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サイバー犯罪の現状と対策

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Academic year: 2021

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(1)第 9 回 コンピュータ犯罪に関する白浜シンポジウム REPORT 警察講演. サイバー犯罪の現状と対策 警察庁生活安全局情報技術犯罪対策課 課長補佐 吉田 和彦 ただいまご紹介いただきました警察庁の吉田でご ざいます。 本日は歴史のある白浜シンポジウムにおきまして、 皆様にサイバー犯罪の現状と対策について講演させ ていただけることを大変光栄に思っています。白浜シ ンポジウムの始まった9年前、不正アクセス禁止法も ない、あるいは、e-Japan重点計画という言葉もない 時代から、非常に先進的な取組みがこの和歌山で行わ れてきたと認識しています。ITの社会にはドッグイ ヤーという言葉もあり、一年を4年に数えるというよ うな非常に進歩の早い世界だということが言われま すが、そういった意味では、白浜シンポジウムも9年 目ということで、非常に歴史が長いと思っています。 本日はサイバー犯罪に関し、それとサイバー犯罪よ りも少し概念が広いのですが、相談・トラブルの状況、 それから防御についてはどういう状況にあるかとい った3点のサイバー犯罪を取り巻く現状について、お 話しさせていただきます。それから、4点目、5点目 におきまして、フィッシングとサイバー犯罪対策全般 に対する警察の取組みについてご説明させていただ きたいと思います。この説明が皆様方の業務や日常生 活において少しでも参考になればと思います。 1.サイバー犯罪の現状 最初に、サイバー犯罪の現状についてご説明させて いただきたいと思います。一言でサイバー犯罪と言い ましても、いろいろな捉え方があります。不正アクセ スやオークション詐欺など、サイバー犯罪と言ったと きにいろいろ思い浮かぶと思うのですが、警察では3 つの類型でサイバー犯罪を捉えています。 1つ目が、不正アクセス禁止法違反です。 2つ目は、コンピュータ電磁的記録対象犯罪です。 電磁的記録と言うのは、法律の用語で簡単に言えば、 電子データのことです。コンピュータや電子データに 悪さをしたといったものです。 3つ目は、ネットワーク利用犯罪と申しまして、中 身は現実社会でも行われるような犯罪、例えば詐欺や 児童買春です。言ってみれば、現実社会の犯罪をネッ. 37. トに投影したような犯罪が、ネットワーク利用犯罪で す。この3つに分類し、これを総称してサイバー犯罪 と呼んでいます。 サイバー犯罪の検挙状況を数字で見てみますと、平 成16年は、2081件です。これは、前年比13%の増加 になっていますが、平成12年に比べると、2倍以上の 増加で、4年で2倍のペースで増えているという状況 にあります。この内訳を見てみますと、先ほどの、現 実の世界の犯罪をネットに投影したといった、ネット ワーク利用犯罪がほとんどを占めています。これが 91%を占め、そのなかでも詐欺、つまりお金を目当 てとした犯罪が多くを占めています。それから、増加 率という観点で見ますと、著作権法違反、児童買春な どの犯罪が非常に多くなっています。現実社会を投影 した犯罪ということで、現在、知的財産権の保護の気 運が高まっていますが、そういった諸情勢、あるいは 子供を取り巻く諸問題、こういった現実社会での問題 が、まさにこのサイバー犯罪の検挙状況にも現れてい ると思います。 1番目の類型として整理させていただきました不 正アクセス禁止法違反の検挙事例です。不正アクセス というのは、不正アクセス禁止法制定前は犯罪の前段 階の行為という説明がされてきました。このため、不 正アクセスを行う動機や手口は非常に多様で、近年 「キーロガー」のようにプログラム上の悪さをする道 具もあり、巧妙な手口が増えてきているというのが特 徴の一つです。もう一つの特徴が低年齢層による犯罪 です。10代の犯行が約3割を占めています。半数が20 代以下の犯罪であり、そういったポイントに着目して 3つの事例についてご紹介させていただきます。 1つ目の事例は、大学のインターネット端末に、キ ーロガーを仕掛けて、ID・パスワードをとる。その 動機としては、インターネットに接続したかったとい うものです。 2つ目の事例は、手口としては、簡単なパスワード を設定していたため、IDから推測されたり、あるい はその人の属性情報、つまり誕生日などから推測して パスワードを判明させたり、という事案です。そうし.

(2) 第 9 回 コンピュータ犯罪に関する白浜シンポジウム REPORT た手口で、IDとパスワードを入手してオークション 詐欺を行ったという事例です。 3つ目が先ほど低年齢層とご説明しました中学生 の事案です。動機としてはオンラインゲームのアイテ ムが欲しかったというものです。手口としては、 「ア イテムをあげるから、ID・パスワードを教えてよ」 という言葉巧みに騙しています。たかが子供の悪戯だ ろう、たかがオンラインゲームだろうというようなこ とが考えられるかもしれませんが、決してこれは、軽 視できるような犯罪ではありません。現在は子供だか ら、関心がオンラインゲームであり、その中のアイテ ムが欲しくて、オンラインゲームに不正アクセスをす る。もしこの子供が大きくなって、関心がゲームから お金になり、あるいは異性になり、こういったときに、 ネットワークを使えば、こういうことができるという ことを心の中に持っていれば、もしかしたら重大な犯 罪を行う可能性があります。そういう意味では、IT 社会でのIDとパスワードというのは、オンラインゲ ームのレベルから金融情報のレベルまでいろいろあ るわけで、それは決して安易に扱ってはいけないもの ということを子供の時からしっかり認識をさせなけ ればいといけないことです。そういう意味では、この 事例も、決して看過していい事例ではないと思ってい ます。 つぎの分類は、コンピュータやデータに対する犯罪 です。 1つ目は、オンラインバンキングです。これは不正 アクセスの後、現金の送金操作をコンピュータに対し て行ったという事例です。 2つ目は、ここ和歌山で検挙した事例です。HPの 電子データを削除し、その結果、被害者の業務を妨害 したという電子計算機損壊等業務妨害といわれる事 件です。こういった不正アクセス後の行為で、コンピ ュータや電子データに対する犯罪も発生しています。 最後に3つ目の分類がいちばん多い事例で、ネット ワーク利用犯罪に関する事例です。これは何種類かあ りますので、それぞれポイントをご説明したいと思い ます。 まず一つ目は、先ほど、一番多くを占めると説明さ せていただきました詐欺の事案です。詐欺目的にイン ターネットを利用するという先ほどの現実社会を投 影した犯罪ということで、一番目の事例はまさに現実 社会の振込め詐欺がインターネットを使って行われ ている事例です。債権回収業者から、使ってもいない アダルトサイトや出会い系サイトの料金の請求がく るなどという手口で振込め詐欺を行ったという事例. 38. です。それから、インターネットが普及し、その上で 商取引が行われるようになりました。非常によく使わ れている代表的な商取引の手段として、インターネッ トオークションがあるのですが、この利用が進むにつ れて、その上での犯罪行為、詐欺行為が発生していま す。神奈川の事例でも162人という、非常に多くの人 間から3700万円という現金を詐取したという事例が 発生しています。そしてこれはまだ捜査中ですが、億 単位の事件を捜査している県警もございます。 それから、同じくネットワーク利用犯罪の2番目で、 違法品の売買に悪用するというような事例です。先ほ ど知的財産権保護の気運が高まってきていると言い ました。インターネット上で、海賊版のソフトとか偽 ブランド品、これらが多く売られています。それから、 銃器や薬物といった、昔から問題になっている密売事 案です。これがインターネット上で行われているとい う状況も見られています。使われている手段は、イン ターネットオークションですが、最近は見つからない ように個人の売買掲示板を使うという事例が増えて いる傾向にあります。 三番目は福祉事犯です。ちょっと聞き慣れない言葉 かもしれませんが、これは子供を対象とした事案で、 児童買春・児童ポルノ法というのが最近制定されまし た。子供を守ろう、子供を詐取することを厳罰化しよ うということで制定された法律です。最近、出会い系 サイトという福祉事犯等に悪用されやすい環境がイ ンターネット上に現れてきています。また、違法品の 売買とも言える事案ですが、児童ポルノがインターネ ット上で売買されているといった事例も見られてい ます。次はストーカー事案です。普通「つきまとい」 と言えば、玄関で待ち伏せとか、そういったことで行 われますが、こういったストーカー行為がインターネ ットを道具として行われているということです。携帯 電話のメール機能を使って送られているといった事 例も見られているところです。 最後に、インターネットの掲示板で犯罪行為を行う という事案です。掲示板自体については、別に善し悪 しを言うつもりはございません。私も非常に楽しく使 わせていただくこともあるのですが、やはり匿名性が 高い環境でフッと気が緩んで、普通なら面と向かって 言わない言葉や、言うと犯罪だと分かるようなことを 書いてしまうといったケースも見られます。 事例は三つ書いています。 一つ目は、脅迫的なものを書いたケースです。 それから二つ目は、業務妨害事件です。「大阪の小 学生を殺害しまくります」などと、公の目に触れると ころに書き込み、不安を煽るというものです。 それから三つ目は、最近問題視されているもので、.

(3) 第 9 回 コンピュータ犯罪に関する白浜シンポジウム REPORT インターネットの掲示板において「一緒に自殺しませ んか」というような呼びかけをすると、それに呼応し て遠く離れた見ず知らずの人が1カ所に集まって、車 の中で自殺を図るというような事件が多発していま す。こういうことにインターネットの掲示板が利用さ れているということです。 以上、インターネット・サイバー犯罪に関する検挙 の状況についてご説明させていただきました。 2.インターネット上のトラブルに関する相談 警察では犯罪の検挙という活動のほかに、警察安全 相談という名前で、身近な困りごとの相談を受け付け、 あらかじめ犯罪の被害を防止しようといった観点か らの活動も行っています。#9110番にかけていただ くと、インターネットに限らず、さまざまな困りごと の相談を受け付けています。このほかサイバー犯罪相 談窓口として専門的に扱うように各県警で体制を整 えているところです。まず警察に寄せられる相談の内 容について、若干説明させていただきたいと思います。 最も多いのが、詐欺・悪質商法に関する相談でして、 その中でも架空請求メールや不当請求メール、こうい ったものに関する相談が非常に多く寄せられていま す。架空請求というのは、心あたりがないのに、債権 回収業者から「利用料を払ってください」とか「いつ いつに行きますよ」というような脅しの文句で、請求 が来るケースです。これ以外に、去年の夏頃から「ワ ンクリック請求」と呼ばれているものもあります。何 か良く分からないメールが来て、クリックすると、 「入会ありがとうございます。3万円払ってくださ い」というような手口の請求で、こういったものが非 常に増加しています。それに対しては、無視するとい う対処方法を基本的にはアドバイスしています。 2番目に多いのはインターネットオークションに 関する相談です。その中で一番多いのが「代金を振り 込んだが、商品を送って来ず、相手に連絡を取ろうと したが取れなくなっていた」という相談です。それか ら、これも新しい手口といいますか、ずる賢い手口で、 2番手か3番手で落札できなかったのですが、後から 出品者を名乗るものから、メールで直接「落札者が辞 退したので、あなたに譲りたいのです。お金払ってく れませんか。」というような連絡が来て、それに同意 してお金を払ってしまったが、実はそのメールで申し 出をしてきた人間は、出品者と何ら関係のない第三者 だったというケースです。 それから、3番目に多い相談ですが、これは、親御 さんからよく寄せられている相談です。「わいせつな 画像を子供に見せたくないのですが、どうしたらいい. 39. ですか。取り締まってくれませんか。 」というような 話や、先ほど言いました「自殺を応募する書き込みが あるのですが、この人たちを助けてくれませんか」と いうような相談も寄せられてきています。具体的な自 殺に関する相談では、インターネット上では、CCD カメラでお互い顔を見ながらチャットができるとい うサービスがあるのですが、そこで、 「Webチャット していたら、相手が目の前で手首を切り倒れました。 どうしたらいいのでしょう。」という相談を受けたこ とがあります。そのときは、その相談を受けた県警が、 その手首を切った人の所在地をプロバイダの協力を 得て探しあて突入し、一命をとりとめたという事例が ございます。こういった、普通、 「屋上から飛び降り ようとしている人がいる」というような現実に寄せら れる通報が、インターネットでも寄せられているとい う状況にあります。 それから4番目は、架空請求や不正請求とも密接に 関連するのですが、迷惑メールに関する苦情です。こ れらの相談に関する件数を見てみたいと思います。平 成16年の1年間で7万614件が都道府県警察に相談と して寄せられています。平成12年と比べると6倍以上 に増加しています。中身を見てみますと、詐欺・悪質 商法というものが非常に多くを占めて、増加率も約1. 7倍です。それから、インターネットオークションに 関する相談で、増加率も2.3倍という伸びを示して います。相談の比率ですが、半分が詐欺及び悪質商法 で、インターネットオークションに関する相談は 19%という状況です。 警察以外の他の機関への相談、あるいは届出の状況 はどうかと少し見てみなすと、IPAに寄せられてい るウィルスの届出件数では、多い年、少ない年がある のですが、2004年中は5万件以上を受理したというこ とで、上昇傾向にあります。 それから、国民生活センターです。これは全国の知 事部局で消費者保護の担当をし、消費者からのいろん な困り事の相談を受け付けるセンターを取りまとめ ている機関です。そこには、悪質商法とか警察に寄せ られる相談に近い内容のものが寄せられます。この相 談の件数を見てみますと、2004年度中に、25万件以 上寄せられたということで、こちらもすごい数字にな っています。増加の傾向も警察に寄せられるものに非 常に近いグラフになっています。この相談の増加で、 国民生活センター、地方の消費生活センターは非常に 業務負担が多くなってパンクしそうな状態です。例え ば東京都の場合では、増員配置して、架空請求・不当 請求専用の窓口を開いているという状況になってい ます。 以上、相談の全体像をご説明させていただきました。.

(4) 第 9 回 コンピュータ犯罪に関する白浜シンポジウム REPORT 件数については、軒並み増加傾向にあるということが おわかりだと思います。それから相談内容の傾向につ いては、技術関連のトラブル、不正アクセス等やコン ピュータウィルス、あるいは、わいせつ画像サイト、 名誉棄損等の犯罪等ですがどちらかと言えばネット 上のモラルについての相談も、当然増加してきていま す。しかしながら、先程言いましたような詐欺、悪質 商法ですとか、インターネットオークション詐欺のよ うに、今急激に増加している相談内容は、お金の被害 に直結した相談です。こういった特徴が、見えると思 います。 3.企業等における情報セキュリティ対策実施状況 次に、守る側の方でどの程度対策が実施されている かというものを、警察庁が行った調査研究から少しお 話したいと思います。 警察庁では毎年、企業や地方自治体等へアンケート の形で、セキュリティの実施状況の調査をお願いして います。任意でアンケートに回答していただく形で、 全体の情報セキュリティの実施状況の把握を行って います。昨年度は年末の状況についてお聞きしまして、 2000事業体の30%強の事業体から回答をいただいて います。詳しくは、警察庁のホームページに、PDF で掲載されていますので、ご関心のある方は、そちら をご覧いただければと思います。 情報セキュリティの調査の説明の前に、若干その情 報セキュリティに関する整理をさせていただきたい と思います。情報セキュリティには、いろいろな取組 み方があると思いますが、ISMSなどで今一番よく 使われている方法が、情報セキュリティポリシーとい う、組織の意思統一するための文書に網羅的な対策を 示し、その考えのもとに情報セキュリティが施行され る方法です。情報セキュリティポリシーも最近は随分 定着してきたのですが、当初は、 「情報システム部門 の負担が増えるので嫌だ」といった認識の方も多くい ました。今までは、会社の中の情報セキュリティに関 する責任が、全部情報システム部門に負わされていま した。人・もの・金の確保も含めてです。社員教育や コンプライアンスの話も情報システム部門の責任で 行われていたのですが、「それでは、情報セキュリテ ィは守れない」ということで、例えば社長の指示のも とで全社員の責任としてやりなさいということにな りました。人・もの・金、こういったリソースの確保、 社員教育やコンプライアンスも、会社の責任としてや りなさいということになりました。そういう意味では 情報システム部門は、これを逆に武器にして、今まで よその部門が動いてくれなかったものを動かすツー. 40. ルと考えれば、決してこれは負担になるようなもので はないと思っています。 情報セキュリティポリシーに関する説明はさてお き、こういった物理的セキュリティ、人為的セキュリ ティ云々というようなものを網羅的に明確化してい るセキュリティポリシーの策定状況についてはどう かと見てみますと、42.4%の事業体で策定済みであ るという回答が得られています。策定を進めている、 あるいは策定する予定を含めますと、95%というこ とで、ほとんどの企業が情報セキュリティポリシーに 関する策定については必要性を認識しているところ です。42.4%という数字が、多いか少ないかという 判断はいろいろあると思いますが、増加率としては前 回の調査に比べて9.3ポイントということで、それ なりの増加を示しています。この増加の理由はいろい ろと考えられるのですが、一つの大きな理由としては、 個人情報保護法の施行があげられます。 この情報セキュリティポリシーは、「実際作っても 動くのですか」「作っただけで終わってしまうのでは ないですか」というようなご意見もあるので、その情 報セキュリティポリシーの策定の効果について見て みますと、例えばセキュリティ教育です。先程ご説明 しました、全社の一人一人に教育しなければいけない ということで、非常に人的な負担もかかるものですが、 こういったものをセキュリティポリシー策定企業と、 していない企業を比べたグラフがあります。セキュリ ティポリシーという、社でしっかり情報セキュリティ を守ると明文化している企業の実施率は非常に高く、 6割近くで、実施予定も含めると、8割近くの企業に 至っています。ところが「セキュリティポリシーを作 っていません」という企業は、10%にも満たない状 況です。やはりポリシーは、一定の効果があると思い ます。 それから、緊急時対応計画です。14.5%の事業体 で作成済みです。これも多い少ないと言うのは、いろ いろご意見があると思います。中身を見てみますと、 だいたい規定されているのが部内の連絡体制とか、回 復・復旧等の対応です。これが多くの企業で規定して いるのですが、外部への広報がなかなかされていない 様子が伺われます。セキュリティに係る事案というの は、私個人の持論ですが、噂があっという間にネット で広がったりしますので、正確な情報を早くきちんと 広報するということが、企業の緊急時の対応として要 求されることだと思っています。最近、インターネッ トに限らず上場企業が、広報対応を誤って存続の危機 にまで至るような事例がいくつか見られるところで すが、とくにこのネットワーク上の事案についてはき ちんとした情報を素早く広報するということが、被害.

(5) 第 9 回 コンピュータ犯罪に関する白浜シンポジウム REPORT 拡大防止の意味からも非常に大事ではないかと思っ ています。 それから、今回のシンポジウムのテーマであります、 「匿名性」という話がございました。無線LANは古 くからある技術ですが、高額だったこともあって、普 及が進みだしたのは最近です。この無線LANは企業 でも相当使われており、利用している企業のうち、個 人情報等の重要な情報が流れているという企業が、全 体の54.3%あります。セキュリティ対策の実施状況 はどうかと見てみますと、暗号化は追加の装置も何も 必要なくできる基本的な対策ですが、この基本的な対 策である暗号化にしても、56.3%にとどまっており、 まだまだ改善の余地があると思います。先程匿名性で 触れましたが、通信内容が盗聴されたり、LANの中 を不正にアクセスされたり、それから犯罪の踏み台に 使われて、辿っていったら犯人以外の無線LANの利 用者にたどり着くという、そういった無線を介するこ とによる匿名性の増大、という事が非常に問題で、無 線LAN利用時の対策が課題だと思っています。 それから、個人情報の漏えいというところで少しご 説明させていただきたいと思います。 パソコン、記録媒体の管理ですが、パソコンの持ち 出し、あるいは持ち込み、こういったものを規制する 社内ルールを持っているという企業が徐々に増えつ つあります。その他、パソコンを廃棄した時の情報漏 えいに対する対策も33%ぐらいで、随分個人情報の 漏えい対策は、進展している状況が見られます。また、 パソコンの持ち出し持ち込みと言うのは企業のセキ ュリティポリシーと業務ポリシーとが競合する部分 でもありますので、いろんな修正を図りながら、ベス トな選択をすることが必要ではないかなと思います。 被害の発生状況を見てみますと、1番大きい数字を 示しているのがウィルスの感染で、45.5%の事業体 で被害を経験しています。それから次に多いのがPC の盗難です。なりすましやDOS攻撃の3倍という状 況で、ネット上の対策だけやっていれば良いというわ けではなく、やはり大容量の記憶媒体や、あるいはハ ードディスクの中に重要な情報が格納されているパ ソコン、こういったものの管理が非常に重要になって きています。それから、この被害の中でウィルスにつ いて、被害規模と原因を調べてみました。まず被害規 模は、約1割で、2年に1回ぐらいウィルスの被害が生 じているという状況です。それから、感染経路ですが、 ほとんど電子メールです。記録媒体の持ち込みとか、 あるいは私物パソコンをLANに接続した途端にL AN上にウィルスが感染しだしたという状況も2割 程度あるということで、やはりパソコンの持ち出し、 持ち込みという問題がここにも現れてきています。. 41. 企業のセキュリティ上の実施状況について、対策実 施の問題点を見てみたいと思います。まず1番多いの はやはりコスト面での問題で、次に多いのが費用対効 果が見えないという点と、どこまでやればいいのかと いうような問題が多く見られています。それに続く問 題点としては、教育訓練の問題、従業員の負担がかか りすぎるという人的な問題も上位にきています。 以上、サイバー犯罪の検挙状況、トラブルの状況、 そしてセキュリティ対策の実施状況という、全体的な 情勢についてご説明させていただきました。 4.最近の情勢(フィッシングの脅威) 次に、フィッシングという最近の脅威となっていま す問題に対する取組み、それから全体的なサイバー犯 罪に関する警察の取組み、こういったものについて、 若干ご説明させていただきたいと思います。 フィッシングとは、ご存知の方も多いと思いますが、 偽のホームページを金融機関などに似せて立ち上げ、 そこに誘導するようななりすましのメールを不特定 多数に送付し、受け取った消費者が騙されて、個人情 報を入力してしまい、その結果、犯罪を行おうとする 者に重要な情報が渡ってしまうというのが一連の基 本的な流れです。この被害状況ですが、なかなか確た る被害規模を示す資料は示されておりません。わが国 では幸いなことに、フィッシングメールのほとんどが 英語で発送されていたという状況でしたので、国内で の被害は、欧米ほど発生しておりませんでした。ただ し、平成16年11月に、我が国初のフィッシングの被 害を警察が認知し、現在捜査中です。それから国内の クレジットカード会社が、昨年9月から10月の間にフ ィッシングで取られた個人情報をもとに偽造のカー ドが作られ、約150万円の被害が発生したということ を発表しています。また、今年(17年)の3月にUF J銀行を騙るフィッシングメールが、不特定多数に送 付される事案が発生しました。このときは、警察とし ても、重点的に抑止対策を講じて、まずフィッシング サイトが立ち上げられていた国に対して、捜査機関を 通じて、フィッシングサイトを削除するように要請し、 まもなく削除したという回答が寄せられました。それ から各都道府県警察の相談窓口に寄せられたものを 集約しているのですが、フィッシングサイトに個人情 報を入力したという相談も寄せられました。そういう 時には、すぐに金融機関に被害防止策を聞きなさいと か、パスワードを今変えられるのでしたら、すぐ変え なさいというようなアドバイスをして、被害の抑止を 講じてきたところです。 個別のケースの説明を若干させていただきました.

(6) 第 9 回 コンピュータ犯罪に関する白浜シンポジウム REPORT が、警察の対応における基本方針としては、詐欺に至 らない段階、つまりフィッシングの段階で防止・検挙 を徹底的にやろうということです。それから、フィッ シング行為自体を取り締まろうということで、平成 16年12月24日を契機に、関係業界団体へフィッシン グ対策について「しっかりやってください」というよ うな要請をさせていただきました。それとともに、各 都道府県警察に対してフィッシング110番という、 「フィッシングの情報を何でも受け付けなさい。相談 を何でも受けてしっかりその被害防止のアドバイス をしなさい。」という指示文書を流したところです。 フィッシングの流れの中で、詐欺等の被害が発生した、 ということでは遅いのです。詐欺に至る前の段階で徹 底的にフィッシングを押さえ込むということで取り 組んでいます。 5.警察の取組み 最後に、警察の取組み、サイバー犯罪対策に対する 全体的なご説明をさせていただきたいと思います。 まず、組織体制です。サイバー犯罪の捜査の問題点 として、まず1つは、どの犯罪においてもネットワー クを通じて行われるということです。オークション詐 欺のように100人程度の被害者が、あっという間に出 るということです。 つまり、広域にわたる犯罪というのが1つと、もう 1つは捜査に関して技術的な知見が必要になるとい うこの2つの問題点があります。こういったものを受 けまして、昨年の4月に整えた体制ですが、まず警察 庁に「広域性というものにしっかり対応しよう」とい うことで、サイバー犯罪取締りの指導・調整を行う情 報技術犯罪対策課を設置しました。それから2番目の 技術的な知見というものの担当ということで情報技 術解析課、これは実は平成11年から技術対策課とい うことで置いていたものが改組したのですが、この2 つの柱を警察庁において各県への指導・調整・技術支 援を行い、サイバー犯罪に強力に立ち向かっていくと いう体制を整えています。また各都道府県警察では、 あらゆる犯罪がサイバー化してくるという状況を受 け、県警のほとんどの部門をまとめてサイバー犯罪プ ロジェクトということで、都道府県内の事案に的確に 対応していく体制を整えています。また、サイバー犯 罪捜査官や、情報セキュリティアドバイザーというよ うな捜査の専門家など、人材の育成についても取り組 んでいるところです。 インターネットに関係する法規制はたくさんある のですが、ここでは警察が所管している法律だけをピ ックアップしました。年を追って順にご説明させてい. 42. ただきますと、平成10年に、アダルトサイト対策と いうものが問題になり、これに対応するために風営法 でアダルトサイトの規制を追加する改正を平成10年 に行いました。それから平成11年は、不正アクセス 禁止法を制定しました。またネットオークションが盗 品売買の場になっているという問題から古物営業法 を一部改正したのが平成14年です。それから、出会 い系サイトですが子供に対する犯罪の温床になる、あ るいは子供が犯罪者となっているという状況にある ということで、出会い系サイトの規制を平成15年に 新規の立法としている、というところです。 警察の組織体制、法整備について説明してきました が、インターネットというのは、実際に基盤として扱 っているのは民間、産業界、関係機関の方々です。こ ういった方々の連携なくしてはサイバー犯罪対策と いうものを適切に行うということが難しくなってき ており、産業界、関係機関との連携に非常に重点を置 いて、警察庁、都道府県警察両方において取り組んで いるところです。警察庁では、総合セキュリティ対策 会議を設けまして、有識者の方々からその時々の問題 点について議論していただいています。昨年度は、ネ ット上の自殺予告への対応で、自殺というのは実は犯 罪ではないのですが、こういった犯罪でない事件にお いてどうやって自殺企図者までたどり着くかという 部分でのプロバイダとの協力や、あるいはインターネ ットオークションを利用した知的財産権の侵害など を検討しています。また都道府県警察では、地元に密 着した活動を行っていただいています。プロバイダ連 絡協議会等との活動を行っていただいたり、あるいは、 学校教育機関との連携、ネットオークション事業者へ の指導を行ったり、連携を進めているところです。 また、最も重要なことは、やはり国民一人一人が情 報セキュリティの意識を持っていただいて、犯罪にあ わないように気をつけていただくというのが大事で ございます。警察庁のホームページをはじめ、都道府 県警察ホームページでは地元に密着した情報提供を 行っています。それからセミナーや講演会につきまし ても、さまざまな機会を通じて、サイバー犯罪に関す る説明や注意点を情報提供しています。以上で、警察 が取り組んでいるサイバー犯罪対策の全体を説明さ せていただきました。 6.まとめ 交通安全の世界では3つのE、Education(普及啓発)、 Enforcement(取締り)、Engineering(技術)、こう いった手法を用いて事故から人を守ろうと取り組ん できたわけです。サイバー世界も、交通の世界とそん.

(7) 第 9 回 コンピュータ犯罪に関する白浜シンポジウム REPORT なに変わるものではないと考えています。サイバーの 世界でも普及啓発により個々の人の意識を高め、ある いは何か事案発生時にしっかり情報を伝達するとい うことも大事ですし、もちろん取締りによる犯罪者の 摘発、あるいは再発の抑止も大事だと思っています。 また、技術については言うまでもないことですが、最 新の技術に携わっている人、あるいはその技術を支え. 43. ている産業界やプロバイダの人との連絡、連携がこの サイバー犯罪対策の中でも柱として重要だと考えて います。 以上、「サイバー犯罪対策の現状と対策」と言うこ とでご説明させていただきました。今日の説明が少し でも皆様のご参考になれば幸いでございます。.

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