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刊行物 リサーチペーパー|医薬産業政策研究所

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Academic year: 2021

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新薬導入による医療効果と経済効果 − 医事会計データ等を利用した脳保護剤(エダラボン)の効果分析 − 満 武 巨 裕 (医薬産業政策研究所 前主任研究員) 医薬産業政策研究所 リサーチペーパー・シリーズ No.26 (2005 年6月) 本リサーチペーパーは研究上の討論のために配布するものであり、著者の承諾なしに引用、複写 することを禁ずる。 本リサーチペーパーに記載された意見や考えは著者の個人的なものであり、日本製薬工業協会及 び医薬産業政策研究所の公式な見解ではない。 なお、本研究において、医事会計データの利用、解析にあたって、西村由美子氏(August Networks Inc.)、鮱名勉氏(岩手県立磐井病院)、斉藤晃氏(岩手県立中央病院)、佐々木康夫氏 (岩手県立中央病院)、田村乾一氏(岩手県立宮古病院)にご協力と有益なご助言をいただいた。 ここに、深く感謝の意を表したい。 本研究に関する照会先: 日本製薬工業協会 医薬産業政策研究所 担当 筱岡清秀 統括研究員 TEL:03-5200-2681 FAX:03-5200-2684 E-mail:[email protected] URL:http://www.jpma.or.jp/opir/

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新 薬 導 入 に よ る 医 療 効 果 と 経 済 効 果 − 医 事 会 計 デ ー タ 等 を 利 用 し た 脳 保 護 剤 ( エ ダ ラ ボ ン ) の 効 果 分 析 − 【 目 次 】 1. は じ め に ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 2. 対 象 薬 剤 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 2-1. エ ダ ラ ボ ン の 効 能 ・ 効 果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 2-2. 脳 梗 塞 急 性 期 の 治 療 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 2-3. エ ダ ラ ボ ン の 医 療 効 果 に 関 す る 実 証 研 究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 3. 分 析 の 視 点 と 方 法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 3-1. 評 価 指 標 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 3-2. デ ー タ ソ ー ス ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 3-3. 対 象 病 院 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 3-4. 方 法 ( 対 象 期 間 、 対 象 群 ) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 4. 結 果 と 考 察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 4-1. 死 亡 率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 4-2. 再 入 院 率 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 4-3. 平 均 在 院 日 数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 4-4. 入 院 医 療 費 ( 診 療 報 酬 点 数 ) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 4-5. 退 院 ( 転 院 ) 先 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 5. ま と め ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

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1. は じめ に

科 学 的 根 拠 に 基 づ く 医 療( EBM)の 必 要 性 が 最 近 益 々 説 か れ る よ う に な り 、医 薬 品 に つ い て も 、新 規 医 薬 品( 新 薬 )の 経 済 的 価 値 の 評 価 や 、投 与 さ れ た 患 者 の そ の 後 の 状 態 に つ い て 市 販 後 実 態 調 査 等 を 通 じ た 客 観 的 な 情 報 収 集 と 提 供 が 求 め ら れ て い る 。 新 薬 に つ い て は 、品 質 、有 効 性 、安 全 性 に つ い て 検 証 さ れ た 上 で 臨 床 試 験( 治 験 )が 行 わ れ 、さ ら に 上 市 後 も 引 き 続 き 製 薬 会 社 と 医 療 機 関 が 協 力 し て 副 作 用 、投 与 経 過 な ど の 情 報 収 集 が 行 わ れ て い る 。一 方 、治 験 で 得 ら れ る 情 報 の 限 界 を 指 摘 す る 意 見 も 存 在 す る注 1 )。 そ こ で は 、 現 在 得 ら れ る 情 報 に 加 え て 、 新 薬 の 医 療 効 果 に つ い て 、 よ り 高 い エ ビ デ ン ス を 得 る た め に 、さ ま ざ ま な 合 併 症 や 併 発 症 、健 康 状 態 、年 齢 階 層 の 患 者 を 対 象 に 、服 薬 後 の 客 観 的 か つ 精 緻 な 情 報 収 集 を 行 う こ と の 必 要 性 が 指 摘 さ れ て い る 。し か し 、こ れ ま で 日 本 で は 、こ の よ う な 情 報 収 集 と そ れ に 基 づ い た 分 析 は 、薬 歴 管 理 を 含 む 医 療 情 報 を 個 人 ご と に 長 期 間 に わ た っ て 継 続 観 察 し 累 積 で き る 環 境( デ ー タ ベ ー ス ) が 十 分 で な い た め 困 難 と さ れ て き た注 2 ), 1 ) 2 ) こ の よ う な デ ー タ は 本 当 に 日 本 の 医 療 機 関 に は 存 在 し な い の だ ろ う か ? 最 近 、医 療 の 質 の 向 上 と と も に 医 療 経 営 の 効 率 化 が よ り 求 め ら れ る よ う に な り 、日 本 の 病 院 は 、 医 療 費 の 計 算 を 電 子 化 し 窓 口 で の 患 者 負 担 の 会 計 や 診 療 報 酬 明 細 書( レ セ プ ト )の 作 成 を 支 援 す る 医 事 会 計 シ ス テ ム を ほ ぼ 100%導 入 し て い る 3 )。そ こ で 、こ の よ う な 現 在 利 用 可 能 な 病 院 情 報 シ ス テ ム か ら 得 ら れ た デ ー タ を 用 い て 、今 回 、脳 保 護 剤 で あ る エ ダ ラ ボ ン を 対 象 薬 剤 と し て 、新 薬 使 用 が も た ら す 医 療 効 果 と と も に 経 済 効 果 に つ い て も 分 析 を 試 み た 。 ― ― ― ― ― 注 記 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 注 1) 新 薬 は、基 礎 研 究 、非 臨 床 試 験 段 階 で品 質 、有 効 性 、安 全 性 について検 討 した上 で治 験 が行 われる。しか し、Rogers4 )らは、治 験 から得 られる情 報 には、1.症 例 数 が 1,000 件 程 度 と少 ないこと、2.小 児 ・高 齢 者 が被 験 者 にいないこと、3.投 与 期 間 が 短 いこと、4.合 併 症 の ない被 験 者 に投 与 され ていること等 の 限 界 があると 指 摘 し ている。製 薬 会 社 が主 体 となり医 師 ・薬 剤 師 の協 力 を得 て、市 販 後 も引 き続 き新 薬 の情 報 収 集 が実 施 されてい るが、今 後 、これま で以 上 に市 販 後 における 医 薬 品 の有 効 性 、安 全 性 、および 品 質 の確 保 が重 要 になってくる と思 われる。 注 2) 諸 外 国 で薬 剤 疫 学 、薬 剤 経 済 分 析 の研 究 にデータを提 供 している代 表 的 なデータベースとして、1.カナダ のサスカチュアン州 (Saskatchewan)の全 州 民 約 100 万 人 を母 集 団 とした個 人 情 報 を含 む健 康 診 断 データ、薬 剤 請 求 書 情 報 、および入 院 患 者 情 報 等 から構 成 されているデータベース、2.米 国 のメディケイド(Medicaid)の個 人 (患 者 )情 報 、請 求 書 情 報 、および治 療 した医 師 情 報 等 から構 成 されている約 1000 万 人 分 のデータベース、 3.HMO(Health Maintenance Organization:健 康 保 険 支 払 い機 関 )の加 入 者 登 録 データ(個 人 情 報 )、薬 局 で 投 薬 された処 方 データ、病 院 からの入 院 患 者 の 処 方 薬 の使 用 データ、検 査 情 報 、および 放 射 線 検 査 情 報 から 構 成 されている Group Health Cooperative of Puget Sound と Kaiser Foundation Health Plan のデータベース

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2. 対 象薬 剤

分 析 に 当 た っ て 、対 象 薬 剤 と し て 脳 梗 塞 急 性 期 の 治 療 に 用 い ら れ る エ ダ ラ ボ ン を 選 択 し た 。 エ ダ ラ ボ ン は 保 険 薬 価 収 載 時 に 画 期 性 加 算注 3 )が 認 め ら れ た 従 来 に な い 効 能 ・ 効 果 を 持 つ 本 邦 発 の 新 薬 で あ り 、 か つ 上 市 が 2001 年 6 月 と 比 較 的 最 近 で あ る こ と 、 加 え て 、 上 市 後 の 医 療 効 果 に 関 す る 実 証 研 究 が あ ま り 行 わ れ て い な い こ と か ら 、 同 剤 を 選 択 し た 。 2-1. エ ダ ラ ボ ン の 効 能 ・ 効 果 エ ダ ラ ボ ン は 脳 保 護 療 法 と い う 、虚 血 に よ る 障 害 か ら 脳 を 保 護 す る 新 し い 治 療 を 提 供 し た 。本 剤 は 、脳 梗 塞 発 症 後 に 梗 塞 部 位 の 脳 細 胞 や 脳 血 管 か ら 放 出 さ れ 梗 塞 の 進 展 ( 憎 悪 )を 引 き 起 こ す 活 性 酵 素( フ リ ー ラ ジ カ ル )を 消 去 す る フ リ ー ラ ジ カ ル ス カ ベ ン ジ ャ ー で あ り 、梗 塞 を 抑 制 す る と 同 時 に 、脳 浮 腫 、脳 梗 塞 、神 経 症 候 、遅 発 性 神 経 細 胞 死 な ど の 虚 血 性 脳 血 管 障 害 の 発 現 も 抑 制 す る 。適 応 は 脳 梗 塞 急 性 期 に 伴 う 神 経 症 候 、 日 常 生 活 動 作 障 害 、 機 能 障 害 の 改 善 で 、 発 症 後 24 時 間 以 内 に 投 与 を 開 始 し 、 投 与 期 間 は 14 日 以 内 と さ れ て い る 。用 法 、用 量 は 、成 人 に 1 回 1 管( エ ダ ラ ボ ン と し て 30mg) を 適 当 量 の 生 理 食 塩 液 等 で 用 時 希 釈 し 、 30 分 か け て 1 日 朝 夕 2 回 の 点 滴 静 注 を 行 う 。 2-2. 脳 梗 塞 急 性 期 の 治 療 脳 梗 塞 急 性 期 の 治 療 は こ れ ま で 、血 栓 溶 解 療 法 、抗 血 栓 療 法 、抗 血 小 板 療 法 、脳 浮 腫 を 軽 減 す る 治 療 方 等 が 行 わ れ て き た が 、エ ダ ラ ボ ン の 登 場 に よ り 脳 保 護 療 法 が 加 わ っ た 6 )。 日 本 脳 卒 中 学 会 、 日 本 脳 神 経 外 科 学 会 、 日 本 神 経 学 会 、 日 本 神 経 治 療 学 会 、 日 本 リ ハ ビ リ テ ー シ ョ ン 医 学 会 が 中 心 と な っ た 脳 卒 中 合 同 ガ イ ド ラ イ ン 委 員 会 が 2004 年 に ま と め た「 脳 卒 中 治 療 ガ イ ド ラ イ ン 2004」7 ) に よ る と 、現 在 脳 梗 塞 急 性 期 の 治 療 に は 表 1 に 示 し た と お り 15 種 類 の 治 療 法 が 存 在 し 、 脳 卒 中 の 推 奨 グ レ ー ド (recommendation grade)に 沿 っ て そ れ ぞ れ の 治 療 に つ い て A、B、C1、C2、D の 5 段 階 で 評 価 さ れ て い る 。

ち な み に 、一 番 治 療 効 果 が 高 い と さ れ る A(“ 行 う よ う に 強 く 勧 め ら れ る ”)は 、発 症 後 3 時 間 以 内 に 行 う t-PA(tissue plasminogen activator( 組 織 プ ラ ス ミ ノ ー ゲ ン ア ク チ ベ ー タ )、 日 本 で は ま だ 保 険 適 用 が 認 め ら れ て い な い )と 発 症 48 時 間 内 に 行 う ア ス ピ リ ン に よ る 抗 血 小 板 療 法 の 2 つ で あ り 、 エ ダ ラ ボ ン は 推 奨 度 B の “ 行 う よ う に 勧 め ら れ る ”に 分 類 さ れ て い る 。エ ダ ラ ボ ン の 使 用 は 、こ こ 数 年 で 日 本 に お い て 確 立 さ れ た 脳 梗 塞 急 性 期 の 治 療 方 法 の 一 つ と な っ て い る 。

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  表1. 脳梗塞急性期の治療  治療方法 投与薬剤 推奨グレード  t-PA(発症6時間以内):保険適用外 A  ウロキナーゼ C1  ストレプロキナーザ D  アスピリン(発症48時間以内) A  オザグレルナトリウム(発症5日以内) B  脳保護薬  エダラボン(発症24時間以内) B  血栓溶解療法(頚動脈的投与)  血栓溶解剤(発症6時間以内) B  アルガトロバン  (発症48時間以内、病変最大径1.5cm以上) B  ヘパリン(発症48時間以内) C1  低分子ヘパリン、ヘパリノイド:共に保険適用外 C1  グリセロール B  マニントール C1  血液希釈療法  血漿増量薬をもちいた血液希釈療法 C1  低体温療法 C1  高圧酸素療法 C1  深部静脈血栓症および  肺塞栓症への対策 C1  開頭外減圧療法 C1  緊急頸動脈内膜剥離術(CEA) C1  経皮的血管形成術と  ステント留置術 C1  ステロイド療法  副腎皮質ホルモン C2  フィブリノゲン低下療法  Ancrod(未承認) 臨床に応用できる段階ではない  脳浮腫管理  血栓溶解療法(静脈内投与)  抗血小板療法  抗凝固療法 2-3. エ ダ ラ ボ ン の 医 療 効 果 に 関 す る 実 証 研 究 こ れ ま で に エ ダ ラ ボ ン の 上 市 後 に 実 際 に 投 与 し た 患 者 を 対 象 に お こ な わ れ た 実 証 研 究 は 、寺 山 8 )の エ ダ ラ ボ ン 投 与 群 と 非 投 与 群 の“ あ る 自 立 生 活 可 能 な レ ベ ル( 脳 卒 中 重 傷 度 ス ケ ー ル Japan Stroke Scale: JSS に よ る 判 断 )”に 至 る ま で の 入 院 期 間 に 関 す る 調 査注 4 )、鈴 木 ら9 )

の mRS(modified Ranking Scale) 注 5 )を 用 い た 改 善 に 関 す る 調 査注 6 )

西 村 ら 1 0 )の mRS と 在 院 日 数 を 調 査注 7 )が 存 在 す る 。し か し 、3 つ の 論 文 と も に 、医 師 が 自 分 の 所 属 す る 医 療 機 関( 病 院 )に 入 院 し た 患 者 の み を 対 象 に し て お り 、調 査 が 1 施 設 で 患 者 数 も 限 定 さ れ て い る 。 こ の よ う に エ ダ ラ ボ ン の 医 療 効 果 に 対 す る 評 価 は 、 未 だ 確 立 さ れ る 途 上 に あ る 。ま た 、エ ダ ラ ボ ン の 効 果 に つ い て は 、専 門 医 の 間 で も 評 価 が 一 致 し て い な い の が 現 状 で あ る注 8 )  脳卒中合同ガイドライン委員会のrecommendation gradeに関する分類 A 行うよう強く勧められる B 行うよう強く勧められる C1 行うことを考慮しても良いが、十分な科学的根拠がない C2 科学的根拠がないので、勧められない D 行わないよう勧められる

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― ― ― ― ― 注 記 ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― 注 3) 類 似 薬 効 比 較 方 式 で画 期 性 加 算 が認 められた薬 剤 はエダラボンのほかにはタクロリムス、ミカファンギンナト リウムの 3 品 目 である。 画 期 性 加 算 が満 たされるには、 1)臨 床 上 有 用 な新 規 の作 用 機 序 を有 すること 2)類 似 薬 に比 して高 い有 効 性 または安 全 性 を有 することが客 観 的 に示 されていること 3)当 該 新 薬 により対 象 となる疾 病 または負 傷 の治 療 方 法 の改 善 が客 観 的 に示 されていること 以 上 の3要 件 を満 たす必 要 がある。 (出 典 :平 成 14 年 度 薬 価 制 度 改 革 の基 本 方 針 、平 成 13 年 12 月 12 日 中 央 社 会 保 険 医 療 協 議 会 ) 注 4) 寺 山 は、エダラボン投 与 群 (8 名 )は非 投 与 群 (8 名 )に較 べ自 立 生 活 可 能 なレベル(脳 卒 中 重 傷 度 スケール

Japan Stroke Scale: JSS による判 断 )にいたるまでの入 院 期 間 が約 10 日 短 いと報 告 している。 注 5) mRS は脳 卒 中 の重 傷 度 分 類 であり、下 記 の 5 段 階 のスケールにより構 成 される1 1 ) Grade 0: 全 く障 害 が存 在 しない Grade 1: 症 状 があっても、明 らかな障 害 は存 在 しない。通 常 の動 作 を補 助 なしで行 うことができる。 Grade 2: 軽 度 の障 害 。いくつ かの日 常 動 作 を行 うことができない。しかし多 くの介 助 は なくても 自 分 の身 の回 り のことができる。 Grade 3: 中 等 度 の障 害 。ある程 度 の介 助 を必 要 とするが、助 けなしで歩 くことができる。 Grade 4: 中 程 度 ~重 度 の障 害 。介 助 なしでは歩 いたり身 体 の位 置 を好 きなように動 かすことができない。 Grade 5: 重 度 の困 難 。ベッド臥 床 、失 禁 、継 続 的 な看 護 と監 視 が必 要 とされる。

注 6) 鈴 木 らは mRS(modified Ranking Scale)を用 いて、発 症 2 週 間 後 における介 助 不 要 スケール(Grade0-2)を 改 善 と定 義 して改 善 に至 った患 者 数 を比 較 している。投 与 群 (18 例 )の改 善 率 は 50.0%(9 例 )、非 投 与 群 (28 例 ) は 28.6%(9 例 )と報 告 している。 注 7) 西 村 らは入 院 時 と退 院 時 の mRS を比 較 し、投 与 群 (26 人 )は非 投 与 群 (35 人 )に比 べ有 意 に mRS 値 が向 上 し、在 院 日 数 も 49.0 日 から 22.9 日 に短 縮 したと報 告 している。 注 8) 本 研 究 の実 施 に当 たって協 力 を依 頼 した対 象 病 院 で、実 際 に脳 梗 塞 の治 療 を担 当 している専 門 医 の評 価 は、以 下 のように分 かれている。 「主 観 的 ではあるが、実 感 として脳 細 胞 死 滅 の時 間 延 長 効 果 があると感 じている。エダラボン上 市 前 であれば 通 常 1 日 で MRI、CT 画 像 で脳 細 胞 死 滅 が確 認 されたが、エダラボンを用 いるとそれが徐 々に(ゆっくりと)進 行 するというイメージがある。また脳 浮 腫 効 果 があり小 脳 圧 迫 による呼 吸 停 止 での死 亡 患 者 が減 少 したと感 じ ている。」 と評 価 する医 師 がいる一 方 で、 「日 々の臨 床 経 験 から効 果 の程 はわからない。試 験 的 にある一 時 期 の全 患 者 の mRS を測 定 比 較 したが、臨 床 上 有 効 な知 見 は得 られなかった。だが、治 験 で効 果 があったので、適 用 条 件 を満 たせば投 与 している。」 と直 接 的 な効 果 、エビデンスがないと感 じる医 師 も存 在 する。

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3. 分 析 の 視点 と方 法

3-1. 評 価 指 標 本 研 究 で は 、 新 薬 投 与 群 は 新 薬 未 投 与 群 と 比 較 し た 場 合 に 、 ① 医 療 の 質 を 測 る 指 標 と い わ れ る 「 死 亡 率 」、「 再 入 院 率 」1 2 )の 他 、「 在 院 日 数 の 短 縮 」 等 に 影 響 が 見 ら れ る の で は な い か ② 医 療 費 に つ い て は 、エ ダ ラ ボ ン の 場 合 は 、新 薬 の 導 入 に よ る 既 存 薬 剤 や 治 療 処 置 等 と の 置 き 換 え が な い の で は な い か 。そ の 場 合 、新 薬 の 医 療 費 分 だ け 薬 剤 費 が 増 大 す る の で は な い か ③ 退 院 ( 転 院 ) 先 に 影 響 が み ら れ る の で は な い か と 考 え 、 こ れ ら を 評 価 指 標 と す る こ と に し た 。 医 事 会 計 デ ー タ を も と に 算 出 可 能 な 指 標 は 、死 亡 率 、再 入 院 率 、在 院 日 数 、入 院 医 療 費 ( 診 療 行 為 別 点 数 ) で あ る 。 死 亡 率 は 、院 内 で 死 亡 し た 場 合 、死 亡 診 断 書 の 作 成 に 伴 い 医 事 会 計 デ ー タ の 診 療 行 為 名 称 に“ 死 亡 診 断 書 作 成 料 ”と 記 録 さ れ た レ コ ー ド が 発 生 す る の で 、こ の デ ー タ の 有 無 に よ り 死 亡 の 有 無 を 判 別 し た 。 再 入 院 率 は 、退 院 後 の 医 事 会 計 デ ー タ を 検 索 し て 同 一 患 者 番 号 の 検 出 の 有 無 を 判 別 し 、さ ら に 再 入 院 時 の 病 名 に 脳 梗 塞 の 記 載 の 有 無 を 判 別 す る こ と で 、同 一 病 名( 脳 梗 塞 ) で 再 入 院 し た 患 者 を 特 定 し た 。 期 間 は 30 日 お よ び 90 日 と 設 定 し た 。 在 院 日 数 は 、 医 事 会 計 の 算 定 日 か ら 入 院 日 と 退 院 日 を 特 定 し 算 出 し た 。 診 療 行 為 別 の 区 分 は 、 診 療 報 酬 明 細 書 ( レ セ プ ト ) に 準 ず る 区 分 と し た ( 表 2)。 エ ダ ラ ボ ン は 点 滴 静 注 で 患 者 に 投 与 さ れ る の で 、 注 射 の 診 療 行 為 区 分 に 分 類 さ れ る 。  表2.  診療報酬明細書(医科入院)の診療行為区分 診療行為区分 内容  初診  初診の場合に算定される初診料など  指導  治療計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の指導を  おこなった場合に算定される医療行為など  在宅  在宅患者の診療・指導等や救急搬送診療料など  投薬  調剤料、処方料、薬剤料など  注射  各種注射に関連する注射料、薬剤料および特性保健医療材料料など  処置  各種医学的処置(例、気管内挿管、留置カテーテル処理など)  手術・麻酔  手術料、手術に使用される保険医療材料、麻酔料、薬剤料など  検査  生化学検査、心電図検査など各種検査行為  画像  エックス線診断料、核医学診断料、コンピュータ断層撮影診断料など  その他  リハビリ(理学療法や作業療法)など  入院  入院基本料、特定入院料など、入院に要した基本的費用として算定できる項目

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さ ら に 、退 院 サ マ リ( 紙 )と カ ル テ( 紙 )か ら 得 ら れ る 退 院( 転 院 )先 も 指 標 に 加 え た 。 退 院 ( 転 院 ) 先 は 、 ⅰ . 退 院 後 自 宅 に 戻 っ た 患 者 ⅱ . 脳 梗 塞 の 治 療 が 完 了 し て リ ハ ビ リ の た め に 転 院 し た 患 者 ⅲ . 他 の 医 療 機 関 や 長 期 療 養 施 設 に 転 院 し た 患 者 あ る い は 他 の 疾 患 の 治 療 た め に 転 科 し た 患 者 の 3 つ に 分 類 し た 。医 療 効 果 が 良 け れ ば 、退 院( 転 院 )先 が ⅰ ま た は ⅱ に な る の で は な い か と 考 え た 。 ( 退 院 サ マ リ は 入 院 患 者 が 退 院 す る 際 に 作 成 さ れ る 書 類 で 、患 者 番 号 、性 別 、年 齢 等 の 患 者 の 基 本 的 属 性 に 加 え て 、所 見 、転 帰 、在 院 日 数 、転 帰 先 等 の 医 療・診 療 情 報 が 記 入 さ れ て い る 。) 3-2. デ ー タ ソ ー ス 分 析 に 利 用 し た デ ー タ ソ ー ス は 、医 事 会 計 シ ス テ ム か ら ダ ウ ン ロ ー ド し た 医 事 会 計 デ ー タ で あ る 。医 事 会 計 デ ー タ は 、診 療 報 酬 請 求( レ セ プ ト 請 求 )の 元 に な る デ ー タ で 、患 者 に 対 し て 医 療 機 関 で 行 わ れ た 保 険 請 求 可 能 な す べ て の 診 療 行 為 記 録 が 入 力 ・ 蓄 積 さ れ て い る 。ち な み に こ の 医 事 会 計 デ ー タ を 元 に 、患 者 ご と 保 険 ご と に 月 ご と に 集 計 し た も の が レ セ プ ト で あ る 。 医 事 会 計 デ ー タ の 例 を 図 1 に 示 し た 。 患者番号 診療科 診療行為区分 診療行為名称 コード 使用量 単位 点数 金額 算定日1 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ AAAAA 神経内科 注射 点滴注射 xxxx 95 0 2003/1/1 AAAAA 神経内科 注射 生理食塩液100・ xxxx 200 B 0 0 2003/1/1 AAAAA 神経内科 注射 デキストラン40注射液      xxxx 100 B 0 0 2003/1/1 AAAAA 神経内科 注射 プラスチックカニューレ型 静脈内留置針(・)(119円) xxxx 100 x 13 0 2003/1/1 AAAAA 神経内科 注射 ラジカット注30・ 20・ xxxx 200 A 2093 0 2003/1/1 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ AAAAA 神経内科 入院料 入院基本料(14日以内) xxxx 1565 0 2003/1/2 AAAAA 神経内科 入院料、その他 夜間勤務等看護加算xx xxxx 30 0 2003/1/2 AAAAA 神経内科 入院料、その他 10対1看護補助料 xxxx 80 0 2003/1/2 AAAAA 神経内科 入院料、その他 救急医療管理加算 xxxx 600 0 2003/1/2 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 図1. 医事会計データの例

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デ ー タ 項 目 は 、 患 者 番 号 や 診 療 科 、 診 療 行 為 区 分 、 個 々 の 診 療 行 為 名 称 、 使 用 量 、 単 位 、点 数 、そ の 医 療 行 為 が 行 わ れ た 年 月 日 情 報( 算 定 日 )等 で あ り 、こ れ ら が 1 レ コ ー ド と し て 保 存 さ れ て い る 。さ ら に こ れ に 加 え て 、保 険 請 求 に 必 要 な 健 康 保 険 情 報 、 保 険 病 名 等 が 入 力 、 保 存 さ れ て い る 。 し た が っ て 、 こ の デ ー タ か ら 、 ど の 患 者 (who) に 、 い つ (when)、 ど の 診 療 科 (where)で 、 何 の 医 療 行 為 、 薬 剤 投 与 (what)が さ れ た の か が わ か る 。 ま た 、 デ ー タ は 医 事 会 計 デ ー タ の 後 利 用 シ ス テ ム 1 2 )か ら 独 自 の プ ロ グ ラ ム に よ り ダ ウ ン ロ ー ド ( 抽 出 ) 処 理 を 行 い 、 統 計 分 析 に は SPSSver.10.0J を 用 い た 。 3-3. 対 象 病 院 分 析 の 対 象 と し た 病 院 は 、医 事 会 計 デ ー タ が 利 用 可 能 で か つ 研 究 協 力 が 得 ら れ た 東 北 地 方 の 三 次 救 急 体 制 の 3 つ の 自 治 体 病 院 で あ る 。各 病 院 の プ ロ フ ィ ー ル を 表 3 に 示 し た 。

   表3.  対象病院のプロフィール(2003年度)

項目 A病院 B病院 C病院    入院病床数 730 404 305    ICU病床数 6 0 0    外来診療部門数 23 19 17    入院病棟数 13 6 5    手術室数 10 6 5

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3-4. 方 法 ( 対 象 期 間 、 対 象 群 ) 新 薬 の 効 果 を 分 析 す る た め に 、新 薬 を 使 用 し た 患 者( 以 下 、新 薬 使 用 群 )と 、エ ダ ラ ボ ン 上 市 前 で も し 新 薬 が 存 在 し て い れ ば 使 用 し て い た と 考 え ら れ る 患 者( 以 下 、新 薬 未 使 用 群 ) の 二 つ の 群 に 分 け て 比 較 を 行 う こ と と し た 。 ・ 対 象 期 間 図 2 に 、 各 病 院 の 2001 年 6 月 エ ダ ラ ボ ン 上 市 後 2003 年 12 月 ま で の 3 病 院 ご と 、 お よ び 合 計 の エ ダ ラ ボ ン 使 用 患 者 数 の 推 移 を 示 し た 。 A 病 院 と B 病 院 で は 2001 年 8 月 か ら 、C 病 院 で は 10 月 か ら 使 用 が 開 始 さ れ 、2001 年 12 月 ま で 増 加 し 続 け て い る こ と が わ か る 。各 月 の 平 均 は 32.6 人 /月( SD=12.6)で あ っ た 。そ こ で 、2001 年 の 7 月 か ら 12 月 ま で は エ ダ ラ ボ ン 導 入 時 期 と し て 分 析 対 象 期 間 か ら 除 外 し 、 分 析 対 象 期 間 は 、 新 薬 使 用 群 は 2002 年 1 月 か ら 2003 年 12 月 の 2 年 間 と し た 。 一 方 、 新 薬 未 使 用 群 に つ い て は 、 2001 年 1 月 か ら 6 月 と し た 。

図2 対象病院でのエダラボン使用患者数の推移

(2 0 0 1 年6 月~2 0 0 3 年1 2 月) 0 10 20 30 40 50 60 2001/ 0 6 2001/ 0 8 2001/ 1 0 2001/ 1 2 2002/ 0 2 2002/ 0 4 2002/ 0 6 2002/ 0 8 2002/ 1 0 2002/ 1 2 2003/ 0 2 2003/ 0 4 2003/ 0 6 2003/ 0 8 2003/ 1 0 2003/ 1 2 3病院合計 A病院 B病院 C病院 (人数) 2001年6月 エダラボン上市

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・ 対 象 群 上 記 の 期 間 を 対 象 に 、2 つ の 対 象 群( 新 薬 使 用 群 、新 薬 未 使 用 群 )を 以 下 の よ う に 定 義 し た 。 新 薬 使 用 群 は 、入 院 日 と 診 療 開 始 日 が 一 致 す る 患 者 に 限 定 し て 候 補 者 リ ス ト を 作 成 し た 後 、医 事 会 計 デ ー タ の 診 療 行 為 別 デ ー タ フ ィ ー ル ド に エ ダ ラ ボ ン の 製 品 名 の 記 載 が あ る 患 者 と マ ッ チ ン グ さ せ て 対 象 群 と し た( こ の 段 階 で 、A 病 院 362 人 、B 病 院 140 人 、 C 病 院 227 人 、 合 計 729 名 )。 さ ら に 死 亡 率 以 外 の 指 標 の 分 析 か ら 、 死 亡 患 者 と ア ウ ト ラ イ ヤ ー を 対 象 か ら 除 外 し た 。各 ア ウ ト ラ イ ヤ ー の 内 訳 を 表 4 に 示 し た 。ア ウ ト ラ イ ヤ ー は 、加 療 の 必 要 が あ っ た が 本 人 の 強 い 希 望 に よ り 治 療 が 打 ち 切 ら れ た ケ ー ス 、入 院 中 に 悪 性 新 生 物 等 の 急 性 脳 梗 塞 以 外 の 治 療 が 開 始 さ れ た ケ ー ス 、ペ ー ス メ ー カ ー 移 植 術 等 の 処 置 が 行 わ れ た ケ ー ス な ど で あ る 。 一 方 、 新 薬 未 使 用 群 は 2001 年 1 月 か ら 6 月 に 急 性 期 脳 梗 塞 で 入 院 し た 全 患 者 の 中 か ら 、以 下 の 処 理 を 行 っ て 抽 出 し た 。す な わ ち 新 薬 投 与 群 と 同 様 の 手 続 き で 候 補 者 リ ス ト を 作 成 し た 後 、 対 象 病 院 で 脳 梗 塞 の 治 療 に あ た っ て い る 専 門 医 ( 脳 神 経 外 科 医 、 神 経 内 科 医 )が 、エ ダ ラ ボ ン 上 市 (2001 年 6 月 ) 前 に 入 院 し た 時 の 患 者 カ ル テ や 退 院 サ マ リ を 判 読 し 、も し エ ダ ラ ボ ン が 存 在 す れ ば 使 用 し た で あ ろ う 患 者 を 判 別 し 定 義 し た 。 こ の 段 階 で 、 新 薬 未 使 用 群 は 、 A 病 院 37 人 、 B 病 院 15 人 、 C 病 院 59 人 、 合 計 111 名 と な っ た ( 病 院 ご と の 抽 出 率 は 、 A 病 院 66.1%、 B 病 院 27.8%、 C 病 院 59.0%で あ っ た )。 そ し て 、 さ ら に 新 薬 使 用 群 と 同 様 に 、 表 4 に 示 し た ア ウ ト ラ イ ヤ ー を 除 外 し た 。    表4.  各病院のアウトライヤー内訳 医療機関 新薬未使用群 新薬使用群 A病院  心腫瘍摘出術を実施(1名)  心停止後寝たきり(1名)  動脈血栓内膜摘出術を実施(2名)  悪性新生物による胃切除術(1名)  悪性新生物(転移発見)(1名)  経皮的冠動脈ステント留置術(1名)  ペースメーカー移植術(2名)  自殺企図(1名)  急性腎盂炎、肺炎併発(1名) B病院  加療の必要があったが本人の強い希望  により帰宅(1名)  心停止後寝たきり(1名)  加療の必要があったが本人の強い希望  により帰宅(2名)  入院後、悪性新生物の治療を開始(2名)  急性リンパ性白血病の治療を開始(1名)  心停止後、肺炎を併発(1名) C病院  なし  ペースメーカー移植術(1名)  悪性新生物(転移発見)(1名)  心筋梗塞・消化管出血(1名)  経皮的冠動脈ステント留置術(1名)  心停止後寝たきり(2名)

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こ の 結 果 、分 析 対 象 患 者 数 は 、新 薬 使 用 群 は 632 名( A 病 院 322 人 、B 病 院 112 人 、 C 病 院 198 人 )、 新 薬 未 使 用 分 は 99 名 ( A 病 院 34 人 、 B 病 院 10 人 、 C 病 院 55 人 ) と な っ た ( 表 5)。 ま た 、男 女 比( 表 6)は 、新 薬 未 使 用 群 の 男 性 は 66.7%( 66 名 )、女 性 33.3%( 33 名 )、 新 薬 使 用 群 は 男 性 58.6%( 372 名 )、 女 性 41.4% ( 260 名 ) で 、 い ず れ も 病 院 間 で 有 意 差 は な か っ た 。 平 均 年 齢 は 、 新 薬 未 使 用 群 が 70.0±10.9 歳 、 新 薬 使 用 群 が 71.2±11.4 歳 で 、 新 薬 未 使 用 群 と 使 用 群 で 有 意 差 は な か っ た( 表 7)。ま た 、年 齢 階 層 別 の ヒ ス ト グ ラ ム( 図 3-1,2) を み る と 、 両 群 と も 70 歳 代 の 患 者 が 多 い こ と が わ か る 。

 表5. 新薬未使用群と新薬使用群の人数(死亡とアウトライヤーを除外)

医療機関 新薬未使用群 新薬使用群 A病院 34 322 B病院 10 112 C病院 55 198 3病院合計 99 632

 表6. 男女比

医療機関 新薬未使用群 新薬使用群 A病院 67.6 : 32.4 62.4 : 37.6 B病院 70.0 : 30.0 52.7 : 47.3 C病院 65.5 : 34.5 56.6 : 43.4 3病院合計 66.7 : 33.3 58.9 : 41.1

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 表7. 平均年齢

医療機関 新薬未使用群 新薬使用群 A病院 68.4 70.9 B病院 70.1 72.7 C病院 70.9 71.0 3病院合計 70.0 71.1 t=0.93, p=0.36(>0.05) な お 、本 研 究 で は 、新 薬 未 使 用 群 は レ ト ロ ス ペ ク テ ィ ブ に 医 師 の 判 断 に よ り 定 義 し た が 、抽 出 率 が A 病 院 (66.1%)、C 病 院 (59.0%)に 比 べ て 、B 病 院 (27.8%)は 低 か っ た 。こ れ は 、医 師 の エ ダ ラ ボ ン 適 用 時 の 判 断 基 準 の 違 い に よ る こ と が 示 唆 さ れ て い る 。判 断 を 行 っ た 各 病 院 の 医 師 に イ ン タ ビ ュ ー を し た と こ ろ 、 エ ダ ラ ボ ン 使 用 に あ た っ て 、 A 病 院 の 医 師 は 、「 原 則 的 に 80 歳 以 上 に は 投 与 を 控 え る 。ま た 、腎 機 能 の ク レ ア チ ン 値 が 1.2 以 上 の 患 者 に は 投 与 し な い 。」、 B 病 院 の 医 師 は「 一 般 的 に 脳 梗 塞 急 性 期 の 心 原 性 脳 梗 塞 、ア テ ロ ー ム 血 栓 性 脳 梗 塞 に 適 用 し て い る 。最 近 に な っ て ラ ク ナ 梗 塞 に も 効 果 が あ る と の 研 究 結 果 が で た が 、こ れ ま で は 投 与 し て こ な か っ た 。ま た 、本 薬 剤 に つ い て は 、副 作 用 情 報( 医 薬 品 安 全 情 報 )が 出 る 前 の 時 期 (2001 年 後 期 )に 副 作 用 を 経 験 し た こ と か ら 、そ れ 以 降 は 高 齢 者 で 腎 機 能 に 問 題 が あ る 場 合 に は 使 わ な い こ と に し て い る 。」、 C 病 院 医 師 は「 高 齢 者 の 適 用 に 関 し て は 慎 重 に 行 い 、副 作 用 情 報 か ら 腎 機 能 に 問 題 が あ る 場 合 は 投 与 し な い 。」 と し て い る 。 い ず れ も 高 齢 者 へ の 投 与 に つ い て よ り 慎 重 な 判 断 を 行 う 点 は 共 通 し て い る が 、A 病 院 、C 病 院 で は 脳 梗 塞 急 性 期 で あ る ア テ ロ ー ム 血 栓 性 脳 梗 塞 、心 原 性 塞 栓 症 、ラ ク ナ 梗 塞 の す べ て で 適 用 さ れ て い た の に 対 し 、B 病 院 で は ラ ク ナ 梗 塞 に は 適 用 し て い な か 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 30 20 10 0 (人数) (年齢) 図3-1. 新薬未使用群の年齢ヒストグラム 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 160 140 120 100 80 60 40 20 0 (人数) (年齢) 図3-2. 新薬使用群の年齢ヒストグラム 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 30 20 10 0 (人数) (年齢) 図3-1. 新薬未使用群の年齢ヒストグラム 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 30 20 10 0 (人数) (年齢) 図3-1. 新薬未使用群の年齢ヒストグラム 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 160 140 120 100 80 60 40 20 0 (人数) (年齢) 図3-2. 新薬使用群の年齢ヒストグラム 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 160 140 120 100 80 60 40 20 0 (人数) (年齢) 図3-2. 新薬使用群の年齢ヒストグラム

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4. 結 果 と 考察

こ こ で は 、「 死 亡 率 」、「 再 入 院 率 」、「 平 均 在 院 日 数 」、「 入 院 医 療 費( 診 療 報 酬 点 数 )」、 「 退 院 ( 転 院 ) 先 」 と い っ た 指 標 ご と に 結 果 を 示 し 考 察 を 行 う 。 4-1. 死 亡 率 表 8 に 新 薬 未 使 用 群 と 新 薬 使 用 群 の 死 亡 数 と 割 合 を 示 し た 。 A、 C 病 院 は と も に 新 薬 使 用 群 の 死 亡 率 が 約 3%微 増 し 、 B 病 院 で は 4.3%低 下 し て い た が 、 両 群 間 で 死 亡 率 に 有 意 な 差 は な か っ た 。 4-2. 再 入 院 率 3 病 院 合 計 で 比 較 す る と 、 新 薬 未 使 用 群 の 30 日 以 内 の 再 入 院 率 は 3.0%(3 名 )、 90 日 以 内 は 4.0%(4 名 )で あ っ た の に 対 し て 、 新 薬 使 用 群 で は 1.6%(10 名 )、 5.2%(33 名 )で あ っ た 。 未 使 用 群 、 使 用 群 で 有 意 な 差 は な か っ た 。( χ2=6.4, df=6, p=0.38)( 表 9)

 表8. 新薬未使用群と新薬使用群の死亡数と死亡率

医療機関 新薬未使用群 新薬使用群 A病院 2(5.4%) 30(8.3%) B病院 3(20.0%) 22(15.7%) C病院 4( 6.8%) 23(10.1%) 3病院合計 9(8.1%) 75(10.2%)

  表9. 再入院率

医療機関 30日以内 90日以内 30日以内 90日以内 A病院 0(0.0%) 0(0.0%) 5(1.6%) 15(4.7%) B病院 2(20.0%) 2(20.0%) 2(1.8%) 8(7.1%) C病院 1(1.8%) 2(3.6%) 3(1.5%) 10(5.1%) 3病院合計 3(3.0%) 4(4.0%) 10(1.6%) 33(5.2%) 新薬未使用群 新薬使用群 χ2=1.2, df=2, p=0.55 χ2=6.4, df=6, p=0.37

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死 亡 率 、 再 入 院 率 は い ず れ も 両 群 間 の 差 が 数 %以 内 で 、 統 計 的 に 有 意 な 変 化 は な か っ た の で 、 こ れ ら の 指 標 に つ い て エ ダ ラ ボ ン の 影 響 は な か っ た と い え る 。 な お 、分 析 に 採 用 し た 指 標 に つ い て は 、利 用 す る 際 の 限 界 、あ る い は 留 意 点 が 存 在 す る こ と を 考 慮 し て お か な け れ ば な ら な い 1 2 )。 例 え ば 、 米 国 で 医 療 の 質 を 測 る 指 標 と し て 用 い ら れ て い る 死 亡 率 や 再 入 院 率 で の 評 価 に あ た っ て は 以 下 の 点 を 留 意 す る 必 要 が あ る 。死 亡 率 に つ い て は 、医 療 機 関 の デ ー タ に は 退 院 後 に 自 宅 あ る い は 他 の 医 療 機 関 で 死 亡 し た ケ ー ス の デ ー タ は 含 ま れ て い な い 。再 入 院 率 に 関 し て も 、退 院 後 に 他 の 医 療 機 関 に 再 入 院 し た ケ ー ス が 観 察 さ れ て い な い 。し た が っ て 、一 般 に 特 定 の 医 療 機 関 を 対 象 と し た 調 査 で は 、数 値 が 比 較 的 低 く 算 出 さ れ て い る 可 能 性 が あ る( た だ し 、今 回 の 対 象 病 院 が 存 在 す る 医 療 圏 の 現 状 か ら は 、脳 梗 塞 が 再 発 し た 場 合 は お そ ら く 同 じ 病 院 に 運 ば れ て く る 確 率 は 高 い と 思 わ れ る )。

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4-3. 平 均 在 院 日 数 表 10、図 4 に 3 病 院 別 の 分 析 対 象 患 者 の 平 均 在 院 日 数 の 推 移 を 半 年 ご と に 示 し た 。 各 病 院 と も 、新 薬 使 用 群 の 平 均 在 院 日 数 は 、新 薬 未 使 用 群 に 比 べ 短 縮 す る 傾 向 が 見 ら れ た 。 A 病 院 は 未 使 用 群 31.9 日( SD=15.9)に 対 し て 、使 用 群 の 2002 年 1 月 か ら 2003 年 12 月 ま で は 25.1 日( SD=15.6)と 短 縮 し て お り 、統 計 的 に も 有 意 に 減 少 し て い た (t=-2.4, p=0.02*)。 B 病 院 は 未 使 用 群 43.0 日 ( SD=26.1) に 比 べ 、 使 用 群 37.5 日 ( SD=24.4) と 短 縮 し て い た 。 た だ し 、 有 意 差 は な か っ た (t=-0.7, p=0.5)。 C 病 院 は 未 使 用 群 25.9 日 ( SD=22.4) に 比 べ 、 使 用 群 23.3 日 ( SD=17.9) と 短 縮 し て い た 。た だ し 、有 意 差 は な か っ た (t=-0.9, p=0.4) 。な お 、2002 年 7 月 か ら 12 月 の 期 間 で 例 外 的 に 延 び て い る が 、 こ れ は 、 期 間 中 の 対 象 患 者 54 名 中 に 100 日 を 越 え る  表10.  平均在院日数 新薬未使用群 2001/1-6 2002/1-6 2002/7-12 2003/1-6 2003/7-12 合計 (2001/1-2003/12) A病院 31.9 29.1 25.1 24.4 25.1 25.1 B病院 43.0 36.7 38.5 37.6 37.3 37.5 C病院 25.9 24.2 28.3 20.0 20.7 23.3 3病院合計 29.7 26.7 新薬使用群 31 .9 43 .0 25 .9 29.1 36.7 24.2 25 .1 38 .5 28 .3 24.4 37.6 20.0 25.1 37.3 20.7

0

10

20

30

40

50

A病院

B病院

C病院

未使用群 2 0 0 1 / 1 - 6 使用群 2 0 0 2 / 1 - 6 使用群 2 0 0 2 / 7 - 1 2 使用群 2 0 0 3 / 1 - 6 使用群 2 0 0 3 / 7 - 1 2 図4.  3病院の各群の平均在院日数の推移 (日数)

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3 病 院 合 計 の 在 院 日 数 は 新 薬 未 使 用 群 29.7 日 に 対 し 、 新 薬 使 用 群 は 26.7 日 と 減 少 し て い た ( 有 意 差 な し (t=-1.42, p=0.15))。 平 均 在 院 日 数 は 、B お よ び C 病 院 で 統 計 的 な 有 意 差 が 見 ら れ な い も の の 、全 病 院 で 短 縮 し て お り 、 西 村 ら 1 0 )の エ ダ ラ ボ ン の 在 院 日 数 短 縮 効 果 を 示 唆 し た 結 果 と 同 様 で あ っ た 。 一 方 で 、近 年 平 均 在 院 日 数 の 短 縮 は 全 国 的 な 傾 向 で あ る の で 、そ の 影 響 も 加 味 し て 解 釈 し な け れ ば な ら な い 。図 5 に 3 病 院 そ れ ぞ れ の 院 内 全 体 の 平 均 在 院 日 数 を 示 し た が 、 2001 年 か ら 2003 年 の 変 化 で 見 る と 、 A 病 院 は 2.8 日 、 C 病 院 は 2.5 日 短 縮 、 一 方 B 病 院 は 0.7 日 長 く な っ て い た 。 A 病 院 の 新 薬 使 用 群 の 平 均 在 院 日 数 は 新 薬 未 使 用 群 に 比 べ 6.1 日 短 縮 し て お り 、院 内 全 体 よ り も 実 日 数 、変 化 率 と も 短 縮 幅 が 大 き い 。B 病 院 は も ち ろ ん 、C 病 院 も 同 様 の 傾 向 を 示 し た 。ち な み に 、対 象 期 間 中 、病 院 で ク リ テ ィ カ ル パ ス 等 を 導 入 す る と い っ た 在 院 日 数 短 縮 に つ な が る と 思 わ れ る 試 み や 、包 括 評 価 制 度( DPC)施 行 調 査 に 参 加 す る と い っ た 取 り 組 み は 行 わ れ て い な い 。さ ら に 脳 梗 塞 急 性 期 の 医 療 行 為 の 変 化 に つ い て は 、 エ ダ ラ ボ ン 以 外 の 新 し い 治 療 法 、 技 術 の 導 入 等 は さ れ て い な い 。 こ れ ら の 結 果 を 総 合 し て 考 え る と 、新 薬 使 用 群 は 新 薬 未 使 用 群 に 対 し て 、統 計 的 な 有 意 差 は A 病 院 以 外 で は 見 ら れ な い も の の 、 平 均 在 院 日 数 が 短 縮 す る 傾 向 に あ る と い え る 。 1 8 .8 1 9 . 3 1 7 . 2 1 6 . 5 2 0 . 1 1 6 . 4 1 6 . 0 2 0 . 0 1 4 . 7 0 10 20 30 A病院 B病院 C病院 2 0 0 1 年度 2 0 0 2 年度 2 0 0 3 年度 図5.  3病院の平均在院日数の推移 (日数)

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4-4. 入 院 医 療 費 ( 診 療 報 酬 点 数 ) 図 6-1∼ 3 に 3 病 院 ご と に 各 群 の 1 人 あ た り 診 療 行 為 別( 初 診 、指 導 、在 宅 、投 薬 、 注 射 、 処 置 、 手 術 ・ 麻 酔 、 検 査 、 画 像 、 そ の 他 、 入 院 ) 点 数 の 平 均 を 示 し た 。 図 6-4 に は 3 病 院 平 均 の 結 果 を 示 し た 。 ま た 、 表 11 に は 、 そ の 実 数 値 を 示 し た 。 0 2 0 0 0 0 4 0 0 0 0 6 0 0 0 0 8 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 2 0 0 0 0 初診 指導 在宅 投薬 注射 処 置 手 術 ・麻 酔 検査 画 像 そ の 他 入院 ( 点 ) 新薬未使用群 新薬使用群 図6-2.  B病院の1人あたり診療行為別点数 0 2 0 0 0 0 4 0 0 0 0 6 0 0 0 0 8 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 2 0 0 0 0 初診 指導 在宅 投薬 注射 処 置 手 術 ・麻 酔 検査 画 像 そ の 他 入院 ( 点) 新薬未使用群 新薬使用群 図6-1.  A病院の1人あたり診療行為別点数 0 2 0 0 0 0 4 0 0 0 0 6 0 0 0 0 8 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 2 0 0 0 0 初診 指導 在宅 投薬 注射 処置 手 術 ・麻 酔 検査 画像 そ の 他 入院 ( 点) 新薬未使用群 新薬使用群 図6-4.  3病院平均の1人あたり診療行為別点数 0 2 0 0 0 0 4 0 0 0 0 6 0 0 0 0 8 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 2 0 0 0 0 初診 指導 在宅 投薬 注射 処 置 手 術 ・麻 酔 検査 画 像 そ の 他 入院 ( 点) 新薬未使用群 新薬使用群 図6-3.  C病院の1人あたり診療行為別点数

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表11.  1人あたり診療行為別点数(平均)の群間比較 未使用群 使用群 未使用群 使用群 未使用群 使用群 未使用群 使用群 275 320 181 230 246 275 249 290 467 442 2,049 684 469 528 628 512 337 65 0 20 0 67 116 58 1,523 1,476 10,171 1,795 1,425 1,201 2,342 1,446 18,154 32,139 20,162 27,004 15,805 23,775 17,052 28,609 2,406 1,366 6,448 1,879 1,646 932 2,392 1,321 330 1,701 4,944 987 68 392 650 1,164 6,849 6,305 11,048 5,116 5,123 4,131 6,314 5,413 7,762 8,042 13,119 5,948 5,510 4,201 7,052 6,467 8,508 2,698 7,512 4,159 2,888 1,165 5,285 2,477 47,391 40,698 107,362 54,061 34,996 31,652 46,563 40,232 94,002 95,253 182,995 101,883 68,175 68,318 88,643 87,989  合計  注射  処置  手術・麻酔  検査 3病院平均  画像  その他  入院  初診  指導  在宅  投薬 診療行為 A病院 B病院 C病院 診 療 行 為 別 の 点 数 は 、全 病 院 で 注 射 点 数 が 増 加 し て い た (t=5.6, p<0.05*)が 、注 射 以 外 の 診 療 行 為 で 顕 著 に 増 加 し て い た も の は な か っ た 。 注 射 点 数 は 、 新 薬 使 用 群 で 11,557 点( 3 病 院 平 均 )増 加 し た が 、こ れ は エ ダ ラ ボ ン の 使 用 に よ る も の で あ る 。エ ダ ラ ボ ン は 、従 来 に な い 治 療 効 果 を 提 供 し て お り 、類 似 の 既 存 薬 と の 置 き 換 え が な い の で 増 加 は 当 然 と い え る 。図 7 に 患 者 ご と の エ ダ ラ ボ ン 使 用 回 数 の ヒ ス ト グ ラ ム を 示 し た 。 エ ダ ラ ボ ン は 平 均 し て 1 患 者 あ た り 平 均 約 17.4 回 ( 平 均 使 用 日 数 8.7 日 ) 使 用 さ れ て お り 、 1 管 あ た り 薬 価 が 約 1,000 点 な の で 単 純 に 計 算 す る と 平 均 1 人 あ た り 17,400 点 の 増 加 が 予 想 さ れ る が 、実 際 の 増 分 は そ れ よ り も 小 さ い 。こ の こ と は 、エ ダ ラ ボ ン の 導 入 に よ り 他 の 注 射 剤 を 使 用 し た 医 療 行 為 が 減 少 し た こ と を 示 し て い る と 考 え ら れ る 。 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 120 100 80 60 40 20 0 (回数) (人数) 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 120 100 80 60 40 20 0 (回数) (人数)

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ま た 、 エ ダ ラ ボ ン 投 与 終 了 の 判 断 基 準 に つ い て は 、 3 病 院 の 医 師 と も 、 ・片 麻 痺 、意 識 障 害 、失 語 な ど の 神 経 系 症 状 が 回 復 し た 場 合 、あ る い は 麻 痺 が 固 ま り こ れ 以 上 悪 化 し な い ケ ー ス と 判 断 し た 場 合 ・ 脳 梗 塞 急 性 期 の 治 療 開 始 後 に 病 床 に て 血 栓 が 開 通 し た か 、 CT、 MRI 画 像 か ら 病 巣 が 発 見 で き な い 場 合 ・ 治 療 が 完 了 し た が 転 院 先 が 見 つ か ら な い 場 合 と 共 通 し た 見 解 を 持 っ て お り 、 病 院 間 で 見 解 の 差 は 見 ら れ な か っ た 。 次 に 減 少 し た 診 療 行 為 別 項 目 を 見 る と 、“ そ の 他 ” は 有 意 に 減 少 し て い た (t=-6.9, p=0.00)。“ そ の 他 ” の 点 数 が 減 少 し た 主 な 理 由 は 、 理 学 療 法 点 数 の 減 少 で あ る 。 現 場 で は 実 際 は ベ ッ ド サ イ ド で の 医 師 、看 護 師 に よ る 理 学 療 法 は 行 わ れ て い る が 、対 象 病 院 が 三 次 救 急 病 院 で あ る た め 、ス ト レ ッ チ ャ ー 等 に よ る 搬 送 が 必 要 な 大 掛 か り な ケ ー ス 以 外 は リ ハ ビ リ 点 数 請 求 が で き な い 。こ の こ と は 見 方 を 変 え る と 、新 薬 使 用 群 で は 、 移 動 に ス ト レ ッ チ ャ ー 等 が 必 要 な 重 篤 な ケ ー ス が 減 少 し た と 推 察 す る こ と も で き る 。 ま た 、 他 の 診 療 行 為 で は 、 有 意 差 は な か っ た も の の “ 入 院 料 ” は 顕 著 に 減 少 し て い た (図 6、表 11)。こ れ は 平 均 在 院 日 数 の 短 縮 が 原 因 で あ る 。さ ら に“ 投 薬 ”、“ 処 置 ”、 “ 検 査 ”、“ 画 像 ” の 点 数 も 有 意 差 は な い も の の 減 少 し て い た 。 合 計 点 数 は 、 A 病 院 で は 新 薬 使 用 群 が 1,251 点 増 加 ( 94,002 点 → 95,253 点 )、 B 病 院 で は 81,112 点 減 少( 182,995 点 → 101,883 点 )、C 病 院 で は 143 点 増 加( 68,175 点 → 68,318 点 ) し て い た が 、 両 群 間 で 有 意 差 は な か っ た (t=0.18, p<0.86) 。 ま た 、 3 病 院 合 計 で は 診 療 報 酬 点 数 が 654 点 減 少 し て い た 。し た が っ て 、エ ダ ラ ボ ン の 使 用 に よ る 注 射 点 数 の 増 加 は あ る も の の 、他 の 注 射 剤 の 併 用 の 減 少 や 在 院 日 数 短 縮 に よ る 入 院 料 の 減 少 等 に よ り 、 患 者 1 人 当 た り 医 療 費 総 額 に は 変 化 が な か っ た と い え る 。

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4-5. 退 院 ( 転 院 ) 先 表 12、 13 に 各 病 院 の 各 群 の 退 院 ( 転 院 ) 先 を 示 し た 。 病 院 別 に み る と A 病 院 で は 両 群 間 で ほ と ん ど 差 は な か っ た が 、 B 病 院 と C 病 院 で は 自 宅 と リ ハ ビ リ 転 院 可 能 な 患 者 の 割 合 が 増 え 、長 期 療 養 施 設 に 転 院・転 科 す る 割 合 は 減 少 し て い た 。B 病 院 は サ ン プ ル 数 が 少 な く 統 計 解 析 が で き な い が 、C 病 院 に つ い て は 、 自 宅 退 院 の 患 者 が 約 15%、 リ ハ ビ リ 目 的 の 転 院 が 約 10%増 え た 一 方 で 、 逆 に 長 期 療 養 施 設 に 転 院 や 転 科 す る 患 者 が 約 25% 減 少 し て い た( χ2=17.7, df=3, p=0.001*)。 ま た 、3 病 院 合 計 し た 値 を 比 較 す る と 、新 薬 未 使 用 群 に 比 べ 新 薬 使 用 群 で は 、自 宅 と リ ハ ビ リ 目 的 の 転 院 の 割 合 が 増 え 、逆 に 長 期 療 養 施 設 や 転 科 す る 患 者 が 有 意 に 減 少 し て い た ( χ2=15.9, df=3, p=0.001*)。 こ の 結 果 は 、エ ダ ラ ボ ン に よ っ て 脳 梗 塞 の 進 行 が 抑 制 さ れ た 効 果 と 捉 え る こ と が で き る も の で 、退 院 時 の 患 者 の 状 態 改 善 に つ な が る 医 療 効 果 が 得 ら れ る 可 能 性 を 示 唆 し て い る と い え る 。た だ し 、断 定 す る に は 、今 後 の さ ら な る 臨 床 デ ー タ の 累 積 と そ の 研 究 を 待 つ 必 要 が あ ろ う 。

  表12. 新薬未使用群の退院(転院)先

医療機関 自宅 リハビリ転院 転科 長期療養施設 不明 A病院 12(35.3%) 20(58.8.%) 2(5.9%) 0(0.0%) B病院 5(50.0%) 1(10.0%) 4(40.0%) 0(0.0%) C病院 23(41.8%) 6(10.9%) 22(40.0%) 4(7.3%) 3病院合計 40(40.4%) 27(27.3%) 28(28.3%) 4(4.0%)

  表13. 新薬使用群の退院(転院)先

医療機関 自宅 リハビリ転院 長期療養施設転科 不明 A病院 120(37.3%) 171(53.1%) 27(8.4%) 4(1.2%) B病院 39(34.8%) 33(29.5%) 27(24.1%) 13(11.6%) C病院 114(57.6%) 43(21.7%) 30(15.2%) 11(5.6%) 3病院合計 273(43.2%) 247(39.1%) 84(13.3%) 28(4.4%)

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5. ま と め

日 本 の 病 院 の ほ ぼ 100% が 導 入 し て い る 医 事 会 計 シ ス テ ム の デ ー タ を 用 い る こ と で 、 エ ダ ラ ボ ン の 医 療 効 果 と 経 済 効 果 に つ い て 、 以 下 の 知 見 を 得 る こ と が で き た 。 ・ 死 亡 率 、 再 入 院 率 は い ず れ も 差 が 数 %以 内 で 有 意 な 変 化 は な く 、 エ ダ ラ ボ ン の 影 響 は な か っ た 。 ・ 新 薬 使 用 群 の 平 均 在 院 日 数 は 、 統 計 的 な 有 意 差 は な か っ た も の の 短 縮 し た 。 ・ 診 療 行 為 別 に 診 療 報 酬 点 数 を み る と 、エ ダ ラ ボ ン の 投 与 に よ っ て 注 射 点 数 が 増 加 す る も の の 、在 院 日 数 短 縮 に と も な い 入 院 料 等 の 点 数 が 減 少 し 、患 者 1 人 当 た り 医 療 費 総 額 は 変 化 が な か っ た 。 ・ 新 薬 使 用 群 の 転 帰 先 は 、自 宅 と リ ハ ビ リ 目 的 の 転 院 の 割 合 が 増 え 、逆 に 長 期 療 養 施 設 や 転 科 す る 患 者 が 減 少 し て お り 、退 院 時 の 患 者 の 状 態 改 善 に つ な が る 医 療 効 果 が 得 ら れ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 エ ダ ラ ボ ン は 脳 保 護 剤 と い っ た こ れ 以 上 の 進 行( 憎 悪 )を 抑 制 す る と い う 性 格 の 治 療 法 を 提 供 す る も の で あ り 、例 え ば t -PA と い っ た 血 栓 溶 解 剤 の よ う に 短 時 間 で 治 療 効 果 の 有 無 を 判 明 し う る 治 療 法 で は な い た め 、今 回 採 用 し た 指 標 だ け で は そ の 影 響 が 数 値 と し て 顕 在 さ れ に く い と 考 え ら れ る 。今 後 さ ら に 、退 院 後 の 状 態 、リ ハ ビ リ 転 院 先 や 長 期 療 養 施 設 で の 状 態 等 を 含 め た 多 面 的 な 分 析 を す る こ と に よ り 、薬 剤 が 持 つ 効 果 を よ り 明 確 に 評 価 で き る も の と 考 え ら れ る 。と り わ け 、退 院 後 の 状 態 が 改 善 す る こ と に よ る 患 者 の 家 族 ら の 負 担 の 軽 減 度 、長 期 療 養 施 設 や リ ハ ビ リ 転 院 先 の 医 療 資 源 消 費 等 を 計 算 す る こ と が で き れ ば 、よ り 精 緻 に 経 済 効 果 を 指 摘 す る こ と が で き る で あ ろ う 。

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参 考 文 献

1) 山 崎 幹 夫 ほ か 「 医 薬 品 情 報 学 」 東 京 大 学 出 版 会 、 1996 2) 坂 巻 弘 之 「 や さ し く 学 ぶ 薬 剤 経 済 学 」 じ ほ う 、 2003

3) 新 村 和 哉‘ 医 療 分 野 の IT 化 に 関 す る 厚 生 労 働 省 の 取 り 組 み ’ 健 康 保 険 、p 17∼ 20、 10、 2004

4) Rogers, A.S., Drug Intel. Clin. Pharm., 21, p915, 1987

5) Strom, Brian L., “Pharmacoepidemiology,” John Wiley & Sons Inc (Sd), 1994

( 邦 訳 ス ト ロ ー ム BL.編 .清 水 直 容 、楠 正 、藤 田 利 治 、野 嶋 豊 監 訳「 薬 剤 疫 学 」 篠 原 出 版 、 1995) 6) 大 友 英 一 「 脳 梗 塞 急 性 期 治 療 の 進 歩 」 医 薬 ジ ャ ー ナ ル 社 、 2002 7) 篠 原 幸 人 、吉 本 高 志 、福 内 靖 男 、石 神 重 信「 脳 卒 中 治 療 ガ イ ド ラ イ ン 2004」協 和 企 画 、 2004 8) 寺 山 靖 夫‘ 脳 梗 塞 急 性 期 に 対 す る エ ダ ラ ボ ン の 臨 床 評 価 —入 院 期 間 に お よ ぼ す 効 果 な ど ’ 脳 21、 p 291∼ 296、 6(3) 、 2003 9) 鈴 木 義 広 、田 中 隆 、赤 坂 雅 弘 ほ か‘ 急 性 期 脳 梗 塞 に 対 す る エ ダ ラ ボ ン の 有 効 性 --従 来 の 治 療 法 と の 比 較 ’ 診 断 と 治 療 、 p 645∼ 649、 90(4) (通 号 1051)、 2002 10) 西 村 裕 之 、 立 花 久 大 、 巖 本 靖 道 ほ か ‘ 脳 梗 塞 急 性 期 に お け る エ ダ ラ ボ ン の 効 果 --患 者 の ベ ネ フ ィ ッ ト と 医 療 経 済 効 果 ’ 医 薬 ジ ャ ー ナ ル 、p125∼ 130、39(8) (通 号 468) 、 2003 11) 内 山 真 一 郎 ‘ 内 科 疾 患 の 判 断 基 準・病 型 分 類・重 傷 度 ’ 内 科 、p 1510∼ 1515、85(6)、 2000 12) 日 本 医 療 情 報 学 会 編「 医 療 情 報 ---医 療 情 報 シ ス テ ム 編 ---」篠 原 出 版 新 社 、p 249、 2004

参照

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