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手話を第一言語とする聴覚障害幼児のナラティヴの発達

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Academic year: 2021

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(1)手話を第一言語とする聴覚障害幼児のナラティヴの発達.            特別支援教育学専攻              心身障害コース.           M10101B 隅田伸子 I 問題と日的  聴覚障害児教育において、言語的なr遅れ」. が課題となっている。読む力に関しては、そ の伸びが小学3−4年で鈍化すること、語彙や. る。年齢は、3∼5歳までの計3名である。 2.調査手続き  対象児と母親とのやり取りの中で,産出さ れるナラティヴを分析対象とした。ナラティ. 文法に量的・質的な問題があり、書く力に関. ヴの内容として,対象児が日ごろから読んで. しては文法や表現力に関わる問題をはじめ、. いる絵本を用いた絵本場面,学校での出来事. 内容に乏しく、構成の工夫的変化があまり見. など過去経験の報告場面,文字を消したによ. られないといった問題がある(河野2009)。. る作話場面を設定し,そこで産出されるナラ.  近年、ことばの発達を考える上でナラティ ヴに注目が集まっている(Feagans&. ティヴの分析を行った。また上記以外に,対. Appe1baum,1986Ne1son,2004)。ナラティ ヴとは,ストーリー(Sto町)と同義に扱われ. 象児の好む話題,話しやすい話題に関しても 自由に話してもらい、ナラティヴを収集した。. ることも多く,語りや物語とも訳される。具 体的には自己の経験や空想の物語などにつ. “OxおraReadingTree”とは,イギリスの 約80%以上の小学校で採用されている国語 の教科書。また,幼児向けの英語教材として. いて語る行為,および,そこで語られたもの. も用いられている。8∼12頁の短いお話し. をさす(仲野・長崎,2009)。ナラティヴを産出. の中に起承転結が分かりやすく盛り込まれ ている。今回は対象児の年齢を考え,Stage. するためには,出来事の因果関係や時間的関 係,物語としての文法の発達が必要となる (荻野,2002)。話しことばから書きことば. 1+(4∼5歳児向けのレベル)を選択した。. への橋渡しとして語ること(ナラティヴ)の 発達は大変重要であると考えられる。. 3.調査期間  概ね月.1回程度家庭訪問し、ナラティヴを 収集した。本論文で分析対象としたのは、.  音声言語におけるナラティヴの研究は. 2011年4月∼2011年9月までの計6回分で. 様々に行われている(内田,1989.1990西 川,1995野本・長崎,2007など)が,聴覚障 害幼児の手話によるナラティヴの発達に関 する研究の蓄積は十分であるとは言えない。  そこで,本研究では、手話を第一言語とす る聴覚障害幼児のナラティヴの特徴、またそ れを引き出すために周囲の大人の働かきか けがどのように行われているのかを検討し. ある。. た。. 4.分析方法  身ぶり、手話・指文字、音声記録を文字化 し、それを元に対象児の発話、母親の発話、 話の展開構造が年代によりどのような違い が見られるのか比較・分析を行った。分析カ テゴリーとしては、木下(2006)の分析方法 を参考とし、産出されたナラティヴを元にカ テゴリーを新たに追加、削除し独自の分類カ. 皿.研究の方法. テゴリー表を作成した。. 1.対象児  健常児において,ナラティヴの内容が不完 全なエピソードから完全なエピソードヘと 大きな変化がみられる幼児期に注目し,本研 究においても対象児の年齢範囲とした。対象 児は、両親が聴覚障害を有している家庭(デ フファミリー)であり、手話を第一言語とす. (1)ナラティヴの種類一過去経験、絵本場面、 仮定の話、テーマ話題、作話場面(2)対象児の 物語の展開構造一設定、説明(事物)(人物)、. 心的反応、結末(3)母親の発話機能一引用、付. 加、情報要求(W11質問、地s−no質問)、応. 答、否定の各カテゴリーに発話を分類し、分 析を行った。. 一194一.

(2) 皿.結果.  対象児の年齢によって母親の質問形式は.  絵本場面・過去経験の語りを通して、3歳. 異なり、3歳児であれば母親が内容を精緻化. 児では一人で語りを構成することは難しく、. し、確認する意味で篶S’no質問や眼前のも. 母親など他者とともに共同で作りあげる様 子が見られた。語りの中で指さしを多用する. のを対象としてrこれは何?」などと質問す ることが多かった。4歳児であれば、3歳児. ことにより、眼前のものを中心とした語りが. 同様に眼前のものの説明を求める質問や母. 行われていた。また手話表現が分からない場 合に、指差しを行い母親に表現を求める様子. 親が選択肢を提示して答えさせるwhich質 問が多かった。5歳児であれば話の内容につ. が見られ、母親の表現を真似て表現すること. いて「なぜ?」「どのように?」といった質. で語彙獲得が行われていた。登場人物の心情. 問が多く、対象児に説明を求めることが多か. や自己経験を通してどのように感じたかな. った。本研究を通して、母親の働きかけが年. どは母親が代弁する、もしくはロールシフト. 代により違いが見られること、また年齢が上. を用いることで自分以外の第三者の心的反 応を発話していた。. がるにしたがって母親の働きかけが減って いくということが分かった。. 1V.総合考察. 4歳児では、事物の説明の際には母親からの 働きかけに答える形で話が展開していた。自.  先行研究において、聴覚障害児が物語にお. 発的な発話が見られる場合はあるものの、1. いて自己及び他者の心的状態への言及に問. 語である場合が多く母親が再度質問するな. 題を持っ可能性を示唆している(長崎・鈴. どしてその発話の意味や意図をより具体的. 木・長崎,2000)。しかし、本研究において. にしようとしていた。また、人物に関する説. 手話によるナラティヴを分析した結果、3歳. 明を行う際には事物の説明に比べて自発的. 児・4歳児においては母親からの働きかけに より心的反応が見られ、ロールシフトを用い. な発話が増えており、ロールシフトを用いて、. 登場人物の心的反応や行動が表情や動きに. ることにより登場人物の心的反応を表情や. より表現されていた。また、仮定の話を通し. 動きによって自発的に発話する様子が見ら. て自分の将来に関する語りが見られ、今・未. れた。また、5歳児においては語りの中に自. 来を含めた時間的な概念を獲得しているこ. 己及び他者の心的反応に関して発話するこ. とが分かった。心的反応に関しては、母親が. とができ、またなぜそのような感情を抱いた. 代弁するもしくは質問に対する応答として. かにっいての説明を加えて発話することも. 発話される様子が見られ、自発的な発話はあ. 可能であった。. まり見られなかった。話の途中で集中が切れ.  子どものナラティヴの発達は大人の援助. てしまい結末を見通した語りを行うことは まだ難しいように感じられた。. によるところが大きい。聴覚障害の有無を早 期発見することが可能となった今、より充実 した支援制度が求められている。家庭におい.  5歳児では、他者の働きかけをあまり必要 とせず一人で語りを行うことができていた。. て手話言語の保障をすることで、聴覚障害児 にとって聴児と変わらない言語環境を提供. 語りを行う際に、r設定」からr結末」に至 る枠組みを用いて展開しており大人の語り と変わらない展開構造を獲得していること が分かった。また、登場人物の心情や自分の. することができ、家族を中心とした身近な人 とのかかわりの中で、言語獲得はもちろんの こと、人への信頼、情緒の安定が育まれるの. 気持ちを自発的に語ることが可能であり、な. ではないだろうか。言語基盤を形成する幼児. ぜ自分・他者はその行動をとったのかなど意. 期において豊かなコミュニケーション環境. 図を理解し、状況の説明をすることができて. が求められる。. いた。母親の発話機能に関しては、記憶質間 主任指導教員 鳥越 隆士. (Whから始まる質問)が多く、対象児の発 話を引き出していたことが分かった。. 指導教員   鳥越 隆上. 一195一.

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