<巻頭言>「医師不足の悪循環に効く妙薬はあるか: 足るを知れ」
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(2) 古賀義久. ビス業務(分母)が増えた.麻酔科ですらそうなのだから他の診療科においては察するに余りあ る.更に, 1 9 9 9年の手術患者取り違え事件を契機とした医療安全の普及と安全対策の徹底が医療 にある意味で萎縮をもたらし,専門領域に委ねられる(分子からの逸脱)結果となった.産科も その特殊性から医療事故に遭遇する頻度や訴訟の増加,そして激務と疲弊からくる医師不足の 悪循環に陥っている.しかし良く考えれば,これら専門性の普及は医療の質向上のためには決し て間違っていない.患者のためにはむしろ望ましいシフトであって,医療改革の一端に他ならな い.つまり,麻酔は専門の麻酔科医が担当するという行為はそもそも当たり前の先進医療であ る.したがって新たな分子側の導入(増員)は基本であり,必然策なのである. 他方,お隣の法曹界はというと:今すでに人余りだという.新人弁護士の就職先が無くて困っ. 2年度頃までは年間 2 0 0 人程の弁護士合格者は平成 1 6年度には 6 0 0名 , 1 7年度 ていると聞く.平成 1 0 0名を超えている. 3倍の増員なのである.医学部自体や入学者数を増やしたとしても研 には 7 修を終えて一人前に日の目を見るのは 6年先, 8年先である.仮に医師国家試験の合格者率90%. 0 0 5 0 0人増の計算である.決して焼け石 を今たとえ 5%ほど引き上げたとしても,年間およそ 4 3 0 0 % ) には程遠い. に水とは云えないが,弁護士の場合のような 3倍 ( ところが医師不足の恐慌の中で一つ特筆すべき現象があった.さる公立病院 ( 3 8 0 床)の麻酔 科は,そもそも 2人の麻酔科医で日々の手術と緊急を含めた全身管理が行われていた.数年前の 移転とともに病院は一新し,麻酔科医も 3人となった.病院は最新の設備機能を備えた有機的? な経営で麻酔科医が激務に曝されることはなかった.その後,手術件数も漸増したが,麻酔科医 は 4人となっていた.今また大学を辞めてでも就職したいと 5人から 6人へと膨れ上がった.給 与は正規の公務員並みにもかかわらず,若手医師が競って集まるこの異常現象が示唆する意味 は大きい.型破りの定員枠増による快適さは給与願望を凌駕したのである.収入はほどほどでも よい.時間的余裕と主体性をもって医療に従事でき,雰囲気や快適性 (α) が望まれる所以なの である.官頭のフリーランスとはまさに対極的なスタンスと言える.一旦,好循環に入ると満足 が充足を生み,病院経営や採算の因子を度外視すれば人手は白い雪ダルマ式に増える. 日本中を駆け巡った不況の波(医師不足という黒い雪ダルマ現象)を解消するためには,医師 国家試験の合格者数にも増して,勤務条件を改善すること,定員枠を緩和すること,困窮してい る科の診療報酬を上げることなどが応急対策として考えられる.しかし,もっと貴重な妙薬 α は 医療従事者が皆楽しく働ける環境が提供されることであり,ほどほどの「満足とやりがい」を契 機として好循環に導くことではなかろうか.医療制度や体制の改革もさることながら,禅用語 「吾唯,是足るを知る」を掲げて各自の意識高揚をはかり,医療現場を止揚の理念から改善して いく地味な努力があってもよいのではと考える今日この頃である..
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