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小学校から中学校への移行期における時間的展望と適応の関係

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Academic year: 2021

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(1)平成22年度  学位論文. 小学校から中学校への移行期における    時間的展望と適応の関係. 兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 学校教育学専攻 学校心理学コース    MO9039H 山口 倫史.

(2) 目次 第1章 問題と目的.. .1. 第2章 研究1  1.目的....  2.方法.___.,.  3.結果._.___,.   時間的展望尺度の因子分析__.   時間的展望尺度の信頼性の検討.  4.考察_____._。___._.. 第3章 研究2  1.目的.__.____....            .9.  2.方法_。                     .9  3,結果___.___..__.            .10.   教育環境適応尺度(ASEH)の因子分析____.  .10   教育環境適応尺度(ASEII)の信頼性の検討___. .11   時間的展望が中学校における学校適応に与える影響。 .12   時間的展望の特徴による中学校の適応状態の違い_. .13.  4.考察_._.                  .17. 第4章 研究3  1.目的_____._...____.__._____._..._20.  2.方法____.。                 20.  3.結果_。.                   21   社会志向性・課題志向性測定尺度の因子分析_。    21   社会志向性・課題志向性測定尺度の信頼性の検討..  21   社会志向性・課題志向性が中学校における学校適応に与え   る影響..                      22.

(3)  社会志向性・課題志向性測定尺度の結果による分類.__23  志向性の特徴による時間的展望の違い__.______24  志向性の特徴による中学校の適応状態の違い._____24 4 考察____.__..__.__.__._._______25. 第5章 まとめと今後の課題_.._____..__.__.__.28. 引用文献..______..___.___.__.___._..__30. 調寸舌辛 .........一.....幽..り....幽 ....り.............,.......................9..一一..一.34. Appendix ”............”H................................................... 35.  ①フェイスシート.  ②時間的展望尺度.  ③教育環境適応尺度(ASEH)  ④社会志向性・課題志向性測定尺度.

(4) 第1章 問題と目的  小学校から中学校への移行後において,不登校やいじめ,及び非行 等の問題行動が増加することは広く知られている。文部科学省(2008,. 2009,2010)によると,小学校6年生と中学校1年生を比較すると, 不登校者数が約3倍,暴力行為の加害児童生徒数は約6倍に増加する ことが毎年報告されている。この移行について,山本・S,ワップナー (1992)は「危機的人間一環境移行」のひとつであるとしている。この, 危機的人間一環境移行という考え方は,Wapner, Kaplan&Cohen.(1973). の有機体発達論に基づいている。小学校から中学校へと進学すること. は,環境の変化と個人の発達的変化という2つを同時に体験する移行 であり,まさしく危機的な移行である。中学進学後に不登校や暴力行. 為等が激増する中1ギャップとも言われる現状につながる背景にはこ のような危機の存在が考えられる。.  小学校から中学校への移行期に関する研究は数多く存在し,多くの 研究が,中学校移行のネガティブな影響を報告している。特に米国に おいては,Wigfield, Eccles, Iver, Reuman,&Midgeley(1991)は. 生徒の有能感,Harter&K・walski(1992)は有能感と内発的動機づけ,. Berndt, Hawkins,&Jiao(1999)は友人関係について, Simmons, Burgeson, Carlton−Ford,&Blyth(1987)及びSeidman, Allen, Aber,. Mitchell, &Feinman(1994)は自尊感情について,それぞれ中学校入. 学後に悪化あるいは低下するとしている。  また,わが国では,小泉(1995)は,中学校入学に向けての期待・不 安の構造を明らかにし,移行後の適応との関係を検討,小野寺(2009). は,学校嫌い感情,自尊感情,ストレス反応等が中学校入学後にどの ように変化していくのかについて検討している。このようにわが国で も,移行期に関する調査は行われているが,小学校と中学校を縦断的 に調査し適応の変化について検討したものは少ない。.  過去・現在・未来の関係性をとらえる研究の一つに「時間的展望研 究」がある。Lewin(1954)は場の理論において,生活空間を構1成する                1.

(5) 要素として時間的展望(time perspective)を位置づけ,個人の生活空. 間は現在だけでなく,過去や未来も含んだものであるとした。都筑は 時間的展望について,目標や計画を中心にした場合,「個人の心理的 な過去・現在・未来の相互連関過程から生み出されてくる,将来目標・. 計画への欲求,将来目標・計画の構造,および,過去・現在・未来に 対する感情」(都筑,1999,p.36)と定義している。本研究では,時間. 的展望について,この定義に基づき研究を進める。  都筑(2004a, b)は小学校4年生から中学校3年生までを対象に,縦. 断的な調査を行った。この調査の中で,都筑は児童生徒用の時間的展 望尺度を用いることで,時間的展望について,①学年が上がるととも に将来の希望が弱まり,空虚感が強まるとともに計画性が低くなるな どの発達的な変化があること,②過去の自分や現在の自分に対する評 価や価値づけを通して時間的展望が形成されるということ,③不安と 期待の感情が組み合わされたときには,時間的展望に対し肯定的な影 響があること,④適応に関しては,学校を避ける傾向にある群は将来 の希望が持ちにくいこと,などを明らかにしている。  しかし,この研究は時間的展望の調査項目を「将来の希望」,「空虚 感」,「将来目標の渇望」,「計画性」の4因子で構成している。これは,. 未来に重点が置かれたやや限定的なものとなっており,過去・現在・ 未来の相互連関過程を包括的に捉えようとしたものではない。また, 適応についても,「学校への意識」(授業が楽しい,行く気がしない). と「不定愁訴」(肩がこる,夜眠れないなど)に関する9項目を調査し たのみにとどまっている。.  このように国内外において,小中移行期についての研究は数多くさ れてきているが,未来や現在,過去といった時間の流れまでも視野に 入れ,適応とそれに関連する事象についての研究は,まだ十分に深め られていないのが現状である。.  時間的展望に関する質問紙には,白井(1997)の時間的展望体験尺度 や都筑(1999)の目標意識尺度などがある。白井(1997)の時間的展望体. 験尺度は,大学生・専門学校生を対象に開発されたものであり,小学                2.

(6) 生への適用例はない。都筑(2004a)は,大学生用に開発された都筑 (1999)を元にして,小学生対象の尺度を作成した。この尺度は10項 目からなり,「将来の希望」「空虚感」「将来目標の渇望」「計画性」の. 4因子で構成されている。時間的展望に関する質問紙の中では,数少 ない小学生対象の尺度であるが,過去に関する時間的展望については 測定することができない。そこで,本研究では,白井(1997)をもとに,. 都筑(2004a)の小学生に配慮されている項目を取りこみ,時間的展望. について過去・現在・未来の全体を測定できる,小学生にも適用可能. な時間的展望尺度を研究1で作成する。そして,移行期の児童・生徒 が,過去と現在と未来についてどのような時間的展望を有しているの かということと,現在,中学校移行において問題となっている学校適 応との関係について検討する。.  ところで,学校移行期における学校適応に関しては,対人関係と友 人関係が重要な役割を果たすことがいくつかの研’ ?ナ明らかにされ ている。Berndt et al.(1999)は,中学校移行の友人関係に関するネ. ガティブな影響を報告しており,また,Mitman&Packer(1982)や名 城・石川・嘉数(1986)によると,中学校移行をスムーズに行うために. は,対人関係が重要で,とりわけ友人関係が重要だとしている。これ らのことから,本研究では,学校適応感の測定のために,小泉(1997). の教育環境適応尺度(ASEH)を用いることとした。この尺度は,対 人関係,特に友人関係の項目が充実しており,また,小学校と中学校 を通じた縦断調査に適さない部活動についての内容を含んでいない。  次に本研究では,移行期の適応における要因として,動機づけを取 り上げる。学校適応において,個人の行動を生起させる大きな要因と して動機づけがあるとすれば,適応に関する調査をする上で,動機づ. けの面も考慮することは意義があるといえる。山本・S,ワップナー (1992)は有機体発達論の立場から,危機的移行に対する対処様式のひ. とつとして,「危機に際して起きる問題の性質を明らかにするために は,個人の欲求,能力,価値,習慣パターンもその限界を明確にしな ければならない」(p.22)と述べており,環境的な要因と同時に個人の.                3.

(7) 内面的な要素についても考慮することの重要性を指摘している。また 杉山(2002)は適応の概念について,近年,そのとらえ方に変化がある と指摘し,「従来のように単に疾病や障害がないという状態ではなく,. 積極性や問題解決能力等の側面も含めた,より包括的な概念としてと らえる傾向にある」(p.106)としている。中山(1995)は動機づけの中. でも社会的動機づけに焦点をあて,学校における個人の行動について. の研究をし,社会志向性と課題志向性という2つの動機づけの方向性 を概念化した。社会志向性と課題志向性ついて,中山(1995)はそれぞ. れ次のように定義している。社会志向性は,「対人関係や他者からの 評価といった社会的手がかりへの感受性が強く,それらの手がかりを 有効に利用しようとする積極的な対人興味」(p.40)とし,課題志向性 は「学習課題や課題解決過程そのものへの内発的興味」(p.40)として いる。この概念について,石田(2007)は,「内発的動機や社会的動機. といった従来の概念と類似しているが,学校という場が持つ課題や要 請との対応で概念化されている」(p.133)点が特徴的であると述べて. いる。中山の研究はこの2つの志向性と学習スタイルの好みや,共同 学習における行動などと関連していることを明らかにしている。しか し,学校適応との関連について調査したものではない。.  また,都筑・白井(2007)は,Nuttinが「時間的展望が認知・動機 づけ的な構成物である」とみなしていると指摘しており,時間的展望 の及ぼす動機づけ的な効果について,研究が深められてきている。白 井(1995)やレンズ・ヴァンスティーンキスト・シモンズ(2008都筑訳). など,海外での取り組みをまとめた研究は見られるが,わが国におい ては,実際に時間的展望と動機づけについて調査し,分析した研究は みられない。そこで,本研究では,社会志向性・課題志向性測定尺度 を用いて,動機づけのひとつである志向性と,適応,時間的展望の関 連について検討をする。. 4.

(8) 第2章 研究1 1.目的.  時間的展望について過去・現在・未来の全体を測定できる,小学生 にも適用可能な時間的展望尺度を作成する。. 2.方法 調査対象者=.  1回目(小学校での調査):X県Y市内のA小学校6年生57名(男. 子35名,女子22名)・B小学校6年生108名(男子60名,女子48 名).  2回目(中学校での調査):X県Y市内のC中学校1年生159名(男 子88名,女子71名) 調査内容=.  白井(1997),都筑(2004),都筑・白井(2007),都筑(2008)を参考に. 作成した,小学生にも適用可能と思われる15項目の質問紙尺度。「ア あてはまらない,イどちらかといえばあてはまらない,ウどちらとも. いえない,エどちらかといえばあてはまる,オあてはまる」の5件法 で回答が求められた。内容について,本調査の前に予備調査が行われ,. 小学生にも理解可能な内容であることが確認された。. 調査手続:.  調査に際し,①調査は成績やクラス分けとは無関係であること,② 調査結果は研究目的以外には使用せず,教員にも見せないこと,③回 答したくなければ回答しない権利があること,が教示された。また, 事前に対象校に調査協力依頼を行い,個人名は記入せず,小学校と中 学校それぞれの調査結果を出席番号でマッチングすること,成績とは 無関係であること,調査結果は研究目的以外にはいかなる用途にも用 いないことを伝え,了解を得た。調査の際は,調査者の教示のもとに                5.

(9) 質問紙調査を実施した。調査対象者は質問紙に無記名とし,クラス・ 出席番号のみを記入することとした。. 調査時期:.  1回目:2010年3.月9日.  2回目:2010年5月21日. 3.結果. 時間的展望尺度の因子分析結果.  尺度の因子構造を明らかするために,15項目について主因子法によ る因子分析を行った。固有値の減衰状況(4。12,1.97,1.21,1.01,. 0.94…  )から3因子構造が妥当であると考えられ,そこで再度3. 因子を仮定して主因子法一プロマックス回転による因子分析を行っ た。因子負荷量,因子の解釈の可能性を考慮した結果,最終的に3因 子13項目が検出された(Table 1参照)。第1因子は,「今の自分は本. 当の自分ではない気がする」や「毎日が同じことのくりかえしでたい くつだ」など現在に関連する項目で構成されているので,「現在の充. 実感」と命名した。第2因子は「大きくなってから何になりたいか決 めている」「私はこれから先のことはあまり考えないほうだ」など未 来に関連する項目で構成されているので,「未来への展望」と命名し た。第3因子は,「これまでの生活は楽しかった」「昔の思い出が大切. だと思う」など過去に関連する項目で構成されているので,「過去の 受容」と命名した。. 信頼性の検討.  本尺度の内的整合性を検討するために尺度全体と下位尺度で Cronbachのα係数が算出された。その結果,全体はα=.79で,下位 尺度においては「現在の充実感」α=.76,「未来への展望」α=.62,「過. 去の受容」α=.65であった。.                6.

(10) Table 1 時間的展望尺度の因子分析結果.          Fl. t4不満なことがたくさんある*. 11今の自分は本当の自分ではない気がする* 5毎日が同じことのくりかえしでたいくつだ* 2毎日がなんとなく過ぎていくように感じる* 15もう一度小さいころにもどってやり直したい*. 8毎日が楽しい 【未来への展望】α =.62. 1大きくなってから何になりたいか決めている 7大きくなったらやってみたいことがある. F2 F3 0 9 7∩乙8り6. 【現在の充実感】α=.76. .OO .14 ,08 .02 .32 一. 02. .07 .08 .18 .00 .32 .08. 1ii團lli. 4私はこれから先のことはあまり考えないほうだ* 【過去の受容】α=,65. 6これまでの生活は楽しかった 3過去のことはあまり思い出したくない* 9これまでに楽しい思い出がたくさんある 12昔の思い出が大切だと思う. 薫lii團.  *は逆転項.           因子間相関 Fl             Fl 一一一.             F2             F3 除外した項目. F2 F3. 一.38 一.48. 一 .51. 10私のこれから先のしょうらいは明るいと思う. 13はやく大人になりたい. 4.考察  尺度作成のもととなった白井(1997)は「現在の充実感」,「目標指向. 性」,「過去受容」,「希望」の4因子構造であったが,本研究における. 因子分析結果は,3因子構造を示した。これについては,大石・岡本 (2009)も,大学生を対象に本研究と同様の結果を導き出している。す なわち,大石・岡本(2009)は白井(1997)の尺度を使用し,因子分析(主 因子法一プロマックス回転)した結果,「未来志向性」,「現在充実」,「過. 去受容」の3因子を抽出している。項目については,本研究と同じよ うな内容の項目が因子的なまとまりを見せている。大石・岡本(2009). は,白井(1997)と異なった因子構造を示したことについて,白井 (1997)の調査対象者は,専門学校生を含んでいたが,大石・岡本(2009). の調査対象者は大学1・2年生であったからだとしている。つまり, 就職という未来に対する意識が低いため,目標指向性が未分化の結果,. 項目がまとまり,因子数が減少したことが考えられるとしている。本 研究の調査対象者は小6・中1と若年であるため,大石・岡本(2009). 同様, 調査対象者の目標指向性が未分化であったことが3因子構造                7.

(11) を示した理由として考えられる。.  一方,α係数の値が低いことについては,白井(1997)においても, α係数の値は.67∼.83であり,同様に谷(1998)でもα係数の値は.68. ∼.79であった。3因子構造の大石・岡本(2009)はα係数の値は.74. ∼.90であった。これらの研究以外でも,時間的展望についての質問 紙を用いた研究(比嘉・岡本,2007;園田・片岡,2008など)でもα係. 数の値が低い因子が見受けられる。本研究においても第2因子と第3 因子のα係数の値が若干低めではあるが,年齢,及び,同時実施の他 尺度との項目数のバランスを考え,調査協力者の負担軽減のためにあ えて項目の追加は行わなかった。.  以上のことから,本尺度は,時間的展望の過去・現在・未来を測定. 可能な,小学校6年生∼中学校1年生に測定可能な尺度であると考え られる。. 8.

(12) 第3章 研究2 1.目的.  小学校から中学校への環境移行期における時間的展望と学校適応の関 係を短期縦断的研究によって明らかにする。 2.方法 調査対象者:.  1回目(小学校での調査):X県Y市内のA小学校6年生57名(男. 子35名,女子22名)・B小学校6年生108名(男子60名,女子48 名).  2回目(中学校での調査):X県Y市内のC中学校1年生159名(男. 子88名,女子71名)        i 調査内容:.  本研究で作成した時間的展望尺度(15項目)と,小泉(1995)の作成 した教育環境適応尺度ll(ASEU)を使用した。 ASEIIは24項目から構. 成され,「アよくあります,イときどきあります,ウあまりありませ. ん,エほとんどありません」の4件法で回答を求めた。本尺度は,小 泉(1986)の教育環境適応尺度を元に対人関係の面を重視するべく改 良されたものであり,小泉(1996,1997)により小学校4年生∼中学校 3年生に適用可能なことが確認されている。 調査手続:.  調査に際し,①調査は成績やクラス分けとは無関係であること,② 調査結果は研究目的以外には使用せず,教員にも見せないこと,③回 答したくなければ回答しない権利があること,が教示された。また, 事前に対象校に調査協力依頼を行い,個人名は記入せず,小学校と中 学校それぞれの調査結果を出席番号でマッチングすること,成績とは 無関係であること,調査結果は研究目的以外にはいかなる用途にも用.                9.

(13) いないことを伝え,了解を得た。調査の際は,調査者の教示のもとに 質問紙調査を実施した。調査対象者は質問紙に無記名とし,クラス・ 出席番号のみを記入することとした。. 調査時期=.  1回目:2010年3月9日  2回目:2010年5,月21日. 3.結果. ASE皿の因子分析  ASE Hについては,小泉(1995)の因子構造ではαが低い部分も見ら. れることから,確認のための因子分析を行った。.  尺度の因子構造を明らかするために,24項目について主因子法によ る因子分析を行った。固有値の減衰状況(6.23,2.60,1.71,1.37,. 1.19,1.12,0.99…  )から5因子構造が妥当であると考えられ,. そこで再度5因子を仮定して主因子法一プロマックス回転による因子 分析を行った。因子負荷量,因子の解釈の可能性を考慮した結果,最. 終的に5因子22項目が検出された(Table 2参照)。因子数は小泉 (1995)と同じであるが,級友関係に関する因子がまとまり,学校生活. に関する因子が分かれる結果となった。第1因子は「先生は,自分た ちの気もちをわかろうとしていると感じることがありますか」「先生 とは,できるだけしゃべりたくないと思うことがありますか」など全 て教師に関する項目で構成されていたので,「教師関係」と命名した。. 第2因子は「私の学校には,気に入らないことがいっぱいあると感じ ることがありますか」「授業中にぼんやりして,別のことを考えてい ることがありますか」など学校生活を送る上での意欲に関する項目で 構成されているので,「学校生活への意欲」と命名した。第3因子は, 「クラスの中には,いい友だちがいっぱいいてよかったと思うことが. ありますか」「クラスの人と,あまり話したくないと思うことがあり.               10.

(14) ますか」などの項目で構成されているので「級友関係」と命名した。. 第4因子は学校生活について「私の学校はすばらしい学校だと思うこ とがありますか」「ほかの学校の人に,自分の学校での楽しいようす を話すことがありますか」などの項目で構成されているので,「学校. 生活の満足」と命名した。第5因子は「いっしょうけんめい勉強する ことがありますか」「テストのための勉強をしっかりやっていくこと がありますか」という項目で構成されているので「学習のための努力」 と命名した。. Table 2 ASE∬の因子分析結果 Fl. F2. F3. F4 F5. 【教師関係】α=.84. 3 先生は、自分たちの気もちをわかろうとしていると感じることがありますか. 19先生の教えかたはわかりやすいと思うことがありますか. .09 一. 04 一. 07 .09. 一. 77. 一. Ol .03 一. ou .11. .67. .15 .00 .os .02. .58. .32 .03 .14 一一.09. C 56. .11 .09 .22 一.23. .46. .35 .09 .09 .03. 一一. ハ0亡0膠OrO﹂等. 一.15 .11 .28. 一. 02 一. Ol. .13 .07 .03 .09. 一. 02 一. 04. .07. .22 .12. 18 自分は、クラスの人からあまりよく思われていないと感じることがありますか* 22 クラスの人といっしょに遊んだり、電話で話したりすることがありますか 【学校生活の満足】α=.69 8 私の学校はすばらしい学校だと思うことがありますか 24私の学校は、町の人からよく思われていると感じることがありますか. 16ぽかの学校の人に、自分の学校での楽しいようすを話すことがありますか 1 学校での勉強が楽しいと感じるときがありますか 【学習のための努力】α=.65 9 いっしょうけんめい勉強することがありますか 17テストのための勉強をしっかりやっていくことがありますか. .08 一.02 =29 .Ol .05 一,21 一.03 一.14 .15. 一.03 .28 .07. 7β4 0り乙FO 060ρ0[04. 【級友関係】α=.71. 6 クラスの中には、いい友だちがいっぱいいてよかったと思うことがありますか 14 クラスの人と話していて、楽しいと感じることがありますか 10 クラスの人と、あまり話したくないと思うことがありますか*. ﹂弓︻U41qリ. 7 先生とは、できるだけしゃべりたくないと思うことがありますか* 23 先生の言うとおりにはしたくないと思うことがありますか* 11先生に、何でも話しかけたり、たずねてみたいなと思うことがありますか 15 先生の言っていることは、まちがっていると思うことがありますか* 【学校生活への意欲】α=.75 4 私の学校には、気に入らないことがいっぱいあると感じることがありますか* 13勉強する気がしないと感じるときがありますか* 21授業中にぼんやりして、別のことを考えていることがありますか* 20 自分の学校のことを悪く言われて、そのとおりだと思うことがありますか* 12この学校はもういやだと思うことがありますか*. 一. 80. 一.07 .04 一. 07 .35 一. 02 .17. .02 .26. . 22 一. 07. . 07 一. 09. .12 .05 68 U0 S7. .08 一.30 一.15. .05 一. 11 一. 04. .08 .07 .10 .10 一.10 .04. .10 .09 .07 .31. =:ll:91:?1:ll国.                               因子闇相関  Fl.                                  Fl 一                                  F2                                  F3                                  F4 除外した項目                          F5. 2 5 F5一.   *ば逆転項目. F3. F4. F5. 一.05. 一.50. =28. =15. −27. 一,30. .34. .06 .18. 2 クラスの人について、「いやだ」、「気に入らない」と思うことがありますか. 5 勉強のやり方がわからなくてこまるときがありますか. ASEHの信頼性の検討. 本尺度の内的整合性を検討するために尺度全体と下位尺度で Cr・nbachのα係数を算出した。その結果,全体はα=.88で,下位尺 度においては「教師関係」. α=.76,「学校生活への意欲」      11. α=.84,「級.

(15) 友関係」α=.71,「学校生活の満足」α=.69,「学習のための努力」α =.65,であった。小泉(1995)のα係数は,小学校6年生の全体が.75,. 下位因子が.54∼.67,中学校3年生の全体が.76,下位因子が.54∼.72. であることから考え,本研究の因子分析結果のαは高くはないが,小 泉(1995)と同等の信頼性を有していると考え,この結果を採用するこ ととした。. 時間的展望が中学校における学校適応に与える影響  時間的展望尺度については,「アあてはまらない」を1点,「イどち. らかといえばあてはまらない」を2点,「ウどちらともいえない」を3 点,「エどちらかといえばあてはまる」を4点,「オあてはまる」を5. 点として得点化した。ASEnについては,「アよくあります」を4点, 「イときどきあります」3点,「ウあまりありません」2点,「エほと. んどありません」1点として,得点化した。両方とも,下位尺度得点 を算出する際,逆転項目については得点を逆転処理し合計した。時間 的展望尺度の「現在の充実感」は6点∼30点,「未来への展望」は3点∼. 15点,「過去の受容」は4点∼20点の得点範囲であった。ASEHの「教 師関係」は6点∼24点,「学校生活への意欲」・「級友関係」は5点∼20 点,「学校生活の満足」は4点∼16点,「学習のための努力」は2点∼8 点の得点範囲であった。.  時間的展望が学校適応に与える影響を検討するために,中学校にお ける教育環境適応尺度の下位尺度得点を基準変数,小学校・中学校そ. れぞれの時間的展望の下位尺度得点を説明変数として重回帰分析を 行った。その結果,Table 3に示したとおり,全ての基準変数におい. て,R2値が有意となり,時間的展望は学校適応に影響していること が確認された。時間的展望について,小学校・中学校別に見ると次の ような結果となった。.  小学校においては,現在の充実感は「学校生活の意欲」「級友関係」 「学校生活の満足」に対し,負の標準偏回帰係数が有意であった。過                12.

(16) 去の受容は「学校生活の意欲」「級友関係」「学校生活の満足」に対し,. 正の標準偏回帰係数が有意であった。また,未来への展望はどの因子 に対しても標準偏回帰係数が有意ではなかった。  中学校においては,現在の充実感は「教師関係」「学校生活の意欲」. 「級友関係」「学校生活の満足」に対し,正の標準偏回帰係数が有意. であった。過去の受容は「級友関係」に対し,正の標準偏回帰係数が 有意であった。未来への展望は「学習のための努力」に対し,正の標 準偏回帰係数が有意であった。過去の受容は「級友関係」に対し,正 の標準偏回帰係数が有意であった。. Table 3 時間的展望尺度を説明変数中学校におけるASE皿得点を基準変数とした重回帰分析(強制投入法) 中学校適応   教師関係   学校生活の意欲   級友関係   学校生活の満足学習のための努力.      n=153 n=154 n=153 n=154 n=154   現在の充実感    一.10. 一,24 *. =27 *. 小学校  未来への展望    .04. 一,Ol. 一.03.    ’ の      .12. 一.23 * .08. 一.15 一.10. ,24 **. .27 **. .23 *. .12. .31 **. .56 ***. .29 **. .30 **. .10. 中学校  未来への展望. .14. .21. .10. .10. .24 *.    ’ の. .14. ,01. .24 *. .1 1. .02. .34 ***. .24 ***. .17 ***. .13 **.   現在の充実感.     nv *ρ〈.05 **ρ〈.01***ρ〈.OOI  β=標準偏回帰係数 .21 ***. 時間的展望の特徴による中学校の適応状態の違い  時間的展望尺度の下位尺度得点に対し,非階層的クラスタ分析を用. いて,3つのクラスタに分類した。3群の特徴を示すため,各群の平 均値と全体の平均値との差をFigure 1に示した。それぞれの群の持 つ下位因子得点の特徴から,「過去の受容」・「未来」に小学校と中学. 校の変化はないが,「現在の充実感」が中学校入学後に低下した群を 「現在の充実感低下群」(48名),小学校・中学校を通じて「過去の受. 容」と「現在の充実感」が高く,「未来への展望」はやや高い群を「時 間的展望高群」(70名),小学校・中学校を通じて全ての時間的展望得 点が低い群を「時間的展望里芋」(36名)と命名した。また,.2’2検定 を行ったところ,有意な人数比率の偏りが見られた(,lr’2(2)=11.58,. pぐ01)。下位検定(ライアン法による多重比較)の結果, 「時間的展. 望高群」は,「時間的展望低群」より有意に人数が多かった。                13.

(17) 嚢騰.      一  一  一.  網艇唯e刃埋響辟. FO  4T  2 3  1  0  1  2  3. ロ過去■現在ロ未来. Figure 1. 中. 現在の充実感低下群. 中. 中. 4喝 小. 小. 小. 時間的展望高群. 時間的展望低群. 各群の時間的展望得点に関する得点の平均値.  時間的展望の特徴による適応の違いを検討するために,ASE∬の合 計得点,および各下位尺度の合計得点をそれぞれ従属変数とし,2(時. 期)×3(時間的展望各クラスタ)の2要因混合計画の分散分析を行 った。各群の平均値と標準偏差,および分散分析の結果をTable 4に 示す。.  分散分析の結果,「学校生活の意欲」,「学校生活の満足」について. 交互作用が有意であり,合計得点においては交互作用が有意傾向であ. ったため,単純主効果の検定を行った。結果をFigure 2・3・4に示 す。「学校生活の意欲」については,現在の充実感低下群における時 期の単純主効果(F(1,149)=11.11,p〈.01),小学校時期における群 の単純主効果(F(2,149)=15.75,p〈.01),中学校における群の単純主 効果(F(2,149)ニ16.13,p〈.01)が有意であった。下位検定(LSD法に. よる多重比較)の結果,小学校時点においては時間的展望高群・現在 の充実感低下群・時間的展望低群の順に得点が高く,中学校時点では,. 時間的展望高群は,現在の充実感低下群・時間的展望低群よりも得点 が高かった。.  また,「学校生活の満足」については,現在の充実感低下群におけ る時期の単純主効果(F(1,149)=12.24,p〈.01),小学校時期におけ る群の単純主効果(F(2,149)=8.33,p<.01),中学校における群の単.                14.

(18) 純主効果(F(2,149)=4.89,p〈.01)が有意であった。合計得点につい. ては,現在の充実感低下群における時期の単純主効果(F(1,149)= 9.72,p〈.01),小学校時期における群の単純主効果(F(2,149)ニ21.21,. p〈.01),中学校における群の単純主効果(F(2,149)=17.89,p<.01). が有意であった。下位検定(LSD法による多重比較)の結果,小学校 時点において時間的展望高群・現在の充実感低下群は,時間的展望低 群よりも得点が高かった。中学校時点では,時間的展望高群は,現在 の充実感低下群・時間的展望低群よりも得点が高かった。  また,他の下位尺度についても,下位検定(LSD法による多重比較) の結果,「教師関係」「級友関係」は小学校・中学校を通じて,時間的. 展望高群・現在の充実感低下性・時間的展望低群の順に得点が高く, 「学習のための努力」は,小学校・中学校を通じて,現在の充実感低 下群と時間的展望高群は時間的展望低群よりも得点が高かった。. Iable 4 ASEn得点の時期別・群別の平均値・標準偏差と分散分析結果 時期. 小学校         中学校      分散分析の主効果.    多里比較(LSD,ρ〈,05).     17.40 18.34 15.54 16.00 IS.33 14.83 4.27* 11.09** 1.36  教師関係                                          C<A<B(MSeニ20,94)     3.42 3.52 4.38 4.18 3.71 3.73 “,149) (2,149) (2,149)     13.64 14.84 11.S6 12.30 14.97 11.77 3.47+ 19.95** 3.89* 学校生活の意欲                                    C〈A〈B(MSe;6JO)   へC〈B(MSe;8.54)     2.50 2.56 2.66 3.09 2.60 3.17 (1,149> (2,149) (2,149).     16.79 17.84 15.46 16.85 17.40 15.14 1.60 21.06** O.69  級友関係                                          C<A<B〔MSe=6.t7)     2.05 1.64 2.57 1.65 1.98 2.66 (1,149) (2,149) (2,149).     10J4 10.S7 9.06 9.62 10.67 9.li 5.18* 7.30** 3.74*. 学校生活の満足                                     CくA.B(MSe=5.76)   八C<B(MSe=6.04).     2.69 1.96 2.67 2.42 2.35 2.61 (1,149) (2,149) (2,149).     6.32 6.13 5.60 6.21 6.53 5.91 3.69+ 3.60* 2.20 学習のための努力                                         C〈A,B(MSe;2.55)     e.95 1.29 1.59 1.15 t.34 1.34 (1,149) C2,149) (2,149).   64.89 68.03 57.51 60.9B 67,90 56.77 4.84* 24.95** 2.62+ 全体                                      C<A.B(MSe=64.25)  C<AくB(MSo=82.56)    S.07 7.18 9Al 9.07 8.76 9.36 Cl.149) {2,149) (2,149) ※各群に関しては,上段:平均値,下段=標準傭差/分散分析に関しては,上段=F値.下段:自由度 +ρ〈.10事ρく.05**ρく,01. 15. ※A:現在の充実感低下群 B:時間的展望高群 C=時間的展望低目.

(19) 61 51 41 31 211 0 1. 一eee−eeeeeeee−. 一.一.e..v..’A ■噂■・現在の充実感低下群. 一●D時間的展望高群 曽h・時間的展望低群.               wwthwwpmMwwny     o           小学校          中学校. Figure 2 時間的展望各群における「学校生活への意欲」. の平均得点. 評6 219 0 87 1 1.  :=t:e eee一 一一 e) 一ee−. Ar’ ’e−e’e’e ’A. 一←一現在の充実感低下三 一■一時間的展望高群 一▲・時間的展望低群.    小学校          中学校. Figure 3. 時間的展望各群における「学校生活の満足」 の平均得点. 16.

(20) 68. 昌一一一一〇一一一一〇一〇・■. 63.   ssl 一’e’”e               ・. .A             一◆一現在の充実感低下群   53            0e一時間的展望高群.             一▲・時間的展望特写    !工     一t 一一一.    〇’.        小学校          中学校. Figure 4 時間的展望各回におけるASEE全体の平均得点. 4.考察.  分散分析の結果,時間的展望の特徴により,学校適応に差が見られ た。多重比較の結果から,時間的展望高群は時間的展望低群に比べて,. 全ての下位尺度において中学校時点でのASE・IIの得点が高いことから 適応状態が良いと考えられる。都筑(2008)は,学校適応のタイプによ. って時間的展望に差が見られることを明らかにしているが,本研究に 関連する部分を具体的にあげると,学校生活を享受している群のほう が,学校生活を忌避している群よりも将来の希望に関する時間的展望 得点が小学校・中学校を通じて有意に高いという結果が出ている。本 研究の時間的展望高群と時間的展望低群の結果は,この都筑(2008)の. 結果を支持するものである。また,現在の充実感低下群の結果から, 中学校入学後の学校適応に対し,時間的展望の中でも「現在の充実感」. が強い影響を及ぼしていると考えられる。.  都筑(2004a)は,時間的展望が進級・進学にともなう自尊心,不定 愁訴,勉強理解・意欲の変化に影響を及ぼすとしており,特に空虚感 が全てに影響力を持ち,もっとも重要な役割を果たしているとしてい る。都筑(2004a)の「空虚感」は2項目であり,本研究の「現在の充 実感」に含まれていることから,現在の充実感低下群の適応得点が低                17.

(21) 下した本研究の結果と共通していると考えることができる。  また,日潟・齊藤(2007)は,大学生の時間的展望と精神的健康の関. 連を調査し,過去・現在・未来すべての得点が高い者は,精神的健康 度が高く,過去・現在・未来すべての得点が低い者は,精神的健康度 が低いことを明らかにしている。適応に関する研究で,精神的健康度 について調査をするものが多いことからもわかるように,精神的健康. は適応の1つであると考えられる。本研究は,適応に関する調査であ るが,時間的展望がポジティブかネガティブかということが,強く影 響するという点で日潟・齊藤i(2007)と共通している。.  これらの結果から,時間的展望の高低と適応状態の高低は密接な関 係があると言える。また,移行期においては,時間的展望の中でも, 現在についてどのようにとらえているかということが,中学校での適 応に深く関係すると考えられる。.  また,移行前である小学校時点での時間的展望の学校適応への影響 について,「過去」・「現在」・「未来」のそれぞれについて重回帰分析. をした結果,「過去」と「現在」が中学校の適応に影響を及ぼすこと が明らかとなった。特に,「過去」について肯定的に捉えることが移 行後の良好な適応にという結果であった。  Seligman(1991)は,過去に起こった出来事をいかに説明するかとい. う観点から,楽観的な説明スタイル(帰属様式)を持つ者は楽観的性 格傾向(optimism)を持つとした。すなわち,移行前に過去を受容す る傾向を持つ児童が,新環境である中学校での適応が良いということ はこの楽観性の理論とも合致していると言える。.  一方,「現在」については,小学校での「現在の充実感」が中学校 での適応に負の影響を与えることが明らかとなった。山本は,「移行 前に採用していた目標や基準は,移行後にはスムーズな適応を妨げる こともある。」(山本・ワップナー,1992,p.22)と危機的移行への対. 処様式について,有機体発達論の立場から述べている。小学校生活に おいて,目標や基準を確立している児童は,充実した小学校生活を送 ることができていると考えられる。ところが,中学校では環境が大き                18.

(22) く変わり,新たな目標や基準を設定する必要に迫られる。小学校生活 が充実しているほど,そのとまどいは大きいであろう。これこそが, いわゆる“中1ギャップ”の一因であると考えられる。  そして,学校現場において,最も意識的に指導が行われていると思 われる「未来」については,中学校での適応についての影響は見いだ せなかった。.  これらのことから,目前に環境移行が迫っている時期こそ,自分の 現在の状況,及び,現在に至った過去を整理し,適切な認識をするこ とが危機的移行を乗り越えるために必要であり,移行期にある児童・ 生徒への関わりにおいて意識されるべきであろう。.  中学校においては,小学校時点とは対照的に「現在の充実感」が学 校適応に対し,正の影響を与えることが明らかとなった。一方,「未 来への展望」が「学習のための努力」に対し,小中を通じて唯一有意 であった。これは,小学校生活とは違い,教科学習とその学習成績が 重視される生活が始まったり,将来の受験と結びつき,学習に対する 意欲が高まったりした結果だと考えられる。  また,「級友関係」は小学校と中学校で共通した結果となっている。. 中学校での調査が5月末という,入学後間もない時期であり,また, 全体の1/3∼2/3が同じ小学校出身者ということから,小学校時代と いう過去の人間関係を含んだ「過去の受容」によって現在の人間関係 が影響されていると考えられる。. 19.

(23) 第4章 研究3 1.目的  社会志向性・課題志向性の学校適応への影響,及び,時間的展望と の関係についての検討を行う。. 2.方法 調査対象者:.  1回目(小学校での調査):X県Y市内のA小学校6年生57名(男. 子35名,女子22名)・B小学校6年生108名(男子60名,女子48 名).  2回目(中学校での調査):X県Y市内のC中学校1年生159名(男 子88名,女子71名) 調査内容=. 社会志向性・課題志向性測定尺度(改訂版).  中山(1995)の作成した18項目からなる尺度を使用した。この質問. 紙は,各項目に対立する2つのタイプの行動が提示され,自分の行動 がどちらにどれだけ近いかを,4件法で回答を求めるものである。本 尺度は,小学校4年生∼中学校3年生を対象に開発されたものであり, 中山(1995)はこの改訂版について小学校4年生∼6年生に適用可能な ことが確認している。. 調査手続:.  調査に際し,①調査は成績やクラス分けとは無関係であること,② 調査結果は研究目的以外には使用せず,教員にも見せないこと,③回 答したくなければ回答しない権利があること,が教示された。また, 事前に対象校に調査協力依頼を行い,個人名は記入せず,小学校と中 学校それぞれの調査結果を出席番号でマッチングすること,成績とは 無関係であること,調査結果は研究目的以外にはいかなる用途にも用                20.

(24) いないことを伝え,了解を得た。調査の際は,調査者の教示のもとに 質問紙調査を実施した。調査対象者は質問紙に無記名とし,クラス・ 出席番号のみを記入することとした。. 調査時期=. 1回目:2010年3月9日 2回目:2010年5月21日. 3.結果 社会志向性・課題志向性測定尺度の因子分析  中山(1995)では,社会志向性・課題志向性測定尺度改訂版は中学校. 1年生に対しての検討がなされていないことから,中学1年生のデー タも含めた因子構造を検討するべく,分析を行った。.  尺度の因子構造を明らかするために,18項目について主因子法によ る因子分析を行った。中山(1995)を参考に,2因子を仮定して主因子. 法一バリマックス回転による因子分析を行った。因子負荷量,因子の 解釈の可能性を考慮した結果,最終的に2因子16項目が検出された。 中山(1995)と同様に,因子負荷量が.3未満の項目を除いた結果を. Table 5に示す。除外した2項目を除いて,それぞれの因子には中山 (1995)と同じ項目が含まれており,第1因子を「社会志向性」,第2. 因子をF課題志向性」と命名した。. 社会志向性・課題志向性測定尺度の信頼性の検討.  本尺度の内的整合性を検討するために尺度全体と下位尺度でCron bachのα係数が算出された。その結果,全体はα=.74で,下位尺度 においては「社会志向性」α=.75,「課題志向性」α=。71であった。. 中村(1995)は,社会志向性は.76,課題志向性は.78であったので,本. 調査における結果も,同等の信頼性を有していると考え,この結果を 採用することとする。.                21.

(25) Table 5 社会志向性・課題志向性想定尺度の因子分析結果 Fl F2. 【社会志向性】α=.80. 一. 05. 15友運がグループで楽しそうに遊んでいて,あなたもなかまにはいりたい時,あなたは,.            すぐ先生や家の人に聞きますかeorなかなか声をかけられないぼうですか。. .02. 11だれかと新しく友だちになりたいと思ったら..             自分からその人に言いますか。or自分からは言い出しにくいですか。 .oo. *6友だちが集まって話をしている時,あなたは,.       あとから話にはいるのは.気がひけますか。orすく蕾の中に入れてもらいますか。  1国語の時間に,「自分のこと」について作文を書きました。先生は,その作文をみんなの前で読みたいと考えています。あなたは,        みんなの前で読んでもいいと思いますか。or読まれるのは,ぜったいにいやですか。  5あなたは,みんなからグループの代表になってほしいとたのまれました。あなたは,  みんなをまとめていくのがすきなので,ひきうけますか。orたいへんなことが多いので,ことわりますか。. 一. 30. 一. 30. ,11. 10あなたは,友だちに,      いろいろなことをうちあけて話すほうですか。or話したくないことが,たくさんありますか。. .32. 率2クラスの話し合いの時.あなたは..     意見があっても,あまり手をあげないほうですか。or手をあげて,みんなの前で意見を言いますか。 *14おおぜいの人の前では,        言いたいことがうまく言えないほうですか。orあいてがどんな人でも,平気で言えますか。 *7ほかの学校の先生が,おおぜい学校に来ます。あなたは,先生を案内する係か,くつをそろえておく係をたのまれました。あなたは,        くつやスリッパをそろえる係がいいですか。or先生を案内し,学校の説明をする係がいいですか。 【課題志向性】α=.70 17すぐにはとけないようなむずかしい問題にちょうせんすることは,.         できたときうれしいので,すきですか。 orなかなかできないのできらいですか。 *3むずかしい問題を考えるのは,            めんどうくさいのできらいですか。or頭を使うので,おもしろいと思いますか。  8あなたの知りたいことについて,たくさん書いてある本があります。でも,その本はおとなむきで.とてもむずかしいのです。あなたは    知りたいことがわかるので,がんばって読みますか。orむずかしいと頭にはいらないので,あきらめますか。 18やっていることがうまくいかない時.あなたは,. .32 .21. .28. 一. 66. 一. 15. .63. 一. 15. 一. 55. .15. 一. 49. 一. 19. .41. .17. .33.           まず自分で考えて,くふうしますか。。rすぐだれかほかの人に助けてもらいますか *9勉強でわからないことにぶつかったら,.          あきらめて.べつの悶題をやりますか。orわかるまで,ぜったいにやめませんか。 *16家で勉強する時,あなたは,         学校でならったことだけを勉強しますか。orほかにもいろいろなことを勉強しますか。. .12.  4いちどやりはじめたことは,. 一. 31.      最後までやらないと気がすまないほうですか。orすぐにほかのことをやりたくなるほうですか。 *は逆転項目. 除外した項目. 説明率15.3 12.8. *13わからないことがあったら,あなたは..            すぐ先生や家の人に聞きますか。orまず自分で,本を読んだりして調べますか。 *12家で宿題や勉強をする時,あなたは,       ひとに言われないと勉強しないほうですか。or自分から勉強をはじめますか。. 社会志向性・課題志向性が中学校における学校適応に与える影響. 社会志向性と課題志向性を得点化するにあたっては,測定される志. 向性の高い方から順に4点・3点・2点・1点とし,各項目を得点化し た。各下位尺度得点は,各項目の得点を合計したもので,社会志向性. は9点∼36点,課題志向性は7点∼28点の得点範囲であった。 小学校・中学校それぞれの時点での社会志向性・課題志向性が,中 学校における学校適応に与える影響を検討するために,中学校におけ. るASEHの下位因子を基準変数,社会志向性・課題志向性を説明変数 として重回帰分析を行った。その結果,Table 6に示したとおり,全. ての基準変数において,R2値が有意となり,社会志向性・課題志向 性は,学校適応に影響していることが確認された。それぞれの志向性                               22.

(26) については,次のような結果となった。小学校時点での社会志向性・ 課題志向性は,有意な影響は見られなかった。中学校時点においては,. 社会志向性は「級友関係」と「学習のための努力」に対して,また, 課題志向性は「教師関係」「学校生活の意欲」「学校生活の満足」に対 し,正の標準偏回帰係数が有意であった。. Table 6日的    肖におけるASE皿’点  とした重口分.  中学校適応  教師関係   学校生活の意欲   級友関係   学校生活の満足学習のための努力. 20 4 0  一. .61 ***. .19 +. 26 *. A7 ***. .05. .45 ***. .11.    R2. .15 ***. .17 ***. .28 ***. .27 ***. .10 **. ハ09■.    目口. 一.21 +. 一 一. .19. .33 **. 一.07. 引■︻﹂. .07.    寅ロ. 10.   社会志向性 中学校.   社会志向性 小学校. OハU 4 UハU. 00.      n=152 n=153 n=152 n=153 n=153.    *ρ〈.05 **ρ<.Ol***ρく.OOI β=標準偏回帰係数. 社会志向性・課題志向性測定尺度の結果による分類.  志向性の特徴による分析をするために,社会志向性と課題志向性の それぞれの得点に基づいて分類した。.  小学校と中学校の値を平均した数値は,ほぼ正規分布を示したので,. 各尺度の全データの平均値に基づいて4群に分類し,それぞれ「社会 低一課題低群」(47名),「社会高一課題低群」(29名),「社会低一課題高. 群」(27名),「社会高一課題高群」(49名)と命名した。4群の特徴を Figure 5に示した。 Z 2検定を行ったところ,有意な人数比率の偏り が見られた(Z2(3)=10.63,p〈.05)。すなわち,社会低一課題低群,. 社会高一課題高群が多く,社会高一課題低群,社会三一課題高群は少な い傾向があった。. 23.

(27) M =23. 42. 35. @25 20 15 10. 課題志向性得点. 30. 社会低一回忌高群. 社会高一課題高群. 27名. 49四. 一一一■一一一■一一一■■. u一一■■一■■一一■■■■一M=24.33. 社会低一課題低群. 社会高一課題低群. 47名. 29名. 5.      5 10 15 20         社会志向性得点 Figure 5 社会志向性・課題志向性の平均点による群分け. 志向性の特徴による時間的展望の違い.  志向性の特徴による時間的展望の違いを検討するために,時間的展. 望測定尺度の各下位尺度の合計得点をそれぞれ従属変数とし,2(時. 期)×4(志向性各群)の2要因混合計画の分散分析を行った。平均 値と標準偏差をTable 7に示す。.  分散分析の結果,「過去の受容」について交互作用が有意傾向であ ったため,単純主効果の検定を行った。  その結果,社会高一課題高群の時期における単純主効果(F(1,148)= 5.24,ρ〈.05),小学校時点における群の主効果(F(3,148)ニ6.02, p〈.Ol),中学校時点における群の主効果(F(3,148)=11.12, p〈.01). が有意であった。   Table 7 時間的展望尺度得点の時期別・群別の平均値・標準偏差と分散分析結果 時期  _____」燧_____________虫i謹________主二塁___.    LL HLLHHH LL HL LHHH時.     18.04 21.24 19.93 2t.69 現在の充実感.      4.76 3.28 3.92 3.62     11.11 11.72 12.74 12.71 未来への展望. 19.23 2t,59 19.70 23.61 5.62* 7,03** 5.10 4.36 5.21 4.32 (1,148) (3,148). 10.68 11.86 12.30 12.86 O.66 5,87**. 交互作用 1.90 (3,148). O.85.      2.41 2.33 1.53 2.01. 2.68 2.42 2.40 2.31 (1,148) (3,148). (3,148).     14.77 17,24 15.93 16.69. 14.23 17.14 16.44 17.69 1.02 10.65**. 2.39十. 過去の受容. (3,148) 3.33 2.01 2.66 2.28 (1,148) (3.148)      2.79 2.21 2.51 2.57 上段=平均値 下段:標準偏差    ※LL:社会低一課題低群 HL:社会高一課題低群 LH=社会低一課題高群 HH=社会高一課題高群 *ρ〈.05  **pく.01.                24.

(28)  下位検定(LSD法による多重比較)の結果, Table8に示した通り,. 群群の特徴が明らかとなった。「現在の充実感」は小学校・中学校を 通じて,社会高一課題半群・社会高一課題高群は社会低一課題低群よ り得点が高く,社会高一課題高群は社会低一課題高群より得点が高か った。「未来への展望」は,小学校・中学校を通じて,社会四一課題. 高群・社会高一課題高群は社会低一課題低群より得点が高く,社会 高一課題高群は社会高一課題低群よりも得点が高かった。 「過去の 受容」は小学校時点において社会高一課題低群・社会高一課題高群は 社会低一課題低群より得点が高く,社会高一課題高群は社会低一課題 高群より得点が高かった。中学校時点では,社会低一課題低群は他の. 3群よりも得点が低かった。また,時間的展望全体では,小学校・中 学校を通じて,社会低一課題低群は他の3群よりも得点が低く,社会 高一課題高群は社会三一課題高群より得点が高かった。. Table 8 時間的 望における各 向性 司の多重比較(LSD法)の概要 時期.        小学校                 中学校. 現在の充実感          LL<HLHH,LH〈HH(MSeニ31.31,*ρ〈.05) 未来への展望          LL<LH,HH,HL<HH(MSeニ8.63.*ρ<.05) 過去の受容  LL<H」HH LH<HL(MSe=6.76,*p〈.05) l LL〈HLLH.HH(MSe=6.76.*ρ<.05) 全体. LL〈HL,LH,HH , LH〈HH (MSe=71.18,*p〈.05). ※LL:社会低一己粗低群 HL社会高一課題低群 LH:社会低一課題高群 HH:社会高一課題高群. 4.考察  中学校時点の志向性が,中学校での学校適応に影響していることが, 重回帰分析の結果から明らかとなった。  課題志向性は,「学校生活の意欲」「学校生活の満足」だけでなく,. 対人関係のひとつと思われた「教師関係」についても,影響を与える 結果となった。この結果から,教師関係に適応するということは,人 と人の関わりという対人関係的な適応というよりも,学習課題に取り. 組むことや課題を解決していくことについての関わりを重視してい るのだと考えられる。教師への適応は主要な学校適応のひとつとして                25.

(29) 数多く調査されているが,生徒の志向性に着目した研究は見られない。. 本研究の結果は,生徒の教師に対する適応のメカニズムについて迫る ことができたものだと言える。.  課題志向性に関する結果から,中学校生活においては学習課題に取. り組むことや課題を解決していくことが重要視されていることが示 された。それに対応できる志向性を持つことが,中学校生活に適応す るためには必要であると言える。.  社会志向性については,「級友関係」と「学習のための努力」に影 響を与える結果となった。「級友関係」については,石田(2007)は社. 会志向性が高い生徒ほど,対人適応感が高い結果を示しており,中山 (1995)は,社会志向性の高い群は友人の数が多く,友人と多様な経験. を共有する傾向にあり,社会的適応の低い群は,友人との接触が少な く,表面的で活動的な交友経験が中心となる傾向にあるとしている。 本研究の結果は,これらの先行研究の内容を支持するものであり,級 友関係の適応と社会志向性が関係することが明らかになった。そして,. 課題志向性の結果と合わせて考えて,教師関係の適応と,級友関係の 適応が異なるものであるということを,志向性の点から明らかにした ことは成果である。.  「学習のための努力」は,質問項目の内容が課題志向性に関する内 容であったが,課題志向性は有意でなく,社会志向性のみが有意な影 響を及ぼしていた。中山(1995)は,有能感が課題志向性だけでなく,. 社会志向性とも関連している結果から,「学業成績に対する社会志向 性の積極的な役割」が存在することを述べている。「学習のための努 力」についての結果は,中山(1995)と共通していると言えよう。.  また,分散分析の結果,志向性高低の特徴により,時間的展望の得 点に差が見られた。多重比較の結果から,社会高一課題高群は「現在」 「過去」「未来」のすべての得点が高く,社会低一課題低群はすべての. 得点が低かった。つまり,志向性の高低と,時間的展望の高低は関連 していると言える。周囲の人々と良好な関係を築こうという対人的な 興味や,学習や課題に取り組もうとすることが,自己や社会に対する                26.

(30) 積極的な態度を生み出し,肯定的な時間的展望につながるのであろう。  社会高一課題低群と社会低一課題高群の間には,小学校時点の「過去. の受容」においてのみ,有意な差がみられた。小学校時点では過去は 漠然としたものであったが,中学校に入学することで,身近な小学校 生活が明確な過去として認識されると考えられる。その結果,志向性 が高い部分がある者とそうでない者,つまり,社会低一課題低群とそ れ以外の差が際立ったと考えられる。. 27.

Table 1 時間的展望尺度の因子分析結果          Fl F2 F3 【現在の充実感】α=.76 t4不満なことがたくさんある* 11今の自分は本当の自分ではない気がする* 5毎日が同じことのくりかえしでたいくつだ* 2毎日がなんとなく過ぎていくように感じる* 15もう一度小さいころにもどってやり直したい* 8毎日が楽しい 【未来への展望】α =.62 1大きくなってから何になりたいか決めている 7大きくなったらやってみたいことがある 4私はこれから先のことはあまり考えないほうだ* 【過去の受容
Table 5 社会志向性・課題志向性想定尺度の因子分析結果 Fl F2 【社会志向性】α=.80 15友運がグループで楽しそうに遊んでいて,あなたもなかまにはいりたい時,あなたは,            すぐ先生や家の人に聞きますかeorなかなか声をかけられないぼうですか。 11だれかと新しく友だちになりたいと思ったら.             自分からその人に言いますか。or自分からは言い出しにくいですか。 *6友だちが集まって話をしている時,あなたは,       あとから話にはいるのは.気がひけます

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