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 以上の結果より,小学校から中学校への移行において時間的展望が 新環境である中学校への適応に重要な役割を果たすことが明らかと

なった。

 研究1で作成した時間的展望尺度を用いることで,時間的展望を過 去・現在・未来に分けて検討することが可能となった。その結果,研 究2において,中学校での学校適応には,過去や現在に対する認識が 重要であるということを明らかにすることができた。移行前の子ども への関わりは,移行後についての内容,つまり未来に目を向けさせる ような関わりになりがちである。しかし,本研究はそのような関わり に傾倒している学校現場に対し警鐘を鳴らし,移行直前の時期こそ,

現在の状況現在に至った過去を整理し,適切に認識することが危機的 移行を乗り越えるために必要であり,移行期にある児童・生徒への関 わりにおいて意識されるべきだということを提案した。また,研究3 では,志向性について検討し,志向性は学校適応に影響すること,ま た,時間的展望とも密接な関係にあることを明らかにした。学校現場 の中で意識されることの少ない時間役展望の概念と学校生活を近づ け,移行期の適応に対し有用な知見を得ることができた。

 現在,小中一貫教育の実施等,移行期のギャップを小さくしょうと いう取り組みが盛んに行われている。しかし,子どもたちの発達とい うことを考えた場合,やみくもにギャップを取り除くことは弊害があ るとも考えられる。Park, C・hen&Murch(1996)によると,危機的な体 験によるストレスは人格的な成長をもたらすとしている。また,宅

(2004)は,高校生に中学の頃との変化をたずね,中学から高校への移 行期における変化や影響した出来事についての調査を行い,「ストレ ス体験にはそれをくつがえすほどの自己成長感への寄与がもたらさ れる可能性もある」ことを明らかにしている。

 しかし,誰もが移行期の危機的な状況を乗り越え,成長していくわ けではない。わが国における,小学校から中学校への移行期の危機的        28

な状況は第1章で述べたとおりである。今,学校現場に求められてい ることは,移行期を順調に乗り越えられるように,適応に対する時間 的展望の有効な面を活かすこと,また,個人の志向の特性に合わせた サポートをすることである。

 一方,本研究で開発を試みた時間的展望尺度は,信頼性の面ではや や不安が残る結果となったことは否めない事実である。白井(1997)は 本来,大学生を対象に作られた尺度であり,今回はその要素を活かし つつ小学生への適用を図るという,ある意味トップダウン的な取り組 みであったことがその原因の一つだと考えられる。記述調査や面接調 査等,質的な調査によって小学生の考える時間的展望を聞き取るとい うボトムアップ的な取り組みをすることが,本研究の尺度を,より小 学生の実態に合うものへと近づける方法であると思われる。今後は,

このような点を考慮して,尺度の項目を改善すること,または,調査 協力者の負担にならない程度に項目を増やすことなどを検討し,より 的確に時間的展望を測定することのできる尺度にする必要がある。

 また,本研究で時間的展望が学校適応に影響をあたえることは明ら かにできた。しかし,影響を与える具体的なプロセスについては十分 に解明できていない。時間的展望が学校適応に与えるプラスの影響を 生かした取り組みをするためには,児童・生徒に 適切な 時間的展 望を育む手法についての検討が今後必要であろう。

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       謝辞

 小学校を卒業し中学校へと進学することは,わが国の義務教育では当然の ことです。しかし,児童にとっては期待と不安が入り混じった,環境移行です。

中学校生活に適応できずに深く悩み,不登校や非行等の問題行動を起こす卒 業生を,毎年見てきました。小学校の教員として,小学校の卒業式までにな にか出来ることはないだろうか… 。そう考えたのが,この研究のはじま

りでした。

 本論文は,多くの方のお力添えで完成させることができました。

 この場をお借りして,心よりお礼を申し上げます。

 まず,指導教員の古川雅文先生に深く感謝を申し上げます。お忙しい中,

心理学のみならず,統計の初歩から,いつも温かく丁寧に,そして忍耐強く ご指導いただきました。本当にありがとうございました。

 学校心理学コースの浅川潔司先生,藤原忠雄先生,秋光恵子先生,小林小 夜子先生,心の教育コースの新井肇先生,松本剛先生,隈元みちる先生には,

研究や学校生活関すること,そして時には,より良く生きるためのヒントを 頂きました。深く感謝申し上げます。

 また,調査の実施に多大な御協力をいただきました,A小学校・B小学校・

C中学校の校長先生をはじめとする教職員の皆様方,そして調査にご回答下 さいました児童・生徒の皆さんに厚くお礼申しあげます。

 それから,現在まで共に学んできた学校心理学コースの皆さんには大変お 世話になりました。生まれて初めて関西人になるという,私自身の環境移行 が順調に行われたのは,皆さんのおかげです。同じ古川ゼミの清島純江さん,

いつも斬新なアイデアをありがとう。勉強になりました。

 みなさん本当にありがとうございました。兵庫教育大学大学院で学んだこ とは,学校現場に戻った後,そして,これからの人生に役立てていきます。

 そして,この2年間思うように研究活動をさせてくれ,応援してくれた家 族に心から感謝しています。本当にありがとう。

「古川先生」とかけて,「心理学辞典の最初のページ」と解く。その心は…

       「アイ(愛,あ・い)にあふれています」

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兵庫教育大学 学校教育学専攻       学校心理学コース          山口 倫史

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