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〈研究論文〉特別活動に関する現代的考察--改訂学習指導要領を根拠として

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Academic year: 2021

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(1)39. 特別活動に関する現代的考察 ―――改訂学習指導要領を根拠として――. 織田成和. The modern consideration on special curricular activities -------The latest revision of course of study------. Shigekazu ODA. 本稿の内容は下記のとおりである。 第 1 節 学校教育における特別活動の役割 1.1 現代の子どもと特別活動 1.2 学校と特別活動 第 2 節 特別活動の意義と特質 2.1 特別活動の由来 2.2 特別活動の目標 2.3 特別活動の理念 第 3 節 児童・生徒会活動や学校行事等教科外活動の実際 3.1 生徒会活動の在り方 3.2 学級を中心とする活動 3.3 ホームルーム活動 3.4 学習指導要領に見る特別活動 近畿大学工学部教育推進センター Center for the Advancement of Higher Education Faculty of Engineering, Kinki University.

(2) 40. 織田 成和. 3.5 学校行事の種類と意義 ①儀式的行事 ②文化的行事 ③健康・安全体育的行事 ④旅行(遠足)・集団宿泊的行事 ⑤勤労生産・奉仕的行事 第 4 節 クラブ・部活動の意義と実態 4.1 クラブ・部活動の現状 4.2 クラブ・部活動の在り方 第 5 節 特別活動の課題と展望 Contents 1.The role of special curricular activities in school education 2.Significance and characteristic of special curricular activities 3.Practice of extra curricular activities of pupils and students assembly activities and school functions 4.Significance and realities of clubs and circles activities 5.The subject and prospect of special curricular activities 第1節 学校教育における特別活動の役割(The role of special curricular activities in school education ) 1.1 現代の子どもと特別活動 平成 18 年 12 月公布の教育基本法第 10 条で特に家庭教育が取り上げられている。この条 項は旧教育基本法にはなかったものである。現代は少子化のため、兄弟関係も希薄である。兄 弟関係は他人と接する前の予備的訓練である。甘えが許される親子の縦の関係から、平等にか つ対等に競争も行われる他人付き合いという横の関係への移り変わりの訓練期間である。児 童・生徒の社会化という点で重要な時期である。しかし兄弟関係が少ないため、幼児期の喧嘩 を含めて、 人間関係の切磋琢磨もない。 当然思いやりなどの相互尊重も培われない。 その結果、 日常生活はもちろん人間関係に必要な相互信頼や相互援助もないので社会的訓練は培われな い。このように現代の家庭は子どもの成長発達にとって、人格形成上困難な面が多い。友人が いなくても、自分一人で楽しみながらいくらでも時間をすごせるものが身の回りに氾濫してい る。子ども部屋をもらえて、自分だけのテレビやビデオをはじめとして、ゲーム、オーディオ 機器、携帯電話等はほぼ完全に行き渡っている家が多い。あまり、裕福ではない家庭でも少子 化のためにこれらの取得願望がかなえてもらえることが多い。このような成長発達を成人にな.

(3) 特別活動に関する現代的考察. 41. るまで続けた場合、生じるのが一般の大人社会になじめずに、定まった職業に就けない、いわ ゆるアルバイター、フリーターやニート(イギリスの Not in Education、Employment or Training の日本語への応用)の出現である。いわゆる避(非)社会的行動である。三無主義(無 気力、無感動、無関心)も言われて久しい。特別活動の最大の特色はこれらの問題を解決する のに有効な集団活動であり、特に効果の高いホームルーム活動は理想である。学校教育におけ る生徒の健全育成に最大の貢献をする分野である。 当然喫緊の課題であるキャリア教育の趣旨 の職業意識の啓培及び徹底も含まれる。この活動によって、生徒指導や進路相談等の教育相談 が、家庭との密接な連絡によって適切な指導として行われることが期待される。しかも特別活 動の運用方法によってはスクールカラーをアピールできる。 1.2 学校と特別活動 平成 20 年 1 月に中央教育審議会は「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校 の学習指導要領等の改善について」答申を行った。その答申によって、当然特別活動も改訂さ れている。 学習指導要領の特別活動編は「第1 目標」「第2 各活動・学校行事の目標及び内容」「第 3 指導計画の作成と内容の取扱い」の3部構成になっている。「第2 各活動・学校行事の目 標及び内容」は学級活動(高校はホームルーム活動)、児童会活動(中学・高校は生徒会活動)、 クラブ活動(小学校のみ)及び学校行事から構成されている。小学校の場合、4年生以上の学 年の違う児童のクラブ活動が特色である。異年齢の児童が同好の士を構成し、一つの目標に向 かう団結心を培うのに役立っている。 普段は同年齢の同級生だけのつきあいがクラブ活動にな ると異年齢の学年と交流が行われるが、このクラブ活動は中学・高校になると部活動の視点か らであろうが学習指導要領から削除されている。小学校のクラブ活動については、学校や地域 の実態等を考慮しつつ児童の趣味・関心を踏まえて計画し実施できるような方法になっている。 特別活動の1例として高校の最初の項目であるホームルーム活動は、高校生が自ら積極的に かつ自発的にホームルーム会議や委員会を通じてコミュニケーション能力を訓練する場にな る。小学校や中学校の学級活動や高校のホームルーム活動の時間には、学級会活動や学級内の 指導が含まれ、卒業後の進路と将来の生き方の選択が得られる機会も考慮されている。 特別活動のうち、児童会も生徒会も学校での活動は全校レベルで行われる。その指導計画の 作成においては、各教科、道徳と総合的な学習の時間などとの相互還流的な関係を図り、家庭 や地域の人々との連携を工夫することになるが、活動の趣旨から考えると明確な指針が必要に なってくる。 生徒にとって部活動などは、自分の趣味や特技を動機あるいは根拠にして、自発的意欲や熱 意をもっているので活動させやすいが、生徒会活動は義務感のみで参加している生徒が多い。 それゆえ、 将来の社会生活や自治能力及び政治参加の形態習得のための自分の権利として意識 を向上させ、内面から積極的に参加させるなどの指導が必要である。.

(4) 42. 織田 成和. 学年会や生徒総会は学校運営への生徒参加によって、 学校経営への協力的活動として望まし いものになる、そのプロセスにおいては、理性の伴う自由な立場で、自治的かつ民主的な活動 が要求される。これは教員や学校側からの押し付けではなく、生徒の自主的な政治活動への積 極的育成が期待できるであろう。 他に学校行事も5種類あり、主催は学校であるが、可能な限り生徒に運営を任せるほうが教 育目標を達成するのに役立つと考えられる。 第2節特別活動の意義と特質(Significance and characteristic of special curricular activities) 2.1 特別活動の由来 現在の学校教育で教科をはじめとして体系化されている大部分の領域は科学的・社会的に評 価が定着してから学習指導要領及び教科書等によって学校教育に導入されてきた。道徳も我が 国独自の歴史的慣習や風土に加えて、元来は宗教に根源があったが、永い間に日本の国土に定 着した行事や教義等を根拠に「人間のあり方」として倫理学的に体系づけられたものが、集約 されて目標や指導内容になっている。 このように学校教育では一般に科学が客観的に裏付けら れてから、理論も教育的に精選され、教科や道徳の授業内容として実践に移されている。 これに対して、特別活動は過去にさかのぼると、教科外の活動をほとんど自由研究や実践と して行っていたものを特別(教育)活動として一括することによって、実践や実態が先行してき た。特に戦前から重視されていた儀式や集団宿泊も明治時代に始まり、理論があとからつけら れたものが多い。このように特別活動は学校現場の発達の中で自然発生的に形が整ってきたも のが大部分である。そのため、他領域に比べて理論研究が遅れた分野である。 現行の学校教育は教科、特設道徳の時間(小・中学校のみ)、総合的学習の時間それに教科外 活動の領域で構成されている。当然この教科外の活動が特別活動として一括されているが、そ の内容は多岐にわたっている。ちなみに英語は extra curricular activities あるいは special curricular activities である。これは昭和22年には教科としての「自由研究」かクラブ活動 などの形で記載されていた。 昭和26年の学習指導要領によると小学校は教科以外の活動とし て,中学校や高校は特別教育活動として扱われている。このように特別活動の発足当時は特別 教育活動と学校行事は別の領域であったが、整理されて特別活動になり、小学校及び中学校は 昭和43~44年に、高校は昭和45年にそれぞれ学習指導要領によって再編されている。こ の時、人間形成における調和と統一が重視されている。これらの過程のなかで、カウンセリン グ、ガイダンス及び生徒指導との関わりも論じられている。学習指導要領に関する法的根拠は 学校教育法施行規則(第 50、72、83、126、127、130 条)である。 道徳教育は学校教育全体で行うのを第一義とし、実践がなければ意味がない。その実践は普 段の学校生活、特に特別活動に委ねられる。人間関係や社会集団からの視点で見ると、小学校.

(5) 特別活動に関する現代的考察. 43. や中学校の学習指導要領道徳編の内容の2「主として他の人とのかかわりに関すること」や 4 「主として集団や社会とのかかわりに関すること」 はその実践が特別活動によって達成される ことが多い。それによって児童・生徒の道徳教育に貢献できる。このように道徳の領域と特別 活動の関係は密接である。その意味でもペスタロッチの「生活が人間を陶冶する(Das Leben bildet)」の理念はまさに特別活動に表れている。つまり、心身の調和のとれた健全な人格が 特別活動の望ましい集団活動によって形成されることが期待されており、教育基本法に謳って いる人格の完成の手段になる。いずれにしても、最近の教育のスローガンである「生きる力」 を育成するという視点では、特別活動の方が教科より重要な意義をもってくる。 2.2 特別活動の目標 特別活動の目標は小学校の場合「望ましい集団活動を通して、心身の調和のとれた発達と個 性の伸長を図り、集団の一員としてよりよい生活や人間関係を築こうとする自主的、実践的な 態度を育てるとともに、自己の生き方についての考えを深め、自己を生かす能力を養う」と掲 げており、「生きる力」の基礎になる。中学校の目標は「望ましい集団活動を通して、心身の 調和のとれた発達と個性の伸長を図り、集団や社会の一員としてよりよい生活や人間関係を築 こうとする自主的、実践的な態度を育てるとともに、人間としての生き方についての自覚を深 め、自己を生かす能力を養う」ものであるが、高校の学習指導要領は「望ましい集団活動を通 して、心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り、集団や社会の一員としてよりよい生活や 人間関係を築こうとする自主的、実践的な態度を育てるとともに、人間としての在り方生き方 についての自覚を深め、自己を生かす能力を養う。」である。この在り方は年齢と発達段階が 根拠になっている。これらの目標に基づいていくと特別活動は精神的な「生きる力」や豊かな 人間性育成の原動力になる。人間には種々の性格がある。その個性のために、必然的に多様な 集団が生まれる。その多様な高校生の集団を、切磋琢磨して共に向上させていく指導が必要で ある。人格は成長の過程で望ましい人間関係によって磨かれていく。 小学校、中学校及び高校も特別活動の目標はほぼ同じである。書き出しの「望ましい集団活 動を通して、心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図」るのは,3校種とも共通である。い ずれにしても、頭でっかちの秀才ではなく、心身の調和のとれた人間が望ましい集団活動によ って形成されることを期待している。その活動は個人と個人、個人と集団、時には教員との関 係による集団全体も含めて行われるものである。この集団活動は特別活動の主軸をなすもので ある。これによって人間関係を形成する能力が培われる。小学校では「社会」が抜け、「人間」 が「自己」になり、「自覚」が「考え」になっている。小学生には年齢相当の「社会や人間」 の用語に関する理解不足に対する教育的配慮が見られる。つまり、抽象的な社会の概念がない と考えられ、自分の所属する集団のみを対象としている。自分の身の回りの人間関係から出発 して将来の姿勢を培う文言である。小学校では「集団の一員としての自覚を深め、協力して」 と、個人的な自分という立場から脱却して、集団に目を向けさせ、自分は単なる一構成員とし.

(6) 44. 織田 成和. て所属集団に協力するという指導をするようになっている。 集団という概念から個人という概 念への移行である。中学校や高校では集団に加えて社会の一員であるという自覚を、また小学 校は「よりよい生活を築こうとする自主的、実践的な態度を育てる」ことを最終目標にしてい る。高校では、これに加えて人間としての「在り方」が考慮されて特性を出している。中学生 としての「在り方」だけにとどまらず、高校生は理想的在り方に加えてこれからの発展的「生 き方」を模索する方向性を示している。年齢的に現在の自分の日常生活や態度を常にふりかえ り、「自分はどうあるべきか」と常に内省しながら理想的在り方・生き方を自ら判断でき、か つ自覚を深め、改善できると考えられている。高校では、将来において自己を正しく生かす能 力を養うもので、それが成人への心構えになっていく。中学校でも個人及び集団の一員として の生き方を学んでいる。教科の授業は生徒にとっては一般的に受け身で行われるので、生徒同 士の人間関係はなかなか形成されないが、特別活動は自発的・能動的にかつ自主的・実践的に 行う項目が多い。その結果、自発性は当然のこととして、自律性や自立性が培われることにな る。部活動でスポーツや音楽・美術等の芸術分野で基礎的力量を磨いて、学校内の活動だけで は飽き足らずに全国レベルの高校野球大会をはじめとするマラソン、駅伝等のスポーツ大会や 合唱コンクール等に向けて全員が一丸となって、練習をすることによって達成感の喜びを得て 人格が磨かれていくことになる。これは部活動の成果である。遠足や修学旅行等の集団宿泊的 行事も社会科や道徳等でならったものを実際に体験するのに役立つ。その際、学校の創意工夫 を生かすとともに、 学校の実態や生徒の発達段階及び特性を考慮しながら適切な支援を行うべ きである。 平成 13 年の日本特別活動学会の調査によると、特別活動で育む力には以下のような順位付 けがなされている。 ①望ましい人間関係を築くことができる力 ②より良い集団生活や社会生活を築くために進んで力を尽くせる力 ③集団や社会のなかでの自他の役割や立場を理解し、自己の責任を果たす力 ④人格を尊重し、個性を認め合い、伸ばしていく活動を行う力 特別活動では、相互の理解や協力による人間関係を中心とする集団活動によって、係りや委 員及びその役割分担によって責任遂行能力が養成できる。 教科のような座学を中心とする授業 では得られない精神的・肉体的な磨きがかかることになり、学習指導要領の目標にいわれてい る心身の調和的発達がある。 人間は相互の人格尊重と援助による友人関係ひいては人間関係に よって人格が形成されていく。中学・高校という心身ともに成長するこの時期に、特別活動に よって人生の基礎を形成できる。逆に、集団の中にいても自分を見失わずに生きていける強固 な精神の持ち主になれるような努力も要求される。 年齢や社会性からみても高校時代の活動は 精神的・身体的に最も具体的な目標を持って、その達成に努力を惜しまない環境が与えられる.

(7) 特別活動に関する現代的考察. 45. ことが多い。高校では生徒同士の信頼だけでなく、教員に対しても人生の先輩として人間関係 に基づく尊敬を学ぶことになる。 2.3 特別活動の理念 特別活動は学習指導要領によると自己実現を目指し、 どの学校種もほぼ同じ自己の確立とい う理念で一貫しており、「自ら」が強調されている。その例として、自主・自立・自律(自己 制御力)・自覚・自己・自己責任・自発性・自治・自己指導能力・自己陶冶などの趣旨の単語 がキーワード的に随所に見られる。教育基本法でも「自主及び自律の精神を養う」と謳われて いる。これらの語句によって特別活動の意義や理念はおのずと表出してくる。この「自ら」は、 自分中心の「わが道をいく」的なものではなく、大部分の特別活動の形態である集団活動への 参加によって、「個人」の人間性の練磨を目指したものである。個性は自分一人だけで養われ るものではない。個性の伸長は集団生活に依拠している。集団への帰属意識によって連帯感が 培われ、自己実現を集団の団結と協力によって達成することになる。それによって個人的な資 質の育成が行われる。 集団が積極的かつ活発に運営されるためには、 リーダーシップやフォロアーシップが重要な 役割を果たす。その点では日本の学校体系は、全員が小学校、中学校、高校で、フォロアーと しての下級生特に一年生やリーダーとしての最上級生を3回ずつ経験することになり、クラ ブ・部活動でもそれが適用され、組織の活動要因として、社会に出てから大いに役立つことに なる。歴史的に日本の「長幼の序」が根付いている生徒の活動はリーダーの責任遂行能力のも とで、フォロアーが可能な限り団結して自発的・自治的に活動することが要求される。ただ、 教員には大所高所から要所要所をとらえて総合的に見守るヘッドシップの適切な指導が必要 である. 特別活動の内容に関して➀学級活動やホームルームは「学級・学校生活の充実と向上、生徒 が当面する諸課題に対応する活動」で、➁生徒会活動は「全生徒で組織する生徒会において、 学校生活の充実と向上を図る活動」であり、➂小学校では 4 年生以上の同好の児童がクラブを 行い、④学校行事は「全校または学年を単位とし、学校生活に秩序と変化を与え、学校生活の 充実と発展に資する体験的活動」である。次節で活動の実際について述べる。 第3節 児童・生徒会活動や学校行事等教科外活動の実際(Practice of extra curricular activities, pupils and students assembly activities and school functions 3.1 生徒会活動の在り方 生徒会は異年齢で構成される自治的活動である。全生徒が参加して運営するので、在学中の 集団生活の教育ばかりでなく、将来の国民の政治参加として議会制民主主義の訓練になる。学 習指導要領の目標は.

(8) 46. 織田 成和. 生徒会活動を通して、望ましい人間関係を形成し、集団や社会の一員としてよりよい学校 生活づくりに参画し、協力して諸問題を解決しょうとする自主的、実践的な態度を育てる ことにある。学校側も生徒会の意義を尊重し、可能な限り学校行事や他の行事の運営を任せる ことが重要である。生徒会活動は、「学校の全生徒をもって組織」し、「学校生活の充実や改 善向上を図る活動、生徒の諸活動についての連絡調整に関する活動、学校行事への協力に関す る活動、ボランティア活動などを」教員の適切な指導のもとに、生徒の自発的・自治的活動が 助長されるように行うものである。この活動は、生徒に広範囲の自治を可能な限り尊重させる 必要がある。教員の指導内容や教育方法などは、ケースバイケースである。これには学校側や 教職員のあらゆる面での指導体制が必要になってくる。これらの前提条件を考慮したうえで、 学年会や生徒総会という形態で「学校運営への生徒の参加」によってスムーズな学校経営への 協力的活動が望ましいものになる。その組織内のプロセスにおいては、自由で、自治的かつ民 主的な活動が要求される。その活動が将来の社会性を形成する。しかし当然ではあるが、生徒 会の対象として除外されるものに校長の権限に属すること、 特に教職員の人事及び学校財務に 関すること、生徒のプライバシーに関すること、学校教育法による教職員の職務に抵触するこ となどがあげられよう。 3.2 学級を中心とする活動 小学校や中学校では学級活動であり、高校はホームルーム活動である。学級(class)は教 科の授業を中心に考え、現在、標準定数を 40 人(公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定 数の標準に関する法律)としており、日本の公教育行財政制度の基準になる単位である。学級 は原則として最低1年間は固定した人間関係である。児童・生徒にとってその人間関係は好む と好まざるとに関わらず、宿命的なものであり、教師も宿命的に与えられた構成員を前提に学 級経営をスタートさせ、学級風土を形成していく必要がある。小学校では学習指導要領の学級 活動の目標を「学級活動を通して、望ましい人間関係を形成し、集団の一員として学級や学校 におけるよりよい生活づくりに参画し、諸問題を解決しょうとする自主的、実践的な態度や健 全な生活態度を育てる」と掲げている。中学校の目標は「学級活動を通して、望ましい人間関 係を形成し、集団の一員として学級や学校におけるよりよい生活づくりに参画し、諸問題を解 決しょうとする自主的・実践的な態度や健全な生活態度を育てる」ことである。 小学校の学級活動の内容は低学年、中学年、高学年の 3 段階にわけられている。これは今 回の改訂で新しく試みられたものである。 1-2 年生に関しては 「学級を単位として、仲良く助け合い学級生活を楽しくするともに、日常の生活や学習に進ん で取り組もうとする態度の育成に資する活動を行うこと。」 3-4 年生に関しては.

(9) 特別活動に関する現代的考察. 47. 「学級を単位として、協力し合って楽しい学級生活をつくるとともに、日常の生活や学習に意 欲的に取り組もうとする態度の育成に資する活動を行うこと。」 5-6 年生に関しては 「学級を単位として、信頼し支えあって楽しく豊かな学級や学校の生活をつくるとともに、日 常の生活や学習に自主的に取り組もうとする態度の向上に資する活動を行うこと。」 である。続けて共通事項として(1)学級や学校の生活づくり、(2)日常の生活や学習への 適応及び健康安全、に関して具体的に詳細が列挙されている。 中学校や高校における学級活動の内容はまず「学級(ホームルーム)や学校の生活づくり」 を意図しており、中学校の段階では、与えられた任務を分担して処理するという受け身の形で あるが、高校ではそれを積極的に「自主的な活動」にまで高めることを要求している。次の段 階は「適応と成長及び健康安全」である。これは青年の情緒不安定な時期の悩みおよびその特 有の課題の解決を学級活動やホームルーム活動に期待しているが、 他に中学校及び高校の共通 の課題として「自己および他者の個性の理解と尊重」等いくつか挙げられている。中学生には 社会の一員としての自覚と責任をもたせ、同時に望ましい人間関係を確立させる。ただボラン ティア活動に関しては意義の理解を要求しているのは共通であるが、中学校では「参加」であ るのに高校では「参画」となっており、企画段階への参加という意味で積極的意義が望まれて いる。他の項目では、中学・高校生の精神と身体の健康に留意し、安全な生活態度や習慣を形 成させ、特に中学生には性差の発達による指導を配慮し、そのことによって生命の尊重を再認 識させる。特に食育が強調されるにあたって栄養教諭の指示で正しい食習慣などを徹底させ、 心身共に安全な生活態度を習慣化させること等を謳っている。 次の段階は「学業と進路」である。在学中の学業生活の充実と、卒業後および将来の生き方 と進路を適切に選択する趣旨のこの項目は、中学校では「自主的な学習態度の形成」、高校で は「主体的な学習態度の確立」と個々人の自発的学習を期待し、そのための学校図書館の利用 を奨励している。中学校では進路適性の吟味と進路情報を活用し、高校では教科・科目の適切 な選択を行う。当然、その結果は進路を左右することになるので、進路情報を活用しながら、 自分の適性を吟味し、かつ理解することになる。このようなプロセスを経て望ましい職業観や 勤労観を中学校で形成し、高校で確立させる。この職業意識も含めてさらに高校では進路選択 と授業設計を主体的かつ具体的に決定させることになるので次に項を改めて詳述する。 3.3 ホームルーム活動 高校のホームルームの起源はアメリカの中等教育である。つまり、「学校における家庭」が 目標とされた。学校内の基礎的集団である学級を公的な家庭とみなし、家族のような雰囲気で 全員が自分の意見を自由な形で表現し、個人の問題を全員で話し合って解決し合うという生徒 指導の趣旨であった。クラスの集団で学級や学校の問題、学業の問題及び進路指導を話し合う 機会をホームルームの時間に学級担任主導でつくり、あとは会議の運営や話し合いの内容等は.

(10) 48. 織田 成和. 生徒に任せる方法をとるのが理想であろう。しかし、このすばらしいスローガンも空文化して いる。その悪い例として、ホームルームの時間を別趣旨の全校集会にあてている。これならま だしも遅れている教科の補講や受験準備の時間にされることがある。進学校でも在学中に脱落 するものが出たら、このような時間の誤用も一因と言わざるを得ない。 ホームルームは高校時代の基盤となる生活の単位である。 この生活の根拠をどのように過ご すかによって活動の方向が定まる。同時に、担任はホームルームに高校生自らをどのように適 応させるかという点で教師としての力量が問われる。学習指導要領にあるように、ホームルー ム活動は担任が責任を持って指導することになっており、 活動内容によっては他の教員の協力 を得るように指示している。その際、学校や生徒の実態に応じて指導内容を取り上げ、重点化 することも示唆されている。ただ前提になるのは、生徒を理解したうえでの信頼関係がなけれ ばカウンセリングのような相談は成立しない。それによって、学級における生徒指導である学 級活動やホームルーム活動が成立する。 ホームルームの活動は可能な限り、生徒の自主性に任せるのが望ましい。生徒に企画させ実 施させるのであるが、ただその自主的・自発的行為は生徒が、学校内でどんなに思うように活 動しても、結果的には指導教員のヘッドシップの裁量の範囲内に留めるべきである。これは特 別活動全般に通用する。それを前提にして、生徒の自発的・自治的活動が助長される。 学習指導要領の内容によると高校のホームルーム活動の意義は「学校における生徒の基礎的 な生活集団として編成したホームルームを単位として、ホームルームや学校の生活の充実と向 上、生徒が当面する諸課題への対応に資する活動を行う」ことである。これは文字通り、家庭 的な雰囲気の学級活動を目指すものである。その内容には次の 3 つの項目がある。 (1)は活動の第 1 段階で、日常生活で生じる諸問題の解決をクラスの生徒同士で図るこ とによって、組織作りや分担処理などの方策を協力しながら、自分の果たすべき役割と責任を 遂行し共に生きるという本来の目的を達成できる。それによって、地域や国そして国際社会の 中での自分の生き方につながっていくと考えられる。併せて人間には性格がある。その各個性 があるために、必然的に多様な集団が生まれる。その多様な個性の集団を、切磋琢磨して共に 向上させていく指導が必要である。 (2)は活動の第 2 段階で(1)を受けて、青少年の犯罪増加をはじめとして道徳的に退廃 している今日、社会の一員としてあるいは個人としての在り方を改めて考え、生き方を模索す る。そのためには健康や安全面での配慮が必然的なものである。これをさらに具体化したもの として、高等学校学習指導要領の内容でホームルーム活動の項目に詳細が述べられている。ま ず青年期の悩みや課題を取り上げ、その解決を図る。自己および他者の個性の理解と相違を尊 重する。同時に社会生活における役割を自覚し、自己責任を再認識させる。中学生や高校生と もなると異性関係に芽生えるので、男女相互に理解を深めかつ協力し合う。それも含めて人間 関係を、コミュニケーション能力の育成によって確立させる。ボランティア活動の意義を理解.

(11) 特別活動に関する現代的考察. 49. し、その活動を国内ばかりでなく国際社会や国際交流に結び付け、国内や国際社会のために生 きることを指導する。 (3)は活動の第 3 段階で、前述の(1)と(2)の項目で、自分の生き方として、健康 安全を含めて最低限の在り方を意図している。改訂学習指導要領によって、心身の健康を基礎 として健全な生活を送る態度や規律ある習慣を確立させる必要が強調されている。それによっ て生命の尊重と安全な生活態度や規律ある習慣の確立が保証される。なにはさておいても、心 身の健康である。そのうえでこの項目によって、学業生活の充実や将来の生き方と進路の適切 な決定に関することとして、「何のために、誰のために学ぶのか」の意義を理解させ、主体的 に学習する態度を確立させる。そのため、学校図書館の利用を促進させている。教科・科目の 適切な選択を行って、自分の適性を理解し、進路情報を活用して望ましい職業観や勤労観を確 立して、主体的な進路の選択決定と将来設計を立てることがねらいである。これによって人生 に潤いと豊かさが増すことになる。 学級活動であろうと、ホームルーム活動であろうと、さらに生徒会活動であろうと、実際の 活動は生徒による会議形式が中心になる。その会議の在り方で、生徒の自律性及び自発性も左 右されることになる。教員は、たとえば、「小田原評定」などの会議を防ぐ必要がある。討議 や会議の前提として、重要なのが学級やホームルーム内の支持的風土の形成である。つまり、 40 人(標準)の生徒の望ましい人間関係である。このホームルーム内において「学級や学校の生 活への適応を図るよう指導を充実するとともに、ホームルーム内の組織作り、自己責任、コミ ュニケーション能力の育成、学ぶことの意義の理解、心身の健康などを重視する」と同時に、 「学校生活への適応や人間関係の形成、教科・科目や進路の選択などの指導にあたっては、ホ ームルーム活動などにおいて、ガイダンス機能を充実する」ことが志向されている。このため には平生から個々の生徒の理解と信頼を得ておき、 それをもとに指導内容の特質に応じて指導 を行う。ホームルーム活動は学校内の基礎的集団を根拠として集団生活や集団訓練によって教 員と生徒それに生徒間の人間関係を円滑にし、 ひいては社会への適応能力を培うのに役立つた めに、生徒の学校生活の根幹に置かれるものである。一般的には週 1 時間組み込まれたロン グホームルームと学級朝会的意味のショートホームルームが行われている。 ロングホームルー ムの時間は、生徒指導や種々のガイダンス・進路指導・カウンセリングなどにも充てて、充実 したものにすべきである。そのために原則としてもっとも身近な学級担任の教員による指導が 望まれるが、この活動を閉鎖的な学級王国論的発想で行うのではなく学級担任が教科担任と密 接に連絡をとって可能な限り多様な目で生徒を観察することによって、 人格への客観性を持た せる必要がある。これには既述の通り、ガイダンス機能も含まれ、平成 11 年の学習指導要領 の改訂で新設された「総合的な学習の時間」のねらいや内容である「生きる力を培う」とも密 接なかかわりがある。.

(12) 50. 織田 成和. 3.4 学習指導要領に見る特別活動 学習指導要領は昭和 32 年まで「試案」として扱われていたが、その翌年全面改訂され、「文 部省告示」として日本の学校教育の指導内容の基準として官報に登載され、法的拘束性を持つ ことになり、内容も小・中・高別々に登載されることになった。その後、昭和 37 年度(中学 校)、昭和 38 年度(高校)から学校行事も登載され、小学校及び中学校は特設道徳を含めて 4領域、高校は3領域で実施されることになった。既述のごとく昭和 43 年の学習指導要領に よって、学校行事が特別教育活動に包含されて、精選・統合され、教科と道徳の時間以外の教 育活動として特別活動が成立した。そのため、この学校行事は特別活動の他の分野と比べると 特色が多く、5項目になっている。いずれにしても小学校や中学校は3領域になって実施され た。 学習指導要領で高校のホームルームの目標は、「ホームルーム活動を通して、望ましい人間 関係を形成し、集団の一員としてホームルームや学校におけるよりよい生活づくりに参画し、 諸問題を解決しょうとする自主的、実践的な態度や健全な生活態度を育てる」ことである。こ のホームルームは学級内での集団教育ならびに訓練活動によって教員と生徒それに生徒間の 人間関係を円滑にし、道徳教育の項目でもある地域や国そして国際社会のなかでの自分の生き 方につながっていき、さらに公民科との関連も考えられる。ひいては社会への適応能力を培う ために、学校生活の根幹におく必要がある。これにはガイダンス機能も含まれ、「総合的な学 習の時間」の意図する所や内容を補完し、相互に影響しあいながら、「生きる力を培う」こと にも役立つ。 3.5 学校行事の種類と意義 学校行事は、➀儀式的行事、➁文化的行事、➂健康安全・体育的行事、➃旅行・集団宿泊的 行事、➄勤労生産・奉仕的行事の5項目があり、全校または学年を単位とし、学校生活に秩序 と変化を与え、学校生活の充実と発展に役立つ体験的活動である。最近の学校行事の特色は学 校内に閉じこもらず、校外の社会人、特に幼児、高齢者、障害のある人達との触れ合いや交流 が盛んになり、強調されている。学校行事の内容に関しては、行事およびその内容を重点化す るとともに、行事間の関連や統合を図るなど精選して実施するようになっている。学校行事の 大部分は明治半ばごろに起源があるが、自然発生的に各地の学校で祝日や祭日に何らかの儀式 や運動会それに発表会等機会あるごとに行われていたようである。 教育史上画期的事項である 教育勅語発布の翌年、つまり明治 24 年「小学校祝日大祭日儀式規定」の公布によって、翌年 から小学校で正式に入学式や卒業式が行われた。戦前には、四方拝(元日の儀式)、紀元節、天 長節、明治節などが、法令によって学校儀式として明文化されていた。特に昭和 16 年の国民 学校令施行規則によって、学校行事が教科と同様に重視されるようになり、儀式的行事も教育 勅語拝読等で一層重みが加わった。この教育勅語は第 1 回大日本帝国議会開催(明治 23 年) と同じ年に発布されたもので、当時の教育内容の根本方針などが規定されていたのみならず、.

(13) 特別活動に関する現代的考察. 51. 当時の国家体制にとって重要な意味を持ち、これらの儀式で教育勅語の拝読が行われたため、 それを拝読する校長の立場を強力にした。 特別活動そのものが、児童・生徒の自治・自主の精神を尊重し、育成することを目標として おり、学校行事の場合、おおまかな企画・立案は教員のヘッドシップが必要であるが、運営は 高校生であれば、ほとんど生徒の主体性にまかすのが可能である。教員は学習指導要領の逸脱 を防ぐ程度にとどめるべきである。以下で各行事を詳述する。 ➀儀式的行事 儀式とは、公事、祭事、神事や仏事などで、一定の作法・形式にのっとって行われる集団的 行事であり、慶弔に際して行われる行事及び組織体が行う行事や作法である。この儀式は日本 では宗教とは関係なく公的な場面で盛んに行われていた。特に学校では、規律や団体訓練の精 神を培うため入学式や始業式から終業式や卒業式までの間にかなりの儀式が行われてきた。 入学式の意義はこれからの所属集団である学校への同化意識や帰属意識を認識させ、 深めな がら、これから過ごす数年間への心構えと決意を新たにさせるのに効果がある。卒業式はそれ まで所属してきた学級や学校に決別し、それを過去の思い出の準拠集団にして、新しく迎える 人生への門出を決意する場である。このように両者は学校生活に有意義な変化や折り目をつけ、 学習指導要領に言う「厳粛で清新な気分を味わい、新しい生活の展開への動機付けとなるよう な活動を行う」場として典型的なものである。これによって学校への所属感、他学年との連帯 感、自分の所属集団での協力、協働意識等が同時に培われる。 始業式や終業式は、学期や学年のけじめの意義を生徒に心から感じさせるものである。この 儀式によって今までの反省と次の学期への期待と決意を持たせる必要がある。儀式的行事にお いてはその意義をふまえ、国旗の掲揚とともに国歌を斉唱することになっている。この背景に は 1989(平成元)年の学習指導要領によって、国旗の掲揚や国歌を歌えるように「指導する もの」と規定され、その後平成 11 年に国旗・国歌法が制定されたいきさつもある。これに関 しては平成 23 年 5 月 30 日(月)の卒業式の国歌斉唱で起立しなかったことの是非を問う訴 訟で最高裁は起立を命じた校長の職務命令を「特定の思想の強制や禁止とはいえず、思想良心 を直ちに制約するものとはみとめられない」として合憲とした。 儀式的行事には全校朝会や教職員の就任式及び離任式もある。これらも含めて、儀式的行事 は精神的節度の維持のためにも重視していく必要がある。これらの儀式的行事によって、学校 生活ひいては日常生活の惰性的な過ごし方に変化や折り目が付けられ、 同時に厳粛で清新な気 分に引き締められ、荘重さと同時に生活のリズムが整ってけじめがつくことになる。日本は伝 統的に儀式が多い国であり、その意義が重視されている。戦前に比べて少なくはなったが、諸 外国と比べると多い方である。これが日本人の「礼儀正しさ」の根拠であるとされた。その一 例として今回の東日本大震災で秩序を重んじる日本人の態度が外国のマスコミによって絶賛 された。 しかし、 生徒の方は儀式的行事の意図は深く考えずに漠然と参加している場合が多い。.

(14) 52. 織田 成和. 従って児童・生徒には形式だけを強調するのではなく、各行事の目標を明確に周知徹底させ、 心から厳粛さを味あわせる必要がある。 ➁文化的行事 文化的行事は学習発表会や展示会及び文化祭のように「平素の学習活動の成果を総合的に生 かし、その向上の意欲を一層高めるような活動を行う」ものである。学習指導要領改訂前は学 芸的行事とされていたが、今回の改訂で文化的行事になった。文化的行事は生徒が各教科を含 む普段の学習や演劇それに美術・書道等の作品や成果を夏休み等の長期休暇明けに発表しあっ て、楽しみながらお互いに批評し合う活動である。単に鑑賞するだけでなく、この発表会まで のプロセスでは、生徒が個人的にも集団としても楽しさと精神的豊かさを味わいながら、特別 活動全般の目標でもある集団の規律を学び、努力して何らかの成果にたどり着いたという目標 達成感の喜びと情操を学校生活のなかで体得することに意義がある。結果や成果よりもプロセ スに教育的意義が見出される。特に集団による作品にはみんなで協力し合って一つの目標に立 ち向かうプロセスが大きな教育的意義を持っている。これによって自己を成長させ集団を向上 させながら、協力し合って豊かな人間関係を学んでいく。このうち学習発表会では自分の発表 のほどよい緊張や喜びと同時に友達の作品の鑑賞能力を養う。これで留意すべきは、全校、全 生徒、場合によっては地域全体が参加する行事になるように実施すべきであろう。その結果、 地域への公開はこれからの重要な課題である学校開放の導入になっていくと考えられる。 学校 外でのこの種の行事として、音楽会、映画観賞会、演劇観賞会、美術館訪問等が挙げられる。 ➂健康安全・体育的行事 この項目では、学校教育の中でも比較的地味な学校保健安全法(平成 20 年 6 月)等を根拠と する健康安全に関する分野と派手で目立つ体育的行事が同時に扱われている。 平成 15 年 9 月、中央教育審議会も「食に関する指導体制の整備について」を公表した。こ れは文部科学大臣が「子どもの体力向上のための総合的な方策について」(平成 13 年 4 月 11 日)を諮問した際に、子どもの頃からの望ましい食習慣の確立を強調しており、食と健康問題 を重視して学校や家庭でのあり方を検討している。この審議会は平成 14 年9月に同趣旨の答 申で「次代を担う子どもたちに求められる体力」として、「運動をするための体力」と「健康 に生活するための体力」の 2 つを挙げている。 最近、児童・生徒の体力および運動能力の低下と肥満の増加が問題になっている。加えて朝 食を取らないため、脳が活性化せず、授業への集中力が欠け、気力の低下あるいは「キレヤス イ」行動の原因になっているといわれている。特に「健康に生活するための体力」に関しては、 糖尿病、高血圧、血中総コレステロール値が高い児童・生徒が増加しつつあるため、生活習慣 病との関わりで強調されている。「健康 3 原則」つまり、調和のとれた食事、適切な運動、 十分な休養や睡眠の徹底が家庭での協力事項として要請されている、教育基本法でも「心身と もに健康な」国民の育成を期待している(第 1 条)。これがおろそかにされると精神的にも.

(15) 特別活動に関する現代的考察. 53. 肉体的にも学校教育にマイナスになるため専門家が必要とされるようになった。 一般に言われ ている言葉であるが、教育上重要かつ基本的なものである「知育、徳育、体育」のうち体育は 既述の 2 つの体力を統合したものと考えられ、最近特に強調されてきた「生きる力」の身体 版と言えよう。 「運動をするための体力」は調整力・瞬発力・持久力などを要素とする運動の基礎となる身 体的能力であり、かつ運動に親しむ態度の育成であり、体力の積極的活用である。この代表的 なものにスポーツ大会や運動会及びクラスマッチなどがあげられる。クラス対抗等のスポーツ 大会は生徒自身のクラスへの所属感を一致団結して強め、既述の学級活動の推進にも役立つ。 これに対して「健康に生活するための体力」は体の健康を保持・増進し、病気にならないよう にする現状維持及び向上的体力であり、定期健康診断などが行われている。当然両者とも重要 な体力であるが、まず後者に留意し、心身の健全の発達の理解を深め、それを積極的に伸ばし ていくのが「運動をするための体力」の役割であろう。ただ皮肉な結果として、この特別活動、 特に健康・安全・体育的行事に学校事故が多く、最悪の場合、訴訟に持ち込まれるケースも多 い。このような場合、教員は刑事責任まで考慮すると、どの程度まで監督下に置き、関与し、 立ち合うべきかが問題になってくる。これに関しては、学校や教員の責任が重視される傾向に ある。それを防ぐため、最大限の事前準備と計画性が必要になろう。 この項目に該当するものとして、学校給食に加えて家庭科や保健体育科でも、食に関する指 導が行われている。さらに日常的には、生徒に対する定期健康診断、避難訓練、交通安全指導 それに運動会をはじめとするスポーツ大会や体育大会があげられよう。この項目の両側面は、 最終の狙いは同じで「心身の健全な発達や健康の保持増進などについての理解を深め(小学校 のみ『関心を高め』)、安全な行動や規律ある集団行動の体得、運動に親しむ態度の育成、責 任感や連帯感の涵養、体力の向上などに資するような活動を行うこと」である。 最近、特に体力を維持し、十分に伸ばし、社会で生き抜く力を蓄えることが、学校教育で重 視されるようになったため、専任教員の制度が成立し、栄養教諭が置かれることになった。 (学 校教育法第 28 条)この栄養教諭は「児童の栄養の指導及び管理をつかさどる」役割を担って いる。特筆すべきものは交通安全指導や避難訓練である。これには安全な行動や規律ある集団 行動の体得が含まれる。この項目によって責任感や連帯感の涵養や体力の向上も培われる。最 近、 安全管理面で特に留意すべきことは頻発している通学途中の児童・生徒が連れ去られたり、 校内侵入事件で被害者になる事例である。 この危機管理対策は学校教育における最重要な事案 になってきた。 ➃旅行(遠足)・集団宿泊的行事 この項目の小学校学習指導要領は「旅行」の代わりに「遠足」になっている。代表的なもの として、遠足・修学旅行・社会見学・臨海(林間)学校等の野外活動や合宿的活動があげられ る。小学校の「自然の中での集団宿泊活動など」に加えて「平素と異なる生活環境にあって、.

(16) 54. 織田 成和. 見聞を広め、自然や文化などに親しむとともに、(人間関係などの《小学校》)集団生活の在 り方や公衆道徳などについての望ましい体験を積むことができるような活動を行う」 ことが目 的になる。ただ修学旅行も最近は様変わりして、以前のように名所・旧跡や神社仏閣の駆け足 的見学や観光ではなく、 職場訪問や職場体験 (インターンシップ等) それに社会体験に加えて、 スキー合宿や林間(臨海)学校の自然体験学習のように各学校で趣向を凝らしたものも多くな った。 これを利用して寝食を共にしながら、 雑談や悩みの相談によって、 生徒同士だけでなく、 教員と行動を共にすることによって、普段は見られない教員の一面に、親密感を得て、距離感 を縮めるのに役立つ。同時に開放感に伴う自己責任に基づく公衆道徳の遵守の指導も目的とし て必要である。 林間学校や臨海学校のように、自然の中でその素晴らしさに触れ、道徳の項目にもあるよう に自然の偉大さや神秘さを再認識させる活動は望ましいものである。人類の歴史を考えてみる と人間は古代から自然との闘いや共存で人格が形成されてきた。「生きる力」つまり最近行わ れている「サヴァイヴァルゲーム」は自然の中で生き残る訓練である。それは忍耐力や経験の 積み重ねである。幸か不幸か、最近は海沿いや山間部の過疎地で、学校の統廃合によって集団 宿泊施設への転用も多くなった。このような施設を利用して種々の体験的活動をしながら、お 互いを理解することによって、「友達も皆同じ気持ちだ」という安堵感を持ち、明日への希望 を持たせる。このように合宿にしても修学旅行にしても教員や友達同士の意外な面やすばらし さを発見して、親近感や尊敬の気持ちを改めて持ち、かつお互いに丸みを持って接するように なる。しかし学校外に出ると、開放感のためにはめをはずす生徒が出てくる。自然や社会と積 極的に関わらせると同時に、 自然や社会には学校と違って危険も存在しているので安全に最大 限の注意を払い、生徒の方もそれに対する防御能力や自己責任も培う訓練や自助努力も怠って はならない。これによって学校外での集団生活のルールや公衆道徳の遵守を実行しながら、何 時間も共に過ごして性格や習慣を超えた信頼関係の形成が志向される。 特別活動と道徳教育の 関係は常に注目されるテーマである。 最近になって修学旅行や社会見学それに遠足で、歴史的意味のある神社仏閣などを宗教上の 理由で参詣拒否したという事例が生じている。このような場合、神社仏閣の宗教的意義よりも 日本固有の文化遺産を尊重し、現在につながる歴史的意義を強調する必要がある。さらに学校 教育という立場では、親といえども自分の宗教観ばかりでなく政治的主張を子どもに押し付け るのは子どもの将来への立場や世界観を偏らせ、ひいては人間関係を狭める結果になりかねな い。 このような学校行事も含めて学校教育全般においても教育基本法第 14 条の政治教育で「良 識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重しなければならない」。同じく第 15 条の 宗教教育で「宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活におけ.

(17) 特別活動に関する現代的考察. 55. る地位は、教育上尊重されなければならない」として、広い寛大な心で政治的主張や宗教心を 持つ必要がある。 ➄勤労生産・奉仕的行事 この標題はかなり古くから使われてきたテーマである。勤労生産は、日本では勤勉とならん で古くから美徳として社会でも学校教育でも重視されてきた。ただ、戦前は勤労生産・奉仕的 活動は滅私奉公につながることもあった。 これを自発的な道徳的信条を根拠とした社会奉仕的 なボランティア精神による活動にまで高める必要がある。 ボランティアはチャリティや募金活 動も含めて、「心の贈り物」と言われている。 ボランティア活動の意義について述べる。勤労・生産奉仕的行事に関連して高等学校学習指 導要領の「指導計画の作成と内容の取り扱い」によると「ボランティア活動などの社会奉仕の 精神を養う体験的な活動や就業体験などの勤労にかかわる体験的な活動の機会をできるだけ 取り入れること」になっている。高校は比較的遠距離通学が多い。したがって地元と疎遠にな りやすい。高校との地域交流や学校開放の趣旨からいって、このボランティア活動は生徒が積 極的に地域にとけ込む最善の手段でもある。特にこれからは少子高齢化の時代になり、社会は 高齢化に突入する。この問題は、政治経済的・財政的な手法だけでは解決するものではない。 この時代をどのように迎えるかを多感な中学高校時代に経験することは、道徳における生命尊 重や弱者へのいたわりと相俟って大きな意義を持ってくる。 そのためにも中学高校ではボラン ティア活動を推し進める必要はある。高齢化社会が到来する日本の将来は、このような項目の 成否にかかっているといっても過言ではないだろう。 ボランティアは中学生でもできる身近な介護体験から、高校での NPO(Non Profit Organization 非営利組織)や NGO(Non Govermental Organization 非政府間機構)などの 活動によって国際的になり、国際理解や国際交流にまで拡大することが期待されている。その 根拠とするものは教育愛も含まれる社会的愛、つまり平等な博愛である。 勤労生産奉仕的行事は自発的な活動を旨とする。この活動は可能な限り、生徒の自主的な発 想にまかせるべきものである。この項目はキャリア教育の前提になる。キャリア教育という用 語は職業(就職)ガイダンスや職業指導とは意味を異にしており、平成 11 年 12 月の中央教 育審議会の答申である「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」で初めて使われて いる。その後、平成 16 年 1 月に「児童生徒一人ひとりの勤労観、職業観を育てるために」と いう報告を「キャリア教育の推進に関する総合的調査研究協力者会議」が出して教育界に定着 している。 これらの報告以後、 キャリア教育は定職につかない青少年のマイナスの社会現象の抑止力に なることが期待される。つまり、学習指導要領の小学校は 勤労の尊さや生産の喜びを体得するとともにボランティア活動などの社会奉仕の精神を養 う体験が得られるような活動を行うこと.

(18) 56. 織田 成和. であり、中学校は 勤労の尊さや創造することの喜びを体得し、 職場体験などの職業や進路にかかわる啓発的な 体験が得られるようにするとともに、共に助け合って生きることの喜びを体得し、ボランテ ィア活動などの社会奉仕の精神を養う体験が得られるような活動を行うこと であり、高校は 勤労の尊さや創造することの喜びを体得し、就業体験などの職業観の形成や進路の選択決 定などに資する体験が得られるようにするとともに、共に助け合って生きることの喜びを 体得し、ボランティア活動などの社会奉仕の精神を養う体験が得られるような活動をおこ なうこと となっている。 このように「勤労の尊さや創造することの喜びを体得し、職業観の形成や進路の選択決定な どに資する体験が得られるようにする」ことが眼目になっており、その結果、勤労生産の精神 が勤労観や職業観育成のキャリア教育になることが望ましい。高校では将来の進路学習や就職 を意識したインターンシップも普及しており、これも勤労生産・奉仕的行事の一環と考えられ よう。このインターンシップの実施で、かなり企業との連携も見られるようになった。インタ ーンシップは就業体験や職場体験といわれているが、これに基づくと実際に職業に就いた場合 の心構えになる。それにより、進学の際にも、将来の職業選択を念頭に入れて、進路指導の指 針としても大学や高校、専門学校および学部や学科(専門)の選択基準の根拠になる。職業・ 仕事は、自分の経済的・精神的な充足に加えて、社会的意義の点から考える機会を与える必要 がある。 勤労生産・奉仕的行事は古くからあるテーマと新しいテーマが融合した行事である。奉仕と いう用語も同様であるが、 ただある時期までの用語のニュアンスが異なっている。 歴史的には、 既述の如く滅私奉公で最高の美徳とされた時代から、労働力無償提供の風潮を経て最近の道徳 的な善の思想を背景にしたボランティア活動に至っている。 ボランティア活動の意義に関する 理解はホームルーム活動においても取り上げる必要はあるが、生徒会においても明示し、さら に学校行事においては社会奉仕の精神を養う体験などを充実する必要もある。その結果、物質 的利益につながらない精神的達成感と自己満足感が得られる。具体的には、身近な公共施設の 美化や飼育栽培・校内美化・校内外の掃除もある。掃除は家庭教育では重要な位置を占める。 特に学習指導要領には明文化されていないが、 学校掃除は特別活動ばかりでなく道徳教育にも 通じるものがある。 これには身辺の清掃が心の清浄につながるという日本の伝統的掃除観もあ る。「無言掃除」というきまりをつくっている学校もある。ただ「総合的な学習の時間」の本 質と特別活動の学校行事、特に勤労生産・奉仕的行事との区別は明確にして置く必要がある。 高校生は、就職して社会に出る可能性も高い。しかし職業に対する問題意識が低いせいか、 長続きがしないケースもある。これに関して文部科学省は増え続けているフリーターや中途離.

(19) 特別活動に関する現代的考察. 57. 職者、特に就職してもすぐ辞める若者の対策として、小学校の時から勤労感や職業観を育てる キャリア教育に取り組み、職業観育成のための手引書や研修プログラム開発のための施策を行 っている。さらに学習指導要領の「指導計画の作成と内容の取扱い」によると「ボランティア 活動や就業体験など勤労にかかわる体験的な活動の機会をできるだけ取り入れるとともに、家 庭や地域の人々との連携、 社会教育施設等などの活用などを工夫すること」 が指示されている。 社会には労働提供と賃金獲得の関係以外にも無償の労働提供という活動も多く存在する。 しか し、ボランティア活動を強制したり、必修にして単位などを与えるのはボランティアの精神で ある自由意志・無償・公共性などの性格から考えると望ましいものではない。ただボランティ ア教育として、方法の基礎的知識を与えたり、将来の本格的活動のための呼び水として体験を 与えておくことは意義がある。自己の精神的充足による幸福感、これを得ることを目的とする 奉仕の態度を育成するのがこの項目の目標である。 以上 5 つの学校行事については「学校や地域及び生徒の実態に応じて、各種類ごとに行事 及びその内容を重点化するとともに行事間の関連や統合を図るなど精選して実施すること」が 意図されている。これらの学校行事の教育的効果は調査しにくいが「実践的社会性をはぐくむ ことが重要であるという認識にたってその社会性を構成する要素との関連で」発表された「学 校行事ではぐくまれる力」というテーマの実践による注目すべき報告(⑤-33)がある。そ の指導者である後々氏の「学校行事を通して育てたい力」によって ・ 自尊・自立に関係する価値[承認、自己責任、個性の伸長] ・ 人間関係[思いやり、共感、協力、生命尊重] ・ 社会参画[共生、マナー、きまり、帰属意識、集団への寄与] が挙げられている。 第4節クラブ・部活動の意義と実態(Significance and realities of clubs and circles activities) 4.1 クラブ・部活動の現状 以前の学習指導要領には小学校、中学校、高校いずれも、クラブ活動は特別活動の中に入っ ていた。昭和 44 年に必修になって以後、人格形成の影響には大きな意義があったが、完全週 5 日制の実施とそれに伴う教育内容の削減などの影響で、中学校や高校はクラブ活動を部活動 で代替してもよいことになり、前回の改訂で中学校や高校での授業としてのクラブ活動や部活 動は削除されている。したがって学習指導要領の上では、小学校だけ原則として 4 年生以上 の同好の児童で組織されたクラブ活動で、趣味的発想も含めて共通の興味・関心を追求する活 動を行うことになっている。この流れを受けると、逆に中学校や高校の部活動も裁量が多くな ったため、いっそう適切に行われるような配慮が必要になってくる。 クラブ活動や部活動は、 普段交流のない他学年や学級の枠を超えて活動するために年齢の上 下関係、つまり先輩後輩の関係、それによるリーダーシップやフォロアーシップを体得し、初.

(20) 58. 織田 成和. 対面あるいは普段は疎遠の人との交際の仕方を学ぶ機会になる。同時に社会や職場で責任と役 割を果たす訓練になる。 一生を通して同年齢の人だけで付き合いが済むのは学校在籍中だけで ある。したがって、この異学年の児童生徒の集団活動であるクラブや部活動は、将来の社会組 織の一員として活動する訓練の場にもなる。部活動特に体育系の部活動では精神性を尊重し、 礼節を第一義としていて「礼儀正しさ」や体力だけでなく「精神的に剛健」というイメージが 強くなる。それに伴って背景にある「長幼の序」の精神も培われている。多感でもあり、心身 の発達途上でもある中学生や高校生にとって、 このような訓練の場は人生全体からみてもかな りの比重を占めることになるのではなかろうか。ただクラブ活動にしても部活動にしても「英 語部」や「理科クラブ」という教科の延長のような名称や活動は、望ましくない。しかもこの 活動は、仕方なしに参加するのではなく楽しくなければならない。楽しみながら、異年齢の上 下の関係も含めて有意義な人間関係を学んでいくことになる。 4.2 クラブ・部活動の在り方 クラブ活動は原則として週 1 時間程度だったが、中学校や高校の部活動になると、時間数 はかなりのものになる。意義付けも課外活動(extra curricular activities)になっている。 早朝練習や放課後の練習、特に夏場は日が暮れるまでの練習はざらである。しかもレベルも本 格的でかなり高くなり、趣味や同好の域を超えたものも多い。春や夏の甲子園大会でも見られ るとおり、そのレベルはプロ野球でも通用するものがある。このような部活動は年間の練習時 間も平常の授業時間を上回る場合も多い。他のスポーツ分野や芸術・合唱部門も高校レベルに なるとかなり高いものがある。したがって全生徒が参加できるというわけにはいかないが、体 力維持目的のために同好会やスポーツ大会としてのクラス対抗試合などがあげられる。 中学校や高校の学習指導要領の総則によると「指導計画の作成等に当って配慮すべき事項」 として 生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科学 等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育 の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際地域や学校の実態 に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携など の運営上の工夫を行うようにすること が特記されている。 高校時代が部活動一色というのも問題がある。教科の基礎も習得していないと人生は部活動 の趣旨だけで生きていけるわけではない。最近の風潮は、本末転倒の傾向もみられる。このよ うな偏りに対して、学校の教育課程の全般的な調整も必要とされる。しかし、部活動は、教科 などの座学では得られない生徒集団の人間関係によって全面的に調和のとれた人格を培いな がら、中学校や高校から社会に出るための橋渡しとして、潤滑油的な効果をもたらす活動であ るといえる。この活動の中で生徒が自分の特性を見出し、社会に進出してから自らの生きる力.

(21) 特別活動に関する現代的考察. 59. を身につけて人生を切り開いていく。 その豊かな人間性を備えた全人的成長の意義に配慮しな がら、それを基礎として生涯学習に参加していくための方向性も指導していくことになろう。 遅くまで部活動に従事しているため、 放課後問題行動を起こすことが少ないというのは副次的 効果ではあるが、意義があると言えよう。ただ総合学習に安易に横滑り的形で、部活動やクラ ブ活動などが行われるのは控えるべきである。 ちなみに部活動は欧米では学校生活全体を通じ て行われることはなく、地域の社会体育のクラブに所属することが多い。総合学習は、情報化 や国際化・高齢化の時代に対応して、教科を中心とする通常の学校教育の枠を超え、学校外の 要因を加えて横断的・総合的な教育の実践を行うものである。これに対して特別活動は既述の ごとく、人間関係を出発点として社会性を培う目的がある。そこには生徒の自主性や自発性の ように、自らを出発点として集団のルールが考えられなくてはならない。いずれにしてもこれ からの学校は個性や独自性を打ち出し、特色をアピールする時代になっているが、部活を含む 特別活動が学校のイメージ作りを進展させ、学校教育に貢献していくことになろう。 第5節特別活動の課題と展望(The subject and prospect of special curricular activities) 現在学校教育で考えていかなければならないのは携帯電話やパソコンの家庭内の普及によ り、それに振り回されて自分の殻に閉じこもっている生徒を、特別活動によって学校での集団 活動に引っ張り出し、人間関係を多方面に経験させることである。これが今後の課題の一つに なろう。 特別活動でさらに期待されるのは特別支援教育での活用、特にLD(Learning Disability)や ADHD(Attention ―Deficit/ Hyperactivity Disorder)の傾向の子どもの参加であろう。こ の分野で特別活動の領域には教科では解決できない積極的意味をもつものが、かなりあるので はないかと考えられる。 石田氏は平成 15 年の武藤孝典氏の主張である「小・中学校の『道徳』と『学級活動』の統 合、及び高校ホームルーム活動の改編による『共生の時間』を取り上げ、価値教育とガイダン スの機能(生徒指導の機能)がどのように行われながら、『児童生徒の社会化が進行していく か』」を紹介して、問題を提起している。(①石田) 特別活動で最も困難であるのは、評価の方法である。特別活動は他の教科と同じようには評 価できない。文化的活動等の作品の評価は比較的客観性が保ちやすいが、特別活動は学校だけ では評価しにくい面も多い。教科と違って、どの領域も集団で活動する場合が多いので、個人 の評価はそぐわないものもある。 ホームルーム担任が部活指導者の意見を取り入れながら客観 的かつ適正に評価しなければならない。ボランティア活動の評価はさらに難しいが、過度の具 体的評価は本来の趣旨に反するものであろう。教育基本法第 13 条では学校、家庭及び地域住 民の相互の連携協力をうたっている。 ボランティア活動は校外に出る場合も多いので場合によ っては外部の関係者や地域の人々それに社会教育関係者の意見も有効な資料となる。 さらに少.

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