• 検索結果がありません。

数学教育から見た「用器画」教科書

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "数学教育から見た「用器画」教科書"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1.はじめに 図1は昭和17(1942)年の 中学 教授要目に基づく教科 書『数学5第二類』(昭和19年 発行)にあるもので、「次の投 影図に示す直円錐と平面との 線の実形を書け」という問 題である。「円錐曲線」という この単元は4年生と重複して おり、『数学4第二類』にもほ とんど同じ問いがある。実形 を描かせることにまず驚かさ れるが、このあといくつかの ヒントを示した上で、その 線が「楕円であることを証明 せよ」という問いにまで発展することに、ますます圧 倒される。今日の中学 や高等学 で、この種の扱い をすることはほとんど えられないからである。 ここには二つの重要な要素がある。一つは、当時「用 器画」といわれた図学の技法が、ごく自然に数学に取 り入れられていること、二つには、それを(現代の高 生でも相当に難しいと思われる)数学的な問題解決 に存 に活用していることである。これらは、ともす れば軽い扱いとなりがちな今日の空間図形の教育に とって、示唆に富んでいる。本稿の目的は、昭和17年 の教授要目で数学への積極的な融合が図られた「用器 画」の内容が、それまでの間、旧制中学 でどのよう に教えられてきたのかを、主に教科書をたどることで 明らかにすることである。 なお、昭和18∼20年当時、新しい教科書が発行され たとはいえ、戦時下でそれを実施に移すのが困難で あったことは想像に難くない。しかし、当時生徒であっ た方々の資料からは、図1を実際に解いたあとがノー トに残されるなど、新しい内容を懸命に実践しようと した当時の様子を見て取ることができるのである。 2.旧制中学における「用器画」 2.1 教授要目上の「用器画」と空間図形 明治32(1899)年中学 令が改定され、指導内容が 教授要目として整備されるのは同35年である。この当 時、数学の中で空間図形といえば、もっぱら立体の種 類とその体積、表面積を取り扱っていた。一方、図形 の描き方、特に立体の平面への作図法については教科 「図画」の中の「用器画」が担っていた。両者の内容 を、明治35年のあと同45年、昭和6年と改訂される教 授要目から一覧にしたものが表1である 。 冒頭の図1のような、立体図形に関する「用器画」 の扱いを見ると、明治35年の要目では第4学年で「立 体の截断及び立体表面の展開」にまで言及している。 同45年の要目では「立体の平面図、立面図、側面図」 が第4学年、さらに第5学年で「切断面、展開図、等 角図」など具体的な空間図形の表現を取り上げている。 昭和6年の改訂は全体として表現が簡素化されている ものの、内容的には明治45年のものを踏襲しており、

数学教育から見た「用器画」教科書

Yokiga (Descriptive Geometry)Text Books and Mathematics Education

片 岡

Kei KATAOKA

(和歌山大学教育学部)

2009年9月29日受理 昭和17(1942)年の中学 教授要目には、数学における空間図形に、当時「用器画」といわれた図学の技法が大 幅に取り入れられ、それまで体積や表面積が主な関心であった内容を一変させた。投影図を用いて、円錐の断面に 現れる図形が楕円であることを証明するなど、今日の数学教育から見ても斬新で高度な内容を扱っていた。本稿で は、こうした指導を可能にした、中学 図画科における「用器画」の内容を、明治以来の教科書から検討した。明 治から昭和初期に至るいずれの教科書も、円錐曲線の実形を描く技法などが数多く扱われ、数学との「融合」の素 地を作っている様子が明らかとなった。今日の中学・高 における空間図形指導の貴重な素材にもなる。 キーワード:用器画、空間図形、楕円、円錐曲線、旧制中学

要 約>

図1 円錐と平面

(2)

何れも透視図まで含む高度なものである。 一方数学では第5学年で立体を扱うが、平面への表 現法などは取り上げられていない。次の改訂となる昭 和17年の要目において、数学に投影図や透視図が取り 入れられ、前述のような円錐曲線にその方法が活かさ れるまでに両者が融合するが、ここではそれに先行す る「用器画」の指導内容を教科書によって見てみよう。 2.2 平瀬作五郎『用器画法』 教授要目としてその内容が整備されるのは明治35年 以降だが、教科書検定はそれ以前から実施されており、 『検定済教科用図書表』によれば、明治21(1988)年 から昭和18(1943)年に検定を受けた図画全体の教科 書は改訂版なども含めて370種類に及び 、同時期の幾 何教科書432種類と比べても 色がない。常に数社のも のが出版されており、熱心に指導された様子が想像さ れる。 明治24年、中学 令改定以前で、中学 がまだ尋常 中学と高等中学といわれた時代、府立大阪尋常中学 では、教科「図画」について図2のような教育課程を もち、教科書を用いていた 。教育課程では「図画」、 教科書では「画学」と不揃いながら、4、5年生で平 瀬(作五郎)著の教科書『用器画法』によって授業さ れていたことがわかる。 ところで本学は旧制師範学 を前身に持ち、昭和18 年の制度改正までは中学 と共通の教科書を 用する ことも多かったので、附属図書館にはこの時期の教科 書が豊富に保存されている。所蔵されている平瀬作五 郎による「用器画」教科書は、表2の通りである。 一方、『検定済教科用図書表』に記されている平瀬の 著書は、①明治22年発行の『用器画法』全6冊、②同 34年『用器画法図式』『同解説』各3冊、および、③同 39年発行の『中等用器画法』全3冊となっている。書 名や発行年が微妙に合わないため、大阪尋常中学 で 用いられた教科書は特定できないが、表2の1と、① とは発行者名「中島精一」が一致するので、近いもの ではないかと思われる。 図3は、その明治15年発行『用器画法』『同図式』の 表紙である。大きさは左がおよそB6、右がA5判程度 で、『図式』の方には解説は全くなく、図がずらっと並 んでいる。 表1 旧制中学 教授要目 教授要目 空間図形(数学) 用器画(図画) 明治35年 (1902年) 幾何 第五学年 多面体 角壔、角 錐、正多面体 曲面体 球、円壔、 円錐 第二学年 幾何画、直線、角、円、 多角形 第四学年 立体、立体の截断、立 体表面の展開の投影図 明治45年 (1912年) 幾何 第五学年 多面体 角壔、角 錐 曲面体 球、円壔、 円錐 第三学年 直線、角、円、多角形 第四学年 立体の平面図、立面図、 側面図 第五学年 切断面、展開図、等角 図、透視図法 昭和6年 (1931年) 第五学年増課教材 平面及直線、多面 体、曲面体、三角 函数 第三学年 平面幾何画及その応用 第四学年 投影図及その応用 第五学年 透視図及その応用 図2 明治24年府立大阪尋常中学 表2 平瀬著「用器画」教科書 書 名 発行 備 1 用器画法用器画法図式(1882)年明治15 上が解説書、下は図のみ。平瀬「纂訳」とあり、翻訳本。 2 新撰用器画法(1889)年明治22 3 中等教育用器画法、同解説(1893)年明治26 図3 平瀬作五郎『用器画法』、『同図式』(明治15年)

(3)

冒頭の数学教科書に関連する円錐の切断の投影図は 第二巻に登場し、『図式』では美しい図によって、「は じめに」で示した作図の解を提示してくれている(図 4)。 切断面の楕円の長軸の実長が、立面図の切断線AB に表されることを利用し、「副投影面」を作って楕円の 実形(斜線部 )を作図する。もちろん冒頭の数学教 科書が求めているものと同じである。 図4の一部を取り出した図5左を用いてその作図法 をたどると次のようになる。立面図上の断面AB上の 点gにおける、断面の楕円の「幅」g1-g2を求めたい。 立面図上に母線J″G″を引き、平面図上に対応する母線 JG、JG′を描く。この母線と、立面図のgから下した垂 線との 点g、g′の長さが求めるものである。頂点J″と gを含む平面と、切断平面との 線として求めるとい う方法で、見取図を描くと図5右のようになる。 この教科書でさらに驚くのは、円錐の側面について、 図6のような断面の展開図(『用器画法』によれば、「剖 展図」とある)を作図によって求めていることである。 切断した円錐の実物の製作には欠かせない技法だが、 切断面の頂点からの実長を読み取り、展開図上にプ ロットしていく作業は決して容易ではない。このあと、 明治35年の教授要目の時代まで、展開図が取り扱われ ている。 2.3 竹下富次郎『竹下用器画』 明治35年の教授要目以降の 用教科書については、 大阪府内の旧制中学に若干資料が保存されている。わ かる範囲で、「用器画」部 を一覧にしたものが表3で ある 。明治35年の和歌山中学の資料 もあるが、教科 書については掲載されていない。 この表にある竹下富次郎『中等教育新撰用器畫法』 は残念ながら実物を確認できなかったが、少し後の検 定教科書『竹下用器画』 は本学附属図書館にも所蔵さ れている(図7)。 図4 平瀬『用器画法図式』による円錐の切断 図6 切断面の展開図 表3 大阪府立中学の「用器画」教科書 図7 『竹下用器画』(明治39年) 北野中学 明治37 竹下氏中等教育新撰用器画法 明治38 同上 明治42 図画教育会 図学教科書 堺中学 明治37 竹下富次郎中等教育新撰用器画法 明治38 同上 岸和田中学 明治39 平瀬氏用器画法解説(参 用) 四條畷中学 明治39 図画教育会 図学教科書 池田中学 明治39 図画教育会 図学教科書 図5 図4の一部(左)と、見取図(右)

(4)

全3巻、B5判横長で各巻十 数ページからなり、説明の文章 はなく、図だけが並んでいる。 やはり『竹下用器画説明』 とい う別冊があり(図8)、作図法は こちらに記されている。生徒配 布された教科書なのか、教師が これによって指導したのかは定 かでない。『説明』はおよそB6 判の大きさで、前項の教科書と よく似たスタイルと なって い る。立体の切断は第二巻「投影図法」に登場する。立 方体、四角錐、円柱の順に進み、円錐の切断は図9の ように示されている。 作図方法や、このあとに側面についての断面の展開 図が登場する点など、前項の教科書と共通点が多い。 教授要目上第4学年で実施された内容である。 2.4 図画共励会『中等用器画教科書』 中学 で 用した教科書は、各学 で毎年作成され ていた『○○中学 一覧』という冊子などに見ること ができるが、明治45年の要目以降については資料が多 くない。和歌山県下では、本学附属図書館にも所蔵さ れている『和歌山県立海南中学 一覧 大正十二年』(図 10、現県立海南高 )がある。A5判程度、約100ペー ジの冊子で、 革や関係法令、学則、各種統計などが 掲載されている。残念ながら 立2年目のもので2年 生までの教科書しか掲載されていない(45年の要目で は「用器画」は3∼5年生)。 この時期の教科書の中で、筆者が実物を閲覧できた のは、表4の二種類だけである。 このうち「大正14年2月17日文部省検定済」と記さ れた、図画共励会著作の『中等用器画教科書』 はおよ そB5判の横長で、一から三の各巻が40∼50ページに なっている(図11)。作図とその説明が両方とも1冊に まとめられ、空間図形の投影図は主として「第弐」で 扱われている。 その中ほどに図12のような「円錐切断」が登場する (ページ番号は打たれていない。「…」は筆者による省 略)。断面が楕円となる場合について切断面の実形を描 く方法を、「長径の上に短径及び其他諸点を移す」とご く簡単に記した上で、図13のような作図を掲載してい る(若干の書き込みが残っている)。もちろんこれも冒 頭の数学教科書で求めている図になっている。円錐断 面の作図は、母線の投影図を用いて楕円の「幅」の実 長を求めるという、前二項の教科書と同じ方法が用い られている。断面が双曲線や放物線になる場合も、同 じような図面が載せられている。この時期の教科書か ら、断面の展開図は扱われなくなる。 図8 『説明』 図9 『竹下用器画』による円錐の切断 図10 『和歌山県立海南中学 一覧』、大正12年 表4 明治45年要目の「用器画」教科書 著者 書名 出版社 出版年 図画共励会 『中等用器画教科書』 三省堂 大正13年 原貫之助・石谷辰次郎 『中等用器画教範』 修文館 昭和2年 図11 『中等用器画教科書』

(5)

2.5 阿部七五三吉『新制標準画法』 昭和6年の教授要目に基づく「用器画」教科書で、 実物を閲覧できたものを、表5に一覧にした。 この時期の 用教科書については、東京府立一中(現 都立日比谷高等学 )の詳細な記録が残されている。 図14A、Bは『東京府立第一中学 一覧』の昭和9∼18 年の「教科用書表」 から「図画」の第3∼5学年の部 をつなぎ合わせたものである。 この中で、昭和16年度から教授要目が変わるまで 用されたことがわかる、阿部七五三吉(しめきち)『新 制標準画法』 は、「昭和10年1月14日文部省検定済」 と記されている。A5版の大きさの本で、やはり空間図 形を扱う第二巻は57ページの厚みがある。 「截断面の投影に関する画法」という項目が立てら れ、四角柱を斜めに切った断面の実形問題に続いて、 直円錐の截断面の実形図、平面図を求める問題が登場 する。図15は第二巻にあるその図で、前述の教科書と 同じような図面が記されているが、その作図法は上で 示したものとは異なり、底面に平行な平面による断面 (円)を用いる方法になっている。図16左を用いて簡 単に述べると、立面図上の断面e′d′上の点f′における、 断面の楕円の「幅」f2-f3を次のように求める。f′を通り 図12 『中等用器画教科書』にある「円錐断面」 図13 『中等用器画教科書』による円錐の切断 表5 昭和6年要目の「用器画」教科書 著者 書名 出版社 出版年 中根孝治 『新用器画』 冨山房 昭和7年 濱田 稔 『新制用器画』 帝国書院 昭和8年 積善館編集所 『新制図法』 積善館 昭和9年 阿部七五三吉 『新制標準画法』 中等学 教科書㈱ 昭和10年 波根義三 『新制用器画法』 成武堂 昭和12年 図画教育研究会 『現代新図法五訂版』 三省堂 昭和13年 鈴川信一 『教範用器画改訂版』 帝国書院 昭和14年 図14A 『東京府立第一中学 一覧』より、昭和9∼13年 図14B 『東京府立第一中学 一覧』より、昭和14∼18年

(6)

底面に平行な平面による円錐の断面h′j′(円)の平面図 を描き、f′から下した垂線とその円との 点f、f1の長 さが求めるものになっている。切断平面と、底面に平 行な平面との 線を用いる方法である。見取図は図16 右のようになる。 この作図法は、のちに昭和17年の教授要目に基づく 数学の教科書において、楕円であることの証明に活用 される。 2.6 「用器画」における投影図の教授内容概略 以上のように明治以来、昭和6年の教授要目に至る まで、その教授内容には大きな変 がない。円錐の切 断やその投影図などは多くの中学生が学習する内容と して定着しており、のちに数学がこれを取り入れて「円 錐曲線」の項を設ける素地は十 あったと えられる。 ここでは、最後に取り上げた『新制標準画法』を例 にして、投影図の教授内容の概要を整理しておく。空 間図形の投影図は第2巻に登場し、第3巻は透視図に なっている。第2巻第三章投影図の部 は次のような 構成である。 第一節 点の投影画法 第二節 直線の投影画法 第三節 平面形の投影画法 第四節 立体の投影画法 第五節 截断面の投影画法 第六節 展開図の投影画法 第七節 相貫体の投影画法 点や直線の投影からていねいに説き起こし、第三節 平面の投影では投影面に一定の角度のある平面図形の 投影、第四節立体の投影では投影面にそれぞれ一定の 角度を持つ立方体の投影など、複雑なものまで扱われ る。前述の円錐は第五節に登場するが、四角柱の切断 などから順を追って進められている。円錐の切断の後 は、より込み入った立体の切断などの練習問題が続く。 図15の円錐の次は、「練習問題:次に示した各立体の切 断面の実形図を求めよ」(p.38)として、図17のような 問題である。 コの字状の立体や、厚みのある台形の筒状の立体の 切断など、教科の性格から当然のことながら、製図と しての色彩がより鮮明となり、楕円など円錐曲線に関 する数学的な証明を扱うことはない。この点が、冒頭 に紹介した教科書『数学4、5第二類』との大きな違 いである。 第七章の「相貫体」とは二つの立体が わってでき るいっそう複雑な図形で、「二個の直円柱」、「直円錐と 直円柱」(図18)、「直円柱と球」について、 線を含む 投影図を描くなど、高度な作図を取り扱っている。も ちろんその数学的な解析が含まれるわけではない。 三巻構成の多くの「用器画」教科書では、第3巻に 「透視図」があてられる。高度な立体図法だが、次に 述べる昭和17年の数学の教授要目にも取り入れられて 図15 『新制標準画法』による円錐の切断 図16 図15の一部 (左)と、見取図(右) 図17 切断面の練習問題

(7)

いる。透視図までで「用器画」のひとまとまりの指導 内容と えられていたようである。 3.『数学4第二類』における「用器画」 先述したように、それまで立体の体積や表面積が中 心であった数学における空間図形について、昭和6年 に次ぐ昭和17年の要目改訂に初めて投影図や透視図な どが取り入れられた。それは、空間図形の様相を一変 させる大改革であった。この教授要目で数学は、主に 代数や関数 野の第一類と図形 野の第二類に けら れた。18年には1∼3年用の教科書、4、5年用も19 年には発行されている。制度改革に伴い昭和18年にも 要目が改定され、『中等数学』という別種の教科書も発 行されたが、ここでは17年の要目に基づくものに限っ て述べる。 17年要目に基づく『数学4第二類』 の「用器画」部 である第1章は表6のような構成である。『数学1』 で簡単な平面図と立面図について学んだことを前提 に、1で具体的な身の回りのものを描くことから始ま る。章立てそのものが、点・直線・平面やそれらの関 係に関する複雑さの順ではなく、「ある具体的な実物の 図を描くためにはどのような知識と技術が必要か」と いう観点で構成されている。 そうした構成も興味深いが、いずれにしてもそれま で「用器画」が扱ってきた透視図までの範囲を数学が 大幅に引き受けていることがわかる。続いてこの教科 書では、第2章「球面の図形」をはさんで、第3章で 表7のような「円錐曲線」へと進むのである。円錐や その断面の投影図という技法を通して、断面の円錐曲 線の証明にまで至る。「用器画」と数学の見事な融合を 見て取ることができる部 である。 楕円の証明は概ね次のような問いに答える形で進め られる。 【問1】断面が楕円であるとすると、どのような円を 縮小したものか。 【問2】一般に楕円であれば、 図のAM、BM、PMに どのような関係がある か。 【問3】前問でわかったことを用いて、楕円であるこ とを証明せよ。 問2は、円の場合にPM =AM・BMが成り立つこと を用いて、(PM/t)=AM・BMが成り立つといえばよ い。もちろんtは縮小の割合を示す定数である。 問3は、図16でいえば、楕円の「幅」f2-f3が、e′ d′を直径とする円を短軸:長軸の比で縮めたものであ ることを仮定して、問2の式をみたすことを示す。や や煩雑ではあるが、投影図の知識があれば現代の高 生でも十 に取り組むことができる内容である。 4.まとめ 空間図形と「用器画」の融合の試みは昭和17年の教 授要目を頂点として、中学 数学に大幅に取り入れら れた。同18年の再改訂に際してもその精神は引き継が れたが、戦後の中学 や高等学 数学でこうした内容 が生かされてきたとはいえない。今日、空間図形の平 面への表現法は、数学でも、中学 の技術・家 科で も十 に扱われることはなく、その技法を数学的な問 題解決に活用する教材も取り上げられることが少な い。そのことが、空間図形の教材やその扱いがやや 弱であることにもつながっている。「用器画」やその数 学との融合の試みは昭和17年の教科書に突然登場した わけではなく、それに先立つ長年の研究や実践の成果 でもある。これらの内容に学びながら、空間図形の理 解に役立つ今日的な教材や指導法の開発を今後の課題 としたい。 最後に、本文に記したものも含めて、本学附属図書 館に所蔵のある「用器画」の教科書を一覧にしておく 図18 直円錐と直円柱の相貫体 表6 『数学4第二類』の目次⑴ 1.見取図と投影図 2.側画面 3.断面図 4.切口の面積 5.種々の投影法 6.透視図 1. 立体 図形の 表現 7.種々の問題 表7 『数学4第二類』の目次⑵ 1.円錐の切断[1] 2.円錐の切断[2] 3.円錐曲線の主な性質 3. 円錐 曲線 4.種々の問題

(8)

(小学 用は除く)。『検定済教科用図書表』に掲載さ れていないものも含む。大正、昭和戦前期のものは、 まだ確認できていない。 平瀬作五郎 用器画法 中近堂 明治15年(1882) 用器画法図式 中近堂 明治15年(1882) 新 用器画法 金港堂 明治22年(1889) 中等用器画法 成美堂 明治26年(1893) 中等用器画法解説 成美堂 明治26年(1893) 用器画法解説 丸善 明治34年(1901) 竹下富次郎 中等教育用器画法 敬業社 明治27年(1894) 中等教育新 用器画法解説 教科書院 明治33年(1900) 竹下用器画 集成堂 明治39年(1906) 竹下用器画解説 集成堂 明治39年(1906) 井汲陸二郎 中等用器画法 第1、第2、第3 金港堂書籍 明治28年(1895) 中等用器画法 上、中、下 金港堂書籍 明治31年(1989) 中等用器画法説明 上、中、下 金港堂 明治28年(1895) 中等用器画法説明 上、中、下 金港堂 明治31年(1898) 中等用器画法説明 幾何、投影、透視 金港堂書籍 明治34年(1901) 井汲陸二郎、上原六四郎 中等用器画法 金港堂 明治34年(1901) 秋保安治、飯田吉三郎 近世用器画法 六盟館 明治38年(1905) 上原六四郎 上原中等用器画 集成堂 明治39年(1906) 上原中等用器画解説 集成堂 明治39年(1906) 久保田圭右 中等平面用器画法 大日本図書 明治39年(1906) 中等立体用器画法 大日本図書 明治39年(1906) 参 文献 1)「中学 教授要目」(明治35年2月6日)『明治以降教育制度 発達 第四巻』(昭和39年版復刻、芳文閣)、「中学 教授要 目」(明治44年7月31日)『同 第五巻』、「改正中学 教授要 目」(昭和6年1月20日)、『同 第七巻』、「中学 教授要目」 『日本中等教育数学会雑誌』第13巻第1号、昭和6年による 2)中村紀久二編纂・解題『検定済教科用図書表(二)』(自明治 19年5月至明治37年1月)、『同(三)』(自明治36年5月至明 治45年3月)、『同(四)』(自明治45年3月至大正11年4月)、 芳文閣、1985、『検定済教科用図書表(五)』(自大正11年4 月至昭和7年3月)、『同(六)』(自昭和7年4月至昭和12年 3月)、『同(七)』(自昭和12年4月至19年12月)、芳文閣、 1986による 3)『府立大阪尋常中学 一覧』、府立大阪尋常中学 、明治24 年、表より、該当部 のみを再構成した。 4)『大阪府立北野中学 一覧』明治37、38、42年 『大阪府立堺中学 一覧』明治37、38年 『大阪府立岸和田中学 一覧』明治39年 『大阪府立四條畷中学 一覧』明治39年 『大阪府立池田中学 一覧』明治39年 5)『和歌山県立和歌山中学 一覧』明治35年 6)竹下富次郎『竹下用器画』、集成堂、明治39年 7)竹下富次郎『竹下用器画説明』、集成堂、明治39年 8)図画共励会編『中等用器画教科書 第一∼三』、三省堂、大正 13年12月発行 9)東京都立日比谷高等学 資料館提供資料による 10)阿部七五三吉『新制標準画法』、中等学 教科書㈱、昭和10 年1月発行 11)中等学 教科書㈱『数学 中学 用4 第二類』、同社発行、 昭和19年6月。この時期教科書はこの1種類のみである。

参照

関連したドキュメント

2016 年度から 2020 年度までの5年間とする。また、2050 年を見据えた 2030 年の ビジョンを示すものである。... 第1章

 大学図書館では、教育・研究・学習をサポートする図書・資料の提供に加えて、この数年にわ

具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.

関西学院大学社会学部は、1960 年にそれまでの文学部社会学科、社会事業学科が文学部 から独立して創設された。2009 年は創設 50

図および図は本学で運用中の LMS「LUNA」に iPad 版からアクセスしたものである。こ こで示した図からわかるように iPad 版から LUNA にアクセスした画面の「見た目」や使い勝手

その1つは,本来中等教育で終わるべき教養教育が終わらないで,大学の中