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異文化環境における日本人留学生のアイデンティティ変容

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Academic year: 2021

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(1)   平成24年度 学位論文 異文化環境における日本人留学生の    アイデンティティ変容. 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 人間発達教育専攻 臨床心理学コース.    M11088A 山岡亜里紗.

(2) はじめに.  私は20代の時,人生経験と英語の習得を目的とし,カナダに留学をした。当 時は日本とカナダを行き来しながら,およそ2年半異国の地であるカナダで生 活をした。この留学生活で経験し学んだことは,今もなお私の人生において大 きな影響を及ぼしている。留学生活では,様々な国の人と出会い,彼らやカナ ダの文化を学んだ。また同時に,カルチャーショックを始め,それまでの私自 身の生活環境とは異なる体験を通し,落ち込みや精神的不安定さを経て,新た な自分を発見したように感じる。.  留学先で,私と同じような多くの日本人留学生と知り合い,また彼らと話を したり,…緒に過ごしたりする中で,彼らの中には,深刻な悩みを抱えている. 者がいることを目の当たりにした。異国の地で孤独に耐えきれず,途中で帰国 する者,語学の壁に苦しみ自分の存在価値を見失う者,人と話すことを避け自 室に閉じこもる者など様々であった。もちろん全員がこういう体験をしている わけではないが,多かれ少なかれ苦楽を経験する中で,留学生は,通常の慣れ た環境での生活より自分自身が揺さぶられる体験をしていると感じる。  そして,私は留学経験を持つ人々と話をする中で,同じ経験をしても,人々 が思ったり感じたりすることにはかなりの差があることに気づいた。しかし, このような体験を留学経験者が語る機会は多くない。さらに,留学経験者は, 帰国後日本での多1仁な日常生活を営む中で,その体験を話す機会が少なくなっ ていると感じる。.  そこで,この留学経験者一人ひとりの話をじっくり聞き,論文としてまとめ,. 明らかにすることが,留学経験者やこれから留学する人の役に立つのではない だろうかと思い,本研究を行うことにした。.  本論文では第1章で問題と目白勺を述べ,第2章では,分析方法を説明する。. また第3章においては,インタビューで得られたデータを詳しくみて,解釈し. 第4章では総合的考察を述べ,最後第5章は,本研究を行ったことから,本研 究の限界と今後の課題について考察する。.

(3) 目次. はじめに. 第1章 問題と目的 111 日本人留学生の推移・・・・・・・・・・・・・・・・・…  3 1.2 文化・白文化・異文化の定義・・・・・・・・・・・・・…  4 1.3 異文化での日本人留学生 ・・・・・・・・・・・・・・…  4  (1)異文化接触・・・・・・・・・・・・・・…  ..・...4  (2)カルチャーショック・・・・・・・・・・・・・・・・…  5 1.4 アイデンティティについて・・・・・・・・・・・・・・…  6 1.5 留学生に関する先行研究・・・・・・・・・・・・・・・…  6 1.6 ナラティヴ研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  7 1.7 ライフストーリーインタビュー・・・・・・・・・・・・…  8 1.8 質的研究の信頼性と妥当性・・・・・・・・・・・・・・…  9 1.9  目白勺 ・ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10. 第2章 方法 2.1 研究協力者・・・・・・・…  ’’’’’’’’.’.’’.11 2.2 インタビューの方法・・・・・・・・・・・・・・・・・…  11 2.3 手続き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  11 2.4 分析方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  12. 第3章 結果と考察 3.1 結果と考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  13.  (1)Aさんの語り・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  14  (2)Bさんの語り・・・・・・・・・…  ’・・・・・・…  33  (3)Cさんの語り・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  48. 第4章 総合考察 4.1 インタビュイーとインタビュアーの関係性・・・・・・・…  67 4.2 留学直後の語りに見られる共通点・・・・・・・・・・・…  68 4.3 アイデンティティの変容・・・・・・・・・・・・・・・…  69.  i)Aさんのアイデンティティ変容・・・・・・・・・・・…  69  h)Bさんのアイデンティティ変容・・・・・・・・・・・…  70 1.

(4)  血)Cさんのアイデンティティ変容・・・・・・・・・・・…  71 4.4 語ることによる意味づけと気づき・・・・・・・・・・・…  72. 第5章 本研究の限界と今後の課題・・・・・・・・・… 75 おわりに ・・・・・・・・・…  ’’’’’’’’.’.’..77. 引用文献..........................78 謁寸舌辛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ …    . . . . . ・ . . . . . . ・ ・ …   80. 資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・… 81  同意書 ・・・・・・…  ................、.82  フェイスシート ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・…  83.

(5) 第1章 問題と目的 1.1 日本人留学生の推移.  天平8年(A.D736)に日本人が初めて異文化と接触したと考えら れている新羅への外交使節の派遣(近藤,1981)から,様々な形態 で日本人が渡航し,異文化接触を体験してきた。特に戦後は,徐々 に渡航する日本人の数が増え,昨今では渡航することはそう珍しく はない。.  文部科学省によると,1980年代は日本人の海外留学生数が10,000 人台で推移しており,初めて20,000人を超えたのは,バブル経済 華やかな1989年だったという(22,798人)。また,留学生は,そ. の後1990年代に年々急増し,2004年には海外留学生数が82,945 人でピークを迎えた(文部科学省,2012)が,その後2009年まで 徐々に減少し,59,923人にまでになっている。そして,外務省領事. 局政策課(2012)によると,2011年度では118万人を越える人が 海外に在留している。また留学生の留学先は,アメリカ合衆国が一 番となっており,中国,イギリス,オーストラリア,ドイツ,台湾,. カナダ,フランス,韓国,ニュージーランドと続いている(文部科 学省,2012)。さらに2006年からは,“日本人の学生等を海外の大 学院等に派遣,学位取得や専門分野の研究をさせることにより,国 際化する社会に対応できる優秀な人材の養成を支援する留学生派遣 事業を実施”している。“また,外国政府などの奨学金により,2007. 年は39か国に約500人の日本人学生などが留学”していると文部 科学省(2012)は指摘している。  さらに文部科学省では,海外留学の大半を占める私費留学につい て,日本学生支援機構の留学情報センターを通じ,留学情報の収集・ 整理を行ったり,「海外留学説明会」を開催したりして,留学希望者 に対する情報提供を積極的に行っている。  先にも留学生減少について言及したが,この原因として,少子化 や不景気による経済的理由に加え,若者の内向き志向など多数の問 題が影響していると考えられる。しかし,減少してきているとはい え,実際に海外へ留学している者は毎年数万人に登っている。 1.2 文化・白文化・異文化の定義  文化の定義として,“個入の中に存在する,主に無意識のうちに学.               3.

(6) 召され,人々に共有された行動様式と思考パターン”であると,御 手洗・小笠原・Rambe11i(2011)は述べている。このように,文化 は,無意識のうちに個入が習得するものであるので,白文化の通用 する環境では,白文化はあまり意識されることはないと考えられる。 また石井・岡部・久米(1996)は,白文化について“ある集団のメ ンバーによって幾世代にも渡って獲得され蓄積された知識,経験, 信念,価値観,態度,社会階層,宗教,役割,時間一空間関係,宇宙 観,物質所有観といった諸相の集大成である”と定義づけている。 よって異文化とは,二の白文化が異なる文化であると言える。  そして箕浦(1991)が,文化は個人の外にあるので,出生時には パーソナリティとして持っていないと指摘しているように,人々は, 文化を発達していく中で身に付けると推察される。さらに,文化に ついて佐藤・吉谷(2005)は,アイデンティティの基礎になる文化 に対する執着から自由になることは,容易なことではないと述べて いる。すなわち個人にとって文化とは,生きていく上で根本的な拠 り所となるものであろう。. 1.3 異文化での日本人留学生.  (1)異文化接触  留学生の中には異文化や多文化に馴染めず,孤独感やストレスを 感じ,アルコールや薬物に依存したり,抑うつ状態に陥り引きこも ったり帰国したりする者も少なくない。また石井・岡部・久米(1996). は,留学生は,郷里の両親や周囲の人達からの期待も大きく,使命 感が重圧となり,しばしば精神障害を生じたり,自殺をしたりする 者がいると述べている。このような問題の根底にあるものは,異文 化での適応であると考えられる。田中(2005)は,“人問は白文化 に規定された面をもつ存在で,それゆえに異文化接触が混乱と葛藤 をもたらし,ストレスを発生させる”と述べている。さらに,異な る流儀の集団や社会に出会えば,基本的にストレスを生じる可能性 があり,その違いの最たるものが外国滞在だと解釈している。そし て,文化間移動に伴う葛藤は,本人の自己意識と他者意識の間のず れにより生じると,箕浦(1994)は指摘している。またBerry(1997). は,異文化間接触において以下の段階を述べている。まず新しい文 化において,必要とされるスキルの学習を要する段階,次に,白文 化と多文化の間での交渉が文化間葛藤を生じさせ,学習が困難にな                4.

(7) り,ストレスが生じる段階,そして,個人の処理能力を上回ったス トレスが,結果的に抑うつや不安を高め,心理的障害を発症する段 階である。このように,異文化接触における個人の心理的な変容に ついて,多くのことが研究され,明らかにされてきている。  (2)カルチャーショック  異文化適応では,言語,非言語による振る舞い・価値観・姿勢・ 規則などのあらゆる側面が異なり,それゆえ摩擦や葛藤を生じやす く,これらは「カルチャーショック」と呼ばれる。カルチャーショ ックとは,星野(1983)の定義によると,“個人が自身のもってい る生活様式・行動規範・人間観・価値観とは多かれ少なかれ異なる 文化に接触したときの,当初の感情的衝動と認知的不一致として把 握される体験。しかしそれらだけに止まらず,心身の症状を呈した り異文化接触が続くのに伴って累積的に起こす潜在的・慢性的パニ ック状態”である。このカルチャーショックは,決して特別な人だ けが体験するものではなく,また海外に行った時のみに体験するも のでもない。学校・職場などが変わったり,他の市町村・県に引っ 越しをしたりして,それまでと異なる環境に移ると,人はカルチャ ーショックを体験する。なぜならば,今まで当然のこととして疑問 を持たなかったことや,信じていたことが通用しなくなるからであ る。なお,このカルチャーショック体験がより明確化されるのは, 異文化環境,つまり海外へ行った時であろう。さらに近藤(1981) は,戦後からカルチャーショック体験は,文化人による評論的なも のから,学生や主婦たちの体験記といったものまで多種多様である と述べている。このように,いつの時代でも,渡航した日本人は, 多かれ少なかれカルチャーショック体験を受けており,また,これ に関してさまざまな視点で,多くの研究がなされてきている。  このカルチャーショックの捉え方について,八代・町恵・小池・ 吉田(2009)は,“異文化適応モデルの役割は,外国で経験する心 身の不調は誰もが経験するものであり,決してその人個人に責任が あるわけではないこと,さらにカルチャーショックは一時的なもの であることを認識させることにある”としている。さらに,八代他 は,最近カルチャーショックは避けるものではなく,むしろ克服し, 自己を大きく成長させるものとしてとらえられていることを明らか にしている。.                5.

(8)  白土(2004)は,“異文化適応や異文化間の摩擦,偏見や差別な どが問題化し,それら問題に対処する援助活動がますます重要にな っている”としている。このように,異国の地で,彼らが専門家に よる心理的援助を受けることができる機関は多くない。特に母国語 を媒体としない援助は,留学生にとって更なるストレスの原因にな りうるのである。. 1.4 アイデンティティについて  「アイデンティティ」という概念を提唱したErikson,E.H.(1959. 西平他訳2011)によると,自我アイデンティティとは,“自我を統. 合する秩序として自己斉一性(se1f−sameness)と連続性 (Continuity)があるという事実の自覚”,“他者に対して自分自身. のもつ意味が斉一性と連続性を保証されている場合であるという事 実の自覚”である。つまり,自我アイデンティティとは,主体的に 自分が自分であると認めることができ,それがずっと続くと実感で き,また他者からもそのことを認められている場合のことであると 考えられる。また,鐘(1990)は,“違ったことば,違った文化に 触れることは,自己のアイデンティティを明確にしていく上で重要 な経験である。というのは,私たちは異質なものに接していくとき,. 自分の本質を明らかにしていくことができるからである”と述べて いる。このように異文化にさらされると,人は自分の存在とは何な のか,何者なのかと考え,問い,自己のアイデンティティの危機を 経験すると考えられる。.  一方植松(2010)は,自分の民族性を探索しようとすることは, 異文化で自分らしさを高めることに繋がり,さらに自我アイデンテ ィティを通して,留学生活での様々な異文化適応感に関与するとし ている。異文化間で生じる葛藤やストレスなどの心理的問題は,一 つの流れの中で段階を経て変容していく可能性があり,またこの過 程では,アイデンティティ変容と密接な関わりがあると考えられる。 1.5 留学生に関する先行研究.  これまで異文化体験を扱った研究は,研究対象の幅も広く,また 様々な分野にわたり多くある。.  末弘(2000)は,青年期後期に中期間(1∼4年)英米語圏に滞 在した日本人私費留学者を対象に事例研究を行い,アイデンティテ.               6.

(9) イを確立して異文化接触した者と,確立せずに異文化接触した者と の心理的文化変容の違いを明らかにし,“日本人には希薄であるとさ れる自我アイデンティティが,異文化接触においては重要である” と結論づけている。この研究では,異文化環境における個々人のア イデンティティの変化に焦点をあて,タイプ別に分類し分析してい る。.  一方,一二三(2008)は,中国における日本人留学生の文化的ア イデンティティの構成要素や,日本人留学生と中国本土の学生との 比較を通して,白文化・異文化への態度,適応感との関係を検討し ている。さらに一二三は,まとめとして,“異文化の中で苦労しなが らも自立して生活することで自己への有能感を高めることは,青年 期の精神的発達を大いに促進する”とし,また“青年期の留学はア イデンティティの危機を孕む一方で,大変有益である”と述べてい る。.  上記の末弘の事例研究や一二三の質問紙を用いた比較研究のよう に,一般的傾向を調べる研究は盛んに行われてきたが,一人ひとり の内面に焦点をあて,詳細な感情や変化を捉える研究はあまりなさ れていない。これまでの研究について浅井(2006)は,“これまで 文化問移動を扱う過去の多くの研究には,個人が異文化をどう認識 し働きかけていくか,その主観や主体性を十分配慮していなかった” と指摘している。さらに浅井は,異文化での対人関係について,友 人の数,会話の量,対人ストレスなどは数量化されたが,それが個 人にとってどのような意味をもつかは問われていないと述べている。 すなわち今後の研究では,個人が置かれた異文化環境の申で,自身 が異文化の意味をどう捉え,どのようにその環境で自分が変容して いったのか,また他者との関係をどのように捉えているのかを取り 扱ってく必要があると思われる。これらのことから,本研究では, 先行研究で明らかにされていない留学生個々人の内面にじっくり焦 点をあて,個々人が体験したことや,感じたこと,さらにはその個々 人を取り巻く環境を,その個々人がどのように捉えていったのかを 明らかにしていく。. 1.6 ナラティヴ研究.  やまだ(2007)は,“ナラティヴ研究では,語りという行為を,. 一方向的な流れとみなす情報伝達や通信モデルのようには考えな.               7.

(10) 黷閧 ,内に蓄積した記憶を外へ表現(expression)するも のとしてではなく,今ここの現場で語り手と聞き手の共同行為によ. い”. C“. って,共同生成されるものと考える。また自己やパーソナリティも, 固定した同一物とみなさず,「物語としての自己」(ナラティヴ・セ ルブズ)という見方をとるので,多様性と変化可能性を重視する”. としている。つまり,語り手と聞き手の両者により,物語が紡ぎだ され,語り手自身の自己の新たな生成がなされるのである。そこで は,自己を物語として捉えるので,語り手はただ物言吾を語るのでは なく,その過程において自己を言吾ることを意味する。そして,人生 を物語として研究する意味について,やまだ(2000)は,“私たち がふだん,科学者のような論理一実証モードではなく,物語モード で生きている”からだと指摘している。このように,普通の留学生 の留学生活を研究するためには,この物語モードで留学経験者と関 わることが,より個人の内面に歩み寄れると推察される。また,留 学生が自己の体験を語ることは,新たな気づきと共に自己の再構築 に繋がると考えられる。.  さらに,やまだ(2007)によると,語る行為は,それが行われる 現場・社会・文化・歴史的背景と切り離すことができないと考えら れており,複雑な文脈の中で「語り手」と「聞き手」の相互行為に より語りが共同生成されるとしている。また浅井(2006)は,“個 人がどう自分や周囲の環境を意味づけしているかを理解すると同時 に,そのときの個人が置かれている文脈も明らかにする必要がある” と指摘している。これらのことから,語ることは,事実を述べる単 純な行為ではなく,語り手・聞き手・環境・状況が絡み合い,紡ぎ 出される複雑なものであると考えられる。  ナラティヴ・アプローチは,多様な語り・イメージ・物語の同時 共存を許容している。よって,どれが正誤で,どれが成功などは問 わない。それぞれの文脈にいる人々が,自分自身の経験を自身の声 で語る多様性と,語りの共同生成を大切に育み,「もう一つの物語」 が生まれる土壌を大切にする(やまだ,2006)。このような,正誤 のない多様な語りは,語り手が語る物語の幅を狭めることなく,語 りがより深く,生き生きとしたものとなるであろう。 1.7 ライフストーリーインタビュー  やまだ(2007)は,“ライフストーリー研究は,「人が自己の人生.               8.

(11) 経験をどのようにナラティヴとして組織化し意味づけて他者に語る か」に関心”をもつと述べている。また,やまだは,ライフストー リー研究は,人生の生涯を表すだけでなく,個人の人生から,世代 を超えたものまで,さらに昨日の出来事などと幅広いとしている。 すなわち,ライフストーリー研究を基にしたインタビューでは,個 人が自己の経験を振り返り,その当時の気持ちや,現在から思う過 去,その過去からつながる現在などのように,複雑に絡み合う人生 を言吾る。さらに,やまだ(2007)は,“物言吾は,時空問的にも「今」. 「ここ」を超えるイメージをつくりだし,未来を変えていく力をも つのである”と指摘している。よって,個人が自己の人生における 出来事を,単純な年譜として語るのではなく,出来事と出来事の結 びつきや,過去・現在・未来につながる関連のある語りをすること になり,語り手と聞き手にとって重要な物語になるであろう。  桜井・小林(2005)は,“会話は(いま一ここ)の時空間でおこ なわれるのに対して,ストーリーは(あのとき一あそこ)の体験や 出来事”と述べている。そして,インタビューをストーリーにする ためには,単純に出来事を語り,聞くのではなく,その過去で感じ たことや思ったこと,さらに現在思う過去のことを,適宜語り手に 話してもらうことが重要である。なお,語り手と聞き手にはそれぞ れの文脈があり,聞き手はこのことを十分に考慮してストーリーを 共同生成することが,ライフストーリーインタビューをより深いも のにすると考えられる。すると,ストーリーとストーリーを結びつ け語ることで,別々の出来事に関連性が生まれ,混沌としていた個 人のストーリー,すなわちライフストーリーが意味あるストーリー になると推察される。. 1.8 質的研究の信頼性と妥当性.  質的研究における信頼性と妥当性については,これまで量的研究 と比較され,様々な意見が出されてきた。質的研究を量的研究と同 じ基準で評価することは,困難なことであるが,質的研究にも信頼 性と妥当性は必要である。質的研究の信頼性を高めることについて, F1ick,U.(2011)は,どれが被調査者の発言で,なにから研究者の 解釈が始まるのか,またデータ成立過程を明らかにし,そして,イ ンタビューやデータ解釈などをトレーニングや点検作業の中で明ら かにし,常に研究全体のプロセスについて反省し,記録に残すこと                9.

(12) が重要であると述べている。このように信頼性を高めるためには, 収集したデータを詳細に言己述し,何度も読み込むことが必要とされ. る。さらに,ナラティヴ研究では,1回1回得られたデータが,ど こまで被調査者の語る真実に迫ることができるのかに信頼性を置く。 そして,妥当性については,研究者側の構築は,対象者側の構築に どこまで根拠があり,それが第三者にとってどこまで透明性がある か,この場合,データがどのように成立したのかを検証することが 妥当性の手がかりになるとF1ick,U.(2011)は,述べている。この ように,妥当性を高めるためには,研究者の考えがいかに対象者の 考えと合致しているかということや,それがどこに依拠しているか を検討し,第三者の意見も取り入れていくべきだと考えられる。よ って,質的研究の信頼性と妥当性の測り方は,量的研究の信頼性と 妥当性の測り方とは異なるが,それぞれの質を高めることが,質的 研究においても必要であると考えられる。 1.9 目的.  同じ体験をした人でも,その人の考え・生育歴・環境・状況・周 囲の人々などにより体験の意味や価値のとらえ方は様々である。量 的研究では知ることのできない一人ひとりの体験・感情に焦点をあ てることは,一人の人間の内面を深く知る上で重要であると考えら れる。.  そこで本研究では,日本文化の中で育ってきた日本人が,中期間 の留学体験,つまり異文化環境でどのように自己のアイデンティテ ィ変容を体験したのかを,ナラティヴ・アプローチを用いて検討す る。様々な文化がぶつかり合う異文化体験を,留学生がどのように 直面し,受け止めていったのかを明らかにし,留学生の人生におけ る異文化体験の意味づけについて考察する。さらに,留学生個々人 の体験を掘り下げ,そこでどのような心身の体験があったのかを明 らかにすることによって,今後の日本人留学生の減少に歯止めをか けることができ,将来の留学生の環境や心理的援助の一助になるこ とが考えられる。. 10.

(13) 第2章 方法 2.1 研究協力者.  21∼26歳で,9ヶ月∼3年間の留学経験(私費・派遣・国費)を 有する日本人3名であった(男子1名,女子2名)。対象者は,筆 者の知人1名と,別の友人から紹介された2名であった。それらを 以下のTabe11で示した。  インタビュー期間は,8∼11月の4ヶ月間で行った。. Tab1e1 研究協力者のプロフィール 年齢. Aさん. 40代. 性別 女性. 留学. 留学. 期間. 場所. 3年. 後半. Bさん. 20代. アメ. 留学当時 の年齢. 23∼26歳. 1年. *. 22∼23歳. 20代. 女性. 1Oケ月. 後半. アメ. 20∼21歳. リガ. 調査期間. 回数. 英語. 3回. 大学 大学. X年 8月∼11月. 2回. 院生. 後半. Cさん. 調査. 講師. リガ. 男性. 現在. X年 8月∼9月. 2回. 院生. X年 9月∼10月. *Bさんの留学先の国は,個人が特定されやすいため記号で表記する。. 2.2 インタビューの方法.  ナラティヴ・アプローチによるライフストーリーインタビューを. 用いた。インタビューは一人ずつ行い,1回約45∼90分,2∼3回 とした。インタビュー中には,語り手(研究協力者)の気持ちを詳 細に把握するために,適宜気持ちについて質問をした。 2.3 手続き.  はじめに研究目的,プライバシーの保護に関すること,途中でい つでも止めることができることを説明し,インフォームドコンセン トをとった。次に,年齢・家族構成・現在の就労状況(就学状況) などの項目をフェイスシートに記入してもらった。  インタビューを始める前,語りを促すため,インタビュ]の1回 目に,「留学前・留学中・留学後を通して,あなたがどのような体験 をし,どう感じたのか,またあなたにとって大事だと思うことは何 でもご自由にお話下さい」という教示をした。2回目以降のインタ.               11.

(14) ビューでも,語り手に自由に語ってもらったが,それに加え,筆者 が詳しく聞きたいことを質問した。語り手の自由な語りを尊重する ため,半構造化面接を用いたコそして,以下の項目について,自発 的に語られなかった場合には語りを促した。  ①留学の動機,.  ②留学先での体験  ③留学先での人間関係について  ④日本と海外について  ⑤留学前・留学中・帰国後について 2.4 分析方法.  データの流れを意識したまま分析を行うシークェンス分析におけ るナラティヴ分析を用いた。ナラティヴ分析とは,語り手が自らの 経験や人生について語り,その語りを物語としてみていく作業であ る。本研究では語り手が語る内容を,流れに沿って分析していく必 要があることから,ナラティヴ分析を用いることが適していると考 えられる。具体的には竹家(2008)の分析方法を参考にし,以下の 手順で進めた。.  1、 逐語文字化したデータを精読する。その際,全体のシークエ   シスを見失わないように全体の流れを見る。物語を生成的で未   完なものと捉え,物語における意味的連続性を重視しながら,   物語世界とストーリー世界,双方について構造的に見る。  2、 語られた順番,特に語り手と聞き手の共同による継起順序の   流れを見る。.  3、 語られた量と,語りの種類に着目する。また語り手の「鍵と   なる言葉」を見出す。  4、 物語世界を中心に,筋に基づく現実に基づいた年譜を作成す   る。.  5、 ストーリー領域の評価や,態度などの語りに注目し,経験の   意味づけを分析する。  6、 留学経験者のライフストーリーを構成し,アイデンティティ   の変容について解釈する。. 12.

(15) 第3章 結果と考察 3.1 結果と考察.  3名のインタビューとの逐語から,留学経験者の留学経験におけ るアイデンティティ変容及び,意味づけが明確になると思われるナ ラティヴをゴシック体で示した。1回目の逐言吾は時系列ではなく語 り手の話すままである。2回目以降の逐語は,1回目の語りがどの ように語り直されているかを明確にするため,時系列ではない箇所 もある。しかし,全体の語りの流れを壊さないよう最小限に努めた。.  AはAさん,Iは筆者の発言,下線部は特に印象的な語りを,鍵 となる言葉は国刃と表記した。なお,プライバシーの保護のため, 個人が特定される表現は,O○○や***等を用いた。言吾りの内容 が分かりにくいと筆者が判断した場合は,()で補足説明をした。ま た話しの途中での他方の発言は<>とし,語り手と筆者以外の人の 発言は『』で表記した。なお,必要とされる表現として,語り手を インタビュイーとし,聞き手をインタビュアーと表記している箇所 がある。.  本研究では,3名にインタビューを協力してもらった。この3名 は,青年期に,アイデンティティ変容を体験すると思われる留学期 間,約10ヶ月∼4年間に留学した経験をもつ者である。ここでいう 青年期は,エリクソンが述べる青年期特有の同一性対同一性拡散(鐘. 1990)を参考にし,18歳∼28歳の10年間とした。そして,本研究 では,個々人のアイデンティティ変容をみるため,アイデンティテ ィ変容を体験したと思われるこの3名が,本研究に合致していると 考え選定した。この他にも2名の方が立候補してくれたが,この2 名は,留学期間が短いことから本研究に合致しないと判断し,丁重 に断った。個々人のアイデンティティ変容を詳しくみていくことが 目的であるので,研究協力者の人数を多くするのではなく,最小限 にした。. 13.

(16) 3.1(1)Aさんの語り.  Aさんは筆者の知人であり,当初はAさんの知り合いの人にイン タビューをお願いしたが,研究内容と合わず断念した。しかし,A さんが自ら快く協力を申し出てくれたためインタビューに至った。. Aさんは,20代の時アメリカに3年間留学した経験を持つ40代の 女性であり,この留学以前にも海外旅行の経験があった。アメリカ 留学時代Aさんは,アメリカ人の夫と結婚しており一緒に日本でも 生活していた。しかしその後離婚を経て,現在Aさんは日本人の夫. と再婚し,娘2人を持つ4人家族である。現在Aさんは,英語講師 として働いている。  Aさんの語りから大きく分けて,『留学動機・出国前・出国日』『ア. メリカでの生活』『元夫との生活・葛藤』『帰国後の二ヶ国間での揺 らぎ』『英検1級取得の意味』の5つの語りが見出された。. Tab1e2. Aさんの語りからの年譜. 22歳   日本で大学卒業(国文科). 23歳4月 アメリカ留学 24歳   アメリカ人の元夫と結婚 26歳3月 帰国 28歳   アメリカ人の元夫と離婚        ダイエットを始める(2年かけて22キロ減量)        帰国後∼36歳頃まで日本とアメリカ間で葛藤. 33・34歳 英検1級取得. 1,留学動機・出国前・出国日 ^=私は母親が行きって言って,とりあえずすぐ帰って〈るつもりでいたから1ほん  とに時の流れに身を任せっていう感じ。くあ∼なるほど>でも行った時1こ.なんか.  語学学校やって、すっごく悔しくなってんね。あの、英語ができないの1;,で何が  悔しかったかつてのは、今度はすっごい失礼やけど,よ〈一人でぷつぷつぶつぷっ  しゃべってる,ほらちょっとくうんうんうん>が、英語やったのよ。 I=どういうことですか? ^1一人でぷつぷつぷつぷつしゃぺってる人がたま1こいてはるやん.日本語でね.(ぷ  つぷつ小声で言う真似をする)英語やねんね、もちろんあっちの人<うんうん>こ  の人でも英語しゃべれるのになんでって(^笑う)くうんうん1笑う>医巫] 1:分かります。. ^:当たり前なんやけど。で,どうしよう,あのでもまあ私はすぐに日本1こ戻りたか  ってんけど,. 1:えっどれぐらいの予定やったんですか? ^:半年。もうほんとに半年の予定やってんね。.                 14.

(17) 1:そうなんですか。じゃあお母さんが行って来たらって言って<そうそう>行った  感じ。. ^:そうそう。だから結婚前にとりあえず一回でも行ってみたらみたいなんで1で私  も家てぶら、sミらしてたから. 1:(大学)卒業してからですか?. ^:ほんまにぶらぷらしてたのよ私。<へ一>だから,あのそのそんなん格好も悪い  し1うちの子ども留学してるのが聞きがええしみたいな感じで<あ一なるほどなる  ほど>行っておいでって言われて。             I1回目の語りl.  Aさんは,母親に留学を勧められ,あまり乗り気ではないまま留 学した。渡米後Aさんは,アメリカで英語の独り言を言っている人 に出会い,自分は英語を話せないのにその人は英語を話しており, そのことに「悔しい」という思いを抱いた。その悔しさが後に,A さんの英言吾を勉強したいという思いにっながっていったと考えられ る。. 1:ほんなら行く時はちょっと嫌々っていう感じ ^:かなり嫌々よ。. 1:蟻々やったんですか。. ^:むっちゃ嫌だったよ一!,行きたくもくそもないわそんなん。アメリカに何があ るかも分からんただ憧れはあった。<なるほど>でしょ?だからアメリカに着いた らやっばりその憧れがあるから,くうん>うわっこれがアメリカの雀ねとか,<う んうん>これがアメリカの郵便ポストねとか色んな写真も撮ったし,憧れはある。  くうん>でも行ってて最初の半年楽しいと思った,あの楽しい,くうん>一部一部  は楽しいけど.<うんうん>ずっときゃ一っ ていうのが全然なかった。くへ一>  うん。                          I1回目の語り1.  筆者は,Aさんの語りからAさんが,留学を前向きに捉えていな いと感じ,Aさんの当時の気持ちを「嫌々っていう感じ」と要約し た。すると,Aさんから「むっちゃ嫌々やったよ一!」と当たり前 でしょ!というような意味が含まれた力強い発言が得られた。この 発言の後,Aさんは当時の気持ちについて詳しく語った。 そのお母さんに言われて<うん〉,その出国の.当日までどんな感じの,気持ち ゃったんかなと ^: 考えないようにしてたからね i: あっそれをですか? 1=. ^=. うん. 1:. えっその行〈.もう出国する日の,どれ位前にその話が出て決めたんですか?. ^:. 半年位前やわ, あ一そうなんですか。. 1:. うん考えないようにしてた、だって怖いもん。くえ一一>だから母親に連れられ てくうん>、留学センターとか何個かまわってくうん>.で.で色んななに,自分 でもほら.アメリカ大使館とか行って,くうん>調べたけど、もうなんか調べてて まあほんで一応決めてとかやったけど<うん>.もうすっごいなんか 1: 妹だったですか? ^= いやなんか、ううん,行きたい半分,行きた<ない半分、怖い半分. ^:. 皿2回目の語り1. 15.

(18)  出国の時の気持ちっていうのは  考えないよう1二してたくあ一>うん。今でもおぼろげやわほんまに考えないよう 1こしてたからくあっそうなんや>うん I  飛行機の時のことも覚えてない感じ  だからずっと.寝てたもんくえ一一>.でやっすいのんで行ってんなんか1年オー プンで行こうと思ってね<うんうん>.たら、オー,1年オープンて.大韓(大韓 航空)しかなかって<うんうん>,だから大韓で. ]. ^. ^. (略). 1回韓国,韓国ロス、ロスからサンフランやってん〈、S、んふんふん>.で韓国まで  で韓国の時に,なんか・・あの一なに,全然し.し,もう会ったこともないような  日本人の男の子くうん>、1こ声か1ナられてくうん>あの一.一緒,あっロスまでで すかって一緒にじゃし、いま、あの結構安いやっやからくうんうん>3時間か4時 間とか,待ち時間一緒1:待ちません?とか言われて,で一緒に待って一緒1二しゃべ  ってくうん>だからもうその時のことしか考えないようになってた。くあ一>あ一 1:もう上,意識的にもう止めてたってことですか? ^:そうそう,意識、無意識に<無意識1二>分かれへんけど、<う一ん>うん.あん  まり先先の事考えても.なもうだって不安で不安でしゃ一ないやん。                               I2回目の語りl.  Aさんは,出国当日になっても留学をする不安に直面することが できなかった。これは,Aさんにとって耐えることができない程の 大きな不安であり,無意識的にその不安を回避していたことがうか がえる。またAさんが感じていた不安は,異国の地でこれからどう なるのか分からないという不安だけでなく,母親に催促され,r行き たい半分,行きたくない半分,怖い半分」と相反する気持ちを語っ ているように,留学動機の低さも大きく影響していたためと考えら れる。. 2,アメリカでの生活 ^:語学学校で,やっぱり何人か日本人の人に会うでしょ,くはい>ほんならやっば  りたいてい皆英語科出てはるんよね(日本の大学)、くうんうん>でも私と同じク  ラスやねん、なんでなんって,くうんうん>そんなんえっ!て、英語科出てて私と  同じクラスって恥ずかしないのとか思うねんけど,その時、s、と考えたらこの子は大  学出て,英語科出て,アメリカ1こ留学婦りで帰って来たらやっぱり箔が付〈。 I:あ一なるほど。. ^=で,私の場合は日本語学科やから箔も何もない遊びに行ってくそうですね>ばつ  たんか1こなるって,悔しいと思って<うんうん>.ほんなら大学入ろうと思って.  <そこから>編入しようと思ってそこがら,くへ一>で,TOFELしますって学校の  先生に言い1こ行ったら,『You?TOFEL?(ばかにした感じで)』みたいな感じで言わ  れて(^笑う)くははは>、優〕;二目と思って独学したの。    π1回目の語りl.  Aさんは,他者と自分を比べ,自分の状況がr何もない」と感じ, その状況を「悔しい」と語った。またAさんは,渡米してからの気 持ちについて,ネガティヴな発言ではなく,悔しさを感じたと語っ ている。異国の地に来た当初Aさんは,興奮や刺激などを感じてお り,「悔しい」という気持ちが,落ち込むなどのネガティヴな感情と 16.

(19) いうよりも,もっともっと頑張るというようなポジティヴな感情に つなかったと推察される。このような留学初期における異文化接触 時,すなわち,新しいものに出会い興奮を覚えたり,幸福感を感じ る状態を,八代地(2009)は,“いわば新婚生活におけるハネムー ンの時期”と述べている。 11どうでしたその学校(渡米後の語学学校)入られて。 ^:しんどかったね。. Ilへ一どういう所がですか? ^:何がしんどかったってね<うん>,何がってその勉強じゃなくてねくうん>ふわ  ふわしてたって感じくう∼ん>時間が、だから自分じゃないねん。くう∼ん>あた  しは何をしてるんやろうって感じ〈う∼ん>ずっとおっても、日本人の子としゃべ  ってでも.アメリカ人の子としゃぺってても自分じゃないのよ<う∼ん>、だって  あたしはいるべき場所1こいなかったからその時 11ん?どういうことですか? ^=だってあたしアメリカに行〈気なかったしアメリカ1こくあ一>プラス将来もまだ  見えないでしょ。<あ一>じゃアメリカの大学出てどないなるのんっていうのも見  えてない<あ一>、だから不安.不安あんねんけど、しゃ一ないそれを隠しましょ。  寝ること1こはいった。 I:あ一なるほど。. ^=うん.考えたくないから<うん>よ一寝てたくへ一>.うん。これではいけない  と思いながらも<うんうん>ず一つと眠たい、ず一つと眠たいって感じでくう∼ん >だから勉強してるか寝てるか、勉強してるか寝てるか<なるほどね一>うんうん  うん。                          {1回目の語りl.  Aさんは,アメリカで生活を始めてからの自分の気持ちについて, 「ふわふわしてた」「自分じゃない」と表現した。また,「あたしは 何をしてるんやろう」「日本人の子としゃべってても,アメリカ人の 子としゃべってても自分じゃない」と語っている。これらの気持ち は,Aさんが当時自分の存在や価値について向き合おうとしていた からこそ,起こったものと考えられる。そしてこのことは,異国の 地であったからこそ,より明確になったのだと推察される。  その後,当時の状況についてAさんは,これではいけないと感じ ながらも,不安を隠すために寝ていたと語っている。Aさんは自ら 希望してアメリカに来たわけではなく,さらには自分の将来がどう なるのか分からないという不安が交錯した中で過ごしており,この 葛藤を否認するため,無意識的に「寝る」という行為をとっていた ものと思われる。 ^:何も自信もないくう一ん>うん,ほんて・・だからかな,アメリカに行ってくう  ん>英語がしゃべれるようになった時1こ〈うん>.あって.ここで(^頭を指し)  しやなあかんわって見た目ちゃうよなってくう一ん>うんうんうんうん 1:それってしゃべれるようになってから? ^:よね、よね1よね、くあ一>うんうん 11あ一なるほどなあ、じゃあアメリカ1こいた時にちょっとづつ.                  17.

(20) ^=アメリカの最初は全然思えへんかったよやっぱりくん一>しゃべられへんからく  うんうん>,でもアメリカに行きだし,アメリカでしばらくしたら〈うん>しゃべ  れるようなって,ほんて日本から来ましてんとかいうくはいはいはい>ほら,夏だ  け来てんとかくうん>いうほら,でもOO(有名大学)出てますねんとかね<あ一  >やっぱり有名所の人1二会うやんくうんうん>,でもしゃべれへんねやくうん>、  勝ったとか思ったら、いやむっちゃ嬉しいやんみたいなくう一ん>、ほんならその  賢い子達ってねくうんうん>、やっぱりそういうほら浮かれてもないし<うん>あ  れやから1純粋にそのな1こ、例えばほら.『^さんすごいですね。そんなに英語しゃ  べれて』. 1:あ一なるほど。. ^:とか言うてくれるやんか.ですっごいそれがあっ.外側じゃなくて中の持ってる  価値を褒められてすっごい嬉しかってんくう一ん>うんうんうんうんうんうん。< なるほど>だから多分そこら辺で、くうん>うん、賢い手違1こも会えたのもだから 言うたらあたしそんな賢い人じゃなかったからくう一ん>.あほな子ってやっばり.  見る目がちっちゃいでしょ                12回目の語り1.  Aさんは,段々英語をしゃべることができるようになり,見た目 ではなく中身(能力)が大事だという気づきを得ている。この気づ きは,その後のAさんの大学生活にも大きく関与している。  またAさんは,他者から『Aさんすごいですね。そんなに英語し ゃべれて』と言われ,「外側じゃなくて中の持ってる価値を褒められ. てすっごい嬉しかってん」と語っている。これによりAさんは,自 分が「賢い」人ではないと感じていたが,他者から自分の存在を承 認されたような体験をしたことがうかがえる。同時にこのことは, Aさんのアイデンティティの確立につなかったと言えよう。  アメリカでの最初のホームステイ先  (ホームステイ先の家族は.家で生徒と話をしたり.遊んだりすることが普通だと  思っていたが,^さんは語学学校の宿題もあり.自室で勉強したいと思い、自室1こ  こもることが多かった。そして双方の考え方が異なり.ぎくしゃ<した環境になる) 1:(ホームステイ先に)じゃあ毎日帰るのもなんか ^:苦痛やった. 1:そうですよね一 ^:う一んくうん>,ほんでもあの頃の事あんまり覚えてないねん多分すっごく嫌で  忘れたいんやと思う。 一1あ一そういう。 ^:もうもうだから.断片ながら1二しか.あの覚えてるのっていうたらね<うん>,.  写真撮って後で見た記憶しかないあの<あ一一>写真に残ってる匿亙]くはい  はいはいはい>うんうんうん 1:その周辺の記憶 ^:記憶はあんねんけどくうん〉、実際あたしが何をしてたかいつでもどう思って どうやってじゃあお風呂1二入ってたんかとかあんまり記憶にないくあ一そうなん.  ですか>うんうん                     13回目の語りl.  Aさんにとって,ホームステイでの生活は辛く,安心できる場所 ではなかった。またAさんは,「あの頃の事あんまり覚えてないね ん多分すっごく嫌で忘れたいんやと思う」と述べ,さらに当時のこ とについて「あまり記憶にない」と語っている。これは,先に述べ 18.

(21) た葛藤を,寝ることで緩和していたことと同じような状態であった と言える。このような行動を通してAさんは,自分をぎりぎりの所 で踏みとどまらせていたと考えられる。またAさんは当時の自分を 振り返り,当時のことを覚えてないのは,r嫌で忘れたい」からだと 意味づけている。すなわち,Aさんは現在から過去を振り返ること で,このように意味づける二とができたと考えられる。. 3,元夫との生活・葛藤 ^=彼だけ先にドイツ行きやってん。 1:ドイツ?. ^:あたしはドイツはようついて行けへんって言って<はいはい>,その親びっくり  するくうんうん>.親に内緒やったからそんなん。 1:結婚してるのですか? ^:うん。. 1:そうなんですか!それすごくないですか。 ^:うん.だからちょっと私も精神的におかしかってんやったと思う。今なんかやっ  たらようせんわそんなん。くん一>でももう.結構ねそんな人多かった。くへ一>  黒人の人と結婚して子どもおっても親1こは言うてませんとか、まあ私は白人やって  んけどくうんうん>,でもなんか親によう.もうよう言わへんかってくうん>,一  絹1こ同棲してるのだけは言うててんけど,くうん>箱入れたとはよう言わへんかっ  てくん一>.でドイツに行きます.でもそんなん親は私がアメリカで勉強するため  のくうん>お金出して〈れてるからドイツはよう行きませんとか言うてくう∼ん  >,ほんてドイツ行ってくれやって,行きやって一人で     U回目の語りl.  Aさんは,アメリカ人の元夫との結婚について,当時両親には報 告しておらず,この状況について自分の精神状態がおかしかったと 意味づけている。当時のAさんは,自分が精神的におかしかったと は思っていなかったであろう。しかし,今当時を振り返り語り直す ことで,当時の自分を客観的にみることができ,自己を顧みること に繋がる。またこのような作業により,Aさんが語りを深めること ができ,さらに語りが紡ぎ出されると推察する。 ^:向こうでは単位持って行けるからくなるほど一>うんうん、ほんて、まあミリタ  リーの大学は全部単位が通用するから 1:あ一そうなんですね ^:そうそうそうそう。. 1:へ一,でそこに入ってそこで ^:そう,そこで勉強してくふんふん>っていう感じで.でもすっごい嫌やった。 1:へ.何でなんですかそれは? ^:だからやっぱりね(小声で)<うん>この先どうなるかが分からないっていう 1:勉強してでも? ^:勉強してでも。だからバブルの頃やから仕事があるのは分かるしくうん>,でも  何て言うのかな1自分の中で確固たる勉強してないのよねやっぱりくう∼んうん>、 で英語ができるかって言っても多分山岡さん(筆者)も思ってたと思うけど.そこ までできる<うんうん>レベルではないくうんうんうん>っていうのも自分でも. 19.

(22) 分かってるし<うんうんうん>、でもしゃべれると,ネイティヴとはずっとしゃべ れる〈うん>,でもなんか例えば映画見て全部分かるかって言ったらそうじゃない くう∼んうん>医函ほんだら.でも夢,夢的には世界をまたにかけるキャリア ウーマンになりた<ってくうん>.どうなったらそのキャリアウーマンになれるん やろうみたいな感じで<うん>、だからすっごい何て言うの.やりたいことはある くうん>でもそれには追いついてない自分もいるくうん>、でもじゃあ私はどうし たらいい<うん>.じゃあずっとアメリカに住む、でも私はずっとアメリカには住  めないとくあ一やっぱり>,日本を捨てられないく、s、ん、s、ん>,.うん日本をまやっ.  ばり捨てられないしくうんうん>一だって.無理じゃん?(^ゆっくりと考えなが  ら)                            い回目の語り1.  Aさんは,語学学校を出て大学に入ってからも,「二の先どうなる かが分からない」というように,不安な部分が根底から離れないよ うな状態であったと振り返っている。さらに,アメリカに住めない, 日本を捨てられないと当時の気持ちを語った。これは“私たちは異質. なものに接していくとき,自分の本質を明らかにしていくことがで きるからである”と鐘(1990)が述べているように,Aさんにとっ て異国の地であるアメリカだからこそ,このような体験をしていた と考えられる。Aさんは,自分とは何か,どうじだいのか,どうす ればいいのかなどの問い,つまりアイデンティティの揺さぶりの渦 中で,もがいていたのではないだろうか。 ^1例えばほら1誰かがこんなんくわえてました(ベンを指して)。よっ木枯し紋次郎.  とか言うても<うんうんうん>函]だからあの若い子分かんないけど<うん  >、同い年位の人やったら,なんかあっし1こはとかさくあ一あ一>なんかなったら.  それで話がなんかなる。 1:そうですよね。. ^:それがあたし英語ではできないと思ってん。<あ一そうやな>昔の話題とかされ  ても絶っ対無理やわと思って<うん>.だから一生私異邦人と思ったら何かがない  ねんここに(^胸を指す)。 (略). 11あ一.分かるなあそれ。う∼ん。. ^監,これ言葉ずつ 1:なるほど。. ^ まあ身体しゃない踵豆劃っていうの匿巫くうんうん>何かが足りない人1こな  ってるとくう∼ん>.でそれを補うなら補ったらいいけど,日本に帰ったら補わな  くてもいいのにここで.くそうやわ>ここでほんで私.その旦那さんと一緒に<う  ん>おってくうん>、はい.でも旦那が先死んだら私どうしたらいいのって 1:あ一なるほどなあ。. ^:私無理やわやっばりとか思ってな              {1回目の語りl.  Aさんは,アメリカでの自分は「何かが足りない人」と語り,ア メリカでの自分について振り返り,アメリカで生活する以上Aさん は,自分自身がアメリカ人よりも何かが欠如した存在であり,「身体. 障害者」であると意味づけている。Berry(1997)は,異文化適応 が起こる時,二つの要素,すなわちどの程度受け入れ側の文化(異 20.

(23) 文化)に自己の同一性を見出しているかということと,どの程度自 文化に自己の同一性を見出しているかを考慮すべきと指摘している。 そして,この両バランスが大幅に崩れる時,不適応やカルチャーシ ョックに至ると考えられる。つまりAさんの場合,受け入れ側の文 化,すなわちアメリカに自己の同一性を統合することができず,自 分は完全にアメリカ文化では,「何かが足りない人」だと表現してい る。.  さらに,その思いを抱えながら,元夫がいなくなった時のことに ついて語り,元夫が亡くなった場合,自分一人ではアメリカでやっ ていけないと認識していたことを振り返った。Aさんは,英語力の 問題だけでなく,自分の価値をアメリカでは見いだせない思いを吐 露した。 ^:(アメリカ人の元夫)ミリタリーに入ったら,優し過ぎるからくうん>マッチョな.  人たちにさ、匝≡]. 1:うん,ちょっとからかわれる。 ^=からかわれんねんな、くん一>それ見たら.え一とかやっばり思ったりとか〈う  ∼ん>なんかこの人でいいのかしらみたいな。 1:あ一.<うん>えそれ結婚してからもですか? ^1ずっと思ってた。 1:あずっと思って。 ^:ずっと思ってた。. 1=う∼ん.だからそういう気持ちと、アメリカっていうのの,ぽかんとした ^:ぽかんはずっとぽかんやったね。 1:気持ちがあって、結構しんどいですね。 ^:結構しんどかったよくへ一>.だから言ったやん、ずっと寝てたって.                              I1回目の語り1 ^寝て寝て寝てね(大学)1限落としたりとかがあってんやんかくん∼>,匿函  ほんだらその,そのねだらしない 1:そうそう罪悪感。 ^=す一一っこい. 1:うん,ある.ある。あります。だからどっち転んでもなんか絶対ここ1こある(i胸  を指して)溜まってる ^=そうやねん。. 1:空いてるんですよね,すごい分かりますね空いてる気持ちっていうのが。でまた  イライラするし.イライラしたらもう食べるとか寝るとかなるし。 ^:そう。. 1:でハつ当たりするしとかなるんですよね。. ^ そう、そうぐう∼ん>.匿亙]そやねん.私もようハつ当たりとかしててんや  んか.くうんうん>元旦1こ(元夫)。ですっごい優しい人やから何でも聞いてくれ  てやってくうん>,だから日本に来た時もずっとハつ当たりしててくうんうん> (略). ^1(^)lwantyoutodivorceって言って、いつでも(元夫)『Honey}hatareyouta1king  about?l donI twantdivorceyou』とか言うてくれてやってくうん>,でもねと  か.私1回だって彼の荷物全部アパートから,アパートの窓から全部捨てたことあ. 21.

(24)  るもん。くあはは>それでもこっそり取りに行って,ごめんね僕が悪かったんだよ  みたいな子やってん。 1:えっアメリカでですか? ^:アメリカでも日本でもくえ一>.1回ずつあるわ。嫌やもう出て行って一とか,も.  うたがら何かにイライラしてんねんやろうね<う∼んそう>であたってあたって、  くうん>で最終的にもう言われたんが,くうん>でもう『Ok l wantyou divorce』  って言うたら,『Ok』って言われた瞬間1二えっ?くあ一>今までそんなん言わんと  いてって言うんちゃうの?君何返事変えてんの?くうん>何返事変えてんの?っ  て言って,くあ一>『Youconvincedme』とか言われてくあ一>,君が僕にそうね  確信させたんだよねっとか言うて.くなるほどな一>えっでも、もう,えっとか言  うて 1:ショックやな一。. ^:そうそう.えっでも私、そんなん言うただけやんljustsaysoldidn’t㎜eanit  とか言うてたら.『lI mnot go㎜achange』とか言われて1くん一>えっうっそ一  みたいな                         I1回目の語りl.  Aさんは,アメリカ人夫について,「優し過ぎる」と語った。また. Aさんは,一緒にアメリカと日本で生活をしていた時,1回ずつ元 夫の荷物を部屋から捨てたことを語り,その時の気持ちについて, 「何かにイライラしてんねんやろうね」「(元夫に)あたってあたっ. て」と話した。このAさんの語りは,それまでのインタビュアーと インタビュイー相互の語りの作業から生成されたものだと考えられ る。具体的には,Aさんの語りを,筆者が相槌をうって傾聴するだ けでなく,Aさんの気持ちに共感し,その気持ちと筆者自ら感じて いた留学当時の気持ちを言葉にしてAさんにフィードバックした。 このことによってAさんは,当時の不安定な気持ちを話し,離婚に 至る経緯を語ったのではないだろうか。Aさんは,帰国して日本で アメリカ人の元夫と暮らしていたが,離婚をした。 ^ アメリカ1二おった時1こくうん>ずっと思ってたのは心にぽっかり穴が空いでた<  う∼ん>.何かが違うねんくうん>,何かが、分かる? (略). ^ だから‡*‡(地名)でもだからOOO(地名)で暮らしてくはいはい>.で結  局最終的1こ*ホ業(地名)で暮らすようになってくうん>.そん時もね1部分部分  は楽しいのよ,<うん>匿囮くうん>今日はプールに行こうそれは楽しいねん  <うんうん>。でも1日今日考えたら何かが違うっていうくうん>,匿巫1] 1 うん,常1こある。. ^ 常にどっか1二何かがあって,このままでいいねんやろかくうん>.このままあた しはずっとこの国1こ住む,でもこの国嫌いか言うたら好きや,くうん>でだからあ たし日本に帰って来た時ねくうん>.今はでこそ思えへんけど,30過ぎ位までまだ (アメリカに)戻りたかってんくう∼ん>.匿亜]くうんうん>だ,なんでか言 うたら.でもあの.なんかなんかすっごい楽しかったイメージもあるからねくうん うんうん>。戻りたくって,日本は不自由ねとか日本の悪いことばっかり考えて<  うん>1アメリカはこうなのよアメリカはくうん>こうなのよ,ええことばっかり  こう考えちゃって〈うん>,すっごい戻りたかった,くうん>だからね、また(日  本に)帰って来た後もまたしんどかってん。くなるほどな>うん。 1:あ一、日本は.日本のあらも見えちゃうから。 ^:見えちゃう,くうん>日本1こ帰って来た時に,日本がいい、ね,アメリカにおる. 22.

(25) 時にはくうん>今度は1ヨ本の番組とか見て.こうそのこの山が欲しいわよくうん> とかさ、この小川がいいのよ日本人〈う∼ん>,あ∼いいわ日本人とか思ってくう ん>.日本帰りたいわ∼とか思っててくうん>.日本1こ帰ったら.なんて日本人っ てせこいのとか<なるほどな>,なんて日本人.分かる?<うん>だからこのね  ad.ust㎜ent(調節)の時期の1O年位がすっごいしんどかった。  U回目の語りl.  Aさんは,アメリカにいた時,常に「心にぽっかり穴が空いでた」 「何かが違うねん,何かが」と語った。このような語りは,Aさん のインタビューの中で何度も出てきており,Aさんは,留学当時ア イデンティティが揺さぶられ,不安定な状態であったことが考えら れる。中本(2003)が,“母国語でない言語使用を強いられる環境 での生活はストレスが溜まるだけでなく,ある意味アイデンティテ ィの剥奪という状態”と指摘しているように,Aさんは,アイデン ティティの危機を体験していたと推察される。またAさんは,アメ リカと日本に対して,アメリカにいると日本がアメリカより勝って いると感じ,日本にいるとアメリカが日本より勝っていると感じる と話した。このような考えの中でAさんは,自分自身の気持ちに折 り合いをつけようとしていたのではないだろうか。鐘(1990)は, 思春期・青年期のアイデンティティノアイデンティティ拡散期におい て,“理想化と失望の経験のプ1コセスを通して,「本当の」「正真正銘. の」自分とは何者か,自分は何をやりたいがが,次第に問題になっ てくる”と述べている。このようにAさんは,当時この青年期特有 のアイデンティティの同一性/拡散の時期におり,Aさん自身のアイ デンティティ自体が定まっていなかったと考えられる。このことも 一因となり,Aさんにとっては,アメリカが勝っていると感じたり, 日本が勝っていると感じたりと安定しない感情を抱いていたことが 推察される。 ^:あ一、あたしね段々欲が出てきて<うん>、彼(元夫)と友達がしゃべっててく  うん>.しゃぺっててほら昔のテレビの番組とかのことでくうんうん>笑い出した  りしたら、もうイライライライラ私分かれへん<あ一>私分かれへんって<あ一な  るほどな一>.だから英語を分かってるのにくうん>,分かれへんねん 1:あ一そういうのが ^ うん匿亟]くうんうん>うんうんうんうんうんうん<なるほどな一>そうやね  ん。だから,多分それ,ずっとくる.〈るやろなって.でも絶対それは.そこで生  まれ育てへんかったらそのギャップ(をうめることは)無理やろく確かにね一>う  んうんうん。. 1:同じとこで,生まれ育ったとしても、考え方が違えばやっぱだい,たいぷ違う ^:違うもんねくう一ん>違うもんね              I2回日の語りl.  Aさんは,英語自体は理解できるが,会話の内容を理解すること ができない体験を語り,文化差を感じたことを語った。この体験か 23.

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