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国際結婚夫婦の価値観等の相互理解と共生 利用統計を見る

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伊藤孝恵       要  旨  本稿では、国際結婚夫婦の価値観等の認識と理解について、日本人同士で結婚 している夫婦との比較を通じて、その特徴を明らかにした。その結果、国際結婚 夫婦は、全体的に、日本人同士結婚者よりも互いの価値観等は似ていないとしな がらも、自分は相手を理解しようと努力しており、相違による摩擦で傷つくこと は少ないと認識していることが分かった。その一方で、互いの相違をどう受け止 めていくかが価値観等の共生において重要であることも明らかになった。 キーワード:国際結婚、理解、共生

1.はじめに

 これまで夫婦間コミュニケーションの重要性や夫と妻のコミュニケーションスタイルや期待 の違いは、欧米と比べて少ないものの、ジェンダー研究において徐々に指摘されてきた。しか し、日本における国際結婚夫婦を対象とした研究は、今日に至っても依然極めて少ない。また、 国際結婚問題を扱った先行研究においても、夫婦間の言葉や文化、価値観の理解と尊重の必要 性を挙げるものが多々あるものの、その指摘にとどまり、これらに焦点をあて、量的に全体像 を把握したり事例として深く掘り下げた研究はほとんど見られない。  そこで本稿では、近年増加傾向にある日本人と結婚し日本に定住する外国人と日本人の夫婦 間コミュニケーションに焦点を当て、互いの価値観等の理解に対する当事者の認識を探り、相 違を乗り越え共生していくための一つの示唆を得ることを目的とする。

2.研究背景

2.1日本における国際結婚増加の傾向と特徴  日本において「国際化」が声高に叫ばれて久しいが、従来言うところの「国際化」とは、日本 人が主に英語を習得したり、アメリカなどに留学したり、欧米の事情に精通したりすることを 目指すなど、日本人が国外一特に欧米に目を向け、言葉や知識を吸収していく傾向を指すこと が多かった。しかし日本の経済成長に伴い、近年では世界各国からビジネス等の商用目的で来 日する外国人が増えるとともに、中には、日本で長期にわたって仕事をしたり、日本人と結婚 して日本社会で暮らすなど、「定住化」の傾向が強まってきている。  法務省入国管理局が発表した、平成15年度末現在における外国人登録者数は191万5,030人で、 前年に引き続き過去最高記録を更新している。この数は、平成14年末現在に比べ約6万3,000 人の増加、10年前の平成5年末に比べると約60万人の増加となっており、外国人登録者数の日 本の総人口に占める割合は1.5%である。これをさらに在留資格別に見ると、「永住者」(一般永

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住者と特別永住者を総称)が全外国人登録者の38.8%を占め、残りの約6割は「非永住者」であ る。また「非永住者」のうち、「日本人の配偶者等」が占める割合がもっとも高く、約26万人に 上り、以下、「定住者」「留学」「家族滞在」と続いている。これらの数値から、来日外国人の数 は増加の一途を辿っているとともに、外国人の「定住化」が今後ますます進むことが見込まれ、 従来の「国民国家」の概念を見直す時期に来たことが窺われる。このような新たな「国際化」の 流れの中で「国際結婚」は大きな比重を占めており、「国際結婚」が日本社会にもたらす影響は 大きいと思われる。  竹下(2000)によれば、明治6年3月に、日本で最初の国際結婚に関する規則である太政官 布告が制定され、この年に初めて日本人と外国人との結婚が許可されたという。その後戦前に おいては、韓国併合後から第二次世界大戦後朝鮮が独立するまでの35年間は、日本国内である 「内地」の日本人と朝鮮人との結婚として、いわゆる「内鮮結婚」が政策的に奨励されたことや、 昭和14年の創氏改名により、日本風の名前を強要され、日本人と誤認して結婚したケース、ま た、日本への強制連行により日本在住の朝鮮人が増加し、日本人と朝鮮人が近接する機会が増 えたことなどにより、「内鮮結婚」が増加したという。戦後は、アメリカ兵の日本上陸に伴い、 アメリカ兵と結婚し、「戦争花嫁」としてアメリカに渡った日本人女性も少なくなかったと言 われている。その後の国際結婚数の推移としては、1965年以降のデータによると、専ら増加傾 向にあり、65年からおよそ10年間は「妻日本人、夫外国人」のケースが「夫日本人、妻外国人」 を上回り、70年までは「妻日本人、夫外国人」の夫の国籍はアメリカ籍…が半数前後を占めてい た。ところが75年以降になると、夫の国籍は「韓国・朝鮮」が「アメリカ」を抜いて第一位とな り、また、全体的に「夫日本人、妻外国人」の数が「妻日本人、夫外国人」を上回った。葛 (2000)によると、1980年代から90年代後期における日本の国際結婚には、二つの大きな変化が 生じているという。一つには、1975年頃に逆転した「夫日本人、妻外国人」と「妻日本人、夫 外国人」の比率の差がますます広がっていること、二つには、これまでは比較的緩やかだった 増加の伸びがここにきて急激になったこと、特にアジア近隣諸国から来日した外国人妻の大幅 な伸びが挙げられている。 2.2日本における国際結婚増加の背景  このような日本における国際結婚増加の社会的背景としては、都市のもつ求心力と何も持た ない農村の遠心力(寺内1995)から、農村部の男性の嫁不足を招き、その救援策としてアジァ 人女性を求める流れがあり、これに、晩婚化の進行と結婚率の低下、女性の結婚観の変化の影 響が考えられる。一方、送り出し側のアジア諸国の事情としては、葛(1999、2000)にあるよ うに、日本との経済格差と、アジア諸国における貧困人口の増加と高い失業率による生存競争 の激化、また個人主義や経済発展の不均衡による地域間格差と個人の所得格差に伴う人々の物 的欲求と金銭志向への傾斜があり、これらが海外、日本への移動志向の最大のプッシュ要因で あるといえる。  また、篠崎(1996)は、「夫日本人、妻外国人」の国際結婚の増加は、配偶者選択における 「内婚」(自分が所属する集団の内から配偶者を選択する傾向)原理のうち、「国籍」という要素

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の規制が日本人の男性において急速に緩んだからだとし、それは、とりわけ国籍に関わる「内 婚」原理がもともと男女で異なっていたことが考えられるという。  篠崎によれば、国際的な移動の急増が、国内・国外における外国人との接触機会の増加を招 き、「内婚」に関する社会的規範を変えつつあり、一種の移動効果を生んだといえる。しかし、 内婚規範に変化をもたらしたのは、移動効果だけでなく、男性の場合、配偶者となる女性やそ の家族・社会に対しての「経済的優位性」「政治的優位性」のような要因があるというのである。 つまり、女性の高学歴化や社会進出に伴い、女性の仕事や結婚に対する意識が変わる中にあっ ても、一般的に男性は女性に対して優位性を期待しておらず、その変わらぬ男性の意識が、経 済力が劣るアジア人女性を求める傾向を作っている。そして、この日本人男性側の意識と相侯 って、アジア人女性側の個人主義や物的欲求、上昇志向が、日本人男性とアジア人女性の国際 結婚増加に結びついていると考えられる。  ボーサーとボーサーが紹介するインターマリッジに影響を与える要因の幾つかも、このよう な日本の社会背景を裏づけるものとなっている。その要因とは、(1)性別人口の不均衡、(2) 世代間の要因、(3)エスニック・コミュニティの有無、(4)増加した社会的受容、(5)社会 的距離モデル、(6)社会的・経済的階層の要因、(7)ジェンダーの要因であるが、日本の場 合は特に、(1)性別人口の不均衡と、(7)ジェンダーの要因が当てはまるだろう。すなわち、 日本における国際結婚増加の背景としては、日本人女性の変わる結婚観と変わらぬ社会のジェ ンダー意識との狭間で生じた晩婚化と、結婚率の低下が、結婚人口の性別不均衡をもたらし、 それが深刻な農村部ではこれを解消するため海外に女性を求め、昇婚(経済的・社会的地位の 劣る者が自分より高い者との結婚を望むこと)を望むアジア人女性との間で思惑が一致したた めと考えられる。つまり、今日の日本の国際結婚増加は、出会いの場やきっかけ、動機や国籍 等な多様性に富んできているとはいえ、結婚に対する変わらぬ男性の意識と、日本とアジア諸 国との経済格差の上に成り立つものであるとも言えるだろう。  無論、世界規模の移民の増加や国際交流等の流れにあっては、インターマリッジが増加して いる要因や背景は他にもあるだろう。新田(1995)は、「接近」と「交換」の二つの理論を元に、 住居的、職業的、教育的、娯楽的接近など、近似性や類似性により相互作用の機会が増えたこ とも国際結婚増加の一因として挙げている。しかし、この場合も経済的格差を無視することは できないとしていることからも、「夫日本人、妻外国人」の増加と、「妻日本人、夫外国人」と の場合との出身国の偏りを鑑みれば、日本の国際結婚において日本人のジェンダー意識と民族 観が色濃く反映されていると言えるであろう。 2.3夫婦関係における価値観等の相互理解  国際結婚に限らず夫婦関係の満足度には様々な要素が関わっていると思われるが、夫婦関係 の調和を規定する要因として、1)心理的成熟度、2)経済的条件、3)性格の一致・不一致、 4)役割態度の一致・不一致、5)夫婦間のコミュニケーション、6)夫婦間の相互認知がある といわれている(廣岡1997)。そのうち性格の不一致とは、個々人が抱いている暗黙の価値観や 考え方に裏打ちされていることが多く、性格の一致・不一致の要素よりは、むしろ、夫婦のぞ

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れそれが育ってきた社会・文化的背景に基づく生活様式や価値観、役割態度などの方が、夫婦 関係においてより直接的で重要な問題となるという指摘もある(斎藤1990)。そして、これら夫 婦それぞれがもっ生活様式や価値観などは、夫婦間のコミュニケーションを通じて理解が促進 され、相互認知が助長される。’  親和関係を深化させていく要素としてしばしば指摘されているのが、互いの価値観や態度な どのr類似性」である。斎藤(1983:84−86)は、互いの意見や態度等が一致するほどに好意を 抱きやすいとし、類似性は、交換理論的にはコストが安くすみ、認知的バランス理論上からは バランス関係を生み、さらには自分の考えが支持を受け賛成されるので、自己満足度も高めら れるとしている。すなわち、夫婦間で価値観や生活習慣等の類似性が見出せているかはよい夫 婦関係の維持において一つの重要な要素となるが、他方で相違の捉え方もまた、大きな意味を 持つと言えよう。  対人関係の構築にとって、当事者間に話題や立場、趣味や性格、意見などの違いが存在する ことは前提条件である(佐藤1986:20−21)。ただし、西田ら(1989、1989)の異性で異文化の二 者間に現れる話題に関する研究では、文化的相違に対する理解では人間関係の初期段階である 知人関係において最も低く、反対に文化的相違を肯定的に評価していたのは、人間関係の後期 段階である恋愛関係にある被験者で見られたと述べられている。また、対人関係においてはコ ミュニケーションを通じ相互調整を図りながら関係を深化させたり後退させたりするが、互い に相手と自分が相互に理解し合っているという程度が高まれば高まるほどその関係が深まると いう見方もある(石井他2001:85)。  Sitaram(1976:御堂岡潔訳1984,42−43)は、人間のコミュニケーションの全過程における重 要な要素は「理解すること」とし、コミュニケーションとは受け手を「理解し、受け手に理解 される行為である」と言う。夫婦間において、相違を否定的に捉えたり、問題の所在を生まれ 育った文化的背景の違いや性差に安易に押し付けたりするのではなく、互いに似通っている部 分を認め合い、相違を肯定的に受け止め、互いに相手を通じて自己が変化する用意ができてい ることが、夫婦が共によりよい関係を構築することにつながるだろう。

3.本研究調査と分析結果

3.1研究目的と内容  本研究の目的は、夫婦が互いの価値観等を理解し合っているか、国際結婚者と日本人同士結 婚者の認識を見ることで、夫婦の価値観等の理解と共生の認識の実態を把握し、国際結婚者の 特徴を明らかにすることである。具体的な質問項目としては、文化的背景の異なる二者関係を 見た西田ら(1989、1989)、国際結婚夫婦の会話を分析した施(1999、2000)、及び国際結婚問 題を取り上げた先行研究を踏まえ、価値観等の類似と相違、自分の相手の価値観等に対する理 解と理解努力、配偶者の自分の価値観等に対する理解と理解努力、口喧嘩の頻度と傷つく程度 の8項目を設定した。

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3.2調査方法及び調査対象者  栃木県在住の国際結婚者とその周辺の日本人同士結婚者に、質問紙によるランダム調査を実 施した。今回の調査の特徴の一つとして、特定の団体に属さず地域に散在する市民を対象とし たため、知人を介しての紹介や地域の日本語ボランティア教室などを回って調査依頼をし、国 際結婚者94名44組と、その周辺の日本人同士結婚者86名43組(男性87名、女性93名)計180名87 組から回答を得た。調査時期は、2004年の3月から9月までである。  今回の調査対象者の特徴として、年齢について、国際結婚者は、22歳から72歳、平均年齢が 40.0歳、標準偏差が9.75、日本人同士結婚者は、25歳から65歳、平均年齢が42.87歳、標準偏差 が10.25であった。結婚年数について、国際結婚の場合は、0.1年から30.0年、平均年数が8.38年、 標準偏差が6.87、日本人同士での結婚の場合は、05年から38.0年、平均年数が15.75年、標準偏 差が10.54であった。子どもの数と末子の年齢については、国際結婚の場合は、子どもの数は、 0人から3人、平均数が1.15人、標準偏差が0.994、末子の年齢は、0歳から23歳、平均年齢が 7.97歳、標準偏差が6.533であった。日本人同士結婚の場合は、子どもの数は、0人から4人、 平均数が1.70人、標準偏差が0.934、末子の年齢は、0歳から32歳、平均年齢が12.47歳、標準 偏差が8.793であった。  日本以外の出身地は、中国20名、韓国4名、ブラジル・ペルーが合わせて6名、アメリカや イギリスなど欧米系が合わせて9名、そしてインドやパキスタンなど非欧米系が合わせて9名 であった。日本人との国際結婚のうち、外国人が女性の場合中国や韓国など非欧米系出身者が、 反対に男性の場合にはアメリカやイギリスなど欧米系出身者が多く、日本全体の国際結婚の組 み合わせの特徴を反映した形となった。また、日本国籍に帰化した外国籍の人は全て女性で、 中国出身者が6名、ブラジル出身者が1名であった。次に、最終学歴と職業について国際結婚 か日本人同士結婚かで比べた場合、最終学歴については、大学院卒か中卒は国際結婚者に、高 卒は日本人同士者の方に多かった。職業に関しては、国際結婚者では、働いていない、工員、 教員、自営業が多く、日本人同士結婚では、会社員と公務員が多かった。 3.3分析結果 3.3.1国際結婚者、”日本人同士結婚者の項目間の関連性  まず、国際結婚者、日本人同士結婚者のそれぞれにおいて、価値観の理解に関しどのような 回答の傾向を持つのか把握した上で、両者を比較し、国際結婚夫婦の特徴を明らかにする。  表1、表2は、夫婦間の価値観の理解に関し、国際結婚者、日本人同士結婚者がどのような 回答の特徴を持っているのか把握するため、それぞれについて項目間の相関関係を見たもので ある。表の中のそれぞれの数値は、項目間の関係の強さを表しており、印が多く付いているも のほど、項目間の関連が強いことを意味している。  分析した結果、国際結婚者において特に項目間の相関関係が強い(P≦.001)のは、「自分の理 解努力」「配偶者の理解努力」(P=.000)及び「喧嘩」r・傷つく」(P=.000)であった。一方、日本 人同士結婚者では、「類似」「配偶者の理解」(P=.001)、「相違」「配偶者の理解」(P=.000)、「相 違」「配偶者の理解努力」(Pニ.001)、「相違」「喧嘩」(Pニ.001)、「配偶者の理解」「配偶者の理解

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表1 国際結婚者の項目間の関連性 価値観や習慣が似ている 価値観等の相違が気になる .031* 自分は理解している 1,000 1,000 配偶者は理解している .026* .466 1,000 自分は努力をしている .067 1,000 .007** 1,000 配偶者は努力をしている .007** .279 .018* .081 .000*** 口喧嘩をする .011* .019* .216 .121 1,000 1,000 口喧嘩で傷つく .031* .05* .516 .024* .475 .762 .000*** 類似 相違 理解自 理解配 努力・自 努力w己 口喧嘩 傷つく ***o≦.001 **P≦.01*P≦.05 表2 日本人同士結婚者の項目間の関連性 価値観や習慣は似ている 価値観等の相違が気になる .002** 自分は理解している .059 .399 配偶者は理解している .001*** .000*** .010** 自分は努力をしている .069 .061 .052 .004** 配偶者は努力をしている .008** .001*** .063 .000*** .000*** 口喧嘩をする .011* .001*** 1,000 .289 .451 .133 口喧嘩で傷つく .004** .062 510 .075 1,000 .209 .000*** 類似 相違 理解自 理解配 努カー自’努力・配 口喧嘩 傷つく ***P≦.001**P≦.01*P≦.05 努力」(P=.000)、「自分の理解努力」「配偶者の理解努力」(P=.000)、「喧嘩」「傷つく」(P=.000) であった。これらの結果から、日本人同士結婚者においては、夫婦間の類似性や相違には配偶 者の理解や理解努力の有無が強く関係していることが見て取れる。つまり、夫婦間で類似性を 見出したりあるいは夫婦間に横たわる相違を気にしない場合には、配偶者が自分の価値観等を 理解していたりあるいは理解しようという努力が感じられることが必要となっている。一方国 際結婚者においては、夫婦間の類似性と配偶者の理解や理解努力の間に弱い相関関係が見られ たが、相違には、互いの理解や理解努力は直接関わっていないことが明らかになった。  また、国際結婚者、日本人同士結婚者それぞれにおいて、夫婦間の価値観等の理解に関する 項目のうち、「傷つく」ことに影響を与える要素を見出すため、「傷つく」を目的変数としたロ ジスティック回帰分析を行なった。その結果、国際結婚者では2項目、日本人同士結婚者では 1項目で有効な数値が得られた。それらを表3、表4にまとめた。  表3より、「傷つく」に影響を与える「相違」と「喧嘩」の非標準化係数(B)の値が、−1.494、

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一1.976とともにマイナスで、また他因子の影響を補正した回帰係数指数のオッズ比(Exp(B)) が.224と.139であることから、国際結婚者にとって、相違を感じなければ感じないほど、喧嘩 しなければしないほど傷つかないことが分かる。同様に表4より、非標準化係数一2.067、オッ ズ比.127であることから、日本人同士結婚者にとって、喧嘩しなければしないほど傷つかない ことが分かった。 表3       国際結婚者(N=92) B  標準誤差  有意確率 Exp(B) Exp(B)の95.0%信頼区間 下限      上限 相違 喧嘩 一1.494 −1.976 .700 .558 .033 .000 .224 .139 .057 .046 .884 .414 表4 日本人同士結婚者(N=:86) B  標準誤差  有意確率 Exp(B) Exp(B)の95.0% 信頼区間  下限      上限 喧嘩 一2.067 .532 .000 .127 .045 .359 3.3.2国際結婚者、日本人同士結婚者の間で見られる相違  次に、国際結婚者、日本人同士結婚者の間において、違いが見られる項目があるかどうか調 べるため、8つの項目ごとにx二乗検定を行なった。その結果が表5である。数値にある印は、 二者間の有意差の強さを表している。 表5 国際結婚者一日本人同士結婚者の項目ごとの関連性 価値観や習慣は似ている 価値観等の相違が気になる 自分は理解している 配偶者は理解している 自分は努力をしている 配偶者は努力をしている 口喧嘩をする 口喧嘩で傷つく ***o≦.001**P≦.01*P≦.05 .018* .713 1.000 .151 .008** .060 .654 .016*  表5より、二者間で有意差が認められたのは、「価値観の類似」(P=.018,df=1)、「理解努カー 自分」(P=.008,df=1)、「傷つくこと」(P=.016,df=1)であった。  すなわち国際結婚者は、日本人同士で結婚している人よりも互いの価値観は似ていないと感 じているものの、傷つく人は少ない。これに対し日本人同士で結婚している人は、互いの価値 観等は似ていると感じているものの傷つきやすく、自分は相手の価値観等を理解する努力をし

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ていないと見なしていることが示された。  以上本調査の分析結果から、全体的に国際結婚者は、日本人同士結婚者より互いの価値観等 が似ていないと認めながらも、夫婦間の価値観等の違いによる摩擦で傷つくことは少ないこと が明らかになった。また、日本人同士結婚者よりも自分自身が相手の価値観等を理解しようと 努めている姿勢が見て取れた。  しかしその反面、相手に対し違和感を抱けば抱くほど傷つきやすいことから、互いの違いを 認め合いながらもどう受け止めていくかが、国際結婚の夫婦関係において重要な要素となって いることが窺われた。  一方日本人同士の夫婦の場合は、国際結婚者より互いの価値観等は似ていると認識しており、 類似性を感じれば感じるほど、傷つかないことが分かった。また、自らが相手を理解しようと いう努力が国際結婚者より少ない傾向も見られた。しかしながら、全般的に日本人同士結婚者 は、国際結婚者より夫婦間の価値観等の摩擦で傷ついており、夫婦間の相違と喧嘩とには大き な関連性が見られた。そして、類似性や相違の認識には、配偶者の理解や理解努力を見出せる か否かが大きく関わっていることも明らかになった。

4.考 察

 本研究では、国際結婚者の夫婦間の価値観等の理解と共生に関し、日本人同士結婚者との比 較から分析することで、国際結婚者の特徴を浮き彫りにすることができたと思われる。まず、 本稿で明らかになった国際結婚者としての特徴を検討してみたい。  日本人同士結婚者が互いの価値観等が似ていると見なし、自分は相手を理解しようとする努 力をしていないと認識しているのに対し、国際結婚者は、互いの価値観や習慣等が似ていない と感じ、相手を理解しようとする努力をしていることが分かった。これは、国際結婚者は、相 互作用的なコミュニケーションを通じて、それぞれが背負っている様々な文化的背景のうち、 「出身国の文化」及び「異なる出身国者」としての社会的アイデンティティを、対象化させ顕在 化させたためと思われる。そのため、「互いが異なる」という共通認識の下、結果として互い に理解し合う努力が見て取れた。  遠藤(1998)は、国際結婚で見られる問題に触れる中で、共同生活が成り立つための前提は 相互理解・相互協力であり、どちらか一方が忍耐や譲歩を強いられている形は不自然で長続き せず、文化の違いを強調していけば際限なく対立が起こると指摘している。そのような意味で、 文化的背景の異なる夫婦の間では、互いの価値観や生活習慣、食生活といった文化的背景を、 自分及び相手がどのぐらい理解あるいは理解する努力をしていると認識しているかが、大切と なってくる。また古畑(1973:9)は、「円滑な相互的適応」のためには自分が相手に期待して いることも、相手が自分に期待していることも予測できるかが明白な条件であるとしている。 そこで、夫婦が互いに相手の期待を予測できるためには、相手の価値観や習慣等が自分のもの と同様ではないことを前提とする認識が必要となる。なぜなら、「当然相手も自分と同じであ る」という自分本位で安易な先入観は、自分の期待を相手に明確に伝えることも、また相手の 自分に対する期待を汲み取ろうとする姿勢をも阻むからである。その点から考えて、日本人同

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士結婚者は、文化の違いが明白な国際結婚者と比べ互いの価値観や習慣等が似ているという認 識がありながらも、似ていないと感じる場合には国際結婚者より傷つきやすい傾向を孕んでい るといえるのではないだろうか。  しかし国際結婚者においても、互いの価値観等の相違の認識は傷つくことに影響を及ぼして いる。つまり、相違を感じなければ感じないほど傷つかないという結果は、翻しては相違を感 じれば感じるほどに傷つきやすいことも意味している。これは、違いを認識することの難しさ を表わしている。すなわち、異文化間コミュニケーション研究において、互いの違いを理解し 認め合うことが異文化間コミュニケーション能力の重要な要素である1とする一方で、互いの 文化差を意識することやエスノセントリズムなどによって、コミュニケーションを行う両者の 間に文化的距離が発生すると、相手の文化の価値を見誤ったり、コミュニケーションに失敗し たりするという指摘(Sitaram1976:御堂岡潔訳1985,218−220)もある。また、西田ら(1989、 1989)は、「コミュニケーションは人間関係を定義するし、人間関係はコミュニケーションを定 義する」として、異文化の人間関係に現れる話題を分析した研究を行っている。これによると、 文化的非類似性については、後期より初期の人間関係で目立つもので、人間関係の親密度が高 くなるにつれて文化的ステレオタイプは崩れコミュニケーションに及ぼす影響が少なくなると いう、Altman&Taylor(1973)のソーシャル・ペネトレーション理論と一致するとした。この ような先行研究は、本調査結果を裏付ける形になっており、自分と相手との類似性が感じられ たり、違いが気にならない場合には、喧嘩や傷つくなどの対立には結びつかないが、反対に違 いが気になる場合には喧嘩や傷つく要因となりやすいことが示された。  しかしながら、国際結婚者は、夫婦の間で価値観や習慣等が似ていないと認めた上で、自分 が相手を理解する努力をしており、「共生」の理想的な形を築いているよう受け取れる。長 坂・浅井(2000)の研究によれば、国際結婚夫婦の特質として見られるのは、視野の拡大と視 点の転換、そして子どもを「国際人」として育てようとする姿勢であり、国家や民族を超越し た意識の共有であるという。これは、互いの国家や民族的アイデンティティの違いを超えた、 家族としての新たなアイデンティティを構築することで、夫婦間に横たわる相違を乗り越えて いることを意味していると言えよう。  では、夫婦の価値観や習慣等を互いに理解し合い認め合う「共生」のために、何が必要なの だろうか。日本人と外国人との「共生」に向けて、国レベルや地域レベルでの支援のあり方2が 指摘されているが、本稿では本調査結果を踏まえ、夫婦間の価値観等の理解と共生のために、 夫婦の間で何が必要かを示唆してみたい。  まず一っ目としては、夫婦を一心同体の存在と見なし、類似性・同質性を過度に意識するこ との危険性である。確かに私たちの生活においては、「相互理解」が暗黙のうちに了解されて いるという前提の下に成り立っている部分が大きい。社会を形成している構成員一人一人の価 値観や行動様式等が異なることは致し方ないとしても、その違いを事あるごとに自覚していけ ば、私たちは疲れ果ててしまうであろう。そのためどこかで「自分は相手を理解しているし、 相手も自分を理解してくれている」と信じて生きている。けれども、夫婦間のコミュニケーシ ョンにおいて、意味は、相互作用の過程の中で生まれ形成されていくものであり、自分の意図

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を相手に理解・実行してもらうためには、必然的に、相手の役割を理解し、相手の立場から伝 えなければならない。「共生」とは相互に適応している状態であり、「相互的適応」とは、二人 がそれぞれ同時的にしかも比較的持続的に相手に影響を及ぼし、また相手の影響を受ける過程 である(古畑1973:3)。つまり、夫婦の間の価値観や習慣等の違いが気になる、さらには違い によって傷つくということは、自分が相手に理解してほしい、自分の習慣等を尊重してほしい というメッセージと、相手のメッセージの発信並びに応答のレベルと強さのバランスが不均衡 になっていることを示していると考えられる。そのため、夫婦間の円滑なコミュニケーション や共同生活においては、自分と相手の意見や価値観、習慣等は異なり、互いに影響し合って共 に関係を築き上げていくものだという認識が求められよう。  次に二つ目の示唆としては、相互作用的なコミュニケーションを行い、共同生活を営む夫婦 の間において、違いを意識しすぎることの危険性である。Sitaram(1976:218−220)は、文化の 違いによって意識することやエスノセントリズムなどによって、文化的距離は発生し、エスノ セントリックな人は他の諸文化の価値を見誤ったり、異文化状況でのコミュニケーションに失 敗したりすると述べている。また、趣味や意見、好きな食べ物や価値観等が似ていたり、態度 が一致していたりすると、私たちは互いに好意を持つように、互いの類似性の度合いと好意と の間に強い関係があるが、逆に捉えれば、意見が合わなかったりすると、単に考え方の不一致 に終わらず、互いに感情的に険悪になることを意味する指摘(斎藤1983:84−86)もある。この ように自分と相手との違いを強調することは、両者の間に理解不可能な超えがたい溝を作り、 分かり合おうとする気持ちを喪失しかねない。  これらより、夫婦間の価値観や習慣等の共生においては、互いに相手を積極的に受容する姿 勢こそ大切ではないかと思われる。数土(2001:15)は、私たちの人間関係は、暗黙のうちに 了解されている相互理解の上に成立しているが、実はこの相互理解とは虚構であるという。そ して、私たちは他者と相互理解しているはずの事柄について、その内容を明示的に確認したこ とがないが、それをしないのは、確認(二説明を求める)してしまえばそれが相互理解でない ことが明らかにされてしまうからであるという。私たちは、円滑な人間関係を築き、保持する のに、互いに理解し合おうとする努力と、分かり合えているという信頼、類似性・同質性の共 有が必要であるが、それらを明確に問い詰めれば、私たちは真の意味で理解し合えていないこ とに気づかされ、うろたえてしまうだろう。夫婦といえども、全てを分かり合い、自分と同じ 価値観や習慣を相手も持っていると見なすことも幻想であれば、互いの差異を顕在化させるこ ともよりよい関係にとって危険を孕んでいる。むしろ、夫婦の共生において「理解し合う」こ とが絶対不可欠の要素と考え、非現実的な理想に傷つくよりも、互いに「理解できない他者」 「理解されない自分」を認め、より相手を理解できるよう相手を積極的に受け入れるとともに、 自分も理解されるよう、相手に伝えていく姿勢が大切ではないだろうか。Alba&Golden (1986:202−203)は、結婚が永続的で親密なものとするならば、インターマリッジは他のいか なるタイプの関係よりも、社会的な境界線と内部者と外部者が持続的・排他的で、大きくは階 層性のない関係において互いを受け入れる意志を確認する関係であると述べている。国際結婚 夫婦の在り様を研究することは、今後も私たちの持つ様々な社会的・心理的境界線を乗り越え、

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共生への道を示唆してくれるであろう。  本稿では、国際結婚夫婦のコミュニケs・一・一ションについて、出身国とその文化の違いという視 点から、価値観や習慣等の理解や共生に焦点を当てて論じた。今後の課題としては、国際結婚 のもつ多層性に注目し、出身国別や日本人やそれ以外の出身者かといった観点からの分析や、 出身国とその文化の差という一側面のみでなく、ジェンダーの視点からも国際結婚夫婦のコミ ュニケーションを論じる必要性があると思われる。また夫婦間コミュニケーションについても、 価値観や習慣等の理解以外の側面について、研究することも今後の課題である。 注 1たとえば、山岸みどり、井下理、渡辺文夫(1992)「『異文化間能力』測定の試み」(『現代のエスプリ』299至文 堂) 2たとえば、石河久美子(2003)『異文化間ソーシャルワーク』川島出版では、国際結婚の外国人女性だけではな いが、異文化対応のシステムの構築に向けて、多言語・多文化サービスの充実化、日本語教育プログラムの拡充、 サービス機関・組織としての外国人支援、保険・医療・福祉専門者に対する研修、市民に対する異文化理解講座 の開催、外国人に対する異文化理解講座の開催、支援に広がる実態調査の実施を提案している。 参考文献 石井敏・久米昭元・遠山淳編著(2001)『異文化コミュニケーションの理論一新しいパラダイム    を求めて一』有斐閣ブックス85. 遠藤義孝(1998)「在日外国人一地域に生きる外国人花嫁一」『現代のエスプリ:エンパワTメン    ト』376 久木田純・渡辺文夫編 至文堂 葛慧芽(1999)「国際結婚に対する地域ケアシステム作りの必要性一中国人花嫁の事例から一」    『日中社会学研究』7,日本社会学会 葛慧芽(2000)「国際結婚における『共生』の課題」金沢学院短期大学紀要「学業」VOL42 斉藤和志(1990)『社会心理学パースペクティブ2一人と人を結ぶとき』大坊郁夫・安藤i清志・    池田謙一編 誠信書房 斉藤勇編(1983)『人間関係の心理学』誠信書房84−86. 佐藤悦子(1986)『家族内コミュニケーション』勃草書房20−21. 篠崎正美(1996)「国際結婚が家族社会学研究に与えるインパクト」『家族社会学研究』8,日本    家族社会学会編 数土直紀(2001)『理解できない他者と理解されない自己』動草書房15. 施利平(1999)「国際結婚夫婦のコミュニケーションにおける言語能力の役割」『年…報人間科学』    20,第2分冊大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室 施利平(2000)「国際結婚夫婦におけるコミュにケーションと婚姻満足度」『ソシオロジ』第44巻    3号 寺内恵一(1995)「国際結婚への道のりと村の生活への適応一行政の立場から一」『宮城学院女    子大学キリスト教文化研究所 移民研究レポート』vol.3 竹下修子(2000)『国際結婚の社会学』学文社 長坂香織・浅井美智子(2000)「国際結婚にみられる共生の形態一日本人と米国人のカップルの

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   事例を手がかりに一」『紀要一山梨県立看護大学短期大学部』vol.6No.1 西田司、S.サドウィークス、 W.B.グディカンスト、 S.ティン・ツーミー、吉沢豊子(1989)「日    本人と米国人の対人関係におけるテーマと親密度」『国際関係研究』第9巻第3号135−15. 西田司、S.サドウィークス、 W.B.グディカンスト、 S.ティン・ツーミー(1989)「異性・異文化    の対人関係に現れる話題」『国際関係研究』第10巻第1号 新田文輝(1995)「最近の日本における国際結婚一…接近と交i換理論を中心にした試論」『吉備国    際大学社会学部研究紀要』5. 廣岡秀一(1987)「夫婦関係の調和・不調和」『家族関係の社会心理学』第2章第2節 長田雅喜

   編福村出版

古畑和孝(1973)『社会心理学』岩波書店9. Altman,1.&Taylor,D.(1973)Public and Priva te Self in Japan and the United Sta tes. Tokyo:    Simal. Andrew G.Bowser, Susan Hej azinia−Bowser、4 GENERAL STUD Y OF INTERMARRIA GE I V    THE UNI『TED STA TES. College of Education University of Nevada, Reno 3−4.『海外    技術資料調査集 アメリカにおけるインターマリッジの研究』(株)材料技術資料センター KS.Sitaram(1976)FOUNDATIONS OF INTERCULTURAL COMMUNICATION.御堂岡潔    訳(1984)『異文化間コミュニケーション欧米中心主義からの脱却』東京創元社42−43. KS.Sitaram(1976)Foundations of ln tercultural Coエnm unica tion. Charles E.Merrill Publishing    Company,Columbus御堂岡潔訳(1985)『異文化間コミュニケーション』現代社会科学叢    書218−220. Richard.D.Alba, Reid.M.Golden 1986 Pa tterns of Ethnic Marriage in theしTnited States. The    University of North Carolina Press 202−203.『海外技術資料調査集 アメリカにおける    インターマリッジの研究』(株)材料技術資料センター

参照

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