko: Approximation by superpositions of a sigmoidal. 値解析手法と比較して大幅な計算時間の削減が可能である. function, Mathematics of Control, Signals and Systems, 2 (1989),. ことが示された。. pp.303-314 16) 安宅智洋, 富樫英介, 田辺新一, 冷媒物性を考慮した空調設 参 考 文 献. 1). 備のエネルギーシミュレーション用個別分散空調システムモ. J. Lund and T. Boyd: Direct Utilization of geothermal energy 2015. デルの開発, 日本建築学会環境系論文集, 75 (2010), pp.279-. worldwide review, Geothermics, 60 (2016), pp.66-93. 287. 17.

(8) 小司・葛・阪田・長野:. 17) 李度胤, 大岡龍三, 池田伸太郎, 崔元準, ANN 及びメタヒュ. 冷房運転への適用, 空気調和・衛生工学会大会 学術講演論. ーリスティクスを用いたモデル予測制御手法の開発 (第 1. 文集, 2018.2 (2018), pp.57-60 20) P. Pasquier et al.: Application of artificial neural networks to near-. 報)ANN モデルによる地中熱ヒートポンプの熱源水温度変 化の高精度予測, 空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文. instant construction of short-term g-functions, Applied Thermal. 集, 2017.9 (2017), pp.157-160. Engineering, 143 (2018), pp.910-921. 18) 池田伸太郎, 大岡龍三, 李度胤, 崔元準, ANN 及びメタヒュ. 21) B. Munson et al.: Fundamentals of fluid mechanics. Hoboken. ーリスティクスを用いたモデル予測制御手法の開発 (第 2. (2006), John Wiley & Sons, Inc. 報)運用計画最適化における ANN モデルの導入効果検証,. 22) J. Snoek et al.: Practical Bayesian optimization of machine learning. 空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集, 2017.9 (2017),. algorithms, Advances in neural information processing systems,. pp.161-164. (2012), pp.2951-2959. 19) 李度胤, 大岡龍三, 池田伸太郎, 崔元準, ANN 及びメタヒュ ーリスティクスを用いたモデル予測制御手法の開発 (第 4. (令和 2.2.10 原稿受付). 報)蓄熱層を含むオフィス空調設備の在室者変動を考慮した. Calculation Method of Temperature Response Function of Ground Heat Exchangers Field with Groundwater Flow using Artificial Neural Network Regression Model by Yutaka SHOJI *1, Takao KATSURA *2, Yoshitaka SAKATA *2 and Katsunori NAGANO *3 Key Words:Simulation, Ground Heat Exchanger, Artificial Neural Network, Groundwater Flow. Synopsis:The scale of ground heat exchangers, where there is. problem), a parameter study was conducted using numerical. groundwater flow, can be scaled by considering the heat transfer by. calculations by the finite volume method. The results of the. groundwater flow in the design stage of the shallow geothermal. calculations were learned by an artificial neural network, and the. system. The calculation of the temperature of ground heat. artificial neural network regression model reproduced the. exchangers field considering groundwater advection is one of the. temperature response function of the moving infinite cylindrical. most noteworthy challenges in the simulation of shallow geothermal. source problem. The results of the trained artificial neural network. systems. This paper proposes a method to calculate the temperature. regression model in comaprison with the numerical calculation. of ground heat exchangers field with groundwater flow. The method. results were demonstrated 9.67 × 10!". calculates the temperature response function of the ground heat. maximum absolute error, and 7.76 % maximum relative error in. exchangers field with groundwater flow, which has not been solved. dimensionless temperature. The time required to calculate the. theoretically, by using an artificial neural network. For the. hourly temperature response function for 20 years using the. advection–diffusion problem in the potential flow field around an. artificial neural network regression model was 54.9 s , which. infinite circular cylinder (moving infinite cylindrical source. indicates a significant reduction in computation time compared with. RMSE , 0.0212. the numerical analysis method.. *1. Graduate School of Engineering, Hokkaido University, Student Member *2 Faculty of Engineering, Hokkaido University, Member *3 Faculty of Engineering, Hokkaido University, Fellow Engineer. (Received February 10, 2020). 18.

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