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法人所得税の課税管轄権 : チャールズ E. マクルアー著『歴史の長い影 : アメリカ合衆国及び欧州連合の法人所得税に関する主権,租税帰属,立法と司法判断』の紹介と分析

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Academic year: 2021

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(1)法人所得税の課税管轄権 ──チャールズ E. マクルアー著『歴史の長い影:アメリカ合衆国及び欧州連合 の法人所得税に関する主権,租税帰属,立法と司法判断』の紹介と分析── 伊 藤 公 哉. 1.はじめに 本稿は,2007 年に Avi-Yonah, Hines & Lang ( eds. ) , Comprehensive Fiscal Federalism, pp.. 2.アメリカ合衆国における州の租税主権 Ⅲ.租税帰属と下位国家所得税制の設計 1.租税帰属上の下位国家主権 2.連合,連邦化と経済同盟. 119-190 で発表された Charles E. McLure, Jr. の. 3.3 つの基本的な政府機能の帰属. 論文 The Long Shadow of History: Sovereignty,. 4.居住地ベースの下位国家租税の役割. Tax Assignment, Legislation, and Judicial. 5.単一市場における下位国家所得税制の設. Decisions on Corporate Income Taxes in the. 計. US and the EU を紹介し分析するものである.. Ⅳ.アメリカ合衆国における州の法人所得税制. 著者 の McLure 博士(ス タ ン フォード 大学. 1.3 つの基本的な政府機能の役割. フーバー研究所シニア・フェロー)は,租税全. 2.州所得税制の設計. 般について,とくに税制改革及び付加価値税の. 3.良い部分. 分野で著名な研究者であり,1983 年~1985 年. 4.悪い部分. に は 政権 の 財務副次官補 を 務 め,1986 年税制. 5.醜い部分:制度上の失敗. 改革法の基礎となる財務省の税制改革提案をと. 6.州法人所得税の補完性と比例性. り纏めた.. Ⅴ.EU における法人所得課税. McLure 論文 で は,EU(欧州連合)と そ の. 1.3 つの基本的な政府機能の帰属. 加盟国の関係について,著者が主張する理想的. 2.加盟国の法人所得税制の設計. な原則に鑑み,また現在までのアメリカ合衆国. 3.進むべき方向性. における連邦国家と州政府の関係になぞらえつ. Ⅵ.結論. つ,将来的な方向性を示す試みを行っている. 将来的な国際課税の参考となるところは多いと. 上記の構成をもとに,以下でこの論文の概要. 考え,この論文を紹介する.. を紹介する.. 2.論文の構成と概要. Ⅰ.序 論. McLure 論文の構成は,下記のとおりである.. 著者は,この論文で,タイトル「歴史の長い影」. Ⅰ.序論. にもあるとおり,「租税帰属の慣行(税源配分). Ⅱ.2 種類の租税主権. は,歴史により決定づけられている」との立場. 1.EU における加盟国の租税主権. を終始貫いている.現状,アメリカの州政府と.

(2) 64. (64). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 1 号(2011 年 7 月). EU 加盟国により課せられている法人所得税の. 1. 1 制定法による制限からの自由. 構造,租税政策上の主権の程度については相違. EU は,加盟国に対して強制力のある超国家. が存在する.. 的な租税主権を有してはいない.EU 全体の租. この論文では,EU とアメリカの両方の現状. 税政策 を 採択 す る た め に は,加盟国 の 全会一. を理解し,比較するというアプローチを用いて. 致の合意が必要とされている.この全会一致. いる.なお,この論文で扱う範囲については,. の ルール は,閣僚理事会 が 採択 を 検討 し て い. 租税構造の問題に焦点をあてており,税率の調. る EU の租税政策について,実質的に各加盟国. 和については対象としない.また,政策に関. に拒否権を与えている効果がある.また,EC. する将来予測,とくに EU における短期的な租. 条約は,補完性(subsidiarity)の原則と比例性. 税政策を意図するものではないことを最初に断. (proportionality)の原則を要求している. 1. 2 憲法上/司法上の制約からの自由. わっている.. EU の加盟国または欧州委員会は,条約に違 Ⅱ.2 種類の租税主権. 反すると思われる個々の加盟国の租税政策に. EC 条約及びアメリカ合衆国憲法は,ともに. つ い て,欧州司法裁判所(以下,ECJ と い う). いわゆる下位機関である加盟国政府/州政府が. に提訴することができる.著者は ECJ の判例. 租税政策上どの程度の主権を有しているかを決. 法が加盟国の国内法の一部になるとする.さら. める基本原則を規定している.著者によれば,. に著者は,2001 年に委員会が EU 法に対する. この相違は,それぞれの過去の歴史を反映する. 違反行為についていっそうプロアクティブな戦. ものである.. 略をとる意図を発表した2)ことは重要であり,. ここでは,議論のツールとして,EU におけ. これは加盟国に,EU 法と対立するかもしれな. る 2 種類の調和化を用いている .消極的な調. い既存のあるいは潜在的な国内法について留意. 和化 は,単一市場の形成を妨げる下位国家政策. し,そしてこのような対立を回避するための行. を禁止する目的(たとえば域内関税の禁止)で,. 為をとらせるものであるとしている.. 裁判所は解釈に関与することとなる.積極的な. 1. 3 「条約の守護者」としての委員会. 調和化 は, 積極的な統一化を目的とするもので,. 欧州委員会は「条約の守護者」としての役割. 裁判所は,一般に関与することはない.. を行使する.理論的には,欧州委員会は,その. 1). また, 下位国家間の政府間協定は, ハードロー. 委員を任命する個々の加盟国の利益ではなく,. (法的に拘束力のある合意) あるいはソフトロー. EU 全体としての利益を代表する3).従って欧. (拘束力を伴わない政治的な協定)のアプロー. 州委員会は,条約の公平な守護者として予定さ. チによって実施可能である.. れている.. 1.EU における加盟国の租税主権. 1. 4 立法の空白. 現在,EU は正式な憲法を有してはいないが,. ECJ は,加盟国がするべきことは示さず,た. 条約が事実上の憲法の役割を果たしている.. だ,「してはならないこと」を示している.個々. . . 1)See Martín Jiménez, A. J.(1999)Towards Corporate Tax Harmonization in the European C o m m u n i t y : A n I n s t i t u t i o n a l a n d P ro c e d u r a l Analysis,The Hague: Kluwer. なお,脚注のうち 1)から 22)までは McLure 論文にある注であり,23)以降は筆者によるもの である.. 2)Commission of the European Communities (2001)“Tax Policy in the European Union─Priorities for the Years Ahead,” a Communication from the Commission to the Council, the European Parliament and the Economic and Social Committee, COM (2001)260 final. 3)See Articles 211 and 213 of the EC Treaty..

(3) 法人所得税の課税管轄権(伊藤). (65). 65. の加盟国は,条約に違反する国内法を修正する. 2.アメリカ合衆国における州の租税主権. こととなる.. 2. 1 制定法による制約からの自由. 1. 5 調和化の「エンジン」としての ECJ. EU の状況とは異なり,アメリカでは,州が. 著者は,Lang 教授の「もちろん,ECJ はた. 合衆国建国に参加した時点で,連合体ではなく. だ国内制度を無効化する能力を有するのみであ. 主権を有する「連邦」政府が創られた.合衆国. り,EU 規模の調和化させられた税制を作り上. 憲法は,EC 条約のような全会一致のルールを. げることはできない.しかしながら,加盟国が. 採用していない.さらに,たとえ全ての州が同. 課税ベースを保護する措置を許さないことによ. 意する事案があったとしても,連邦議会での決. り,ECJ は税制を EU 規模で調和化させるため. 議を経ない限り,連邦法上は何らの効力も有し. に加盟国,欧州委員会及び閣僚理事会に圧力を. ない.. 加えている.その圧力なしで,加盟国が調和化. 合衆国憲法の通商条項によれば,連邦議会は,. のイニシアチブをとることはないであろう.そ. 国際及び州際通商を規制する権限を有し,これ. のため,ECJ が EU で租税調和化の真の「エン. により,州による国際及び州際取引への課税を. 4). ジン」である」 を引用し,ECJ が EU におけ. 制限することができる.ただし,連邦議会が州. る調和化のエンジンであるとの見解を示してい. 政府の課税を制限するために憲法の規定を行使. る.. することは稀である.したがって州は,事実上,. 1. 6 欧州委員会と「ソフトロー」. 租税主権,特に法人の租税に関する主権につい. 「ソフトロー」のアプローチは,全会一致の. て,伝統的に多くを有してきたことに言及して. ルールの下での複雑な問題を解決する希望を与. いる.. えたが,問題点も指摘されているとする.. 2. 2 憲法上/司法上の制限からの自由. 1. 7 歴史の長い影. 合衆国憲法の通商条項は単に租税について明. 「ヨーロッパ連邦」を作ることに関する最初. 言していないのみならず,EC 条約における単. の原動力は,紛争回避のための加盟国間の強い. 一市場規定に相当する規定すら含んでいない.. 経済統合であった5).この目標を促進するため,. 単に,連邦議会には,外国との通商,州際間の. EU の先駆けである EEC(欧州経済共同体)の. 通商,インディアン部族との通商を規制する権. 6 か国の発起メンバーが,域内流通の障害とな. 限を与えているにすぎない7).しかし,連邦最. る間接税の撤廃を目指し,関税同盟の結成と間. 高裁判所は,この規定は州政府が州際間の通商. 接税 の 調和化 を 切望 し た.ローマ 条約(EEC. 及び外国との通商を妨げる法律を制定できない. を結成した 1957 年の文書)は,従って間接税. 意味を有するものと判示しており,この解釈に. 6). の調和化を明示的に規定している .他方で,. よれば EU の単一市場原則と類似した効果を有. EEC の発起メンバー 6 カ国は,国内での社会. し,州政府は上位政府(連邦政府)から司法上. 的経済的目標達成の実行能力を保持し続けるこ. の課税権の制約に服することを意味するもので. とを望んでいたため,直接税の調和化の要求は. ある.. ローマ条約から除外された.. 2. 3 憲法の守護者は誰か?. . 4)Lang, M.(2006)“Double Taxation and EC Law” Avi-Yonah, Hines & Lang(eds.) , Comprehensive Fiscal Federalism, Chapter 2. 5)See Reid, T. R.(2004)The United States of Europe, New York: Penguin Press. 6)EC Treaty, Article 93.. アメリカでも EU でも,最高裁判所はただ消 極的な行動をとるのみである;最高裁判所は, するべきことではなく,「してはならない」こ とを示す.アメリカでは,州の租税政策が連邦 . 7)Article I, Section 8..

(4) 66. (66). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 1 号(2011 年 7 月). 憲法に準拠しているかどうかを確認するための. れていないからである8).. 連邦機関を設置していない.. 2.連合,連邦化と経済同盟. 2. 4 立法の空白. 自由貿易地域,関税同盟は,範囲が限定され. アメリカの連邦議会が州税の課税権を制限す. ている.一方で,経済同盟の創造は,完全な経. ることは稀である.しかしそれが重大な立法の. 済統合を伴う.著者は,経済同盟の創造は連邦. 空白を引き起こしていることは確実である.制. 制(federal system)によってのみ達成するこ. 度上の欠陥を示す最も良い例は,定式配賦法で. とができると主張する.. 所得配賦をする際に,多様かつ不適当な計算式. 3.3 つの基本的な政府機能の帰属. を用いる州が増加していることであると著者は. Musgrave 教授によれば,政府の経済上の機. 説明する.. 能は,有効なマクロ経済の安定化,所得分配と. 2. 5 協力的な主権の限界. 資源配分として特徴づけられる9).. 各州政府は租税に関する協定を形成するこ. 3. 1 マクロ経済の安定化. と が で き る.そ れ ら の 州 は「協力的 な 主権. 中央政府がマクロ経済の安定化(高い雇用と. (cooperative sovereignty) 」を働かせることがで. 物価安定の維持)について主たる責任を負うべ. きるかもしれない.1967 年に 7 州が多州間租税. きであることは広く同意を得られている.そし. 協定(Multistate Tax Compact)に同意し,多. て,通常,統一通貨の存在を前提とし,また他. 州 間 租 税 委 員 会( Multistate Tax Commission;. 国との為替レートは,中央政府により介入され. MTC)を組織した.この「協力的な主権」アプ. るか,または支配されている.いずれにしても,. ローチは,EU で用いられた「ソフトロー」の. 下位国家管轄権の支配の範囲を越えている.. アプローチに類似しているが,著者は 5 つの相. 下位国家政府は,通常,金融政策の行使につ. 違点を示している.. いて必要とされる通貨を発行する権限を有して. 2. 6 歴史の長い影. いないし,また有するべきではない.一般に,. アメリカでは, 「憲法の守護者」としての連. 借入の権限は有している.. 邦機関は存在しない.憲法修正第 17 条は,上. 3. 2 所得分配. 院議員の直接選挙を規定することで,州議会と. 中央政府は所得分配についても主たる責任を. 連邦議会の間の結び付きを終焉させた. さらに,. 負っている.資本及び個人の高額所得者の可動. EU 加盟国とは異なり,所得税を課した当初か. 性は,個人所得税の累進税率や資本に対する課. ら州は独立国家ではなく,ゆえに州政府が条約. 税といった所得再分配のための下位国家政府の. を締結することは認められていなかった.. 能力を制約する.つまり,可動性の低い生産要 素(すなわち土地と低所得労働者)が,所得を. Ⅲ.租税帰属と下位国家所得税制の設計. 再分配するように意図された租税を負担させら. 1.租税帰属上の下位国家主権. れることとなる可能性がある.また,租税が他. 下位国家政府は,可能な範囲で,下位国家が. 国の居住者に転嫁させられることがある.たと. 提供する公共サービスの便益を反映した租税を. えば特定の財の生産がある下位国家に集中して. 当てにするべきであり,外国の居住者に転嫁さ. いる場合,その下位国家により製品に課された. れることが見込まれる(便益を反映しない)租 税を課すべきではない.しかし,憲法や国家の 制定法で公共サービスの便益を反映しない租税 を禁止することは,賢明ではない.裁判所には 「複雑な事実の分析」に着手する機能は期待さ. . 8)Shaviro, D. (1992) “An Economic and Political Look at Federalism in Taxation” 90 Michigan Law Review, 897. 9)See Musgrave, R.,(1959)The Theory of Public Finance, New York: McGraw-Hills..

(5) 法人所得税の課税管轄権(伊藤). (67). 67. 租税が広く非居住消費者に負担させられること. がある.つまり,租税は地理的選択の中立性が. となるかもしれない.そこで,グローバル化. 保証されているべきである.. は,下位国家所得税が非居住消費者に転嫁させ. ここでは,資本輸出の中立性,資本輸入の中. られるリスクを抑える.グローバル化により,. 立性,資本所有の中立性概念を用いて,国際的. 物価は世界市場で決定されるようになるため,. な二重課税の分析を試み,さらにアメリカにお. ある下位国家政府が財に租税を課したとして. ける最近 10 年間のインヴァージョンの動きを. も,消費者に転嫁できなくなる10).. 引き合いに,法人の居住地概念(設立地に基づ. 3. 3 資源配分. く場合)が盤石なものではないことを明らかに. 資源配分については,通常,下位国家政府に. した(法人は,タックスヘイブンに新しい「親. 重要な責任が委譲されている.. 会社」を設立することにより,アメリカの居住. 3. 4 補完性と比例性. 地ベースの課税を排除した11)) .著者は,高度に. 下位国家は,租税を課すこと,及びその課税. 統合化された経済において,法人の居住地は無. の方法についての裁量が認められており,重要. 意味な概念であるか,あるいは租税回避を目的. な国家目標を犠牲とすることはないとされる.. に容易に操作されうるものであり,法人設立の. 3. 5 下位国家法人所得税制設計のためのイン. 場所に基づいた居住地の概念は無意味であると. プリケーション. して,居住地ベースの課税に反対の考えである.. マクロ経済の安定化及び所得分配の装置とし. また,居住地ベースの課税に反対するその他. て下位国家法人所得税の存在を正当化すること. の根拠として以下を示している.まず Wattel. は,かなり難しいと著者は結論づける.. 教授は,外国税額控除を有する全世界所得課税. 3. 6 税率の調和化. 方式は,開業の自由と整合しないと論じている. 税率は主として下位国家政府による公共支出. (高税率国の居住者は,競合する低税率国への. のレベルを決定するものである.同様に,税率. 移動の機会が排除されるため12)).第 2 に,受. を選択する自由は,法人が負担する税が受ける. 益者負担の原則が法人所得への課税を正当化す. 公共支出の便益を超えないことを保証するうえ. る点において,居住地ベースの課税ではなく,. で役立ち,健全な租税の競争を促進する.他方. 源泉地ベースの課税により正当化される.第 3. で,課税ベースの操作がしばしば有害な租税の. に,Musgrave 教授は,居住地を法人設立の場. 競争を生み出す.. 所に置くことは「利潤獲得活動が行われてい. 4.居住地ベースの下位国家租税の役割. る場所ではなく,むしろ…設立された管轄区. 租税帰属の重要な目標の一つに,経済活動拠. 域に租税を集中させる傾向がある」ことを強. 点の設置の選択における経済的な歪みを生じさ. 調する13).最後に,源泉管轄区域の積極的な協. せる下位国家租税政策ならびに執行実務の防止 . 10)See McLure, Jr. C. E.(1982)“Incidence Analysis and the Supreme Court: An Examination of Four 1981 Case” 1 Supreme Court Economic Review: The 1980 Term, New York: Macmillan Publishing Company, pp. 69─112. For a simple formal analysis of the roles played by the elasticities of supply and demand and by market dominance, see McLure, Jr. C. E.(1981)“Market Dominance and the Exporting of State Taxes” 34 National Tax Journal, 483─85.. . 11)See Avi-Yonah, R. S.(2002)“For Havenʼs Sake: Reflections on Inversion Transactions” 27 Tax Notes International, 225─31, Desai, M. A. and Hines, J. R.(2003)“Evaluating International Tax Reform” 56 National Tax Journal, 487─502, and US Department of the Treasury (2002) “Corporate Inversion Transactions: Tax Policy Implications”. 12)Wattel, P. J.(1996)“Home Neutrality in an Internal Market”, European Taxation, 159─62. 13)Musgrave, P. B.(1987)“Interjurisdictional Coordination of Taxes on Capital Income” in Tax Coordination in the European Community, S. Cnossen (ed.) , New York: Kluwer Law and Taxation Publishers, 215..

(6) 68. (68). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 1 号(2011 年 7 月). 力なしに居住地ベースの課税を行うことは極め. 5. 2 居住地ベースの法人所得税は認められない. て困難である.そのうえ,二重課税を避ける目. 国内 に 源泉 を 有 す る 法人所得 へ の 課税 は,. 的で外国税額控除と居住地ベースの課税を実行. もっぱら源泉地ベースの課税となるであろう.. することは非常に複雑である14).. 居住地ベースの課税は認められない.. 加えて,多国籍企業の非支配外国法人の所得. 5. 3 源泉地ベースの課税の調和化. については配当として所得を受領するまで課税. コンプライアンスと行政コストを最少にし,. が繰延べられるのに対し,外国支店の所得につ. 課税ベースの相違と重複を防ぐため,すべての. いては繰延べられることなく課税されるが,居. 下位国家は同一の源泉ベースの課税の体系を用. 住地ベースの課税を止めることによりこの実務. いるべきであろう.なお,調和化が必ずしも税. 固有の歪みを克服できるとする.. 率にまで及ぶことは意味していない.. 5.単一市場における下位国家所得税制の設計. 5. 4 所得の配賦. ここで理想的な下位国家所得税制を著者が提. 複数の下位国家内で行われている企業活動の. 唱する.租税帰属は 3 種類の別個の決定を必要. 間には経済的な相互依存が存在するため,分離. とする:1)どの段階の政府が課税ベースを定. 会計(separate accounting, SA)/独立企業原則. 義するか,2)どの段階の政府が税率を設定す. (arm’s length standard, ALS)の使用は,そも. るか,そして 3)どの段階の政府が課税を執行. そも概念的に不可能であるかもしれないと著者. するかである15).課税ベース及び行政手続の相. は主張する.さらには,納税者は課税所得を高. 違は,不公平や課税標準の重複,経済活動をど. 税率国から低税率国へと移動するため組織形態. こで行うかについての中立性を歪め,不要な複. と移転価格を操作するかもしれない.移転価格. 雑さや無駄なコンプライアンス及び行政コスト. を設定し,文書化して,モニターすることは,. を生じさせ,単一市場の創造または機能を妨げ. 多大な煩雑さと経費を必要とする.. ることとなる.従って,租税帰属については,. 5. 5 所得の共通定義. 税率についての考慮を除き,実質的に統一され. すべての下位国家は同一の課税ベースの定義. るべきである16).. を用いるべきであると著者は主張する.課税. 5. 1 下位国家の法人所得課税についての有益. ベースの相違や重複,無駄なコンプライアンス. な前提条件. 及び行政コスト,課税ベースの相違を原因とす. 統一された会計基準の欠如は,租税において. る係争を回避するためには,同じ定義が必要だ. もコンプライアンス及び行政コストの増加をも. からである.. たらす.また,アメリカのように中央政府(連. 5. 6 国内源泉配当には課税しない. 邦政府)による所得税課税がある場合には,統. 同一国内で生じた所得からの法人間の配当金. 一化が促進され,州政府はこの中央政府による. の授受は,(所得の共通定義により)すべての. 租税行政に大いに依存することができる.. 下位国家 で 原所得(underlying income)が 課 税済であるかまたは課税免除されているはずで. . 14)Ibid. 15)McLure Jr. C. E.(2000)“Tax Assignment and Subnational Fiscal Autonomy” 54 Bulletin for International Fiscal Documentation, 625─35. 16)Shaviro, D. (1992) “An Economic and Political Look at Federalism in Taxation” 90 Michigan Law Review, 974.. あるから,課税対象とはならない. 5. 7 所得配賦についての限定的な例外 仮に配賦可能な所得と配賦不可能な所得の間 に区別があるとするならば,後者の分類は極め て限定されるべきである. 5. 8 課税する管轄区域 課税権のネクサス(nexus)は,州内での単.

(7) 法人所得税の課税管轄権(伊藤). (69). 69. なる物理的な存在(physical presence)を意味. 5. 14 国際租税問題. するものではない.ある州で配賦要素の 1 つで. 下位国家政府が単独で国際租税交渉に携わる. も一定基準を超えるならば,その州は課税する. ことは許されないであろう.租税条約の協議を. ことが許されるべきであろう.. 含めて,このような交渉は,中央政府により,. 5. 9 共通の配賦計算式. あるいはすべての下位国家により共同で行なわ. す べ て の 下位国家は同一の配賦計算式を用. れるである.あらゆる条約は,すべての下位国. い,そして同一の配賦要素を定義するべきであ. 家の税制に対して等しく適用される.. る.アメリカの州は伝統的に給与総額,資産と. 5. 15 難 問. 売上高を所得配賦のために用いてきた.そして. 下位国家法人所得税の構造を方向付ける原則. EU は現在これらあるいは付加価値を使うこと. を規定するこの試みは,いくつかの難問がある.. を検討している.この計算式は,基本的に,納. 1 つは配賦計算式の選択である.もう 1 つは合. 税者の所得がどこに源泉を有するかを反映する. 算対象とする企業集団の定義である.重要な原. ものである.. 則は,税率に関する部分を除き,統一されるべ. 5. 10 合 算. きである.. 合算(combination)は,共通所有 ま た は 共. 5. 16 補完性と比例性の再検討. 通支配に基礎をおくものであるか,または単一. 上記で述べてきた制度は,問題の解決にあた. の事業(ユニタリービジネス)が存在する場合. り必要なものであり,つまり租税の相違や重複. に適用されるものである.いずれにしても,合. を防ぎ,重要な国家の目標のコンプライアンス. 算の適用にあたっては,単一のテストが用いら. と執行の両方を促進するであろう.また,この. れるべきである.. 解決策は,予期された問題点に対して比例性を. 5. 11 外国での損失との通算. 有しており,端的に言ってこの解決策は問題に. 合算されたグループ内のある法人から生じた. 対してつり合うものである.. 損失は,機械的に他の関連法人の所得と相殺さ れることとなる.. Ⅳ.アメリカ合衆国における州の法人所得税制. 5. 12 税制優遇(租税特別措置)は認めない. 1.3 つの基本的な政府機能の役割. すべての産業部門に対して適用される軽減税. 1. 1 マクロ経済の安定化. 率を除き,経済活動を惹きつけるように意図さ. マ ク ロ 経済 の 安定化 の 責任 は,連邦政府 が. れた税制優遇措置は許されない.ある特定の行. 負っている.統一通貨があり,そして連邦準備. 為は,明らかに禁止されるべきである.例えば,. 銀行は制度化された連邦機関である.州の資金. 経済活動を惹きつけるための努力として,合算. 調達能力は,収支均衡予算を要求する州憲法の. が要求され若しくは許される共通ルールから逸. 規定により厳格に制限されており,また過剰債. 脱し,または統一の計算式を修正することで自. 務は信用格付けを毀損し負債コストを押し上げ. 州の(特定の)産業のみのための加速度減価償. る現実がある.. 却や税額控除を州政府が認めるかもしれない.. 1. 2 所得分配. これらの手段は許されるべきではないと著者は. 連邦政府は所得を再分配するように意図され. 主張する.. た多くの租税政策を引き受けている.. 5. 13 国際的な所得フローへの領土内所得課税. 9 州は,個人所得税を課しておらず,4 州は. 下位国家政府は,国外源泉所得を課税免除す. 法人所得税を課していない.連邦所得税の税率. る方法が望ましいように思われる.. は,0 か ら 35% ま で の 累進税率 で あ る.こ れ に対して,州の個人所得税の最高税率は 9.5%.

(8) 70. (70). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 1 号(2011 年 7 月). であるが,連邦税算定上の控除可能性を考慮に. 3.良い部分. 入れた実効税率は 6.2% に過ぎない.州の法人. ここでは,(前述の「Ⅲ.租税帰属と下位国. 所得税の実効税率はおよそ 6.5% である.. 家所得税制の設計」でみた)理想的な制度と合. 1. 3 資源配分. 致している州の租税政策について検討を行って. 州の法人所得税は,公共サービスの便益を反. いる.. 映しておらず,それは経済活動をどこで行うか. 3. 1 州法人所得課税についての有益な前提条件. についての決定を歪めている.また,州の課税. 財務会計基準審議会(FASB)に よ り 公布. ベースには相違があり,重複が生じている.源. された一般に公正妥当と認められた会計原則. 泉地ベースの課税であれば,州所得税は居住地. (GAAP)は国家規模で適用されている.ただし,. の選択を歪めない(居住地はこの文脈で経済的. 連邦そして州の両方の課税所得の定義は,この. に無意味な概念である) .州は,積極的に租税. GAAP から逸脱している.. 競争に参加している.しかしこれはしばしば税. 3. 2 限られた居住地ベースの課税. 率の引下げ以外の形態をとる.州課税の統一性. 居住地ベースの法人課税は存在するが,それ. の欠如は,不必要なコンプライアンス及び行政. は比較的重要ではない.法人設立が州法により. コストを生じさせている.. 律されることから,設立州により課税が生じる. 2.州所得税制の設計. ことがあるが,非常に稀である.. 州政府は法人所得課税において実質的な主権. 3. 3 所得の配賦. を有しており,州政府には,相互に整合性がな. 個々の法人あるいは合算された企業集団の. いまたは上述の租税帰属の原則に適合しない所. 所得の大部分は,配賦の対象となる.ただし,. 得税制を制定する裁量がある.. あ る 一定 の「非事業」所得,た と え ば 不動産. ただし現実には,州の所得税は,ある程度の. 賃貸所得 に つ い て は,(配賦可能 な 課税標準. 統一性を示している.第 1 に,州税は連邦上の. に含められることなしに)源泉地の州に配分. 課税所得の定義を起点に,州法で規定された調. (allocate)される.. 整を施すことで算定される.第 2 に,所得税を. 3. 4 所得の一般的な共通定義. 課している大多数の州は,1957 年に起草され. 州の課税所得の計算は,連邦の課税所得を起. た 模範法 で あ る「Uniform Division of Income. 点に,各州で規定された調整を加えて行う.連. for Tax Purposes Act( UDITPA) 」を 採 択 し. 邦の課税所得からの逸脱は比較的少数派ではあ. ており,またこれを採択していない州の多くも. るが,厄介なものを後述する.. 同様に参考にしている.しかし,UDITPA を. 3. 5 租税誘因 I. 採択している州を含め圧倒的に多数の州が,重. ある種の租税誘因は,効果的ではないか,ま. 要な部分で UDITPA を修正していることは指. たは禁止されている.特別償却は税制上の優遇. 摘するべきである.さらに,UDITPA は課税. 措置として効果的ではない.連邦最高裁判所は,. 権の管轄区域に関する基準を含んでおらず,ユ. 一定の税額控除について課税州内の投資に限定. ニタリーの合算の問題にも対処していない.. することは認められないと判示している.. アメリカ合衆国における州法人所得税は,前. 3. 6 領土内所得課税. 述の租税帰属の原則にかなりの点で適合する.. 連邦議会は,州政府による国際的所得フロー. しかし UDITPA は包括的ではなく,また州が. への課税を制限する通商条項上の権限を有する. 修正したうえで採用・施行しているため,統一. が,一般にその権限が行使されたことはない.. 性の欠如が起こり得る.. ま た 連邦最高裁判所 も 比較的寛容 な 立場 で あ り,とくにユニタリーの合算について,外国親.

(9) 法人所得税の課税管轄権(伊藤). (71). 71. 会社を含む外国法人の活動と所得に適用するこ. 4. 6 スローバック条項. とが可能であると判示した.しかしながら,連. 有形動産の売上は,仕向地の州に帰属する.. 邦政府及び貿易相手国からの圧力により,ユニ. 課税が存在しない州に販売された売上高の取扱. タリーの合算を要求する州政府は,外国会社の. いは極めて重要である.UDITPA はこのよう. 活動と所得について原則として合算を義務付け. な売上高は,スローバックし源泉地の州に帰属. ないこととする水際方式を導入した.. させることを規定している.. 3. 7 国際租税問題. 多くの州は,州内の製造業者に競争上の優位. 合衆国憲法は,国際租税関係について,連邦. を与える目的で,スローバック条項を採用して. 政府に排他的な責務を与えている.州政府が外. いない.その結果,どこの州からも課税される. 国政府と条約の交渉を行うことは許されない.. ことのない所得が生じることとなる.. 4.悪い部分. 4. 7 多様な配賦計算式. ここでは, (前述の「Ⅲ.租税帰属と下位国. 各州政府 は,同一 の 配賦計算式 を 用 い て お. 家所得税制の設計」でみた)理想的な制度から. らず,また同一の配賦要素の定義を用いてい. 逸脱している州の租税政策について検討を行っ. るわけではない.これらの不一致は,課税に. ている.. おいて課税漏れや二重課税といった可能性を. 4. 1 配当課税. 生み出す.さらに,長い間に,経済上の理論. 法人間の配当は,多くの場合で課税対象であ. 的基礎に欠ける計算式へと移行してしまって. る.. いる.. 4. 2 特定州への過度な所得帰属. 4. 8 売上高のみによる配賦. 非事業所得 は,特定 の 州 に 配分(allocate). 四半世紀前 に は,1 つ の 州 を 除 く す べ て の. される.. 州 が,給与総額,資産,及 び 売上高 の 3 要素. 4. 3 UDITPA からのネクサス・ルールの欠如. 同等分による配賦計算式を用いていた.その. 課税の管轄区域を定義するルールの欠如は,. 後,売上高に比重を置く方式への顕著な移行. UDITPA の重大な不備である.. があった.この移行の極端なヴァージョンが,. 4. 4 過度に制限的なネクサス基準 P. L. 86─272 は,不合理に管轄区域による課. 法人所得の配分を売上高に全面的に依拠する 「売上高のみによる配賦」であり,とくに厄介. 税の主張を制限している.この制定法は,州外. である.. から配達されることとなる有形動産の販売につ. まず,売上高のみによる配賦は,配賦計算式. いて,潜在的納税者による州内での活動が単な. は所得の発生地を反映するべきであるとする原. る勧誘行為のみであるならば,管轄区域による. 則に反している.給与(労働力)と資産(資本. 所得税課税の主張を禁じている.法人は,物理. 財)が所得の生成に役に立たないなどと断言す. 的な存在(physical presence)を有しない州に. ることは非常識であると著者は強調する.. おいて相当に売り上げて所得を得るかもしれな. また,売上高のみの配賦は,おそらく GATT. いが,課税されない可能性がある.. の輸出補助金の禁止規定に違反する17).. 4. 5 無形資産の所在についてのネクサスの   インプリケーション ある納税者は,ロイヤリティの支払いによる 所得控除を受けることを通じて州内法人の税負 担を圧縮する目的で,商標権を州外の持株会社 あるいは有限責任パートナーシップに移転する.. . 17)See Hellerstein, W. and McLure, Jr., C. E. (2002) “Does Sales-only Apportionment of Corporate Income Violate International Trade Rules?” 25 State Tax Notes, 779─86;(9 September 2002)27 Tax Notes International, 1315─23;(Winter 2003)3 CES/ifo Forum, 23─30..

(10) 72. (72). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 1 号(2011 年 7 月). 4. 9 配賦要素の多様な定義. ない状況を生み出し得る.これは,法人がある. 売上高の定義は区々であり,すべての販売に. 州に多くの売上高を有しているがネクサスが存. ついて UDITPA ルールに従うわけではない.. 在しない場合,あるいはネクサスが存在する州. たとえば,インターネットからダウンロードさ. にほとんど売上高がない場合に発生し得る.こ. れた役務や無形製品の売上などがある.有形資. の状況は,州が合算を要求していない場合にさ. 産以外の販売が増大していることの重要性を考. らに悪い事態となる.法的に別個の事業体が,. えれば,この多様性は耐え難いものである.す. 租税を課していない州に所得を配分(allocate). べての売上高は仕向地の州に帰属されるべきで. することにより,多州企業集団による法人所得. ある.. 税の支払いは実質的に免除される状態となり得. 4. 10 合算の欠如. る.またスローバックを要求しないことにより,. UDITPA は合算の必要性について言及して. 生産活動が行われている州は問題の所得につい. いない. 連邦最高裁判所は, 州によるユニタリー. ての課税権を放棄することとなる.. 事業に従事している法人への合算要求を容認し. 4. 14 税制優遇 III. ている.しかしすべての州が合算を要求してい. 連邦最高裁判所は,最近,オハイオ州による. るわけではない.合算要求の欠如は,企業集団. 州内の新規投資に対する税額控除が違憲である. に移転価格の問題や高税率国から低税率国への. と判示した 2004 年の裁判例を取消した18).さ. 所得の移転を許すこととなり得る.. らに,合衆国憲法は,連邦議会に,この分野の. 4. 11 合算における統一性の欠如. あらゆる最高裁判所判決を無効にする権限を与. 合算を要求ないし認めている州は,ユニタ. えている.連邦議会が前述の原則と整合しない. リー事業についての同じ定義を持ちあわせてい. 州税制優遇を容認することは起こり得ることで. るわけではない.連邦最高裁判所は,多様性を. ある19).. 容認した.この不一致は(訴訟費用を含む)コ. 5.醜い部分:制度上の失敗. ンプライアンス及び行政コストを増加させ,そ. 望ましくない結果(課税漏れと二重課税,不. して課税漏れあるいは多重課税の可能性を引き. 公平,経済的な歪み,不確実性,過度のコンプ. 起こす.. ライアンス及び行政コスト,租税軽減計画の機. 4. 12 税制優遇 II. 会)が,理想的な原則から外れる領域において. 税制が経済活動のインセンティブとして機能. 発生する.. するよう設計されることがある.おそらく法人. 5. 1 事例研究 I 司法 の 放任 と 過度 に 制約 が. 税制で最も言語道断な行為は,売上高のみを基. 多い連邦制定法. 準とした配賦で近隣窮乏化政策を行うことであ. P. L. 86─272 は,興味深い歴史上のシーケン. る.ユニタリー事業に従事している関連法人の. スを伴う.. スローバックあるいは合算を要求しないことも. 5. 2 事例研究 II 制定法による統一性の欠如. 同様に競争上の手段として用いられる可能性が. 連邦議会による州所得税の包括的な研究を義. ある.後者は,所得を低税率州または法人所得. 務づけた Willis 勧告により州法人所得税の抜本. 税の存在しない州に移し替えることを容易にさ せる. 4. 13 途方もない 3 つの組合せ P. L. 86─272 の過度に制約が多いネクサス基 準及び売上高のみを基準とした配賦は,法人が わずか,またはまったく州法人所得税を支払わ. . 18)Cuno v. Daimler Chrysler, Inc., 386 F. 3d 738 (6th Cir. 2004) ; 126 S. Ct. 1854(2006)56. 19)See Hellerstein, W. (2006) “Cuno and Congress: An Analysis of Proposed Federal Legislation Authorizing State Economic Development Incentives” 4 Georgetown Journal of Law and Public Policy, 73─100..

(11) 法人所得税の課税管轄権(伊藤). (73). 73. 的な改革の提案がなされた.州法人所得税は,. 6.州法人所得税の補完性と比例性. 州内の従業員または不動産の所在を基準として. 概して,州は比較的大きな租税主権を有し,. 統一の基準で課税されるべきであるとするもの. 費用便益の計算による正当化なしに,しばしば. である.. 無責任に主権を行使してきたようだと結論づけ. Willis 委員会の勧告は前述の租税帰属の原則. る.. と概括的に整合するものであるが, 多くの州が, Willis 委員会勧告 に よ る 実体法(substantive). Ⅴ.EU における法人所得課税. 及び手続法(procedural)において固有の租税. 1.3 つの基本的な政府機能の帰属. 主権を喪失することに異議を唱えた.州政府は. 現時点において,EU はいかなる租税も課し. 州の租税主権をかけた戦いで勝利したが,その. ていない.. 代償は大きい.州政府には複雑さと租税軽減計. 1. 1 マクロ経済の安定化. 画の機会,そして租税支出が残された.. 12 の加盟国が,既にユーロを国家の通貨と. 5. 3 事例研究 III 司法の不作為と制定法上の. している.しかし,EU には財政政策に必要な. 制約の欠如. 租税の措置が欠如しており,未だに加盟国の責. 1980 年代初期 ま で は,給与総額,資産,売. 任に残されたままである.財政政策の行使は,. 上高に均等の比重をかけた配賦計算式を用いて. 安定成長協定の拘束をうける.とくに,各加盟. 所得帰属が行われていた.しかし,アイオワ州. 国の財政赤字は,国内総生産(GDP)の 3% 以. は売上高のみの計算式を用い,特異な州として. 下に抑えることが要求されている.. 際立っていた.この近隣窮乏化政策の結果は必. 加盟国による投資税額控除および加速度償却. 然的に課税の相違と重複を生じさせた.それ. は,前述の原則と整合しない.. にもかかわらず,連邦最高裁判所は,1978 年,. 1. 2 所得分配. 売上高のみを基準とした配賦は通商条項に違反. EU は,所得再分配の役割をもたず,加盟国. 20). しないと判示した .この判決により,いくつ. の責任に留めている.個人所得税は所得再分配. かの州が,法人の経済活動を惹きつけるまたは. の最も重要な道具であるが,法人所得税は個人. 他州のそれに対する防御として,売上高のみを. との関わりのある部分(たとえば,配当の二重. 基準とした配賦か,または売上高の比重を他. 課税軽減 の た め の イ ン ピュテーション 方式 な. の 2 倍以上とする計算式による配賦へと移行し. ど)のみ該当する.. た.. 1. 3 資源配分. 5. 4 事例研究 IV 司法上容認された置き去り. 加盟国により課せられている法人所得税は,. Geoffrey 事例において裁量上訴の受理をし損 ねた連邦最高裁判所の失敗は,結果として,あ. 資源配分 を 妨 げ る 可能性 を 有 し て い る.ECJ. る州は州外法人に対して州内に無形資産を有し. の指令による積極的調和化の両面で,この妨げ. ているという根拠で積極的にネクサスを主張. が生じた場合に防止あるいは軽減することが可. するようになった(これを Geoffrey nexus とい. 能である.. う) .. 2.加盟国の法人所得税制の設計. 5. 5 過去を悔やむ. EU における法人所得税は,前述の「Ⅲ.租税. 短い事例研究で,歴史の長い影を例証する.. 帰属と下位国家所得税制の設計」の理想から実. の判決を通した消極的な調和化と,閣僚理事会. 質的に多くの点で乖離している.個々の加盟国 . 20)Moorman v. Bair, 437 US 267(1978).. はそれぞれの税制をもつ国家であり,連邦制で はなかったという歴史的な事実を反映している..

(12) 74. (74). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 1 号(2011 年 7 月). 2. 1 法人所得課税のための有益な前提条件. 失控除を認めないとすることを(納税者が源泉. 最近の国際会計基準の採択まで, 企業会計は,. 地の加盟国で損失控除する術を全て使い果たし. 各加盟国のルールの適用を受けた.多様性は課. た場合を除き)容認した22).. 税所得の定義の調和を困難なものとする.. 2. 7 国際租税問題. 2. 2 居住地ベースの課税. 加盟国は,他の加盟国を含む外国政府と租税. 居住地ベースの課税は EU において非常に顕. 条約の調印を行う.. 著である.ある加盟国は国外源泉の事業所得を. 2. 8 租税競争. 免除するが,ある加盟国は居住者の全世界所得. 欧州委員会は,租税競争は有益であるが,た. を課税し外国税額控除の利用を認めている.居. だし税率に限定されるべきであるとしている.. 住地 ベース の 課税は,勿論, 「Ⅲ.租税帰属と. しかし現時点では,加速度償却のような投資イ. 下位国家所得税制の設計」でみた原則と整合せ. ンセンティブも用いられている.. ず,このような課税は単一市場に存在するべき. 2. 9 租税以外の誘因. ではない.. EC 条約は,一定の厳格な条件を満たす場合. 2. 3 課税する管轄区域. を除き,国家助成を禁止し,欧州委員会は禁止. EU 加盟国は,恒久的施設に課税することを. された国家助成であると思われるものに対して. 基礎とする.これは,役務と無形資産が遥か遠. 果敢に挑んでいる.. 方から配達されることがあり得るデジタルの世. 2. 10 制度上の行き詰まり. 界において,ますます不確かなものであり,そ. ECJ に持ち込まれたあるいは持ち込まれる. して不適当である.. 可能性が高い事例の多くが,これらの課題,た. 2. 4 所得の多様な定義. とえば,居住地ベースの課税,損益通算の制限,. EU 加盟国は,同じ課税標準の定義を用いる. 過少資本,外国税額控除,そして租税条約のイ. 必要がなく,そして実際に用いていない.. ンプリケーションといった課題と関連する.. 2. 5 所得の配賦. 2. 11 歴史の長い影. 分離会計/独立企業原則(SA/ALS)が,関. 「Ⅲ.租税帰属 と 下位国家所得税制 の 設計」. 連法人の所得算定に用いられている.EU の経. でみた類型からの逸脱は,歴史を反映するもの. 済統合の高まりは,この制度をますます不適当. である.. なものとするであろう.移転価格についての文. 3.進むべき方向性. 書化は,とくに厄介になるであろう.ECJ が. 経済統合が深まるにつれ,分離会計/独立企. 開業の自由に反することを指摘. 21). した過少資. 業基準(SA/ALS)はますます問題となるであ. 本税制のルールは,合算と定式配賦法を用いた. ろう.居住地ベースの課税は,ますます不適当. 制度においては必要なくなるであろう.. なものとなる.. 2. 6 合算/損失との相殺 前述の所得測定の問題に加え,ある加盟国に. Ⅵ.結 論. 帰属する損失について,しばしば他の加盟国. EU における法人所得税の調和化は,迅速に. に帰属する利益との相殺が認められていない.. は行われないであろうが,加盟国は条約に署名. Marks & Spencer 事例 に お い て,ECJ は,居住. をしているのであるから,いずれは達成され,. 地の加盟国が他の加盟国の子会社から生じた損. その際には,アメリカのような大雑把にだけ準. . . 21)Lankhorst-Hohorst GMBH v. Finanzamt Steinfurt, Case No. C-324/00[2002]E. C. R. 1179.. 22)Marks & Spencer, Case No. C-446/03[2005] E. C. R. I-10837..

(13) 法人所得税の課税管轄権(伊藤). (75). 75. 拠した州の税制よりも,いっそう理想に近い形. 主張されており,また他方で,そのオリジナル. で EU の法人所得税は調和化されるものと著者. であるアメリカの州税計算においても,既に今. は信じている.. 日では伝統的なマサチューセッツ方式(資産,. 3.分析とコメント. 給与,売上高の 3 要素均等の加重平均計算)に よる配賦はむしろ少数派25)で,売上高のみあ. 以上 が McLure 論文 の 概要 で あ る が,そ の. るいは売上高の比重を高めた計算式を用いる州. 中核であるアメリカの州税の計算で用いられて. が増加の一途を辿っている.. い る 定式配賦法(ユ ニ タ リー事業 か ら 稼得 さ. ハミルトンプロジェクトは,「売上高」のみ. れた所得を合算し,これを一定の計算式で配. を配賦基準とすることについて,労働者や資産. 賦する方法)を国際取引に用いる構想それ自. と比較して消費者の方がモビリティ(可動性). 体は,特段目新しいものではない.ここ最近. が低いことを理由として挙げている26).つまり,. 10 年間の動きを見れば,欧州委員会は 2001 年. 伝統的なマサチューセッツ方式は,企業の高税. に 域内所得 に つ い て の 共通連結法人課税標準. 率国内の労働者や資産を減らす意思決定のイン. (CCCTB)とともに定式配賦法の必要性を欧州. センティブに繋がるという主張である.さらに,. 委員会 の 戦略目標 の な か で 発表 し23),2004 年. 今日のアメリカの州税の動向を根拠に,ある国. には加盟国とともにワーキンググループを発足. が「売上高」のみを基準とする配賦計算式を採. している . また,アメリカにおいては,2006 年. 用することで,他国も追随せざるをえなくなる. にブルッキングス研究所のハミルトンプロジェ. であろうと論じている27).. ク ト で,Clausing 教授 と Avi-Yonah 教授 の 両. これについて,賃金水準や物価水準の高い先. 名により,多国籍企業への定式配賦法の採用が. 進国においては,雇用の流出(国内雇用の喪失). 24). 提唱されている .前者は,欧州連合の加盟国. という事態は是が非でも回避したいところであ. 間の所得配賦を対象としており,後者は,より. り,加えて,輸入額が輸出額よりも超過する輸. 広く世界の国々の間の所得配賦を対象とするも. 入大国のアメリカ28)にとっては税収増加も期. のである. McLure 論文で特筆すべきことは,配賦計算 において「売上高」という単一要素による配賦 を厳しく非難している点である. ハミルトンプロジェクトにおいては, 「売上 高」を基準とした配賦計算を行うことが明確に . 23)Commission of the European Communities (2001) , “Towards an Internal Market without Tax Obstacles: A Strategy for Providing Companies with a Consolidated Corporate Tax Base for Their EU-wide Activities”, a Communication from the Commission to the Council, the European Parliament and the Economic and Social Committee, COM(2001) 582 final. 24)Clausing, Kimberly A. and Avi-Yonah, Reuven S.(2007) , Reforming Corporate Taxation in a Global Economy: A Proposal to Adopt Formulary Apportionment, Brookings Institution.. . 25)Conklin, Fred(ed.) (2008) , 2009 U.S. Master Multistate Corporate Tax Guide, CCH, ¶102 によれば, マ サ チューセッツ 方式(給与,資産,売上高 の 3 要素均等 の 加重平均計算)に よ る 配賦基準 の 適用 を例外なく要求している州として,アラバマ州, アラスカ州,デラウェア州,ワシントン特別行政区, ハワイ州,カンザス州,モンタナ州,ニューメキ シコ州,ノースダコタ州,ロードアイランド州の 計 9 州と 1 特別行政区が挙げられている.2006 年 以降に,売上高のみの単一配賦基準に変更した州 が多いのが目立つ.また,マサチューセッツ方式 と売上高のみによる単一配賦基準を法人が選択で きる州(ミズーリ州)や,製造業のみ売上高のみ による単一配賦基準が適用される州(メリーラン ド州)もある. 26)Clausing, Kimberly A. and Avi-Yonah, Reuven S.(2007) , supra note 24, 12─13. 27)Ibid. 28)アメリカの貿易収支は 1976 年以降一貫して 赤字である.U.S. Census Bureau,(June 10, 2010) “U.S. Trade in Goods and Services - Balance of.

(14) 76. (76). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 1 号(2011 年 7 月). 待できることから,今後とも売上高のみによる. うち,資産(土地や生産設備)及び給与(労働者). 単一配賦基準の主張を固持することが予想され. は,所得の源泉地を反映するものである.これ. る.. は,企業が生産活動にあたり享受する公共サー. しかし,McLure 論文が指摘しているように,. ビスの便益ともロケーションの点で一致するも. 売上高のみを基準とした配賦は,配賦計算式は. のである.他方で,売上高による配賦は,財ま. 所得の発生地を反映するべきであるとする原則. たは役務の消費地を反映するものであり,この. に反しているといえよう.つまり,土地や生産. 点で資産,給与とは性格を異にする.. 設備(資産)と労働者(給与)は,昔も今も間. また,売上高のみを基準とする配賦について,. 違いなく所得を生むための生産要素であり29),. McLure 論文でも指摘されている州税のスロー. これらを一切無視する方法は不合理と言わざる. バック条項の欠如の実態を無視することはでき. をえない.. ない.これを仮に国際取引にあてはめた場合,. 一方で,ブランドなどの無形資産の重要性が. 企業は無税国へ輸出を行うことにより,コンス. 高まっている近時の経済社会において,市場で. タントに租税負担を減少させることが可能とな. はその価値を加味したうえで取引が行われてい. る.これは実質的に輸出補助金の機能を果たし. ることに鑑みれば,その取引の客観的記録であ. ていることとなる.. る売上高を配賦基準の一つの要素として考慮に. なお,売上高を基準として配賦を行う場合,. 入れることも一理あるといえよう.ただし,そ. 財または役務の「消費地」で課税が行われるこ. れはあくまでも全体のうちの「一つの要素」に. ととなるであろう.ここで売上先は,形式的な. すぎず,資産や給与を無視して売上高のみで配. 仕向地ではなく,「消費地」とするべきである.. 賦することまでもが正当化される訳ではない.. なぜならば,もし仮に仕向地とした場合,企業. さて,企業活動が高度に国際化した今日にお. は低税率国の(合算対象とならない)流通セン. いて,企業が事業拠点をどこの国地域に配置す. ターにいったん商品を輸出し,この低税率国経. るかは,グループ全体の利益最大化を託された. 由で全世界の最終消費地に輸出を行うことで,. 経営者の裁量であり,その意味で(企業経営者. 輸出分全体について低税率の恩恵を受けること. の立場からは) ,各国地域の法人所得税は利益. が可能となる為である.企業が需要喚起を目的. を稼得するための費用として捉えられることと. に実際に販売・マーケティング活動を行い,ブ. なる.企業経営者は,事業拠点への投資意思決. ランドを構築しているのは「消費地」の方であ. 定にあたり, 費用対効果を予測して評価を行う.. り,単なる中間経由地に過ぎない仕向地におい. 30). つまり,インフラの整備状況等の諸条件. と. てではない.もっとも,財または役務によって. ともに,その国地域の法人所得税を考慮するで. は,消費地を把握することが困難な場合も予想. あろう.マサチューセッツ方式による 3 要素の. されるだろうから,その場合,消費地における 企業活動(販売・マーケティング活動)を表す. . Payments(BOP)Basis”, available at http://www. census.gov/foreign-trade/statistics/historical/ gands.pdf. 29)有名 な ア メ リ カ の マッコ ン バー判例 に よ れば,所得は,資本,労働,またはその結合から 稼得されるものとされている(Citation Eisner v. Macomber, 3 AFTR 3020, 252 US 189, 1 USTC ¶ 32(US, 1920)). 30)企業活動に必要となる諸要素.生産拠点で. 何らかの別の尺度が必要となるかもしれない. ところで,そもそも消費地による消費行為の みを基準として配賦される租税を,もはや所得 税と呼ぶことができるのであろうか.売上高の . あれば,たとえば,電力事情や,教育訓練を受け た労働者を集めることの容易さや賃金水準,最終 消費地との経済的距離等々を含む総合的な要素..

(15) 法人所得税の課税管轄権(伊藤). (77). 77. みを基準とした配賦計算の主張者は,早々と法. 状況を生じさせることを警告している点で,高. 人所得税の将来に見切りをつけ,消費ベースの. く評価できる31).. 課税への移行を見越しているのであろうか.. ところで,先進各国の財源が法人所得税に多. また,なし崩し的に売上高のみを基準とする. くを依存している現時点において,法人所得税. 配賦計算式が広まるという主張については,あ. の国際的調和化実現の前には,高い壁が聳えて. くまでもアメリカ国内の州税の動向を根拠とし. いるように思われる.各国はその主権を手放す. たものであり,将来的な国家間における制度設. ことを惜しむことが予想されるからである.し. 計の制約条件とするべきではない.むしろ,所. かし,仮に将来的に先進各国の財源に占める間. 得の源泉地を反映する適切な配賦計算式(つま. 接税等の比率が徐々に高まり,法人所得税の割. り売上高のみによる配賦ではないもの)を多く. 合が相対的に低下する際には32),コンプライア. の国々が協調して採用するにあたり必要な枠組. ンスコストや行政コストの削減にそれまで以上. みを,建設的に議論していくべきであろう.. に目が向けられるようになり,皮肉にも,国際. 端的に言って,売上高のみを基準とする配賦. 的調和化の機運が高まるであろう.その時に備. 計算式は,現状でアメリカを含む一部先進国に. え,今から定式配賦法とその採用にあたり必要. とって一方的に有利なものであり,他の国々が. な枠組みを議論しておくことは有用である.. 協調して採用するとは考えづらい. 法人所得税が「所得税」である限り,定式配 賦法の採用にあたっては,所得の発生地を反映 する適切な配賦計算式の使用が不可欠であろ う.今回 の McLure 論文 で は,そ の 正解 を 示 しているわけではないが,アメリカの州税の歴 史を検討し,仮に国際取引に売上高のみを基準 とする配賦計算式を用いた際には好ましくない . 31)McLure 論文の大きなモチーフである,建 国当初から連邦制のアメリカとそうではないEU を対比し,それぞれの論点を整理した点は,多くの 示唆に富むものがある.EUにおける法人所得税 の調和化は,徐々にではあるが現に進行しており, そこで,アメリカにおける様々な教訓は,これか らという段階のEUにとっても大いに参考となる はずである.本稿は,そのなかでも売上高のみを 基準とする配賦計算式について,将来的な国際的 調和化への拡張を視野に,問題意識を投げかける ものである.EU域内のみならず,将来的に広く 国際的な法人所得税調和化の機運が高まるであろ う際には,アメリカ型の当初からの連邦制モデル ではなく,むしろ今後のEUのような段階を踏む モデルとなることが予想される.配賦計算式は, 定式配賦法のいうならば肝であり,各国を納得さ せることができる合理的なものを用意しなければ ならないのである.つまり,合理的でないとする ならば,従来の方法よりも減収となる側は当然に 反対をし,やがて行き詰まることとなるであろう.. 参考文献 Avi-Yonah, R. S. (2002) “For Havenʼs Sake: Reflections on Inversion Transactions” 27 Tax Notes International, 225─31, Clausing, Kimberly A. and Avi-Yonah, Reuven S.(2007) , Reforming Corporate Taxation in a Global Economy: A Proposal to Adopt Formulary Apportionment, Brookings Institution. Conklin, Fred(ed.) (2008) , 2009 U.S. Master Multistate Corporate Tax Guide, CCH. Commission of the European Communities (2001)“Tax Policy in the European Union ─P r i o r i t i e s f o r t h e Y e a r s A h e a d , ” a Communication from the Commission to the Council, the European Parliament and the Economic and Social Committee, COM (2001)260 final. Commission of the European Communities(2001) , “Towards an Internal Market without Tax Obstacles: A Strategy for Providing Companies with a Consolidated Corporate Tax Base for Their EU-wide Activities”, a Communication from the Commission to the Council, the European Parliament and the Economic and Social Committee, COM(2001)582 final.. . 32)背景として,たとえば法人所得税の国際的 な 競争環境 や 法人所得税収 が 景気(法人所得)に 左右されるという不安定性があげられる..

(16) 78. (78). 横浜国際社会科学研究 第 16 巻第 1 号(2011 年 7 月). Desai, M. A. and Hines, J. R.(2003)“Evaluating International Tax Reform” 56 National Tax Journal, 487─502. Hellerstein, W. and McLure, Jr., C. E.(2002) “D o e s S a l e s - o n l y A p p o r t i o n m e n t o f Corporate Income Violate International Trade Rules?” 25 State Tax Notes, 779─86;(9 September 2002)27 Tax Notes International, 1315─23;(Winter 2003)3 CES/ifo Forum, 23─ 30. Hellerstein, W.(2006)“Cuno and Congress: An Analysis of Proposed Federal Legislation Authorizing State Economic Development Incentives” 4 Georgetown Journal of Law and Public Policy, 73─100. Lang, M. (2006) “Double Taxation and EC Law” Avi-Yonah, Hines & Lang(eds.), Comprehensive Fiscal Federalism, Chapter 2. Martín Jiménez, A. J.(1999)Towards Corporate Tax Harmonization in the European Community: An Institutional and Procedural Analysis,The Hague: Kluwer. McLure, Jr. C. E.(1981)“Market Dominance and the Exporting of State Taxes” 34 National Tax Journal, 483─85. McLure, Jr. C. E.(1982)“Incidence Analysis and the Supreme Court: An Examination of Four 1981 Case” 1 Supreme Court Economic Review: The 1980 Term, New York: Macmillan Publishing Company, 69─112.. McLure Jr. C. E.(2000)“Tax Assignment and Subnational Fiscal Autonomy” 54 Bulletin for International Fiscal Documentation, 625─35. Musgrave, R. A.(1959)The Theory of Public Finance, New York: McGraw-Hills. Musgrave, P. B. (1987) “Interjurisdictional Coordination of Taxes on Capital Income” in Tax Coordination in the European Community, S. Cnossen(ed.) , New York: Kluwer Law and Taxation Publishers, 197─225. Reid, T. R.(2004)The United States of Europe, New York: Penguin Press. Shaviro, D.(1992)“An Economic and Political Look at Federalism in Taxation” 90 Michigan Law Review. U.S. Census Bureau,(June 10, 2010)“U.S. Trade in Goods and Services - Balance of Payments(BOP)Basis”. US Department of the Treasury (2002) “Corporate Inversion Transactions: Tax Policy Implications”. Wattel, P. J.(1996)“Home Neutrality in an Internal Market”, European Taxation, 159─62. Weiler, J. H. H.(1991)“The Transformation of Europe”, 100 Yale Law Journal, 2403─2483. [い と う き み や 横浜国立大学大学院国際社会 科学研究科博士課程後期].

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