生成物への汚染に及ぼすホーン材質の影響
日大理工 〇清水瑛平,小嶋芳行 白石中央研究所 梅本奨太,田近正彦 <緒言>
水酸アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2:HAp)とは,歯や骨の硬組織の主要無機化合物であり,たんぱく
質の吸着性や生体親和性に優れている.このため,人工骨等の生体材料,触媒および吸着材など広く 用いられている.超音波を用いた液相反応では,イオン同士の接触回数を増加させることで反応時間 を短縮することでき,それによりナノサイズの化合物を合成することができる1).一方, HAp の合成 法には,カルシウム塩とリン酸塩を含む水溶液を反応させて合成する湿式法があるが,これによって 得られた HAp には Na+イオンなどのカチオンが多量に含有されているため高純度の HAp を得ることは できず,またその比表面積は 90 m2・g-1であった.このため,水酸化カルシウムとリン酸を用いること により不純物を含まない HAp を合成することができた.演者らは超音波照射により 250m2・g-1を超え る高比表面積 HAp を合成することに成功している2),3).このとき,使用したホーンの材質は,チタン 合金,セラミックス(SiC)およびチタン合金に貼り付けたアルミナの 3 種類である.これら異なる材 質が超音波照射においてキャビテーションによる浸食(壊食)されることが予想される.また,ホー ンの直径を変化させた実験も行い,HAp の比表面積などの影響について検討を行っている.本研究で は,超音波照射時におけるホーンの浸食による生成物への汚染を検討することを目的とし,HAp 中へ の各種イオンの溶出に及ぼす時間,振幅,ホーン材質さらにホーンの直径などの影響について検討を 行った. <実験> ステンレスビーカーを用いて,濃度 0.1 mol・dm-3のリン酸水溶液に対して Ca/P 原子比 1.67 となるよ うに水酸化カルシウム懸濁液を調製した.この懸濁液濃度は 1.27mass%とした.冷却した水酸化カルシ ウム懸濁液にホーンの先端を 1cm 浸漬して超音波を 10 秒~1 分間照射して懸濁液の温度を 30℃とした. この懸濁液にリン酸水溶液を速やかに混合し,超音波を 1~15 分間照射した.その後,遠心分離し, メンブランフィルターを用いてろ過を行って試料を得た.なお,チタン合金製ホーン型超音波装置の 周波数は 20kHz で,ホーン径は 19 と 6mm のものを使用した.それぞれの振幅は 70%と 30%であった. また,この 19mm のホーンにアルミナを接着させたものも使用した.さらに,セラミックスホーン型 超音波装置の周波数は 24kHz で,振幅は 10~70%とし,ホーン径は 24mm であった. 得られた試料のキャラクタリゼーションは,X 線回折,赤外吸収スペクトル,比表面積測定,誘導 結合プラズマ発光分析(ICP)および透過型電子顕微鏡を用いて検討した. <結果と考察> まず,ホーンの材質の種類を変化することにより得られた HAp の比表面積について検討を行った.
Effect of horn materials on contamination into product
Yohei Shimizu, Yoshiyuki Kojima (College of Science and Technology, Nihon University, 1-8,Kanda-surugadai, Chiyoda-ku, Tokyo, Japan) Shota Umemoto, Masahiko Tajika (SHIRAISHI CENTRAL LABORATORIES CO.,LTD. ,78,4-Chome,Motoyama-Cho,Amagasaki-City,Okayama,Japan) Tel: +81 3-3259-0868 , E-mail: [email protected]
Key Word: Ultrasound/ HAp/ Contamination/ ICP/ Specific surface area
Abstract: It is known that the outbreak of cavitation gives horn damage. This study reports effects of horn materials (titanium alloy, SiC, alumina) on contamination into product (hydroxyapatite, HAp). HAp was synthesized by Ca(OH)2-H3PO4-H2O system with horn type ultrasound apparatuses. The frequency of
ultrasound apparatuses was 20 kHz at horn of titanium alloy and was 24 kHz at horn of ceramics. In initial this reaction, amorphous calcium phosphate (ACP) was formed, and then ACP was crystallized sequentially to HAp. The HAp with specific surface area of 290 m2 ・g-1 formed by irradiating ultrasound. The specific surface area of HAp decreased by prolonging reaction time. The optimum reaction time using horn of ceramics lengthened than that of titanium alloy for 4 min.
The HAp obtained using horn of ceramics or titanium alloy were contaminated by Si or Ti and Al, respectively. Namely, the constituent of the horn just eluded in the HAp. The amount of contamination in the HAp was increased with extension of irradiating time. Furthermore, the amount of contamination was slightly enhanced with the increase of the amplitude.
X 線回折より,いずれのホーンを用いても低結 晶性の HAp が生成していた.Fig.1 に HAp の比 表面積に及ぼすホーンの材質と超音波照射時間 の影響を示す.チタン合金のホーンを用いた場 合,ホーンの直径に係らず 6 分において比表面 積は最大の 300m2・g-1となった.しかしながら, その後比表面積は低下した.これは超音波照射 時間が長くなると懸濁液の温度がわずかに上昇 し,溶解⁻析出により大きな HAp が生成したた めと推察される.一方,セラミックスホーンを 用いた場合は 10 分において最大の 300m2・g-1 となり,その後わずかに低下した.最大となる 時間が異なるのは周波数が異なるためと推察さ れる.アルミナを貼ったホーンでは 5 分以降比 表面積がわずかに低下した. セラミックホーンの材質は SiC であり,超音 波照射により生成した HAp を酸で溶解して ICP 測定すると Si が検出された.そこで,セラミッ クスホーンを用いて合成した HAp 中の Si 量に ついて検討した.なお,チタン合金のホーンを 用いても 20~40ppm の Si 量が検出された. Fig.2 に HAp 中の Si 量に及ぼす超音波照射時間の影 響を示す.時間の経過に伴いセラミックスホー ンより溶出された Si 量は増大した.これより, ホーンの表面より SiC が浸食され Si が溶出して いることが確かめられた.なお,溶出した Si 量 に及ぼす振幅の影響について検討を行った結果, 振幅が大きくなると Si 量がわずかに多くなる傾 向がみられた.時間の影響のほうが Si 量を溶出 させる因子としては強いことが確かめられた. チタン合金を用いた結果について検討を行っ た.なお,セラミックスホーンを用いた場合に 生成した HAp 中に含有されていた Al および Ti 量はそれぞれ 6 および 1ppm 程度であった.Fig.3 に Ti の溶出量に及ぼす時間とホーンの直径の影 響を示す.いずれの直径のホーンを用いた場合 においても,超音波照射時間を長くすると Ti の 溶出量は増える傾向を示した.ホーンの直径が 19mm のホーンでは溶出した Ti 量は 6 分で 33ppm であり,時間の経過に伴い Ti 量は多くな り,12 分において 240ppm となった.さらに, 6mm の直径のホーンを用いた場合,溶出した Ti 量は抑制されて 12 分では 45ppm であった.な お,チタン合金に含まれている Al についても検 討を行い,類似した結果が得られた.これより, 超音波照射によりホーン先端から Ti および Al が溶出し,細い直径の方が溶出量は少なかった. Reference 1) 小嶋芳行,梅垣哲士,西宮伸幸, J.Soc.Inorg.Mater.Japan,20,284-289(2013).
2)K.Kitazawa,T.Umegaki,Y.Kojima,The 20th annual meeting of the Japan Society of Sonochemistry & The international Workshop on Advanced Sonochemistry, 196-199(2011).
3)小嶋芳行,超音波 TECHNO,26,7-8,40-45(2014).
Fig.1 Effect of horn materials and time on specific surface area of HAp.
Fig.2 Effect of time on amount of Si in HAp.
Fig.3 Effect of time and diameter of horn on amount of Ti in HAp.