教師の実践的思考を探る上でのビリーフ質問紙調査の可能性と課題 : 日本語教育における教師の実践的思考に関する研究(3)
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(2) 坪根・小澤・嶽肩(2005)、小澤・嶽肩・坪根(2005)の調奪と同時に行っだビ. リーフ質問紙調査の結果について分析する。分析は、(1〕新人教師と経験教 師(th 2)の結果の比較、(2)授業観察によるプロト!ルやレポートに現れた各. 被験者の実践的思考がどのような考え(ビリーフ)をもとになされている のかの質的分析、の2っの視点から行った。 しかし、結果として、ビリーフ質問紙に大きな問題があり、有益な知見は. 得られなかうた。そこでその問題点を明らかにするとともに具体的な改善 策を探り、新たなビリーフ質問紙の項目選定過程に生かすことを試みた。. その選定過程を記述するとともに、教師の実践的思考を解明するうえでビ リーフ質問紙調査が担う役割の可能性と留意点にっいて、改めて考えたい。. 2.先行研究 2−1.日本語教育における教師の実践的思考に関する研究 日本語教師の実践的教授能力を解明する試みは、これまでに授業分析・教. 室談話研究、教育実践における教師の思考の分析などの方法でなされてい るが、授業後の回想をもとに教師の思考を分析した場合、それは反省的に 意識化された思考であって授業場面で無意識的に行われる思考とは言えな い。その点、佐藤他(1990)は教師が考えていることを授業観察と同時に記録. することで実践の場での潜在的で無意識的な思考を捕らえようとしており、. 画期的である。しかし、この研究は教科教育の授業を対象に行われたもの で、データの分類方法などをそのまま日本語教育にあてはめることは難し い。. そこで、佐藤他(1990)の手法を使い、日本語教師の実践的思考を解明しよ うと試みたのが、小澤・嶽肩・坪根(2004)である。この研究は、新人日本語 教師(日本語教師養成プログラムを修了し、教歴1年未満、以下「新人」)、. 経験日本語教師(ボランティアや個人指導を除く教歴20年以上、以下「経験 教師」〕各10名、合計20名を対象に、ある日本語の授業繊)をビデオで見な. がら気づいたこと感じたことなどをその揚で口頭で再生してもらい、その プロトコルを分析することで、教師が即興的にどのような実践的思考をし ているかを明らかにする試みであった。. また、坪根・小澤・嶽肩(2005)では、発話記録の直後に書いてもらった. 一38一.
(3) 感想レポート(テーマ・長さ・形式・時間は自由)の質的分析を中心にして日. 本語教師の実践的思考にっいて考察した。 さらに、小澤・嶽肩・坪根(2005)では、新人・経験教師の各プロトコルの. コメントーつ一つがレポートの記述のどの部分に対応しているかを見てい くことで日本語教師の実践的思考を解明しようと試みたd 2・−2.ビリーフ研究 本研究におけるビリーフ質問紙調査の意義を考えるために、教師のビリー. フそして教師と学習者のビリーフの関係融師同士のビリーフの違いにつ いての先行研究を概観する6 2_2−1.ビリーフとは∼教師のビリーフ調査がもたらすもの 鰍(1996)がRi。h・・d・&L・・kh・・t(1994)の言葉を引肌て述べてV’るよう. に、「教室活動の決定の根底にあるのがビリーフスや思考プロセスであり、. それを明らかにすることによって、その教師が指導の各プロセスをどのよ うに扱うかという点を明らかにできる」という指摘がある。ここでいうビ リーフスとは、 「言語学習の方法・効果などについて人々が自覚的あるい は無自覚的にもっている信念や確信」(岡崎1999)のことである・筆者らは・. 2−1に示した先行研究により、日本語教師がある教室活動でどのような実践. 的思考をし、その中でどのような即興的判断・決定を行っているか解明す ることを試みたが、それらの判断・決定を根底で支えているのがビリーフ だとすると、その教師のビリーフを知ることで、授業観察時のみならず・. その教師が実際に授業をする際に行うであろう判断・決定や授業のプロセ スを推測できる可能性があるということである。 また、ビリーフ調査によって得られる教師自身の気づきが・その後の教師 の成長や教授活動の発展に役立っという以下のような指摘もある・ 金田(2006)は、教師が成長するためには一人でできることもあるが協働で. 研修などの活動を行うことが有益であるとし、その理由として「他の教師 に自分の教育実践や問題意識を説明しようとすることによって・自分の考 えや教授活動を内省し、再検討することを余儀iなくされ」・また他の教師 とのやりとりの中で、 「自分自身の問題意識の明確化や、言語教育に関す. 一39一.
(4) る自分のビリーフ(信念、思い込み)の確認が可能となる」と述べている。 Horwitz(1985)は、テキサス大学の外国語教授法クラスを履修する学生達、 いわば将来の外国語教師達に対して、 BALLI(B eliefs About Language Learning. Inventory)Teacher Version{Ut4)による調査を行っているが、この調査を行うこ. とで教師(あるいは未来の教師)が自分自身の外国語学習観や外国語教授 観(ビリーフ)を自覚し、さらに仲間のビリーフと比較してみることで気 づきを得ること、またこれらの調査を継続的に行うことがその後の教授活 動を発展させるのに役立っだろうということを指摘している。. このように、ビリーフ調査の目的の一つは、教師自身が自分の中にある問. 題意識や信念を意識化・明確化し、他者に説明したり、他者と意見交換し たりすることで気づきを得たり、調査による客観データをもとに無自覚で あったビリーフや実際の行動に気づき、それらを後の教授活動に生かして いくというものである。このような試みは言語教育に留まらず、教科教育 の分野でも行われている.. 河村・國分(1996)はN’「ビリーフとは人が感情をもったり行動を起こす. ときにもつ思考(信念、価値観から構成された文章記述)」とし、不登校 の一因が小学校教師がもつ共通したビリーフの強迫性に基づく教育実践に あるとする仮説を解明するために「教師特有の指導行動を生むイラショナ ル・ビリーフ(t「5)尺度」 (以下、イラショナル・ビリーフ尺度と記す)を開. 発し、河村・田上(1998a)で同尺度を用い、管理を志向する教師特有のビ リーフが教師の実際の指導行動・態度に与える影響について調査している。 さらに河村・田上(1998b)で教師特有のビリーフを変容させるための介入プ ログラムの試みと効果を報告している。 酒井他(2002)は、授業という多くのジレンマに満ちた場で、どのようなジ. レンマが存在し、それに対してどのような対応がなされようとしているか、. またその過程にどのような問題や課題が潜んでいるかを、実践にあたる教 師の視点から記述することを重視して行われた研究である。ここでは、教 師のビリーフと実際の教授行為を、質問紙調査ではなく授業観察とインタ ビューによって得たデータから分類し、分析している。. 一40一.
(5) 2−2−2.学習者のビリーフとの関係. こうしたビリーフは教師だけではなく学習者も同様に持つものであるeこ れまで日本語教育においても、フィリピンで学ぶフィリピン人日本語学習 者の言語学習ビリーフの特徴を明らかにする研究(片桐2005)など、ある特定 地域の学習者のビリーフの特徴を探る研究がなされている。また田中(2005). はYビリーフ調査を通して、ピア・レスポンスを取り入れた作文授業が中 国人学習者の学習スタイルに合っているかどうかを探るどともに、活動方 法の改善策を示している。 Horwitz(1987)は、教師が学習者のビリー一フを把握しておくことの重要性を. 説いているが、言語を学ぶ教室では、教師が持っビリーフと学習者が持つ ビリーフが時には対立し、時には歩み寄るという形での相互交渉が常に行 われている(岡崎1999)わけで、教師と学習者のビリーフのずれ、あるいは学. 習者同士のビリーフのずれが、言語学習に影響を及ぼすこともあろう。こ うしたビリーフのずれを明らかにし、教育実践に生かしていこうとしたの が、齋藤(1996)、板井(2000)、加賀美(2004)などの研究である。. さらに要(2005)は、「学習者ビリーフを変えるための教師の変容が必要と. されている」としたうえで、近年の学習者の自律学習志向の流れの中で、. 学習者が元々持っているビリーフに介入し、変容を求めるためには、まず 教師のビリーフの全容を解明し、教師のビリーフが学習者の自律学習にど のような影響を与えているのか、そして教師のビリーフをどう変容させる ことで学習者の自律学習が促進できるのかを明らかにする必要があると述 べている6 要(2005)では、日本国内の日本語教師に行ったビリーフ質問紙調査のデー. タを構造方程式モデリング(SEM){注6)によってモデル化し、その妥当性を. 検討している。その結果から、目本語教師のビリーフの傾向を、ビリーフ 同士の相関関係・因果関係も含めて明らかにしたのだが、そこで明らかに なったことは「ビリーフの因果関係であって、現実の指導とその結果の因 果関係ではない」と、し、ビリーフと現実のギャップに対処する一つの方法. として、そこで出てきたビリーフを否定するような事例を示し気づきを与 えることが有効なのではないかと述べている。また、学習者・教師自身の ビリーフの変容を促す詳細な介入を考えるためには、個々のビリーフのみ. 一41一.
(6) ならずビリーフの因果関係も念頭に置いておくことが必要だとしている。▼ 2−2−3.他の教師のビリーフとの関係. 日本語教師を一つの大きなまとまりとして考え、そのビリーフの傾向を知. る一方で、文化背景や教育経験、教授経験が異なる日本語教師がそれぞれ どのようなビリー一フを持っているのかに着目したのが、岡崎(2001)、久保田 (2006)などである。. 岡崎(2001)は、日本語母語話者である日本人教師と日本語非母語話者であ. る中国人日本語教師のビリーフを比較し、日本人教師は教養としての、申. 国人教師は実用としての外国語学習を志向する傾向が強いことや4技能に 対する難易の認識が両者では違うこと、また日本人教師と中国人教師・中 国人大学生では日本語という言語を学習することの難易に対する認識が違 うことなどを示した。. 久保田(2006)は、53力国から日本に研修に来ているノンネイティブ日本語 教師を対象にビリーフ質問紙調査を行い、「正確さ志向」「豊かさ志向」(w7). の2つの因子要素を抽出し、、「正確さ志向」へは「地域」の影響が特に強 いこと、「年齢」 「教授年数」はいずれの因子においても影響が極めて少 ないことなどを確認している。. またこうした教師間のビリーフの違いは、同じ日本国内で教える日本人教 師同士であっても生じるe松田(2005)、大河原(2006)は、教師聞のビリーフ. の違いをもたらした、あるいはもたらす可能性のある問題を契機に、教師 のビリーフを調査し、ビリーフのずれを知り、共有することで解決策を見 出そうとしている。. 3.調査の概要 3−1.実践的思考を探る研究における3つの調査 筆者らは2002年7月∼2003年5月にかけて、新人日本語教師、経験日本語教 師各10名、’合計20名を対象に日本語教師の実践的思考を探るため、プロト. コルデータ採取、レポートの記述くビリーフ調査という3つの調査を行っ た(小澤・嶽肩・坪根2004、坪根・小澤・嶽肩2005、小澤・嶽肩・坪根2005)。. 一42一.
(7) プロトコルデータは、20名の教師に個別に、ある日本語学校での実際の授 業風景(約50分)のビデオを見ながら、気づいたことや感じたことなどをその. 場で口頭で再生してもらい録音し、採取した。レポートの記述は、ビデオ を視聴しながらの口頭再生後に、授業を見て気づいたことや感じたことを まとめてもらったものである。それと同時に、質問紙によるビリーフ調査 を行った。. 3−2.ビリーフ質問紙調査 本ビリーフ調査で使用した質問紙は、言語教育観や教授観一般にっいて広. く知るための項目に加え、授業観察時に問題となりそうな点を意識して項 目を選定し、作成したものである。 質問項目は、Horwits(1985)のBALLI Teacher Versionと、河村・國分(1996). ㈱の「イラショナル・ビリーフ尺度」を参考に授業内容に関連するであろ うものを33項目選定した。33項目のうち、12項目はHorwits(1985)から、8項 目は河村・國分(1996)から採用した。また、2項目は河村・國分(1996)の項目. を元に一部表現を直して使用した。さらに残りのli項目は、筆者ら3名が問 題になりそうな点や判断が分かれそうな点を含む質闇項目を設定した。(表 1参照). なお、質問項目選定にあたり、被験者にビデオで観察してもらう授業と同. 様の文型導入クラスの授業観察を筆者らで行い、プロトコルやレポートの 記述に出てきそうなポイントを整理し、それに関連する項目を選んだ・. 質問紙には、ビデオの授業と同じ初級の文型・語彙の導入クラスを想定し. て答えるよう指示した。また、回答は、1:強く反対、21反対・3:ど ちらとも言えない、41賛成、5:強く賛成、の5件法で行い・あてはま るものにOをっけてもらった。. 一一一. S3一.
(8) <表1>ビリーフ質職氏調査(2002年齢項目一覧及び集計表 全体. ll. 新人. 軽験. 平均. 出典. ス均 チ均 ス均. 1 クラス環境は学習を促進するために重蔓な要因の一つである。. 観察. 4.55. 4.50. 4.60. .10. 2 躰国語を学ぷということは、ほとんどがたくさんの新しい単藷を学ぶということである。. H12{n). 3.Io. 3.50. 2.]o. o.BO. 3 ォである。. 観察. 3.15. 3.10. 3.20. .{o. 4 学蟄の問題は、担当する教節の力で、なるぺく解決するべきである。. 河秘. 3.15. 3.20. 3.冊. 0.10. 5 初級の段階からカジュアルなスタイルの言い方も教えた方がいい。. 観察. 3.15. 3.00. 3.30. ,30. 6 朴国語を学ぶということは、ほとんどがたくさんの文法規則を学ぷということである。. H15回. 2.80. 3.00. 2.60. 0.40. 7 学生の間違いは学生自身に直させた方がいい。. 籏察. 3.25. 3.40. 3.10. 0.30. 8 学習の成功にはクラス外での学生の努力が不可欠である。. 観察+河討11. 4.晶. 4.30. 4.60. .30. 9 外目語を学ぶとき、その国で学んだ方がいい。. H9㈲. 3.60. 4.ll. 3.50. 0.61. ‖14(sl. 3.65. 3.60. 3.]o. .10. 河拉o. 4.oo. 4.10. 3.90. 0.20. 12 正しく言えるようになるまで、その言語で何かを言わせるべきではない、. 田〔s). 1.85. 1.80. 1.90. ,10. 13 丹国語を理解するより話す方が易しい。. ‖佃. 2.90. 2.80. 3.00. .20. 14 学生の発話の聞違いは、その場で直した方がいい。. 観察. 3.40. 3.40. 3,珊. 0.00. 15 教師にとって、教育実睦上大事なものは,教育技菌よりも教師の人聞性である。. 河村10. 3.30. 3.BO. 3.11. o.69. 16 外国語を話すためにはその国の文化を知っていることが必要だ。. Hlω. 3.85. 4.10. 3,冊. 0.50. 観察. 4.05. 4.10. 4.00. 0.10 0.40 0.20. 質問. フ轡. 学生が共通の媒介語を理解できる場合、クラスで媒介語を使うことは効果的であり、薪極的に使用するぺ. 田 学生の間違いは早い時期に直さないと、後でそれを直すのは難しくなる。 ll. 1丁. 教師と学生は簑しい中仁も、毅然たる一線を持つべきである。. 学生の理解をチェックするた助に、一人ひとり発話させる援会を作った方がいい。. 18 教師の仕事に範囲はなく,勤務時聞外でも必蔓があれば取り組まな廿ればならない。. 河柳. 3.go. 4.10. 3.70. 19 発話援会を増やすために、片アワークや全体のコーラス練習を入れた方がいい。. 観察. 4.00. 4.lo. 3.90. 20 女性の方が男性よリ外国語を学ぶのにすぐれている。. H1]㈲. 2.80. 2.60. 3.00. .40. 0.53. 縮. 3.]5. 4.20. 3.67. 臼 教師の力量は、教駿軽験年数に比倒する。. 河梯. 2.50. 2.60. 140. 0.20. 23 昇国語を学ぶということは、母藷から翻訳するということである。. 出o{n〕. 1.了5. 1.帥. 1.70. 0.10. 24 教師は授業中、「です/ます」体を使って話した方がいt㌔. 観察. 3.65. 3.60. 3.To. .10. 25 教師は学校教育に携わるものとして、同僚と同一歩謂をとることが必要である。. 河梛. 3.ヨD. 3.30. 3.30. o.oo. 26 誰で柵国語が話せるようになる。. 他71a]. 3.50. 3.40. 3.60. .20. 21 教節は初縁の段階から自然なスピードで話した方がいい。. 観察. 3.45. 3.00. 3.go. ,go. 28 教師は学生が規棲ある行動をとるように指示し、常に公平に対処するべきである。. 観察+河柑. 3,距. 3.80. 3.go. ,10. 29 言藷を話したり理解したりするより、読んだU書いたりする方が易しい。. H盟(n). 2.70. 2.10. 2.]8. 0.12. 30 教師は授業において、自分の知識が不確かな瑞合に、それを学生に知られることは教育上好ましくない。. 河村2. 2.60. 2.90. 2.30. o.60. 31. H脆{5)禰25(sl 4.25. 4.20. 4.30. .10. 32 教節は担当するすぺての学生から慕われるべきである。. 河村19. 3.15. 3.20. 3.lo. 0.10. 33 文型を教えるとき、学生にテキストを見させない方がいい。. 観寮. 3.30. 3.20. 3.40. .20. 21. 教師は、学生が自然なイントネーション、アクセント、プロミネンスで話すよう、注意するべきである。. 親聴覚教材を用いて練習することは効果的だ。. 出自 H:Horvitz C99B5}BAU.1 reacher Version、河村:河村・固分{1996}イラショナル・ピリーフ尺度、観察:授業観察を基に筆者らが追加したもの. ‡平均の差は、{新人教剖の平均)一(暮験教師の平均)の値. 一一 44一.
(9) この質問紙調査の目的は、プロトコルやレポートの記述により明らかに なってきた各教師の実践的思考を支えるビリーフにどのようなものがある かを探ることである。. 4.結果と考察 4−1.分析1:新人と経験教師の平均値の比較 ビリーフ質問紙の回答を点数化し、各項目ごとに新人、経験教師、全体 の各平均値を出してみた。新人も経験教師も同じく「賛成」あるいは「反 対」に回答が集中していることがはっきりと読み取れたのは、項目ユ、12、. 23、31であった。これらの項目は平均値の差が±O.1で、新人・経験教師の 平均値の差だけを見れば、この4項目以外にも差が0.1または0の項目がある. のだが、いずれも5件法の「2」∼「4」の回答が混ざっていて平均値が 近くなったのに対して、項目1fクラス環境は学習を促進するために重要 な要因の一っである」と項目31「視聴覚教材を用いて練習することは効果 的だ」は回答が「、4」と「5」のみ(つまり賛成)、項目23「外国語を学 ぶということは、母語から翻訳するということである」の回答は「3:ど. ちらとも言えない」が1っある以外は全て1と2(つまり反対)、項目12 「正しく言えるようになるまで、その言語で何かを言わせるべきではない」. の回答は「3:どちらとも言えない」が2っある以外は全て1と2(つま り反対)であった。. これに対して新人と経験教師の平均で点数上O.5以上の差があった項目は、. 項目2、16、9、15、21、27、30であったが、分散分析を行った結果、有意 差があったのは27「教師は初級の段階から自然なスピードで話した方がい い」 (新人平均:3.0、経験教師平均:3.90)だけであった(P〈.05)。. また、個別の回答値を一覧にして見てみると、 「3:どちらとも言えな. いSという回答が非常に多かった。これは、問いたいポイントをきちんと 抑えきれていなかった質問や一般論では語りきれない質問、状況(日本語 クラスのより細かいレベル設定・学習者の属性や性格・クラスの雰囲気な ど個別の要素)によって回答が変わるので答えづらい質問が多かったこと が原因だと考えられる。. 例えば、項目29「言語を話したり理解したりするより、読んだり書いた. 一一. S5一.
(10) りする方が易しい」は、 「1:強く反対1や「51強く賛成Jと回答した 教師は一人もおらず、20名中14名が「3」と答えている。この質問項目の 趣旨はオーラルによる情報のインプット’・アウトプットと文宇情報による. それとを比較した場合に難易に差があるかを問うたものだが、「理解する こと」が「読むことと書くこと」の対極にあるとは言い難く、ここで回答 に騰躍した被験者もいたと考えられb。また、項目13「外国語を理解する より話す方が易しい」も項目29と同様である。これも音声情報、文字情報、. など様々な情報を的確に捉えて「理解する」ことが必ずしも「話すこと」 の対極にあるとは言えないことから回答者を当惑させたと考えられる。. 項目32「教師は担当するすべての学生から慕われるべきである」も「3」 と回答した教師が20名中11…名おり、 「11強く反対」や「5:強く賛成」 と回答した教師は一人もいなかった。 「すべての学生から慕われる」こと. が教師の必要条件と言えるのかどうかという問いに始まり、学生が教師を 慕う理由も様々であり、回答が難しい質問であったのだろう。 以上の質問は金てHorwits(1985)のBALLI Teacher Versionと、河村・國分 (1996)、河村・田上(1998a)の「イラショナル・ビリーフ尺度」にあった質問. 項目を、オリジナルに忠実にごそのまま採用したケースである。ここで欠 けていたのは、Horwitsや河村らが調査対象としていた教師や質問紙の言語. に違いがあるということへの配慮である。筆者らが調査対象とする目本語 教師は、且orwitsや河村らの対象者とは異なる環境、学習者に対して授業を. 行っているのである。このことを意識して質問項目を選定したのではある が、質問文をきちんと練り直す作業が不十分であったと言わざるを得ない。. 以上の結果をふまえ、回答の数値から新人・経験教師それぞれのビリー フの傾向を見出すことは難しいと判断し、各教師のビリーフの結果とプロ トコルやレポートの記述を質的に見ていくことにした。. 4−−2.分析2:各教師のプロトコル・レポートの特徴とビリーフ調査の 結果との関連(質的分析を通して) 小澤・嶽肩・坪根(2005)では、新人・経験教師の各プロトコルのコメント. ーっ一つが、レポートの記述のどの部分に対応しているかを丁寧に見て分 析した。その際、プロトコルとレポートの命題の単純な対比に留まらず、. 一46一.
(11) 各人のプロトコルを元に個々の教師の思考の流れを分析したり、各人のレ ポートのまとまりについても分析を加えたりすることで、考察を深めたe そこで、小澤・嶽肩・坪根(2005)の分析のために作成したプロトコルとレ. ポ}トの対照表から各教師の特徴をリスト化し、ビリーフの回答の中でも 「1:強く反対」や「5:強く賛成」と回答したものや、平均値との差が 大きい特徴的なものを取り出し、対照表の特徴と関連するところはないか 質的に分析した。さらに、フェイスシートに記入してもらった教歴などと の関連が見られるかもしれないと考え、それも参考にした。 これらを比べてみた結果、例えば、ある新人教師Yのプロトコルとレポート. の対照表からは、ビデオの授業内で多く使われていたレアリアや絵教材な ど「教材へのプラス評価」や、 「間違いは間違いではなく次へのステップ」. という言葉に裏付けられるような「間違いを肯定的にとらえる態度」など の特徴が見られた。前者は項目31「視聴覚教材を用いて練習することは効 果的だ」 (新人Yは5:強く賛成と回答)と、後者は項目12「正しく言える. ようになるまで、その言語で何かを言わせるべきではない」(新人Yは2: 反対と回答)のビリーフに関連づけられる可能性があることがわかった。 しかしながら、経験教師Vの場合は、レポートの中に「先生が与えるeeユー一. に対して、学生が全員で答えるとか復習するばかりで、一人ずつに答えさ せるということがなかったためかどうかわからないが、参加度の低い学生 がいるようだった」 「自己訂正する余裕を与えてから教師が正解を言った ほうがよかったのでは?」という記述があるが、前者はビリーフ質問項目17 f学生の理解をチェック?一るために、一人ひとり発話させる機会を作った. 方がいい」(経験教師Vは5:強く賛成と回答)のビリーフとの関連が見ら. れるのに対して、後者は質問項目7「学生の間違いは学生自身に直させた 方がいい」との関連を期待させる記述であったが、経験教師Vの回答は「2; 反対」であり(項目7の全体平均は3.25)、矛盾とも言える結果であった。. 以上の新人Yと経験教師Vの例からもわかるように、プロトコル・レポー ト対照表の特徴とビリーフの結果は関連づけられそうなものもあったが、 必ずしも全てのビリーフについて言えるわけではなく、ある授業を観察し ていて即興的な思考の中で出てきたコメントや、それをレポートに書いた ものを、そのまま、ビリーフにつなげていいかどうかは慎重な検討を要す る。このことは、経験教師Vのレポートの記述とビリーフ質問紙の回答が矛. 一47一.
(12) 盾しているケー一スからも推測できる。従来のビリーフ質問紙調査研究には、. 特定のビリーフを持っていることが、すなわち、その教師がそのビリーフ と結びっく行動を授業で取っているように思わせてしまうものがあるが、 このように両者を対照して分析してみると、ビリーフと行動との間にはもっ と複雑な関係があることがわかる。 また、中にはプ・ロトコルとレポー一・トの対照表にビリーフにつながりそう. なコメントがあっても、ビリーフ質問紙の調査項目の中に関連する質問が ないケースもあった。例えば、新人・経験教師ともに、プロトコルとレポー. トの対照表に『教師の発話の助詞が脱落している」ことを指摘しているも のぶあったが、これを「ティーチャートークは必要だ」とか「教師は発話 する時に完全文で話すべきだ/省略をしないで話すべきだ」のような授業 における教師の発話につながるビリーフに無理やり結びつけてしまうこと は難しいc. 上記分析に続き、さらにプロトコルとレポート本体の記述を一つ一つ丁 寧に洗い出すことで、各教師の思考の特徴がビリーフに結びつけられない かと考え、質的な分析を進めてみたが、前述の課題はクリアできず、各教 師㌣. フ無意識的かっ即興的な思考による判断を支えるビリーフにどのような. ものがあるかを探ることはできなかった。. 5.問題点と新たなビリーフ調査に向けた課題 以上、本調査の結果から明らかになったビリーフ質闇紙調査の問題点に ついて整理してみると、以下の3点が挙げられる。 (1)質問項目選定にあたり、授業観察時に問題になったり判断が分かれた. りしそうな点を盛り込むよう配慮したが、被験者にビデオで観察して もらう授業を見て項目を決定したわけではなかったため、プロトコル やレポートの記述に対応しないものが多く、不十分であった。 (2)回答が「3:どちらとも言えない」に集まる傾向にあった。この原因. として考えられるのは、2)回答方法が5件法に拠るものであったため、. 回答が暖昧なものについては真ん中に集まってしまう可能性を排除で きなかった、2)問いたいポイントがきちんと一っに抑えられていな. 一48一.
(13) かったり質問意図が伝わりにくい質問文であったこと、一般論では語 りきれない質問や、状況(日本語クラスのより細かいレベル設定・学 習者の属性や性格・クラスの雰囲気など個別の要素)によって回答が 変わる可能性のある質問内容であったこと、である。 (3)質問項目が洗練されていない(過去に何度も調査を繰り返して項目の. 妥当性が検証されていない)うえ、人数的にも少ないので統計処理を しにくい、あるいは統計処理をしても意味のある数値が出てこないと いう結果になった。質的分析・量的分析の双方からアプローチするこ とでより現実性と客観性を増そうと考えるのであれば、解決しなくて はいけない問題である。. これらの問題点を克服し、各教師の無意識的かつ即興的な思考による判断 とそれを裏付けるビリ・・一一フとの関連性が客観的に示せるような新たなビリー. フ質問紙の作成が本調査の大きな課題となった。. 6.新たなビリーフ調査 6−−1.新ビリーフ質問紙作成過程 日本語教育における教師の実践的思考を解明することを目的とした本研 究は2007年から薪たな段階に入った。授業観察の対象となるビデオを新た. に撮影し直し、1)ビデオによる授業風景を見てもらいながらのプロトコ. ルデータの採集、2)口頭再生後のレポート、3)質問紙によるビリーフ 調査、に加え、4)構造方程式モデリング(SEM)によるビリーフの統計 的分析、5)PAC分析(注9)、6)フォローアップインタビュー、も行う予定. である。なお、授業観察をしてもらうビデオの授業内容は、前回の初級の 文型・語彙導入クラスとは違うタイプのものに変更した。理由は、教師研 修等で対象となりやすく、比較的共通の教授理論が教えられやすい初級文 型クラスよりできるだけ教師によって判断が分かれる授業を対象としたほ うが各教師、また新人・経験教師の特徴が明確になると考えたからである。. 現在、3)質問紙によるビリーフ調査は、パイロット調査のための準備 を進めているが、質問紙を作成し直すにあたり、5.で述べた問題点を克 服するため次の点に考慮した。. 一49一.
(14) (a)質問項目を全て見直した。その際に、前出のプロトコルとレポートの. 記述を一つ一っ見直し、被験者hS取り上げるであろうポイント(例: 教師(7>話し方、発音訂正など)とそれについての具体的な記述を全て リスト化し、分類した。さらに、授業観察の対象となる新たな授業を. ビデオで撮影した後に、筆者ら3名による授業観察と授業をした教師 へのフォローアップインタビューを行い、その授業を見た被験者がコ. メントを加えるであろうポイントを整理した。そして、それに関連す る質問と、教師の成長や人間性など教員研修に関係のありそうな一般 的な質問のみに限定して質問項目を選定した。前回同様、Horwits(1985). の教師向けBALLIと、河村・國分(1996)、河村t田上(1998a)の「イラ. ショナル・ビリーフ尺度」の質問項目を参考にしたが、表現を変えた りしたため、結果として元のまま採用した質問は一つもなかった。 (b)1)2)の調査対象者の他に、ビ)一一フ質問紙調査を約200名に対し. て実施し、4)構造方程式モデリング(SEM)によるビリーフのモデ ル化を行う。これにより、質問項目や因子の信頼性や妥当性が上がる ことが期待できるとともに、各質間項目が構成概念(大きな因子)と してのまとまりを持つかどうかの選別ができるうえ、同時に誤差も取 り除ける。またSEMの大きな特徴である因子聞関係を見ることや他集 団比較ができるため、因子同士がどのような相関関係または因果関係 を持つのかや、新人と経験教師の穣違も見ることができる。 (c)必要に応じて6)フォローアップインタビューを行う。. 回答者の負担をできるだけ軽減し、できるだけ多くの回答が集められ、. 精度の高い統計分析ができるように、また全員に対して対面でビリー フ質閥紙調査を行うわけではないので、細かい説明がなくても質間意 図がきちんと伝わり、暖昧な回答になることなく答えられるように、. 質問項目のポイントも数もかなり絞り込んだ。そのため、質問してお きたかったが外さなければならない質問項目もあった。これを捕う方 法として、必要に応じてフrt 9 一一アップインタビューを行うことも検. 討している。このことについては後述する。 以上の手順をふむことで、より客観的で、信頼性・妥当性の高いビリーフ 調査が実現できると考えている。. 一50一.
(15) 6−−2.本研究におけるビリーフ質問紙調査の位置づけとその可能性 前回の研究内容を踏襲しつつも新しい分析を加えたビリーフ質問紙調査 を行う予定であるが、筆者らが目標としている「日本語教育における教師 の実践的思考の解明」のためにビリーフ質問紙調査が果たす役割は何かと いうことを、改めて考えてみる必要がある。. ビリーフ質問紙調査でわかることはあくまでもその教師に内在する意識 であり、実際の行動ではない。もちろんビリーフが行動に直結する場合が 多いが、一人の教師の申であっても、その教師のビリーフと行動との間に 矛盾やずれが生じる場合もある。畠山(2001)は、ビリーフと実際の行動のギ. ャップ、また教師と学習者の問に生まれる見解の違いを調査し、ビリーフ と実際の教室での行動にどのような関連があるのかを分析しているが、「教. 師、学習者とも質問紙調査に見る考え方と行動とが一致しない場合が見ら れ」、教師の場合は「レベルに対するイメージや時間の制約などによって 思い描いていた授業の進め方が妨げられ」ることがあったと報告している。 ここに、酒井他(2002)が指摘する授業における教師の「ジレンマ」がある. のではないか。教師が教室内で行っている実践的思考の中には、いくつも の無意識的・即興的に行っている判断があり、それを支えるものは目標に 沿った授業内容のイメージであったり、教師の言動のイメージであったり、. また経験や知識として得た対処方法であったりする。それらを包括するも のが「ビリーフ」であると考える。. しかしながら、実際の教室活動では、イメー一ジ通りにいかなかったり、. 経験や知識で得た対処方法の目論見が外れたりすることがある。ここに教 師のE“リ’一一フと行動とのずれや矛盾が生じてもおかしくはないだろう。こ. うしたビリーフと行動とのずれや矛盾にはどのようなものがあり、どのよ うな状況で、どのような理由で起きるのか、これらを解明することで、そ の教師特有の思考の特徴やさまざまな判断を支えているビリーフがより深 く追究できると考える。. そのためにはビリーフ質問紙調査だけでは不十分と言わざるを得ない。. その不十分な部分を丁寧に補う手段として、対象となる教師の人数は限定. されるが、PAC分析やフォローアップインタビューで質問紙には盛り込め なかった質問や回答の背景を探る予定である。. 一51一.
(16) 7,まとめ 本稿では、日本語教育における教師の実践的思考の解明のために、一連 の研究を受けて行ったビリーフ質問紙調査の分析を行い、その問題点を明 らかにした。さらに新たなビリーフ質問紙調査を行うため、より客観的で. 信頼がおけるデータ収集と分析が可能となるよう、どのような手順でビ リーフ質問紙項目の選定と調査方法を決定していったかを示した。. 新たに収集したビリーフ質問紙調査のデータは、量的な分析により、H 本語教師がどのようなビリーフを持っ傾向にあるかを明らかにし、そこか ら日本語教師が考えるいい教師とはどのような教師であり、どのような授 業を行うであろうか、という一つのモデルを提示するものとなる。さらに 質的分析、フォローアップインタビュー、PAC分析により、 H本語教師全 体が考えるいい教師像やいい授業のイメージと個別の教師が持ついい教師 像・授業イメージとの違い、また個別の教師の中にあるビリーフと行動の ずれや矛盾を明らかにすることを目指している。さらに、こうした違いや ずれ・矛盾がどのようにして起きるのかを解明することで、その教師特有 の思考の特徴が明らかにでき6ことを期待している。 本研究の最終目標は、教師研修のあり方を考え、提案することである。. 本研究の成果が、日本語教師が互いに協働して学び合う場をどのように構 築していくべきか考えるうえで、何らかの示唆を与えるであろう。 *本稿は、平成19−22年度科学研究費補助金(基盤i研究(C)) 「オン・ゴー. イング法とPAC分析法の活用による日本語教師の実践的思考の解明」(研 究代表者:小澤伊久美、課題番号:19529005)の取り組みの一部である。. 注 (1}“Beliefs”という言葉には、「ビリーフ(ス)」「信念」「確信」など. さまざまな訳語があてられるが、本稿では「ビリーフ」と記す。 (2)小澤・嶽肩・坪根(2005)までの研究では「ベテラン教師」という表現. を使ってきたが、本研究で問題にしている教師の経験の有無という点 を明確に示すため、本稿より「経験教師」と表現を改める。なお、混. 一・一. @52一.
(17) 乱を避けるため、先行研究にっいて述べている箇所も「経験教師」と いう表現で統一する。 (3)ビデオで見てもらったのは、日本語学校で実際に行われた授業の一コ. マで、単語などのミニテストの後、『みんなの日本語』第15課の新出 語・文型(「∼ています(結果の存続、習慣)」「∼てもいいですか」 f∼てはいけません」)を導入する場面である。. なお、前日には14課の動詞のて形と「∼ている(進行中の動作)」を 学習済みで、この一コマの後には「∼ている(結果の存続、習慣)」 「『に』と『で』の使い分け」「知りません」の説明、言い換え練習、. 談話の形での練習、漢宇の練習などが続く。上記の基礎情報は、ビデ オを見る前に被験者に伝えておいた。 (4)BALLI(B eli efs About Language Learning lnventory)は、言語学習に関わ. る学習者・i教師双方のビリーフを評価するためにHorwitsによって開発 されたものである。 Horwits(1985)では教師を対象とした27の質問項目を、言語学習の1)適 性、2)難しさ、3)性質、4)言語学習ストラテジーの4分野から設定した (BALLI Teacher Version)。. また、Horwits(1987)では、 ESLの学習者を対象とした27の質問項目を、 言語学習の1)適性、2)難しさ、3)性質、4)学習ストラテジー一とコミュニ. ケーションストラテジー、5)動機、の5分野から設定している(BALLI ESL Student Version)。. (5)河村・國分(1996)は、「ビリーフには論理的な前提のあるラショナル・ ビリー・フ(rational belief)と非論理的な前提のイラショナル・ビリーフ. (irrational belieOがある」とし、「イラショナル・ビリーフ」とは、「絶. 対的で教義的な『ねばならない型』の思考のことであり、強迫的な行 動・感情に結びっくと考えられる」と説明している。 (6)構造方程式モデリング(SEM)とは、観測データ(質問項目への回答). の背後にあるさまざまな要因(例えば「達成感」や「知能」といった. 直接観測できない概念)の関係を分析する統計手法で、相関関係のみ ならず因果関係も明らかにできる(豊田2007:2、要2005)。 (7)久保田(2006)における「豊かさ志向」とは、 「『学習している外国語. を話す人たちとの練習の機会』重視、『現実に近い場面を設定しての. 一53一.
(18) 練習』重視、『知らない外国語があったら意味を推測すればいい』」 など、 「ことばの運用面を重視している志向」や、 「教科書の内容に ’とらわれない『豊かさ』」への志向を意味する。 (8)河村・國分(1996)と河村・田上(1998a)の項目は全て内容は同じだが、. 細かい言い回しが変更されているところがある。筆i者らのビリーフ質 問紙では河村・田上(1998a)の表記を採用しているが、論文を読むうえ での紛らわしさを排除するため河村・國分(1996)のみの記述とする。 (9)PAC(Personal Attitude Construct:個人別態度構造)分析とは、(1)当該. テーマに関する自由連想(2)連想項目問の類似度評定、(3)類似度距離. 行列によるクラスター分析、(4)被験者によるクラスター構造のイメー ジや解釈の報告、(5)実験者による総合的解釈、を通じて個人ごとに態 度やイメージの構i造を分析する方法である(内藤2003:1)。. 参考文献 板井美佐(2000)「中国人学習者の日本語学習に対するBELIEFSについて一 香港4大学のアンケート調査から一」『日本語教育』104号、pp.69−78 大河原尚(2006)「他者の経験を知ることの意味一一多様な確信(ビリーフ). を持つ教師と日本語コースのあり方に関する考察から一」『別科日本 語教育』第8号、大東文化大学別科日本語研修課程、pp.1−9 岡崎眸(1999)「学習者と教師の持つ言語学習にっいての確信」宮崎里司・. J.V.ネウストプニー(編)『日本語教育と日本語学習一学習ストラテ ジー論にむけて一』くろしお出版、pp.147−158. 岡崎智己(2001)「母語話者教師と非母語話者教師のBELIEFS比較一日本と 中国の日本語教師の場合一一一一」 『日本語教育』110号、pp.110−119. 小澤伊久美・嶽肩志江・坪根由香里(2004)「日本語教育における教師の実. 践的思考に関する研究一ベテラン教師と新人教師の比較より一」日本. 語教育学会春季大会口頭発表 小澤伊久美・嶽肩志江・坪根由香里(2005)「日本語教育における教師の実. 践的思考に関する研究(2)一新人・ベテラン教師の授業観察時のプロ トコルと観察後のレポ・一・一・トとの比較より一」『1田日本語教育研究』2、. ICU日本語教育研究センター一、 pp.1−21. 一54一.
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(21) HOw to I)esign Questio皿naires About BeliefS TIlat Assess ‘‘Practical Thinking”. Research ’on Pra、ctical Thinking of Language Teachers(3). Teacherst :. Japanese. TAKEGATA ’Yukie, TSUBONE YUkari, and OZAWA lkUmi. Key.words:Beliefs, practical thinking, novice teachers, experienced teachers, け . questionnatres. How Japa皿ese Ianguage teachers implement practical thinking’,(thinldng. based皿practical㎞owledge of teaching actiΨities)is an important topic but continues to be a dif日cult one to assess. This paper is part 3 0f a series of investigations that attempts to assess such thinking based on’three sets of data:(a). the oral’comments of 10 novice teachers and 10 experienced teacheTs recorded when they did a‘‘think aloud”while watching a video of a Japanese language lesson,(i,)written reports that these same 20 teachers produced immediately after. the video session, and(c)the same teachers’responses to a multiple choice questionnaire on teacher’sbeliefs. The fbcus of this paper is mostly on the third item, the questionnaire about. teachers’beliefs, and why it did not yield clearer resuIts. Three reasons are. proposed:(a)The questionnaire about beliefs did not match the contents of、the video lesson that the 20 teachers observed.(b) The teachers’responses to the multiple choice questions on the questio皿aire tended tg be concentrated on the middle of five choices.(c)The sample size was too small for statistical analysis.. The paper discusses how questionnaires investigating beliefs could be designed more carefUlly a皿d in a way that might lead to clearer alld more consistent results. It concludes by summarizing the possibilities and limitations of. such questio皿aires and by makhlg recommendations fbr fUture research in this difficult field.. 一137−一.
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