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栄養学から 骨代謝に関与する食品・栄養素

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四国医 誌 55 巻6号 207 ~211 DECEMBER ,52 9991 (平1 )1 720

栄養学から

骨代謝に関与する食品・栄養素

森 田 恭 子 , 谷

徳島大学医学部病態栄養学教 室 (平成1 年 9 月1 20 日受付)

佳 子

はじめに 高齢化社会を迎え 深刻な問題である骨粗転症への対 策を 図るため,その危険因子から予防,治療に至る研究 が進められてきた。 7991 年, rawajiFu らは,広島県の 約0054, 人を対象とした41 年間に及ぶ日本で初めての大 規模コホート研究をまとめ 大腿骨頚部骨折の危険因子 について報告 した)1。その結果,牛乳摂取不足,アルコー

ル摂取, Body Mass exInd (BMI )低値,遅い初潮,椎

体骨折の既往,子供を5人以上もつ女性など6つの項目 が危険因子として示された(図1)。栄養学的に 注目す べき点は,やはり牛乳の摂取量が少ないことがリスクと なっていることである 。 さらに興味深いことに,これら の危険因子を,個人レベルで改善できる因子とできない 因子に分類して骨折リスクを検討すると,たとえ改善で きない因子を持っていても 改善でき る危険因子が少な いほど,骨折のリスクが低下する 。 これらの結果は,遺 伝や環境など多因子によって発症する骨粗老症は,「牛 図I 骨粗転症の危険因子 広島におけるコホー卜調査 対象:4573 人 男 女 年 齢 :58 .5± 1.22 歳 期間:14 年間 善 b λ F L の 圃 貝 子 措 折 図 、 } 骨 下 な ョ 部 低 能 l 占 v 頚 険 恥 骨 危 苧 腿 の 恥 大 「 l z t 」 な 取 往 少 摂 既 カル 取 一 直 潮 折 数 摂コ民初昼間の 乳 ル 川 い 体 供 牛 ア 引 遅 推 子 「 E I E L 『 子 - - 因 - - な - - き - 一 で 一 一 益 田 一 一 改 一 乳を飲む

J

という 一つの食習慣によって予防できる可能 性を示しており,骨粗惹症が生活習慣病となる理由であ る。すなわち,骨粗怒症予防において栄養,食習慣は極 めて重要な 因子と考えられ,今回とくにカルシウム摂取 の現状と対策についてまとめた 。 1 .日本人のカルシウム摂取状況 日本人成人のカルシウム所要量 は1 日gm006 で,アメ リカやイギリスと比較して非常に低い設定である(図

2

。) これは,各国の栄養所要量の定義や算出 方法の違いに起 因しているが,人種差などを考慮、 しても日本のカルシウ ム所要量 は低いと考えられる 。 日本人の高齢女性を対象 としたカルシウムバランス・スタデイーの結果では, 1 日g8m87 のカルシウム摂取で,ょうやくカルシウム出納 がゼロになり, 高齢者の骨量低下を予防するためには, 最低でも 1日mg080 以上のカルシウム摂取が必要である と思われる2)。さらに ,平成9年度国民栄養調査の カル シウム摂取状況の結果 を見ると, g0m06 の摂取に満たな い人の割合は実に60% を占め(図2),日本人はカルシ ウム摂取が少ない生活習慣であるといえる 。従って,

H

本人は少ないカルシウムを効率よく吸収して利用する工 夫が必要になる 。 2. カルシウムの吸収を高めるビタミン D (図 3) Dauson 700IU /日とカルシウムgm005 /日 を3年問服用させる と,大腿骨頚部, 脊椎の骨量減少が抑制され,脊椎以外 の骨折発生率が低下したことを報告した3。 このような) 背景か ら, 骨粗軽症の予 防法として,カルシウムととも

(2)

208 図2 日本人のカルシウム摂取割合 と女性のカルシウム所要量 の比較 600 ~800mg 未 満 (平成9年度国民栄養調査) 年 齢 日本 アメリカ イギリス (1499 ) (1499 ) (1989 )(rn g/日) 6 - 8 歳 005 800 - 1200, 800 9 歳 006 1 0 歳 007 1司200 1 1 - 18 歳 1司200 - 1500, 1 9 - 24 歳 006 1司000 - 1,200 25- 50 歳 1,000 5 1 - 59 歳 ,1500 (1司000 ) 1司005 (1‘000 ) 6 1 歳以上 1‘200 妊娠期 009 1‘200 - 1050, 1司500 授乳期 1司010 ( )はホルモ ン補充療法の場合 図3 ビタ ミンD とカル シウム吸収 森 田 恭 子 他 にビタミン

D

の摂取が勧められてい る。 ビタミンD は 骨 粗 軽 症 の 治 療 薬 の一つであるが,通常は ,食物から摂 取するか,皮膚で紫外線に よ りコ レス テロールを原料として合成される 。吸 収 あ る い は 生成 さ れ た ビ タ ミ ン

D

は, 肝臓において52 位の水酸化 を受け, さ らに腎臓において活性型の, 215 -ジヒ ドロキシビタミンD (1 , 25 (0H )2D ) となる 。1, 25 (0H )2 D は腸管からのカ ルシウム吸収に重要な働きをしており, ビタミン

D

の不足は,腸 管 でのカル シウム吸収の低下をもた らすおそれが ある 。T akeuchiらの調査 によると, 健 常 な 若 壮 年 男 子 の ビ タ ミ ン

D

摂 取 量 は312IU / 日 , 女 子 でU4I18 / 日, 施設の高齢者 では1 71 IU / 日といずれ も所要量(0 01 IU / 日) を満たしてい 量 有 含 D

、 ミ タ

H υ た あ 目 亘 分 回

中 口 間 食 、 ふ -E 釦山山劃軒ろ創出白川町きき臓卵乾けけ覗 ヨ ( ( 焼 塩 く ( ( ( 付 付 肝 全 、 た た 勾 い鮭篇(まばま砥お身身、 、 げいい れ 塩 ( お ん さ ん 養 つ 脂 脂 鶏 卵 E j ぎ つ ほ さ ( か 、 、 鶏 く し 生 な か り ス ス き 干 か ; ぶ 一 一 黒 口 口 ブ リ 豚 肉 牛

200 400 600 800 0001, 0,201 01,40 (日本食品ビタミンD成分表より計算) 、 ‘ , , U , e ・ ‘ 、

(3)

骨代謝に関与する栄養素 た4。 ビタミン) D は,魚介類や,キノコ類に多く含まれ, 週 2, 3回の魚介類の摂取で十分量補給可能と思われる。

3

.

ビタミン D

の有効性 生体内において, 1, 25(0H)2D はビタミン D 受容体 2 0 9 タイプが存在し, ATG 型をM 型 ACG 型をm 型とし た。閉経前の健康な女性を対象に腰椎骨密度と

VDR

遺 伝子多型とを比較したところ M M 型に比し m m 型は 有意に高値を示した。世界各国で行われたこの多型につ いての追試結果では ほとんどの人種間で骨密度との相 関関係が認められた9-10)。唯一,フランス人で相関が認

(VDR

)を介して,腸管のカルシウムチャネル5)や,カ められなかったが,フランス人が豊富なカルシウムを含 ルシウム結合タンパク質の転写を充進させ,カルシウム む飲料水を摂取していることと関連していることが考え 吸収を促進する 。高齢者でカルシウム吸収が低下する原・ られた11。 すなわち,骨粗緊症の遺伝的素因をもってい) 因のーっとして,加齢に伴う

VDR

の発現低下や反応性 たとしても,生活習慣を改善することにより予防できる の低下が考えられ6),カルシウム吸収を助けるビタミン

D

は,単純に多く摂取すればよいわけではなく,

VDR

によって規定される。そこで,骨粗繋症を遺伝学的に予 防することを目的とした

VDR

遺伝子多型解析が進めら れ,

VDR

遺伝子の多型と女性の骨密度との相関関係が 検討された。 しかし7) 4991 年nsoorriM らが初めて報 告した多型に関する評価はばらついており,またこの多 型が日本人および骨粗軽症患者で少ないことから,我々 は新たな多型部位を見いだし検討した8)。図

4

に,

VDR

遺伝子の翻訳開始点において見いだした多型を示した。 多型が検出されたエクソン

2

の配列には,従来翻訳開始 点と考えられているコドンATG と異なるACG を示す 可能性があると考えられる 。従って,早期に骨粗怒症の 遺伝的素因を検出し,最大骨密度を高めるような栄養療 法を確立していくことが今後の課題である。

4

.

リンの過剰摂取問題 一方,カルシウムの吸収を抑制する因子のーっとして リンがあげられる 。 日本人のカルシウム摂取不足に対し, リンは食物に豊富に存在しており,日常の食生活で不足 することはない。 日本人のリン摂取量を示したデーター がないため,我々は農林水産省が発行する食糧需給表を もとに日本人のリン摂取量を算出した(表1)。食糧需 図4 ビタミンD 受容体遺伝子多型と骨塩量 1A 18 1C 2 3 4 5 6 7 8 9

VDR

e

n

e

g

_

MM: GGATGGAGGCAATGGCG ↓ mm: GGA c GGAGGCAATGGCG 人種人数(人)年齢(歳) %MM %Mm (Ff) %mm (FF) 骨 密 度 文 献 日本人 239 24 ・45 13 55 32 M<m 8 (閉経前) (腰椎) メキシコ系 1 0 0 59 ・82 15 48 37 M<m 9 米国人 (閉経後) (腰椎) 米国白人 82 20 ・40 18 45 37 M<m 米国黒人 72 (閉経前) 4 13 65 (大腿骨頭) 10 フランス人 174 13 ・56 16 44 40 M=m 11 (閉経前)

(4)

2 1 0 表l 食糧需給表から算出した日本人のカルシウム・リン供給量および PaC/ 比 昭和35 年 昭和50 年 平成7年 Ca (g)m 353.6 .9406 581.7 P (g)m 1242.9 19.331 1420.6 P/Ca 比 15.3 .892 442. 類別P/Ca 比 較類 1.91 .018 07.1 豆類 2.3 1.3 9.2 野 菜 類 8.1 8.1 8.1 肉類 .833 24.5 .223 鶏卵 7.3 73. 7.3 牛乳および乳製品 9.0 9.0 9.0 魚 介 類 3.4 44. 3.4 給表は,我が国で供給される食糧の生産から最終消費に 至 るまでの総量を示すとともに,国民一人あたりの供給 純食料および栄養量を示したものである 。 カルシウムも 同様に算出した結果,国民栄養調査の結果とほぼ同様な 値を示し,この算出方法は信頼できるものと考えられる。 昭和53 年以降の推移を見ると カルシウム摂取量の増加 に伴い,リン/カルシウム比は改善されつつあるが,カ ルシウムに対してリンの摂取は

2

倍以上と適正量以上で あった。また,リンは食品添加物にも含まれているが, 食糧需給表には加味されておらず 実際はさらに多くの リンが摂取されているものと推察される 。過剰なリンの 摂取は,直接カルシウムと結合して不溶性の複合体を形 成し,吸収を問害する。その結果,低カルシウム血症や 高リン血症をきたし, PTH の分泌充進,さらに骨吸収 が尤進することになる 。従って リンの過剰摂取への対 処が必要と考えられるが加工食品やインスタント食品 に偏りがちな現代の食生活では摂取制限は困難である。 加工食品由来のリン付加量を明確にすることや,生体に 悪影響,特に骨代謝異常をもたらすリン摂取量 を示すこ となど,今後の課題は多い。 おわりに 現在の骨粗繋症への栄養学的な対策は,カルシウム摂 取を中心とした食生活習慣の改善といえる 。 また,ビタ ミン

D

およびリン以外にも多くの栄養素が,カルシウ ムの吸収を左右しており,各栄養素の作用を把握し,バ ランスよく摂取することが重要である 。0020 年には,日 本人の栄養所要量に初めて上限値が設定されることとな 森 田 恭 子 他 り,国民の健康増進を図る対策は,欠乏症を目的とした 考え方から,過剰摂取への対策へと移行しつつある。そ んな中,カルシウムの摂取不足が骨折を招く現状に対応 し,より有効な予防対策を確立 していく必要性がある 。

文 献

1 ) Fra,wajiu ,.S .igasaK ,.F Yamada, ,.M and Kodama, K . : ksiR srotcaf rof pih erutcarf ni a Jesenapa .trohoc J . Bone .rneiM ,.seR ( 7 ) : 921 98 ,4001 7991 2) ,ihsineU ,.K,adihsI H .. ,imeaK A,i叫karihS ,.M te.la : Calcium requirement ni eesnapaJ ylredle .elpoep B o n e , ( 5) 32 : S,806 8991 3) Dawson-Hughes, ,.B.sirraH ,.SS ,llarK ..AE and .lallaD G E . s: tceffE cfomiulca and nimtaiv D sa-entempplu t i o

n on bone tyisned ni men and women y56 rsea fo a g e oro.redl E.N.lgn .J,.deM 733 )01( ,: 6676-07 7991 4 ) T,hiuckea ,.A o,anOk T ..,adihsI ,.Y and ,ihsayaboK :.T E f f e c t s dfoyratei nimtaiv D iekatn on plasma slevel o f pdoiyrhatra hormone and nimtaiv D msetiolbate i n yhtalhe e.nespaJa .erniM etylortcelE ,.btaeM 12 ( 1 -3 ) : 2,2227-1 5991

5) derop,Hoen ,.HGJ van der Kemp, ARCM., and ,gotraH A . , van de G.faar J,FS ate:.l raluecolM noitacifitnedi o f teh lacipa Ca2 + clnehan ni,1inmativxyordyhid-25 D 3 -r e s p o n s i v e .ailehtipe ..JloiB ,.emhC 472 ,)31( -5783 8 3 7 8 , 1 9 9 9 6) Kinyamu, HK .,,rehglalaG ,.CJ .lharP JM. , DeLuca, H F . , ate.l no: tiaicossA between lanitsetni niamtvi D r e c e p t o r

, calcium ,noirptosba and serum ,l52 d i h y d r o x y v i t a m i

n D in normal young and ylredle women. .Je.onB r.enMi ,.seR ( 621 ,) ,82-9229 9791 7 ) H,rlessau MR., ,dleiftihW ,.KG ,relssuaH CA ., ,heisH J C . , ate.l : The ralecnu nimativ D r:rotpece -igoloib c a l and arulecolm yroatluger seitreporp .delaever .J B o n e . .erniM Res 吋(31 3 ),94-352,3 9891 8) ,iarA ,.H Miyamoto, ,.K ,intakeaT ,.Y Yamamoto, ,.H e t a.l A v: intami D rrtoepec gene polymorphism ni t h e noitalsnart noitaitini onodc tc: effe pnonietor -ca t i v i t y and noitaler ot bone larenim ytisned ni J -apa nese women. .J Bone er.niM ,.seR ( 6 ) : 921 15 9 2 1 , 1 9 9 7 9) s,sorG ,.C,llahselccE ,.RT ,yolalM ,.JP ,alliV ,.ML te

(5)

211 al. : The presence of a polymorphism at the translation

initiation site of the vitamin D receptor gene is asso-ciated with low bone mineral density in postmenopausal Mexican-American women.

J.

Bone Miner. Res., 199611 (12) : 1835-40

premenopausal American black and white women.

J.

Bone Miner. Res., 12 ( 7) : 1043-1048, 1997

10) Harris, SS., Eccleshall, TR., Gross, C., Dawson-Hughes, B., et al. : The vitamin D receptor start codon poly-morphism (FokI) and bone mineral density in

Osteoporosis and nutrition

Kyoko Morita, and Yoshiko Tani

11) Eccleshall, TR., Garnero, P., Gross, C., Delmas, PD .. et al. : Lack of correlation between start codon polymorphism of the vitamin D receptor gene and bone mineral

density in prepenopausal French women: The

OFELY study.

J.

Bone Miner. Res., 13 : 31-35, 1998

Department of Clinical Nutrition, The University ofTokushima School of Medicine, Tokushima

SUMMARY

Osteoporosis is considered to be one of the life style related disease. Therefore, from

the viewpoint of osteoporosis prevention, daily diet and nutrient intake are important. A

Japanese cohort study showed that low milk (calcium) intake may increase the risk of hip

fracture. However, daily calcium intake was about 579 mg/ day on average in 1996, which

is lower than the dietary allowance for calcium recommended by Japanese government (600

mg/ day). Then, we focused on appropriate nutrient that can be modified calcium

absorp-tion. Vitamin Dis important because age-related vitamin D deficiency lead to malabsorption

of calcium. Vitamin D supplementation has been shown to retard bone loss and reduce hip

fracture incidence in elderly women. Furthermore, excessive intake of phosphorus

pre-sumably leads to bone impairment, life style particularly on food habit depending on retort

foods, containing high phosphorus, must be changed. In conclusion, an adequate intake of

calcium together with nutrient balance plays an essential role in maintaining and promoting

health and preventing osteoporosis.

参照

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